JP2022143312A - 無機物質粉末充填樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な機械的特性、特に耐衝撃性を備え、衝撃破壊し難い成形品を与える樹脂組成物を提供する。【解決手段】熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有する無機物質粉末充填樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂はプロピレンホモポリマー、低密度ポリエチレン、及び水添ポリマー系エラストマーからなり、前記熱可塑性樹脂の全質量100質量%に基づいて、前記プロピレンホモポリマーの含有量が82質量%以上90質量%以下、前記低密度ポリエチレンの含有量が2質量%以上6質量%以下、前記水添ポリマー系エラストマーの含有量が5質量%以上14質量%以下であることを特徴とする無機物質粉末充填樹脂組成物。水添ポリマー系エラストマーとしては、エチレン-エチレン・ブチレン-エチレンブロック共重合体が好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、無機物質粉末充填樹脂組成物及び成形品に関する。詳しく述べると、本発明は、ポリプロピレン樹脂中に無機物質粉末が高充填されているにも拘らず、良好な機械的特性、特に耐衝撃性を備え、衝撃破壊し難い成形品を与える樹脂組成物、及びそうした樹脂組成物からなる成形品に関する。
従来より、熱可塑性樹脂は、工業用及び家庭用の各種成形品、食品包装や一般用品の成形包装等の材料として、森林資源を源とする紙資材と共に広く用いられてきたが、環境保護が国際的な問題となって来た現在、これらを無毒で、リサイクル可能とする、焼却できるといった観点と並行して、熱可塑性樹脂ならびに紙資材の消費量を低減することも大いに検討されている。このような点から、炭酸カルシウムを始めとする無機物質粉末をポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂中に高充填してなる、無機物質粉末配合熱可塑性樹脂組成物が提唱され、実用化されている(例えば、特許文献1等参照)。
しかしながら、ポリプロピレン樹脂に無機物質粉末を高充填した樹脂組成物は、無機物質粉末未充填の一般的なポリプロピレン樹脂に比べ、概して引張強度や伸び等の機械的特性、特に衝撃強度が低くなりがちである。そのため、無機物質粉末を高充填した樹脂組成物の射出成形品、例えば折り畳みコンテナ等は、使用中の衝撃で破壊し易い等の課題がある。
ポリプロピレン樹脂組成物の機械的特性、特に柔軟性や耐衝撃性を改善する手段として、エラストマー成分を添加する技術が知られている。例えば特許文献2には、ポリプロピレン樹脂、エチレン-プロピレンブロックコポリマー、及びタルクからなる樹脂組成物にエチレン-プロピレンゴムやスチレン系エラストマーを添加して耐衝撃性を改善する技術が記載されている。特許文献3には、2種のポリプロピレン系樹脂、フィラー、及びエラストマーからなる樹脂組成物が記載されている。
特開2013-10931号公報 特開2009-62526号公報 特開2013-116981号公報
しかしながら耐衝撃性と機械的強度とはトレードオフの関係にあり、エラストマー成分の含有によって耐衝撃性や柔軟性が改善された樹脂組成物は、機械的強度に劣る傾向がある。また、ポリプロピレン樹脂と同量以上の無機物質粉末を含有するような高充填樹脂組成物では、エラストマー成分の添加が、物性改善には必ずしも繋がらない。後記する実施例・比較例にも示すように、エラストマー成分等の含有量を適切に選定しないと、耐衝撃性の大幅改善が成されずに強度が低下してしまう場合もある。
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、ポリプロピレン樹脂中に無機物質粉末が高充填されているにも拘らず、良好な機械的特性、特に耐衝撃性を備え、衝撃破壊し難い成形品を与える樹脂組成物、及びこの樹脂組成物からなる成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決する上で鋭意検討を行った結果、無機物質粉末を多量充填したプロピレン樹脂組成物において、特定のエラストマー成分を低密度ポリエチレンと共に特定量配合することにより、強度を殆ど損なうことなく耐衝撃性を大きく改善し、良好な機械的特性を備える樹脂組成物が提供されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有する無機物質粉末充填樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂はプロピレンホモポリマー、低密度ポリエチレン、及び水添ポリマー系エラストマーからなり、
前記熱可塑性樹脂の全質量100質量%に基づいて、前記プロピレンホモポリマーの含有量が82質量%以上90質量%以下、前記低密度ポリエチレンの含有量が2質量%以上6質量%以下、前記水添ポリマー系エラストマーの含有量が5質量%以上14質量%以下であることを特徴とする無機物質粉末充填樹脂組成物である。
本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物の一態様においては、前記水添ポリマー系エラストマーがエチレン-エチレン・ブチレン-エチレンブロック共重合体(CEBC)である無機物質粉末充填樹脂組成物が示される。
本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物の一態様においては、前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウムである無機物質粉末充填樹脂組成物が示される。
本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物の一態様においては、前記重質炭酸カルシウムが、JIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が0.7μm以上6.0μm以下の重質炭酸カルシウム粒子である無機物質粉末充填樹脂組成物が示される。
