JP2022147357A - 超音波変換器、超音波探触子、超音波診断装置及び超音波変換器の製造方法 - Google Patents

超音波変換器、超音波探触子、超音波診断装置及び超音波変換器の製造方法 Download PDF

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Masahiro Ishimori
友一 安藤
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【課題】超音波変換器の広帯域特性を向上させる。【解決手段】下部電極層13c、電気機械変換層13b及び上部電極層13aからなる電気機械変換素子13が一方の面上に形成されている可動膜15の周囲を固定部材11によって固定し、前記可動膜の変位により前記一方の面とは反対の面側で超音波の送信若しくは受信又はその両方を行う超音波変換器であって、前記固定部材は、前記一方の面側のみから前記可動膜の周囲を固定している。【選択図】図7

Description

本発明は、超音波変換器、超音波探触子、超音波診断装置及び超音波変換器の製造方法に関するものである。
従来、下部電極層、電気機械変換層及び上部電極層からなる電気機械変換素子が一方の面上に形成されている可動膜の周囲を固定部材によって固定し、可動膜の変位により前記一方の面とは反対の面側で超音波の送信や受信を行う超音波変換器が知られている。
例えば、特許文献1には、基材層上に下部電極層、圧電体層(電気機械変換層)及び上部電極層を積層させてなるピエゾ素子(電気機械変換素子)を用いたpMUT(Piezoelectric Micro-Machined Ultrasonic Transducer)が開示されている。このpMUT(超音波変換器)は、ピエゾ素子が形成された可動膜の一方の面(ピエゾ素子が形成されている面)側に、当該ピエゾ素子を収容するための凹部を備える封止部材が接合されている。また、可動膜の他方の面側には、ピエゾ素子によって変位する可動膜の周囲を支持(固定)する支持部材(固定部材)が接合されている。このpMUTは、支持部材及び可動膜とともに密閉空間を形成するための被覆部材が支持部材に接合され、この密閉空間には被覆部材と同じシリコーンゴムからなる音響伝達部材が充填されている。このpMUTは、ピエゾ素子により変位する可動膜によって生じる超音波が、支持部材により囲まれた空間と支持部材に接合されている被覆部材とを介して送信される。
ところが、従来の超音波変換器では、広帯域特性が不十分であるという課題があった。
上述した課題を解決するために、本発明は、下部電極層、電気機械変換層及び上部電極層からなる電気機械変換素子が一方の面上に形成されている可動膜の周囲を固定部材によって固定し、前記可動膜の変位により前記一方の面とは反対の面側で超音波の送信若しくは受信又はその両方を行う超音波変換器であって、前記固定部材は、前記一方の面側のみから前記可動膜の周囲を固定していることを特徴とする。
本発明によれば、超音波変換器の広帯域特性を向上させることができる。
実施形態における超音波診断装置の一例を示す概略構成図。 同超音波診断装置の制御部の一例を示すブロック図。 実施形態における超音波診断装置の他の例を示す概略構成図。 実施形態における超音波探触子の一例を模式的に示す説明図。 pMUTチップの振動部基板の一部分を、基材層(振動板)に対して電気機械変換素子が形成される側(背面側)から見たときの平面図。 図5中符号A-Aの断面図。 同pMUTチップの振動部基板の構成の一例を示す断面図。 同振動部基板の製造工程を説明するための説明図。 (a)は、振動部基板とIC基板とを接合する工程を説明するための説明図。(b)は、振動部基板とIC基板とを接合した後の状態を示す説明図。
以下、本発明を、超音波診断装置の超音波探触子に使用される超音波変換器に適用した一実施形態について説明する。
なお、本発明に係る超音波変換器は、超音波診断装置の超音波探触子に使用されるものに限定されず、様々な装置に適用することが可能である。また、本実施形態では、人体を測定対象物とする例であるが、測定対象物は人体などの生体に限られない。
図1は、本実施形態における超音波診断装置の一例を示す概略構成図である。
図1において、超音波診断装置100は、超音波を測定対象物である被検者9に向けて送信すると共に、被検者9で反射した超音波を受信する超音波探触子1を有する。また、超音波診断装置100は、超音波探触子1からの信号(エコー信号)を可視化して表示する表示部61と、操作者によって操作される操作部62と、超音波探触子1の制御を行う制御部63とを有する。
図2は、本実施形態における超音波診断装置の制御部の一例を示すブロック図である。
制御部63は、図2に示すように、超音波信号を発生させるためのパルス状の電気信号を発生させる超音波パルス発生部64と、超音波探触子1から受信したエコー信号をデジタル信号に変換する変換部65と、変換部65で変換されたエコー信号に対応する二次元画像や三次元画像あるいは各種ドプラ画像などの超音波画像を形成する超音波画像形成部66とを有している。なお、超音波パルス発生部64及び変換部65は、例えば、制御部63とは別体に設けられた任意の超音波送受信機であってもよい。
表示部61は、LCD(Liquid Crystal Display)などのモニタ装置で構成され、超音波画像形成部66が形成した画像を表示する。操作部62は、押しボタンやタッチパネル等で構成され、操作者が被検者9について適切な診断を行うことができるようにパラメータ入力等を行うための各種操作を受け付ける。
超音波探触子1は、図1に示すように、ケーブル等を介して制御部63と電気的に接続されており、制御部63の制御の下、超音波を被検者9に向けて発信し、被検者9からエコーとして反射された超音波を受信する。超音波診断装置100は、このような超音波の送受信によって被検者9の内部を可視化して診断可能である。
超音波診断装置としては、図3に示すように、表示部としての表示端末50と、ケーブルによって表示端末50に接続された超音波探触子1とから構成されるものであってもよい。
