JP2022143475A - 結合体の形成方法、対象物質の測定方法、及びキット - Google Patents

結合体の形成方法、対象物質の測定方法、及びキット Download PDF

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Tatsuya Kawakami
雅之 小野
Masayuki Ono
公二 ▲辻▼田
Koji Tsujita
勝恵 堀越
Katsue Horikoshi
祐一 長谷川
Yuichi Hasegawa
誠 糸長
Makoto Itonaga
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【課題】対象物質と第1の特的結合物質を結合させた磁性粒子と反応槽に結合された第2の特異的結合物質との反応時間を低減可能な、結合体の形成方法、及び対象物質の測定方法、並びに前記方法に用いられるキットを提供する。【解決手段】対象物質と、前記対象物質に対し特異的結合を行う第1の特異的結合物質を結合させた磁性粒子と、反応槽の内壁に結合された前記対象物質に対し特異的結合を行う第2の特異的結合物質との結合体を形成する方法であって、前記反応槽に収容された、前記対象物質と前記磁性粒子とを含む反応液中で、前記対象物質と前記磁性粒子との結合反応、及び前記対象物質と前記第2の特異的結合物質との結合反応を行う工程(A)を含み、前記工程(A)が、前記磁性粒子に作用する磁場を変化させて、前記反応液中での前記磁性粒子の運動量を増大させることを含む、方法。【選択図】なし

Description

本発明は、結合体の形成方法、対象物質の測定方法、及びキットに関する。前記結合体は、対象物質と、前記対象物質に対する第1の特異的結合物質を結合させた磁性粒子と、反応槽の内壁に結合させた前記対象物質に対する第2の特異的結合物質とから構成される。
抗原抗体反応に代表される免疫化学的分析方法で、対象物質に特異的に結合する抗体等(捕捉用分子)を固定した固相担体で対象物質を捕捉し、前記対象物質に特異的に結合する抗体等を固定したナノ粒子等(標識粒子)により前記対象物質を標識する方法が知られている(例えば、特許文献1)。対象物質と標識粒子とは、反応液中で、対象物質及び標識粒子がブラウン運動することに起因して遭遇する確率に応じて結合する。そのため、結合反応が飽和するまでには約2時間程度を要する。結合反応の飽和までに要する時間は、対象物質及び標識粒子の各濃度にも依存する。短時間で高効率に結合反応を行うためには、対象物質と比較して標識粒子の濃度を100倍以上高濃度にする必要がある。そのため、多量の標識粒子が必要となり、経済的でない。また、標識粒子を高濃度にしても、ブラウン運動に起因した確率で結合反応が生じるため、結合反応の飽和までに要する時間は1時間程度(半減程度)までが限界となる。さらに、対象物質を固相担体に固定した捕捉用分子で捕捉する反応においても、反応が飽和するまでには同程度の時間を要する。
一方、抗原抗体反応に代表される免疫化学的分析方法として代表的なELISA法は、マイクロプレートなどの固相表面に固定した捕捉用抗体で対象物質を捕捉した後、試料中の未反応物を洗浄除去し、その後、酵素などで標識した対象物質標識用抗体(標識体)で検出対象を標識し、未反応の標識体を洗浄除去した後、酵素の発色反応等により標識体を検出することで、対象物質を定量する方法である。ELISA法では、対象物質と捕捉用抗体との反応、及び対象物質と標識体の反応という2段階の反応工程を経るため、2step法と呼ぶ。対象物質の捕捉及び標識を1回の工程で完結させる1step法は、短時間で行うことができるが、定量性が悪くなる。ELISA法では、各工程における反応は、飽和までに1時間以上を要する。そのため、2step法では、測定完了までに最低5時間程度を要する。
特開2017-207289号公報
対象物質と標識粒子との結合反応、及び対象物質と捕捉用分子との結合反応を短時間で行うことができれば、より迅速な対象物質の定量が可能となる。
そこで、本発明は、対象物質と第1の特的結合物質を結合させた磁性粒子と反応槽に結合された第2の特異的結合物質との反応時間を低減可能な、結合体の形成方法、及び対象物質の測定方法、並びに前記方法に用いられるキットを提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を含む。
[1]対象物質と、前記対象物質に対し特異的結合を行う第1の特異的結合物質を結合させた磁性粒子と、反応槽の内壁に結合された前記対象物質に対し特異的結合を行う第2の特異的結合物質との結合体を形成する方法であって、前記反応槽に収容された、前記対象物質と前記磁性粒子とを含む反応液中で、前記対象物質と前記磁性粒子との結合反応、及び前記対象物質と前記第2の特異的結合物質との結合反応を行う工程(A)を含み、前記磁性粒子に作用する磁場を変化させて、前記反応液中での前記磁性粒子の運動量を増大させることを含む、方法。
[2]前記工程(A)が、前記反応液を撹拌又は振盪することをさらに含む、[1]に記載の方法。
[3][1]又は[2]に記載の方法により、前記結合体を形成する工程(a)と、前記結合体を形成している前記磁性粒子を定量することにより、前記対象物質を定量する工程(b)と、を含む、前記対象物質の測定方法。
[4]対象物質に対し特異的結合を行う第1の特異的結合物質を結合させた磁性粒子と、前記対象物質に対し特異的結合を行う第2の特異的結合物質を内壁に結合させた反応槽と、磁石と、を含む、[1]又は[2]に記載の方法に用いるキット。
[5]対象物質に対し特異的結合を行う第1の特異的結合物質を結合可能な磁性粒子と、前記対象物質に対し特異的結合を行う第2の特異的結合物質を内壁に結合させた反応槽と、磁石と、を含む、[1]又は[2]に記載の方法に用いるキット。
本発明によれば、対象物質と第1の特異的結合物質を結合させた磁性粒子と反応槽に結合された第2の特異的結合物質との反応時間を低減可能な、結合体の形成方法、及び対象物質の測定方法、並びに前記方法に用いられるキットが提供される。