上記課題を解決する本発明はまた、上記の無機物質粉末充填樹脂組成物からなる成形品である。
本発明に係る成形品の一態様においては、成形品が射出成形品である。
本発明によれば、ポリプロピレン樹脂中に無機物質粉末が高充填されているにも拘らず、良好な機械的特性、特に耐衝撃性を備え、衝撃破壊し難い成形品を与える樹脂組成物、及びそうした樹脂組成物からなる成形品が提供される。
以下、本発明を実施形態に基づき詳細に説明する。
≪無機物質粉末充填樹脂組成物≫
本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有するものであり、熱可塑性樹脂はプロピレンホモポリマー、低密度ポリエチレン、及び水添ポリマー系エラストマーからなり、熱可塑性樹脂の全質量100質量%に基づいて、プロピレンホモポリマーの含有量が82質量%以上90質量%以下、低密度ポリエチレンの含有量が2質量%以上6質量%以下、水添ポリマー系エラストマーの含有量が5質量%以上14質量%以下である。以下、本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物(以下で「樹脂組成物」と略す場合がある。)を構成する各成分につき、それぞれ詳細に説明する。
<プロピレンホモポリマー>
プロピレンホモポリマー(以下、「PP」と略す場合がある。)は、実質的にプロピレンのみを重合したポリマーであり、剛性や耐熱性に優れている。様々な製品が市販されており、例として日本ポリプロ株式会社のウィンテック(登録商標)及びノバテック(登録商標)、住友化学株式会社のノーブレン(登録商標)、株式会社プライムポリマーのプライムポリプロ(登録商標)、東レ株式会社のトレカ(登録商標)、SABICペトロケミカルズのSABIC(登録商標)PP、並びにサンアロマー株式会社のサンアロマー(登録商標)等が挙げられるが、本発明においてはこれらに限定されず、どのようなPPが含まれていてもよい。複数種のPPを併用することもできる。
プロピレンホモポリマーは、立体規則性の違いにより、アイソタクチックPP、シンジオタクチックPP、アタクチックPP、ヘミアイソタクチックPP等に分類される。本発明の樹脂組成物はこれらの何れを含んでいてもよく、これらを複数種併用することもできる。また、ホモポリマー中に、重合時に副生する微量成分を含んだものや、分岐構造を有するものであってもよい。その分子量にも特に制限はない。しかしながら本発明においては、PPとして質量平均分子量が50,000以上500,000以下程度、特に100,000以上400,000以下程度のものを使用するのが好ましい。一般に分子量が高いほど強度等の機械的特性に優れ、分子量が低いほど成形性に優れる。質量平均分子量が50,000以上200,000未満程度のものと200,000以上500,000以下程度のものとを、併用することもできる。異なる分子量のPPを併用することにより、成形性を改善し、成形品の外観不良を低減させることも可能となる。
<低密度ポリエチレン>
低密度ポリエチレンは、一般に密度が0.930以下、特に0.900~0.930程度のポリエチレンであり、LDPEと略記される(以下、「LDPE」という場合がある。)。代表的なLDPEは、エチレン繰り返し単位がランダムに分岐を持って結合した構造で、概ね0.910~0.925程度の密度を有する。この他、エチレンに少量のα-オレフィンを共重合させた、長鎖分岐を持たないリニア低密度ポリエチレン(以下、「L-LDPE」という場合がある。)も知られている。本発明ではこれら何れの低密度ポリエチレンをも使用することができ、その分子量や分子構造に特に制限はない。例えばL-LDPE中の共重合成分は1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1、1-オクテン等どのようなものであってもよく、共重合比率も特に限定されない。密度が0.910程度以下、品種によっては0.900未満の、超低密度ポリエチレン(ULDPE)を使用することも可能である。また、2種以上の低密度ポリエチレンを併用してもよい。
<水添ポリマー系エラストマー>
水添ポリマー系エラストマーは、一般にジエン系エラストマーのC=C二重結合の一部を水素添加(「水添」または「水素化」ともいう。)したポリマーである。スチレン-ブタジエンゴムを水添したHSBR、アクリロニトリル-ブタジエンゴムを水添したHNBR、ポリブタジエンを水添したHBR、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を水添したSEBS、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を水添したSEPS、ブタジエン-イソプレンブロックコポリマーを水添したCICやCEPC等、様々なポリマーが知られている(例えば日本ゴム協会誌、第70巻、689頁参照)。本発明においては、水添ポリマーの分子量や水素化率等に特に制限はない。また、樹脂組成物中でこれら水添ポリマー系エラストマーが、架橋していてもよい。2種以上の水添ポリマー系エラストマーを併用することも可能である。しかしながら、本発明の樹脂組成物における水添ポリマー系エラストマーとしては、専らジエンモノマーのみを出発原料とするもの、例えば水添ポリブタジエンまたは水添ブタジエン-イソプレンブロックコポリマーが、特に水添ポリブタジエンが好ましい。こうした、スチレン単位やアクロロニトリル単位を実質的に不含の水添ポリマーであれば、併用するポリプロピレン樹脂や低密度ポリエチレンとの相溶性に優れるため、樹脂組成物の強度を殆ど損なうことなく柔軟性や耐衝撃性を改善することができる。
<水添ポリブタジエン>
