JP7218134B2 - 静電容量型トランスデューサ、及びその製造方法 - Google Patents

静電容量型トランスデューサ、及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、静電容量型トランスデューサ、及びその製造方法に関する。
マイクロマシニング技術によって作製される静電容量型トランスデューサは、圧電素子の代替品として開発が進められている。以下では、静電容量型トランスデューサをCMUT(Capacitive Micro-machined Ultrasound Transducers)と略すことがある。
このようなCMUTによると、振動膜の振動を用いて超音波を送受信することが可能である。また、優れた広帯域特性により、より短い超音波パルスを発生できるため、超音波送信方向の空間分解能の向上につながる。また従来は複数の超音波プローブでの評価が必要なケースであっても、少ない数の超音波プローブでの評価が可能になり、装置の簡便化やコスト削減につながる。また、高調波を利用したイメージング技術には広帯域特性は有用である。
一般的な超音波プローブとしてコンベックス型超音波プローブがあり、ピエゾ素子を曲面に実装し、主に腹部等の断層像を広範囲に撮像することが可能である。主に半導体製造プロセス技術で作製される静電容量型トランスデューサは曲面に実装することがシリコン基板の影響から困難である。この課題に対して、作製した静電容量型トランスデューサを小さく分割し、実装したい曲面にあらかじめ施してあるガイドにあてて配設する方法が提案されている(特許文献1)。
特開2017-148258号公報
CMUTの特性は、従来のピエゾ素子によるトランスデューサと比較して、音響インピーダンスが媒質に近いことにより、周波数帯域が広くでき、超音波の送信パルスを短くできるため、解像度の高い画像が得られる。しかし、半導体基板上に作製されるため、基板の剛性から曲面に実装することが難しい。超音波プローブは生体内部の情報を取得するために、音響インピーダンスを整合させるジェルや液体を介して可能な限り測定物に密着させる必要がある。それ故にCMUTを自由曲面に施した超音波プローブを提供することができれば、複雑な形状をした部位であっても生体内部の情報を超音波信号によって抽出することが可能になる。また、超音波画像の画質はエレメント間隔による回折から生じるアーチファクトの影響を受ける。この種のアーチファクトの影響を最小限に抑制するためにはエレメントの間隔をできるだけ小さくする必要があり、エレメントを密に実装することが求められる。
本発明に係る静電容量型トランスデューサは、少なくとも1つのエレメントを含み構成される静電容量型トランスデューサであって、前記エレメントは少なくとも1つのセルを有し、前記セルは、第一の電極と、前記第一の電極の上の第一の絶縁膜と、前記第一の絶縁膜と空隙を介して対向する、第二の絶縁膜と第二の電極とを含む振動膜と、を含み、前記エレメントは可撓性を有する基板の上に設けられ、前記基板の表面には、表面電極と、前記表面電極と電気的に接続された配線とが設けられ、前記第一の電極、及び前記第二の電極は、前記表面電極と電気的に接続されており、前記基板の可撓性によって、前記エレメントが複数方向に変形配置可能である。
本発明に係るCMUTは、柔軟性を有する基板に施されているため、生体部位に曲げて当てることが可能である。また柔軟な基板に配設された配線によってエレメントを電気的に接続しているためエレメント間隔を密にでき、超音波の回折によるアーチファクトが抑制された高画質な超音波画像を形成可能な超音波信号を取得できる。
本発明の実施形態に係るCMUTを説明するための上面図(a)、A-A’断面図(b)、B-B’断面図(c)である。 本発明の実施形態に係るCMUTを説明する断面図である。 本発明の実施形態に係るCMUTを説明する断面図である。 本発明の実施形態に係るCMUTを説明する上面図(a),C-C’断面図(b)である。 本発明の実施例に係るCMUTの実施例3を説明する図である。 本発明の実施例に係るCMUTの実施例4を説明する図である。 本発明の実施例に係るCMUTの実施例5を説明する図である。 本発明の実施例に係るCMUTの製造方法を説明する図である。 本発明の実施例に係るCMUTの製造方法を説明する図である。 本発明の実施例に係るCMUTを用いた画像形成装置の実施例7を説明する図である。
以下に、本発明の実施の形態について図1を用いて説明する。図1(a)は、本実施形態における静電容量型トランスデューサ(CMUT)の上面図である。また図1(b)および図1(c)は、図1(a)のA-A’断面図およびB-B’断面図である。