本発明の一実施形態に係る方法の工程(A)における磁場作用状態の一例を模式的に説明する図である。 本発明の一実施形態に係る方法の工程(A)における磁場非作用状態の一例を模式的に説明する図である。 本発明の一実施形態に係る方法の工程(A)後の反応槽の一例を模式的に説明する図である。 本発明の一実施形態に係る方法(実施例1)、及び従来法(比較例1)により、エクソソームを定量した結果を示す。エクソソームの定量にはExoCounter(商標登録)(株式会社JVCケンウッド)を用いた。図中、「Exosome」はエクソソーム含有試料を用いて測定した結果を示し、「Blank」はエクソソーム非含有試料を用いて測定した結果を示す。 本発明の一実施形態に係る方法により、エクソソームと磁性粒子との反応条件(磁気掃引時間、振盪撹拌時間、サイクル数)を変更して、エクソソームを定量した結果を示す。エクソソームの定量にはExoCounterを用いた。図中、「Exosome」はエクソソーム含有試料を用いて測定した結果を示し、「Blank」はエクソソーム非含有試料を用いて測定した結果を示す。 本発明の一実施形態に係る方法によりエクソソームを定量した場合における、総反応時間と検出率との関係を示す。エクソソームの定量にはExoCounterを用いた。 本発明の一実施形態に係る方法によりエクソソームを定量した場合における、対象物質の量とExoCounterによるカウント数との関係を示す。
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。図面中、同一又は相当部分には同一又は対応する符号を付し、重複する説明は省略する。各図における寸法比は、説明のため誇張している部分があり、必ずしも実際の寸法比とは一致しない。
「特異的結合物質」とは、特定の生体分子に対して、特異的に結合する物質を意味する。「特異的に結合する」とは、特定の生体分子に対して高い結合親和性を有するが、他の生体分子に対しては、極めて低い結合親和性しか有さないことを意味する。特異的結合物質は、好ましくは、特定の生体分子に高い結合性を有するが、他の生体分子にはほとんど結合性を有しない。
生体分子と特異的結合物質の組合せとしては、例えば、ペプチド若しくはタンパク質と、抗体;核酸と、当該核酸が含む配列に相補的な配列を含む核酸;リガンドと、その受容体;酵素と、その基質、阻害剤若しくは補因子;糖鎖と、レクチン;ペプチド、タンパク質若しくは核酸等と、アプタマー;核酸の転写制御配列部分と、その転写制御因子;等が挙げられるがこれらに限定されない。
「抗体」とは、抗原結合活性を有する免疫グロブリンを意味する。抗体は、抗原結合活性を有していれば、インタクトな抗体である必要はなく、抗原結合断片であってもよい。本明細書において、「抗体」という用語は、抗原結合断片を包含する。「抗原結合断片」とは、抗体の一部を含むポリペプチドであって、元の抗体の抗原結合性を維持しているポリペプチドである。抗原結合断片は、元の抗体の6つの相補性決定領域(complementarity determining region:CDR)を全て含むものが好ましい。すなわち、重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3、並びに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3を全て含むことが好ましい。抗原結合断片としては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)等が挙げられる。
抗体は、いずれの生物に由来するものであってもよい。抗体が由来する生物としては、例えば、哺乳類(ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、イヌ等)、鳥類(ニワトリ、ダチョウ)等が挙げられるが、これらに限定されない。
抗体は、免疫グロブリンのいずれのクラス及びサブクラスであってもよい。また、抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。
抗体は、免疫法、ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ法等の公知の方法により作製することができる。
<結合体の形成方法>
一実施形態において、本発明は、対象物質と、前記対象物質に対し特異的結合を行う第1の特異的結合物質を結合させた磁性粒子と、反応槽の内壁に結合された前記対象物質に対し特異的結合を行う第2の特異的結合物質との結合体を形成する方法を提供する。本実施形態の方法は、前記反応槽に収容された、前記対象物質と前記磁性粒子とを含む反応液中で、前記対象物質と前記磁性粒子との結合反応、及び前記対象物質と前記第2の特異的結合物質との結合反応を行う工程(A)を含む。前記工程(A)は、前記磁性粒子に作用する磁場を変化させて、前記反応液中での前記磁性粒子の運動量を増大させることを含む。
「対象物質」とは、磁性粒子と結合体を形成させる対象となる物質を意味する。対象物質は、特に限定されず、当該対象物質に特異的に結合する特異的結合物質が存在する者であればよい。対象物質としては、例えば、エクソソーム、ペプチド、タンパク質、核酸、糖鎖、レクチン、脂質等が挙げられるが、これらに限定されない。
対象物質は、例えば、生体試料等に含まれるものであってもよい。生体試料は特に限定されず、生体から採取された試料を用いることができる。生体試料としては、例えば、血液、血清、血漿、唾液、尿、涙、汗、乳汁、鼻汁、精液、胸水、消化管分泌液、脳脊髄液、組織間液、及びリンパ液等の体液試料、細胞破砕物試料、及び細胞抽出物試料等が挙げられるが、これらに限定されない。生体試料は、特定の生体物質画分を抽出又は濃縮したものであってもよい。例えば、対象物質がエクソソームである場合、生体試料は、体液試料から、超遠心等によりエクソソーム画分を濃縮したものであってもよい。
第1の特異的結合物質及び第2の特異的結合物質は、対象物質に応じて、適宜選択することができる。例えば、対象物質がエクソソームである場合、特異的結合物質としては、エクソソームの膜タンパク質に特異的に結合する抗体、エクソソームの糖鎖に特異的に結合するレクチン等が挙げられる。エクソソームの膜タンパク質又は糖鎖は、エクソソームに広汎に発現するものであってもよく、特定の細胞(例えば、がん細胞)から放出されたエクソソームのみに発現するものであってもよい。エクソソームに広汎に発現する膜タンパク質(以下、「汎エクソソーム膜タンパク質」ともいう)としては、例えば、CD9、CD63、及びCD81等が挙げられる。
