JP2022149758A - ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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JP2022149758A
JP2022149758A JP2021052051A JP2021052051A JP2022149758A JP 2022149758 A JP2022149758 A JP 2022149758A JP 2021052051 A JP2021052051 A JP 2021052051A JP 2021052051 A JP2021052051 A JP 2021052051A JP 2022149758 A JP2022149758 A JP 2022149758A
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央 草香
Hiroshi Kusaka
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Abstract

【課題】耐擦傷性及び透明性に優れ、かつ高温条件下での透明性の悪化を抑制したポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形体を提供する。【解決手段】下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(a)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、末端及び/又は側鎖にポリエーテルに由来する構成単位(b)を有する変性シリコーン系化合物(B)を含む、ポリカーボネート樹脂組成物。TIFF2022149758000013.tif4088【選択図】なし

Description

本発明は、耐擦傷性及び透明性に優れたポリカーボネート樹脂組成物に関する。
ポリカーボネート樹脂は、一般的にビスフェノール類をモノマー成分とし、透明性、耐
熱性、機械的強度等の優位性を生かし、電気・電子部品、自動車用部品、医療用部品、建
材、フィルム、シート、ボトル、光学記録媒体、レンズ等の分野でいわゆるエンジニアリ
ングプラスチックスとして広く利用されている。
しかしながら、従来のポリカーボネート樹脂では耐候性、耐擦傷性が充分でないという
課題があった。
このような問題を解決するために、イソソルビドに代表されるエーテル基含有ジオール
を用いたポリカーボネート樹脂が開発されている(特許文献1~2)。イソソルビドを用
いたポリカーボネート樹脂は透明性、耐候性、耐衝撃性に優れることが知られており、自
動車内外装材、ディスプレイパネル、への適用が知られている。
イソソルビド構造を含有するポリカーボネート樹脂においても成形品では雑巾やティッ
シュ等で繰り返しふき取りを行うと擦れ傷が発生してしまうという課題があり、これらを
解決するためにシリコーン化合物を含有するイソソルビドを用いた含有ポリカーボネート
樹脂組成物が提案されている(特許文献3)。さらにフェニル基含有オルガノシロキサンを
含有するイソソルビドを用いたポリカーボネート樹脂(特許文献4)などが提案されてい
る。
国際公開第2004/111106号パンフレット 国際公開第2007/063823号パンフレット 特開2015-199954号公報 特開2018-154826号公報
しかしながら特許文献3および特許文献4のポリカーボネート樹脂組成物においては耐
擦傷性を高く保ったまま成形品の末端部における白モヤの発生を抑制して美観を高めると
いう点において未だ改良の余地がある。また、本発明者らによる検討により、これらのポ
リカーボネート樹脂組成物は、高温条件において透明性が悪化するという問題があること
が見いだされた。
本発明は、耐擦傷性及び透明性に優れ、かつ高温条件下での透明性の悪化を抑制したポ
リカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のポリカーボネート樹
脂(A)に対して特定の変性シリコーン系化合物(B)を添加することにより透明性、耐
擦傷性に優れ、高温条件下での透明性の悪化を抑制したポリカーボネート樹脂組成物が得
られることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は、以下に存する。
[1]下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(a)を含む
ポリカーボネート樹脂(A)と、末端及び/又は側鎖にポリエーテルに由来する構成単位
(b)を有する変性シリコーン系化合物(B)を含む、ポリカーボネート樹脂組成物。
Figure 2022149758000001
[2]前記変性シリコーン系化合物(B)が有するポリエーテルに由来する構成単位(b
)が、下記一般式(2)で表される、前記[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
*-(A-O)n-(B-O)m-R (2)
(式(2)中A及びBは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキレン基、又は糖
誘導体に由来する2価の基である。Rは水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1
~30の1価の炭化水素基である。nとmは、それぞれ独立に、1以上の整数である。*
はケイ素原子に結合する部位を表す。)
[3]前記ポリカーボネート樹脂(A)が、さらに脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジ
ヒドロキシ化合物、および前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物以外のエーテル基
含有ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる1種以上のジヒドロキシ化合物に由来す
る構成単位(a-2)を含む共重合ポリカーボネート樹脂である、前記[1]又は[2]
に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[4]前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、前記変性シリコーン系化合
物(B)を0.01~5重量部含有する、前記[1]~[3]のいずれか1つに記載のポ
リカーボネート樹脂組成物。
[5]前記変性シリコーン系化合物(B)のHLB値が5以上である、前記[1]~[4
]のいずれかに1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[6]前記ポリカーボネート樹脂100重量部あたり(C)紫外線吸収剤0.01~5重
量部及び/又は(D)光安定剤0.001~5重量部を含有する、前記[1]~[5]の
いずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[7]前記ポリカーボネート樹脂100重量部あたり(E)エラストマー0.1~100
重量部を含有する、前記[1]~[6]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組
成物。
[8]前記エラストマー(E)がコアシェル構造を有することを特徴とする、前記[7]
に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[9]前記[1]~[8]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形し
てなる成形品。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物によれば、透明性、耐擦傷性に優れ、かつ高温条
件下での透明性の悪化を抑制できる。このため、電気・電子部品、自動車用部品等の射出
成形分野、フィルム、シート分野、さらには、建築部材用途といった幅広い分野へ適用可
能なポリカーボネート樹脂組成物及び成形品を提供することが可能になる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本
発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容
に限定されない。
[ポリカーボネート樹脂組成物]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化
合物に由来する構成単位(a)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、末端及び/又は側
鎖にポリエーテルに由来する構成単位(b)を有する変性シリコーン系化合物(B)を含
む。
Figure 2022149758000002
以下、本発明のポリカーボネート樹脂組成物について詳述する。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いるポリカーボネート樹脂(以下、「ポリカ
ーボネート樹脂(A)」と称することがある。)は、下記一般式(1)で表されるジヒド
ロキシ化合物(以下、「ジヒドロキシ化合物(1)」と称することがある。)に由来する
構成単位(a)を少なくとも含む。
Figure 2022149758000003
前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソ
ソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物(1
)のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能であり、種々のデンプンから製造さ
れるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、成形
性の面から最も好ましい。
これらのジヒドロキシ化合物(1)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合
わせて用いても良い。
これらのジヒドロキシ化合物(1)のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能
であり、種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビ
ドが、入手及び製造のし易さ、成形性の面から最も好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、ポリカーボネート樹脂(A)中の前記
構成単位(a)は、ポリカーボネート樹脂組成物の透明性を高めるうえで重要な役割を果
たすと考えられる。これは、前記ジヒドロキシ化合物(1)が分子構造中に有するエーテ
ル基構造が構成単位(a)の一部としてポリカーボネート樹脂に導入されることで、本発
明の変性シリコーン系化合物(B)が側鎖及び/又は末端に有するポリエーテル基と相互
作用し、ポリカーボネート樹脂(A)と変性シリコーン系化合物(B)の相溶性を高める
ためと考えられる。
このような観点から、本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、前記構成単位(a)を
含むことが本願発明の効果を奏するうえで重要であると考えられる。したがって、ポリカ
ーボネート樹脂(A)中に前記構成単位(a)を含む限りでその含有比率は特に限定され
ないが、ポリカーボネート樹脂(A)に含まれる全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単
位に対して、前記構成単位(a)は、30モル%以上が好ましく、40モル%以上がより
好ましく、45モル%以上が特に好ましく、50モル%以上が最も好ましい。また、90
モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましく、80モル%以下が特に好ましく
、75モル%以下が最も好ましい。構成単位(a)が上記範囲内であれば、変性シリコー
ン系化合物(B)との相溶性がより向上し、樹脂組成物の透明性により優れる。また、耐
擦傷性にもより優れる。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、前記ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構
造単位以外に、ジヒドロキシ化合物(1)以外のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位
を含有する共重合ポリカーボネート樹脂であってもよい。
このようなポリカーボネート樹脂(A)は、例えば、後述のポリカーボネート樹脂(A
)の製造方法に従って、ジヒドロキシ化合物(1)以外のジヒドロキシ化合物の1種又は
2種以上を用いて製造される。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)が含有することができるジヒドロキシ化合物(1
)以外のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位は、特に限定されないが、脂肪族ジヒド
ロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物および式(1)で表されるジヒドロキシ化合物
以外のエーテル基含有ジヒドロキシ化合物よりなる群から選ばれる1種以上のジヒドロキ
シ化合物に由来する構造単位(以下、構成単位(a-2)と称する場合がある。)である
ことが好ましい。これらのジヒドロキシ化合物は、柔軟な分子構造を有していることから
、ポリマー鎖中に柔軟な構造単位を導入できるため、樹脂の靭性や耐衝撃性をより向上さ
せることができる。
(脂肪族ジヒドロキシ化合物)
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパン
ジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオー
ル、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、
1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1
,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,
6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9
-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,1
2-ドデカンジオール等の直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物、ネオペンチルグリコール、2
-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオ
ール、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール等の分岐鎖脂肪族ジ
ヒドロキシ化合物が例として挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、1,3
-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘ
キサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナ
ンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ド
デカンジオール等の直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物が入手のしやすさ、取り扱いのしやす
さという観点から好ましい。
尚、前記例示化合物は、本発明に使用し得る脂肪族ジヒドロキシ化合物の一例であって
、何らこれらに限定されるものではない。これらの脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1種を
単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
(脂環式ジヒドロキシ化合物)
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、5員環構造又は6員環構造
を含む化合物が挙げられる。6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定さ
れていてもよい。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素数は通常70以下であり、好
ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。炭素数が過度に大きいと、耐熱性
が高くなるが、合成および精製が困難になる傾向がある。炭素数が小さいほど、精製しや
すく、入手しやすい傾向があるが、小さすぎると環構造が不安定であり合成が困難となる
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロ
ブタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、
1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオール等のシ
クロヘキサンジオール類、4-シクロヘキセン-1,2-ジオール等のシクロへキセンジ
オール類、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール
、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のシクロへキサンジメタノール類、2,3-ノ
ルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノール等のノルボルナンジメタノ
ール類、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、1,
3-アダマンタンジオール、2,2-アダマンタンジオール等が挙げられる。
上述した脂環式ジヒドロキシ化合物の具体例のうち、2,2,4,4-テトラメチル-
1,3-シクロブタンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロ
ヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のシクロへキサンジメタ
ノール類、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、1
,3-アダマンタンジオール、2,2-アダマンタンジオール、入手のしやすさ、取り扱
いのしやすさという観点から、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘ
キサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノ
ール、ペンタシクロペンタデカンジメタノールが好ましく、これらの中でも、2,2,4
,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール
、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロ
ペンタデカンジメタノールが特に好ましく、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シ
クロブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノ
ールが最も好ましい。
尚、前記例示化合物は、本発明に使用し得る脂環式ジヒドロキシ化合物の一例であって
、何らこれらに限定されるものではない。これらの脂環式ジヒドロキシ化合物は、1種を
単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
(エーテル基含有ジヒドロキシ化合物)
エーテル基含有ジヒドロキシ化合物としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリ
コール、ポリエチレングリコール(分子量150~2000)、ポリ-1,3-プロピレ
ングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレングリコール類、スピ
ログリコール、ジオキサングリコール等の環状アセタール構造を有するジヒドロキシ化合
物などが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)の耐熱性をより高めるという観点から、前記構成単位(a
-2)を導入するジヒドロキシ化合物としては、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒ
ドロキシ化合物がより好ましく、脂環式ジヒドロキシ化合物がさらに好ましい。耐熱性及
び耐衝撃性をさらにより高めるという観点からは、脂環式ジヒドロキシ化合物の中でも、
シクロブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、及びトリシクロデカンジメタノー
ルからなる群より選ばれる1種以上であることが特に好ましい。
共重合比率の異なる複数のポリカーボネート共重合体のそれぞれの共重合比率の範囲や
、複数のポリカーボネート共重合体の混合比率は、混合後に得られるポリカーボネート樹
脂混合物の共重合比率が、所定の範囲を満たす条件で適宜選択される。ポリカーボネート
樹脂(A)として、一種類のポリカーボネートのみを用いる場合および複数のポリカーボ
ネート共重合体を混合する場合は、混合後に得られるポリカーボネート樹脂混合物の共重
合比率の好ましい範囲は同様であり、以下に説明する。
本発明に使用するポリカーボネート樹脂(A)における前記構成単位(a-2)の含有
割合は、特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂(A)中の全ジヒドロキシ化合物に
由来する構造単位において、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく
、25モル%以上が特に好ましく、30モル%以上が最も好ましい。また、60モル%以
下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下が特に好ましく、45モ
ル%以下が最も好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)が上記の範囲内の構成である場合
には、耐擦傷性、耐衝撃性、耐熱性がさらに良好となる。
光学特性の観点からは、本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、構造単位として芳香
族成分を含有しないことが好ましい。即ち、非芳香族構造で構成される化合物のみを共重
合モノマーとして用いることが好ましい。ポリマーの主鎖に芳香族成分が含まれていると
、樹脂組成物の耐候性や透明性が悪化する懸念がある。芳香族成分を含有しない前記その
他の構造単位を採用することにより、当該構造単位に由来して主鎖に芳香族成分が組み込
まれることを防止できる。
一方、光学特性を確保しつつ、耐熱性や機械特性等とのバランスをとるために、ポリマ
ーの主鎖や側鎖に芳香族成分を組み込むことが有効な場合もある。諸特性のバランスをと
る観点から、前記樹脂における、芳香族基を含む構造単位の含有量は、20モル%以下で
あることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であるこ
とがさらに好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。
(炭酸ジエステル)
本発明のポリカーボネート樹脂は、上述した本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒド
ロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得る
ことができる。
用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(6)で表されるものが挙げられる
。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いても
よい。
Figure 2022149758000004
前記式(6)において、A及びAは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素
数1~18の脂肪族基、又は、置換若しくは無置換の芳香族基である。
前記式(6)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、
ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチ
ルカーボネート及びジ-t-ブチルカーボネート等が例示されるが、好ましくはジフェニ
ルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボ
ネートである。なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、
これらの不純物は重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相を
悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用す
ることが好ましい。
炭酸ジエステルは、溶融重合に使用した全ジヒドロキシ化合物に対して、0.90~1
.20のモル比率で用いることが好ましく、0.95~1.10のモル比率で用いること
がより好ましく、0.96~1.10のモル比率で用いることがさらにより好ましく、特
に好ましくは、0.98~1.04のモル比率で用いることがよい。
このモル比率が0.90より小さくなると、製造されたポリカーボネート樹脂(A)の
末端ヒドロキシル基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化し、熱可塑性樹脂組成物を成
形する際に着色を招いたり、エステル交換反応の速度が低下したり、所望の高分子量体が
得られない可能性がある。
また、このモル比率が1.20より大きくなると、同一条件下ではエステル交換反応の
速度が低下し、所望とする分子量のポリカーボネート樹脂(A)の製造が困難となるばか
りか、製造されたポリカーボネート樹脂(A)中の残存炭酸ジエステル量が増加し、この
残存炭酸ジエステルが、成形時、或いは成形品の臭気の原因となり好ましくない場合があ
り、重合反応時の熱履歴を増大させ、結果的に得られたポリカーボネート樹脂(A)の色
相や耐候性を悪化させる可能性がある。
更には、全ジヒドロキシ化合物に対する、炭酸ジエステルのモル比率が増大すると、得
られるポリカーボネート樹脂(A)中の残存炭酸ジエステル量が増加し、これらが紫外線
を吸収してポリカーボネート樹脂(A)の耐光性を悪化させる場合があり、好ましくない
。本発明のポリカーボネート樹脂(A)に残存する炭酸ジエステルの濃度は、好ましくは
200重量ppm以下、更に好ましくは100重量ppm以下、特に好ましくは60重量
ppm以下、中でも30重量ppm以下が好適である。ただし、現実的にポリカーボネー
ト樹脂(A)は未反応の炭酸ジエステルを含むことがあり、ポリカーボネート樹脂(A)
中の未反応の炭酸ジエステル濃度の下限値は通常1重量ppmである。
<エステル交換反応触媒>
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、上述のようにジヒドロキシ化合物(1)を含
むジヒドロキシ化合物と前記式(6)で表される炭酸ジエステルをエステル交換反応させ
て製造することができる。より詳細には、エステル交換反応させ、副生するモノヒドロキ
シ化合物等を系外に除去することによって得られる。この場合、通常、エステル交換反応
触媒の存在下でエステル交換反応により溶融重合を行う。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の製造時に使用し得るエステル交換反応触媒(以
下、「触媒」と称する場合がある)としては、例えば長周期型周期表(Nomencla
ture of Inorganic Chemistry IUPAC Recomm
endations 2005)における1族又は2族(以下、単に「1族」、「2族」
と表記する。)の金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニ
ウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。これらの中でも、好ましく
は1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。
1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩
基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用す
ることも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが
特に好ましい。
また、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、又は
炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、
取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点から
は酢酸塩が好ましい。
1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウ
ム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸
水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナト
リウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステア
リン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウ
ム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化
ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化
ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸
セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リ
ン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニ
ルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セ
シウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム
塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられ、中でもセシウム化合物、リチウム化合物
が好ましい。
2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネ
シウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグ
ネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム
、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロ
ンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム
、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられ、中でもマグネシウム化合物、カルシウム化
合物、バリウム化合物が好ましく、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が更
に好ましい。
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テ
トラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジ
ルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホ
ウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ
素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、
ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、
バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ-n-プロピルホス
フィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリフェニルホス
フィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、
テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、
トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロ
キシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウム
ヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアン
モニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニル
アンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルト
リフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等
が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4-アミノピリジン、2-アミノピリジン、N,N
-ジメチル-4-アミノピリジン、4-ジエチルアミノピリジン、2-ヒドロキシピリジ
ン、2-メトキシピリジン、4-メトキシピリジン、2-ジメチルアミノイミダゾール、
2-メトキシイミダゾール、イミダゾール、2-メルカプトイミダゾール、2-メチルイ
ミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
上記の中でも、第2族金属化合物及びリチウム化合物からなる群より選ばれる少なくと
も1種の金属化合物を触媒として用いるのが、得られるポリカーボネート樹脂(A)の透
明性、色相、耐光性等の種々の物性を優れたものとするために好ましい。
また、上記ポリカーボネート樹脂(A)の透明性、色相、耐光性を特に優れたものとす
るために、触媒が、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少
なくとも1種の金属化合物であるのが好ましい。
前記触媒の使用量は、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の場合、反応に供する
全ジヒドロキシ化合物1モルに対して、金属換算量として、好ましくは0.1~300μ
モル、より好ましくは0.1~100μモル、さらに好ましくは0.5~50μモル、更
により好ましくは1~25μモルの範囲内である。
上記の中でもリチウム及び2族金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を含
む化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物を用いる
場合は、金属換算量として、反応に供する全ジヒドロキシ化合物1モル当たり、好ましく
は0.1μモル以上、更に好ましくは0.5μモル以上、特に好ましくは0.7μモル以
上とする。また上限としては、好ましくは20μモル、更に好ましくは10μモル、特に
好ましくは3μモル、最も好ましくは2.0μモルである。
触媒の使用量が少なすぎると、所望の分子量のポリカーボネート樹脂(A)を製造する
のに必要な重合活性が得られず、充分な破壊エネルギーが得られない可能性がある。一方
、触媒の使用量が多すぎると、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相が悪化するだ
けでなく、副生成物が発生したりして流動性の低下やゲルの発生が多くなり、脆性破壊の
起因となる場合があり、目標とする品質のポリカーボネート樹脂(A)の製造が困難にな
る可能性がある。
<ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法>
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、ジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキ
シ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応により溶融重合させることによって得ら
れるが、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一
に混合することが好ましい。
混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上であり、その上限は通常250℃
以下、好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。中でも100℃以
上120℃以下が好適である。混合の温度が低すぎると溶解速度が遅かったり、溶解度が
不足する可能性があり、しばしば固化等の不具合を招き、混合の温度が高すぎるとジヒド
ロキシ化合物の熱劣化を招く場合があり、結果的に得られるポリカーボネート樹脂(A)
の色相が悪化し、耐光性に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを混合する操作は、酸素濃度10体積%
以下、更には0.0001体積%~10体積%、中でも0.0001体積%~5体積%、
特には0.0001体積%~1体積%の雰囲気下で行うことが、得られるポリカーボネー
ト樹脂(A)の色相悪化防止の観点から好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、触媒を用いて、複数の反応器を用いて多段階
で溶融重合させて製造することが好ましい。溶融重合を複数の反応器で実施する理由は、
溶融重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速
度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制してやることが重要であり、溶融重合反応後期に
おいては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留
去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するに
は、直列に配置された複数の反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。前記
反応器は、上述の通り、少なくとも2つ以上であればよいが、生産効率などの観点からは
、3つ以上、好ましくは3~5つ、特に好ましくは、4つである。
反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの
方法でもよい。
更には、留出するモノマーの量を抑制するために、重合反応器に還流冷却器を用いるこ
とは有効であり、特に未反応モノマー成分が多い重合初期の反応器でその効果は大きい。
還流冷却器に導入される冷媒の温度は使用するモノマーに応じて適宜選択することができ
るが、通常、還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において45~1
80℃であり、好ましくは80~150℃、特に好ましくは100~130℃である。還
流冷却器に導入される冷媒の温度が高すぎると還流量が減り、その効果が低下し、低すぎ
ると、本来留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。冷媒とし
ては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
重合速度を適切に維持し、モノマーの留出を抑制しながら、最終的に得られるポリカー
ボネート樹脂(A)の色相や熱安定性、耐光性等を損なわないようにするためには、前述
の触媒の種類と量の選定が重要である。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の製造にあたっては、前記反応器が2つ以上であ
れば、その反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数持たせる、連続的に温度・圧力
を変えていく、などしてもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の製造において、触媒は原料調製槽、原料貯槽に
添加することもできるし、反応器に直接添加することもできるが、供給の安定性、溶融重
合の制御の観点からは、反応器に供給される前の原料ラインの途中に触媒供給ラインを設
置し、好ましくは水溶液で供給する。
重合条件としては、重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、
重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ま
しいが、各分子量段階でのジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択すること
が、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相や耐光性の観点から重要である。例えば
、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎる
と、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を狂わせ
、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったり
して結果的に本発明の目的を達成することができない可能性がある。
エステル交換反応の温度は、低すぎると生産性の低下や製品への熱履歴の増大を招き、
高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、ポリカーボネート樹脂(A)の分解や着色
を助長する可能性がある。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の製造において、ジヒドロキシ化合物(1)を含
むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを触媒の存在下、エステル交換反応させる方法
は、通常、2段階以上の多段工程で実施される。具体的には、第1段目のエステル交換反
応温度(以下、「内温」と称する場合がある)は好ましくは140℃以上、より好ましく
は150℃以上、さらに好ましくは180℃以上、さらにより好ましくは200℃以上で
あることがよい。また、第1段目のエステル交換反応温度は、好ましくは270℃以下、
より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは230℃以下、さらにより好ましくは2
20℃以下であることがよい。第1段目のエステル交換反応における滞留時間は通常0.
1~10時間、好ましくは0.5~3時間であり、第1段目のエステル交換反応は、発生
するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。第2段目以降はエステ
ル交換反応温度を上げていき、通常、210~270℃、好ましくは220~250℃の
温度でエステル交換反応を行い、同時に発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除き
ながら、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げながら最終的には反応系の圧力が
200Pa以下となるように、通常0.1~10時間、好ましくは0.5~6時間、特に
好ましくは1~3時間重縮合反応が行われる。
エステル交換反応温度が過度に高いと、成形品としたときに色相が悪化し、脆性破壊し
やすい可能性がある。エステル交換反応温度が過度に低いと、目標とする分子量が上がら
ず、また、分子量分布が広くなり、衝撃強度が劣る場合がある。また、エステル交換反応
の滞留時間が過度に長いと、脆性破壊しやすい場合がある。滞留時間が過度に短いと、目
標とする分子量が上がらず衝撃強度が劣る場合がある。
副生したモノヒドロキシ化合物は、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行った
後、炭酸ジエステルや、各種ビスフェノール化合物の原料として再利用することが好まし
い。
特にポリカーボネート樹脂(A)の着色や熱劣化あるいはヤケを抑制し、衝撃強度が高
い良好なポリカーボネート樹脂(A)を得るには、全反応段階における反応器内温の最高