本実施形態でのCMUT100は複数のセル1を含み構成されているエレメント3を有している。同一エレメント3内のセル1は配線2で電気的に接続されている。図1(a)では、エレメント3に含まれるセル1の数は9つであるが、いくつであっても構わない。セル1の並び方は等間隔の正方格子で描かれているが、並び方は六方最密でもよいし、不等間隔でもよい。図1(a)ではセル1を構成する振動膜6の形状は円形、楕円形、六角形等の多角形、あるいは矩形であってもよい。
セル1は、第一の電極8と、第一の絶縁膜9と、空隙10を介して対向する振動膜6を含み構成される。振動膜6は第二の絶縁膜11と第三の絶縁膜13と、それらに挟まれた第二の電極12、及び封止膜17で構成され、支持部15に振動可能に支持されている。封止膜17は封止部14の周辺を除いて除去されていても構わない。その際には振動膜6の構成要素は第二の絶縁膜11、第二の電極12、第三の絶縁膜13となる。セル1あるいはエレメント3は可撓性(柔軟性)を有する基板4と接着物19を介して接着されている。基板4の可撓性によって、エレメント3は複数方向に変形配置可能である。
また、図1(a)のCMUT100では、エレメント3は9つであるが1つでもよいし複数でもよく、数は問わない。エレメント3が複数ある場合、第一の電極8と第二の電極12の一方は電気的に絶縁されている。また、第一の電極8と第二の電極12のうち、どちらか一方は複数のエレメント3で共通であってもよい。すなわち、複数のエレメントの第一の電極同士、又は複数のエレメントの第二の電極同士が電気的に接続されていてもよい。
第一の電極8あるいは第二の電極12は、直流バイアス電圧を印加する電極、あるいは電気信号を加えるもしくは電気信号を取り出すための電極、として用いる。直流バイアス電圧を印加する電極はエレメント内で共通となっている。直流バイアス電圧はエレメント間で共通となる構成としても構わない一方、信号を送受信する電極はエレメント毎に電気的に分離されている。
セル1を構成する材料について説明する。第一の電極8は金属が望ましく、例えばタングステン、モリブデン、チタン、アルミニウム、ネオジウム、クロム、コバルト等の金属を用いることができる。また、これらの金属を複数積層した積層体、これらの金属の化合物、これらの金属の合金や、これらの金属とケイ素や銅との化合物、これらの金属とケイ素や銅との合金でもよい。また、これらの金属に高濃度の不純物が含まれた半導体もしくは化合物半導体でもよい。
空隙10は第一の絶縁膜9および第二の絶縁膜11および封止部14によって覆われている。空隙10は大気圧と比較して十分減圧された状態で封止されている。封止されていることにより、封止後の工程中もしくは使用中に液体が空隙10内部に入ることを抑制している。また減圧されていることでCMUTの感度を高めている。第一の電極8と第二の電極12は空隙10を含めて絶縁体で絶縁されている。図1(b)の場合は、第一の絶縁膜9、第二の絶縁膜11および第三の絶縁膜13によって絶縁されている。これらの絶縁膜9、11、13は例えば酸化シリコンや窒化シリコンである。第二の電極12は金属が望ましく、例えばタングステン、モリブデン、チタン、アルミニウム、ネオジム、クロム、コバルトやこれらの化合物および合金や、ケイ素や銅との化合物および合金でよい。
本実施形態のCMUTの動作原理を説明する。静電容量型トランスデューサで超音波を送受信する場合、電圧印加手段5で、基板4に配設された配線21とビア22を介して第一の電極8と第二の電極12との間に電位差を形成する。第一の電極8と第二の電極12との間に直流電圧に加えて交流電圧を印加すると静電気力の時間変化によって振動膜6が振動する。振動膜の振動は数十キロヘルツから数十メガヘルツであり、超音波の周波数帯である。振動膜上の物質を直接振動させることで超音波が発生する原理である。このように、本実施形態に関わるCMUTは電気信号を振動膜の振動に変換し、その振動が超音波を生成することで超音波を送信することができる。
一方、超音波を受信すると、第二の電極12を有する振動膜が振動するため、エレメント3の静電容量が変化する。この静電容量の変化によって、信号取り出し電極に交流電流が流れる。このように、超音波が電気信号に変換されることで超音波を受信することができる。静電容量型トランスデューサの場合は、超音波を受信すると静電容量の変化による微小な交流電流となって出力される。この電流は演算増幅器等の回路によって増幅された電圧信号となり、A/Dコンバータで離散化されたのちに信号処理される。