第1の特異的結合物質と第2の特異的結合物質とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、対象物質がエクソソームである場合、第1の特異的結合物質及び第2の特異的結合物質は、それぞれ異なるエクソソーム膜タンパク質に特異的に結合する抗体であってもよい。あるいは、対象物質がエクソソームである場合、第1の特異的結合物質及び第2の特異的結合物質は、同じエクソソーム膜タンパク質に特異的に結合する抗体であってもよい。エクソソームは、通常、同一のエクソソーム膜タンパク質を複数個発現している。そのため、第1の特異的結合物質及び第2の特異的結合物質が同じエクソソーム膜タンパク質に特異的に結合する抗体である場合、第1特異的結合物質及び第2の特異的結合物質は、当該エクソソーム膜タンパク質の同一のエピトープを認識するものであってもよく、それぞれ異なるエピトープを認識するものであってもよい。例えば、対象物質がペプチド又はタンパク質である場合、第1の特異的結合物質及び第2の特異的結合物質は、それぞれ異なるエピトープを認識するものであることが好ましい。
「磁性粒子」とは、磁性を帯びた粒子を意味する。磁性粒子は、磁石に誘引されるものであれば、特に限定されない。磁性粒子の材質は、特に限定されないが、例えば、鉄、コバルト、亜鉛、ニッケル、並びにそれらの化合物、酸化物、及び合金等が挙げられる。磁性粒子の粒子径は、特に限定されないが、対象物質と磁性粒子との反応を阻害しない程度の大きさであることが好ましい。磁性粒子の粒子径は、例えば、1000nm以下が好ましく、1~500nmがより好ましく、10~300nmがさらに好ましく、10~200nmが特に好ましい。磁性粒子は、ナノサイズ(1~1000nm)の粒径を有するナノ粒子であることが好ましい。
本実施形態の方法では、磁性粒子として、第1の特異的結合物質を結合させた磁性粒子を用いる。第1の特異的結合物質と磁性粒子との結合は、第1の特異的結合物質の種類に応じて、公知の方法により行うことができる。磁性粒子への第1の特異的結合物質の結合方法としては、例えば、物理的吸着を利用する方法、第1の特異的結合物質が有する官能基と反応する官能基により磁性粒子表面を修飾する方法(例えば、アミノ基修飾、水酸基修飾、カルボキシ基修飾、スクシンイミド基修飾等)、ビオチン-アビジン結合を利用する方法等が挙げられる。
「反応槽」は、対象物質と磁性粒子とを含む反応液を収容するためのものである。反応槽は、反応液を収容することができるものであれば、特に限定されない。反応槽は、対象物質の非特異的吸着が起こりにくい材料で形成されていることが好ましい。反応槽の材質としては、例えば、ポリスチレン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート等の樹脂;並びにガラス等が挙げられるが、これらに限定されない。反応槽は、ELISA等に用いられるウェルプレートであってもよい。あるいは、ExoCounter等の粒子カウンターに付属のウェルを備えたカートリッジ等(特開2017-040595号公報の図7、8参照)であってもよい。
本実施形態の方法では、反応槽として、内壁に第2の特異的結合物質を結合させた反応槽を用いる。反応槽の内壁への第2の特異的結合物質の結合は、第2の特異的結合物質の種類に応じて、公知の方法により行うことができる。反応槽の内壁への第2の特異的結合物質の結合方法としては、例えば、磁性粒子への第1の特異的結合物質の結合方法として挙げた方法と同様のものが挙げられる。
第2の特異的結合物質が結合される反応槽の内壁は、反応槽の側面の内壁(例えば、図1の内壁W2)であってもよく、底面の内壁(例えば、図1の内壁W1)であってもよい。結合体の安定性の観点から、第2の特異的結合物質は、反応槽の底面の内壁に結合されていることが好ましい。また、第2の特異的結合物質は、反応槽の底面の内壁及び側面の内壁の両方に結合されていてもよい。また、第2の特異的結合物質は、反応槽の内壁の一部のみに結合されていてもよく、反応槽の内壁の全面に結合されていてもよい。
(工程(A))
工程(A)は、反応槽に収容された、対象物質と磁性粒子とを含む反応液中で、対象物質と磁性粒子との結合反応、及び対象物質と第2の特異的結合物質との結合反応を行う工程である。工程(A)は、前記磁性粒子に作用する磁場を変化させて、前記反応液中での前記磁性粒子の運動量を増大させることを含む。
図1は、工程(A)の一例を模式的に説明する図である。図1の例では、対象物質がエクソソームである場合を示している。図1では、底面の内壁W1に第2の特異的結合物質60が結合された反応槽50に、反応液40が収容されている。反応液40は、エクソソーム20a及びエクソソーム20bと、第1の特異的結合物質12を結合させた磁性粒子11(第1の特異的結合物質12を結合させた磁性粒子11を、以下、「磁性粒子10」という)とを含んでいる。エクソソーム20aは、エクソソーム膜タンパク質21,22,23を含む。エクソソーム20bは、エクソソーム膜タンパク質22,23,24を含む。第1の特異的結合物質12は、例えば、エクソソーム膜タンパク質21に特異的に結合する抗体である。したがって、磁性粒子10は、エクソソーム20aには結合するが、エクソソーム20bには結合しない。第2の特異的結合物質60は、例えば、エクソソーム膜タンパク質22に特異的に結合する抗体である。エクソソーム20a,20bは、いずれもエクソソーム膜タンパク質22を有する。そのため、エクソソーム20a,20bは、いずれも第2の特異的結合物質60により捕捉される。
対象物質と磁性粒子とを含む反応液において、磁性粒子に作用させる磁場を変化させると、磁場の作用により磁性粒子の運動量が増大する。「磁性粒子に作用させる磁場を変化させる」とは、磁性粒子に作用する磁場の強さを変化させることであってもよく、磁性粒子に作用する磁場の向きを変化させることであってもよい。好ましくは、「磁性粒子に作用させる磁場を変化させる」とは、磁性粒子に作用する磁場の強さを変化させることである。例えば、図1の例において、反応槽50の底面に磁石30を近づけると、磁性粒子10に作用する磁場が強くなる。これにより、磁場の発生源である磁石30の方向に磁性粒子10が誘引されるため、磁性粒子10の運動量を増大させることができる。
