JP2023064305A - 発電デバイス及びその製造方法 - Google Patents

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Izuru Takei
和弘 毛利
Kazuhiro Mori
千寛 原田
Kazuhiro Harada
繁樹 服部
Shigeki Hattori
友徳 上野
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Abstract

【課題】有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する活性層を有する発電デバイスについて、低照度下における発電効率を向上させること。【解決手段】上部電極と下部電極とにより構成される一対の電極と、前記一対の電極間に位置し、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する活性層と、前記活性層と前記一対の電極の少なくとも一方との間に位置する正孔輸送層と、を有する発電デバイスであって、前記正孔輸送層が、特定の化学式で表されるカルバゾール化合物を含有する、発電デバイス。【選択図】なし

Description

本発明は、発電デバイス及びその製造方法に関する。
発電デバイス(光電変換素子)として、一対の電極の間に、活性層及びバッファ層等が配置されたものが知られている。この活性層の材料として、有機無機ハイブリッド型半導体化合物の開発が進んでおり、なかでもペロブスカイト構造を有する化合物(ペロブスカイト半導体化合物)が注目されている。
一方、バッファ層の一つである正孔輸送層の材料として、例えば、フタロシアニン系の有機半導体化合物等が提案されている(特許文献1)。
特開2017-066096号公報
しかしながら、従来の正孔輸送層を備えた発電デバイスでは、特にエネルギーハーベスティング用途で重要な、蛍光灯やLED等を光源とする室内等の低照度環境下における発電効率が低下することがあった。
本発明は、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する活性層を備えた発電デバイスについて、低照度下における発電効率を向上させることを目的とする。
本発明者らは、特定のカルバゾール化合物を含有させた正孔輸送層を、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する活性層と組み合わせることによって、屋内等の低照度環境下においても、優れた発電効率を有する発電デバイスが得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1] 上部電極と下部電極とにより構成される一対の電極と、前記一対の電極間に位置し、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する活性層と、前記活性層と前記一対の電極の少なくとも一方との間に位置する正孔輸送層と、を有する発電デバイスであって、前記正孔輸送層が、下記式(I)で表されるカルバゾール化合物を含有する、発電デバイス。
(式中のAr~Arは、それぞれ独立に、それぞれ1価の置換基を有していてもよい芳香族基であり、縮合環構造を有していてもよい。このうちArと環1、Arと環2、はそれぞれ独立に、縮合環構造を形成していてもよい。また、ArとAr、ArとArは、それぞれ独立に縮合環構造を形成していてもよい。これらの縮合環構造のうち少なくとも1つはカルバゾール構造を形成する。環2上のジアリールアミノ基(N(Ar)(Ar))は、環1と環2との間の結合に対して、メタ位もしくはパラ位のいずれかに位置する。)
[2] 前記カルバゾール化合物が、下記式(II)又は下記式(III)で表されるカルバゾール化合物を含む、[1]に記載の発電デバイス。
[3] 前記活性層のイオン化ポテンシャルが-6.0eV以上-5.7eV以下であり、かつ、前記活性層のバンドギャップが1.6eV以上2.3eV以下であるとともに、前記正孔輸送層のイオン化ポテンシャルが-5.9eV以上-5.3eV以下である、[1]又は[2]に記載の発電デバイス。
[4] 前記有機無機ハイブリッド型半導体化合物が、ペロブスカイト構造を有する化合物である、[1]~[3]の何れか一項に記載の発電デバイス。
[5] 前記活性層の厚みが200nm以上800nm以下である、[1]~[4]の何れか一項に記載の発電デバイス。
[6] 色温度5000Kの白色LED光を照射し、受光面の照度が200ルクスであるときの光電変換効率が25%以上である、[1]~[5]の何れか一項に記載の発電デバイス。
[7] 請求項1~6の何れか一項に記載の発電デバイスの製造方法であって、前記正孔輸送層を塗布法により形成する工程を有し、前記塗布法において、前記カルバゾール化合物およびドーパントを含有する液を塗布する、発電デバイスの製造方法。
[8] 前記ドーパントが、3価のヨウ素を含むジアリールヨードニウム塩である、[7]に記載の発電デバイスの製造方法。
Figure 2023064305000001
Figure 2023064305000002
Figure 2023064305000003
本発明により、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を用いた発電デバイスにおいて、特に屋内等の低照度環境下の発電効率を向上させることができる。
本発明の発電デバイスの実施形態の一例を模式的に表す断面図である。 本発明の発電デバイスを備えた太陽電池の実施形態の一例を模式的に表す断面図である。 本発明の発電デバイスを備えた太陽電池モジュールの一例を模式的に表す断面図である。
本発明の一実施形態である発電デバイスは、上部電極と下部電極とにより構成される一対の電極と、前記一対の電極間に位置し、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する活性層と、前記活性層と前記一対の電極の少なくとも一方との間に位置する正孔輸送層と、を有する発電デバイスである。
ここで、前記正孔輸送層は、後述する特定のカルバゾール化合物を含有する。
本実施形態の発電デバイスにおいて、前記活性層のイオン化ポテンシャルが-6.0eV以上-5.7eV以下であり、かつ、前記活性層のバンドギャップが1.6eV以上2.3eV以下であるとともに、前記正孔輸送層のイオン化ポテンシャルが-5.9eV以上-5.3eV以下であることが好ましい。
本発明の発電デバイスは、低照度環境下における発電効率に特に優れる。
なお、本明細書において、低照度環境とは、通常10~5000ルクスの環境を意味し、100~300ルクスの環境が好適であり、200ルクスの環境がより好適である。
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はその趣旨が損なわれない限り、これらの内容だけに限定はされない。
≪発電デバイス≫
本発明に係る発電デバイスについて、その模式的な断面図である図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る発電デバイスの実施形態の一例である発電デバイス100の模式的な断面図である。発電デバイス100においては、下部電極101、活性層103、及び上部電極105がこの順に配置されている。下部電極101と活性層103との間にバッファ層102が配置されていてもよい。バッファ層102は、例えば正孔輸送層とすることができる。また、上部電極105と活性層103との間にバッファ層104が配置されていてもよい。バッファ層104は、例えば電子輸送層とすることができる。逆に、バッファ層102とバッファ層104が、それぞれ電子輸送層と正孔輸送層であっても構わない。発電デバイス100は、基材106を有していてもよく、絶縁体層、及び仕事関数チューニング層のような図示しないその他の層を有していてもよい。
図1の実施形態において、活性層103は光電変換が行われる層である。発電デバイス100が光を受けると、光が活性層103に吸収されてキャリアが発生し、発生したキャリアは下部電極101及び上部電極105から取り出される。
[活性層]
本実施形態において、活性層は有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する。有機無機ハイブリッド型半導体化合物とは、有機成分と無機成分とが分子レベル又はナノレベルで組み合わせられた化合物であって、半導体特性を示す化合物のことをいう。
本実施形態において、有機無機ハイブリッド型半導体化合物は、ペロブスカイト構造を有する化合物(以下、ペロブスカイト半導体化合物と呼ぶことがある)であることが好ましい。
