JP2022149015A - 光電変換素子及び発電デバイス - Google Patents

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【課題】有機無機ハイブリッド型半導体化合物を活性層として用いた光電変換素子において、その耐久性を向上させる光電変換素子を提供する。【解決手段】上部電極105と下部電極101とにより構成される一対の電極と、一対の電極間に位置し、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する活性層103と、を有する光電変換素子であって、正孔輸送能を有する有機半導体化合物が、上部電極と下部電極の少なくとも一方と活性層との間に位置し、正孔輸送能を有する有機半導体化合物が、塗布変換型材料であることを特徴とする、光電変換素子。【選択図】図1

Description

本発明は、光電変換素子及び発電デバイスに関する。
光電変換素子として、一対の電極の間に、活性層、及びバッファ層等が配置されたものが知られている。この光電変換効率の向上を目的として、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を活性層として用いることが検討されており、特に、ペロブスカイト構造を有する化合物が注目されている。
このような光電変換素子の正孔輸送層としては、有機半導体化合物等が使用されている。有機半導体化合物としては、積層に適し、高移動度であることから、ポリ(スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT:PSS)が一般的に用いられる。
また、特許文献1では、光電変換素子の耐久性を向上させるため、フタロシアニン系の有機半導体化合物を正孔輸送層に適用することが記載されている。
特開2017-066096号公報
しかし、既存材料のPEDOT:PSSは、酸性の官能基であるスルホニル基を有するため、活性層材料と酸化還元反応を起こしやすく、光電変換素子の性能低下を誘引するおそれがある。また、吸湿性・水溶性であるため、耐湿熱試験における維持率が低く、加水分解によりプロトンを産することなどにより積層デバイスの性能を損なうことが知られている。
上記の通り、既存材料を用いた場合、正孔輸送層の高移動度と化学的安定性の両立が困難であり、光電変換素子の耐久性に改善の余地があった。
本発明は、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を活性層として用いた光電変換素子において、その耐久性を向上させることを目的とする。
本発明者らは、正孔輸送層に、成膜後に結晶化・不溶化させることが可能な塗布変換型材料を用いることで、電荷移動度が高く、正孔輸送層を化学的に中性で堅牢なものとすることができ、光電変換素子の耐久性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の物を含む。
[1] 上部電極と下部電極とにより構成される一対の電極と、前記一対の電極間に位置し、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する活性層と、を有する光電変換素子であって、
正孔輸送能を有する有機半導体化合物が、前記上部電極と前記下部電極の少なくとも一方と前記活性層との間に位置し、
前記正孔輸送能を有する有機半導体化合物が、塗布変換型材料であることを特徴とする、光電変換素子。
[2] 前記塗布変換型材料が、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及び/又はこれらの金属錯体である、[1]に記載の光電変換素子。
[3] 前記有機無機ハイブリッド型半導体化合物が、ペロブスカイト構造を有する化合物である、ことを特徴とする、[1]又は[2]に記載の光電変換素子。
[4] 前記有機無機ハイブリッド型半導体化合物が、スズ元素を含むことを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載の光電変換素子。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の光電変換素子を有する、発電デバイス。
[6] フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及び/又はこれらの金属錯体からなる、ペロブスカイト型光電変換素子の正孔輸送層用、耐久性向上剤。
[7] ペロブスカイト型光電変換素子における、耐久性向上のための、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及び/又はこれらの金属錯体の正孔輸送層材料としての、使用。
本発明により、有機無機ハイブリッド半導体化合物を用いた光電変換素子において、その耐久性を向上させることができる。
一実施形態としての光電変換素子を模式的に表す断面図である。 一実施形態としての太陽電池を模式的に表す断面図である。 一実施形態としての太陽電池モジュールを模式的に表す断面図である。
本発明の一形態である光電変換素子は、上部電極と下部電極とにより構成される一対の電極と、前記一対の電極間に位置し、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する活性層と、を有する光電変換素子であって、
正孔輸送能を有する有機半導体化合物が、前記上部電極と前記下部電極の少なくとも一方と前記活性層との間に位置し、
前記正孔輸送能を有する有機半導体化合物が、塗布変換型材料であることを特徴とする、光電変換素子である。
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定はされない。
[1.一実施形態に係る光電変換素子]
図1は、本発明に係る光電変換素子の一実施形態を模式的に表す断面図である。図1に示される光電変換素子は、一般的な薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子であるが、本発明に係る光電変換素子が図1に示されるものに限られるわけではない。
図1に示す光電変換素子100においては、下部電極101、活性層103、及び上部電極105がこの順に配置されている。また、光電変換素子100において、下部電極101と活性層103との間に存在するバッファ層102は、有機半導体化合物を含有する正孔輸送層とすることができる。この場合、有機半導体化合物とともに、ドーパントをさらに含有させることもできる。もっとも、光電変換素子100が上部電極105と活性層103との間にバッファ層104を有していてもよく、この場合、このバッファ層104を上述の正孔輸送層とすることもできる。また、図1に示すように、光電変換素子100が、基材106を有していてもよく、絶縁体層、及び仕事関数チューニング層のようなその他の層を有していてもよい。