水添ポリブタジエンは、ポリブタジエンの水素化物であり、原料ポリブタジエンの構造に応じた種々のポリマーが知られている。例えば1,4-ポリブタジエンを水添するとエチレン-エチレン結合を有する擬似ポリエチレン構造(C)が、1,2-ポリブタジエンを水添するとブチレン構造(B)が生成し、それら2種の結合様式を有するポリブタジエンを水添すると、さらにエチレン・ブチレン構造(EB)が生成する。これら構造を様々な比率・結合様式にて含有し、水素化率も10%程度から90%超に亘る種々の水添ポリブタジエンが、各社から販売されている。質量平均分子量が1000~3000程度の液状ポリマーや、末端に水酸基等の官能基を有するポリマーも、市販されている。本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物は、これら何れの水添ポリブタジエンを含むものであってもよい。例えば、上記C、B、EBがランダムに結合した共重合体や、CとBまたはEBとのブロック共重合体、あるいはそれらの交互共重合体を、水添ポリマー系エラストマー成分とすることができる。
<エチレン-エチレン・ブチレン-エチレンブロック共重合体>
しかしながら本発明においては、水添ポリマー系エラストマーは、エチレン-エチレン・ブチレン-エチレンブロック共重合体(CEBC)であることが好ましい。CEBCは化学構造がポリプロピレンや低密度ポリエチレンと類似しているため、両者との相溶性に優れ、樹脂組成物の機械的特性、特に衝撃強度を顕著に改善し得る。CEBCは例えば、上記したような1,4-結合と1,2-結合とを有するポリブタジエンの水添によって得られるが、その水素化率は100%でなくてもよい。すなわち、本発明においてCEBCは、エチレンブロックやエチレン・ブチレンブロックと共に、ブタジエン構造等を有するポリマーをも包含し、その水素化率に特に制限はない。分子量や、エチレン単位とブチレン単位等との比率、エチレンブロックやエチレン・ブチレンブロックの鎖長等も、特に限定されない。
本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物は、熱可塑性樹脂の全質量100質量%に基づいて、上記のような低密度ポリエチレン2~6質量%と、水添ポリマー系エラストマー5~14質量%とを含有する。この両者をこうした量で含有する樹脂組成物であれば、無機物質粉末充填ポリプロピレン樹脂組成物の強度等を殆ど損なうことなく、耐衝撃性を改善することができる。好ましくは、熱可塑性樹脂の全質量100質量%に基づき、84~88質量%のプロピレンホモポリマーと、3~5質量%の低密度ポリエチレン及び6~13質量%、特に7~12質量%の水添ポリマー系エラストマーとを含有する。これら3種のポリマーをこうした量で含有する樹脂組成物であれば、強度や耐衝撃性等の機械的特性がバランス良く優れたものとなる。
本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物において、熱可塑性樹脂は上記のようなプロピレンホモポリマー、低密度ポリエチレン、及び水添ポリマー系エラストマーを含むが、さらにこれら以外の樹脂成分を含んで構成されていてもよい。例としてポリ(メタ)アクリル酸(エステル)、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、石油炭化水素樹脂、クマロンインデン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これら樹脂成分の配合により、無機物質粉末充填樹脂組成物中で各成分がより均一に分散し、物性や加工性が改善する場合がある。
しかしながら本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物においては、各種樹脂成分の相溶性等の観点から、熱可塑性樹脂成分の好ましくは90質量%以上、より好ましくは97質量%以上、特に好ましくは実質的に全量が、上記のプロピレンホモポリマー、低密度ポリエチレン、及び水添ポリマー系エラストマーから成る。これら以外の樹脂成分を実質的に不含の無機物質粉末充填樹脂組成物であれば、樹脂成分の一部が分離するおそれが殆どなく、機械的特性や成形性の低下を防ぐことができる。
<無機物質粉末>
本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物は、上記の熱可塑性樹脂と共に、無機物質粉末を含有する。無機物質粉末としては、特に限定されず、例えば、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛等の炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、酸化物、若しくはこれらの水和物の粉末状のものが挙げられ、具体的には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、タルクやカオリン等のクレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪砂、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、亜硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、チタン酸カリウム、ベントナイト、ウォラストナイト、ドロマイト、黒鉛等が挙げられる。これらは合成のものであっても天然鉱物由来のものであっても良く、また、これらは単独又は2種類以上併用して含有されても良い。
さらに、無機物質粉末の形状としても、特に限定されるわけではなく、粒子状、フレーク状、顆粒状、繊維状等の何れであっても良い。また、粒子状としても、一般的に合成法により得られるような球形のものであっても、あるいは、採集した天然鉱物を粉砕にかけることにより得られるような不定形状のものであっても良い。
これらの無機物質粉末として、好ましくは炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、タルクやカオリン等のクレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等であり、特に炭酸カルシウムを含むものが好ましい。さらに炭酸カルシウムとしては、合成法により調製されたもの、いわゆる軽質炭酸カルシウムと、石灰石等CaCOを主成分とする天然原料を機械的に粉砕分級して得られる、いわゆる重質炭酸カルシウムの何れであっても良く、これらを組合わせたものであっても良い。