本実施形態のCMUTの構造について説明する。CMUT100の各エレメント3は柔軟性を有する基板4上に接着されており、各エレメント3との間は構造的に分離されている。エレメント3の間の溝20の幅をエレメント3の高さよりも広く取ることで、CMUT100は柔軟に変形することができ、さまざまな形態の曲面に接地、密着させることができる。エレメント3の高さは数マイクロメートル程度であり、溝20の幅がエレメント3の高さと同程度であるので、エレメント3の配列ピッチを最密にすることが可能である。これにより、超音波の回折によって生じるアーチファクトを減らすことができるため、良質な超音波画像を提供することができる。なお、エレメントの上面から底面までの高さが3マイクロメートル以下とすることができ、隣接するエレメント同士の間の距離が、エレメントの上面から底面までの高さの2倍以下とすることができる。ここで、エレメントの高さは、エレメントのうち、基板側の面(底面)から、基板側と逆側の面(上面)までの距離である。
第二の電極12は引出し配線7を伝って引き出される。第二の電極12は第一の電極8と絶縁分離されながら電気信号を基板4に配設された電極23に引き出せる構造であればよい。引出構造は例えばワイヤボンディングのような空中配線27(図2)、スクリーン印刷やフォトリソグラフィーを利用したパターン配線26(図3)、インクジェット等による描画配線でもよい。図1(c)、図2または図3では第二の電極12を引き出した構造を図示しているが、第一の電極8を同様な構造で引き出してもよいし、また、第一の電極8と第二の電極12の両方を同様の方法で引き出しても構わない。さらに、図1(c)のように第二の電極12は第一の電極8とは絶縁分離されたエレメント3の底面の電極16に引き出されることで、基板4側に電気的に接続させてもよい。これによって、図2や図3よりもさらにエレメント3を密に配設することが可能になる。電極8や16と基板4とは導電性を有する接着層19で基板4上に形成された表面電極18に電気的にも構造的にも接続している。接着層19は導電性を有する樹脂やはんだ等の合金でもよい。基板4は配線層21やビア22を有し、それらを伝わった電気信号が最終的には画像形成装置に接続されている。
図1(c)によると、エレメント3の底面の電極16と第一の電極8は第二の絶縁膜11で分離されている。この電極分離構造は第一の絶縁膜9を利用しても可能である。エレメント3の高さは数マイクロメートルであり幅は数百マイクロメートルであるから非常に薄く平たい構造であるため、エレメント3の剛性は高い方が望ましい。この電極分離構造の材料としては酸化シリコンや窒化シリコンでもよいが、ヤング率の高い窒化シリコンの方が望ましい。
また図4(a)に示すようにエレメント3が一次元に並べられていてもよく、エレメント3同士の間に溝20が施され構造的に分離されている。図4(b)のようにエレメント3の上部は樹脂材料で覆われていてもよい。樹脂材料25はエレメント3やその周囲を保護する役割を有する。また、成形することで音響レンズの役割を有することができる。また溝20や接着層19の隙間に絶縁性の樹脂28を埋めてあっても構わない。これにより溝20にごみが混入することを防ぐことができ、また絶縁信頼性や構造信頼性を高めることも可能になる。
図4においてエレメント3の接着された柔軟性を有する基板4は曲面を有する土台29に接着されている。これにより本実施形態のCMUTはコンベックス型リニアプローブを提供可能にする。また土台29は凹面でもよく、その場合はコンケーブ型のリニアプローブも提供できる。また土台29はエレメント3の長辺方向に曲面を有していてもよい。さらに、土台29の曲面の曲率は一様である必要もない。
エレメント3で発生した超音波または受信した超音波は基板4の方向にも伝播し、反射することで受信信号や画質に影響を与える可能性がある。それ故に、基板4が音響減衰性を有することが望ましい。また図5のように基板4の裏面に音響減衰材24が設置されていてもよい。基板4の材質としてはエポキシなどの樹脂でもよい。また音響減衰材24は樹脂単体でもよいがチタンやタングステン等の金属の微粒子を混在させた樹脂でもよい。反射を抑制するためには基板4と音響減衰材24の音響インピーダンスが整合しているのが好ましい。
基板4にセル1と同様に演算増幅回路やA/Dコンバータが実装されていてもよい。これにより、離散化されるまでの配線の長さを短くすることができ、配線長さに依存する反射波やノイズを抑制することができる。
本実施形態のCMUTの製法について説明する。本実施形態に係るCMUTの製造工程は図8に図示するエレメント製造工程とエレメント分離工程、図9(a)の支持基板の接着工程、図9(b)のウエハ剥離工程、図9(c)の柔軟基板の接着工程および支持基板の剥離工程で構成される。