図4は、本実施形態における超音波探触子1の一例を模式的に示す説明図である。
超音波探触子1は、図4に示すように、支持基板である支持部3、支持部3の上部に形成された超音波変換器(超音波トランスデューサ)としてのpMUTチップ2、フレキシブル基板4、配線5、コネクタ7、音響レンズ8等から構成されている。
pMUTチップ2は、フレキシブル基板4に配線5を介してコネクタ7に接続されている。コネクタ7は、後述する回路基板に接続され、この回路基板を介して上述した制御部63に接続される。支持部3は、pMUTチップ2を保持するためのバッキングプレートとしての機能を有している。
音響レンズ8は、例えばシリコン樹脂製の音響レンズを好適に用いることができる。音響レンズ8は、pMUTチップ2から送信される超音波を被検者9の測定位置にフォーカスするためのもので、中心部が周縁部よりも厚く形成された形状(いわゆるドーム形状)を呈している。音響レンズ8は、被検者9に当接して変形することで被検者9と密着し、中心部と周縁部との厚みの差によって生じる超音波の伝播速度の差から、超音波を擬似的に屈折させて収束させる機能を発揮する。なお、音響レンズ8は、少なくとも1つの方向について超音波を収束させる機能を有していればよく、必ずしも超音波を一点に収束させるものである必要はない。
音響レンズ8とpMUTチップ2とは、接着層としての接着剤6によって貼り合わせられている。音響レンズとpMUTチップ2との接着に用いる接着剤6は、シリコーン系樹脂の接着剤が好ましく、20μm以下の薄い接着剤で接着することが好ましい。
図5は、pMUTチップ2の振動部基板の一部分を、基材層(振動板)に対して電気機械変換素子が形成される側(以下「背面側」という。)から見たときの平面図である。
図6は、図5中符号A-Aの断面図である。
なお、図5は、説明のため、後述する絶縁層16及びパッシベーション膜17、並びに、振動部基板に接合されるIC基板の図示は省略してある。
本実施形態のpMUTチップ2は、図6に示すように、振動部基板10と制御基板としてのIC基板20とを積層した構造になっており、振動部基板10とIC基板20との間は金属部材11,12により所定の間隔をあけて接合されている。このpMUTチップ2は、図6中の上側が超音波の送信及び受信を行う側(以下「送受信側」という。)となる。IC基板20には、図2に示した機能の一部を搭載してもよい。
図7は、pMUTチップ2の振動部基板10の構成の一例を示す断面図である。
IC基板20は、振動部基板10の電気機械変換素子である圧電体振動子13の上部電極13a及び下部電極13cにそれぞれ電気的に接続する配線21,22を有している。具体的には、IC基板20の配線21,22は、振動部基板10の金属部材11,12にそれぞれ電気的に接続されており、金属部材11,12を介して、振動部基板10の圧電体振動子13の上部電極13a及び下部電極13cにそれぞれ電気的に接続される。これにより、IC基板20からの駆動信号は、圧電体振動子13の個別電極である上部電極13aに接続される第一金属部材11を介して振動部基板10側へ送られる。また、振動部基板10の圧電体振動子13で受信した超音波の受信信号は、第一金属部材11を介してIC基板20側へ送られる。
振動部基板10の圧電体振動子13は、上部電極13aと、下部電極13cと、これらの間に介在する電気機械変換層としての圧電体層13bとから構成されている。圧電体振動子13を構成する各層は、下部電極13cの層、圧電体層13b及び上部電極13aの層の順に、振動板となる基材層14の一方の面(基材層14の背面側の面)上に積層される。本実施形態の振動部基板10は、基材層14上に円柱形状の圧電体振動子13を複数配列した例であるが、圧電体振動子13の形状はこれに限られるものではない。
本実施形態の振動部基板10では、図5に示すように、第一金属部材11が個々の圧電体振動子13を取り囲むように基材層14上に設けられている。本実施形態の第一金属部材11は、第一金属部材11によって囲まれる各圧電体振動子13を含む基材層14の領域がそれぞれ可動膜(ダイアフラム)15として機能するように機械的に支持固定する固定部材として機能している。
ダイアフラム15の大きさは、図7に示すように、ダイアフラム15を取り囲む第一金属部材11の円形開口部の径(キャビティ径)Bによって決定される。圧電体振動子13の駆動によって変位するダイアフラム15の周囲が、剛性のある第一金属部材11によって固定され、各ダイアフラム15はお互いに干渉の少ない状態で振動することができる。
ダイアフラム15の大きさは、振動構造の共振特性に重要となり、更には超音波の周波数特性にとって重要な要素となる。そのため、ダイアフラム15の大きさには高い精度が要求される。また、ダイアフラム15を密に形成するためには、固定部材(第一金属部材11)の幅をできるだけ小さくする必要もある。ダイアフラム15を密に形成できれば、単位面積当たりの送信音圧を高めることができ、大きな送信強度を得ることができる。
第一金属部材11の加工精度がダイアフラム15の寸法精度に大きく影響することになる。例えば、7MHz以上の中心周波数の高周波にて共振周波数を持つ振動構造を設計する場合には、振動構造の剛性にも依存するものの、ダイアフラム15とIC基板20とが接触しない間隔を3μm以下で設定することが可能である。この場合、第一金属部材11の厚み(高さ)をミクロンオーダーにすることができるため、第一金属部材11の材料を必要以上に厚膜化することなく、通常のフォトリソグラフィを用いた半導体加工にて、精度の優れた加工が可能となる。よって、超音波の周波数特性、大きな送信強度をもつpMUTチップ2が可能となる。
また、単位面積当たりの送信音圧を高めることができ、大きな送信強度を得ることができるように、ダイアフラム15が密なpMUTチップ2を形成するには、第一金属部材11の幅を50μm以下に設定することが好ましい。一方で、振動部基板10とIC基板20との接合強度や、圧電体振動子13を内封する密閉空間の密閉性の観点から、第一金属部材11の幅は3μm以上に設定することが好ましい。したがって、単位面積当たりの送信音圧を高めつつ、接合強度、密閉性を確保するには、第一金属部材11の最小幅は3μm以上50μm以下の範囲に設定するのが好ましい。