しかしながら本発明においては、重質炭酸カルシウムを含む無機物質粉末を使用するのが好ましい。ここで、重質炭酸カルシウムとは、天然の石灰石等を機械的に粉砕・加工して得られるものであって、化学的沈殿反応等によって製造される合成炭酸カルシウムとは明確に区別される。なお、粉砕方法には乾式法と湿式法とがあるが、乾式法によるものが好ましい。
重質炭酸カルシウム粒子は、例えば、合成法による軽質炭酸カルシウムとは異なり、粒子形成が粉砕処理によって行われたことに起因する、表面の不定形性、比表面積の大きさに特徴を有する。重質炭酸カルシウム粒子がこの様に不定形性、比表面積の大きさを有するため、熱可塑性樹脂中に配合した場合に重質炭酸カルシウム粒子は、熱可塑性樹脂に対してより多くの接触界面を有し、均一分散に効果がある。
特に限定されるわけではないが、重質炭酸カルシウム粒子の比表面積としては、その平均粒子径によっても左右されるが、3,000cm/g以上35,000cm/g以下程度であることが望まれる。ここでいう比表面積は空気透過法によるものである。比表面積がこの範囲内にあると、得られる成形品の加工性低下が抑制される傾向がある。
また、重質炭酸カルシウム粒子の不定形性は、粒子形状の球形化の度合いが低いことで表わすことが出来、特に限定されるわけではないが、具体的には、真円度が0.50以上0.95以下、より好ましくは0.55以上0.93以下、さらに好ましくは0.60以上0.90以下である。重質炭酸カルシウム粒子の真円度がこの範囲内にあると、成形品の強度や成形加工性も適度なものとなる。なお、ここで、真円度とは、(粒子の投影面積)/(粒子の投影周囲長と同一周囲長を持つ円の面積)で表せるものである。真円度の測定方法は特に限定されず、例えば顕微鏡写真から粒子の投影面積と粒子の投影周囲長とを測定しても良く、一般に商用されている画像解析ソフトを用いても良い。
また、無機物質粉末の分散性又は反応性を高めるために、表面が常法に従い表面改質されていても良い。表面改質法としては、プラズマ処理等の物理的な方法や、カップリング剤や界面活性剤で表面を化学的に表面処理するもの等が例示できる。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等が挙げられる。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性の何れのものであっても良く、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩等が挙げられる。これらとは逆に、表面処理のされていない無機物質粉末が含有されていても構わない。
重質炭酸カルシウム粒子等の無機物質粉末としては、特に限定される訳ではないが、その平均粒子径が、0.5μm以上9.0μm以下が好ましく、0.7μm以上6.0μm以下がより好ましく、1.0μm以上4.0μm以下がさらに好ましく、1.2μm以上3.0μm以下が特に好ましい。なお、本明細書において述べる無機物質粉末の平均粒子径は、JIS M-8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から計算した値をいう。測定機器としては、例えば、島津製作所製の比表面積測定装置SS-100型を好ましく用いることができる。平均粒子径が9.0μmよりも大きくなると、例えばシート状の成形品を形成した場合に、その成形品の層厚にもよるが、成形品表面より無機物質粉末が突出して、当該粉末が脱落したり、表面性状や機械強度等を損なうおそれがある。特に、その粒径分布において、粒子径45μm以上の粒子を含有しないことが好ましい。他方、粒子が細かくなり過ぎると、前述した樹脂と混練した際に粘度が著しく上昇し、成形品の製造が困難になる虞れがある。そうした問題は、無機物質粉末の平均粒子径を0.5μm以上、さらには0.7μm以上6.0μm以下、特に1.0μm以上3.0μm以下とすることによって、防ぐことが可能となる。
上記の様に、本発明においては無機物質粉末として炭酸カルシウムを使用することが好ましい。所望により、該炭酸カルシウムが、JIS M-8511による空気透過法により測定した平均粒子径が0.5μm以上2.0μm未満、特に0.7μm以上2.0μm未満である第1の炭酸カルシウムと、JIS M-8511による空気透過法により測定した平均粒子径が2.0μm以上9.0μm未満、特に2.0μm以上6.0μm未満である第2の炭酸カルシウムとを含有してもよい。このことによって、成形品の表面性状や、印刷性、ブロッキング性等の物性を改善することができる。また、炭酸カルシウムの偏在が抑制され、外観及び、破断伸び等の機械的特性が良好な成形品を得ることができ、樹脂組成物成形品からの炭酸カルシウムの脱落を低減することも可能となる。特に限定されるわけではないが、第1の炭酸カルシウムの平均粒子径をaとし、第2の炭酸カルシウムの平均粒子径をbとした場合に、a/b比率が0.85以下、より好ましくは0.10~0.70、さらに好ましくは0.10~0.50程度となるように大別できるものであることが望ましい。このようなある程度明確な平均粒子径の差をもったものを併用することで、特に優れた効果が期待できるためである。また、第1の炭酸カルシウムと第2の炭酸カルシウムのそれぞれは、その粒子径(μm)の分布の変動係数(Cv)が0.01~0.10程度であることが望ましく、特に0.03~0.08程度であることが望ましい。変動係数(Cv)で規定される粒子径のばらつきがこの程度であれば、各粉末群がより相補的に効果を与え得ると考えられる。第1の炭酸カルシウムと第2の炭酸カルシウムとの質量比は、90:10~98:2、特に92:8~95:5程度とすることが好ましい。平均粒子径分布が異なる炭酸カルシウム群として、3つ以上のものを使用してもよい。また、前記第1の炭酸カルシウム及び前記第2の炭酸カルシウムが、何れも表面処理された重質炭酸カルシウムであることが好ましい。