温度が255℃未満、より好ましくは250℃以下、特に225~245℃であることが
好ましい。また、重合反応後半の重合速度の低下を抑止し、熱履歴によるポリカーボネー
ト樹脂(A)の熱劣化を最小限に抑えるために、反応の最終段階でプラグフロー性と界面
更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
また、衝撃強度の高いポリカーボネート樹脂(A)を企図し、分子量の高いポリカーボ
ネート樹脂(A)を得るため、出来るだけ重合温度を高め、重合時間を長くする場合があ
るが、この場合には、ポリカーボネート樹脂(A)中の異物やヤケが発生し、脆性破壊し
やすくなる傾向にある。よって、衝撃強度が高くすることと脆性破壊をしにくくすること
の双方を満足させるためには、重合温度を低く抑え、重合時間短縮のための高活性触媒の
使用、適正な反応系の圧力設定等の調整を行なうことが好ましい。更に、反応の途中ある
いは反応の最終段階において、フィルター等により反応系で発生した異物やヤケ等を除去
することも脆性破壊をしにくくするために好ましい。
なお、前記式(6)で表される炭酸ジエステルとして、ジフェニルカーボネート、ジト
リルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートを用いてポリカーボネート樹脂(A)
を製造する場合は、フェノール、置換フェノールが副生し、ポリカーボネート樹脂(A)
中に残存することは避けられないが、フェノール、置換フェノールも芳香環を有すること
から紫外線を吸収し、耐光性の悪化要因になる場合があるだけでなく、成形時の臭気の原
因となる場合がある。ポリカーボネート樹脂(A)中には、通常のバッチ反応後は100
0重量ppm以上の副生フェノール等の芳香環を有する芳香族モノヒドロキシ化合物が含
まれているが、耐光性や臭気低減の観点からは、脱揮性能に優れた横型反応器や真空ベン
ト付の押出機を用いて、ポリカーボネート樹脂(A)中の芳香族モノヒドロキシ化合物の
含有量を好ましくは700重量ppm以下、更に好ましくは500重量ppm以下、特に
は300重量ppm以下にすることが好ましい。ただし、芳香族モノヒドロキシ化合物を
工業的に完全に除去することは困難であり、ポリカーボネート樹脂(A)中の芳香族モノ
ヒドロキシ化合物の含有量の下限は通常1重量ppmである。尚、これら芳香族モノヒド
ロキシ化合物は、用いる原料により、当然置換基を有していてもよく、例えば、炭素数が
5以下であるアルキル基等を有していてもよい。
また、1族金属、中でもリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、特にはナトリウ
ム、カリウム、セシウムは、使用する触媒からのみではなく、原料や反応装置から混入す
る場合があるが、これらの金属がポリカーボネート樹脂(A)中に多く含まれると色相に
悪影響を及ぼす可能性があるため、本発明のポリカーボネート樹脂(A)中のこれらの化
合物の合計の含有量は、少ない方が好ましく、ポリカーボネート樹脂(A)中の金属量と
して、通常1重量ppm以下、好ましくは0.8重量ppm以下、より好ましくは0.7
重量ppm以下である。
なお、ポリカーボネート樹脂(A)中の金属量は、従来公知の種々の方法により測定可
能であるが、湿式灰化等の方法でポリカーボネート樹脂(A)中の金属を回収した後、原
子発光、原子吸光、Inductively Coupled Plasma(ICP)
等の方法を使用して測定することが出来る。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、上述の通り溶融重合後、通常、冷却固化させ
、回転式カッター等でペレット化される。
ペレット化の方法は限定されるものではないが、例えば、最終重合反応器からポリカー
ボネート樹脂(A)を溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット
化させる方法、最終重合反応器から溶融状態で一軸又は二軸の押出機に樹脂を供給し、溶
融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応器から溶融
状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一
軸又は二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させ
る方法等が挙げられる。
その際、押出機中で、残存モノマーの減圧脱揮や、通常知られている、熱安定剤、中和
剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難
燃剤等を添加、混練することも出来る。
押出機中の、溶融混練温度は、ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度や分子量
に依存するが、通常150~300℃、好ましくは200~270℃、更に好ましくは2
30~260℃である。溶融混練温度が150℃より低いと、ポリカーボネート樹脂(A
)の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高
いと、ポリカーボネートの熱劣化が激しくなり、分子量の低下による機械的強度の低下や
、着色、ガスの発生、異物の発生、更にはヤケの発生を招く。前記異物やヤケの除去のた
めのフィルターは該押出機中あるいは押出機出口に設置することが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)を溶融重合法で製造する際に、着色を防止する目
的で、リン酸化合物や亜リン酸化合物の1種又は2種以上を重合時に添加することができ
る。
リン酸化合物としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸トリアルキル
の1種又は2種以上が好適に用いられる。これらは、反応に供する全ヒドロキシ化合物に
対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、更に好
ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することが好ましい。リン化
合物の添加量が前記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、前記上限より多いと、透
明性が低下する原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりする。
また、亜リン酸化合物としては、下記に示す熱安定剤を任意に選択して使用できる。特
に、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、トリスノニルフェニルホスファイト、ト
リメチルホスフェート、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト
、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
の1種又は2種以上が好適に使用できる。これらの亜リン酸化合物は、反応に供する全ヒ
ドロキシ化合物に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが
好ましく、更に好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することが
好ましい。亜リン酸化合物の添加量が前記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、前
記上限より多いと、透明性が低下する原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性
を低下させたりすることもある。
上記のリン酸化合物と亜リン酸化合物は併用して添加することもできるが、その場合の
添加量は、リン酸化合物と亜リン酸化合物の総量で、反応に供する全ヒドロキシ化合物に
対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下とすることが好ましく、更に好ま
しくは0.0003モル%以上0.003モル%以下である。この添加量が前記下限より
少ないと、着色防止効果が小さく、前記上限より多いと、透明性が低下する原因となった
り、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
また、このようにして製造されたポリカーボネート樹脂(A)には、成形時等における
分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤の1種又は2種以上が配合されてい
てもよい。
かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸、及びこれら
のエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェ
ニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、
トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、
ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロ
ピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェ
ニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert
-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレ
ンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニル
フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル
ェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホ
スファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェー
ト、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチル
ホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’-ビフ
ェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、ベンゼ
ンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等
が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート
、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-
tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-
tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びベ
ンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。
かかる熱安定剤は、溶融重合時に添加した添加量に加えて更に追加で配合することがで
きる。即ち、適当量の亜リン酸化合物やリン酸化合物を配合して、ポリカーボネート樹脂
(A)を得た後に、後に記載する配合方法で、更に亜リン酸化合物を配合すると、重合時
の透明性の低下、着色、及び耐熱性の低下を回避して、更に多くの熱安定剤を配合でき、
色相の悪化の防止が可能となる。
これらの熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0
.0001~1重量部が好ましく、0.0005~0.5重量部がより好ましく、0.0
01~0.2重量部が更に好ましい。
<ポリカーボネート樹脂(A)の物性>
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の好ましい物性について、以下に示す。
(ガラス転移温度)
本発明のポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されない
が、155℃以下であることが好ましい。より好ましくは145℃以下、さらに好ましく
は135℃以下である。
また、本発明のポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は90℃以上が好ましく
、より好ましくは95℃以上である。
ガラス転移温度が上記範囲内である場合には、ポリカーボネート樹脂(A)を含む樹脂
組成物の耐熱性により優れる。
ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は、例えば樹脂の共重合モノマーに由来
する構造単位の組成、比率等を変更することで適宜調整することができる。樹脂のガラス
転移温度は、例えば後述の方法で測定することができる。
(還元粘度)
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の重合度は、溶媒としてフェノールと1,1,2
,2,-テトラクロロエタンの重量比1:1の混合溶媒を用い、ポリカーボネート樹脂(
A)濃度を1.00g/dlに精密に調整し、温度30.0℃±0.1℃で測定した還元
粘度(以下、単に「還元粘度」と記す場合がある。)として、好ましくは0.40dl/
g以上、更に好ましくは0.42dl/g以上、特に好ましくは0.45dl/g以上で
あるが、本発明の熱可塑性樹脂組成物の用途によっては、0.60dl/g以上、更には
0.85dl/g以上のものが好適に用いられる場合がある。また、本発明のポリカーボ
ネート樹脂(A)の還元粘度は、好ましくは2.0dl/g以下、更に好ましくは1.7
dl/g以下、特に好ましくは1.4dl/g以下である。ポリカーボネート樹脂(A)
の還元粘度が過度に低いと、機械的強度が弱くなる場合があり、ポリカーボネート樹脂(
A)の還元粘度が過度に高いと、成形する際の流動性が低下し、サイクル特性を低下させ
、成形品の歪みが大きくなり熱により変形し易い傾向がある。
[変性シリコーン系化合物(B)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、末端及び/又は側鎖にポリエーテルに由来す
る構成単位(b)を含む変性シリコーン系化合物(B)を含有する。本発明のポリカーボ
ネート樹脂組成物において、変性シリコーン系化合物(B)は主に耐擦傷性の向上に寄与
する。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、前記ポリカーボネート樹脂(A)の有する構
造単位(a)中のエーテル基部位と、変性シリコーン系化合物(B)の有するポリエーテ
ル基とが相互作用することで、ポリカーボネート樹脂(A)と変性シリコーン系化合物(
B)の相溶性が向上し、樹脂組成物の透明性が向上すると考えられる。
以上の理由から、本発明の変性シリコーン系化合物(B)は、末端及び/又は側鎖にポ
リエーテルに由来する構成単位を含むことが重要であり、その限りで具体的な構造は特に
限定されないが、変性シリコーン系化合物(B)の有するポリエーテルに由来する構成単
