JP2022142489A - 同期電動機の駆動装置および同期電動機の駆動方法 - Google Patents

同期電動機の駆動装置および同期電動機の駆動方法 Download PDF

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Abstract

Figure 2022142489000001
【課題】同期電動機が埋込磁石型同期電動機・表面磁石型同期電動機のいずれであっても、同期電動機の停止中に、同期電動機の回転子の初期磁極位置を高精度に推定する。
【解決手段】磁極位置推定部600Aは、同期電動機の停止中に、第一のピークトゥピーク検出器610により検出される、相電流の最大値と最小値の差分を表す第一のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppと、第二のピークトゥピーク検出器620により検出される、相電流に対する直交成分Iδの最大値と最小値の差分を表す第二のピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppとに基づいて、第一の磁極位置演算部640により第一の磁極位置θest1を演算し、この第一の磁極位置θest1に基づいて、第二の磁極位置演算部660により回転子の初期磁極位置θestを推定する。
【選択図】図5

Description

本発明は、同期電動機の駆動装置および同期電動機の駆動方法に関する。
ハイブリッド自動車や電気自動車に代表される電動化車両には、回転子に永久磁石を備えた永久磁石同期モータ(以下、同期電動機)が用いられている。同期電動機は、永久磁石を回転子に埋め込んだ構造の埋込磁石型同期電動機と、永久磁石を回転子の表面に配置した表面磁石型同期電動機とに大別される。電動化車両では、車両の駆動用に埋込磁石型同期電動機が使用され、電動パワーステアリング装置や電動ブレーキ装置に表面磁石型同期電動機が使用されることが多い。このような同期電動機を制御するためには、一般に電力変換器であるインバータが用いられている。そして、インバータにより同期電動機のトルクを制御する方法として、一般に電流ベクトル制御が知られている。電流ベクトル制御を行うためには、同期電動機の回転子の磁極位置を正確に把握する必要がある。この磁極位置を把握する手段の一つとして、位置センサであるレゾルバが同期電動機に設けられることが多い。
ところが、レゾルバを同期電動機に備えることにより、システムの部品数の増加・大型化・コストの増加を招いている。また、レゾルバには位置信号を出力するための出力巻線が巻かれており、その断線や短絡によって故障する恐れがあるため、システムの信頼性低下をも招いている。
そこで、レゾルバなどのセンサを使用せずに同期電動機を駆動する技術として、位置センサレスベクトル制御が一般に知られている。位置センサレスベクトル制御は、同期電動機の誘起電圧を検出或いは推定することで、回転子の位置情報を得て電流ベクトル制御を行うものである。位置センサレスベクトル制御を採用すると、レゾルバなどの位置センサが不要となるため、システムの大型化・コストの増加・信頼性の低下など、位置センサに起因する前述の諸問題を防ぐことができる。
位置センサレスベクトル制御を行うためには、同期電動機が停止中の回転子位置(初期磁極位置)を検出しなければならないが、同期電動機が停止している際には、同期電動機の誘起電圧を検出或いは推定することができない。そのため、他の方法で初期磁極位置を検出或いは推定する必要がある。
同期電動機の初期磁極位置の推定方法として、特許文献1、2の技術が知られている。特許文献1には、同期電動機の突極性を利用して初期磁極位置を推定する方法が開示されている。特許文献2には、磁気飽和を利用して初期磁極位置を推定する方法が開示されている。
特開2002-78391号公報 特開2016-171741号公報
突極性を有する同期電動機には、回転子位置に依存してインダクタンスが変化する性質がある。特許文献1では、このようなインダクタンスの回転子位置依存性を利用し、同期電動機に高調波電圧を印加して、そのときに同期電動機に発生する電流の検出結果から初期磁極位置を推定している。しかしながら、表面磁石型同期電動機のように突極性が無い同期電動機の場合には、インダクタンスの回転子位置依存性が得られない。そのため、特許文献1の初期磁極位置の推定方法は、埋込磁石型同期電動機には適用できるものの、表面磁石型同期電動機には適用できないといった課題がある。
また、同期電動機の3相に各々電圧を順次印加すると、初期磁極位置に近い相に電圧を印加したときに、磁気飽和によってインダクタンスが低下し、電流の大きさが変化する。特許文献2では、このような同期電動機の磁気飽和を利用して、初期磁極位置を推定している。この方法は、埋込磁石型同期電動機・表面磁石型同期電動機のいずれにも適用できる長所がある。しかしながら、永久磁石の磁束と同方向の磁束と、それに直交する方向の磁束とは互いに干渉することが知られており、これに起因して磁極位置の推定に大きな誤差が生じるという課題がある。
