JP2022147606A - 表面窒化方法 - Google Patents

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Yuji Kobayashi
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Abstract

【課題】対象物の所望の部分に所望の窒化層を形成することが可能な表面窒化方法を提供する。【解決手段】表面窒化方法は、金属材料からなる対象物の表面に窒化層を形成する表面窒化方法であって、対象物の表面に形成される窒化層の厚さを制御するために対象物の表面に前処理を行う前処理工程S2と、前処理工程S2後の対象物を窒化する窒化工程S3と、を含む。前処理工程S2は、対象物の表面における予め設定された対象部分に第1深さで歪を導入する第1導入工程S21を含む。【選択図】図1

Description

本開示は、表面窒化方法に関する。
金属材料の表面を窒化する表面窒化法が知られている(例えば、特許文献1)。窒化は、マルテンサイト膨張を伴わない熱処理なので、熱歪みが少ない。よって、窒化は、様々な部材の製造に広く利用されている。
特開2006-28588号公報
窒化は浸炭等と同様に雰囲気熱処理である。雰囲気熱処理は、熱処理の対象物の全体を加熱するので、対象物のどの部分においても均一な熱処理効果を得ることができる。言い換えると、雰囲気熱処理では、対象物の所望の部分に所望の熱処理効果を付与することができない。
本開示は、対象物の所望の部分に所望の窒化層を形成することが可能な表面窒化方法を提供する。
本開示の一側面に係る表面窒化方法は、金属材料からなる対象物の表面に窒化層を形成する表面窒化方法である。この表面窒化方法は、対象物の表面に形成される窒化層の厚さを制御するために対象物の表面に前処理を行う前処理工程と、前処理工程後の対象物を窒化する窒化工程と、を含む。そして、前処理工程は、対象物の表面における予め設定された対象部分に第1深さで歪を導入する第1導入工程を含む。
この表面窒化方法では、第1導入工程で対象物の表面の対象部分に第1深さで歪を導入した後、窒化工程で対象物の窒化を行う。したがって、対象部分では窒素が歪に捕捉されることにより、窒化が促進される。これにより、対象部分に第1深さに応じた厚さの窒化層を形成することができる。
本開示の一実施形態において、前処理工程は、対象物の表面における対象部分の周辺部分に第1深さよりも浅い第2深さで歪を導入する第2導入工程を更に含んでもよい。この場合、周辺部分に第2深さに応じた厚さの窒化層を形成することができる。
本開示の一実施形態において、第2導入工程では、対象部分にも第2深さで歪を導入してもよい。この場合、第2導入工程において対象部分をマスキングする必要がない。
本開示の一実施形態において、第1導入工程では、対象部分に外力を加える加工を行い、対象部分に歪を導入し、第2導入工程では、周辺部分に外力を加える加工を行い、周辺部分に歪を導入してもよい。この場合、対象部分及び周辺部分に歪を容易に導入することができる。
本開示の一実施形態において、第1導入工程では、対象部分に第1歪付与媒体を衝突させ、対象部分に歪を導入し、第2導入工程では、周辺部分に第2歪付与媒体を衝突させ、周辺部分に歪を導入してもよい。この場合、対象部分に第1深さで均一に歪を導入することができる。また、周辺部分に第2深さで均一に歪を導入することができる。
本開示の一実施形態において、上記表面窒化方法は、第1設定工程と、第2設定工程と、を更に含む。第1設定工程は、第1深さに応じて、第1歪付与媒体のサイズ及び衝突速度の少なくとも一方からなる第1条件を設定する。第2設定工程は、第2深さに応じて、第2歪付与媒体のサイズ及び衝突速度の少なくとも一方からなる第2条件を設定する。そして、第1導入工程では、第1条件で対象部分に第1歪付与媒体を衝突させ、第2導入工程では、第2条件で周辺部分に第2歪付与媒体を衝突させてもよい。この場合、対象部分に第1深さで精度よく歪を導入することができる。また、周辺部分に第2深さで精度よく歪を導入することができる。