[2.電極]
電極は、活性層103における光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有する。本発明の一実施形態に係る光電変換素子100は一対の電極を有し、一対の電極のうち一方を上部電極と呼び、他方を下部電極と呼ぶ。光電変換素子100が基材を有するか又は基材上に設けられている場合、基材により近い電極を下部電極と、基材からより遠い電極を上部電極と、それぞれ呼ぶことができる。また、透明電極を下部電極と、下部電極よりも透明性が低い電極を上部電極と、それぞれ呼ぶこともできる。図1に示す光電変換素子100は、下部電極101及び上部電極105を有している。
一対の電極としては、正孔の捕集に適したアノードと、電子の捕集に適したカソードとを用いることができる。この場合、光電変換素子100は、下部電極101がアノードであり上部電極105がカソードである順型構成を有していてもよいし、下部電極101がカソードであり上部電極105がアノードである逆型構成を有していてもよい。
一対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは、太陽光が40%以上透過することを指す。また、透明電極の太陽光線透過率は70%以上であることが、より多くの光が透明電極を透過して活性層103に到達するために好ましい。光の透過率は、分光光度計(例えば、日立ハイテク社製U-4100)で測定できる。
下部電極101及び上部電極105、又はアノード及びカソードの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の部材及びその製造方法を使用することができる。
[3.活性層]
図1の実施形態において、活性層103は光電変換が行われる層である。光電変換素子100が光を受けると、光が活性層103に吸収されてキャリアが発生し、発生したキャリアは下部電極101及び上部電極105から取り出される。
活性層103は、前記一対の電極間に位置し、有機無機ハイブリッド型半導体材料を含有する。有機無機ハイブリッド型半導体材料とは、有機成分と無機成分とが分子レベル又はナノレベルで組み合わせられた材料であって、半導体特性を示す材料のことを指す。
本実施形態において、有機無機ハイブリッド型半導体材料は、ペロブスカイト構造を有する化合物(以下、ペロブスカイト半導体化合物と呼ぶことがある)であることが好ましい。ペロブスカイト半導体化合物としては、特段の制限はないが、例えば、Galasso et al. Structure and Properties of Inorganic Solids, Chapter 7 - Perovskite type and related structuresで挙げられているものから選ぶことができる。例えば、ペロブスカイト半導体化合物としては、一般式AMXで表されるAMX型のもの、又は一般式AMXで表されるAMX型のものが挙げられる。ここで、Mは2価のカチオンを、Aは1価のカチオンを、Xは1価のアニオンを指す。
1価のカチオンAに特段の制限はないが、上記Galassoの著書に記載されているものを用いることができる。より具体的な例としては、周期表第1族及び第13族乃至第16族元素を含むカチオンが挙げられる。これらの中でも、セシウムイオン、ルビジウムイオン、カリウムイオン、置換基を有していてもよいアンモニウムイオン又は置換基を有していてもよいホスホニウムイオンが好ましい。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの例としては、1級アンモニウムイオン又は2級アンモニウムイオンが挙げられる。置換基にも特段の制限はない。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの具体例としては、アルキルアンモニウムイオン又はアリールアンモニウムイオンが挙げられる。
特に、立体障害を避けるために、3次元の結晶構造となるモノアルキルアンモニウムイオンが好ましく、安定性向上の観点からは、一つ以上のフッ素基を置換したアルキルアンモニウムイオンを用いることが好ましい。また、カチオンAとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。
1価のカチオンAの具体例としては、メチルアンモニウムイオン、モノフッ化メチルアンモニウムイオン、ジフッ化メチルアンモニウムイオン、トリフッ化メチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン、n-プロピルアンモニウムイオン、イソブチルアンモニウムイオン、n-ブチルアンモニウムイオン、t-ブチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、ベンジルアンモニウムイオン、フェネチルアンモニウムイオン、グアニジウムイオン、ホルムアミジニウムイオン、アセトアミジニウムイオン又はイミダゾリウムイオン等が挙げられる。
2価のカチオンMにも特段の制限はないが、2価の金属カチオン又は半金属カチオンであることが好ましい。具体的な例としては周期表第14族元素のカチオンが挙げられ、より具体的な例としては、鉛カチオン(Pb2+)、スズカチオン(Sn2+)、ゲルマニウムカチオン(Ge2+)が挙げられる。また、カチオンMとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。なお、安定な光電変換素子を得る観点からは、鉛カチオン又は鉛カチオンを含む2種以上のカチオンを用いることが特に好ましい。一方、本実施形態の光電変換素子が室内光源等の低照度環境下で用いられる場合、安全性の観点から、スズ元素を含むことが好ましい。また、HOMOの浅いペロブスカイト半導体化合物とする観点からも、スズ元素を含むことが好ましい。なお、HOMOが浅いとは、イオン化ポテンシャルが比較的0に近いことを表す。
1価のアニオンXの例としては、ハロゲン化物イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、ホウ酸イオン、アセチルアセトナートイオン、炭酸イオン、クエン酸イオン、硫黄イオン、テルルイオン、チオシアン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、2,4-ペンタンジオナトイオン又はケイフッ素イオン等が挙げられる。バンドギャップを調整するためには、Xは1種類のアニオンであってもよいし、2種類以上のアニオンの組み合わせであってもよい。一実施形態において、Xとしてはハロゲン化物イオン、又はハロゲン化物イオンとその他のアニオンとの組み合わせが挙げられる。ハロゲン化物イオンXの例としては、塩化物イオン、臭化物イオン又はヨウ化物イオン等が挙げられる。半導体のバンドギャップを広げすぎない観点から、ヨウ化物イオンもしくは臭化物イオンを主に用いることが好ましいが、ヨウ化物イオンと臭化物イオンとを適当な比率で組み合わせてもよい。