位(b)は、下記式(2)で表されるものであることが好ましい。
*-(A-O)n-(B-O)m-R (2)
前記式(2)中A及びBは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキレン基、又
は糖誘導体由来の2価の基である。Rは、水素原子、又は置換されていてもよい炭素数
1~30の1価の炭化水素基である。n及びmは、それぞれ独立に1以上の整数である。
*はケイ素原子に結合する部位を表す。
前記式(2)中A及びBは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキレン基、又
は糖誘導体由来の2価の基である。置換されていてもよいアルキレン基としては、特に限
定されないが、炭素数1~20であることが好ましい。炭素数2~10であることがより
好ましく、炭素数2~6であることがさらにより好ましい。このようなアルキレン基の例
としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
置換されていてもよいアルキレン基に置換してもよい置換基としては、特に限定されな
いが、水酸基、炭素数1~14の炭化水素基、炭素数1~10のアシル基、炭素数1~1
0のアルコキシ基、炭素数3~14のアリールオキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ
基、シリル基、スルフィニル基、スルホ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基
、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。これらのうち、置換基としては水
酸基であることがより好ましい。この場合には、ポリカーボネート樹脂(A)との相溶性
により優れる。
炭素数1~14の炭化水素基としては、具体的には、炭素数1~14のアルキル基、炭
素数2~14のアルケニル基、炭素数2~14のアルキニル基、炭素数3~14のアリー
ル基が挙げられる。炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピ
ル基、イソプロピル基、ブチル基が挙げられる。炭素数2~14のアルケニル基としては
、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数2~14のアルキニル基として
は、アセチレン基、プロピニル基が挙げられる。炭素数3~14のアリール基としては、
フェニル基、トリル基、ナフチル基が挙げられる。
炭素数1~10のアシル基としては、アセチル基が挙げられる。炭素数1~10のアル
コキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が挙げられる。炭素数3~1
4のアリールオキシ基としては、フェノキシ基が挙げられる。炭素数1~10のアシルオ
キシ基としては、メトキシアセチル基、フェノキシアセチル基が挙げられる。シリル基と
しては、トリメチルシリル基が挙げられる。スルホ基としては、スルホ基、メチルスルホ
ニル基、エチルスルホニル基が挙げられる。スルフィニル基としては、メチルスルフィニ
ル基、エチルスルフィニル基が挙げられる。アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エ
チルチオ基が挙げられる。アリールチオ基としては、フェニルチオ基が挙げられる。アミ
ノ基としては、アミノ基、ジメチルアミノ基が挙げられる。
A及びBは、それぞれ異なっていても同一であってもよい。
糖誘導体由来の2価の基としては、グルコースに由来する2価の基、マルトースに由来
する2価の基、ガラクトースに由来する2価の基、リボースに由来する2価の基、アラビ
ノースに由来する2価の基、キシロースに由来する2価の基、フルクトースに由来する2
価の基等が挙げられる。
これらのうち、得られる樹脂組成物の耐擦傷性及び透明性により優れるという観点から
は、Aが無置換のエチレン基で、Bが無置換のプロピレン基である組合せ、又はAとBが
いずれも2-ヒドロキシプロピレン基(すなわち、置換基として水酸基を有するプロピレ
ン基)である組合せであることが特に好ましい。後者の場合は、ポリエーテルに由来する
構成単位がポリグリセロール基であることと同義である。
前記式(2)中、Rは水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1~30の1価の
炭化水素基である。置換されていてもよい炭素数1~30の1価の炭化水素基としては、
アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素置換アルキル基、アミノ置換アルキル基
、カルボキシ置換アルキル基、又はエポキシ置換アルキル基が好適に挙げられる。この中
でも、水素原子又は炭素数1~30のアルキル基がより好ましく、水素原子又は炭素数1
~10のアルキル基がより好ましく、特に水素原子又はメチル基が好ましい。
m、nは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。2以上が好ましい。上限は通常50
であり、30以下が好ましく、20以下がより好ましい。
前記変性シリコーン系化合物(B)は前述のように末端及び/又は側鎖にポリエーテル
に由来する構成単位(b)を有していれば特に限定されないが、下記式(3)で表される
ジオルガノシロキサン構造を含むオルガノポリシロキサンであることが耐擦傷性の観点か
ら好ましい。
Figure 2022149758000005
前記式(3)において、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数
1~30の1価の炭化水素基である。炭素数1~30の炭化水素基としては、具体的には
、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアル
キニル基、炭素数3~30のアリール基が挙げられる。炭素数1~30のアルキル基とし
ては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基が挙げられる。炭素
数2~30のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭
素数2~30のアルキニル基としては、アセチレン基、プロピニル基が挙げられる。炭素
数3~30のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基が挙げられる。R
、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~30のアルキル基がより好ましく、炭素数1~
10のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。これらは同一であっても
異なっていてもよいが、入手が容易という点では、同一であることが好ましい。
置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基に置換してもよい置換基としては、
特に限定されないが、水酸基、炭素数1~14の炭化水素基、炭素数1~10のアシル基
、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数3~14のアリールオキシ基、炭素数1~10
のアシルオキシ基、シリル基、スルフィニル基、スルホ基、アルキルチオ基、アリールチ
オ基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
炭素数1~14の炭化水素基としては、具体的には、炭素数1~14のアルキル基、炭
素数2~14のアルケニル基、炭素数2~14のアルキニル基、炭素数3~14のアリー
ル基が挙げられる。炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピ
ル基、イソプロピル基、ブチル基が挙げられる。炭素数2~14のアルケニル基としては
、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数2~14のアルキニル基として
は、アセチレン基、プロピニル基が挙げられる。炭素数3~14のアリール基としては、
フェニル基、トリル基、ナフチル基が挙げられる。
炭素数1~10のアシル基としては、アセチル基が挙げられる。炭素数1~10のアル
コキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が挙げられる。炭素数3~1
4のアリールオキシ基としては、フェノキシ基が挙げられる。炭素数1~10のアシルオ
キシ基としては、メトキシアセチル基、フェノキシアセチル基が挙げられる。シリル基と
しては、トリメチルシリル基が挙げられる。スルホ基としては、スルホ基、メチルスルホ
ニル基、エチルスルホニル基が挙げられる。スルフィニル基としては、メチルスルフィニ
ル基、エチルスルフィニル基が挙げられる。アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エ
チルチオ基が挙げられる。アリールチオ基としては、フェニルチオ基が挙げられる。アミ
ノ基としては、アミノ基、ジメチルアミノ基が挙げられる。
前述の通り、R及びRは置換基を有していてもよいが、耐擦傷性及び透明性に優れ
るという観点からは、いずれも置換されていないことが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いる変性シリコーン系化合物(B)は、シロ
キサン鎖が分岐していてもよく、分岐しないものであってもよい。シロキサン鎖が分岐す
る場合には、変性シリコーン系化合物(B)における末端とは、主鎖となるシロキサン鎖
の末端と分岐鎖となるシロキサン鎖の末端のいずれをも包含する概念であり、変性シリコ
ーン系化合物(B)における側鎖とは、主鎖となるシロキサン鎖の側鎖と、分岐鎖となる
シロキサン鎖の側鎖のいずれをも包含する概念となる。尚、本明細書において、分岐シロ
キサン鎖を有しないオルガノポリシロキサンを、直鎖型オルガノポリシロキサン、分岐シ
ロキサン鎖を有するオルガノポリシロキサンを分岐型オルガノポリシロキサンと称する場
合がある。
変性シリコーン系化合物(B)は、下記式(4)で表されるオルガノポリシロキサンで
あることが好ましい。この場合には、得られる樹脂組成物の耐擦傷性及び透明性により優
れる。
Figure 2022149758000006
前記式(4)において、X、Y、β、γは、それぞれ独立に、0~500の整数である
。R、R、Rはそれぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~30の1価の炭
化水素基である。Rは直接結合、又は置換されていてもよい炭素数1~15の2価の炭
化水素基である。αは0~10の整数である。Zは、2価の連結基である。E~E
、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~30の1価の炭化水素基、又はポリ
エーテルに由来する構成単位であり、E~Eのうち、少なくとも1つはポリエーテル
に由来する構成単位である。
前記式(4)で表されるオルガノポリシロキサンは、例えば以下に示す(i)~(iv
)から選択されることがより好ましい。
(i)側鎖にポリエーテルに由来する構成単位を有するオルガノポリシロキサン
Figure 2022149758000007
式(i)は、前記式(4)において、E、E、Eが、それぞれ独立に、置換されてい
てもよい炭素数1~30の1価の炭化水素基である場合を示す。式(i)の場合において、
X、Y、β、γは、それぞれ独立に、0~500の整数である。R、R、R、R
、R、Rはそれぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~30の1価の炭化水素
基である。Rは直接結合、又は置換されていてもよい炭素数1~15の2価の炭化水素
基である。αは0~10の整数である。Zは、2価の連結基である。E、Eは、それ
ぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~30の1価の炭化水素基、又はポリエーテ
ルに由来する構成単位であり、E、Eのうち、少なくとも1つはポリエーテルに由来
する構成単位である。EとEのうち、Eのみがポリエーテルに由来する構成単位で
ある場合には、Yは1~500の整数である。EとEのうち、Eのみがポリエーテ
ルに由来する構成単位である場合には、αは1~10の整数であり、かつγは1~500
の整数である。
(ii)片末端にポリエーテルに由来する構成単位を有するオルガノポリシロキサン
Figure 2022149758000008
式(ii)は、前記式(4)において、Y及びγが0であり、E、Eが、それぞれ独立に
、置換されていてもよい炭素数1~30の1価の炭化水素基である場合を示す。式(ii)の
場合において、X、βは、それぞれ独立に、1~500の整数である。R、R、R
、R、Rはそれぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~30の1価の炭化水素
基である。Rは直接結合、又は置換されていてもよい炭素数1~15の2価の炭化水素
基である。αは0~10の整数である。Zは、2価の連結基である。E4は、ポリエーテ
ルに由来する構成単位である。
(iii)両末端にポリエーテルに由来する構成単位を有するオルガノポリシロキサン
Figure 2022149758000009
式(iii)は、前記式(4)において、Yが0であり、α、β、及びγが0、すなわち分岐
シロキサン鎖がない直鎖型オルガノポリシロキサンであり、E、Eが、それぞれ独立
に、置換されていてもよい炭素数1~30の1価の炭化水素基である場合を示す。式(iii
)の場合において、Xは、1~500の整数である。R、Rはそれぞれ独立に、置換
されていてもよい炭素数1~30の1価の炭化水素基である。E、Eは、それぞれ独
立に、ポリエーテルに由来する構成単位である。
(iv)側鎖及び両末端にポリエーテルに由来する構成単位を有するオルガノポリシロ
キサン
Figure 2022149758000010
式(iv)は、前記式(4)において、α、β、及びγが0、すなわち分岐シロキサン鎖がな
い直鎖型オルガノポリシロキサンである場合を示す。式(iv)の場合において、X、Yは、
それぞれ独立に、1~500の整数である。R、Rはそれぞれ独立に、置換されてい
てもよい炭素数1~30の1価の炭化水素基である。E、E3、Eは、それぞれ独立
に、ポリエーテルに由来する構成単位である。
前記式(4)、及び式(i)~(iv)において、X、Y、α、β、及びγは、それぞ
れ独立に、0~500の整数である。X、Y、α、β、γは、0≦X+Y+(β+γ)×
α≦500の関係を満たすものであることが好ましい。前記式(4)、及び式(i)~(
iv)において、X、Y、α、β、及びγは、前記式(4)、及び式(i)~(iv)で
表されるオルガノポリシロキサンが末端及び/又は側鎖に少なくとも1つのポリエーテル
に由来する構成単位を有するものであるように、適宜選択される。
前記式(4)、及び式(i)~(iv)において、R~Rはそれぞれ独立に、置換
されていてもよい炭素数1~30の1価の炭化水素基である。R~Rの詳細は、前記
式(4)中のR及びRについて述べたものと同じである。R~Rは炭素数1~3