本開示の一実施形態において、第1導入工程では、対象部分に第1押圧部材を押し付けながら摺動させることにより、対象部分に歪を導入し、第2導入工程では、周辺部分に第2押圧部材を押し付けながら摺動させることにより、周辺部分に歪を導入してもよい。この場合、対象部分に第1深さで歪を導入しながら、対象部分の表面を滑らかに整えることができる。また、周辺部分に第2深さで歪を導入しながら、周辺部分の表面を滑らかに整えることができる。
本開示の一実施形態において、上記表面窒化方法は、第1設定工程と、第2設定工程と、を更に含む。第1設定工程は、第1深さに応じて、第1押圧部材のサイズ及び押し付け力の少なくとも一方からなる第1条件を設定する。第2設定工程は、第2深さに応じて、第2押圧部材のサイズ及び押し付け力の少なくとも一方からなる第2条件を設定する。そして、第1導入工程では、第1条件で対象部分に第1押圧部材を押し付けながら摺動させ、第2導入工程では、第2条件で周辺部分に第2押圧部材を押し付けながら摺動させてもよい。この場合、対象部分に第1深さで精度よく歪を導入することができる。また。周辺部分に第2深さで精度よく歪を導入することができる。
本開示の一実施形態において、第1押圧部材は、第1押圧部材の軸方向が対象部分に直交する方向に対して傾斜するように対象部分に押し付けられ、第2押圧部材は、第2押圧部材の軸方向が周辺部分に直交する方向に対して傾斜するように周辺部分に押し付けられてもよい。この場合、第1押圧部材が、第1押圧部材の軸方向が対象部分に直交するように対象部分に押し付けられる場合と比べて、対象部分に歪が導入され易い。また、第2押圧部材が、第2押圧部材の軸方向が周辺部分に直交するように周辺部分に押し付けられる場合と比べて、周辺部分に歪が導入され易い。
本開示の一実施形態において、第1深さは、2μm以上150μm以下であってもよい。この場合、対象部分の使用形態に応じた厚さの窒化層を形成することができる。
本開示の一実施形態において、対象物は、鉄系合金又はチタン系合金からなってもよい。鉄系合金又はチタン系合金は広く用いられているので、対象物の所望の部分に所望の窒化層を形成することが特に求められている。
本開示の一実施形態において、対象物は、ダイカスト金型又はトランスミッション用歯車であってもよい。この場合、対象物の所望の部分に所望の窒化層を形成することが特に求められている。
本開示に係る表面窒化方法によれば、対象物の所望の部分に所望の窒化層を形成することができる。
実施形態に係る表面窒化方法を示すフローチャートである。 押圧部材を摺動させる方法について説明するための斜視図である。 窒化処理後の金属材料の断面顕微鏡写真である。
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
実施形態に係る表面窒化方法は、金属材料からなる対象物の表面に窒化層を形成する方法である。対象物は、例えば、ダイカスト金型又はトランスミッション用歯車である。典型的なダイカスト金型の材料はSKD61(JIS規格)である。JIS規格のSKD61は、ISO規格(ISO4957:1999)のX40CrMoV5-1に対応している。
対象物は、例えば、鉄系合金又はチタン系合金からなる。鉄系合金は、例えば、鉄鋼材料である。鉄鋼材料として、具体的には、炭素含有量が0.5%~0.6%である中炭素の焼入材、炭素含有量が0.8%~1.1%である高炭素の浸炭材等が挙げられる。中炭素の焼入材は、例えば、ばね材、アルミダイカスト用の金型材に用いられる。高炭素の浸炭材は、例えば、歯車材に用いられる。対象物が鉄系合金からなる場合、対象物は、基本的には焼き入れ焼き戻し後の鋼材、すなわち、マルテンサイト組織を有するマルテンサイト鋼であるが、熱処理前の生材であってもよい。