ペロブスカイト半導体化合物とは、ペロブスカイト構造を有する半導体化合物のことをいう。ペロブスカイト半導体化合物としては、特段の制限はないが、例えば、Galasso et al. Structure and Properties of Inorganic Solids, Chapter 7 - Perovskite type and related structuresで挙げられているものから選ぶことができる。また、例えば、ペロブスカイト半導体化合物としては、一般式AMXで表されるAMX型のもの、又は一般式AMXで表されるAMX型のものが挙げられる。ここで、Mは2価のカチオンを、Aは1価のカチオンを、Xは1価のアニオンをさす。
1価のカチオンAに特段の制限はないが、上記Galassoの著書に記載されているものを用いることができる。より具体的な例としては、周期表第1族及び第13族~第16族元素を含むカチオンが挙げられる。これらの中でも、セシウムイオン、ルビジウムイオン、カリウムイオン、置換基を有していてもよいアンモニウムイオン又は置換基を有していてもよいホスホニウムイオンが好ましい。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの例としては、1級アンモニウムイオン又は2級アンモニウムイオンが挙げられる。置換基にも特段の制限はない。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの具体例としては、アルキルアンモニウムイオン又はアリールアンモニウムイオンが挙げられる。特に、立体障害を避けるために、3次元の結晶構造となるモノアルキルアンモニウムイオンが好ましく、安定性向上の観点からは、一つ以上のフッ素基を置換したアルキルアンモニウムイオンを用いることが好ましい。また、カチオンAとして2種類以上のカチオンを組み合わせて用いてもよい。
1価のカチオンAの具体例としては、メチルアンモニウムイオン、モノフッ化メチルアンモニウムイオン、ジフッ化メチルアンモニウムイオン、トリフッ化メチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン、n-プロピルアンモニウムイオン、イソブチルアンモニウムイオン、n-ブチルアンモニウムイオン、t-ブチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、ベンジルアンモニウムイオン、フェネチルアンモニウムイオン、グアニジウムイオン、ホルムアミジニウムイオン、アセトアミジニウムイオン又はイミダゾリウムイオン等が挙げられる。
2価のカチオンMにも特段の制限はないが、2価の金属カチオン又は半金属カチオンであることが好ましい。具体的な例としては、周期表第14族元素のカチオンが挙げられ、より具体的な例としては、鉛カチオン(Pb2+)、スズカチオン(Sn2+)、ゲルマニウムカチオン(Ge2+)が挙げられる。また、カチオンMとして2種類以上のカチオンを組み合わせて用いてもよい。なお、安定な発電デバイスを得る観点からは、鉛カチオン又は鉛カチオンを含む2種以上のカチオンを用いることが特に好ましい。
1価のアニオンXの例としては、ハロゲン化物イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、ホウ酸イオン、アセチルアセトナートイオン、炭酸イオン、クエン酸イオン、硫黄イオン、テルルイオン、チオシアン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、2,4-ペンタンジオナトイオン又はケイフッ素イオン等が挙げられる。本発明に係る一実施形態において、Xとしてはハロゲン化物イオン、又はハロゲン化物イオンとその他のアニオンとの組み合わせが挙げられる。Xは、1種類でも任意の組み合わせと比率で2種類以上を用いてもよい。ここで、上述の活性層のバンドギャップは、Xの種類や組み合わせにより調整することができる。活性層のバンドギャップが適度に狭くなりやすいことから、Xは塩化物イオン、臭化物イオンおよびヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオンが好ましく、臭化物イオンおよびヨウ化物イオン等がより好ましい。
ペロブスカイト半導体化合物の好ましい例としては、有機無機ペロブスカイト半導体化合物が好ましく、特にハライド系有機無機ペロブスカイト半導体化合物が好ましい。ペロブスカイト半導体化合物の具体例としては、CHNHPbI、CHNHPbBr、CHNHPbCl、CHNHSnI、CHNHSnBr、CHNHSnCl、CHNHPbI(3-x)Cl、CHNHPbI(3-x)Br、CHNHPbBr(3-x)Cl、CHNHPb(1-y)Sn、CHNHPb(1-y)SnBr、CHNHPb(1-y)SnCl、CHNHPb(1-y)SnI(3-x)Cl、CHNHPb(1-y)Sn(3-x)Br、及びCHNHPb(1-y)SnBr(3-x)Cl、並びに、上記の化合物においてCHNH代わりにCFHNH、CFHNH、CFNH、NHCH=NH3、Cs、又はRbを用いた化合物、等が挙げられる。ここで、xは0以上3以下、yは0以上1以下の任意の値を示す。好ましくは、CHNHPbI、CHNHPbBr、CHNHPbCl、CHNHPbI(3-x)Cl、CHNHPbI(3-x)Br、CHNHPbBr(3-x)Cl、CHNHPb(1-y)SnBr、CHNHPb(1-y)SnCl、CHNHPb(1-y)Sn(3-x)Cl、CHNHPb(1-y)Sn(3-x)Br、CHNHPb(1-y)SnBr(3-x)Cl並びに、上記の化合物においてCHNHの代わりにNHCH=NH3、Cs、又はRbを用いた化合物、等が挙げられ、より好ましくは、CHNHPbI、CHNHPbBr、CHNHPbI(3-x)Cl、CHNHPbI(3-x)Br、CHNHPbBr(3-x)Cl、並びに、上記の化合物においてCHNHの代わりにNHCH=NH3、Cs、又はRbを用いた化合物、等が挙げられる。
活性層は、2種類以上の有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有していてもよい。例えば、A、B及びXのうちの少なくとも1つが異なる2種類以上の有機無機ハイブリッド型半導体化合物が活性層に含まれていてもよい。また、活性層は、異なる材料を含み又は異なる成分を有する複数の層で形成される積層構造であってもよい。
活性層に含まれる有機無機ハイブリッド型半導体化合物の量は、良好な半導体特性が得られるように、活性層の総質量に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。上限に特に制限はない。また、活性層には、有機無機ハイブリッド型半導体化合物以外の添加剤が含まれていてもよい。添加剤の例としては、ハロゲン化物、酸化物、又は硫化物、硫酸塩、硝酸塩若しくはアンモニウム塩等の無機塩のような、無機化合物、又は有機化合物が挙げられる。
活性層のイオン化ポテンシャルは、白色光を与える可視光領域の光源に対し、長波長領域の吸収可能域が充分に満たされ、発電効率が高くなりやすい点では、高いことが好ましい。そこで、具体的には、-6.0eV以上が好ましく、-5.95eV以上がより好ましく、-5.9eV以上がさらに好ましい。
また、一方で、活性層のイオン化ポテンシャルは、可視光領域の光源に対し、得られる電圧のロスを低減でき、発電効率が高くなりやすい点では、低いことが好ましい。そこで、具体的には、-5.7eV以下が好ましく、-5.75eV以下がより好ましく、-5.9eV以下がさらに好ましい。
活性層のバンドギャップは、屋内光等の低照度光によって半導体中に生成する励起子を正負電荷に分離する際に必要なエネルギーが充分に満たされ、発電効率が高くなりやすい点では、大きいことが好ましい。そこで、具体的には、1.6eV以上が好ましく、1.65eV以上がより好ましく、1.7eV以上がさらに好ましく、1.75eV以上が最も好ましい。
また、一方で、活性層のバンドギャップは、屋内光等によって生成する励起子に対し適度なエネルギーとなり(エネルギー過剰とならず)、発電効率が高くなりやすい点では、小さいことが好ましい。そこで、具体的には、2.3eV以下が好ましく、2.25eV以下がより好ましく、2.2eV以下がさらに好ましく、2.15eV以下が最も好ましい。
また、屋内や室内において広範に用いられる可視光光源である蛍光灯やLED灯等の低照度光源に対する、発電効率を特に向上させやすいことから、活性層のイオン化ポテンシャルとバンドギャップが共に上述の好ましい範囲であることが特に好ましい。すなわち、具体的には、活性層のイオン化ポテンシャルの範囲が-6.0eV以上-5.7eV以下であり、かつ、そのバンドギャップが1.6eV以上2.3eV以下であることが特に好ましい。