本実施形態において、ダイアフラム15の周囲を固定する固定部材である第一金属部材11は、駆動信号などの電気信号を伝達するための信号伝達部材としても機能させるために、導電性のある金属部材を採用している。ただし、この固定部材を信号伝達部材として機能させない構成とするなら、固定部材は、必要な剛性をもつ樹脂製などの非導電性部材を採用してもよい。
また、第一金属部材11は、第二金属部材12とともに、振動部基板10とIC基板20との間隔Cを所定間隔に維持する。この所定間隔は、ダイアフラム15が振動するときに、ダイアフラム15とIC基板20とが接触しない間隔に設定される。例えば、7MHzの共振周波数を持つ振動構造を設計する場合には、振動構造の剛性にも依存するものの、ダイアフラム15とIC基板20とが接触しない間隔は3μm以下に設定することが可能である。もちろん、この間隔Cを3μm以上とすることも可能であるが、間隔Cを広くするほど、金属部材11,12を形成するときの金属膜の厚みを必要とするので、できるだけ間隔Cを狭めることが好ましい。
また、本実施形態において、IC基板20は、第一金属部材11に連結されて密閉空間形成部材として機能し、第一金属部材11及び振動部基板10のダイアフラム15とともに密閉空間を形成する。このような密閉空間が形成されることで、振動部基板10の圧電体振動子13をこの密閉空間に内封することができる。これにより、例えば、本実施形態の超音波診断装置100により診断する際に、被検者9からの湿気が圧電体振動子13に伝わることを抑制することができる。よって、絶縁破壊に対する信頼性が高まるので、圧電体振動子13への印加電圧を上げることができ、大きな送信強度を得ることができる。
本実施形態の圧電体振動子13は、下部電極13cが複数の圧電体振動子13で共通する共通電極である。この共通電極である下部電極13cは、第二金属部材12を介してグラウンドに接続されるグラウンド電極である。一方、上部電極13aは、圧電体振動子13ごとに備わった個別電極であり、第一金属部材11を介して駆動信号が印加される。本実施形態では、図5に示すように、3×3=9個の圧電体振動子13の上部電極13aに対し、共通する第一金属部材11が配線11aを介して接続されている。したがって、これらの9個の圧電体振動子13には同じ駆動信号が入力され、1つのセルが形成される。
本実施形態の振動部基板10におけるダイアフラム15は、その周囲を固定している第一金属部材11が、振動板となる基材層14上で圧電体層13bと離間して配置されている。そのため、圧電体層13bと第一金属部材11との間におけるダイアフラム15を構成する層は、実質的に基材層14と下部電極13cであり(絶縁層16やパッシベーション膜17も含む)、この部分がダイアフラム15の最も薄い部分となる。ダイアフラム内に配置される圧電体振動子13において駆動効率が良くない領域においては、上部電極13a及び圧電体層13bを除去することで、ダイアフラム15を薄くて軽くし、効率の良い駆動を実現できる。
基材層14としては、例えば、シリコン、二酸化シリコン、窒化シリコン等、およびそれらの組み合わせなどを用いることができる。基材層14の背面側(圧電体振動子13が形成される側)の表面は絶縁性の保護膜とすることが好ましい。この保護膜としては、絶縁性や下部電極との密着性などの点から、二酸化シリコンを好適に用いることができる。
下部電極13cは、白金(Pt)で形成されているが、これに限定されるものではなく、導電性の金属材料、導電性酸化物およびその組み合わせ等を用いることができる。したがって、具体的に使用される材料としては、酸化物電極層として、SrRuO、LaNiOなどが用いられ、また、金属電極層として、Pt、Ti、Cr、Ta、Rh、Pd等が用いられる。
そのほか、下部電極13cと基材層14との間には、密着層などの他の層が設けられてもよい。例えば、下部電極13cと基材層14との間には、チタン層、酸化チタン層、チタンタングステン層、アルミナ層、酸化ジルコニウム層等からなる密着層を設けることができる。この密着層は、一般に数十nm程度と薄く、剛性への寄与は小さく、ダイアフラム15の機能に与える影響は小さい。
上部電極13aも、下部電極13cと同様、白金(Pt)であるが、これに限定されるものではなく、導電性の金属材料、導電性酸化物およびその組み合わせ等を用いることができる。上部電極13aに使用される材料は、下部電極13cと同じ材料はもちろんのこと、下部電極よりも広く選択できる。酸化物電極層として、SrRuO、LaNiO、IrO、RuO、SrO、CaRuOなどが用いられ、また、金属電極層として、Pt、Ir、Ru、Ti、Cr、Ta、Rh、Pd等が用いられる。
なお、上述した基材層14を省き、下部電極13cを基材層として用いることも可能である。この場合、上述した密閉空間側の下部電極13cの面を絶縁性の保護膜で保護することが好ましい。保護膜としては、二酸化シリコン、アルミナなどを用いることができる。
本実施形態において、圧電体振動子13が形成されている側とは反対側の基材層14の面(送受信側の基材層の面)には、凹凸構造あるいは突起構造はなく、平坦な面となっている。この基材層14の面(送受信側の基材層の面)には、上述した音響レンズ8が接着剤6によって接着される。すなわち、ダイアフラム15よりも送受信側には、従来のような固定部材が設けられない。これにより、ダイアフラム15で発生した超音波が音響レンズ8に伝播されるまでの間又は音響レンズ8に伝播した超音波がダイアフラム15で受信されるまでの間には、実質的に他の構成部材が存在しない構成となっている。これにより、ダイアフラム15から送信される超音波の送信特性あるいはダイアフラム15で受信される超音波の受信特性、特に広帯域特性が向上する。