チタン系合金は、例えば、αチタン合金(例えば、Ti-5Al-1Mo-1V)、α-βチタン合金(例えば、Ti-6Al-4V)、又は、βチタン合金(例えば、Ti-14-3-3-3)である。チタン系合金の中では、α-βチタン合金であるTi-6Al-4V、いわゆる64チタンが最も使用されている。使用用途は、人工関節をはじめとしたインプラント、及び、航空機の骨組み部材等である。
窒化により強化したい組織の深さ、窒化により強化したい組織の硬さ等の機械的特性の程度、及び、窒化により強化したい箇所は、対象物である部品の使われ方によって決まっている。本実施形態では、対象物の表面における予め設定された対象部分を特に強化したい部分とする。対象物がダイカスト金型の場合、対象部分は、例えば、アルミ溶湯と接する金型の内面(キャビティ面)のうち、耐ヒートチェック性の低い箇所である。耐ヒートチェック性の低い箇所は、例えば平面が多い箇所である。平面が多い箇所は剛性が低いので、熱膨張収縮が原因である応力の影響を多く受ける。対象物がトランスミッション用歯車の場合、対象部分は、例えば、歯車の歯部分等、高い負荷がかかる箇所である。
対象部分に形成される窒化層の第1厚さは、所望により予め設定されている。第1厚さは、例えば、2μm以上150μm以下であり、10μm以上100μm以下であることがより好ましい。対象物の表面における対象部分の周辺部分に形成される窒化層の第2厚さは、第1厚さよりも薄い。第2厚さは、所望により予め設定されていている。第2厚さは、例えば、2μm以上150μm以下であり、2μm以上60μm以下である。周辺部分は、少なくとも対象部分を取り囲む部分である。周辺部分は、対象物の表面における対象部分以外の全ての部分であってもよい。
窒化は、熱処理の一種である。窒化は、窒素雰囲気中で対象物を高温で長時間保持することにより、窒素を対象物に含浸させ、その結果、窒化物の析出を得る熱処理である。窒化は、ステンレス及びチタンでも生じる。窒化処理は、析出物を得る必要があるため、焼き入れに比べて非常に長い時間を要する。ショットピーニングやバニシングにより金属組織中に発生する転位を代表とする歪には、窒素や水素等の軽い原子が捕捉(トラップ)されやすいことがわかっている。そこで、本実施形態では、窒化に先立って、少なくとも対象部分に予め歪を導入する前処理を行い、対象部分の窒化を促進させる。
図1は、実施形態に係る表面窒化方法を示すフローチャートである。図1に示されるように、表面窒化方法は、条件設定工程S1と、前処理工程S2と、窒化工程S3とを含む。以下、各工程について説明する。
条件設定工程S1は、前処理工程S2で実施される前処理の条件を設定する工程である。条件設定工程S1は、第1設定工程S11及び第2設定工程S12を含んでいる。第1設定工程S11は、対象部分に対する前処理の条件である第1条件を設定する工程である。第2設定工程S12は、周辺部分に対する前処理の条件である第2条件を設定する工程である。
前処理工程S2は、上述の対象物の表面に形成される窒化層の厚さを制御するために対象物の表面に前処理を行う工程である。前処理工程S2は、第1導入工程S21及び第2導入工程S22を含んでいる。第1導入工程S21は、対象部分に対する前処理として、対象部分に第1深さで歪を導入する工程である。第1導入工程S21は、第1設定工程S11で設定された条件で実施される。歪は、例えば、転位である。第1深さは、例えば、第1厚さと等しい値に設定される。したがって、第1深さは、例えば、2μm以上150μm以下である。第1深さは、例えば、10μm以上100m以下であることがより好ましい。
第2導入工程S22は、周辺部分に対する前処理として、周辺部分に第1深さよりも浅い第2深さで歪を導入する工程である。第2導入工程S22では、対象部分にも第2深さで歪を導入する。第2深さは第1深さよりも浅いので、第2導入工程S22が対象部分に行われた場合でも、最終的に対象部分に導入される歪の実質的な深さは、第1深さとなる。
第1導入工程S21では、対象部分に外力を加える加工を行い、対象部分に歪を導入する。第1導入工程S21で対象部分に歪を導入する方法として、例えば、対象部分に第1歪付与媒体を衝突させる方法、及び、対象部分に第1押圧部材を押し付けながら摺動させる方法が挙げられる。