そこで、本発明では、埋込磁石型同期電動機・表面磁石型同期電動機のいずれにも適用が可能で、かつ高精度に初期磁極位置を推定することが可能な同期電動機の駆動装置および駆動方法を提供することを目的とする。
本発明による同期電動機の駆動装置は、同期電動機の各相に正負の電圧を順次印加して前記同期電動機を駆動する電力変換器と、前記同期電動機に流れる相電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部で検出された相電流に基づいて前記同期電動機の回転子の磁極位置を推定する磁極位置推定部と、を備え、前記磁極位置推定部は、前記相電流の最大値と最小値の差分を表す第一のピークトゥピーク値を検出する第一のピークトゥピーク検出器と、前記相電流に対する直交成分を検出する直交成分検出器と、前記直交成分の最大値と最小値の差分を表す第二のピークトゥピーク値を検出する第二のピークトゥピーク検出器と、を備え、前記同期電動機の停止中に、前記第一のピークトゥピーク検出器により検出された前記第一のピークトゥピーク値と、前記第二のピークトゥピーク検出器により検出された前記第二のピークトゥピーク値とに基づいて、第一の磁極位置を演算し、前記第一の磁極位置に基づいて前記回転子の初期磁極位置を推定する。
本発明による同期電動機の駆動方法は、同期電動機の各相に正負の電圧を順次印加して前記同期電動機を駆動する電力変換器と、前記同期電動機に流れる相電流を検出する電流検出部とを備えた同期電動機の駆動装置における同期電動機の駆動方法であって、前記同期電動機の停止中に、前記電流検出部により検出された前記相電流の最大値と最小値の差分を表す第一のピークトゥピーク値と、前記相電流に対する直交成分の最大値と最小値の差分を表す第二のピークトゥピーク値とを取得し、前記第一のピークトゥピーク値と前記第二のピークトゥピーク値とに基づいて第一の磁極位置を演算し、前記第一の磁極位置に基づいて前記同期電動機の回転子の初期磁極位置を推定する。
本発明によれば、同期電動機が埋込磁石型同期電動機・表面磁石型同期電動機のいずれであっても、同期電動機の停止中に、同期電動機の回転子の初期磁極位置を高精度に推定することができる。
第1の実施形態に係る駆動装置の構成図である。 第1の実施形態に係る電圧パルス作成部の詳細な構成図である。 第1の実施形態における位相指令と電圧指令および同期電動機に流れる電流との関係を示す図である。 磁気飽和の影響を説明する図である。 第1の実施形態に係る磁極位置推定部の詳細な構成図である。 第一の磁極位置演算部の主たる機能を示した構成図である。 初期磁極位置の推定精度向上の原理を説明する図である。 極性判別器の主たる機能を示した構成図である。 第2の実施形態に係る磁極位置推定部の詳細な構成図である。 第三の磁極位置演算部の主たる機能を示した構成図である。 第四の磁極位置演算部の主たる機能を示した構成図である。 第3の実施形態に係る駆動装置の構成図である。 第3の実施形態に係る電圧パルス作成部の詳細な構成図である。 第3の実施形態における位相指令と電圧指令および同期電動機に流れる電流との関係を示す図である。 第4の実施形態に係る駆動装置の構成図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る駆動装置100Aの構成図である。駆動装置100Aは、電力変換器300と、電圧パルス作成部400Aと、電流検出部500と、磁極位置推定部600Aとを備え、同期電動機200を駆動する。
同期電動機200は、永久磁石型の同期電動機であり、回転子に永久磁石(強磁性体)を、固定子に電機子巻線を用いて構成される。なお、本実施形態では、同期電動機200の磁極位置を検出する位置センサを備えておらず、代わりに磁極位置を推定する。磁極位置を推定する場合は、同期電動機200の小型化・コスト低減・信頼性の向上を図ることができる。
電圧パルス作成部400Aは、同期電動機200の駆動時には、入力されたトルク指令T*に応答して、同期電動機200のu相、v相、w相の各相に正負の電圧を順次印加するための電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を作成し、電力変換器300へ出力する。電圧パルス作成部400Aは、磁極位置推定部600Aで推定した磁極位置に基づいて電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を作成する。また、電圧パルス作成部400Aは、同期電動機200の初期磁極位置を推定する時には、所定の位相指令θ*を作成し、磁極位置推定部600Aへ出力する。