別の言い方をすれば、基材層14と音響レンズ8との間の構成部材もダイアフラム15を構成していると考えるならば、本実施形態によれば、より薄いダイアフラム15を実現できる。よって、ダイアフラム15から送信される超音波の送信特性あるいはダイアフラム15で受信される超音波の受信特性、特に広帯域特性が向上する。
なお、本実施形態において、基材層14の面(送受信側の基材層の面)と音響レンズ8との間には、これらを接着するための接着剤6が介在する。しかしながら、本実施形態のダイアフラム15は上述したように薄く形成されるため、音響レンズ8の接着前に製造上の膜応力や残留応力によって基材層14の面(送受信側の基材層の面)に反りが発生するとしても僅かである。そのため、例えば20μm以下の薄い接着剤6でも、基材層14と音響レンズ8とを歩留まりよく接着することができる。したがって、基材層14の面(送受信側の基材層の面)に存在する接着剤6も薄くすることができ、剛性への寄与は小さいので、ダイアフラム15の機能に与える影響は小さい。
本実施形態の圧電体層13bは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の圧電体材料で形成される。もちろん、PZT系の複合酸化物に他の元素が含まれていてもよい。圧電体層13bは、上部電極13aと下部電極13cとの間に駆動信号(駆動電圧)を印加することで機械的変形を生じ、駆動信号の周期変動によって所定の周波数の振動をダイアフラム15に生じさせることで、ダイアフラム15から超音波を送信する。また、外部からの超音波が圧電体層13bを振動させると、圧電体層13bが分極して上部電極13aと下部電極13cとの間に電位差が生じ、その振動に応じた電気信号(受信信号)を発生させる。
また、絶縁層16は、第一金属部材11に接続される配線11aと、上部電極13aと、下部電極13cとの間での短絡を防ぐための絶縁膜である。配線11aの材料としては、アルミニウムなどが用いられ、配線11aの上には保護層としてパッシベーション膜17が形成される。パッシベーション膜17としては、量産性に優れ、良質な保護膜として機能するシリコン窒化膜が好適に用いられる。パッシベーション膜17は、圧電体振動子13を、不純物、湿気、ひっかき傷等から守る保護膜として機能する。
ただし、本実施形態では、上述したように、圧電体振動子13が、第一金属部材11及びIC基板20によって形成される密閉空間に内封されている。これにより、圧電体振動子13への不純物や湿気の接触が抑制されるため、製造工程中におけるひっかき傷等を防止できるのであれば、上述したパッシベーション膜17は必ずしも設ける必要はない。また、製造工程中におけるひっかき傷等を防止するためにパッシベーション膜17を設ける場合でも、最終的にはパッシベーション膜17の全部又は一部を除去するようにしてもよい。いずれにしても、パッシベーション膜17が設けられないことで、ダイアフラム15をより薄いものとすることができ、広帯域特性の向上に寄与する。
また、ダイアフラム15の形状は、第一金属部材11の開口部(キャビティ)の形状で決まり、本実施形態では図5に示すように円形状であるが、これに限らず、例えば、四角、楕円、多角形など、形状は自由に設定することができる。
また、本実施形態では、上述したとおり、第一金属部材11が連結されている1つのセルが9個のダイアフラム15で構成されているが、その数に制限はなく、1個のダイアフラム15で構成してもよいし、3個以上のダイアフラム15によって構成してもよい。また、1つのセルを構成するダイアフラム15の配列も自由に設定することができる。また、本実施形態では、1つのダイアフラム15に1つの圧電体振動子13が設けられているが、1つのダイアフラム15に2つ以上の圧電体振動子13が設けられていてもよい。
また、本実施形態では、図5に示すように、共通電極である各圧電体振動子13の下部電極13cに接続される第二金属部材12は、振動部基板10の1箇所に配置されているが、第二金属部材12の位置、個数、大きさの制限などはなく、自由に設定できる。本実施形態では、第二金属部材12が複数のセルに共通の部材となっているが、例えば、セルごとに個別の第二金属部材12を配置するようにしてもよい。このように、グラウンドに接続される第二金属部材12を増やすことはノイズ低減などに寄与する。
また、例えば、振動部基板10上の1又は2以上のセルを囲うように第二金属部材12を配置してもよい。この場合、ノイズ低減などに寄与するだけでなく、振動部基板10とIC基板20との接合面が増え、接合強度の増強を図ることができる。また、第二金属部材12と振動部基板10とIC基板20とによって密閉空間を形成することができるので、圧電体振動子13への不純物や湿気の接触が更に抑制される。
次に、本実施形態におけるpMUTチップ2の製造方法について説明する。
図8は、振動部基板10の製造工程を説明するための説明図である。
なお、図8には、説明の簡略化のため、圧電体振動子13が2つだけ記載されている。
振動部基板10の製造工程にあたっては、シリコン(Si)材料からなるシリコン基板を支持基板30として用いる。この支持基板30は、後述するように、最終的には除去され、又は極薄化され、極薄化された場合には基材層14とともに振動板として機能することになる。
振動部基板10の製造では、まず、支持基板30の表面を熱酸化して、支持基板30上にSiOの絶縁膜を形成する。このSiOの絶縁膜が基材層14となり、振動板を構成する。このときの基材層14(SiOの絶縁膜)の厚さは例えば0.3μmとする。
次に、下部電極13cの形成を行う。このとき、本実施形態では、下部電極13cと下地となる基材層14(SiOの絶縁膜)との間には、図示を省略した酸化チタン(TiO)層を密着層としてスパッタ法により成膜する。続いて、RTA(Rapid Thermal Annealing:高速熱処理)装置を用いて、650~800℃、1~10分、O雰囲気でチタン膜を熱酸化してチタン膜を酸化チタン膜にする。これにより、基材層14上に酸化チタン膜の密着層が形成される。このときの密着層(酸化チタン膜)の厚さは、10nm以上50nm以下とするのが好ましい。密着層(酸化チタン膜)を作成するには、反応性スパッタでもよいが、チタン膜の高温による熱酸化法が望ましい。密着層上に形成される下部電極13cは、例えば白金(Pt)をスパッタ法によって50~300nmの厚さで成膜する。