0のアルキル基がより好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、特にメチ
ル基が好ましい。これらは同一であっても異なっていてもよいが、入手が容易という点で
は、同一であることが好ましい。
前記式(4)、及び式(i)~(iv)において、Rは直接結合、又は置換されてい
てもよい炭素数1~15の2価の炭化水素基である。置換されていてもよい炭素数1~1
5の2価の炭化水素基としては、炭素数1~15のアルキレン基、炭素数1~15のアル
ケニレン基が挙げられる。置換されていてもよい炭素数1~15の2価の炭化水素基が有
していてもよい置換基は、前記式(4)中のR及びRについて述べたものと同じであ
る。
前記式(4)、及び式(i)~(iv)において、Zは、2価の連結基である。Zとし
ては、酸素原子であることが好ましい。
前記式(4)において、E~Eは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数
1~30の1価の炭化水素基、又はポリエーテルに由来する構成単位であり、E~E
のうち、少なくとも1つはポリエーテルに由来する構成単位である。置換されていてもよ
い炭素数1~30の1価の炭化水素基の詳細は、前記式(4)中のR及びRについて
述べたものと同じである。ポリエーテルに由来する構成単位としては、前記式(2)で表
されるものであることが好ましい。この場合には、樹脂組成物の透明性に特に優れる。
変性シリコーン系化合物(B)としては、耐擦傷性及び透明性により優れるという観点
からは、前記式(i)、(iii)、及び(iv)からなる群より選ばれる1種以上のオルガノ
ポリシロキサンであることがより好ましい。すなわち、変性シリコーン系化合物(B)は
側鎖にポリエーテルに由来する構造単位を有する直鎖型オルガノポリシロキサン、側鎖に
ポリエーテルに由来する構造単位を有する分岐型オルガノポリシロキサン、両末端にポリ
エーテルに由来する構造単位を有する直鎖型オルガノポリシロキサン、及び、両末端及び
側鎖にポリエーテルに由来する構造単位を有する直鎖型オルガノポリシロキサンからなる
群より選ばれる1種以上のオルガノポリシロキサンであることがより好ましい。
このような変性リコーン化合物としては、例えば、信越化学工業社製ポリエーテル変性
シリコーンオイル KF6011、KF6004、ポリグリセリル変性シリコーンオイル
KF6100を挙げられる。
変性シリコーン系化合物(B)は、HLB値が5以上であることが好ましい。この場合
には、ポリカーボネート樹脂(A)と変性シリコーン系化合物(B)の相溶性がより高ま
るため、透明性にさらに優れたポリカーボネート樹脂組成物が得られる。同様の観点から
、HLB値は、6以上がより好ましく、7以上が特に好ましい。HLB値の上限は通常2
0であり、耐水性の観点から16以下が好ましく、13以下が特に好ましい。変性シリコ
ーン系化合物(B)のHLB値は、後述の方法により算出される。
[ポリカーボネート樹脂組成物]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、前述の通り、ポリカーボネート樹脂(A)と
変性シリコーン系化合物(B)とを少なくとも有する。
変性シリコーン系化合物(B)の含有量は、特に限定されないが、前記ポリカーボネー
ト樹脂(A)100重量部に対し、0.01~5重量部であることが好ましい。変性シリ
コーン系化合物(B)の含有量が上記範囲内である場合には、樹脂組成物の耐擦傷性及び
透明性により優れる傾向がある。同様の観点から、0.05~4重量部であることがより
好ましく、0.1~3重量部であることが特に好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、以下に示す各種添加剤をさらに含有していて
もよい。
・紫外線吸収剤(C)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。
紫外線吸収剤としては、紫外線吸収能を有する化合物であれば特に限定されない。本実
施の形態では、紫外線吸収能を有する化合物としては、有機化合物、無機化合物が挙げら
れる。なかでも有機化合物はポリカーボネート樹脂との親和性を確保しやすく、均一に分
散しやすいので好ましい。
紫外線吸収能を有する有機化合物の分子量は特に限定されないが、通常200以上、好
ましくは250以上である。また。通常600以下、好ましくは450以下、より好まし
くは400以下である。分子量が過度に小さいと、長期間使用での耐紫外線性能の低下を
引き起こす可能性がある。分子量が過度に大きいと、長期間使用での樹脂組成物の透明性
低下を引き起こす可能性がある。
好ましい紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合
物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、サリチル酸フェニルエステル系化合物
、シアノアクリレート系化合物、マロン酸エステル系化合物、シュウ酸アニリド系化合物
等が挙げられる。なかでも、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系
化合物、マロン酸エステル系化合物が好ましく用いられる。これらは、単独で用いても、
2種以上で用いてもよい。
ベンゾトリアゾール系化合物のより具体的な例としては、2-(2’-ヒドロキシ-3
’-メチル-5’-ヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-
3’-t-ブチル-5’-ヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロ
キシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロ
キシ-3’-メチル-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-
ヒドロキシ-5’-t-ドデシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキ
シ-3’-メチル-5’-t-ドデシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒ
ドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル-3-(3-(2H
-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピ
オネート等が挙げられる。
ヒドロキシベンゾフェノン系化合物としては、2,2’-ジヒドロキシベンゾフェノン
、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクト
キシベンゾフェノン等が挙げられる。
マロン酸エステル系化合物としては、2-(1-アリールアルキリデン)マロン酸エス
テル類、テトラエチル-2,2‘-(1,4-フェニレン-ジメチリデン)-ビスマロネ
ートなどが挙げられる。
トリアジン系化合物としては、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプ
ロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニ
ル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2
-ヒドロキシ-4-イソオクチルオキシフェニル)-s-トリアジン、2-(4,6-ジ
フェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノ
ール(チバガイギー社製、Tinuvin1577FF)などが挙げられる。
シアノアクリレート系化合物としては、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアク
リレート、2’-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等が挙
げられる。
シュウ酸アニリド系化合物としては、2-エチル-2’-エトキシ-オキサルアニリド
(クラリアントジャパン社製、SanduvorVSU)等が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.01重量部
以上が好ましく、0.05重量部以上が更に好ましい。一方、5重量部以下が好ましく、
3重量部以下がより好ましく、1重量部以下が更に好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上
記範囲内である場合には、耐候性向上の効果により優れ、一方で紫外線吸収剤のブリード
アウトによる外観不良が生ずるおそれがない。
・光安定剤(D)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、光安定剤(D)を含有することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いられる光安定剤(D)としては、例えばビ
ス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6
,6-テトラメチル-4-ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6-テトラメ
チル-4-ピペリジル)セバケート、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメ
チルピペリジン、4-オクタノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、
ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ジフェニルメタン-p,p’-
ジカーバメート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ベンゼン-1
,3-ジスルホネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)フェニ
ルホスファイト等のヒンダードアミン類があげられる。これらの剤は単独で使用しても2
種以上を併用してもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物はポリカーボネート樹脂100重量部に対して光
安定剤(D)を0.001以上~5重量部含有することが好ましい。光安定剤の含有量は
、より好ましくは0.005重量部~1重量部、特に好ましくは0.01重量部~0.5
重量部である。
光安定剤(D)の含有量が上記範囲内である場合には、耐候性試験時の変色が十分に抑
制できる。また射出成型時における金型への付着物が多くなったりすることにより製品の
表面外観が損なわれるおそれがない。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、以下詳述のコアシェル構造を有するエラスト
マー(E)を含有してもよい。
・コアシェル構造を有するエラストマー(E)
「コア・シェル構造を有するエラストマー」とは最内層(コア層)とそれを覆う1以上
の層(シェル層)から構成され、コア層に対して共重合可能な単量体成分をシェル層とし
てグラフト共重合したコア・シェル型グラフト共重合体である。
コア・シェル構造を有するエラストマーは、通常、ゴム成分と呼ばれる重合体成分をコ
ア層とし、これと共重合可能な単量体成分をシェル層としてグラフト共重合したコア・シ
ェル型グラフト共重合体が好ましい。
このコア・シェル型グラフト共重合体の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁
重合、乳化重合などのいずれの製造方法であってもよく、共重合の方式は一段グラフトで
も多段グラフトであってもよい。但し、本発明の第2の態様においては通常、市販で入手
可能なコア・シェル型エラストマーをそのまま使用することができる。市販で入手可能な
コア・シェル型エラストマーの例は後に列挙する。
コア層を形成する重合体成分は、ガラス転移温度が通常0℃以下、中でも-10℃以下
が好ましく、-20℃以下がより好ましく、更には-30℃以下が好ましい。コア層を形
成する重合体成分の具体例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブチルアク
リレートやポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2-エチル
ヘキシルアクリレート共重合体などのポリアルキルアクリレート、ポリオルガノシロキサ
ンゴムなどのシリコーン系ゴム、ブタジエン-アクリル複合体、ポリオルガノシロキサン
ゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN(Interpenetrati
ng Polymer Network)型複合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、
エチレン-プロピレン共重合体やエチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合
体などのエチレン-αオレフィン系共重合体、エチレン-アクリル共重合体、フッ素ゴム
など挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。これ
らの中でも、機械的特性や表面外観の面から、ポリブタジエン、ポリアルキルアクリレー
ト、ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノシロキサンとポリアルキルアクリレートとか
らなる複合体、ブタジエン-スチレン共重合体が好ましい。
シェル層を構成する、コア層の重合体成分とグラフト共重合可能な単量体成分の具体例
としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化
合物、(メタ)アクリル酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有
(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニル
マレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β-不飽
和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)などが挙げられる。こ
れらの単量体成分は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、
機械的特性や表面外観の面から、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)
アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物が好ましく、より好ましくは(メ
タ)アクリル酸エステル化合物である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例とし
ては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチ
ル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられ、こ