活性層のイオン化ポテンシャルを上記所望の範囲に調整する方法としては、例えば、有機無機ハイブリッド型半導体化合物の種類により調整することができる。具体的には、例えば、上述のペロブスカイト半導体化合物を用いる場合、そのカチオンの種類により調整することができる。より具体的には、後述するペロブスカイト半導体化合物形成のために用いる前駆体である有機もしくは無機アンモニウム塩の組成を、変更成分を含む組成比率で混合し、処理することなどによって適宜調整することが挙げられる。
また、活性層のバンドギャップを上記所望の範囲に調整する方法としては、例えば、有機無機ハイブリッド型半導体化合物の種類により調整することができる。具体的には、例えば、上述のペロブスカイト半導体化合物を用いる場合、そのアニオンの種類や比率により調整することができる。より具体的には、後述するペロブスカイト半導体化合物形成のために前駆体として用いる金属ハロゲン化合物のハロゲン種類比率の選択、あるいは、前駆体として用いる有機もしくは無機アンモニウム塩の組成を、対応するハロゲン組成を、変更成分を含む組成比率で混合し、処理することなどが挙げられる。
活性層の厚さに特段の制限はない。より多くの光を吸収できる点で、活性層103の厚さは、厚いことが好ましい。具体的には、10nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましく、100nm以上がさらに好ましく、150nm以上が特に好ましく、200nm以上が最も好ましい。一方で、直列抵抗が下がり、電荷の取出し効率が高くなりやすい点では薄いことが好ましい。具体的には、活性層の厚さは、1500nm以下が好ましく、1200nm以下がより好ましく、800nm以下がさらに好ましい。すなわち、活性層103の厚さは、200nm以上800nm以下が殊更好ましい。
活性層の形成方法は、特に限定されず、任意の方法により形成することができる。具体例としては、塗布法及び蒸着法(又は共蒸着法)が挙げられる。簡易に活性層を形成できる点で、塗布法が好ましい。例えば、有機無機ハイブリッド型半導体化合物又はその前駆体を含有する塗布液を塗布し、必要に応じて加熱乾燥することにより活性層を形成する方法が挙げられる。また、塗布液を塗布した後で、有機無機ハイブリッド型半導体化合物の溶解性が低い溶媒をさらに塗布することにより、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を析出させることもできる。
有機無機ハイブリッド型半導体化合物の前駆体とは、塗布液として塗布した後に有機無機ハイブリッド型半導体化合物となる化合物のことをいう。具体的な例として、加熱することにより有機無機ハイブリッド型半導体化合物となる有機無機ハイブリッド型半導体化合物前駆体を用いることができる。例えば、一般式AXで表される化合物と、一般式MXで表される化合物と、溶媒と、を混合して加熱攪拌することにより、塗布液を作製し、この塗布液を塗布して加熱乾燥を行うことにより、一般式AMXで表されるペロブスカイト半導体化合物を含有する活性層を作製することができる。溶媒としては、有機無機ハイブリッド型半導体化合物及び任意成分の添加剤が溶解するのであれば特に限定されず、例えばN,N-ジメチルホルムアミドのような有機溶媒が挙げられる。
塗布液の塗布方法としては任意の方法により行うことができるが、例えば、スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。
[バッファ層]
図1において、バッファ層は、活性層103と一対の電極101、105の少なくとも一方との間に位置する層である。バッファ層は、例えば、活性層103から下部電極101又は上部電極105へのキャリア移動効率を向上させるために用いることができ、正孔輸送層又は電子輸送層であることが好ましく、正孔輸送層であることがより好ましい。
[正孔輸送層]
正孔輸送層は、後述する式(I)で表されるカルバゾール化合物(以下、「本発明に係るカルバゾール化合物」、「式(I)で表されるカルバゾール化合物」または「式(I)で表される化合物」と言う場合がある。)を含有する。
本発明の発電デバイスは、正孔輸送層が本発明に係るカルバゾール化合物を含有することにより、正孔輸送層のイオン化ポテンシャルを後述する好適な範囲とすることができ、低照度下で高い発電効率を発現することができる。また、本発明に係るカルバゾール化合物では、塩基性を有する窒素原子上の非共有電子対がカルバゾール基の芳香族性により安定化されているため、他の芳香族3級アミンと比較して電子的に堅牢であり、適度な正孔輸送層を保持できるために好ましい。また、同様の理由で深いイオン化ポテンシャル(Ip)を取り易い点でも極めて好ましい。
式(I)で表される化合物は、ポリトリアリールアミン等の高分子化合物に比べ、分子量分布がなく、高純度化しやすく、安価に製造しやすい点でも好ましい。
<カルバゾール化合物>
式(I)で表されるカルバゾール化合物は有機半導体化合物である。一般的に、半導体化合物とは、半導体特性を示す半導体材料として使用可能な化合物のことをいう。本明細書において「半導体特性」は、固体状態におけるキャリア移動度の大きさによって定義される。キャリア移動度とは、周知であるように、電荷(電子又は正孔)がどれだけ速く(又は多く)移動されうるかを示す指標となるものである。具体的には、本明細書における「半導体」は、室温(25℃)におけるキャリア移動度が好ましくは1.0×10-6cm/V・s以上、より好ましくは1.0×10-5cm/V・s以上、さらに好ましくは5.0×10-5cm/V・s以上、特に好ましくは1.0×10-4cm/V・s以上である。なお、キャリア移動度は、例えば、電界効果トランジスタのI―V特性の測定、又はタイムオブフライト法等により測定できる。
Figure 2023064305000004
(式中のAr~Arは、それぞれ独立に、それぞれ1価の置換基を有していてもよい芳香族基であり、縮合環構造を有していてもよい。このうち、Arと環1、Arと環2、はそれぞれ独立に、縮合環構造を形成していてもよい。また、ArとAr、ArとArは、それぞれ独立に縮合環構造を形成していてもよい。これらの縮合環構造のうち少なくとも1つはカルバゾール構造を形成する。環2上のジアリールアミノ基(N(Ar)(Ar))は、環1と環2との間の結合に対して、メタ位もしくはパラ位のいずれかに位置する。)
式(I)で表される化合物の分子量は、堅牢性及び耐熱性の点では高いことが好ましく、また、一方で、溶媒への溶解性の点では低いことが好ましい。そこで、式(I)で表される化合物の分子量は、200以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましい。また、一方で、3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましい。
Ar~Arの式量は、堅牢性及び耐熱性の点では高いことが好ましく、また、一方で、溶媒への溶解性の点では低いことが好ましい。そこで、Ar~Arの式量は、置換基を有する場合はこれも含め、72以上であることが好ましく、144以上であることがより好ましい。また、一方で、1000以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましい。
式(I)で表される化合物に含まれるカルバゾール構造の数は、正孔輸送能及び堅牢性の観点から、1つ以上であることが好ましく、2つ以上であることがより好ましい。カルバゾール構造を2つ有する化合物は、正孔輸送能、堅牢性、及び合成容易性の観点から、カルバゾール構造が点対称に位置することが好ましい。
正孔輸送層に含まれる式(I)で表されるカルバゾール化合物の含有量は、正孔輸送層のイオン化ポテンシャルを後述する好適な範囲にすることが容易である点から多いことが好ましい。そこで、具体的には、正孔輸送層(総質量:100質量%)中に、40質量%以上含有されることが好ましく、50質量%以上含有されることがより好ましく、60質量%以上含有されることがさらに好ましい。ここで、上限は100質量%であるが、正孔輸送層へのドーパント添加によりキャリア移動度を高める場合は、ドーパントとの合計量が100質量%であることが上限となる。
正孔輸送層に含有される式(I)で表されるカルバゾール化合物は、式(II)又は式(III)で表されるカルバゾール化合物を含むことが好ましい。好適なカルバゾール化合物を含有する正孔輸送層は後述する好適なイオン化ポテンシャルを示しやすい。すなわち、正孔輸送層に式(II)及び/又は式(III)で表されるカルバゾール化合物が含有される場合、その合計量が上述の好ましい含有量となることが好ましい。
式(II)で表されるカルバゾール化合物(以下、単に「式(II)で表される化合物」と言う場合がある。)について説明する。