ペロブスカイト半導体化合物の具体例としては、CHNHPbI、CHNHPbBr、CHNHPbCl、CHNHSnI、CHNHSnBr、CHNHSnCl、CHNHPbI(3-x)Cl、CHNHPbI(3-x)Br、CHNHPbBr(3-x)Cl、CHNHPb(1-y)Sn、CHNHPb(1-y)SnBr、CHNHPb(1-y)SnCl、CHNHPb(1-y)Sn(3-x)Cl、CHNHPb(1-y)Sn(3-x)Br、及びCHNHPb(1-y)SnBr(3-x)Cl、並びに、上記の化合物においてCHNHの代わりにCFHNH、CFHNH、又はCFNHを用いたもの、等が挙げられる。なお、xは0以上3以下、yは0以上1以下の任意の値を示す。
活性層103は、2種類以上のペロブスカイト半導体化合物を含有していてもよい。例えば、A、B及びXのうちの少なくとも1つが異なる2種類以上のペロブスカイト半導体
化合物が活性層103に含まれていてもよい。また活性層103は、異なる材料を含み又は異なる成分を有する複数の層で形成される積層構造を有していてもよい。
活性層103に含まれるペロブスカイト半導体化合物の量は、良好な半導体特性が得られるように、好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。上限に特に制限はない。また、活性層103には、ペロブスカイト半導体化合物に加えて添加剤が含まれていてもよい。添加剤の例としては、ハロゲン化物、酸化物、又は硫化物、硫酸塩、硝酸塩若しくはアンモニウム塩等の無機塩のような、無機化合物、又は有機化合物が挙げられる。
活性層のイオン化ポテンシャルの範囲は、好ましくは-5.5eV以上-4.0eV以下であり、より好ましくは-5.2eV以上-4.6eV以下であり、特に好ましくは-5.0eV以上-4.4eV以下である。
また、活性層のバンドギャップは、好ましくは1.2eV以上2.6eV以下であり、より好ましくは1.4eV以上2.4eV以下であり、特に好ましくは1.6eV以上2.2eV以下である。
活性層のイオン化ポテンシャル及びバンドギャップを上記範囲とすることによって、屋内や室内において広範に用いられる可視光光源である蛍光灯やLED灯に対する、発電効率を向上させることができる。
特に、活性層のバンドギャップが上記範囲だと、屋内光源を受けることによって発生するエネルギーが、半導体中に生成する励起子を正負電荷に分離するために十分なものとなり、かつ過剰とならず、発電効率を良好なものとすることができる。
イオン化ポテンシャルは、サンプルに対して光を照射し、照射エネルギーが光電子をはじき出すのに必要な最低エネルギー(eV)を計測することで、算出することができる。測定機器は任意のものを用いることができるが、例えば、理研計器(株)のAC-2、AC-3等を用いることができる。
また、バンドギャップは、半導体化合物の吸収端波長と吸光度とから算出することができる。具体的には、透明ガラス基板等の適当な試料上に半導体化合物薄膜を成膜し、その透過スペクトルを測定し、横軸波長をeVに、縦軸透過率を√(ahν)に変換し、この吸収の立ち上がりを直線としてフィッティングし、ベースラインと交わるeV値をバンドギャップとして算出することができる。透過スペクトルは、例えば、日立ハイテク製U-4100等の分光光度計を使用して測定することができる。
活性層のイオン化ポテンシャルを上記所望の範囲とするための方法としては、例えば、前記のペロブスカイト半導体化合物におけるカチオン成分を適宜変更することがあげられる。
また、活性層のバンドギャップを上記所望の範囲とするための方法としては、例えば、前記ペロブスカイト半導体化合物におけるハロゲン元素の構成比率を適宜変更することがあげられる。
活性層103の厚さに特段の制限はない。より多くの光を吸収できる点で、活性層103の厚さは、一実施形態において10nm以上、別の実施形態において50nm以上、さらに別の実施形態において100nm以上、さらに別の実施形態において120nm以上である。一方で、直列抵抗が下がる点、又は電荷の取出し効率を高める点で、活性層103の厚さは、一実施形態において1500nm以下、別の実施形態において1200nm以下、さらに別の実施形態において800nm以下である。
活性層103の形成方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができる。具体例としては、塗布法及び蒸着法(又は共蒸着法)が挙げられる。簡易に活性層103を形成
できる点で、塗布法を用いることができる。例えば、ペロブスカイト半導体化合物又はその前駆体を含有する塗布液を塗布し、必要に応じて加熱乾燥することにより活性層103を形成する方法が挙げられる。また、このような塗布液を塗布した後で、ペロブスカイト半導体化合物の溶解性が低い溶媒をさらに塗布することにより、ペロブスカイト半導体化合物を析出させることもできる。
ペロブスカイト半導体化合物の前駆体とは、塗布液を塗布した後にペロブスカイト半導体化合物へと変換可能な材料のことを指す。具体的な例として、加熱することによりペロブスカイト半導体化合物へと変換可能なペロブスカイト半導体化合物前駆体を用いることができる。例えば、一般式AXで表される化合物と、一般式MXで表される化合物と、溶媒と、を混合して加熱攪拌することにより、塗布液を作製することができる。この塗布液を塗布して加熱乾燥を行うことにより、一般式AMXで表されるペロブスカイト半導体化合物を含有する活性層103を作製することができる。溶媒としては、ペロブスカイト半導体化合物及び添加剤が溶解するのであれば特に限定されず、例えばN,N-ジメチルホルムアミドのような有機溶媒が挙げられる。
塗布液の塗布方法としては任意の方法を用いることができるが、例えば、スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。
[4.バッファ層]
バッファ層は、活性層103と一対の電極101、105の少なくとも一方との間に位置する層である。バッファ層は、例えば、活性層103から下部電極101又は上部電極105へのキャリア移動効率を向上させるために用いることができる。
(正孔輸送層)
本発明においては、バッファ層として、正孔輸送能を有する有機半導体化合物を含有する正孔輸送層を少なくとも有する。
(有機半導体化合物)