エレメント製造工程を図8に示す。ウエハ101上に膜102を形成する。この膜102はウエハ剥離工程(図9(b))で除去される。ウエハ101は例えば単結晶シリコン、Silicon on Insulator(SOI)、ガラス、結晶化ガラス、石英、炭化ケイ素などでよく、膜102はウエハ101の酸化物や窒化物などでよい。また膜102は堆積膜でもよく、真空蒸着、スパッタリング、化学気相成長、物理気相成長、熱酸化などによる、金属あるいは絶縁体の膜でよい。ただし、のちの工程で除去する際に、エレメント部分の構成材料以外のものが好ましい。
図1における第一の電極8や電極16の元となる導体膜103を成膜する。この導体膜103は平滑性、導電性、および耐熱性が求められる。材料としてはタングステン、モリブデン、チタン、アルミニウム、ネオジウム、クロム、コバルトやこれらの積層、化合物および合金や、ケイ素や銅との化合物および合金でよい。また、高濃度の不純物を含んだ半導体もしくは化合物半導体でもよい。成膜方法は真空蒸着、スパッタリング、化学気相成長(CVD)、等でよい。導体膜103の厚さは50ナノメートル乃至400ナノメートル程度である。
次に、第一の絶縁膜104を成膜する。材料は酸化シリコン、窒化シリコン等でよく、成膜方法はCVDやスパッタリングでよい。その後、犠牲層となる膜105を成膜する。材料はクロム、モリブデン、酸化シリコン、非晶質シリコンなどでよい。厚さは100ナノメートル乃至500ナノメートル程度である。その犠牲層105をフォトリソグラフィーでパターニングし、同様に第一の絶縁膜104と導体膜103パターニングする(図8(c)、(d))。第二の絶縁膜110を成膜し、電極108の上部の第二の絶縁膜110を除去し、コンタクト部111を形成する(図8(e))。第二の絶縁膜110は酸化シリコンもしくは窒化シリコンでよく、厚さは200乃至800ナノメートルである。第二の電極12となる導体膜112を成膜し、パターニングする(図8(f))。導体膜の材料としては金属が望ましく、例えばタングステン、モリブデン、チタン、アルミニウム、ネオジム、クロム、コバルトやこれらの化合物および合金や、ケイ素や銅との化合物および合金でよい。導体膜112の厚さは100乃至600ナノメートルである。第三の絶縁膜113を成膜する。材料は酸化シリコンもしくは窒化シリコンでよく、厚さは200乃至800ナノメートルであるが、導体膜112を完全に覆っている。その後、エッチング孔115を形成し、犠牲層106を除去する(図8(g))。封止膜116を成膜する。封止膜116の材料は第二の絶縁膜110や第三の絶縁膜116と同一材料であることが封止性を高めるので好ましい。空隙114上の第二の絶縁膜110、導体膜112、第三の絶縁膜113および封止膜116で振動膜を構成するが、振動膜の厚さを調整するために、封止膜116を除去する工程があっても構わない。振動膜が自立するためには、膜応力が全体として引っ張り応力である必要があるため、第二の絶縁膜110、導体膜112、第三の絶縁膜113は応力を制御して形成される。特に、第二の絶縁膜110および第三の絶縁膜113の膜応力は0乃至150メガパスカル程度であることが好ましい。これによって、振動膜が破れることや、膨らんだり、空隙の底面に付着したりすることを防止できる。
エレメント分離工程(図8(h))は、エレメントの間の第二の絶縁膜110、第三の絶縁膜113、および封止膜116をエッチングで除去する工程である。この際、エッチングが膜102あるいはウエハ101に到達していなくてはならない。この工程が円滑に行うためには、第二の絶縁膜110、第三の絶縁膜113、および封止膜116が同一材料であることが好ましく、またそれらが膜102とは異なる材料であることが望ましい。
図9(a)に示す支持基板の接着工程はエレメントの上部を支持基板121と接着剤122で接着する工程である。接着材122として粘着シートを用いることができる。
その後、ウエハ剥離工程(図9(b))を行い、ウエハ101と膜102を除去する。ウエハ101の裏面からグラインドやエッチングなどで除去する方法でも、膜102をエッチングすることによってウエハ101をはがす方法でもよい。いずれの方法でもエレメント119に加工が及ぶことを防ぐために、選択比の高いエッチングによる除去が望ましく、そのためにウエハ101または膜102と、導体膜108、109や第二の絶縁膜110の材料は異なることが望ましい。ウエハ101単結晶シリコン、Silicon on Insulator(SOI)、ガラス、結晶化ガラス、石英、炭化ケイ素などである。膜102はウエハ101の酸化物や窒化物などでよい。たとえばウエハ101がケイ素単結晶基板であれば膜102は酸化シリコンでよく、その際、エレメント119の露出部分が酸化シリコン以外で形成されている必要がある。ウエハ101がガラスであれば、膜102は不必要であり、同様の工程でウエハ101を除去できる。本工程を考慮するにエレメント119の底面の電極を分離する箇所123は膜102とは異なる材料である必要がある。たとえば膜102が酸化シリコンであれば電極を分離している箇所123は窒化シリコンであればよい。