第2導入工程S22では、周辺部分に外力を加える加工を行い、周辺部分に歪を導入する。第2導入工程S22で周辺部分に歪を導入する方法として、例えば、周辺部分に第2歪付与媒体を衝突させる方法、及び、周辺部分に第2押圧部材を押し付けながら摺動させる方法が挙げられる。
第1歪付与媒体を衝突させる方法では、第1歪付与媒体のサイズ、及び、第1歪付与媒体が対象部分に衝突する衝突速度によって、対象部分に付与される歪の深さが変化する。したがって、上述の第1設定工程S11では、第1厚さに応じて、第1歪付与媒体のサイズ及び衝突速度の少なくとも1つからなる条件が設定される。第1導入工程S21では、この条件で対象部分に第1歪付与媒体を衝突させる。
第1歪付与媒体の一例は、例えば、金属からなる剛球である。この例では、第1歪付与媒体のサイズは、例えば、第1歪付与媒体の粒径である。第1歪付与媒体のサイズは、第1歪付与媒体が球状である場合、第1歪付与媒体の直径である。第1歪付与媒体のサイズは、例えば、0.045mm以上1.180mm以下である。第1歪付与媒体の衝突速度は、例えば、50m/s以上150m/s以下である。この例では、第1歪付与媒体を衝突させる方法は、例えば、ショットピーニング、又は、ショットブラストとすることができる。
第1歪付与媒体の別の例は、例えば、先端が丸められた棒材(ニードル)であり、その先端を対象物の表面に連続的に衝突させる。この例では、第1歪付与媒体を衝突させる方法は、例えば、ニードルピーニングとすることができる。
第1付与媒体を衝突させる方法では、周辺部分にマスキングを行うことにより、対象部分のみに第1歪付与媒体を直接衝突させる。これにより、対象部分に第1深さで歪を導入することができる。第1歪付与媒体の衝突の影響により、周辺部分にも間接的に歪が導入されるおそれがある。しかしながら、間接的に導入された歪の深さは、第1深さよりも浅く、無視できる程度である。
第2歪付与媒体を衝突させる方法では、第2歪付与媒体のサイズ、及び、第2歪付与媒体が周辺部分に衝突する衝突速度によって、周辺部分に付与される歪の深さが変化する。したがって、上述の第2設定工程S12では、第2厚さに応じて、第2歪付与媒体のサイズ及び衝突速度の少なくとも1つからなる条件が設定される。第2導入工程S22では、この条件で周辺部分に第2歪付与媒体を衝突させる。
第2歪付与媒体の一例は、例えば、金属からなる剛球である。この例では、第2歪付与媒体のサイズは、例えば、第2歪付与媒体の粒径である。第2歪付与媒体のサイズは、第2歪付与媒体が球状である場合、第2歪付与媒体の直径である。第2歪付与媒体のサイズは、例えば、0.045mm以上1.180mm以下である。第2歪付与媒体のサイズは、例えば、第1歪付与媒体のサイズよりも小さい。第2歪付与媒体の衝突速度は、例えば、50m/s以上150m/s以下である。第2歪付与媒体の衝突エネルギーは、第1歪付与媒体の衝突エネルギーよりも小さい。第2歪付与媒体の衝突速度は、例えば、第1歪付与媒体の衝突速度よりも小さい。この例では、第2歪付与媒体を衝突させる方法は、例えば、ショットピーニング、又は、ショットブラストとすることができる。
第2歪付与媒体の別の例は、例えば、先端が丸められた棒材(ニードル)であり、その先端を対象物の表面に連続的に衝突させる。この例では、第2歪付与媒体を衝突させる方法は、例えば、ニードルピーニングとすることができる。
第2付与媒体を衝突させる方法では、対象部分にマスキングを行ってもよいし、行わなくてもよい。対象部分に第2歪付与媒体を直接衝突させ、対象部分に第2深さで歪が導入されたとしても、第2深さは第1深さよりも浅いので、最終的に対象部分に導入される歪の実質的な深さは、第1深さとなる。
第1押圧部材を摺動させる方法では、第1押圧部材のサイズ及び押し付け力によって、対象部分に付与される歪の深さが変化する。したがって、上述の第1設定工程S11では、第1厚さに応じて、第1押圧部材のサイズ及び押し付け力の少なくとも1つからなる条件が設定される。第1押圧部材のサイズは、例えば、1mm以上10mm以下である。第1押圧部材の押し付け力(押圧力)は、例えば、20N以上200N以下である。第1導入工程S21では、この条件で対象部分に第1押圧部材を押し付けながら、第1押圧部材を摺動させる。