電力変換器300は、例えばインバータであり、同期電動機200の駆動時には、電圧パルス作成部400Aからの電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を、パルス幅変調(PWM)して、電力変換器の半導体スイッチ素子をオン/オフ制御する。これにより、同期電動機200に電圧Vu、Vv、Vwを印加して、同期電動機200を駆動する。
電流検出部500は、同期電動機200に流れる三相電流を検出する電流センサ500u、500v、500wによって構成される。電流センサ500u、500v、500wは、同期電動機200の各相にそれぞれ配置されている。電流検出部500は、三相電流Iu、Iv、Iwを検出して、磁極位置推定部600Aに出力する。なお、電流センサ500u、500v、500wは同期電動機200の三相それぞれに配置されている例で示しているが、三相交流電流の和がゼロであることを利用して、二相(例えば、u相とv相)のみに配置してもよい。また、電力変換器300の入力側の直流母線(図示省略)を流れる電流から、同期電動機200の三相電流を得る構成としてもよい。これらの構成にすると、電流センサの数を減らすことができ、低コスト化を図ることができる。
磁極位置推定部600Aは、電流検出部500で検出された三相電流Iu、Iv、Iwに基づいて、同期電動機200の回転子の位置に応じた磁極位置を推定する。また、同期電動機200の停止中に、電流検出部500で検出された三相電流Iu、Iv、Iwと、電圧パルス作成部400Aから出力される位相指令θ*に基づいて、同期電動機200の回転子の初期磁極位置θestを推定する。同期電動機200の停止中における磁極位置推定部600Aの詳細は後述する。
図2は、第1の実施形態に係る電圧パルス作成部400Aの詳細な構成図である。なお、この構成図は、同期電動機200の停止中に初期磁極位置θestを推定する場合の構成を示す。同期電動機200の駆動中にトルク指令T*に応じて電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を生成する場合の構成は周知であるため、本実施形態では説明を省略する。
電圧パルス作成部400Aは、電圧指令作成部410と、位相切替器420と、指令座標変換部430と、を備えている。
電圧指令作成部410では、d軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*を出力する。本実施形態では、後述の図3(B)に示す正負に交番するd軸電圧指令Vd*を生成し、q軸電圧指令Vq*はゼロである。
位相切替器420は、電圧指令作成部410で作成されたd軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*を三相の電圧指令に変換するための位相指令θ*を作成する。位相切替器420は、0度(0ラジアン)、120度(2/3πラジアン)、240度(4/3πラジアン)を順に位相指令θ*として出力する。
指令座標変換部430は、電圧指令作成部410で作成されたd軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*と、位相切替器420から出力される位相指令θ*とを入力し、これらを三相の電圧指令Vu*、Vv*、Vw*に座標変換する。座標変換は、以下の式(1)、(2)、(3)に従って行う。
Vu*=Vd*×cos(θ*)-Vq*×sin(θ*)・・・(1)
Vv*=Vd*×cos(θ*-2π/3)-Vq*×sin(θ*-2π/3)・・・(2)
Vw*=Vd*×cos(θ*-4π/3)-Vq*×sin(θ*-4π/3)・・・(3)
図3は、第1の実施形態における位相指令θ*と電圧指令および同期電動機200に流れる電流との関係を示す図である。図3(A)は、位相切替器420により出力された位相指令θ*を示し、図3(B)は、電圧指令作成部410により作成されたd軸電圧指令Vd*を示す。なお、前述のとおり、q軸電圧指令Vq*はゼロである。図3(C)~図3(E)は、それぞれ指令座標変換部430により出力された三相の電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を示す。図3(F)~図3(H)は、それぞれ電流検出部500により検出され、磁極位置推定部600Aに入力される三相の電流Iu、Iv、Iwを示す。
図3(A)に示すように、位相切替器420より位相指令θ*が、0度(0ラジアン)、120度(2/3πラジアン)、240度(4/3πラジアン)の順に出力される。指令座標変換部430の出力である三相の電圧指令Vu*、Vv*、Vw*は、図3(C)~図3(E)に示すように、位相指令θ*が0度であるときはu相に、位相指令θ*が120度であるときはv相に、位相指令θ*が240度であるときはw相に、正負に交番するパルス電圧としてそれぞれ印加される。これにより、図3(F)~図3(H)に示すように、三相電流Iu、Iv、Iwが同期電動機200に流れる。