次に、柔軟基板の接着工程を行う。基板126は柔軟性を有し、かつ配線、ビア、電極を有するフレキシブル配線基板になっている。エレメント119の底部の電極と電気的にも構造的にも接続することでエレメント119の高密度配列が可能になる。接着剤122は導電性接着剤あるいははんだ合金等の金属が好ましい。接着剤122が導電性接着剤の場合は、基板126側にあらかじめ塗布しておき、接着する。はんだ合金などの場合は、基板側にパターン形成しておき接着後、リフローさせる。
最後に支持基板の剥離工程を行い、支持基板121を除去する(図9(c))。この際、接着剤122の粘着性を低下させてはがす。たとえば接着剤122に加熱発泡性の樹脂材料を使用することで、容易に剥離することができる。図4(b)のように基板126を曲げて曲面状に接着固定してもよいし、柔軟性を保ったまま様々な曲面に当てられる状態にしておいてもよい。
本実施形態のCMUTの製法によって、ウエハ上でエレメント部分を形成することで、良質の振動膜、絶縁膜、電極を精度よく形成、加工することが可能であり、より均質なCMUTを提供できる。またエレメントを分離し、柔軟性を有し、電極および配線を有する基板に転写することでCMUTを様々な曲面状に密着させることが可能である。ウエハ上にマイクロマシニング技術で製造されたエレメント部分をそのまま柔軟性を有する基板に転写するため、エレメント間隔が小さくかつ精度のよいアレイ素子を製造できる。エレメント間隔が十分小さいことで、回折によって生じるアーチファクトを最小限に抑えることができる。
本実施形態は、CMUTについて、あらゆる曲面に当てて超音波診断可能であり、あるいはあらゆる曲面に対して実装可能なトランスデューサの構造を提案したものである。このCMUTは主にウエハ上で作製されるため曲面状に配置することが困難であった。本実施形態の構造及び製法により、基板部分を剥離し、薄いエレメント部分のみを柔軟性を有する基板に張り付け、電気的にも接続させることで、柔軟性を有し、かつ高密度に配列されたエレメントを有するCMUTを実現できる。そして、このようなCMUTを搭載した超音波プローブを実現できる。これにより複雑な局面を有する生体部位から内部の情報を超音波で撮像することが可能になる。
以下、より具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
図1を用いて本発明の実施例に係るCMUTの例(実施例1)を説明する。図1(a)は本実施例におけるCMUTの上面図であり、エレメント3は二次元アレイとして構成されている。
まず、セル1の断面構造について図1(c)を用いて説明する。第一の電極8として厚さ100ナノメートルのタングステンと厚さ10ナノメートルのチタンの積層膜の上に、第一の絶縁層9として酸化シリコンを400ナノメートル、空隙10の高さは300ナノメートルであり、200パスカルで減圧、封止されている。空隙10の上の第二の絶縁膜11は窒化ケイ素膜で厚さは600ナノメートルである。第二の電極12は厚さ100ナノメートルのアルミニウム・ネオジウム合金である。セル1の振動膜の直径は30マイクロメートル、第二の電極12の直径は28マイクロメートルで、配線2の幅は4マイクロメートルである。第三の絶縁膜13は窒化シリコンで厚さは400ナノメートルである。第二の絶縁膜11、第二の電極12および第三の絶縁膜13は振動膜6の構成要素である。第二の絶縁膜11と第三の絶縁膜は引張応力を有することで振動膜6を安定的に形成している。本実施例では第二の絶縁膜および第三の絶縁膜であるシリコン窒化膜は100メガパスカルの応力を有している。封止膜17の厚さは700ナノメートルであり孔14で空隙10は封止されている。封止膜の材料は窒化シリコンである。
第二の電極12は水平方向に引き出され、底面の電極16に接続する。電極16は第一の電極8と同一材料で同じ厚さで形成されているが、電極8とは第二の絶縁膜11で絶縁されている。電極8と16は底部から導電性接着剤19を介して、柔軟性を有する基板4に接着されている。基板4の基材はポリイミドであり配線21やビア22の材料は銅である。導電性接着剤はエポキシ樹脂を基材とした金属微粒子の混合物である。各エレメント3にすくなくとも一組ずつの電極8および16が存在し、それらに対抗して基板4の表面電極18があり、基板4内部の配線21およびビア22を介して電気信号が引き出される。