Figure 2023064305000005
(式中のArとArは、それぞれ独立の1価の置換基を有していてもよい芳香族基であり、前記芳香族基は縮合環構造を有していてもよい。前記1価の置換基は、前記芳香族基が有する任意の水素原子を置換する任意の置換基であり、アルキル基、芳香族基、アルコキシ基、又はチオアルキル基であってもよい。R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、或いは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又は芳香族基である。)
ArとArを構成する芳香族基は、単環構造又は多環構造の何れを有していてもよいし、縮合環構造を有していてもよいし、これらが任意の2価の連結基又は単結合(直接結合)によって連結された構造を有していてもよい。
ここで、芳香族基は、芳香族炭化水素基であってもよいし、芳香族複素環式基であってもよい。
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基(terphenyl)等の炭素-炭素単結合を介してベンゼン環が結合した多環式芳香族炭化水素基の他;ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環又は2~5縮合環由来の基等が挙げられる。
芳香族複素環式基としては、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の、5又は6員環の単環又は2~4縮合環由来の基が挙げられる。
ArとArの炭素数は、正孔輸送層の成膜性が高く、イオン化ポテンシャルを後述する好適な範囲としやすい観点から、それぞれ独立に30以下が好ましく、20以下がより好ましい。
具体的な好ましいArとArとしては、それぞれ独立に、例えば、ビフェニル基、ターフェニル基、クオターフェニル基等が挙げられ、Ar及びArが共にターフェニル基であることが最も好ましい。ターフェニル基はオルト、メタ、パラの何れの異性体であってもよいが、成膜性やイオン化ポテンシャルが後述する好適な範囲となり易いことから、パラ体であることが好ましい。ターフェニル基が有する水素原子は置換基によって置換されていないことが好ましい。
芳香族基が有してもよい置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~6の鎖状)、芳香族基(すなわち1価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~12)、チオアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、アミノ基(好ましくは炭素数2~12のジアルキルアミノ基、炭素数7~20のアルキルアリールアミノ基、又は炭素数12~30のジアリールアミノ基)、カルボキシル基、エステル基、アルキルカルボニル基、アセチル基、スルホニル基、シリル基、ボリル基、ニトリル基、アルケニル基、アルキニル基、チオ基、セレノ基等が挙げられる。これらのうち、アルキル基、芳香族基、アルコキシ基又はチオアルキル基が好ましい。
置換基は、下記の置換基群Zから選択される1種又は2種以上であってもよい。
(置換基群Z)
メチル基、エチル基等の好ましくは炭素数1~24、更に好ましくは炭素数1~12のアルキル基;
ビニル基等の好ましくは炭素数2~24、更に好ましくは炭素数2~12のアルケニル基;
エチニル基等の好ましくは炭素数2~24、更に好ましくは炭素数2~12のアルキニル基;
メトキシ基、エトキシ基等の好ましくは炭素数1~24、更に好ましくは炭素数1~12のアルコキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の好ましくは炭素数4~36、更に好ましくは炭素数5~24のアリールオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の好ましくは炭素数2~24、更に好ましくは炭素数2~12のアルコキシカルボニル基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の好ましくは炭素数2~24、更に好ましくは炭素数2~12のジアルキルアミノ基;
ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N-カルバゾリル基等の好ましくは炭素数10~36、更に好ましくは炭素数12~24のジアリールアミノ基;
フェニルメチルアミノ基等の好ましくは炭素数6~36、更に好ましくは炭素数7~24のアリールアルキルアミノ基;
アセチル基、ベンゾイル基等の好ましくは炭素数2~24 、好ましくは炭素数2~12のアシル基;
フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
トリフルオロメチル基等の好ましくは炭素数1~2、更に好ましくは炭素数1~6のハロアルキル基;
メチルチオ基、エチルチオ基等の好ましくは炭素数1~24、更に好ましくは炭素数1~12のアルキルチオ基;
フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の好ましくは炭素数4~36、更に好ましくは炭素数5~24のアリールチオ基;
トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の好ましくは炭素数2~36、更に好ましくは炭素数3~24のシリル基;
トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の好ましくは炭素数2~36、更に好ましくは炭素数3~24のシロキシ基;
シアノ基;
フェニル基、ナフチル基等の好ましくは炭素数6~36、更に好ましくは炭素数6~24の芳香族炭化水素基;
チエニル基、ピリジル基等の好ましくは炭素数3~36、更に好ましくは炭素数4~24の芳香族複素環基;
これらの各置換基は、さらに置換基を有していてもよく、その例としては上述の置換基群Zに例示した基を挙げることができる。
各置換基の式量は、式(II)で表される化合物の溶剤に対する溶解性や成膜性の観点から、置換基がさらに別の置換基で置換された場合も含めて、500以下であることが好ましく、250以下であることがより好ましい。
式(II)においてArとArは、トリフェニルアミンが有する水素原子の置換基と捉えることもできる。ここで、ArとArは互いに異なるフェニル基を置換する置換基であり、その位置は、中心の窒素原子に対してそれぞれ独立にオルト位、メタ位、パラ位の何れであってもよいが、化合物の立体構造的な安定性や合成の容易さ等を考慮して、パラ位であることが好ましい。ArとArが結合していない残りのフェニル基には、式(II)で示すように、フェニレン基を介してカルバゾールの窒素原子が結合している。
式(II)のR~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、或いは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又は芳香族基(すなわち1価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基)である。これらの基が有していてもよい置換基の例示は、前述の置換基群Zと同様である。
~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、及び炭素数1~3のアルコキシ基から選択される1種以上であることが好ましく、水素原子がより好ましい。
式(III)で表されるカルバゾール化合物(以下、単に「式(III)で表される化合物」と言う場合がある。)について説明する。
Figure 2023064305000006
(式中、ArとArは、それぞれ独立の1価の置換基を有していてもよい芳香族基であり、前記芳香族基は縮合環構造を有していてもよい。前記1価の置換基は、前記芳香族基が有する任意の水素原子を置換する任意の置換基であり、アルキル基、芳香族基、アルコキシ基、又はチオアルキル基であってもよい。R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、或いは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又は芳香族基である。)
ArとArを構成する芳香族基は、前述のArおよびArと同様である。
ArとArの炭素数についても前述のArおよびArと同様であるが、10以下がさらに好ましい。