本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物においては、上記した熱可塑性樹脂と無機物質粉末とが、50:50~10:90の質量比で含有される。無機物質粉末の含有量が少ないと、樹脂組成物の質感や強度等の物性が得難く、多すぎると混練や成形加工が困難となり、柔軟性も不十分となるためである。熱可塑性樹脂と無機物質粉末との合計質量に占める無機物質粉末の比率は、好ましくは52質量%以上、より好ましくは55質量%以上である。同比率の上限値に関しては、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、特に好ましくは70質量%以下とする。無機物質粉末充填樹脂組成物の柔軟性や耐衝撃性が、低密度ポリエチレン及び水添ポリマー系エラストマーに大きく影響され得ることを考慮すると、上記の質量比と共に低密度ポリエチレン及び水添ポリマー系エラストマーと無機物質粉末との質量比を規定してもよい。低密度ポリエチレン及び水添ポリマー系エラストマーの合計量と無機物質粉末との質量比を、例えば3:97~15:85、特に5:95~10:90の範囲内とすることにより、柔軟性や耐衝撃性と強度のバランスに特に優れた樹脂組成物とすることができる。
<その他の添加剤>
本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物には、必要に応じて、補助剤としてその他の添加剤を配合することも可能である。その他の添加剤としては、例えば、色剤、滑剤、カップリング剤、流動性改良材(流動性調整剤)、架橋剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤等を配合しても良い。これらの添加剤は、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、これらは、後述の混練工程において配合しても良く、混練工程の前にあらかじめ原料成分中に配合していても良い。本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物において、これらのその他の添加剤の添加量は、所望の物性及び加工性を阻害しない限り特に限定されるものではないが、例えば、無機物質粉末充填樹脂組成物全体の質量を100%とした場合に、これらその他の添加剤はそれぞれ0~10質量%程度、特に0.04~5質量%程度の割合で、かつ当該その他の添加剤全体で10質量%以下となる割合で配合されることが望まれる。
以下に、これらのうち、重要と考えられるものについて例を挙げて説明するが、これらに限られるものではない。
可塑剤としては、例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチル・トリエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジアリール、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-2-メトキシエチル、酒石酸ジブチル、o-ベンゾイル安息香酸エステル、ジアセチン、エポキシ化大豆油等が挙げられる。これら可塑剤は通常、熱可塑性樹脂に対して数質量%程度配合されるが、その量はこれら範囲に限定されず、成形品の目的によってはエポキシ化大豆油等を20~50質量部程度配合することも可能である。しかしながら本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物においては、その配合量は熱可塑性樹脂100質量部に対し0.5~10質量部、特に1~5質量部程度とするのが好ましい。
色剤としては、公知の有機顔料又は無機顔料あるいは染料の何れをも用いることができる。具体的には、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオオサジン系、ペリノン系、キノフタロン系、ペリレン系顔料などの有機顔料や群青、酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、酸化クロム、亜鉛華、カーボンブラックなどの無機顔料が挙げられる。
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、複合型ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸系滑剤;脂肪族アルコール系滑剤;ステアロアミド、オキシステアロアミド、オレイルアミド、エルシルアミド、リシノールアミド、ベヘンアミド、メチロールアミド、メチレンビスステアロアミド、メチレンビスステアロベヘンアミド、高級脂肪酸のビスアミド酸、複合型アミド等の脂肪族アマイド系滑剤;ステアリン酸-n-ブチル、ヒドロキシステアリン酸メチル、多価アルコール脂肪酸エステル、飽和脂肪酸エステル、エステル系ワックス等の脂肪族エステル系滑剤;脂肪酸金属石鹸系滑剤、例えばジンクステアレート等を挙げることができる。
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ペンタエリスリトール系酸化防止剤が使用できる。リン系、より具体的には亜リン酸エステル、リン酸エステル等のリン系酸化防止安定剤が好ましく用いられる。亜リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル等が挙げられる。
リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2-エチルフェニルジフェニルホスフェート等が挙げられる。これらリン系酸化防止剤は単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。