CMUTは電圧印加手段5から直流電圧を第一の電極8と第二の電極12の間に印加することにより、電気機械変換を行い、超音波の送信および受信が可能になる。なお、超音波送信時には電圧印加手段5より直流電圧に加えて交流電圧を印加する。CMUTの駆動条件はセル1のプルイン電圧より決定する。プルインとは第一の電極8と第二の電極12との間に直流電圧を印加したとき、振動膜の剛性による復元力と静電気力のつり合いがとれなくなり、振動膜が空隙10の底面に接触することであり、この電圧をプルイン電圧と呼ぶ。本実施例におけるセル1のプルイン電圧は300ボルトであり、駆動条件は、直流電圧は200V、交流電圧の振幅最大値は100Vである。
エレメント3は他のエレメントとは溝20で構造的に分離されており、溝20の幅は5マイクロメートルである。エレメント3の高さは空隙10の直上で2.3マイクロメートルほどであるため、溝20部で90度曲げてもエレメント3が隣接するエレメントと接触することはない。そのため、CMUT100は柔軟性を有する基板4を自由に曲げることであらゆる形状に変形することができる。
CMUTの主な用途は送信した超音波のエコーを自ら受信し、様々な種類の情報、たとえば距離、方向、物体の種類、特性、速度などを取得する。生体の多様な部位の情報を取得するためには、トランスデューサが生体の複雑な曲面に沿うように変形でき、また所望の曲面に実装可能な柔軟性を有していることが必要である。本実施例におけるCMUTの場合、エレメント3を狭ピッチにかつ自由な曲面に配置した超音波プローブを提供することが可能となる。
図4を用いて本発明の実施例に係るCMUTの例(実施例2)を説明する。CMUT100は長方形のエレメント3が一次元的に配列された構成である。エレメント3の短辺長は200マイクロメートルであり、長辺長さは8ミリメートルである。セル1はエレメント3の内部に最密に配列されている。各エレメントは溝20で構造的に分離されている。エレメント3の厚さ方向の構造は実施例1に相当する。
エレメント3の上面側に樹脂25を接着し、エレメント3の表面を保護している。樹脂25はシリコーンゴムであり、300マイクロメートルほどの厚さがある。樹脂25の音響インピーダンスは1.5MRayls程度であり、生体の音響インピーダンスと整合している。樹脂28はアンダーフィル材としてエレメント3の間や導電性接着剤の隙間を埋め、絶縁信頼性および構造信頼性を高める役割を担う。樹脂28はエポキシ樹脂である。
本実施例における樹脂25を施したCMUTは生体との効率のよい超音波伝播を実現し、信頼性の高く、かつエレメントが曲面に配設された超音波プローブの提供を実現する。
図5を用いて本発明の実施例に係るCMUTの例(実施例2)を説明する。本実施例のCMUTは図1に示したものに対応する。
エレメント3が接着実装されたエポキシ樹脂を基材とする基板4の裏面にエポキシ樹脂にタングステン微粒子が混在した音響減衰材24が接着されている。CMUTで発生した、あるいは入射してくる超音波を音響減衰材24で吸収することで、反射波を抑制できる。また本実施形態では基板4だけでも音響減衰特性を有するため、基板4を音響減衰材と一体として考えることもできる。反射波は超音波画像上ではノイズとなるため、本実施例の音響減衰材24を施したCMUTは高画質な超音波像を提供できる。
図6を用いて本発明の実施例に係るCMUTの例(実施例4)を説明する。本実施例のCMUTは図1に示したものに対応する。
基板33にはビア34および35、配線36および37があり、それぞれ電気的に結合している。エレメント31はサブエレメント32に構造的に分割されており、基板33内部で電気的に並列結合している。サブエレメントの第一の電極はビア34を介して配線36に接続し、サブエレメントの第二の電極はビア35を介して配線37に接続している。たとえばリニアプローブであればエレメント内部では音響レンズで焦点を結ぶが、音響レンズの減衰を考慮しなくてはならない高周波数の超音波を用いる場合は、エレメントを変形させて焦点を結ぶことができる。本実施例におけるCMUTはエレメントを変形実装することが可能であるため、エレメントに曲面を持たせて超音波のビームを形成することが可能な超音波プローブの提供を実現する。
図7を用いて本発明の実施例に係るCMUTの例(実施例5)を説明する。本実施例のCMUTは図1に示したものに対応する。
送信電圧信号を電圧印可手段45から基板44に実装された回路47と配線46およびビア48、導電性接着剤49を介してエレメント41の第一の電極42に印加する。またエレメント41で受信した超音波を電気信号に変換し、同様にビア48、配線46、回路47を介して受信装置50内部のA/Dコンバータで離散化される。回路47の内部で送信時と受信時の切り替えスイッチが存在し、自動的に送信と受信の回路が切り替わる。また回路47の内部には受信信号を増幅する演算増幅回路がある。