具体的な好ましいArおよびArとしては、それぞれ独立に、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、及びテトラフェニル等が挙げられ、Ar及びArが共にフェニル基であることが最も好ましい。フェニル基が有する水素原子は置換基によって置換されていないことが好ましい。
式(III)においてArとArは互いに異なるフェニル基を置換する置換基であり、カルバゾール構造が有する窒素原子に対してそれぞれ独立にオルト位、メタ位、パラ位の何れであってもよいが、化合物の立体構造的な安定性や合成の容易さ等を考慮して、メタ位又はパラ位が好ましく、メタ位がより好ましい。
式(III)におけるR~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、或いは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又は芳香族基(すなわち1価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基)である。これらの基が有していてもよい置換基の例示は、前述の置換基群Zと同様である。
~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、及び炭素数1~3のアルコキシ基から選択される1種以上であることが好ましく、水素原子がより好ましい。
式(I)で表されるカルバゾール化合物は、後述する実施例のように公知の方法で合成することができる。また、正孔輸送層に含有される化合物が式(I)で表されるカルバゾール化合物であることは、H-NMR、13C-NMR、単結晶を用いたX線結晶構造解析、及びLC-MS等の分析法により確認することができる。
(その他の半導体化合物)
正孔輸送層は、本発明の効果が損なわれない限り、式(I)で表されるカルバゾール化合物以外の半導体化合物を含有しても構わない。その他の半導体化合物としては、例えば、従来公知の半導体化合物を用いてもよい。その他の有機半導体化合物としては、種々の低分子化合物及び高分子化合物が知られている。低分子の有機半導体化合物としては、多環芳香族化合物が挙げられ、具体例としては、テトラセン若しくはペンタセン等のアセン類化合物、オリゴチオフェン類化合物、フタロシアニン類化合物、ペリレン類化合物、ルブレン類化合物、又はトリアリールアミン化合物等のアリールアミン化合物、等が挙げられる。また、高分子の有機半導体化合物としては、ポリチオフェン系ポリマー、ポリアセチレン系ポリマー、ポリアニリン系ポリマー、ポリフェニレン系ポリマー、ポリフェニレンビニレン系ポリマー、ポリフルオレン系ポリマー、若しくはポリピロール系ポリマーのような共役ポリマー、又はトリアリールアミンポリマーのようなアリールアミンポリマーが挙げられる。
正孔輸送層を形成する際は、前述のカルバゾール化合物以外に、ドーパントを用いることが好ましい。ドーパントを用いることで、その導電性や正孔輸送能力等の特性を調整することができる。
ドーパントの量は、正孔輸送層の導電性や正孔輸送能力が向上しやすいことから多いことが好ましい。そこで、具体的には、ドーパントの量は、前記カルバゾール化合物100質量部に対し、0.001質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましく、0.1質量部以上が特に好ましい。
また、一方で、ドーパントの量は、発電デバイスのリーク電流の発生を抑制し、特に低照度環境下における発電効率が向上しやすいことから少ないことが好ましい。そこで、具体的には、前記カルバゾール化合物100質量部に対し、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましい。
すなわち、正孔輸送層の形成にドーパントを用いる場合におけるドーパントの量は、前記カルバゾール化合物100質量部に対し、0.1~12質量部とすることが特に好ましい。
<ドーパント>
正孔輸送層の形成にドーパントを用いると、正孔輸送層の導電性や正孔輸送能力を活性層に対してより最適化することができる。
ドーパントとして使用できる物質としては、例えば、超原子価ヨウ素化合物、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートなどのホウ素化合物、トリス[1-(メトキシカルボニル)-2-(トリフルオロメチル)-エタン-1,2-ジチオレン]モリブデンなどのモリブデン化合物、2,3,4,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタンといったテトラシアノキノジメタン骨格を有する有機化合物などが挙げられる。
ドーパントは、正孔輸送層の成膜前または成膜後に、少なくとも何れかの有機半導体化合物との間で電荷移動反応を起こすことが好ましい。ドーパントとしては、溶解性に優れ、加熱等により酸化剤として機能する電子受容活性部位を産生しやすい点で、超原子価ヨウ素化合物が好ましい。
超原子価ヨウ素化合物は、有機半導体化合物に対するドーパントとして働き、電子受容性(すなわち酸化剤としての働き)を示すことが知られている。また、電子受容性のドーパントは、有機半導体化合物から電子を奪うことにより、有機半導体化合物の導電性又は正孔輸送能力を向上させることができる。
超原子価ヨウ素化合物は、超原子価ヨウ素を含む化合物であり、酸化数が3価以上となっているヨウ素を含む化合物と定義される。例えば、ドーパントは、ヨウ素(III)化合物又はヨウ素(V)化合物が好ましい。5価のヨウ素を含むヨウ素(V)化合物は、例えば、デス・マーチン・ペルヨージナンのようなペルヨージナン化合物が挙げられる。また、3価のヨウ素を含むヨウ素(III)化合物としては、(ジアセトキシヨード)ベンゼンのようなヨードベンゼンが酸化された構造を有する化合物、又はジアリールヨードニウム塩が挙げられる。良好な電子受容性を示し、また酸化過程において分子が破壊されると逆反応が起こりにくい点で、ドーパントは、3価のヨウ素を含む有機化合物が好ましく、中でもジアリールヨードニウム塩を用いるのがより好ましい。
ジアリールヨードニウム塩とは、[Ar-I-Ar]X構造を有する塩のことである。ここで、2つのArはそれぞれ芳香族基を表す。芳香族基は特に限定されず、例えば、置換基群Zで例示したような芳香族基等が挙げられる。Xは、任意のアニオンを表す。Xとしては、例えば、ハロゲン化物イオン、トリフルオロ酢酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、又はテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン等が挙げられる。溶解性が高く、塗布液の生成反応が円滑に進行し得る点で、Xはフッ素原子を有するアニオンであることが好ましい。
ドーパントの好ましい例としては、下記式(Q)に表されるものが挙げられる。式(Q)において、Xは、任意のアニオンを表し、具体例としては上記の通りである。
[R11-I -R12]X (Q)
式(Q)において、R11及びR12は、それぞれ独立に1価の有機基である。1価の有機基の例としては、脂肪族基および芳香族基が挙げられる。
脂肪族基としては、例えば炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数4~20の脂肪族複素環基が挙げられる。具体的には、例えば、シクロアルキル基を含むアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基等が挙げられ、具体例としてはメチル基、エチル基、ブチル基、シクロヘキシル基、又はテトラヒドロフリル基等が挙げられる。
芳香族基としては、例えば、炭素数6~20の芳香族炭化水素基又は炭素数2~20の芳香族複素環基が挙げられる。具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、チエニル基、又はピリジル基等が挙げられる。
上記の脂肪族基及び芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、アルキルカルボニル基、アセチル基、スルホニル基、シリル基、ボリル基、ニトリル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、チオ基、セレノ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基等が挙げられる。
11及びR12は、好ましくは炭素数6~20の芳香族炭化水素基であり、より好ましくはフェニル基である。ここで、芳香族炭化水素基は置換基を有さない又は炭素数1~6のアルキル基を有することが好ましい。R11及びR12は、特に、パラ位にアルキル基を有するフェニル基であることが好ましい。