第2押圧部材を摺動させる方法では、第2押圧部材のサイズ及び押し付け力によって、周辺部分に付与される歪の深さが変化する。したがって、上述の第2設定工程S12では、第2厚さに応じて、第2押圧部材のサイズ及び押し付け力の少なくとも1つからなる条件が設定される。第2押圧部材のサイズは、例えば、1mm以上10mmμm以下である。第2押圧部材のサイズは、例えば、第1押圧部材のサイズよりも小さい。第2押圧部材の押し付け力(押圧力)は、例えば、20N以上200N以下である。第2押圧部材の押し付け力は、例えば、第1押圧部材の押し付け力よりも小さい。第2導入工程S22では、この条件で周辺部分に第2押圧部材を押し付けながら、第2押圧部材を摺動させる。
図2は、押圧部材を摺動させる方法について説明するための斜視図である。図2に示されるように、対象物1の表面2は、Z方向に垂直なXY平面である。表面2には、Y方向に平行な複数のカッターマーク3がX方向に所定間隔をあけて形成されている。カッターマーク3は、研磨仕上げで形成された筋目であり、ツールマークとも呼ばれる。カッターマーク3は、X方向に平行であってもよいし、Y方向及びX方向のいずれとも交差する方向に沿っていてもよい。例えば、押圧部材4は、第1押圧部材であり、表面2は対象部分であってもよいし、押圧部材4は、第2押圧部材であり、表面2は周辺部分であってもよい。
押圧部材4は、例えば、先端に半球状の押圧面5を有する棒状部材である。この場合、押圧部材4のサイズは、押圧面5をなす半球の直径である。摺動方法は、例えば、バニシングとすることができる。この場合、押圧部材4は、バニシング工具である。
図2において、押圧部材4は、表面2の上方のスタート位置に配置されている。押圧部材4は、スタート位置から表面2の法線方向(Z方向)に移動して表面2と接触した後、表面2を押圧しながらX方向に摺動する。X方向は、押圧部材の送り方向D1(摺動方向)である。このとき、一例として、押圧部材4は、押圧部材4の軸方向6がZ方向に対して傾斜するように表面2に押し付けられる。軸方向6がZ方向に対して傾斜する角度αは、例えば、10度以上45度以下である。軸方向6は、X方向に直交すると共に、Y方向に対して(90-α)度で傾斜している。
押圧部材4は、軸方向6周りに回転しながら、X方向に摺動する。押圧部材4の回転方向は、例えば、押圧部材4の送り方向D1に反する方向である。押圧部材4は、表面2のX方向の端まで摺動すると、Z方向に移動して表面2から離間した後、X方向に沿って送り方向D1と反対方向に移動し、スタート位置に戻る。押圧部材4は、スタート位置からY方向に所定距離移動し、この位置を新たなスタート位置として同じ動作を繰り返す。Y方向は、押圧部材4の横送り方向D2である。
押圧部材4は、軸方向6が表面2に垂直となるように表面2に押し付けられてもよいが、Z方向に対して傾斜するように表面2に押し付けられた方が表面2に歪を導入し易い。押圧部材4は、軸方向6周りに回転させなくてもよいが、押圧部材4の送り方向D1に反する方向に回転させた方が表面2に歪を導入し易い。
押圧部材4を用いる方法では、押圧部材4を摺動させた部分に歪が導入されるので、マスキングを行わなくても、歪が導入される部分を容易に設定できる。対象部分で押圧部材4を摺動させた場合、押圧部材4を摺動させない周辺部分にも歪が間接的に導入されるおそれがある。しかしながら、間接的に導入された歪の深さは、第1深さよりも浅く、無視できる程度である。
窒化工程S3は、前処理工程S2後の対象物を窒化する工程である。窒化のタイプとして、塩浴軟窒化、ガス窒化、及び、プラズマ窒化が挙げられる。窒化は雰囲気熱処理であり、対象物の全体を加熱する。対象部分には第1厚さに応じた第1深さの歪が導入されているため、窒化工程S3により、対象部分には第1厚さの窒化層が形成される。周辺部分には第2厚さに応じた第2深さの歪が導入されているため、窒化工程S3により、周辺部分には第2厚さの窒化層が形成される。