フェノール系の酸化防止剤としては、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネイト、2-t-ブチル-6-(3'-t-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネイトジエチルエステル、及びテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等が例示され、これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン系難燃剤や、あるいはリン系難燃剤や金属水和物などの非リン系ハロゲン系難燃剤を用いることができる。ハロゲン系難燃剤としては、具体的には例えば、ハロゲン化ビスフェニルアルカン、ハロゲン化ビスフェニルエーテル、ハロゲン化ビスフェニルチオエーテル、ハロゲン化ビスフェニルスルフォンなどのハロゲン化ビスフェノール系化合物、臭素化ビスフェノールA、臭素化ビスフェノールS、塩素化ビスフェノールA、塩素化ビスフェノールSなどのビスフェノール-ビス(アルキルエーテル)系化合物等が、またリン系難燃剤としては、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、リン酸トリアリールイソプロピル化物、クレジルジ2、6-キシレニルホスフェート、芳香族縮合リン酸エステル等が、金属水和物としては、例えば、アルミニウム三水和物、二水酸化マグネシウム又はこれらの組み合わせ等がそれぞれ例示でき、これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。難燃助剤として働き、より効果的に難燃効果を向上させることが可能となる。さらに、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等を難燃助剤として併用することも可能である。
発泡剤は、溶融混練機内で溶融状態にされている原料である無機物質粉末充填樹脂組成物に混合、又は圧入し、固体から気体、液体から気体に相変化するもの、又は気体そのものであり、主として発泡シートの発泡倍率(発泡密度)を制御するために使用される。発泡剤は、常温で液体のものは樹脂温度によって気体に相変化して溶融樹脂に溶解し、常温で気体のものは相変化せずそのまま溶融樹脂に溶解する。溶融樹脂に分散溶解した発泡剤は、溶融樹脂を押出ダイからシート状に押出した際に、圧力が開放されるのでシート内部で膨張し、シート内に多数の微細な独立気泡を形成して発泡シートが得られる。発泡剤は、副次的に原料樹脂組成物の溶融粘度を下げる可塑剤として作用し、原料樹脂組成物を可塑化状態にするための温度を低くする。
発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;クロロジフルオロメタン、ジフロオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンなどのハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素、チッ素、空気などの無機ガス;水などが挙げられる。
発泡剤としては、さらに、例えば、キャリアレジンに発泡剤の有効成分が含まれるものを好ましく用いる事ができる。キャリアレジンとしては、結晶性オレフィン樹脂等が挙げられる。これらのうち、結晶性ポリプロピレン樹脂が好ましい。また、有効成分としては、炭酸水素塩等が挙げられる。これらのうち、炭酸水素塩が好ましい。結晶性ポリプロピレン樹脂をキャリアレジンとし、炭酸水素塩を熱分解型発泡剤として含む発泡剤コンセントレートであることが好ましい。
成形工程において発泡剤に含まれる発泡剤の含有量はプロピレンホモポリマー、低密度ポリエチレン、水添ポリマー系エラストマー、及び無機物質粉末の量等に応じて、適宜設定することができ、無機物質粉末充填樹脂組成物の全質量に対して0.04~5.00質量%の範囲とすることが好ましい。
流動性調整剤としても、種々の慣用のものを使用することができる。例としてジアルキルパーオキサイド等の過酸化物、例えば1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン等が挙げられるが、これらに限定されない。使用する熱可塑性樹脂の種類によっては、これら過酸化物は架橋剤としても作用する。特に上記水添ポリマー系エラストマーがジエン由来の構成単位を有する場合、上記過酸化物の作用で共重合体の一部が架橋し、樹脂組成物の物性や加工性を制御する上での一助となり得る。過酸化物の添加量に特に制限はないが、無機物質粉末充填樹脂組成物の全質量に対して0.04~2.00質量%、特に0.05~0.50質量%程度の範囲とすることが好ましい。
≪無機物質粉末充填樹脂組成物の製造方法≫
本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物の製造方法としては、通常の方法を使用することができ、成形方法(押出成形、射出成形、真空成形等)に応じて適宜設定して良く、例えば、成形機にホッパーから投入する前にプロピレンホモポリマー、低密度ポリエチレン、及び水添ポリマー系エラストマーと無機物質粉末とを混練溶融しても良く、成形機と一体で成形と同時にそれら熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを混練溶融しても良い。溶融混練は、各成分を均一に分散させる傍ら、高い剪断応力を作用させて混練することが好ましい。混合装置としても、一般的な押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等種々のものを用いることができるが、例えば二軸混練機で混練することが好ましい。
本発明の製造方法において、プロピレンホモポリマー、低密度ポリエチレン、及び水添ポリマー系エラストマー、並びに無機物質粉末の混練順序に特に制限はない。例えばこれら4者を同時に混練することもでき、各熱可塑性樹脂成分を一旦混練した後、その熱可塑性樹脂混合物と無機物質粉末等とを混練することも可能である。プロピレンホモポリマーと無機物質粉末とを一旦混練し、その後、低密度ポリエチレン及び水添ポリマー系エラストマーを混練することも可能である。低密度ポリエチレン及び水添ポリマー系エラストマーは、概して柔軟で溶融粘度も低い傾向にあるので、後者の方法のように最後に混練する方法は、無機物質粉末充填樹脂組成物中の各成分をより均質に分散させる上で有利に働く場合がある。この方法はまた、市場からの回収品や工場内端材の有効利用に活用することができる。無機物質粉末を熱可塑性樹脂中に高充填してなる組成物は、上記の様に既に実用化されており、一般市場でも使用されている。特に製造工場においては、それら組成物の端材が、ロット毎に組成が管理された状態で保管されている場合がある。これらの回収品や端材に規定量の低密度ポリエチレン及び水添ポリマー系エラストマーを混練することによっても、本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物を製造することができる。