図5は、第1の実施形態に係る磁極位置推定部600Aの詳細な構成図である。
磁極位置推定部600Aは、第一のピークトゥピーク検出器610と、第二のピークトゥピーク検出器620と、直交成分検出器630と、第一の磁極位置演算部640と、極性判別器650と、第二の磁極位置演算部660を備える。
第一のピークトゥピーク検出器610は、電流検出部500によって検出された電流値Iu、Iv、Iwを入力とし、これらの各相電流の最大値と最小値の差分を表すピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppを検出する。
u相電流のピークトゥピーク値Iuppは、図3(F)において、位相指令θ*が0度でu相に正の電圧を印加しているときのu相電流の最大値Iu+と、位相指令θ*が0度でu相に負の電圧を印加しているときのu相電流の最小値Iu-との差である。
v相電流のピークトゥピーク値Ivppは、図3(G)において、位相指令θ*が120度でv相に正の電圧を印加しているときのv相電流の最大値Iv+と、位相指令θ*が120度でv相に負の電圧を印加しているときのv相電流の最小値Iv-との差である。
w相電流のピークトゥピーク値Iwppは、図3(H)において、位相指令θ*が240度でw相に正の電圧を印加しているときのw相電流の最大値Iw+と、位相指令θ*が240度でw相に負の電圧を印加しているときのw相電流の最小値Iw-との差である。
図3(F)~図3(H)に示したように、Iupp、Ivpp、Iwppは、各相電流のピークトゥピーク値である。一般に、電気自動車をはじめとする電動車両の駆動に用いられる永久磁石型の同期電動機は、突極性(インダクタンスの回転子位置依存性)を有しており、インダクタンスが回転子位置に依存して変化する。そのため、同期電動機200の停止中に得られる各相電流のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppも、初期磁極位置θestに依存して変化する。また、突極性による電流の変化(インダクタンスの変化)は、回転子位置に対して1/2倍の周期で現れることが知られている。これらのことを利用して、Iupp、Ivpp、Iwppから初期磁極位置θestを演算することができる。
ただし、初期磁極位置によっては、突極性による電流の変化だけでなく、磁気飽和による電流の変化が各相電流のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppに含まれることがある。この点について、以下に図4を参照して説明する。
例えば図4に示すように、同期電動機200において初期磁極位置が30度であった場合、回転子である磁石のN極が+u相と-w相に近い位置にある。この状態で、電圧パルス作成部400Aから図3(C)~図3(E)に示す電圧指令Vu*、Vv*、Vw*をそれぞれ出力し、これらの電圧指令に応じた電圧Vu、Vv、Vwを電力変換器300から同期電動機200へ印加したとする。このとき、位相指令θ*が0度の区間であるu相印加区間のうちu相に正の電圧を印加している期間と、位相指令θ*が240度の区間であるw相印加区間のうちw相に負の電圧を印加している期間とで、電流によって生じる磁束に磁石の磁束がそれぞれ重畳される。そのため、同期電動機200の固定子において磁束が過密となり、その結果、磁気飽和が発生してインダクタンスが低下する。したがって、図3(F)におけるIu+と、図3(H)におけるIw-とで、それぞれの電流変化が磁気飽和を発生しない場合に比べて大きくなることがある。
以上説明したように、初期磁極位置によっては、各相電流のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppにおいて、突極性による電流の変化だけでなく、磁気飽和に起因した電流の変化が生じてしまうことがある。これは、磁極位置推定部600Aにおける初期磁極位置θestの推定誤差の増大要因となる。
さらに、電動化車両のブレーキシステムや、電動パワーステアリング装置の駆動に用いられる永久磁石型の同期電動機には、突極性を有さない表面磁石型同期電動機が用いられる場合が多い。表面磁石型同期電動機は、突極性を有さないため、そのままでは磁極位置推定部600Aにおいて、前述のような突極性による電流変化を利用した初期磁極位置の演算を行うことができない。仮に同期電動機200が表面磁石型同期電動機である場合に、各相電流のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppの変化から初期磁極位置θestの推定を行うと、推定誤差が大きくなってしまう。