正孔輸送層のイオン化ポテンシャルは、活性層で生成する正孔に対するマッチングが良好となり、エネルギー損失を抑制しやすい点で特定の範囲であることが好ましい。具体的には、-5.9eV以上が好ましく、-5.75eV以上がより好ましく、-5.70eV以上がさらに好ましい。また、一方で、正孔輸送層のイオン化ポテンシャルは、-5.3eV以下が好ましく、-5.45eV以下がより好ましく、-5.5eV以下がさらに好ましい。すなわち、正孔輸送層のイオン化ポテンシャルは、-5.9eV以上-5.3eV以下であることが特に好ましい。
正孔輸送層のイオン化ポテンシャルは、上述のとおり、本発明に係るカルバゾール化合物を用いることにより、調整することができる。イオン化ポテンシャルを上記所望の範囲とするためのより詳細な方法としては、例えば、式(I)で表されるカルバゾール化合物において、芳香族化合物の置換基の種類や位置を適切に配置することにより、化合物の電子状態を制御することが挙げられる。また、正孔輸送層に後述するドーパントなどを併用することなどによって、正孔輸送層に含有される化合物の電子状態を調整する、すなわち化合物の全体もしくは一部を酸化もしくは還元することなどが挙げられる。
本発明に係る発電デバイスの正孔輸送層の厚みは、上下の電極間に位置する活性層が高い電荷輸送能を有する場合に、上下の電極と活性層とを介した導通パスの形成による電流のリークが起こり難い点では厚いことが好ましい。そこで、具体的には、20nm以上が好ましく、40nm以上がより好ましく、60nm以上がさらに好ましい。また、一方で、正孔輸送層による電荷輸送における抵抗が起こり難く、正孔輸送層に含有される化合物の量の節約による低コスト化の点では、薄いことが好ましい。具体的には、1000nm以下が好ましく、750nm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましい。
[電極]
図1において、電極は、活性層103における光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有する。本発明の一実施形態に係る発電デバイス100は一対の電極を有し、一対の電極のうち一方を上部電極と呼び、他方を下部電極と呼ぶ。発電デバイス100が基材を有する又は基材上に設けられている場合、通常、基材により近い電極を下部電極と、基材からより遠い電極を上部電極と、それぞれ呼ぶことができる。また、透明電極を下部電極と、下部電極よりも透明性が低い電極を上部電極と、それぞれ呼ぶこともできる。図1に示す発電デバイス100は、下部電極101及び上部電極105を有している。
一対の電極としては、正孔の捕集に適したアノードと、電子の捕集に適したカソードとを用いることができる。この場合、発電デバイス100は、下部電極101がアノードであり、上部電極105がカソードである順型構成を有していてもよいし、下部電極101がカソードであり、上部電極105がアノードである逆型構成を有していてもよい。
一対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であってもよい。透光性があるとは、通常太陽光(波長350~700nm)の透過率が40%以上であることをいう。電極の太陽光の透過率は、より多くの光が透明電極を透過して活性層に到達することから高いことが好ましく、70%以上であることが特に好ましい。太陽光の透過率は、分光光度計(例えば、日立ハイテク社製U-4100)で測定することができる。
下部電極101及び上部電極105、又はアノード及びカソードの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、公知の技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載された部材及びその製造方法を用いることができる。
[電子輸送層]
本発明に係る発電デバイスは、電子輸送層を有していてもよい。電子輸送層の材料としては、活性層からカソードへの電子の取り出し効率を向上させることが可能な任意の材料を用いることができる。具体的には、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の無機化合物、有機化合物、又は本発明に係る有機無機ペロブスカイト半導体化合物が挙げられる。例えば、無機化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム又はセシウム等のアルカリ金属の塩、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム又は酸化インジウム等の金属酸化物が挙げられる。有機化合物としては、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントレン(Bphen)、(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)、ホウ素化合物、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)、ペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)、フラーレン化合物、又はホスフィンオキシド化合物若しくはホスフィンスルフィド化合物等の周期表第16族元素と二重結合を有するホスフィン化合物が挙げられる。
本発明に係る発電デバイスが電子輸送層を備える場合、その厚みは、上下の電極間に位置する活性層が高い電荷輸送能を有する場合に、上下の電極と活性層とを介した導通パスの形成による電流のリークが起こり難く、下部電極の凹凸の影響をカバーでき、かつ、活性層の塗れ性を制御しやすいことから、厚いことが好ましい。そこで、具体的には、1nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、10nm以上がさらに好ましい。また、一方で、電子輸送層による電荷輸送における抵抗が起こり難く、電子輸送層に含有される化合物の量の節約による低コスト化の点では、薄いことが好ましい。具体的には、200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましい。
[基材]
本発明に係る発電デバイスは、基材を有していてもよい。図1において、発電デバイス100は支持体となる基材106を有しているが、本発明に係る発電デバイスは基材106を有さなくてもよい。基材を有する場合における基材106の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されず、例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の材料を使用することができる。
≪発電デバイスの製造方法≫
本発明の発電デバイスの製造方法としては、上述のカルバゾール化合物を正孔輸送層に含有させることができる方法であれば特に制限されず、公知のペロブスカイト半導体化合物を用いた発電デバイスの製造方法を適用することができる。例えば、上述のカルバゾール化合物、ドーパント、及び溶媒を含有する塗布液を作製し、スピンコート法やインクジェット法等の湿式成膜法を用いることにより、正孔輸送層を形成することができる。同様の塗布方法により電子輸送層を形成することもできる。また、真空蒸着法等の乾式成膜法により、これらのバッファ層を形成することもできる。但し、正孔輸送層は、塗布法により形成することが好ましく、前述のカルバゾール化合物およびドーパントを含有する液を塗布することがより好ましい。すなわち、本発明の発電デバイスの製造方法としては、正孔輸送層を塗布法により形成する工程を有し、この塗布法において、前述のカルバゾール化合物およびドーパントを含有する液を塗布することがより好ましい。
図1において、発電デバイス100を構成する各層を積層することにより、発電デバイス100を製造することができる。例えば、シートツゥーシート(枚葉)方式、又はロールツゥーロール方式等の公知方法を適用することができる。
発電デバイス100を製造する際、上部電極105を積層した後に、発電デバイス100を例えば、下限値が50℃~80℃で上限値が280℃~300℃の温度範囲にて加熱してもよい(この加熱工程をアニーリング処理工程と称する場合がある)。アニーリング処理工程は、発電デバイス100の各層間の密着性、例えばバッファ層102と下部電極101、バッファ層102と活性層103等の層間の密着性が向上する効果が得られやすい点では高温で行うことが好ましい。具体的には、50℃以上で行うことが好ましい。各層間の密着性が向上することにより、発電デバイスの熱安定性や耐久性等が向上し得る。また、一方で、アニーリング処理工程の温度は、発電デバイス100に含まれる有機化合物が熱分解し難い点では低温で行うことが好ましい。具体的には、300℃以下で行うことが好ましい。アニーリング処理工程においては、上記の温度範囲内において異なる温度を用いた段階的な加熱を行ってもよい。