図3は、窒化処理後の金属材料の断面顕微鏡写真である。図3(a)は、実験例1の断面顕微鏡写真である。図3(b)は、実験例2の断面顕微鏡写真である。図3(c)は、実験例3の断面顕微鏡写真である。実験例1では、対象物の表面に予め歪を導入せず、窒化を行った。実験例2,3では、それぞれ図2に示すように摺動方法により対象物の表面に予め歪を導入した後、窒化を行った。実験例2では、上述の角度αが0度、すなわち、押圧部材の軸方向が対象物の表面に対して垂直となるようにした。実験例3では、上述の角度αが10度となるように押圧部材の軸方向を傾斜させた。実験例2及び実験例3では、押圧部材のサイズ及び押し付け力を一致させた。実験例1及び実験例2,3では、同じ窒化条件で窒化を行った。
実験例1の窒化層の厚さは、30μm程度である。実験例2の窒化層の厚さは、30μm程度である。実験例2の窒化層は、実験例1の窒化層と同等の厚さであるが、実験例1の窒化層よりも高濃度で窒化物が析出している。実験例3の窒化層の厚さは、40μm程度である。実験例3の窒化層は、実験例1の窒化層よりも厚く、高濃度で窒化物が析出している。このように、予め歪を導入した実験例2,3では、予め歪を導入しなかった実験例1に比べて、窒化が促進され、窒化層が厚くなったり、窒化物の析出濃度が向上したりすることが確認できる。
実験例2及び実験例3では、表面近くの粒界がナノ結晶(粒径100nm以下)レベルまで微細化されている。これにより、窒化物の析出濃度が向上したと考えられる。実験例2よりも実験例3の方が窒化層の厚さが厚いこと、及び、高濃度で窒化物が析出されていることから、押圧部材を傾斜させると、歪が導入され易いことが確認できる。
以上説明したように、本実施形態に係る表面窒化方法では、第1導入導工程S21で対象部分に第1深さで歪を導入した後、窒化工程S3で対象物の窒化を行う。したがって、対象部分では窒素が歪に捕捉されることにより、窒化が促進される。これにより、対象部分に第1深さに応じた第1厚さの窒化層を形成することができる。第1導入工程S21では、予め設定された第1厚さに応じた第1深さで歪が導入されるので、第1厚さの制御性を高めることができる。
前処理工程S2は、第1導入工程S21に加えて、周辺部分に第1深さよりも浅い第2深さで歪を導入する第2導入工程S22を含む。これにより、周辺部分に第2深さに応じた第2厚さの窒化層を形成することができる。第2導入工程S22では、予め設定された第2厚さに応じた第2深さで歪を導入するので、第2厚さの制御性を高めることができる。
第2導入工程S22では、対象部分にも第2深さで歪を導入する。このため、第2導入工程S22において対象部分をマスキングする必要がない。工程が簡素化されるので、作業効率が向上する。
第1導入工程S21では、対象部分に外力を加える加工を行い、対象部分に歪を導入する。これにより、対象部分に歪を容易に導入することができる。第2導入工程S22では、周辺部分に外力を加える加工を行い、周辺部分に歪を導入する。これにより、周辺部分に歪を容易に導入することができる。
第1導入工程S21では、一例として、対象部分に第1歪付与媒体を衝突させ、対象部分に歪を導入する。これにより、対象部分に第1深さで均一に歪を導入することができる。表面窒化方法は、一例として、第1深さに応じて、第1歪付与媒体のサイズ及び衝突速度の少なくとも一方からなる第1条件を設定する第1設定工程S11を更に含み、第1導入工程S21では、第1条件で対象部分に第1歪付与媒体を衝突させる。これにより、対象部分に第1深さで精度よく歪を導入することができる。
第2導入工程S22では、一例として、周辺部分に第2歪付与媒体を衝突させ、周辺部分に歪を導入する。これにより、周辺部分に第2深さで均一に歪を導入することができる。表面窒化方法は、一例として、第2深さに応じて、第2歪付与媒体のサイズ及び衝突速度の少なくとも一方からなる第2条件を設定する第2設定工程S12を更に含み、第2導入工程S22では、第2条件で周辺部分に第2歪付与媒体を衝突させる。これにより、周辺部分に第2深さで精度よく歪を導入することができる。