そこで本実施形態では、磁極位置推定部600Aにおいて、直交成分検出器630と、第二のピークトゥピーク検出器620とを設けた。そして、第一の磁極位置演算部640により、以下で説明するように、第一のピークトゥピーク検出器610から出力される各相電流のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppと、第二のピークトゥピーク検出器620から出力される各相電流の直交成分のピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppとに基づき、第一の磁極位置θest1を演算する。こうして求められた第一の磁極位置θest1に基づいて、初期磁極位置θestを推定するようにしている。
直交成分検出器630は、電流検出部500によって検出された電流値Iu、Iv、Iwと、位相指令θ*とを入力とし、これらに基づいて、各相電流に対する直交成分を検出する。ここでは、以下の式(4)、(5)に従って、電流値Iu、Iv、Iwおよび位相指令θ*から直交二軸成分Iγ、Iδを演算することで、各相電流に対する直交成分を求める。
Iγ=2/3×{Iu×cos(θ*)+Iv×cos(θ*-2π/3)+Iw×cos(θ*-4π/3)}・・・(4)
Iδ=-2/3×{Iu×sin(θ*)+Iv×sin(θ*-2π/3)+Iw×sin(θ*-4π/3)}・・・(5)
直交成分検出器630は、直交二軸成分Iγ、Iδを演算したら、そのうちIδを第二のピークトゥピーク検出器620へ出力する。
第二のピークトゥピーク検出器620は、直交成分検出器630によって演算された相電流の直交成分Iδを入力とし、直交成分Iδの最大値と最小値の差分を表すピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppを検出する。
ピークトゥピーク値Iδuppは、位相指令θ*が0度のときの直交成分Iδの最大値と最小値の差分である。これは図3(J)において、位相指令θ*が0度でu相に正の電圧を印加しているときのIδのピーク値Iδu+と、位相指令θ*が0度でu相に負の電圧を印加しているときのIδのピーク値Iδu-との差に相当する。
ピークトゥピーク値Iδvppは、位相指令θ*が120度のときの直交成分Iδの最大値と最小値の差分である。これは図3(J)において、位相指令θ*が120度でv相に正の電圧を印加しているときのIδのピーク値Iδv+と、位相指令θ*が120度でv相に負の電圧を印加しているときのIδのピーク値Iδv-との差に相当する。
ピークトゥピーク値Iδwppは、位相指令θ*が240度のときの直交成分Iδの最大値と最小値の差分である。これは図3(J)において、位相指令θ*が240度でw相に正の電圧を印加しているときのIδのピーク値Iδw+と、位相指令θ*が240度でw相に負の電圧を印加しているときのIδのピーク値Iδw-との差に相当する。
第一の磁極位置演算部640は、第一のピークトゥピーク検出器610の出力である各相電流のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppと、第二のピークトゥピーク検出器620の出力である直交成分Iδのピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppとを入力とし、これらに基づいて第一の磁極位置θest1を演算する。
直交成分Iδのピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppは、各相電流のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppに対して、電気的に直交する成分である。したがって、前述の磁気飽和の影響により同期電動機200のインダクタンスが低下し、これに応じて相電流のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppが大きくなる場合でも、これらの直交成分Iδには磁気飽和が発生しないので、Iδのピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppは小さくなる。反対に、Iδのピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppが磁気飽和の影響を受けて大きくなる場合には、相電流のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppが小さくなる。このように、相電流のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppと、直交成分Iδのピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppとは、互いに相対する特性を持っている。