磁性粒子10の運動量が増大することにより、磁性粒子10とエクソソーム20との遭遇確率が高くなる。これにより、エクソソーム20aと磁性粒子10との結合反応(より具体的には、エクソソーム膜タンパク質21と第1の特異的結合物質12との結合反応)を促進することができる。そのため、エクソソーム20aと磁性粒子10との結合体C’の形成が促進される(図2参照)。
磁石30は、反応槽50の側面方向から接近させてもよい。例えば、反応槽50の側面方向に他の反応槽が存在しない場合には、磁石30は反応槽50の側面方法から接近させることができる。また、磁石30は、反応槽50の開口部方向から接近させてもよい。
あるいは、磁石30の位置を、底面方向、側面方向、及び開口部方向から選択されるいずれか2以上の位置に順次切り替えてもよい。磁石30の位置を変化させることにより、磁性粒子10に作用する磁場の向きを変化させることができる。磁石30の位置の変化に応じて、磁性粒子10は、磁石30の方向に誘引されるため、磁性粒子10の運動量を増大させることができる。
磁石30は、第2の特異的結合物質60を結合させた内壁の方向から、反応槽50に接近させることが好ましい。すなわち、第2の特異的結合物質60を結合させた内壁に近接させて磁石30を配置することが好ましい。これにより、エクソソーム20aと磁性粒子10との結合体C’を、第2の特異的結合物質60を結合させた内壁の方向に誘引することができる。その結果、結合体C’を構成するエクソソーム20aと、第2の特異的結合物質60との遭遇率が高くなり、結合体C’を構成するエクソソーム20aと第2の特異的結合物質60との結合反応を促進することができる。
第2の特異的結合物質60が、反応槽50の底面の内壁W1に結合されている場合には、反応槽50の底面の内壁W1に、磁石30を近接させることが好ましい。これにより、磁性粒子10が反応槽50の底面方向に誘引されて運動量が増大する。その結果、エクソソーム20aと磁性粒子10との結合反応、及び結合体C’を構成するエクソソーム20aと第2の特異的結合物質60との結合反応の両方を促進することができる。そのため、エクソソーム20aと磁性粒子10と第2の特異的結合物質60との結合体Cの形成を促進することができる(図2、3参照)。
磁石30は、永久磁石であってもよいし、電磁石であってもよい。磁石30が電磁石である場合、通電量を変化させることにより、磁場を変化させることができる。そのため、磁石30を反応槽50に対して移動させる必要はない。
磁石30が永久磁石である場合、磁石30は、反応槽50の外部に存在することが好ましい。磁石30が電磁石である場合、磁石30は、反応槽50の外部にあってもよく、反応槽50の底面又は側面と一体化していてもよい。
工程(A)において、磁性粒子10に作用する磁場を変化させた後、変化後の状態で一定時間維持することが好ましい。磁性粒子10に磁石30による磁場が作用する状態(以下、「磁場作用状態」ともいう)と、磁石30による磁場が作用しない状態(以下、「磁場非作用状態」ともいう)とを、交互に繰り返すことが好ましい。結合体Cの形成効率の向上及び非特異的結合の低減の観点から、磁場作用状態の継続時間は、30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましく、10秒以下がさらに好ましく、6秒以下、又は3秒以下が特に好ましい。磁場作用状態の継続時間の下限は、磁性粒子10の運動量が増大可能な時間であれば、特に限定されない。磁場作用状態の継続時間の下限としては、例えば、0.5秒以上、1秒以上、1.2秒以上、又は1.5秒以上が挙げられる。
磁石30が永久磁石である場合、磁場作用状態の継続は、反応槽50(反応槽50の底面、側面若しくは開口部)に磁石30を近づけた状態を継続すればよい。例えば、第2の特異的結合物質60を結合させた反応槽50の内壁に対応する外壁に磁石30を近接させた状態を維持することにより、磁場作用状態を継続することができる。磁石30が電磁石である場合、磁場作用状態の継続は、磁石30に通電した状態を継続すればよい。
磁場非作用状態の継続時間は、特に限定されないが、結合体Cの形成を促進する観点から、例えば、60秒以下とすることができ、40秒以下が好ましく、磁石30秒以下がより好ましく、20秒以下がさらに好ましく、15秒以下、又は10秒以下が特に好ましい。磁場非作用状態の継続時間の下限は、特に限定されないが、非特異的結合の低減の観点から、例えば、0.5秒以上、1秒以上、2秒以上、3秒以上、又は5秒以上が挙げられる。
磁石30が永久磁石である場合、磁場非作用状態の継続は、磁石30による磁場が作用しない距離まで、反応槽50(反応槽50の底面、側面若しくは開口部)から磁石30を離した状態を継続すればよい。磁石30が電磁石である場合、磁場非作用状態の継続は、磁石30に通電しない状態を継続すればよい。
磁石30の磁力の強さは、磁性粒子10の運動量を増大させることができれば、特に限定されない。磁石30の磁力の強さとしては、例えば、磁束密度0.1~0.6テスラが挙げられる。
工程(A)では、対象物質と磁性粒子とを含む液体(反応液)を撹拌又は振盪することをさらに含んでもよい(図2)。撹拌又は振盪を行うことにより、結合体Cの形成効率を向上させることができる。撹拌又は振盪は、例えば、シェーカー等を用いて行うことができる。磁場作用状態で振盪又は撹拌を行うと、反応液40が渦状となって磁性粒子10が偏ることがある。そのため、撹拌又は振盪は、図2に示すように、磁場非作用状態で行うことが好ましい。
撹拌又は振盪の速度は、特に限定されないが、例えば、100~3000rpmが挙げられる。