れらの中でも比較的入手しやすい(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル
が好ましく、(メタ)アクリル酸メチルがより好ましい。ここで、「(メタ)アクリル」
とは「アクリル」と「メタクリル」とを総称するものである。
コア・シェル構造を有するエラストマーは、なかでもポリブタジエン含有ゴム、ポリブ
チルアクリレート含有ゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴム
とポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴムから選ばれる少なくとも1
種の重合体成分をコア層とし、その周囲に(メタ)アクリル酸エステルをグラフト共重合
して形成されたシェル層からなる、コア・シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。上
記コア・シェル型グラフト共重合体において、コア層の重合体成分を40重量%以上含有
するものが好ましく、60重量%以上含有するものがさらに好ましい。また、シェル層の
(メタ)アクリル酸エステル成分は、10重量%以上含有するものが好ましい。
これらコア・シェル型グラフト共重合体の好ましい具体例としては、メチルメタクリレ
ート-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート-アクリロニト
リル-ブタジエン-スチレン共重合体(MABS)、メチルメタクリレート-ブタジエン
共重合体(MB)、メチルメタクリレート-アクリルゴム共重合体(MA)、メチルメタ
クリレート-アクリルゴム-スチレン共重合体(MAS)、メチルメタクリレート-アク
リル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート-アクリル・ブタジエンゴム-ス
チレン共重合体、メチルメタクリレート-(アクリル・シリコーン複合体)共重合体等が
挙げられる。
このようなコア・シェル型グラフト共重合体としては、例えば、ローム・アンド・ハー
ス・ジャパン社製の「パラロイド(登録商標)EXL2602」、「パラロイド(登録商
標)EXL2603」、「パラロイド(登録商標)EXL2655」、「パラロイド(登
録商標)EXL2311」、「パラロイド(登録商標)EXL2313」、「パラロイド
(登録商標)EXL2315」、「パラロイド(登録商標)KM330」、「パラロイド
(登録商標)KM336P」、「パラロイド(登録商標)KCZ201」、三菱レイヨン
社製の「メタブレン(登録商標)C-223A」、「メタブレン(登録商標)E-901
」、「メタブレン(登録商標)S-2001」、「メタブレン(登録商標)W-450A
」「メタブレン(登録商標)SRK-200」、カネカ社製の「カネエース(登録商標)
M-511」、「カネエース(登録商標)M-600」、「カネエース(登録商標)M-
400」、「カネエース(登録商標)M-580」、「カネエース(登録商標)M-59
0」「カネエース(登録商標)M-591」「カネエース(登録商標)MR-01」等が
挙げられる。
これらのコア・シェル型グラフト共重合体等のコア・シェル構造からなる衝撃強度改質
剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物中のコア・シェル構造を有するエラストマーの含有量は、特に限定
されないが、ポリカーボネート樹脂組成物中、上記の成分(A)100重量部とした際に
、(E)コア・シェル構造を有するエラストマーの含有量が、0.1~100重量部であ
ることが好ましく、0.5重量部以上であることがより好ましく、1重量部以上であるこ
とが更に好ましく、5重量部以上であることが最も好ましい。一方、50重量部以下であ
ることがより好ましく、40重量部以下であることが更に好ましく、30重量部以下であ
ることが特に好ましく、25重量部以下であることが最も好ましい。また、ポリカーボネ
ート樹脂組成物中、上記の成分(A)および下記の成分(E)の合計100重量部とした
際に、(E)コア・シェル構造を有するエラストマーの含有量が、0.1~50重量部で
あることが好ましく、0.5重量部以上であることがより好ましく、1重量部以上である
ことが更に好ましく、5重量部以上であることが最も好ましい。一方、40重量部以下で
あることがより好ましく、30重量部以下であることが更に好ましく、25重量部以下で
あることが最も好ましい。コア・シェル構造を有するエラストマーの配合量が前記下限値
以上であることにより、耐面衝撃性、耐衝撃性の改良効果が発現する。一方、コア・シェ
ル構造を有するエラストマーの配合量が前記上限値以下であることにより、得られる成形
品の外観不良や耐熱性の低下を抑制することができる。
(その他の添加剤)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記の添加剤の他、本発明の目的を損なわな
い範囲で、周知の種々の添加剤、例えば、離型剤、滑材、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤
、加水分解抑制剤、帯電防止剤、発泡剤、充填剤、染顔料等を含有した樹脂組成物であっ
てもよい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては樹脂に使用される一般的な酸化防止剤が使用できるが、酸化安定性、
熱安定性、漆黒性等の観点から、ホスファイト系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、およ
びフェノール系酸化防止剤が好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に、酸化防止剤を添加する場合、その添加量は、
ポリカーボネート樹脂組成物中、(A)成分を100重量部とした際に、通常0.001
重量部以上が好ましく、より好ましくは0.002重量部以上、更に好ましくは0.00
5重量部以上であり、通常5重量部以下が好ましく、より好ましくは3重量部以下、更に
好ましくは2重量部以下である。
酸化防止剤の添加量が5重量部より多いと、成形時、金型を汚染し、優れた表面外観の
成形品が得られないことがある。一方、0.001重量部未満であると、耐候試験に対す
る十分な改良効果が得られない傾向がある。
<ホスファイト系酸化防止剤>
ホスファイト系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェ
ニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、
トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、
ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロ
ピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェ
ニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert
-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレ
ンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニル
フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル
フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジ
ホスファイト等が挙げられる。
これらの中でも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert
-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペン
タエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフ
ェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく使用される。
これらの化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<イオウ系酸化防止剤>
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオン酸エ
ステル、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル-3,3
’-チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオン酸エステ
ル、ラウリルステアリル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトー
ルテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3
-ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール-3-ステアリルチオプロピオネート、
ビス[2-メチル-4-(3-ラウリルチオプロピオニルオキシ)-5-tert-ブチ
ルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、
2-メルカプト-6-メチルベンズイミダゾール、1,1’-チオビス(2-ナフトール
)等が挙げられる。
これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート
)が好ましい。
これらの化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<フェノール系酸化防止剤>
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール-ビス[3-(3
-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6
-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェ
ニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-te
rt-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,
5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-ト
リメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジ
ル)ベンゼン、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート
-ジエチルエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル
)イソシアヌレート、4,4’-ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4-ジ-
tert-ブチルフェニル)、3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[β-(3-te
rt-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-
2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、2,6-ジ-tert-
ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール等の化
合物が挙げられる。
これらの化合物の中でも、炭素数5以上のアルキル基によって1つ以上置換された芳香
族モノヒドロキシ化合物が好ましく、具体的には、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t
ert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール-テ
トラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ
ート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-
ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス
(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が好ましく、ペ
ンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキ
シフェニル)プロピオネート]が更に好ましい。
これらの化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(着色剤)
着色剤としては、無機顔料、有機顔料及び有機染料等の有機染顔料が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロ
ム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛-鉄系ブラウン、銅-クロム系ブラック、銅-鉄系ブラ
ック等の酸化物系顔料;等が挙げられる。
有機顔料及び有機染料等の有機染顔料としては、例えば、フタロシアニン系染顔料;ア
ゾ系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イ
ソインドリノン系、キノフタロン系等の縮合多環染顔料;アンスラキノン系、ペリノン系
、ペリレン系、メチン系、キノリン系、複素環系、メチル系の染顔料;等が挙げられる。
これら着色剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記無機顔料、有機顔料及び有機染料等の有機染顔料の中でも、無機顔料が好ましい。
無機顔料を着色剤として使用することにより、成形品を屋外等で使用した場合でも鮮映性
等を長期間保持することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に着色剤を添加する場合、その添加量は、ポリカ
ーボネート樹脂組成物中、(A)成分と(B)成分の合計100重量部とした際に、通常
0.05質量部以上5質量部以下であり、好ましくは0.05質量部以上3質量部以下、
より好ましくは0.1質量部以上2質量部以下である。
着色剤の添加量が0.05質量部未満では鮮映性のある原着成形品を得難い。一方、5
質量部より多いと、成形品の表面粗さが大きくなり、鮮映性のある原着成形品を得難い。
本発明の着色されたポリカーボネート樹脂組成物は、例えば、漆黒調に調色した場合、
明度L*は、0.1以上10以下であることが好ましく、特に好ましくは、0.1以上6
以下である。また、光沢度は、85%以上が好ましく、88%以上が特に好ましい。
(無機充填材)
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、無機充填材を含有しても良い。無機
充填材の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、通常1重量部以上100
重量部以下であり、好ましくは3重量部以上50重量部以下である。無機充填材の配合量