上記の好適な温度範囲における加熱時間としては、熱分解を抑えながら密着性を向上させやすい点では、1~3分以上で、60~180分以下とすることが好ましい。
アニーリング処理工程は、太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることが好ましい。また、アニーリング処理工程は、構成材料の熱酸化を防ぐ上でも、常圧下、かつ不活性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。加熱方法としては、ホットプレート等の熱源に発電デバイスを載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気中に発電デバイスを入れてもよい。また、加熱はバッチ式で行っても連続方式で行ってもよい。
[光電変換特性]
発電デバイス100の光電変換特性は、次のようにして求めることができる。発電デバイス100に適当なスペクトルの光をある照射強度で照射して、電流-電圧特性を測定する。得られた電流-電圧曲線から、光電変換効率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。一例として、発電デバイス100に色温度5000Kの白色LED光を適当な照射強度(照度)で照射することで、各照度における電流-電圧特性を測定することができる。
本発明に係る発電デバイスの一実施形態は、低照度(10~5000ルクス)における発電効率に優れ、例えば、色温度5000Kの白色LED光等の白色光源を用いて、光電変換効率を20%以上とすることが可能である。さらに、色温度5000Kの白色LED光が照射され、受光面の照度が200ルクスであるときの光電変換効率を25%以上とすることが可能である。
なお、この光電変換効率(PCE)は、所定の照射光により測定される、発電デバイスの電流-電圧曲線の最適動作点における出力(最大出力)をこの照射光が有する総エネルギー量で除した値(%)である。
上記の総エネルギー量として、例えば、強度AM1.5Gの太陽光であれば100mW/cmであり、色温度5000Kの白色LED光が照射され、受光面の照度が200ルクスであれば100μW/cmである。
なお、本明細書における色温度5000Kとは、JIS Z8725:2015の規格で定められたものである。
[太陽電池]
本発明に係る発電デバイスは、低照度下における光電変換効率に優れるので、屋内用の太陽電池として好適である。図2は本発明の発電デバイスを備えた太陽電池の一例であって、前述の発電デバイス100を備えた薄膜太陽電池14であり、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、発電デバイス100(不図示)を有する太陽電池素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10と、をこの順に備える。薄膜太陽電池14の保護フィルム1が形成された側(図2中下方)から光が照射されて、太陽電池素子6が発電するように構成されている。なお、薄膜太陽電池14は、これらの構成部材を全て有する必要はなく、必要な構成部材を任意に選択することができる。
薄膜太陽電池14は単独で使用されてもよいし、複数の薄膜太陽電池14が連結されて使用されたり、更に他の構成部材と組み合わせた太陽電池モジュールの構成要素として用いられたりしてもよい。例えば、図3に示すように、薄膜太陽電池14を基材12上に備える太陽電池モジュール13を作製し、この太陽電池モジュール13を使用場所に設置して用いることができる。
上述の各構成部材の選定及びその製造方法は周知技術を適用すればよく、例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の技術が挙げられる。
本発明の発電デバイス及びこれを備えた太陽電池若しくは太陽電池モジュールの用途に制限はなく、例えば、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池等の用途が挙げられる。
本発明の発電デバイス及びこれを備えた太陽電池若しくは太陽電池モジュールは、低照度環境下で優れた光電変換効率を示すことから、特にエネルギーハーベスティング用途に好適である。
以下、実施例により本発明の実施形態の一例を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
[イオン化ポテンシャルの測定]
薄膜ITOが形成されたガラス基板上に、評価対象となる半導体化合物を含む活性層又は正孔輸送層を成膜し、これに光を照射し、生成する光電子の数を酸素が必要なオープンカウンターで計測した。このオープンカウンターでは、大気下で光電子を酸素分子に捕捉させることにより、イオン化された酸素分子が計測される。照射する光のエネルギーを上げていくと光電子の放出が始まる閾値が観測されるが、この閾値、すなわち照射エネルギーが光電子をはじき出すのに必要な最低エネルギー(eV)が、イオン化ポテンシャル(eV)に相当する。このような光電子係数方式によるイオン化ポテンシャル測定を、理研計器(株)の「AC-2」、「AC-3」等のシリーズで行った。
なお、測定に供する活性層又は正孔輸送層の厚さは、測定値を実質的に左右することはなく、例えば、400nm~600nmの厚さで成膜された活性層、5nm~100nmの厚さで成膜された正孔輸送層を測定すればよい。また、測定に供する活性層又は正孔輸送層は、大気に露出している状態であればよく、薄膜ITOの表面に接して成膜されている必要はなく、例えば、薄膜ITOに成膜された正孔輸送層の表面に積層された活性層を測定してもよい。この活性層の測定において正孔輸送層の種類や性能が測定値に実質的な影響を与えることはない。すなわち、活性層及び正孔輸送層のイオン化ポテンシャルは、積層環境(下層の有無や種類)に影響されない。
上記で使用する薄膜ITOを備えた導電性ガラスは市販品を使用することができ、薄膜ITOの抵抗値(表面抵抗率)は特に制限されず、例えば2Ω/sq.~1000Ω/sq.とすることができる。
[バンドギャップの算出]
活性層のバンドギャップは、活性層を構成する半導体化合物のバンドギャップと同値であるとみなすことができるので、その半導体化合物の吸収端波長と吸光度とから算出した。透明ガラス基板等の適当な基材上に半導体化合物の薄膜を常法により成膜し(厚さ目安20~500nm)、その透過スペクトルを測定し、横軸波長をeVに、縦軸透過率を√(αhν)に変換した(ここで、αは吸光係数を意味し、hはプランク定数を意味し、νは振動数を意味する)。この吸収の立ち上がりを直線としてフィッティングし、ベースラインと交わるeV値をバンドギャップとして算出した。この透過スペクトルは、例えば、日立ハイテク製「U-4100」等の分光光度計を使用して測定した。
上記のフィッティング及びバンドギャップの算出は、文献(山下大輔、石崎温史:分析化学 66,333(2017))に記載の方法に準じて行った。
[発電デバイスの光電変換効率の測定]
色温度5000Kの白色LED光を発電デバイスに照射した。この際、照度計を用いて発電デバイスの受光面が200ルクスの照度となるように照射強度を調整した。この環境下で、ソースメータを用いて電流-電圧曲線(I-V曲線)を測定し、その最大出力値を求めた。この値を上記の照射光が有する総エネルギー量で除して、発電デバイスの光電変換効率(%)を得た。ここで、上記の色温度は、JIS Z8725:2015 に準拠して測定されたものである。
[実施例1]
(電子輸送層用塗布液の調製)
酸化スズ(IV)15質量%水分散液(Alfa Aesar社製)に超純水を加えることにより、7.5質量%の酸化スズ水分散液を調製した。
(活性層用塗布液の調製)
ヨウ化鉛(II)をバイアル瓶に量りとり、これをグローブボックス内に導入した。ヨウ化鉛(II)の濃度が1.3mol/Lとなるように溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミドを加え、その後、100℃で1時間加熱撹拌することにより活性層用塗布液1を調製した。
次に、別のバイアル瓶にホルムアミジン臭化水素酸塩(FABr)、メチルアミン臭化水素酸塩(MABr)、及びメチルアミン塩化水素酸塩(MACl)を7.25:1:1.5の質量比となるよう量りとり、グローブボックス内に導入した。これに溶媒としてイソプロピルアルコールを加えることにより、FABr、MABr、及びMAClの合計濃度が0.49mol/Lである活性層用塗布液2を調製した。