1回の磁場作用状態と1回の磁場非作用状態とを1サイクルとした場合、磁場作用状態及び磁場非作用状態のサイクル数は、10サイクル以上、15サイクル以上、20サイクル以上、25サイクル以上、30サイクル以上、40サイクル以上、50サイクル以上、60サイクル以上、70サイクル以上、80サイクル以上、90サイクル以上、又は100サイクル以上が好ましい。サイクル数の上限は、特に限定されないが、反応時間の減の観点から、例えば、500サイクル以下、400サイクル以下、300サイクル以下、200サイクル以下、又は150サイクル以下とすることができる。なお、磁場作用状態及び磁場非作用状態はいずれを先に行ってもよい。例えば、工程(A)の開始に際し、磁場作用状態から開始し、次いで磁場非作用状態とし、その後、磁場作用状態と磁場非作用状態とを交互に繰り返してもよい。あるいは、工程(A)の開始に際し、磁場非作用状態から開始し、次いで磁場作用状態とし、その後、磁場非作用状態と磁場作用状態とを交互に繰り返してもよい。
磁場作用状態における反応時間及び磁場非作用状態における反応時間を合計した総反応時間は、例えば、100秒以上、200秒以上、300秒以上、400秒以上、600秒以上、600秒以上、又は650秒以上とすることができる。総反応時間の上限は特に限定されないが、反応時間の短縮の観点から、例えば、3000秒以下、2500秒以下、200秒以下、又は1500秒以下とすることができる。
磁場作用状態の継続時間、磁場非作用状態の継続時間、振盪又は撹拌の速度、サイクル数、及び総反応時間等は、反応液の量、対象物質の種類、磁性粒子の種類、及び特異的結合物質の種類等に応じて、適宜変更することができる。
反応液40の組成は、特に限定されず、対象物質及び特異的結合物質の種類に応じて適宜選択することができる。反応液40としては、例えば、ELISA等で通常用いられる反応液を特に制限なく用いることができる。反応液としては、例えば、リン酸緩衝液、PBS、トリス緩衝液、HEPES緩衝液等の緩衝液、又は前記のような緩衝液にTween20等の界面活性剤を添加したもの等が挙げられる。
反応液40中の磁性粒子10の濃度は、特に限定されず、対象物質及び特異的結合物質の種類に応じて適宜選択することができる。反応液40における磁性粒子10の濃度としては、例えば、1~500ng/μL、5~200ng/μL、10~100ng/μL、又は10~50ng/μL等が挙げられる。
反応温度は、特に限定されず、対象物質及び特異的結合物質の種類に応じて適宜選択すればよい。反応温度としては、20℃以上が好ましく、30℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。反応温度の上限としては、例えば、50℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましく、40℃以下がさらに好ましい。反応温度の範囲としては、例えば、20~50℃、30~45℃、又は30~40℃等が挙げられる。
図3は、工程(A)後の反応槽の状態の一例を模式的に説明する図である。工程(A)により、エクソソーム20aと磁性粒子10と第2の特異的結合物質60との結合体Cが形成される。結合体Cは、第2の特異的結合物質60を介して、反応槽50の内壁に固定されている。一方、工程(A)後の反応液40には、結合体Cに加えて、結合体を形成していない未反応の磁性粒子10、磁性粒子10が結合していないエクソソーム20b等が存在する。未反応の磁性粒子10は、反応液40を除去することにより、反応槽50から除去することができる。
本実施形態の方法では、対象物質と磁性粒子とを含む反応液中で、磁性粒子に作用する磁場を変化させて、前記反応液中での前記磁性粒子の運動量を増大させる。これにより、対象物質と磁性粒子との遭遇確率が高くなり、対象物質及び磁性粒子の結合体の形成が促進される。さらに、対象物質と磁性粒子との結合体の運動量も増大するため、前記結合体を構成する対象物質と反応槽の内壁に結合された第2の特異的結合物質との遭遇確率も高くなる。これにより、対象物質と磁性粒子と第2の特異的結合物質との結合体の形成も促進される。そのため、結合体の形成に要する反応時間を短縮することが可能となる。
工程(A)の後は、後述する方法により、対象物質と磁性粒子と第2の特異的結合物質との結合体を形成している磁性粒子を定量することで、磁性粒子を介して対象物質を定量することができる。
<対象物質の測定方法>
一実施形態において、本発明は、対象物質の測定方法を提供する。本実施形態の方法は、前記実施形態の方法により、対象物質と磁性粒子と第2の特異的結合物質との結合体を形成する工程(a)と、前記結合体を形成している前記磁性粒子を定量することにより、前記対象物質を定量する工程(b)と、を含む。
(工程(a))
工程(a)は、前記実施形態の方法により、対象物質と磁性粒子と第2の特異的結合物質との結合体を形成する工程である。本工程は、前記<結合体の形成方法>の項で記載した方法と同様に行うことができる。
(工程(b))
工程(b)は、結合体を形成している磁性粒子を定量することにより、対象物質を定量する工程である。
結合体を形成している磁性粒子を定量する方法は特に限定されない。工程(a)後の反応槽は、図3に示すように、対象物質と磁性粒子と第2の特異的結合物質との結合体Cが形成され、第2の特異的結合物質を介して、結合体Cが反応槽50の内壁に捕捉された状態となっている。この状態で、反応液40を除去することにより、結合体Cを形成していない磁性粒子10を除去することができる。
結合体を形成している磁性粒子の定量は、例えば、ExoCounterのような粒子カウンターにより行うことができる。例えば、反応槽として、粒子カウンターに付属のディスク等に設けられたウェル等を用いることにより、粒子カウンターでの磁性粒子の定量が容易となる。
あるいは、磁性粒子にさらに標識物質を結合させておき、前記標識物質のシグナルを検出することで、結合体を形成している磁性粒子の定量を行うことができる。標識物質としては、ELISA等で通常用いられるものを特に制限なく用いることができる。標識物質としては、例えば、ペルオキシダーゼ(例、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、アルカリホスファターゼなどの酵素標識;カルボキシフルオレセイン(FAM)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、5'-ヘキサクロロ-フルオレセイン-CEホスホロアミダイト(HEX)、Cy3、Cy5、Alexa568、Alexa647などの蛍光標識;ヨウ素125などの放射性同位体標識;ルテニウム錯体などの電気化学発光標識;ビオチン等が挙げられる。