本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物の製造方法において、無機物質粉末充填樹脂組成物はペレットの形態であっても良く、ペレットの形態でなくても良いが、ペレットの形態である場合、ペレットの形状は特に限定されず、例えば、円柱、球形、楕円球状等のペレットを成形しても良い。
ペレットのサイズは、形状に応じて適宜設定すれば良いが、例えば、球形ペレットの場合、直径1~10mmであって良い。楕円球状のペレットの場合、縦横比0.1~1.0の楕円状とし、縦横1~10mmであって良い。円柱ペレットの場合は、直径1~10mmの範囲内、長さ1~10mmの範囲内であって良い。これらの形状は、後述する混練工程後のペレットに対して成形させて良い。ペレットの形状は、常法に従って成形させて良い。
≪成形品≫
本発明に係る成形品は、上記した無機物質粉末充填樹脂組成物からなる成形品である。
本発明に係る成形品の形状等においては特に限定されるものではなく、各種の形体のものであっても良いが、例えば、シート、特に紙や合成紙の代替品、ブラシや靴ベラ等の日用品、リモコンや電話等における筐体、並びに食品容器及びその他の容器体等の各種成形品等として成形され得る。本発明の成形品は耐衝撃性に優れるので、組み立て時や使用時に力が加わる筐体やシート、使用時に衝撃が加わる折り畳みコンテナ、その他日用品等として好適である。
本発明に係る成形品の肉厚としては特に限定されるものではなく、その成形品の形態に応じて、薄肉のものから厚肉のものまで種々のものであり得るが、例えば、肉厚40μm~40mm、より好ましくは肉厚50μm~30mmの成形品が示される。この範囲内の肉厚であれば、成形性、加工性の問題なく、偏肉を生じることなく均質で欠陥のない成形品を形成することが可能である。
特に、成形品の形態が、シートである場合には、より好ましくは、肉厚50μm~1,000μm、さらに好ましくは肉厚50μm~400μmであることが望ましい。このような範囲内の肉厚を有するシートであれば、一般的な印刷・情報用、及び包装用の用途の紙あるいは合成紙に代えて、好適に使用できるものである。
≪成形品の製造方法≫
本発明の成形品の製造方法としては、所望の形状に成形できるものであれば特に限定されず、従来公知の押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、カレンダー成形等の何れの方法によっても成形加工可能である。特に、射出成形が好ましい。さらにまた、本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物が発泡剤を含有し、発泡体である態様の成形品を得る場合においても、所望の形状に成形できるものであれば発泡体の成形方法として従来公知の、例えば、射出発泡,押出発泡,発泡ブロー等の液相発泡法、あるいは、例えば、ビーズ発泡,バッチ発泡,プレス発泡,常圧二次発泡等の固相発泡法の何れを用いることも可能である。前記した、結晶性ポリプロピレンをキャリアレジンとし、炭酸水素塩を熱分解型発泡剤として含む熱可塑性組成物の一態様においては、射出発泡法及び押出発泡法が望ましく用いられ得る。
<射出成形品の製造方法>
本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物は、上記の様に成形性にも優れるので、射出成形によって様々な形状の物品に成形することができる。本発明はまた、上記の無機物質粉末充填樹脂組成物の成形品、特に射出成形品を包含する。こうした本発明の成形品は、良好な機械的特性、特に耐衝撃性を備えているため、使用時に衝撃を受けても破損し難い利点を有する。本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物はまた、柔軟性に優れ、力が加わっても割れや欠けを生じ難いので、勘合する凹凸を備えた複数の部品に成形した後、それら部品を嵌め合わせる工程を含む成形加工に好適である。例えばブラシや安全剃刀の持ち手とその他の部分(本体部分)、あるいはリモコンや電話等の筐体の部品を、それぞれ別々に射出成形した後、外力を加えて両者を嵌め合わせることにより、所望の製品を作製することができる。
なお、射出成形、押出成形等における成形温度としては、その成形方法等によってもある程度異なるため、一概には規定できるものではないが、例えば、180~260℃、より好ましくは190~230℃の温度であれば、本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物が、良好なドローダウン特性、延展性を持って、かつ組成物が局部的にも変性を生じることなく所定形状に成形できる。
<シートの製造方法>
本発明に係る成形品がシートである態様において、その製造方法としても、シート状にする方法であれば特に限定されず、上記したような従来の公知の成形方法を用いることができるが、特に、シート表面の平滑性を考慮すると、押出機で押出成形してシートを作る方式を採用することが好ましい。
成形は、混練する工程と、シート状に成形する工程とを連続的に行う直接法を用いても良く、例えば、Tダイ方式の二軸押出し成形機を使用する方法を用いても良い。
さらに、シート状に成形する場合においては、その成形時あるいはその成形後に一軸方向又は二軸方向に、ないしは、多軸方向(チューブラー法による延伸等)に延伸することが可能である。二軸延伸の場合には、逐次二軸延伸でも同時二軸延伸であっても良い。