(カルバゾール化合物Aの合成)
先行文献(Yang,J.W.et.al.,Phys.Chem.Chem.Phys.2015,17,24468.)に記載の方法にて、下記式(A)で示すカルバゾール化合物Aを合成した。
Figure 2023064305000007
(正孔輸送層用塗布液の調製)
カルバゾール化合物Aを40mM、電子受容性ドーパントである4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(TPFB;TCI社製)を5.0mM含有するo-ジクロロベンゼン溶液を調製した。次に、この溶液を150℃で1時間加熱撹拌することにより、正孔輸送層用塗布液を調製した。
(発電デバイスの作製)
パターニングされた酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜を備えるガラス基板(ジオマテック社製)に対して、超純水を用いた超音波洗浄、窒素ブローによる乾燥、及びUV-オゾン処理を行った。
この上に、上述の電子輸送層用塗布液を、室温で上記のガラス基板上に2000rpmの速度で厚さ約35nmとなるようにスピンコートした後に、ホットプレート上150℃で10分間加熱することにより、電子輸送層を形成した。
この電子輸送層が形成されたガラス基板をグローブボックス内に導入し、100℃に加熱した活性層用塗布液1(150μL)を電子輸送層上に滴下し、2000rpmの速度でスピンコートし、ホットプレート上100℃で10分間加熱アニールすることにより、ヨウ化鉛層を形成した。さらに、ヨウ化鉛層が形成されたガラス基板を室温に戻した後、ヨウ化鉛層上に活性層塗布液2(120μL)を2000rpmの速度でスピンコートし、ホットプレート上150℃で20分間加熱し、その後室温(25℃)まで冷却することにより、有機無機ペロブスカイト半導体化合物の活性層(厚さ650nm)を形成した。
この活性層について、上述の方法によりイオン化ポテンシャル及びバンドギャップを測定した。
この活性層上に、正孔輸送層塗布液(120μL)を2000rpmの速度でスピンコートし、さらにホットプレート上90℃で5分間加熱し、その後室温(25℃)まで冷却することにより、正孔輸送層(厚さ100nm)を形成した。
この正孔輸送層について、上述の方法によりイオン化ポテンシャルを測定した。
この正孔輸送層上に、抵抗加熱型真空蒸着法により、厚さ10nmのMoO、厚さ30nmのIZO及び厚さ100nmの銀をこの順で蒸着させ、上部電極を形成した。
以上のようにして、発電デバイスを作製した。
この発電デバイスにおける、活性層のイオン化ポテンシャルとバンドギャップ、正孔輸送材料のイオン化ポテンシャル、及び色温度5000Kの白色LED光を照射し、受光面の照度が200ルクスであるときの光電変換効率の測定結果を表1に示す。
[実施例2]
カルバゾール化合物Aの代わりに、下記式(B)で示すカルバゾール化合物Bを用いた以外は実施例1と同様にして発電デバイスを作製し、各測定を行った。その結果を表1に示す。
Figure 2023064305000008
ここで、上記カルバゾール化合物Bは、先行文献(特開2010-206191)に記載の方法にて合成した。
[比較例1]
正孔輸送層塗布液として、カルバゾール化合物Aを用いる代わりに、ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA,シグマアルドリッチ社製)を用いた以外は実施例1と同様にして発電デバイスを作製し、各測定を行った。その結果を表1に示す。
Figure 2023064305000009
表1に示すように、カルバゾール化合物AまたはBを含有する正孔輸送層を備えた実施例1~2の発電デバイスは、低照度白色LEDを光源とする変換効率において、比較例1よりも優れていた。
ここで、各実施例の発電デバイスにおける活性層のイオン化ポテンシャルは-6.0eV以上-5.7eV以下であり、活性層のバンドギャップが1.6eV以上2.3eV以下であり、かつ、正孔輸送層のイオン化ポテンシャルが-5.9eV以上-5.3eV以下であったことから、本発明に係るカルバゾール化合物を用いることにより、活性層と正孔輸送層のエネルギー状態が好適な範囲となり、低照度下において優れた変換効率を発現させたと考えられる。
一方、比較例1の発電デバイスにあっては、正孔輸送層が本発明に係るカルバゾール化合物を含まないため、変換効率が劣っていた。
1 耐候性保護フィルム
2 紫外線カットフィルム
3,9 ガスバリアフィルム
4,8 ゲッター材フィルム
5,7 封止材
6 太陽電池素子(発電デバイス)
10 バックシート
12 基材
13 太陽電池モジュール
14 薄膜太陽電池
100 発電デバイス
101 下部電極
102 バッファ層
103 活性層
104 バッファ層
105 上部電極
106 基材

Claims (8)

  1. 上部電極と下部電極とにより構成される一対の電極と、前記一対の電極間に位置し、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する活性層と、前記活性層と前記一対の電極の少なくとも一方との間に位置する正孔輸送層と、を有する発電デバイスであって、
    前記正孔輸送層が、下記式(I)で表されるカルバゾール化合物を含有する、発電デバイス。
    Figure 2023064305000010
    (式中のAr~Arは、それぞれ独立に、それぞれ1価の置換基を有していてもよい芳香族基であり、縮合環構造を有していてもよい。このうちArと環1、Arと環2、はそれぞれ独立に、縮合環構造を形成していてもよい。また、ArとAr、ArとArは、それぞれ独立に縮合環構造を形成していてもよい。これらの縮合環構造のうち少なくとも1つはカルバゾール構造を形成する。環2上のジアリールアミノ基(N(Ar)(Ar))は、環1と環2との間の結合に対して、メタ位もしくはパラ位のいずれかに位置する。)
  2. 前記カルバゾール化合物が、下記式(II)又は下記式(III)で表されるカルバゾール化合物を含む、請求項1に記載の発電デバイス。
    Figure 2023064305000011
    (式中のArとArは、それぞれ独立の1価の置換基を有していてもよい芳香族基であり、前記芳香族基は縮合環構造を有していてもよい。前記1価の置換基は、前記芳香族基が有する任意の水素原子を置換する任意の置換基であり、アルキル基、芳香族基、アルコキシ基、又はチオアルキル基であってもよい。R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、或いは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又は芳香族基である。)
    Figure 2023064305000012
    (式中、ArとArは、それぞれ独立の1価の置換基を有していてもよい芳香族基であり、前記芳香族基は縮合環構造を有していてもよい。前記1価の置換基は、前記芳香族基が有する任意の水素原子を置換する任意の置換基であり、アルキル基、芳香族基、アルコキシ基、又はチオアルキル基であってもよい。R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、或いは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又は芳香族基である。)
  3. 前記活性層のイオン化ポテンシャルが-6.0eV以上-5.7eV以下であり、かつ、前記活性層のバンドギャップが1.6eV以上2.3eV以下であるとともに、前記正孔輸送層のイオン化ポテンシャルが-5.9eV以上-5.3eV以下である、請求項1又は2に記載の発電デバイス。
  4. 前記有機無機ハイブリッド型半導体化合物が、ペロブスカイト構造を有する化合物である、請求項1~3の何れか一項に記載の発電デバイス。
  5. 前記活性層の厚みが200nm以上800nm以下である、請求項1~4の何れか一項に記載の発電デバイス。
  6. 色温度5000Kの白色LED光を照射し、受光面の照度が200ルクスであるときの光電変換効率が25%以上である、請求項1~5の何れか一項に記載の発電デバイス。
  7. 請求項1~6の何れか一項に記載の発電デバイスの製造方法であって、前記正孔輸送層を塗布法により形成する工程を有し、前記塗布法において、前記カルバゾール化合物およびドーパントを含有する液を塗布する、発電デバイスの製造方法。
  8. 前記ドーパントが、3価のヨウ素を含むジアリールヨードニウム塩である、請求項7に記載の発電デバイスの製造方法。
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