半導体化合物とは、半導体特性を示す半導体材料として使用可能な化合物のことを指す。なお、本明細書において「半導体」とは、固体状態におけるキャリア移動度の大きさによって定義される。キャリア移動度とは、周知であるように、電荷(電子又は正孔)がどれだけ速く(又は多く)移動されうるかを示す指標となるものである。具体的には、本明細書における「半導体」は、室温におけるキャリア移動度が好ましくは1.0×10-6cm/V・s以上、より好ましくは1.0×10-5cm/V・s以上、さらに好ましくは5.0×10-5cm/V・s以上、特に好ましくは1.0×10-4cm/V・s以上である。なお、キャリア移動度は、例えば電界効果トランジスタのIV特性の測定、又はタイムオブフライト法等により測定できる。
本明細書において、正孔輸送能を有する有機半導体化合物は、正孔のキャリア移動度が上記範囲内である有機半導体化合物を指す。
本発明においては半導体化合物として正孔輸送能を有する有機半導体化合物が用いられるが、中でも塗布変換型材料が用いられる。塗布変換型材料は、塗布溶媒に不溶であるが、その前駆体化合物は塗布溶媒に可溶である化合物を指す。塗布変換型材料そのものは、剛直かつ不溶な化合物であるため、塗布対象に塗布することはできないが、塗布溶媒に可溶の前駆体化合物を塗布した後に反応させることにより、塗布対象上に塗布変換型材料を含有する正孔輸送層を形成することができる。
塗布変換型材料は上記の性質を有する化合物であれば特に限定されないが、好ましくは前駆体化合物の逆ディールスアルダー反応により生成する化合物である。また、逆ディールスアルダー反応により生じる構造が六員環であることが好ましい。さらに、塗布変換型材料は、ナフタセン、ペンタセン又はピレン等の縮合芳香族炭化水素;α-セキシチオフェン等のチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環及びベンゾチアゾール環のうち少なくとも一つ以上を含み、かつ合計4個以上連結したもの;フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン化合物及びその金属錯体、等の大環状化合物等が挙げられる。好ましくは、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及び/又はこれらの金属錯体である。
ポルフィリン化合物及びその金属錯体(下記式中のQがCH)、フタロシアニン化合物及びその金属錯体(下記式中のQがN)としては、例えば、以下のような構造の化合物が挙げられる。
Figure 2022149015000002


ここで、Mは金属あるいは2個の水素原子を表し、金属としては、Cu、Zn、Pb、
Mg、Co又はNi等の2価の金属のほか、軸配位子を有する3価以上の金属、例えば、TiO、VO、SnCl、AlCl、InCl又はSi等も挙げられる。
~Yはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~24のアルキル基である。炭素数1~24のアルキル基とは、炭素数が1~24の飽和もしくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数が3~24の飽和もしくは不飽和の環式炭化水素である。その中でも好ましくは炭素数1~12の飽和もしくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数が3~12の飽和もしくは不飽和の環式炭化水素である。
フタロシアニン化合物及びその金属錯体の中でも、好ましくは、29H,31H-フタロシアニン、銅フタロシアニン錯体、亜鉛フタロシアニン錯体、チタンフタロシアニンオキシド錯体、マグネシウムフタロシアニン錯体、鉛フタロシアニン錯体又は銅4,4’,4’’,4’’’-テトラアザ-29H,31H-フタロシアニン錯体であり、より好ましくは、29H,31H-フタロシアニン又は銅フタロシアニン錯体である。なお、上記一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
ポルフィリン化合物及びその金属錯体の中でも、好ましくは、5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィン、5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィンコバルト(II)、5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィン銅(II)、5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィン亜鉛(II)、5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィンニッケル(II)、5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィンバナジウム(IV)オキシド、5,10,15,20-テトラ(4-ピリジル)-21H,23H-ポルフィン、29H,31H-テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン、29H,31H-テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンコバルト(II)、29H,31H-テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン銅(II)、29H,31H-テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン亜鉛(II)、29H,31H-テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンニッケル(II)又は29H,31H-テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンバナジウム(IV)オキシドであり、好ましくは、5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィン又は29H,31H-テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンである。なお、上記一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
上記化合物は、酸性の官能基であるスルホニル基を有するPEDOT:PSSなどの既存材料に比べ、活性層材料との酸化還元反応を起こしづらい点で有利である。また、塗布変換型材料がBP骨格を有すると、中心金属を選定することにより容易にイオン化ポテンシャルやバンドギャップなどのエネルギーレベルを変更でき、正孔輸送能を低下させることなく、活性層からの正孔授受能を調整することが可能となる。特に、HOMOの浅い活性層を有する光電変換素子に対し、上記化合物を適用することで、その発電効率を改善することができる。