標識物質のシグナルの検出は、標識物質の種類に応じた公知の方法により行うことができる。例えば、酵素標識の場合には、酵素による発色反応を行い、発色を検出することで、標識物質のシグナルを検出することができる。また、標識物質が蛍光色素、放射性同位体標識、若しくは電気化学的発発光標識である場合、蛍光シグナル、放射活性シグナル、若しくは電気化学的発光シグナルを検出することで、標識物質のシグナルを検出することができる。
(他の工程)
本実施形態の方法は、前記工程(a)及び工程(b)に加えて他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、ブロッキング工程、及び洗浄工程等が挙げられる。
≪ブロッキング工程≫
ブロッキング処理を行うことにより、反応槽の内壁に対する非特異的結合を抑制することができる。
ブロッキング処理は、公知のブロッキング液を用いて行うことができる。ブロッキング液、ELISA等で通常用いられるものを特に制限なく使用することができる。ブロッキング液としては、例えば、1~5%程度のスキムミルク又は牛血清アルブミン(BSA)を含む緩衝液等が挙げられる。ブロッキング液用の緩衝液としては、例えばリン酸緩衝液、PBS、トリス緩衝液、HEPES緩衝液等の緩衝液、又は前記のような緩衝液にTween20等の界面活性剤を添加したもの等が挙げられるが、これらに限定されない。
≪洗浄工程≫
工程(a)の後、工程(b)の前に、結合体及び反応槽の洗浄処理を行ってもよい。工程(a)の後、反応液を除去し、洗浄液を反応槽に添加して除去することを1~3回程度繰り返すことにより、洗浄処理を行うことができる。洗浄液としては、上記と同様のものが挙げられる。洗浄工程を行うことにより、反応液中に含まれる夾雑物を反応槽から除去して、測定ノイズを低減することができる。
本実施形態の方法によれば、対象物質と磁性粒子との結合反応を、前記実施形態の方法により行うため、結合反応に要する時間を低減することができる。そのため、対象物質の測定に要する時間を低減することができ、迅速に対象物質の定量を行うことができる。
本実施形態の方法は、試料中の任意の対象物質の定量に使用することができる。例えば、血液試料、細胞培養液、細胞破砕液等に含まれるエクソソーム、ペプチド、タンパク質、抗体、糖鎖、脂質、核酸等の定量に使用することができる。
<キット>
一実施形態において、本発明は、前記実施形態の方法に用いるキットを提供する。本実施形態のキットは、対象物質に対する第1の特異的結合物質が結合された磁性粒子、又は対象物質に対する第1の特異的結合物質を結合可能な磁性粒子と、前記対象物質に対する第2の特異的結合物質を内壁に結合させた反応槽、又は前記対象物質に対する第2の特異的結合物質を結合可能な内壁を備えた反応槽と、磁石と、を含む。
(磁性粒子)
本実施形態のキットは、磁性粒子を含む。一実施形態において、磁性粒子は、対象物質に特異的に結合する第1の特異的結合物質が結合されている。磁性粒子としては、上記<結合体の形成方法>の項で挙げたものと同様のものが挙げられる。
磁性粒子に結合された第1の特異的結合物質は、対象物質に応じて適宜選択することができる。第1の特異的結合物質としては、上記<結合体の形成方法>の項で挙げたものと同様のものが挙げられる。例えば、対象物質がエクソソームである場合、第1の特異的結合物質としては、エクソソーム膜タンパク質に特異的に結合する抗体、及びエクソソーム膜糖鎖に特異的に結合するレクチン等が挙げられる。
他の実施形態において、磁性粒子は、対象物質に対する第1の特異的結合物質が結合可能な磁性粒子である。例えば、第1の特異的結合物質が物理的吸着又は化学結合により結合可能な粒子表面を有する磁性粒子である。例えば、第1の特異的結合物質が有する官能基と反応する官能基を有するように粒子表面が修飾(例えば、アミノ基修飾、水酸基修飾、カルボキシ基修飾、スクシンイミド基修飾等)された磁性粒子が挙げられる。前記修飾基と結合可能な官能基を有する任意の第1の特異的結合物質を用いることにより、第1の特異的結合物質を磁性粒子に結合させることができる。或いは、磁性粒子の表面は、ビオチン修飾又はアビジン修飾されていてもよい。ビオチン修飾された磁性粒子に対しては、アビジン修飾された第1の特異的結合物質を用いることにより、第1の特異的結合物質を磁性粒子に結合させることができる。アビジン修飾された磁性粒子に対しては、ビオチン修飾された第1の特異的結合物質を用いることにより、第1の特異的結合物質を磁性粒子に結合させることができる。前記アビジンは、ストレプトアビジン等のアビジン誘導体であってもよい。
本実施形態のキットが、対象物質に対し特異的結合を行う第1の特異的結合物質が結合可能な磁性粒子を含む場合、キットのユーザーが、所望の第1の特異的結合物質を磁性粒子に結合させることができる。
(反応槽)
本実施形態のキットは、反応槽を含む。一実施形態において、反応槽は、その内壁に、対象物質に特異的に結合する第2の特異的結合物質が結合されている。反応槽としては、上記<結合体の形成方法>の項で挙げたものと同様のものが挙げられる。第2の特異的結合物質が結合されている内壁は、反応槽の側面及び底面のいずれであってもよいが、底面の内壁が好ましい。第2の特異的結合物質は、内壁の一部に結合されてもよく、内壁の全面に結合されてもよい。
反応槽の内壁に結合された第2の特異的結合物質は、対象物質に応じて適宜選択することができる。第2の特異的結合物質としては、上記<結合体の形成方法>の項で挙げたものと同様のものが挙げられる。例えば、対象物質がエクソソームである場合、第2の特異的結合物質としては、エクソソーム膜タンパク質に特異的に結合する抗体、及びエクソソーム膜糖鎖に特異的に結合するレクチン等が挙げられる。第2の特異的結合物質は、第1の特異的結合物質と同じであってもよく、異なっていてもよい。