次に、下部電極13cの上に圧電体層13bを形成する。具体的には、一例として、Pb:Zr:Ti=110:52:48の組成比で調合した溶液を準備する。この溶液は、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いることができる。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水する。化学量論組成に対して鉛量は過剰にするのがよい。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。
イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、上述した酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することで、PZT前駆体溶液を合成する。このときのPZT濃度は0.5モル/lにした。この前駆体溶液を用いて下部電極13c上にスピンコートによりPZT前駆体を成膜し、成膜後、120℃で乾燥させ、400℃で熱分解処理を行う。そして、3層目の熱分解処理後に、PZT前駆体の結晶化熱処理(温度700℃)をRTA処理(急速熱処理)にて行う。なお、前駆体溶液の1回の塗布によって形成される膜厚を増大すると、クラックが生じやすくなる懸念があるため、本実施形態においては、結晶化された後の膜厚が100nm程度に収まるように調整している。
かかる結晶化熱処理が終了した後、所望の厚みの圧電体層13bが得られるまで処理を繰り返す。本実施形態においては、前駆体溶液の塗布工程を5~40回繰り返すことで、0.5μm以上4μm以下の圧電体層13bが形成される。
本実施形態において、圧電体層13bにPZTを用いているが、AlN、ScAlN、KNNなど、材料は限定されるものではない。また、成膜方法においても、CSDとしたが、スパッタ法、MOCVD法、PLD法など、種々の成膜方法を適宜選択することができる。
次に、圧電体層13b上に上部電極13aを形成する。具体的には、まず、圧電体層13b上に導電性酸化物膜であるSrRuO膜(膜厚40nm)をスパッタ成膜する。スパッタ成膜時の基板温度は300℃とする。その後、RTA処理にてO雰囲気中で550℃/300sのポストアニール処理をする。その後、金属膜である白金膜(膜厚60nm)をスパッタ成膜し、上部電極13aを形成する。
所定形状の圧電体振動子13を得るには、例えば、上部電極13aの形成後に上部電極13a上に感光性レジストをマスク層としてパターニングして形成し、ドライエッチング又はウェットエッチングを行う。感光性レジストのパターニングは、公知のフォトリソグラフィ技術により実施することができる。
具体的には、上部電極13a上に感光性レジストをスピンコータ又はロールコータにより塗布し、その後、予め所望のパターンが形成されたガラスフォトマスクにより紫外線を露光した後、パターン現像→水洗→乾燥を経て感光性レジストのマスク層を形成する。形成された感光性レジストのマスク層は、そのパターンの端部傾斜がエッチング時の傾斜断面に影響するので、所望の傾斜角度に応じ、レジスト選択比(被エッチング材料とマスク材料とのエッチングレート)を考慮して選択すればよい。エッチング後、上部電極13a上に残った感光性レジストは、専用の剥離液又は酸素プラズマ・アッシングにより除去することができる。
エッチングは、形状の安定性から反応性ガスを用いたドライエッチングが選択される場合が多いが、エッチングガスは塩素系、フッ素系等のハロゲン系のガス、或いはハロゲン系のガスにArや酸素を混合させたガスにより実施することができる。エッチングガス或いはエッチング条件を変化させることにより、上部電極13a、圧電体層13bと連続してエッチングすることもできるし、一度レジストパターンを形成し直して数回に分けてエッチングを実施することもできる。
なお、上述した方法に代えて、上部電極13aの形成前に圧電体層13bを所定形状に加工(エッチング)した後、所定形状の圧電体層13b上のみに上部電極13aを成膜してもよい。
以上のとおり、圧電体振動子13は、比較的簡便な製造工程で形成可能であり、バルクセラミックスと同等の性能を持つとともに、その後のIC基板20との接合によって、pMUT2の製造が可能である。
上部電極13aを形成した後は、上部電極13a上にフォトリソ・エッチングによって所定のパターンがパターニングされた絶縁層16が形成される。本実施形態の絶縁層16は、プラズマCVD法により、モノシラン(SiH)、亜酸化窒素(NO)ガスを原料として0.4μm以上1.0μm以下の成膜を行うことで形成されるシリコン酸化膜である。
上述したパターニングにより絶縁層16には、上部電極13aの部分にコンタクトホールが開口している。このコンタクトホールには、Al-Cu(1μm)/Ti(50nm)の配線材料をスパッタ法によって成膜し、フォトリソ・エッチングによるパターニングして配線11aが形成される。
さらに、保護層として、シリコン窒化膜(Si)を成膜し、配線11aに接続された電極端子部分(第一金属部材11が形成される部分)のみ開口させたパッシベーション膜17を形成する。本実施形態のパッシベーション膜17は、プラズマCVD法により、モノシラン(SiH)、亜酸化窒素(NO)、アンモニア(NH)ガスを原料として0.5μm以上1.5μm以下程度のシリコン窒化膜(Si)を用いることができる。電極端子部分の開口はフォトリソ・エッチングにより行うことができる。
次に、第一金属部材11の材料であるアルミニウムをスパッタ成膜にて3μm程度成膜し、その後、所定のパターンにパターニングして、パッシベーション膜17の開口部の電極端子上に第一金属部材11となるアルミニウム部材11Aを形成する。本実施形態においては、図9(a)に示すように、IC基板20側にも、第一金属部材11となるアルミニウム部材11Bが形成される。本実施形態では、これらのアルミニウム部材11A,11Bを金属接合することによって第一金属部材11を形成する。