逆ディールスアルダー反応の際に脱離する化合物は、炭素数4以下の炭化水素を挙げることができる。なお、当該炭化水素は、常温常圧下で気体である。
上記塗布変換型材料は低分子化合物であることが好ましく、分子量は、通常300以上、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、また通常20000以下、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下である。分子量がこの上限値を上回ると、合成経路が煩雑となり高純度化が困難となる場合がある。また不純物の高分子量化によって化合物の精製が困難となる場合がある。また、分子量がこの下限値を下回ると、成膜性が低下する場合があり、ガラス転移温度、融点および気化温度が低下するため、耐熱性が著しく損なわれる場合がある。
逆ディールスアルダー反応の反応条件は公知のものを採用することができ、通常前駆体
化合物を加熱することによって反応させる。
加熱温度は特に限定されないが、通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、また通常300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。加熱時間は、通常1分以上、2時間以下であり、好ましくは5分以上、1時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、形成された層を有する積層体をホットプレート上に乗せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。
また、加熱と合わせて、光などの電磁エネルギー照射を行なってもよい。電磁エネルギーの照射は、例えば超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の電磁エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。
照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
加熱および光などの電磁エネルギー照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
加熱および光を含む電磁エネルギー照射は、実施後に層に含有する水分および/または表面に吸着する水分の量を低減するために、窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが好ましい。同様の目的で、加熱および/または光などの電磁エネルギー照射を組み合わせて行う場合には、少なくとも正孔輸送層の形成直前の工程を窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが特に好ましい。
(中心金属)
塗布変換型材料は全部または一部が中心金属を有する金属錯体であってよい。塗布変換型材料は中心金属を有することで、エネルギーレベルを調整することができる。中心金属は、所望のエネルギーレベルとなるように適宜選択することができ、具体的には、パラジウム、イリジウム、白金、亜鉛、コバルト、マンガン、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン、バナジウム等が挙げられる。
(ドーパント)
塗布変換型材料は、正孔輸送層の導電性や正孔輸送能力を前記活性層に対して最適化するために、添加物としてドーパントを有してもよい。
ドーパントとして使用できる物質としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートなどのホウ素化合物、トリス[1-(メトキシカルボニル)-2-(トリフルオロメチル)-エタン-1,2-ジチオレン]モリブデンなどのモリブデン化合物、2,3,4,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタンといったテトラシアノキノジメタン骨格を有する有機化合物などが挙げられる。ドーパントは、正孔輸送層の成膜前または成膜後で、少なくとも一つの塗布変換型材料との間で電荷移動反応を起こすことが好ましい。
ドーパントの含有量は、前記塗布変換型材料と前記ドーパントの合計量に対して、例えば0.001~10質量%の範囲とすることができる。
ドーパントの含有量を0.001質量%以上とすることによって、バッファ層の導電性や正孔輸送能力を前記活性層に対してより向上できる傾向にある。より好ましくは、0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、特に好ましくは0.1質量%以上である。
また、ドーパントの含有量を10質量%以下とすることによって、光電変換素子のリーク電流の発生を抑制し、特に低照度領域における発電効率をより向上できる傾向にある。
より好ましくは、8質量%以下であり、さらに好ましくは、6質量%以下である。
正孔輸送層のイオン化ポテンシャルは、活性層のイオン化ポテンシャルに対し、-0.6eV以上+0.6eV以下の範囲であることが好ましく、-0.4eV以上+0.4eV以下の範囲であることがより好ましく、-0.2eV以上+0.2eV以下の範囲であることが特に好ましい。正孔輸送層のイオン化ポテンシャルが上記範囲内であると、正孔輸送能を低下させずに活性層からの正孔授受を円滑に進めることが可能となり、エネルギー損失及び電圧損失を抑えることができる。
正孔輸送層のイオン化ポテンシャルを上記所望の範囲とするための方法としては、例えば、正孔輸送層を構成する塗布変換型材料に電子吸引性官能基を導入することや、この塗布変換型材料の共役部位成分を拡張することで電子を非局在化させ安定性を向上させることや、塗布変換型材料の中心金属を選定することが挙げられる。
上述のように、光電変換素子100は、下部電極101と活性層103との間にバッファ層102を有することができ、又は、上部電極105と活性層103との間にバッファ層104を有することができる。また、光電変換素子100は、バッファ層102とバッファ層104との双方を有することもできる。ここで、下部電極101と活性層103との間に設けられるバッファ層102と、上部電極105と活性層103との間に設けられるバッファ層104とは、異なる材料で構成されていてもよい。すなわち、一方のバッファ層が有機半導体化合物を含有する正孔輸送層である一方、他方のバッファ層はこれと異なる物質で構成される電子輸送層等であってもよい。なお、上述の通り、有機半導体化合物を含有する正孔輸送層は、下部電極101と活性層103との間に位置していてもよいし、活性層103と上部電極105との間に位置していてもよい。但し、有機半導体化合物を含有する正孔輸送層を塗布法により成膜する際には、塗布溶媒が活性層103を浸漬して、活性層103に影響を及ぼす可能性があるため、正孔輸送層は、下部電極101と、活性層103との間に位置していることが好ましい。