他の実施形態において、反応槽は、記対象物質に対する第2の特異的結合物質を結合可能な内壁を備える。例えば、反応槽は、第2の特異的結合物質が物理的吸着又は化学結合により結合可能な内壁を備えることができる。例えば、第2の特異的結合物質が有する官能基と反応する官能基を有するように修飾(例えば、アミノ基修飾、水酸基修飾、カルボキシ基修飾、スクシンイミド基修飾等)された内壁を備えていてもよい。前記修飾基と結合可能な官能基を有する任意の第2の特異的結合物質を用いることにより、第2の特異的結合物質を当該内壁に結合させることができる。或いは、反応槽は、ビオチン修飾又はアビジン修飾された内壁を備えていてもよい。ビオチン修飾された内壁に対しては、アビジン修飾された第2の特異的結合物質を用いることにより、第2の特異的結合物質を内壁に結合させることができる。アビジン修飾された内壁に対しては、ビオチン修飾された第2の特異的結合物質を用いることにより、第2の特異的結合物質を内壁に結合させることができる。前記アビジンは、ストレプトアビジン等のアビジン誘導体であってもよい。
第2の特異的結合物質を結合可能な内壁は、反応槽の底面に設けられていてもよく、側面に設けられていてもよいが、底面に設けられていることが好ましい。反応槽の内壁において、第2の特異的結合物質が結合可能な領域は、内壁の一部であってもよく、全面であってもよい。
反応槽の材質は、特に限定されない。反応槽は、対象物質の非特異的吸着が起こりにくい材料で形成されていることが好ましい。反応槽の材質としては、例えば、ポリスチレン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート等の樹脂;並びにガラス等が挙げられるが、これらに限定されない。反応槽は、ELISA等に用いられるウェルプレートであってもよい。あるいは、ExoCounter等の粒子カウンターに付属のウェルを備えたカートリッジ等(特開2017-040595号公報の図7、8参照)であってもよい。
(磁石)
磁石は、永久磁石であってもよく、電磁石であってもよい。電磁石である場合、反応槽の壁面と一体となっていてもよい。磁石のサイズは、特に限定されず、反応槽のサイズに応じて適宜選択することができる。磁石の磁力は、特に限定されず、反応槽のサイズ、磁性粒子の種類等に応じて、適宜選択可能である。磁石の磁力としては、例えば、磁束密度0.1~0.6テスラが挙げられる。
磁石は、シェーカー等に内蔵されたものであってもよい。シェーカーは、例えば、内臓磁石による磁性粒子の誘引と、振盪とを任意の間隔で交互に繰り返すように設定可能なものであってもよい。
(任意構成)
本実施形態の測定キットは、上記構成に加えて、任意の構成を含んでいてもよい。任意の構成としては、例えば、試料を処理するための試薬(例えば、希釈液等)、洗浄液、ブロッキング液、緩衝液等の各種試薬類、及び使用説明書等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
下記実施例では、対象物質にエクソソーム、特異的結合物質に抗体、磁性粒子の測定方法にレーザ光ピックアップを用いた計数システムを用いた例を記載するが、本発明は、これに限定されず、サンドイッチイムノアッセイ法等にも適用可能である。なお、以下の実施例における反応槽としては、ExoCounter(商標登録)(株式会社JVCケンウッド)に付属のカートリッジに設けられたウェルを用いた。
[実施例1]
(対象物質の調製)
対象物質として、結腸癌細胞株HCT116の培養液から抽出したエクソソームを用いた。抽出したエクソソームをリン酸緩衝生理食塩水に懸濁し、エクソソーム含有試料として用いた。コントロールとして、エクソソームを含まないリン酸緩衝液をエクソソーム非含有試料として調製した。
(捕捉用抗体の調製)
捕捉用抗体としてエクソソームモノクローナル抗体Anti-CD9(コスモ・バイオ社)を用いた。ウェルに、濃度5μg/mLの捕捉用抗体を70μL滴加後、37℃で30分間インキュベートし、捕捉用抗体をウェルに固定した。捕捉用抗体の固定後、ウェルを界面活性剤Tween20含有リン酸緩衝液にて洗浄した。
(ウェルのブロッキング)
上記のように捕捉用抗体を固定したウェルに、1%BSAを含む界面活性剤Tween20含有リン酸緩衝液200μLを滴加して、37℃で30分間インキュベートし、ウェルのブロッキングを行った。ブロッキング後、ウェルを界面活性剤Tween20含有リン酸緩衝液にて洗浄した。
(エクソソーム含有試料と磁性粒子との混合)
特異的結合物質として、Anti-CD9抗体(コスモ・バイオ社)を用いた。CD9は、エクソソーム汎用マーカーとして知られている。磁性粒子として、Anti-CD9抗体を固定したFGBeads(登録商標)(多摩川精機社)を用いた。エクソソーム含有試料又はエクソソーム非含有試料25μLと、磁性粒子1μgを含む界面活性剤Tween20含有リン酸緩衝液25μLとをウェルに滴加した。なお、エクソソーム含有試料又はエクソソーム非含有試料及び磁性粒子は、1.5mLチューブのような別の容器内で混合した後、当該混合液をウェルに滴加してもよい。
(エクソソームと磁性粒子との反応)
ウェル底面の外部から磁石(ネオジム磁石(円柱型φ6×12)、磁束密度0.52テスラ)を近づけ、ウェル底面に接触させた位置で磁石を1.5秒間静止(以下、「磁気掃引」という)した。次に、磁石をウェル底面から遠ざけて、マイクロプレートミキサー(アズワン社)によるウェルの振盪撹拌(1200rpm)を5秒間行った。前記のように磁気掃引の後に振盪撹拌を行うことを1サイクルとし、100サイクル行った。その後、ウェルを界面活性剤Tween20含有リン酸緩衝液で洗浄した。磁気掃引にはウェルに対応したサイズのネオジム磁石を使用した。マイクロプレートミキサーに磁気掃引システムを外付けした装置を自作し、磁気掃引と振盪撹拌とを自動制御で行った。
(測定)
ウェルを乾燥後、カートリッジからウェルを分離し、試料分析用ディスクをExoCounterで測定した。エクソソーム含有試料を添加したウェル(Exosome)とエクソソーム非含有試料を添加したウェル(Blank)におけるディスク表面に結合した磁性粒子の個数をカウントした。
[比較例1]
(対象物質の調製、捕捉用抗体の調製、ウェルのブロッキング)
実施例1と同様の方法で行った。
(エクソソームと捕捉用抗体との反応)
エクソソーム含有試料又はエクソソーム非含有試料50μLをウェルに滴加し、37℃で120分インキュベートした。インキュベート後、ウェルを界面活性剤Tween20含有リン酸緩衝液にて洗浄した。
(エクソソームと磁性粒子との反応)