本実施例におけるCMUTはエレメントを変形実装することが可能であり、また基板上に回路も実装することが可能となりよりノイズ影響をうけにくい超音波プローブの提供を実現する。
図8および図9を用いて本発明の実施例に係るCMUTの製造方法の例(実施例7)を説明する。本実施例で製造されるCMUTは図1に示したものに対応する。
図8(a)に単結晶シリコン基板101を熱酸化させて酸化シリコン膜102を1マイクロメートル成膜する。熱酸化工程では基板表面すべてが酸化するが、図8(a)では裏面側は図示しない。
次に第一の金属膜(導体膜)103としてタングステン100ナノメートルとチタン10ナノメートルをスパッタリングで連続して成膜する。その後、Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition(PECVD)により酸化シリコン膜を400ナノメートル成膜し、第一の絶縁膜104を形成する。その後、非晶質ケイ素膜105を成膜する。
図8(b)に犠牲層106の形成を示す。非晶質シリコン膜105の一部をエッチングして除去する工程である。第一の絶縁膜の一部107を残してエッチングする(図8(c))。次に導体膜103をエッチングし、電極108および109を形成する(図8(d))。図8(e)に第二の絶縁膜110を形成する工程を示す。窒化シリコン膜をPECVDで300ナノメートル成膜し、コンタクトホール111を形成する。
図8(f)に第二の金属膜(第二の電極)112の形成を示す。アルミニウム・ネオジウム合金膜をスパッタリングで100ナノメートル成膜し、第二の電極110を形成する。
その後、窒化シリコン膜をPECVDで400ナノメートル成膜し、第三の絶縁膜113を形成する(図8(g))。犠牲層106を除去するために、犠牲層106に連通するように、第二の絶縁膜、第三の絶縁膜の一部に貫通する孔115を形成する。そして、二フッ化キセノンによるドライエッチングによって犠牲層106を形成する非晶質シリコンを除去し、空隙114が形成される。
犠牲層エッチングに用いた孔115はその後PECVDによって厚さ700ナノメートルの窒化シリコン膜116により封止される(図8(h))。この際、成膜条件が200パスカル程度の雰囲気になることから、空隙114は減圧封止される。封止の際に振動膜上部に積層された窒化ケイ素はエッチングにより除去する場合がある。封止工程に相当の膜厚が必要な場合には、犠牲層エッチング前に、第三の絶縁膜113の上部にエッチングストップ層を形成し、犠牲層エッチング、封止、封止膜のエッチング後にエッチングストップ層を除去する。その後、エレメント119の間の第二の絶縁膜110、第三の絶縁膜113、および封止膜116をエッチングで除去し、溝118を形成することでエレメント119同士を空間的に分離する。
図9(a)に支持基板の接着工程を示す。支持基板121に分離されたエレメント119の上面を熱発泡接着剤122で張り付ける。図9(b)にウエハ剥離工程を示す。酸化シリコン膜102をフッ化水素酸でエッチングすることでウエハ101を剥離する。次に柔軟基板の接着工程を示す。表面に電極124を有する柔軟な基板126に導電性接着剤125をスクリーン印刷で塗布する。その後、導電性接着剤125と電極108および109を接着する。最後に加熱して熱発泡接着剤122を発泡させ、支持基板121を剥離する。これにより、柔軟性を有する基板上にエレメントが高密度に実装されたCMUTが完成する(図9(c))。
CMUTの主な用途は送信した超音波のエコーを自ら受信し、様々な種類の情報、たとえば距離、方向、物体の種類、特性、速度などを取得する。生体の多様な部位の情報を取得するためには、トランスデューサが生体の複雑な曲面に沿うように変形でき、また所望の曲面に実装可能な柔軟性を有していることが必要である。本実施例におけるCMUTの製造方法により、エレメント119を狭ピッチにかつ自由な曲面に配置した超音波プローブを提供できる。
図10を用いて本発明実施例に係る超音波画像形成装置の例を説明する。本実施形態で用いられるCMUT201とエレメント203の構成は実施例1乃至実施例6と同様である。