第一金属部材11の材料は、Alに限定されることはなく、Au、Cu、Geなど、金属接合に適した材料を選ぶことができる。また、第一金属部材11の材料としては、接合後にも良好な導電性が維持されるものが好ましい。
このようにして、振動部基板10とIC基板20とが準備できたら、図9(a)に示すように、ウェハ接合装置により、加熱、加圧を施しながら、振動部基板10とIC基板20とを接合する。振動部基板10とIC基板20とを接合する方法には、直接接合、拡散接合、共晶接合などを選択することができる。接合前にCMPを施し、第一金属部材11の接合表面を平坦化した後に接合するなどしてもよい。
接合後には、図9(b)に示すように、振動部基板10上のダイアフラム15とIC基板20との間隔Cが1μmの間隔となるように設定される。この間隔Cは、3μm以下とするのが好ましい。
振動部基板10とIC基板20との接合時には、振動部基板10には支持基板30が存在しているが、この支持基板30は最終的には除去される。具体的には、バックグラインドおよびポリッシュによりシリコン製の支持基板30の厚みが10μm以上200μm以下程度まで薄膜化させた後、残りの支持基板30をドライエッチング法により除去する。支持基板30は、完全に除去せずに10μm以下程度残すようにして、振動板として機能させることもできる。支持基板30のエッチング加工は、シリコンエッチャーを使用し、SFプラズマによるエッチングにより容易に行うことができる。
最後に、ダイシング等を行ってpMUTチップ2のウェハ生成プロセスが完了する。本実施形態では、ウェハレベルでの接合について説明したが、ウェハ接合ではなく、チップ接合や、チップ-ウェハ(C2W)接合を実施して、pMUTチップ2を完成させることもできる。
以上、本実施形態におけるpMUTチップ2は、ダイアフラム15を振動させて超音波の送受信を行う超音波トランスデューサとして用いられ、医療用診断や産業用、車載用やマリーン向け検査・測定装置として応用することが可能である。特に、本実施形態のような医療用の診断装置に使用する場合、被検者9の生体へのダメージがなく、内部組織を簡易にリアルタイムで観察できるため、広く使用される。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、下部電極層(例えば下部電極13c)、電気機械変換層(例えば圧電体層13b)及び上部電極層(例えば上部電極13a)からなる電気機械変換素子(例えば圧電体振動子13)が一方の面(例えば背面側の面)上に形成されている可動膜(例えばダイアフラム15)の周囲を固定部材(例えば第一金属部材11)によって固定し、前記可動膜の変位により前記一方の面とは反対の面(送受信側の面)側で超音波の送信若しくは受信又はその両方を行う超音波変換器(例えばpMUTチップ2)であって、前記固定部材は、前記一方の面側のみから前記可動膜の周囲を固定していることを特徴とするものである。
従来の超音波変換器(超音波トランスデューサ)は、バルクと言われるセラミックのPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)をダイシングして個片化することで実現されていたが 近年は、半導体素子を用いた超音波トランスデューサとして、pMUT(Piezoelectric Micro-machined Ultrasonic Transducers)やcMUT(Capacitive Micro-machined Ultrasonic Transducer)が用いられる。これらは、半導体技術を用いた微細加工により高解像度化や高周波数化を実現でき、今後の主流になる可能性がある。特に医療用診断装置用の高機能、高性能な超音波探触子(超音波プローブ)がcMUTにて実用化されている。cMUTは、ダイアフラムが薄くて柔らかく、軽くすることで、生体の音響特性に近いものが実現できる。したがって、音響整合層を利用せずとも、短パルス波形、広帯域化を実現しやすい。
一方、pMUTを用いた超音波探触子では、従来、好適な絶縁構造を施すことにより被検者9への電気漏洩を防止し、電気的安全性の向上を実現しつつ、短パルス波形、広帯域特性を兼ね備えた超音波探触子及びこれを用いた超音波診断装置を提供することが困難であった。ただし、特許文献1に記載されているpMUTを用いた超音波探触子では、超音波の送受信側に圧電体振動子13の下部電極13cである共通電極(グラウンド電極)を配置する構成としたことで、被検者9側の電極がグランド電極となり、電極から被検者9側へ流れる電流を低減することにより電気的安全性の向上を実現可能である。しかしながら、短パルス波形、広帯域特性については、いまだ不十分である。
特許文献1に開示の超音波変換器では、可動膜の変位により発生する超音波が、固定部材により囲まれた密閉空間内の音響伝達部材を介して、被覆部材(固定部材及び可動膜とともに密閉空間を形成する部材)から送信される。また、特許文献1に開示の超音波変換器では、被覆部材に伝わった外部からの超音波が、固定部材により囲まれた密閉空間内の音響伝達部材を介して、可動膜に伝播して受信される。このような従来の超音波変換器では、可動膜で発生した超音波が当該超音波変換器の外部へ送信されるまでの間に、又は、外部からの超音波が可動膜で受信されるまでの間に、固定部材により囲まれた密閉空間内を伝播する必要がある。このように密閉空間内を伝播する構成が介在すると、音響特性(特に広帯域特性)が制限され、十分な広帯域特性を得ることが難しい。