特異的結合物質及び磁性粒子は、実施例1と同様のものを用いた。磁性粒子1μgを含む界面活性剤Tween20含有リン酸緩衝液50μLをウェルに添加し、37℃で90分インキュベートした。インキュベート後、ウェルを界面活性剤Tween20含有リン酸緩衝液にて洗浄した。
(測定)
実施例1と同様の方法で行った。
(結果)
実施例1及び比較例1の測定結果を図4に示す。実施例1では、エクソソーム含有試料を添加したウェルのカウント値が、2,838,134であった。一方、比較例1では、エクソソーム含有試料を添加したウェルのカウント値は、2,337,011であった。また、実施例1では、エクソソーム非含有試料を添加したウェルのカウント値は、23,634であった。一方、比較例1では、エクソソーム含有試料を添加したウェルのカウント値は、28,384であった。これらの結果から、実施例1では、比較例1と比較して、エクソソーム含有試料に対するカウント値が高く、エクソソーム非含有試料に対するカウント値が低いことが確認された。比較例1ではエクソソームと捕捉用抗体との反応に120分、及びエクソソームと磁性粒子との反応90分を要し、合計210分の反応時間を要していた。一方、実施例1では、反応時間約10分で、精度よくエクソソームの測定が行うことができ、実施例1の方法を用いることにより、反応時間を大幅に短縮できることが確認された。
[実施例2]
エクソソームと磁性粒子との反応において、磁気掃引時間、振盪攪拌時間、サイクル数を表1に示す各条件としたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。
Figure 2022143475000001
(結果)
実施例2の測定結果を図5に示す。条件1~6において1回あたりの磁気掃引時間を短くし、サイクル数を増やすことで、エクソソーム含有試料を添加したウェルのカウント値が増加した。この結果から、1回あたりの磁気掃引時間を短くし、サイクル数を増やすことにより、エクソソームと磁性粒子との結合体がより多く形成されることが確認された。エクソソーム非含有試料を添加したウェルでは、条件1~6による特定の傾向は見いだせなかった。結合体形成率の向上と、非特異吸着率の低減の両立のためには、実験の目的、対象物質、及び使用抗体の特性に合わせて、磁気掃引時間、振盪撹拌時間、及びサイクル数を調整することが望ましいと考えられる。
[実施例3]
ウェルに捕捉用抗体を固定せず、エクソソームと磁性粒子との反応において、磁気掃引時間を3秒、振盪撹拌時間を3秒とし、サイクル数を変化させて、総反応時間を図6に示す各総反応時間としたこと以外は、実施例1と同様の方法でエクソソームと磁性粒子との反応までを行った。
(測定)
磁石を用いてウェルの底面に磁性粒子を捕捉しながら、反応液を回収した。回収した反応液に含まれるエクソソームを測定して、磁性粒子に結合しなかった未反応の対象物質を定量した。前記未反応の対象物質の量から、結合体形成率を算出した。
[比較例2]
エクソソームと磁性粒子との反応において、磁気掃引を行わなかったこと以外は、実施例3と同様の方法で行った。
(結果)
実施例3及び比較例2の結果を図6に示す。実施例3では、比較例2と比較して、短時間で検出率が飽和に達することが確認された。
[実施例4]
エクソソーム含有試料におけるエクソソーム量を図7に示す各量とし、エクソソームと磁性粒子との反応時間子との反応において、磁気掃引時間を1.5秒、振盪撹拌時間を10秒、サイクル数100回として、総反応時間を20分としたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。
[比較例3]
エクソソーム含有試料におけるエクソソーム量を図7に示す各量とし、エクソソームと捕捉用抗体との反応時間及びエクソソームと磁性粒子との反応時間の総反応時間を4時間としたこと以外は、比較例1と同様の方法で行った。
(結果)
実施例4及び比較例3の結果を図7に示す。実施例4では、比較例3と比較して、結合体形成率が向上することが確認された。
本発明によれば、対象物質と第1の特的結合物質を結合させた磁性粒子と反応槽に結合された第2の特異的結合物質との反応時間を低減可能な、結合体の形成方法、及び対象物質の測定方法、並びに前記方法に用いられるキットが提供される。
10…第1の特異的結合物質を結合させた磁性粒子、11…磁性粒子、12…第1の特異的結合物質、20a,20b…エクソソーム、21,22,23,24…エクソソーム膜タンパク質、30…磁石、40…反応液、50…反応槽、60…第2の特異的結合物質、C…対象物質と磁性粒子と第2の結合物質との結合体、C’…対象物質と磁性粒子との結合体。

Claims (5)

  1. 対象物質と、前記対象物質に対し特異的結合を行う第1の特異的結合物質を結合させた磁性粒子と、反応槽の内壁に結合された前記対象物質に対し特異的結合を行う第2の特異的結合物質との結合体を形成する方法であって、
    前記反応槽に収容された、前記対象物質と前記磁性粒子とを含む反応液中で、前記対象物質と前記磁性粒子との結合反応、及び前記対象物質と前記第2の特異的結合物質との結合反応を行う工程(A)を含み、
    前記磁性粒子に作用する磁場を変化させて、前記反応液中での前記磁性粒子の運動量を増大させることを含む、
    方法。
  2. 前記工程(A)が、前記反応液を撹拌又は振盪することをさらに含む、
    請求項1に記載の方法。
  3. 請求項1又は2に記載の方法により、前記結合体を形成する工程(a)と、
    前記結合体を形成している前記磁性粒子を定量することにより、前記対象物質を定量する工程(b)と、
    を含む、前記対象物質の測定方法。
  4. 対象物質に対し特異的結合を行う第1の特異的結合物質を結合させた磁性粒子と、
    前記対象物質に対し特異的結合を行う第2の特異的結合物質を内壁に結合させた反応槽と、
    磁石と、
    を含む、請求項1又は2に記載の方法に用いるキット。
  5. 対象物質に対し特異的結合を行う第1の特異的結合物質を結合可能な磁性粒子と、
    前記対象物質に対し特異的結合を行う第2の特異的結合物質を内壁に結合させた反応槽と、
    磁石と、
    を含む、請求項1又は2に記載の方法に用いるキット。
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