第1導入工程S21では、一例として、対象部分に第1押圧部材を押し付けながら摺動させることにより、対象部分に歪を導入する。これにより、対象部分に第1深さで歪を導入しながら、対象部分の表面を滑らかに整えることができる。表面窒化方法は、一例として、第1深さに応じて、第1押圧部材のサイズ及び押し付け力の少なくとも一方からなる第1条件を設定する第1設定工程S11を更に含み、第1導入工程S21では、第1設定工程S11で設定された第1条件で対象部分に第1押圧部材を押し付けながら摺動させる。これにより、対象部分に第1深さで精度よく歪を導入することができる。第1押圧部材は、第1押圧部材の軸方向が対象部分に直交する方向に対して傾斜するように対象部分に押し付けられる。これにより、第1押圧部材が、第1押圧部材の軸方向が対象部分に直交するように対象部分に押し付けられる場合と比べて、対象部分に歪が導入され易い。
第2導入工程S22では、一例として、周辺部分に第2押圧部材を押し付けながら摺動させることにより、周辺部分に歪を導入する。これにより、周辺部分に第2深さで歪を導入しながら、周辺部分の表面を滑らかに整えることができる。表面窒化方法は、一例として、第2深さに応じて、第2押圧部材のサイズ及び押し付け力の少なくとも一方からなる第2条件を設定する第2設定工程S12を更に含み、第2導入工程S22では、第2設定工程S12で設定された第2条件で周辺部分に第2押圧部材を押し付けながら摺動させる。これにより、周辺部分に第2深さで精度よく歪を導入することができる。第2押圧部材は、第2押圧部材の軸方向が周辺部分に直交する方向に対して傾斜するように周辺部分に押し付けられる。これにより、第2押圧部材が、第2押圧部材の軸方向が周辺部分に直交するように周辺部分に押し付けられる場合と比べて、周辺部分に歪が導入され易い。
第1深さは、2μm以上150μm以下である。これにより、対象部分の使用形態に応じた厚さの窒化層を適宜選択して形成することができる。
対象物は、鉄系合金又はチタン系合金からなってもよい。鉄系合金及びチタン系合金は広く用いられているので、対象物の所望の部分に所望の窒化層を形成することが特に求められている。よって、本実施形態に係る表面窒化方法が特に有効である。
対象物は、ダイカスト金型又はトランスミッション用歯車であってもよい。ダイカスト金型はキャビティ面が溶湯と接触するので、使用に伴いヒートチェックが発生する。従来では、キャビティ面のうち最も耐ヒートチェック性の低い箇所に合わせて全体的に窒化処理を行う必要があった。同様に、トランスミッション用歯車では、例えば歯車の部分等、高い負荷がかかる箇所に合わせて全体的に窒化処理を行う必要があった。本実施形態の表面窒化方法は、対象物の所望の部分に所望の窒化層を形成することができるので、特に有効である。
本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
上記実施形態では、第1設定工程S11後に第2設定工程S12が行われるが、第1設定工程S11の前に第2設定工程S12が行われてもよいし、第1設定工程S11及び第2設定工程S12が同時に行われてもよい。
上記実施形態では、第1導入工程S21後に第2導入工程S22が行われるが、第1導入工程S21の前に第2導入工程S22が行われてもよいし、第2導入工程S21及び第2導入工程S22が同時に行われてもよい。
上記実施形態では、条件設定工程S1後に前処理工程S2が行われるが、第1設定工程S11後に第1導入工程S21が行われ、第2設定工程S21後に第2設定工程S22が行われればよい。したがって、例えば、第1設定工程S11、第1導入工程S21、第2設定工程S12、及び第2導入工程S22の順で各工程が行われてもよい。また、例えば、第2設定工程S12、第1設定工程S11、第1導入工程S21、及び第2導入工程S22の順で各工程が行われてもよい。