曲面を有する生体表面205に沿うようにCMUT201を変形させて設置する。生体表面205とエレメント203との間は生体の音響インピーダンスに近いジェルが介在することで生体内へまたは生体内からの超音波202を伝播させる。エレメント203で生成した超音波202は生体内部の音響反響体204でのエコーとして再度エレメント203に戻り、受信する。受信した超音波はエレメント203で電気信号に変換され、基板内部の配線を通して外部に接続する配線206より処理部(計算機)207に接続する。計算機207では得られた信号を画像情報に変換し、表示部(表示器)208で超音波画像をリアルタイムで表示する。表示制御部(付図示)は、表示部208、処理部207で得た画像情報に基づいて、画像を表示させる制御を行う。
以上のように、本実施例に係る超音波画像形成装置により生体の複雑な表面形状に対して形状に適応できるCMUTによって高画質な画像形成が可能な画像形成装置を提供できる。
1 セル
2 配線
3 エレメント
4 基板
5 電圧印可手段
6 振動膜
7 引出し配線
8 第一の電極
9 第一の絶縁膜
10 空隙
11 第二の絶縁膜
12 第二の電極
13 第三の絶縁膜
14 封止部
15 支持部
16 電極
17 封止膜
18 表面電極
19 導電性接着剤
20 溝
21 配線
22 ビア
100 静電容量型トランスデューサ(CMUT)

Claims (13)

  1. 少なくとも1つのエレメントを含み構成される静電容量型トランスデューサであって、
    前記エレメントは少なくとも1つのセルを有し、
    前記セルは、第一の電極と、前記第一の電極の上の第一の絶縁膜と、前記第一の絶縁膜と空隙を介して対向する、第二の絶縁膜と第二の電極とを含む振動膜と、
    を含み、
    前記エレメントは可撓性を有する基板の上に設けられ、
    前記基板の表面には、表面電極と、前記表面電極と電気的に接続された配線とが設けられ、
    前記第一の電極、及び前記第二の電極は、前記エレメントのうち前記基板側に電気的に引き出されており、前記第一の電極、及び前記第二の電極は、前記表面電極と導電性を有する接着層を介して電気的に接続されており、
    前記第一の電極、及び前記第二の電極は前記エレメントのうち前記基板側の面において前記第二の絶縁膜の一部で絶縁されている静電容量型トランスデューサ。
  2. 前記接着層は導電性を有する樹脂を含む
    請求項1に記載の静電容量型トランスデューサ。
  3. 前記接着層は合金を含む
    請求項1に記載の静電容量型トランスデューサ。
  4. 前記第一の絶縁膜が酸化シリコンを含み、前記第二の絶縁膜が窒化シリコンを含む
    請求項1乃至の何れか1項に記載の静電容量型トランスデューサ。
  5. 前記静電容量型トランスデューサが、複数のエレメントを有し、
    前記エレメントのうち、前記基板側の面から、前記基板側と逆側の面までの高さが、前記複数のエレメントの隣接するエレメント同士の距離よりも小さい、請求項1乃至の何れか1項に記載の静電容量型トランスデューサ。
  6. 前記エレメントのうち、前記基板側の面から、前記基板側と逆側の面までの高さが3マイクロメートル以下であり、前記複数のエレメントの隣接するエレメント同士の距離が前記高さの2倍以下である請求項に記載の静電容量型トランスデューサ。
  7. 前記静電容量型トランスデューサが、複数のエレメントを有し、
    前記基板の配線が前記複数のエレメントの前記第一の電極同士、もしくは前記第二の電極同士を接続することにより、前記複数のエレメント同士が電気的に接続され、前記基板が曲率を有する請求項1乃至の何れか1項に記載の静電容量型トランスデューサ。
  8. 前記基板がエポキシ樹脂を含む
    請求項1乃至の何れか1項に記載の静電容量型トランスデューサ。
  9. 前記基板の裏面に音響減衰材が接着されている
    請求項1乃至の何れか1項に記載の静電容量型トランスデューサ。
  10. 前記音響減衰材はタングステンの微粒子が混在したエポキシ樹脂を含む
    請求項に記載の静電容量型トランスデューサ。
  11. 前記振動膜の上面は樹脂で覆われている
    請求項1乃至10の何れか1項に記載の静電容量型トランスデューサ。
  12. 前記第一の電極または前記第二の電極から送られてきた電気信号を増幅する演算増幅器が前記基板の一部に接続されている
    請求項1乃至11の何れか1項に記載の、静電容量型トランスデューサ。
  13. 請求項1乃至12の何れか1項に記載の静電容量型トランスデューサと、
    前記エレメントによって受信した電気信号から画像情報を生成する処理を行う処理部と、
    前記画像情報を表示部に表示させる表示制御部と、を有する画像形成装置であって、
    前記静電容量型トランスデューサは、前記基板の可撓性によって曲面状に設けられている、
    画像形成装置。
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