本態様においては、可動膜の周囲を固定する固定部材が、可動膜の前記一方の面側のみ、すなわち、超音波の送信若しくは受信又はその両方を行う側(可動膜の前記反対の面側)とは反対側のみ、に設けられている。よって、可動膜よりも超音波送信側又は受信側には固定部材が設けられない。これにより、可動膜で発生した超音波が外部へ送信されるまでの間又は外部からの超音波が可動膜で受信されるまでの間に従来構成では介在していた、固定部材により囲まれた密閉空間(又はその内部の音響伝達部材)を、省略することができる。その結果、可動膜を薄くて柔らかく、軽くすることが可能となり、従来構成よりも、短パルス波形、広帯域化等の音響特性、特に広帯域特性を向上させることができる。
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記固定部材に連結され、該固定部材及び前記可動膜とともに密閉空間を形成する密閉空間形成部材(例えばIC基板20)を有することを特徴とするものである。
電気機械変換素子が湿気に晒されると、絶縁破壊が生じやすくなるため、電気機械変換素子に印加する駆動信号の電圧を大きくできず、超音波の送信強度を高めることが困難となる。本態様によれば、固定部材、可動膜及び密閉空間形成部材によって形成される密閉空間内に電気機械変換素子が内封されるので、電気機械変換素子が湿気に晒される事態が抑制される。よって、駆動信号の電圧を大きくして、超音波の送信強度を高めることが可能となる。また、電気機械変換素子を湿気から保護する保護膜(例えばパッシベーション膜17)を省略することも可能となることから、可動膜を、より薄くて柔らかく、より軽くすることが可能となり、更なる広帯域特性の向上が可能となる。
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記固定部材は、前記下部電極層と前記上部電極層との間の電気信号を伝達する信号伝達部材であることを特徴とするものである。
これによれば、固定部材とは別に信号伝達部材を設ける必要がなくなり、構成の簡素化を実現できる。
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記固定部材は、前記電気機械変換層と離間して前記可動膜の周囲を固定していることを特徴とするものである。
本態様によれば、電気機械変換層と固定部材との間における可動膜を構成する層には、電気機械変換層が存在しないことから、この部分が可動膜の最も薄い部分となる。可動膜内に配置される電気機械変換素子において駆動効率が良くない領域においては、上部電極及び電気機械変換層を除去することで、可動膜を薄くて軽くし、効率の良い駆動を実現できる。特に、電気機械変換層の材料は一般に密度が大きく重いため、可動膜における効率の良い駆動実現に重要となる最薄部分(電気機械変換層と固定部材との間)に電気機械変換層が存在しないことで、より軽い可動膜が実現でき、更なる広帯域特性の向上が可能である。
[第5態様]
第5態様は、第1乃至第4態様のいずれかにおいて、前記可動膜の前記一方の面(背面側の面)上には複数の電気機械変換素子(例えば圧電体振動子13)が形成されており、前記下部電極層は、前記複数の電気機械変換素子間で共通するグラウンド電極であることを特徴とするものである。
本態様においては、超音波の送信や受信を行う側の電極である下部電極層がグラウンド電極であるため、電気機械変換素子の電極から測定対象物へ流れる電流を低減することができる。これにより、超音波変換器の電気的安全性の向上を実現することができる。
[第6態様]
第6態様は、第1乃至第5態様のいずれかにおいて、前記可動膜の前記一方の面上には複数の電気機械変換素子がアレイ状に形成されており、前記固定部材は、1つの電気機械変換素子を含む可動膜又は2つ以上の電気機械変換素子を含む可動膜の周囲を固定することを特徴とするものである。
これによれば、より高い送信強度を実現しやすい。
[第7態様]
第7態様は、超音波変換器(例えばpMUTチップ2)から超音波を測定対象物(例えば被検者9)へ送信するとともに、該測定対象物で反射した前記超音波を受信する超音波探触子1であって、前記超音波変換器として、第1乃至第6態様のいずれかの超音波変換器を用い、前記超音波変換器の信号伝達部材を介して、該超音波変換器における前記下部電極層と前記上部電極層との間の電気信号の送信及び受信を行う制御基板(例えばIC基板20)が、前記可動膜の前記一方の面(例えば背面側の面)側に設けられていることを特徴とするものである。
これによれば、従来構成よりも、短パルス波形、広帯域化等の音響特性、特に広帯域特性が向上した超音波探触子を実現することができる。
[第8態様]
第8態様は、第7態様において、前記制御基板は、前記超音波変換器の前記固定部材に連結され、該固定部材及び前記可動膜とともに密閉空間を形成することを特徴とするものである。
電気機械変換素子が湿気に晒されると、絶縁破壊が生じやすくなるため、電気機械変換素子に印加する駆動信号の電圧を大きくできず、超音波の送信強度を高めることが困難となる。本態様によれば、固定部材、可動膜及び制御基板によって形成される密閉空間内に電気機械変換素子が内封されるので、電気機械変換素子が湿気に晒される事態が抑制される。よって、駆動信号の電圧を大きくして、超音波の送信強度を高めることが可能となる。また、電気機械変換素子を湿気から保護する保護膜(例えばパッシベーション膜17)を省略することも可能となることから、可動膜を、より薄くて柔らかく、より軽くすることが可能となり、更なる広帯域特性の向上が可能となる。
[第9態様]
第9態様は、第8態様において、前記固定部材の最小幅は、3μm以上50μm以下であることを特徴とするものである。
これによれば、単位面積当たりの送信音圧を高めつつ、接合強度、密閉性を確保することができる。
[第10態様]
第10態様は、第7乃至第9態様のいずれかにおいて、前記可動膜と前記制御基板との間隔Cが3μm以下であることを特徴とするものである。
これによれば、超音波変換器と制御基板とを、所定間隔をあけて接合する部材(例えば第一金属部材11)の厚みを薄くすることができるので、製造工程を簡易化することができる。
[第11態様]