本実施形態では、第一の磁極位置演算部640において、上記の特性を利用して後述の直交二軸成分平均化処理を行うことにより、磁気飽和の影響による各相電流のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppの変化をキャンセルする。その結果、突極性に起因した電流の変化のみを抽出することができるようにしている。
また、同期電動機200が表面磁石型同期電動機である場合、同期電動機200は突極性を有しないため、本来であれば直交成分Iδが一定となり、Iδのピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppはいずれも0となる。しかし、同期電動機200において初期磁極位置に応じた磁気飽和が前述のように発生すると、永久磁石の磁束方向やそれに直交する方向のインダクタンスが変化するため、直交成分Iδのピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppが生じる。本実施径形態では、こうした直交成分Iδのピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppの特性を利用して、同期電動機200が表面磁石型同期電動機の場合であっても初期磁極位置θestを推定できるようにしている。
図6は、第一の磁極位置演算部640の主たる機能を示した構成図である。第一の磁極位置演算部640は、第一の座標変換部641と、第二の座標変換部642と、直交二軸成分平均化処理部643と、位置演算部644と、を備えている。
第一の座標変換部641は、第一のピークトゥピーク検出器610の出力である各相電流のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppを入力とし、これらの座標系をαβ座標系に変換してIαpp、Iβppを出力する。ここで、αβ座標系への変換は、以下の式(6)、(7)に従う。
Iαpp=2/3×{Iupp-1/2×Ivpp-1/2×Iwpp}・・・(6)
Iβpp=2/3×{(√(3)/2)×(Ivpp-Iwpp)}・・・(7)
第二の座標変換部642は、第二のピークトゥピーク検出器620の出力である直交成分Iδのピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppを入力とし、これらの座標系をαβ座標系に変換してIδαpp、Iδβppを出力する。ここで、αβ座標系への変換は以下の式(8)、(9)に従う。
Iδαpp=2/3×{Iδupp-1/2×Iδvpp-1/2×Iδwpp}・・・(8)
Iδβpp=2/3×{(√(3)/2)×(Iδvpp-Iδwpp)}・・・(9)
直交二軸成分平均化処理部643は、第一の座標変換部641の出力であるIαpp、Iβppと、第二の座標変換部642の出力であるIδαpp、Iδβppとを入力とし、これらに対して直交二軸成分平均化処理を行うことで、Pα、Pβを出力する。
直交二軸成分平均化処理部643は、以下の式(10)、(11)に従ってPαおよびPβを算出する。Pαは、IαppとIδβppの和を2で除したものであり、Pβは、IδαppとIβppの差を2で除したものである。
Pα=1/2×(Iαpp+Iδβpp)・・・(10)
Pβ=1/2×(Iδαpp-Iβpp)・・・(11)
ここで、埋込磁石型同期電動機と表面磁石型同期電動機をそれぞれ対象として、直交二軸成分平均化処理による初期磁極位置の推定精度向上の原理を、図7を参照して以下に説明する。
第一の座標変換部641の出力であるIαpp、Iβppと、第二の座標変換部642の出力であるIδαpp、Iδβppと、直交二軸成分平均化処理部643の出力であるPα、Pβとは、これらの組み合わせごとに、互いに一定の関係で初期磁極位置に応じてそれぞれ変化する。図7は、初期磁極位置に対するこれらの各組み合わせの変化の軌跡を描いた図である。図7において、IαppとIβppの軌跡は、横軸にIαpp、縦軸に-Iβppをとったものである。また、IδαppとIδβppの軌跡は、横軸にIδβpp、縦軸にIδαppをとったものである。また、PαとPβの軌跡は、横軸にPα、縦軸にPβをとったものである。ただし、これらの軌跡は初期磁極位置に対して1/2倍の周期で回転する。そのため図7において、例えば第一象限と第二象限の境界である縦軸上の点は、初期磁極位置45度あるいは225度に対応する。
ここで、同期電動機200の初期磁極位置は、図7に示した各軌跡の横軸成分と縦軸成分を逆正接関数にそれぞれ入力した値に相当する。すなわち、これらの軌跡が円形に近いほど、高い精度で初期磁極位置を求めることができる。