アノードと活性層との間に設けられたバッファ層は正孔輸送層と呼ばれることがあり、カソードと活性層との間に設けられたバッファ層は電子輸送層と呼ばれることがある。本発明においては、n-i-p積層型光電変換素子において輸送電荷量の制御が容易となる傾向にあることから、有機半導体化合物を含有するバッファ層は正孔輸送層として使用される。
なお、本発明においては、上記の有機半導体化合物やそのドーパントを含むバッファ層を正孔輸送層として好適に使用することができるが、バッファ層に関しては、材料に特に限定はない。例えば、正孔輸送層については、活性層からアノードへの正孔の取り出し効率を向上させることが可能な任意の材料を用いることができる。具体的には、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の無機化合物、有機化合物、又は本発明に係る有機無機ペロブスカイト化合物が挙げられる。例えば、無機化合物としては、酸化銅、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化バナジウム又は酸化タングステン等の金属酸化物が挙げられる。また、有機化合物としては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等にドーパントがドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物、ナフィオン、又はリチウムドーピングされたspiro-OMeTADが挙げられる。
同様に、電子輸送層についても、活性層からカソードへの電子の取り出し効率を向上させることが可能な任意の材料を用いることができる。具体的には、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194
号公報等の公知文献に記載の無機化合物、有機化合物、又は本発明に係る有機無機ペロブスカイト化合物が挙げられる。例えば、無機化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム又はセシウム等のアルカリ金属の塩、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム又は酸化インジウム等の金属酸化物が挙げられる。有機化合物としては、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントレン(Bphen)、(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)、ホウ素化合物、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)、ペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)、フラーレン化合物、又はホスフィンオキシド化合物若しくはホスフィンスルフィド化合物等の周期表第16族元素と二重結合を有するホスフィン化合物が挙げられる。
バッファ層の膜厚は、本発明における正孔輸送層を含めて特に限定はないが、一実施形態において0.5nm以上、別の実施形態において1nm以上、さらに別の実施形態において5nm以上である、一方、一実施形態において1μm以下、別の実施形態において500nm以下、さらに別の実施形態において200nm以下、さらに別の実施形態において150nm以下である。バッファ層の膜厚が上記の範囲内にあることで、キャリアの移動効率が向上しやすくなり、光電変換効率が向上しうる。
また、本発明における正孔輸送層を含めて、バッファ層の形成方法に制限はなく、材料の特性に合わせて形成方法を選択することができる。例えば、上述の有機半導体化合物及び溶媒を含有する塗布液を作製し、スピンコート法やインクジェット法等の湿式成膜法を用いることにより、バッファ層を形成することができる。
本発明の塗布変換型材料を含有する層を湿式成膜法により形成する場合、下地との親和性が重要である。膜質の均一性は有機電界発光素子の発光の均一性、安定性に大きく影響するため、湿式成膜法に用いる塗布液には、よりレベリング性が高く均一な塗膜を形成し得るように表面張力が低いことが求められる。このような溶媒を使用することにより、本発明の重合体を含有する均一な層を形成することができる。
塗布液に用いられる溶媒は、上記前駆体化合物を0.1質量%以上溶解するものが好ましく、0.5質量%以上溶解するものがより好ましく、1質量%以上溶解するものが特に好ましい。一方、塗布液に用いられる溶媒は塗布変換型材料を実質的に溶解しないものが好ましい。「実質的に溶解しない」とは、常温常圧下において溶媒100gに溶解する量が10mg未満であることを指す。
上記溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族系溶媒;1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル等のエステル系溶媒等の有機溶媒が挙げられる。表面張力が低い点から、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族系溶媒、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、アニソール、トリフルオロメトキシアニソール、ペンタフルオロメトキシベンゼン、3-(トリフルオロメチル)アニソール、エチル(ペンタフルオロベンゾエート)等のエーテル系溶媒が好ましい。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組合せ及び比率で用いてもよい。
[5.基材]
光電変換素子100は、通常は支持体となる基材106を有する。もっとも、本発明に係る光電変換素子は基材106を有さなくてもよい。基材106の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されず、例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の材料を使用することができる。
[6.光電変換素子の作製方法]