表面窒化方法は、第2設定工程S12及び第2導入工程S22を含まなくてもよい。この場合、周辺部分には歪が導入されない状態で窒化が行われる。第2厚さは、予め設定されていなくてもよい。
1…対象物、2…表面、4…押圧部材、6…軸方向。

Claims (12)

  1. 金属材料からなる対象物の表面に窒化層を形成する表面窒化方法であって、
    前記対象物の表面に形成される前記窒化層の厚さを制御するために前記対象物の表面に前処理を行う前処理工程と、
    前記前処理工程後の前記対象物を窒化する窒化工程と、を含み、
    前記前処理工程は、前記対象物の表面における予め設定された対象部分に第1深さで歪を導入する第1導入工程を含む、
    表面窒化方法。
  2. 前記前処理工程は、前記対象物の表面における前記対象部分の周辺部分に前記第1深さよりも浅い第2深さで歪を導入する第2導入工程を更に含む、
    請求項1に記載の表面窒化方法。
  3. 前記第2導入工程では、前記対象部分にも前記第2深さで歪を導入する、
    請求項2に記載の表面窒化方法。
  4. 前記第1導入工程では、前記対象部分に外力を加える加工を行い、前記対象部分に歪を導入し、
    前記第2導入工程では、前記周辺部分に外力を加える加工を行い、前記周辺部分に歪を導入する、
    請求項2又は3に記載の表面窒化方法。
  5. 前記第1導入工程では、前記対象部分に第1歪付与媒体を衝突させ、前記対象部分に歪を導入し、
    前記第2導入工程では、前記周辺部分に第2歪付与媒体を衝突させ、前記周辺部分に歪を導入する、
    請求項4に記載の表面窒化方法。
  6. 前記第1深さに応じて、前記第1歪付与媒体のサイズ及び衝突速度の少なくとも一方からなる第1条件を設定する第1設定工程と、
    前記第2深さに応じて、前記第2歪付与媒体のサイズ及び衝突速度の少なくとも一方からなる第2条件を設定する第2設定工程と、を更に含み、
    前記第1導入工程では、前記第1条件で前記対象部分に前記第1歪付与媒体を衝突させ、
    前記第2導入工程では、前記第2条件で前記周辺部分に前記第2歪付与媒体を衝突させる、
    請求項5に記載の表面窒化方法。
  7. 前記第1導入工程では、前記対象部分に第1押圧部材を押し付けながら摺動させることにより、前記対象部分に歪を導入し、
    前記第2導入工程では、前記周辺部分に第2押圧部材を押し付けながら摺動させることにより、前記周辺部分に歪を導入する、
    請求項4に記載の表面窒化方法。
  8. 前記第1深さに応じて、前記第1押圧部材のサイズ及び押し付け力の少なくとも一方からなる第1条件を設定する第1設定工程と、
    前記第2深さに応じて、前記第2押圧部材のサイズ及び押し付け力の少なくとも一方からなる第2条件を設定する第2設定工程と、を更に含み、
    前記第1導入工程では、前記第1条件で前記対象部分に前記第1押圧部材を押し付けながら摺動させ、
    前記第2導入工程では、前記第2条件で前記周辺部分に前記第2押圧部材を押し付けながら摺動させる、
    請求項7に記載の表面窒化方法。
  9. 前記第1押圧部材は、前記第1押圧部材の軸方向が前記対象部分に直交する方向に対して傾斜するように前記対象部分に押し付けられ、
    前記第2押圧部材は、前記第2押圧部材の軸方向が前記周辺部分に直交する方向に対して傾斜するように前記周辺部分に押し付けられる、
    請求項8に記載の表面窒化方法。
  10. 前記第1深さは、2μm以上150μm以下である、
    請求項1~9のいずれか一項に記載の表面窒化方法。
  11. 前記対象物は、鉄系合金又はチタン系合金からなる、
    請求項1~10のいずれか一項に記載の表面窒化方法。
  12. 前記対象物は、ダイカスト金型又はトランスミッション用歯車である、
    請求項1~11のいずれか一項に記載の表面窒化方法。
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