成形後のシートに対し、延伸(例えば、縦及び/又は横延伸)を行うと、シート内に微小な空隙が生じる。シート内に微小な空隙が生じることにより、シートの白色度が良好なものとなる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本明細書に開示され、また添付の請求の範囲に記載された、本発明の概念及び範囲の理解を、より容易なものとする上で、特定の態様及び実施形態の例示の目的のためにのみ記載するのであって、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1~4、比較例1~3]
下記の原材料を用いて各種無機物質粉末充填樹脂組成物を調製し、試験片へと成形して、物性試験に付した。
・PP(プロピレンホモポリマー):日本ポリプロ株式会社製のプロピレンホモポリマー(MFR:0.5g/10min)
・LDPE(低密度ポリエチレン):日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン、密度0.920g/cm
・CEBC(水添ポリマー系エラストマー):JSR株式会社製のエチレン-エチレン・ブチレン-エチレンブロック共重合体、DYNARON(登録商標)6200P
・SEBS(水添ポリマー系エラストマー):JSR株式会社製のスチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体、DYNARON(登録商標)8601P
・CC(炭酸カルシウム):備北粉化工業株式会社製の重質炭酸カルシウム(表面処理有、JIS M-8511による空気透過法により測定した平均粒子径2.20μm)
上記の各原材料を、後記する表1に示す質量比で(株)パーカーコーポレーション製同方向回転二軸混錬押出機HK-25D(φ25mm、L/D=41)に投入し、シリンダー温度190~200℃でストランド押出後、冷却、カットすることでペレットを作製した。次いで、このペレットを射出成型機に投入し、ダンベル形状の試験片等を成形した。
上記の様にして作製した各試験片について、下記の試験方法によって引張特性及びシャルピー衝撃強度を評価した。結果を、後記する表1に示す。
(引張特性)
引張弾性率及び破断点伸び率を、JIS K 7161-2:2014に準じて23℃、50%RHの条件下で、オートグラフAG-100kNXplus(株式会社島津製作所)を用いて測定した。延伸速度は10mm/分であった。
(シャルピー衝撃強度)
80mm×10mmの試験片について、ISO179/1eAに従い測定した。一部の試料については、不実施とした。
Figure 2022143312000001
熱可塑性樹脂成分100質量%当たり、プロピレンホモポリマーと共に2~6質量%の低密度ポリエチレンと5~14質量%のエチレン-エチレン・ブチレン-エチレンブロック共重合体(CEBC)とを含有する実施例1~3の樹脂組成物では、シャルピー衝撃強度が何れも7kJ/mを超え、それらポリマー不含の比較例1での値の4倍以上に改善されていた。破断点強度は何れも比較例1での値とほぼ同等であった。破断点伸び率も、比較例1での値の4倍前後に改善されていた。本発明に従い、LDPEとCEBCとを特定量含有することにより、衝撃強度を始めとする機械的強度がバランス良く改善されることが判明した。
尚、CEBC含有量が5質量%未満の比較例2や、LDPE含有量が6質量%超の比較例3の樹脂組成物を比較例1の樹脂組成物と比較すると、シャルピー衝撃強度の改善幅は小さく、破断点強度は多少低下していた。衝撃強度等の機械的特性をバランスよく改善する上で、低密度ポリエチレンや水添ポリマー系エラストマーの含有量の選定が重要であることが示された。また、LDPEと共に水添スチレン系エラストマー(SEBS)を含有する実施例4の樹脂組成物では、引張特性は良好であったが、シャルピー衝撃強度は同量のCEBCを含有する樹脂組成物(実施例1)よりも劣っていた。水添ポリマー系エラストマーとしては、エチレン-エチレン・ブチレン-エチレンブロック共重合体が好ましいことが示された。
以上より、無機物質粉末が高充填された樹脂組成物であっても、熱可塑性樹脂成分がプロピレンホモポリマーと共に低密度ポリエチレン及び水添ポリマー系エラストマーを特定量含むものであれば、良好な機械的特性、特に耐衝撃性を備え、衝撃破壊し難い成形品を与える樹脂組成物となることが明らかとなった。また、水添ポリマー系エラストマーとしてはエチレン-エチレン・ブチレン-エチレンブロック共重合体が好ましいことが示された。

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有する無機物質粉末充填樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂はプロピレンホモポリマー、低密度ポリエチレン、及び水添ポリマー系エラストマーからなり、
    前記熱可塑性樹脂の全質量100質量%に基づいて、前記プロピレンホモポリマーの含有量が82質量%以上90質量%以下、前記低密度ポリエチレンの含有量が2質量%以上6質量%以下、前記水添ポリマー系エラストマーの含有量が5質量%以上14質量%以下であることを特徴とする無機物質粉末充填樹脂組成物。
  2. 前記水添ポリマー系エラストマーがエチレン-エチレン・ブチレン-エチレンブロック共重合体(CEBC)である請求項1記載の無機物質粉末充填樹脂組成物。
  3. 前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウムである請求項1又は2に記載の無機物質粉末充填樹脂組成物。
  4. 前記重質炭酸カルシウムが、JIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が0.7μm以上6.0μm以下の重質炭酸カルシウム粒子である請求項3に記載の無機物質粉末充填樹脂組成物。
  5. 請求項1~4の何れかに記載の無機物質粉末充填樹脂組成物からなる成形品。
  6. 前記成形品が射出成形品である請求項5に記載の成形品。
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