第11態様は、第7乃至第10態様のいずれかにおいて、前記超音波変換器における前記可動膜の反対の面(例えば送受信側の面)上に被覆部材が接合されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、超音波変換器における超音波の送信や受信を行う側には、音響整合層が設けられず、音響レンズ等の被覆部材が直接的に接合されるため、広帯域特性の向上を図ることができる。
[第12態様]
第12態様は、超音波診断装置100であって、第7乃至第11態様のいずれかの超音波探触子と、前記測定対象物の形状を表示するための表示部(例えば表示部61、表示端末50)と、を有することを特徴とするものである。
本態様によれば、短パルス波形、広帯域化等の音響特性、特に広帯域特性が向上した超音波探触子を用いるので、より適切な診断を可能とする超音波診断装置100を提供することができる。
[第13態様]
第13態様は、下部電極層、電気機械変換層及び上部電極層からなる電気機械変換素子が一方の面上に形成されている可動膜の周囲を固定部材によって固定し、前記可動膜の変位により前記一方の面とは反対の面側で超音波の送信若しくは受信又はその両方を行う超音波変換器の製造方法であって、前記固定部材を、前記一方の面側のみに形成することを特徴とするものである。
本態様によれば、短パルス波形、広帯域化等の音響特性、特に広帯域特性が向上した超音波変換器を提供することができる。
1 :超音波探触子
2 :pMUTチップ
3 :支持部
4 :フレキシブル基板
5 :配線
6 :接着剤
7 :コネクタ
8 :音響レンズ
9 :被検者
10 :振動部基板
11 :第一金属部材
11a :配線
12 :第二金属部材
13 :圧電体振動子
13a :上部電極
13b :圧電体層
13c :下部電極
14 :基材層
15 :ダイアフラム
16 :絶縁層
17 :パッシベーション膜
20 :IC基板
21,22:配線
30 :支持基板
50 :表示端末
61 :表示部
62 :操作部
63 :制御部
64 :超音波パルス発生部
65 :変換部
66 :超音波画像形成部
100 :超音波診断装置
特許第5560928号公報

Claims (13)

  1. 下部電極層、電気機械変換層及び上部電極層からなる電気機械変換素子が一方の面上に形成されている可動膜の周囲を固定部材によって固定し、前記可動膜の変位により前記一方の面とは反対の面側で超音波の送信若しくは受信又はその両方を行う超音波変換器であって、
    前記固定部材は、前記一方の面側のみから前記可動膜の周囲を固定していることを特徴とする超音波変換器。
  2. 請求項1に記載の超音波変換器において、
    前記固定部材に連結され、該固定部材及び前記可動膜とともに密閉空間を形成する密閉空間形成部材を有することを特徴とする超音波変換器。
  3. 請求項1又は2に記載の超音波変換器において、
    前記固定部材は、前記下部電極層と前記上部電極層との間の電気信号を伝達する信号伝達部材であることを特徴とする超音波変換器。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波変換器において、
    前記固定部材は、前記電気機械変換層と離間して前記可動膜の周囲を固定していることを特徴とする超音波変換器。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超音波変換器において、
    前記可動膜の前記一方の面上には複数の電気機械変換素子が形成されており、
    前記下部電極層は、前記複数の電気機械変換素子間で共通するグラウンド電極であることを特徴とする超音波変換器。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の超音波変換器において、
    前記可動膜の前記一方の面上には複数の電気機械変換素子がアレイ状に形成されており、
    前記固定部材は、1つの電気機械変換素子を含む可動膜又は2つ以上の電気機械変換素子を含む可動膜の周囲を固定することを特徴とする超音波変換器。
  7. 超音波変換器から超音波を測定対象物へ送信するとともに、該測定対象物で反射した前記超音波を受信する超音波探触子であって、
    前記超音波変換器として、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の超音波変換器を用い、
    前記超音波変換器の信号伝達部材を介して、該超音波変換器における前記下部電極層と前記上部電極層との間の電気信号の送信及び受信を行う制御基板が、前記可動膜の前記一方の面側に設けられていることを特徴とする超音波探触子。
  8. 請求項7に記載の超音波探触子において、
    前記制御基板は、前記超音波変換器の前記固定部材に連結され、該固定部材及び前記可動膜とともに密閉空間を形成することを特徴とする超音波探触子。
  9. 請求項8に記載の超音波探触子において、
    前記固定部材の最小幅は、3μm以上50μm以下であることを特徴とする超音波探触子。
  10. 請求項7乃至9のいずれか1項に記載の超音波探触子において、
    前記可動膜と前記制御基板との間隔が3μm以下であることを特徴とする超音波探触子。
  11. 請求項7乃至10のいずれか1項に記載の超音波探触子において、
    前記超音波変換器における前記可動膜の反対の面上に被覆部材が接合されていることを特徴とする超音波探触子。
  12. 請求項7乃至11のいずれか1項に記載の超音波探触子と、
    前記測定対象物の形状を表示するための表示部と、を有することを特徴とする超音波診断装置。
  13. 下部電極層、電気機械変換層及び上部電極層からなる電気機械変換素子が一方の面上に形成されている可動膜の周囲を固定部材によって固定し、前記可動膜の変位により前記一方の面とは反対の面側で超音波の送信若しくは受信又はその両方を行う超音波変換器の製造方法であって、
    前記固定部材を、前記一方の面側のみに形成することを特徴とする超音波変換器の製造方法。
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