が過度に少ないと補強効果が少なく、また、過度に多いと外観が悪くなる傾向がある。
無機充填材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク
、ガラスビーズ、炭素繊維、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸カルシウム粉体、石膏
、石膏ウィスカー、硫酸バリウム、タルク、マイカ、ワラストナイト等の珪酸カルシウム
;カーボンブラック、グラファイト、鉄粉、銅粉、二硫化モリブデン、炭化ケイ素、炭化
ケイ素繊維、窒化ケイ素、窒化ケイ素繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、チタン酸カリウ
ム繊維、ウィスカー等が挙げられる。これらの中でも、ガラスの繊維状充填材、ガラスの
粉状充填材、ガラスのフレーク状充填材;炭素の繊維状充填材、炭素の粉状充填材、炭素
のフレーク状充填材;各種ウィスカー、マイカ、タルクが好ましい。より好ましくは、ガ
ラス繊維、ガラスフレーク、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、ワラストナイト、マイ
カ、タルクが挙げられる。
<ポリカーボネート樹脂組成物の物性>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、以下の物性を有することが好ましい。
・全光線透過率
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、全光線透過率が80%以上であることが好ま
しい。この場合には、ポリカーボネート樹脂組成物の透明性により優れる。同様の観点か
ら、全光線透過率は85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に
好ましい。全光線透過率は、後述の方法により測定される。
・ヘーズ
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、室温におけるヘーズが10以下であることが
好ましい。この場合には、ポリカーボネート樹脂組成物の透明性により優れる。同様の観
点から、全光線透過率は5以下であることがより好ましく、2以下であることが特に好ま
しい。ヘーズは、後述の方法により測定される。
・シャルピー衝撃強度
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、シャルピー衝撃強度が1kJ/m以上であ
ることが好ましい。この場合には、ポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性により優れる
。同様の観点から、シャルピー衝撃強度は5kJ/mであることがより好ましく、10
kJ/m以上であることが特に好ましい。シャルピー衝撃強度は、後述の方法により測
定される。
<配合方法>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物への上述のような各種の添加剤等の配合方法とし
ては、例えばタンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バン
バリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合・混練する方法、或いは、例えば塩化メチ
レン等の共通の良溶媒に溶解させた状態で混合する溶液ブレンド方法等があるが、これは
特に限定されるものではなく、通常用いられるブレンド方法であればどのような方法を用
いてもよい。
こうして得られる本発明の熱可塑性樹脂組成物は、これに各種添加剤等が添加され、直
接に、或いは溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、押出成形法、射出成形法、圧縮成
形法等の通常知られている成形方法で、所望形状に成形することができる。
<ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法>
本発明の実施の形態において、ポリカーボネート樹脂組成物に配合することのできる、
紫外線吸収剤、光安定剤、片ヒンダードフェノール系酸化防止剤の、混合時期、および混
合方法は特に限定されない。混合時期としては、例えば、エステル交換法でポリカーボネ
ート樹脂を製造する場合は、重合反応中に混合してもよいし、重合反応終了時に混合して
もよい。また、重合法に関わらず、ポリカーボネート樹脂と他の配合剤との混練途中等の
、ポリカーボネート樹脂が溶融した状態の際に、混練押出機等を用いて混合しても構わな
い。更には、ペレットまたは粉末等の固体状態のポリカーボネート樹脂と配合剤とを混合
した混合物を、更に加熱混合しても構わない。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記の配合成分を同時に、または任意の順序
でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、
押出機等の混合機により混合して製造することができる。
混合方法としては、ポリカーボネート樹脂に上記の配合成分を直接混合または混練して
もよいし、予め少量のポリカーボネート樹脂または他の樹脂等と上記の配合成分を用いて
作成した高濃度のマスターバッチを作成し、当該マスターバッチを本発明に係るポリカー
ボネート樹脂と混合することもできる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限
り、以下の実施例により限定されるものではない。
以下において、ポリカーボネート樹脂組成物、成形品等の物性ないし特性の評価は次の
方法により行った。
[試験片の作成方法および各種評価]
・試験片の作成方法
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、窒素雰囲気下、90~100℃で10時間
乾燥した。次に、乾燥したポリカーボネート樹脂組成物のペレットを射出成形機(日本製
鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度240℃、成形サイクル40秒間の条件で
、射出成形片(幅100mm×長さ100mm×厚さ2mm)および機械物性評価用IS
O試験片を成形した。
・全光線透過率
上記試験片の作成方法にて作成された射出成形品を使用してJIS K7361に準拠
し、NDH-7000II(日本電色工業社製)を使用し、D65光源にて全光線透過率
を測定した。
・ヘーズ
上記試験片の作成方法にて作成された射出成形品を使用してJIS K7136に準拠
し、NDH-7000II(日本電色工業社製)を使用し、D65光源にてヘーズを測定
した。
・加熱時の透明性
上記試験片の作成法にて作成された射出成形片を60℃に加熱した熱風乾燥機に30分
間静置した後、外観を目視にて確認した。
〇:白化が観察されない。
△:わずかに白化が観察される。
×:白化がみられる。
・耐擦傷性
上記試験片の作成方法にて作成された射出成形品を使用して、新東科学株式会社性HE
IDONTYPE30Sを使用して行った。摩耗子としてはφ28mmホルダーに摩擦布
としてカナキン3号を取り付け荷重9.8N、ストローク50mm、速度6000mm/
分で100回往復行ったあとの外観を目視にて観察した。
〇:著しい傷がない
△:わずかに傷がみられる
×:傷がみられる
・シャルピー衝撃強度
上記で得られたISO試験片にノッチ先端半径0.25Rのノッチ入れを行い、ISO
-179に準拠してシャルピー衝撃強度を測定した。
以下の実施例の記載の中で用いた化合物の略号は次の通りである。
(ポリカーボネート樹脂)
A-1:イソソルビド/1,4-シクロヘキサンジメタノール=70/30mol%共重
合ポリカーボネート(三菱ケミカル社製:デュラビオ D7340R)
A-2:イソソルビド/1,4-シクロヘキサンジメタノール=50/50mol%共重
合ポリカーボネート(三菱ケミカル社製:デュラビオ D5360R)
A-3:イソソルビド/トリシクロデカンジメタノール=70/30mol%共重合ポリ
カーボネート(三菱ケミカル社製:デュラビオ T7430R)
A-4:ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック
社製 ユーピロンS3000R)
(変性シリコーン系化合物)
B-1:信越シリコーン社製 ポリエーテル変性シリコーンオイル KF6011
HLB=12 (ポリエーテル側鎖、直鎖型オルガノポリシロキサン)
B-2:信越シリコーン社製 ポリグリセリル変性シリコーンオイル KF6100
HLB=10 (ポリグリセリン側鎖、分岐型オルガノポリシロキサン)
B-3:信越シリコーン社製 ポリエーテル変性シリコーンオイル KF6004
HLB=5 (ポリエーテル両末端、直鎖型オルガノポリシロキサン)
B-4:信越シリコーン社製 フェニル変性シリコーンオイル X21-3265
HLB≒0 (フェニル側鎖、直鎖型オルガノポリシロキサン)
B-5:信越シリコーン社製 アラルキル変性シリコーンオイル KF-410
HLB≒1 (アラルキル側鎖、分岐型オルガノポリシロキサン)
B-6:信越シリコーン社製 アルキル変性シリコーンオイル KF-412
HLB≒0 (アルキル側鎖、分岐型オルガノポリシロキサン)
HLB値は以下の式により定義されるグリフィン法により求めることができる。
HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量
(紫外線吸収剤)
C-1:ベンゾトリアゾール系 ADEKA社製 アデカスタブLA-29
C-2:ベンゾフェノン系 ADEKA社製 アデカスタブLA-31
C-3:トリアジン系 ADEKA社製 アデカスタブLA-46
(光安定剤)
C-1:ヒンダードアミン系 ADEKA社製、アデカスタブLA-77G
C-2:ヒンダードアミン系 ADEKA社製 アデカスタブLA-57
(ゴム成分)
D-1:カネカ社製 アクリルゴム M590
[実施例1]
表-1に示した組成となるようにポリカーボネート樹脂(A-1)、変性シリコーンオ
イル(B-1)、紫外線吸収剤、光安定剤を混合し、1つのベント口を有する日本製鋼所
社製2軸押出機(TEX-33)を用いて、出口の樹脂温が250℃になるようにストラ
ンド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化した。この際、
ベント口は真空ポンプに連結し、ベント口での圧力が10~50kPaになるように制御
した。得られたポリカーボネート樹脂組成物を評価した結果を表-1に示す。
Figure 2022149758000011
[実施例2~7]
配合を表-1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹
脂組成物を得た。得られたポリカーボネート樹脂組成物を、実施例1と同様に評価した結
果を表-1に示す。
[比較例1~5]
配合を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂
組成物を得た。得られたポリカーボネート樹脂組成物を、実施例1と同様にして評価した
結果を表1に示す。
表1から理解される通り、特定の構成単位を有するポリカーボネート樹脂(A)と、特
定の構成単位を有する変性シリコーン系化合物(B)とを含有する実施例1~7は、透明
性、耐擦傷性に優れるとともに、高温条件下での透明性の悪化が抑制されている。シリコ
ーン系化合物を含有しない比較例1は耐擦傷性に劣る。特定の構成単位を有しない変性シ
リコーン系化合物を含有する比較例2-5のうち比較例2は耐擦傷性は改善されるものの
、加熱時の透明性に劣る。比較例3-5は耐擦傷性は改善されるものの透明性に劣る。特
定の構成単位を有しないポリカーボネート樹脂を使用した比較例5は、特定の構成単位を
有する変性シリコーン系化合物(B)を含有していても透明性が著しく損なわれている。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(a)を含むポリ
    カーボネート樹脂(A)と、末端及び/又は側鎖にポリエーテルに由来する構成単位(b
    )を有する変性シリコーン系化合物(B)を含む、ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2022149758000012
  2. 前記変性シリコーン系化合物(B)が有するポリエーテルに由来する構成単位(b)が、
    下記一般式(2)で表される、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    *-(A-O)n-(B-O)m-R (2)
    [式(2)中A及びBは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキレン基、又は糖
    誘導体に由来する2価の基である。Rは水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1
    ~30の1価の炭化水素基である。nとmは、それぞれ独立に、1以上の整数である。*
    はケイ素原子に結合する部位を表す。]
  3. 前記ポリカーボネート樹脂(A)が、さらに脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒド
    ロキシ化合物、および前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物以外のエーテル基含有
    ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる1種以上のジヒドロキシ化合物に由来する構
    成単位(a-2)を含む共重合ポリカーボネート樹脂である、請求項1又は2に記載のポ
    リカーボネート樹脂組成物。
  4. 前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、前記変性シリコーン系化合物(
    B)を0.01~5重量部含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリカーボネ
    ート樹脂組成物。
  5. 前記変性シリコーン系化合物(B)のHLB値が5以上である、請求項1~4のいずれ
    か1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 前記ポリカーボネート樹脂100重量部あたり(C)紫外線吸収剤0.01~5重量部
    及び/又は(D)光安定剤0.001~5重量部を含有する、請求項1~5のいずれか1
    項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  7. 前記ポリカーボネート樹脂100重量部あたり(E)エラストマー0.1~100重量
    部を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  8. 前記エラストマー(E)がコアシェル構造を有することを特徴とする請求項7に記載の
    ポリカーボネート樹脂組成物。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形
    品。
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