上述の方法に従って、光電変換素子100を構成する各層を形成することにより、光電変換素子100を作製することができる。光電変換素子100を構成する各層の形成方法に特段の制限はなく、シートツゥーシート(万葉)方式、又はロールツゥーロール方式で形成することができる。
なお、ロールツゥーロール方式とは、ロール状に巻かれたフレキシブルな基材を繰り出して、間欠的、或いは連続的に搬送しながら、巻き取りロールにより巻き取られるまでの間に加工を行う方式である。ロールツゥーロール方式によれば、kmオーダの長尺基板を一括処理することが可能であるため、ロールツゥーロール方式はシートツゥーシート方式に比べて量産化に適している。一方、ロールツゥーロール方式で各層を成膜しようとすると、その構造上、成膜面とロールとが接触することにより膜に傷がついたり、部分的に剥がれてしまったりする場合がある。
ロールツゥーロール方式に用いることのできるロールの大きさは、ロールツゥーロール方式の製造装置で扱える限り特に限定されないが、外径の上限は、好ましくは5m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは1m以下である。一方、下限は好ましくは10cm以上、さらに好ましくは20cm以上、より好ましくは30cm以上である。ロール芯の外径の上限は、好ましくは4m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは0.5m以下である。一方、下限は好ましくは1cm以上、さらに好ましくは3cm以上、より好ましくは5cm以上、さらに好ましくは10cm以上、特に好ましくは20cm以上である。これらの径が上記上限以下であることはロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であることは各工程で成膜される層が曲げ応力により破壊される可能性が低くなる点で好ましい。ロールの幅の下限は、好ましくは5cm以上、さらに好ましくは10cm以上、より好ましくは20cm以上である。一方、上限は、好ましくは5m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下である。幅が上限以下であることはロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であることは光電変換素子100の大きさの自由度が高くなるため好ましい。
また、上部電極105を積層した後に、光電変換素子100を50℃以上または80℃以上、一方、300℃以下、280℃以下、または250℃以下の温度範囲において、加熱することができる(この工程をアニーリング処理工程と称する場合がある)。アニーリング処理工程を50℃以上の温度で行うことは、光電変換素子100の各層間の密着性、例えばバッファ層102と下部電極101、バッファ層102と活性層103等の層間の密着性が向上する効果が得られる。各層間の密着性が向上することにより、光電変換素子の熱安定性や耐久性等が向上しうる。アニーリング処理工程の温度を300℃以下にすることは、光電変換素子100に含まれる有機化合物が熱分解する可能性が低くなる。アニーリング処理工程においては、上記の温度範囲内において異なる温度を用いた段階的な加熱を行ってもよい。
加熱時間としては、熱分解を抑えながら密着性を向上させるために、一実施形態において1分以上、別の実施形態において3分以上、一方、一実施形態において180分以下、別の実施形態において60分以下である。アニーリング処理工程は、太陽電池性能のパラ
メータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることができる。また、アニーリング処理工程は、構成材料の熱酸化を防ぐ上でも、常圧下、かつ不活性ガス雰囲気中で実施することができる。加熱方法としては、ホットプレート等の熱源に光電変換素子を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気中に光電変換素子を入れてもよい。また、加熱はバッチ式で行っても連続方式で行ってもよい。
[7.光電変換特性]
光電変換素子100の光電変換特性は次のようにして求めることができる。光電変換素子100に適当なスペクトルの光をある照射強度で照射して、電流-電圧特性を測定する。得られた電流-電圧曲線から、光電変換効率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。一例として、光電変換素子100に色温度5000Kの白色LED光を適当な照射強度(照度)で照射することで、各照度における電流-電圧特性を測定することができる。
本発明の光電変換素子は低照度領域(10~5000ルクス)における発電効率に優れ、特に白色LED光等の光源を用いた場合において、光電変換効率を20%以上とすることができる。また、200ルクスにおける光電変換効率を25%以上とすることができる。この効率の上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。
なお、この光電変換効率(PCE)は、所定の照射光により測定される、光電変換素子の電流-電圧曲線の最適動作点における出力(最大出力)をこの照射光が有する総エネルギー量(例えば、強度AM1.5Gの太陽光であれば100mW/cm)で除した値(%)である。
本発明の別の形態は、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及び/又はこれらの金属錯体からなる、ペロブスカイト型光電変換素子の正孔輸送層用、耐久性向上剤である。
ペロブスカイト型光電変換素子とは、活性層にペロブスカイト半導体化合物を含有する光電変換素子を指し、光電変換素子の具体的な態様は上記記載を参照することができる。また、ペロブスカイト半導体化合物の具体例、分子量、中心金属等は、[4.バッファ層]の塗布変換型材料についての記載を参照することができる。
上述した通り、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及び/又はこれらの金属錯体は、酸性の官能基であるスルホニル基を有するPEDOT:PSSなどの既存材料に比べ、活性層材料との酸化還元反応を起こしづらい。また、結晶性・不溶性であることから、吸湿によりプロトン等の光電変換素子の性能を低下させ得る物質を産生するおそれが少ない。すなわち、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及び/又はこれらの金属錯体を正孔輸送層に適用することによって、ペロブスカイト型光電変換素子の耐久性を向上させることができる。また、当該耐久性向上剤は、テトラベンゾポルフィリン骨格を有する化合物であることが好ましい。
フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及び/又はこれらの金属錯体を正孔輸送層に適用した有機薄膜太陽電池では、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及び/又はこれらの金属錯体は正孔輸送層としてだけでなく光電変換層のp型半導体化合物として機能することが多く、n型半導体化合物との電荷分離を用意するため電荷輸送経路を確保しつつ多くのp/n接合部分面積を形成するよう形態(モルフォロジー)制御が求められるが、光電変換層における正孔/電子輸送能が充分に高いペロブスカイト型半導体化合物との組合せにおいては、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及び/又はこれらの金属錯体の優れた正孔輸送能と分子骨格の堅牢性が、高性能かつ安定な正孔輸送層として耐久性向上に直接寄与することが期待される。
また、ペロブスカイト半導体化合物において、先行文献(Nat. Commun., 2020, 11, 3008., DOI: 10.1038/s41467-020-16726-3)に記載されるように、スズを含む半導体化合物は酸化還元反応に極めて敏感であり、スズ原子の酸化数を厳密に制御することが光電変換デバイスの高性能化には必須となる。このような観点からも、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及び/又はこれらの金属錯体を正孔輸送層に適用したペロブスカイト型光電変換素子には高い耐久性が期待される。したがって、本実施形態に係る耐久性向上剤は、上記ペロブスカイト型半導体化合物がスズ元素を含有する、ペロブスカイト型光電変換素子に対して特に優れた耐久性向上効果を発揮する。
上記記載を換言すると、本発明のさらに別の形態は、ペロブスカイト型光電変換素子における、耐久性向上のための、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及び/又はこれらの金属錯体の正孔輸送層材料としての、使用である。
[8.発電デバイス]
一実施形態において、本発明に係る光電変換素子100は、発電デバイス、中でも室内等の低照度環境用太陽電池として好適に使用される。図2は本発明の一実施形態に係る太陽電池の構成を模式的に表す断面図であり、図2には本発明の一実施形態に係る太陽電池である太陽電池が示されている。図2に表すように、本実施形態に係る薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、太陽電池素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10と、をこの順に備える。本実施形態に係る薄膜太陽電池14は、太陽電池素子6として、本発明に係る光電変換素子を有している。そして、保護フィルム1が形成された側(図2中下方)から光が照射されて、太陽電池素子6が発電するようになっている。なお、薄膜太陽電池14は、これらの構成部材を全て有する必要はなく、必要な構成部材を任意に選択することができる。
なお、本明細書において、低照度環境とは、10~5000ルクスを意味し、典型的には200ルクス周辺である。
光電変換素子を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の技術を使用することができる。
本実施形態に係る太陽電池、特に上述した薄膜太陽電池14の用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。例えば、一実施形態に係る太陽電池は、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池として用いることができる。上記説明したとおり、低照度環境下で優れた変更効率を有することから、特にエネルギーハーベスティング用途に、好適に適用できる。
本実施形態に係る太陽電池、特に上述した薄膜太陽電池14はそのまま用いてもよいし、太陽電池モジュールの構成要素として用いられてもよい。例えば、図3に示すように、本実施形態に係る太陽電池、特に上述した太陽電池14を基材12上に備える太陽電池モジュール13を作製し、この太陽電池モジュール13を使用場所に設置して用いることができる。
1 耐候性保護フィルム
2 紫外線カットフィルム
3,9 ガスバリアフィルム
4,8 ゲッター材フィルム
5,7 封止材
6 太陽電池素子
10 バックシート
12 基材
13 太陽電池モジュール
14 薄膜太陽電池
100 光電変換素子
101 下部電極
102 バッファ層
103 活性層
104 バッファ層
105 上部電極
106 基材

Claims (7)

  1. 上部電極と下部電極とにより構成される一対の電極と、前記一対の電極間に位置し、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する活性層と、を有する光電変換素子であって、
    正孔輸送能を有する有機半導体化合物が、前記上部電極と前記下部電極の少なくとも一方と前記活性層との間に位置し、
    前記正孔輸送能を有する有機半導体化合物が、塗布変換型材料であることを特徴とする、光電変換素子。
  2. 前記塗布変換型材料が、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及び/又はこれらの金属錯体である、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記有機無機ハイブリッド型半導体化合物が、ペロブスカイト構造を有する化合物である、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
  4. 前記有機無機ハイブリッド型半導体化合物が、スズ元素を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の光電変換素子。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の光電変換素子を有する、発電デバイス。
  6. フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及び/又はこれらの金属錯体からなる、ペロブスカイト型光電変換素子の正孔輸送層用、耐久性向上剤。
  7. ペロブスカイト型光電変換素子における、耐久性向上のための、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及び/又はこれらの金属錯体の正孔輸送層材料としての、使用。
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