図7(a)は、同期電動機200が埋込磁石型同期電動機の場合における上記の各組み合わせの軌跡の一例を表している。前述のとおり、同期電動機200において磁気飽和が発生するとインダクタンスが低下するため、各相電流が大きくなる。その結果、図7(a)に示すように、IαppとIβppの軌跡は円形ではなく、初期磁極位置が30度、90度、150度、210度、270度、330度付近で膨らむ形を描く。一方、各相電流に直交する方向では磁気飽和していないため、IδαppとIδβppの軌跡は、IαppとIβppの軌跡と相対して小さくなる。
このことを利用して、IαppとIβppの軌跡と、IδαppとIδβppの軌跡との中間に相当するPαとPβの軌跡を求めることで、図7(a)に示すように円形の軌跡が得られる。すなわち、埋込磁石型同期電動機において磁気飽和が発生し、それにより各相電流のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppが大きくなる場合であっても、磁気飽和の影響を排除したPαとPβを求めることができる。したがって、PαとPβに基づいて高い精度で初期磁極位置を求められることが分かる。
図7(b)は、同期電動機200が表面磁石型同期電動機の場合における上記の各組み合わせの軌跡の一例を表している。突極性を有しない表面磁石型同期電動機の場合、IδαppとIδβppは本来ゼロとなるが、磁気飽和が発生することによりインダクタンスが変化すると、IδαppとIδβppが生じる。このときのIδαppとIδβppの軌跡は、図7(a)に示した埋込磁石型同期電動機の場合と同様に、IαppとIβppの軌跡と相対する特性をもつ。
このことを利用して、IαppとIβppの軌跡と、IδαppとIδβppの軌跡との中間に相当するPαとPβの軌跡を求めることで、図7(b)に示すように円形の軌跡が得られる。これにより、同期電動機200が突極性を有しないか、あるいは突極性が微小な場合であっても、PαとPβに基づいて高い精度で初期磁極位置を求められることが分かる。
以上説明したように、本実施形態では、第一の磁極位置演算部640が有する直交二軸成分平均化処理部643により、磁気飽和の影響を排除したPαおよびPβを算出する。位置演算部644では、これらを用いて第一の磁極位置θest1を演算するようにしている。したがって、同期電動機200が埋込磁石型同期電動機と表面磁石型同期電動機のいずれの場合であっても、初期磁極位置の推定精度を向上することが可能である。
位置演算部644は、直交二軸成分平均化処理部643の出力であるPα、Pβを入力とし、これらに基づいて第一の磁極位置θest1を演算する。第一の磁極位置θest1は、以下の式(12)に従って求められる。
θest1=1/2×{arctan(Pβ/Pα)}・・・(12)
一般に、同期電動機200における突極性によるインダクタンスの変化は、回転角に対して1/2倍の周期で現れることが知られている。すなわち、突極性を利用した推定方法では、初期磁極位置が0~180度の範囲でしか推定することができず、回転子の磁石の極性がN極なのかS極なのかを判別することができない。そこで本実施形態の磁極位置推定部600Aでは、図5に示すように、回転子の磁石の極性を判別するために、極性判別器650を備えている。
図8は、極性判別器650の主たる機能を示した構成図である。本実施形態における極性判別器650は、ピーク値検出器651と、絶対値演算部652と、減算部653と、座標変換部654と、極性演算部655を備えている。
ピーク値検出器651は、電流検出部500によって検出された相電流Iu、Iv、Iwを入力とし、各相電流のピーク値Iu+、Iu-、Iv+、Iv-、Iw+、Iw-を検出する。
電流ピーク値Iu+は、図3(F)において、位相指令θ*が0度でu相に正の電圧を印加している時のu相電流の最大値である。電流ピーク値Iu-は、図3(F)において、位相指令θ*が0度でu相に負の電圧を印加している時のu相電流の最小値である。
電流ピーク値Iv+は、図3(G)において、位相指令θ*が120度でv相に正の電圧を印加している時のv相電流の最大値である。電流ピーク値Iv-は、図3(G)において、位相指令θ*が120度でv相に負の電圧を印加している時のv相電流の最小値である。
電流ピーク値Iw+は、図3(H)において、位相指令θ*が240度でw相に正の電圧を印加している時のw相電流の最大値である。電流ピーク値Iw-は、図3(H)において、位相指令θ*が240度でw相に負の電圧を印加している時のw相電流の最小値である。
絶対値演算部652は、各相の電流ピーク値Iu+、Iu-、Iv+、Iv-、Iw+、Iw-を入力とし、それぞれの絶対値を計算する。
減算部653は、各相の電流ピーク値の絶対値の差を以下の式(13)、(14)、(15)にしたがって計算し、ΔIu、ΔIv、ΔIwを出力する。
ΔIu=|Iu+|-|Iu-|・・・(13)
ΔIv=|Iv+|-|Iw-|・・・(14)
ΔIw=|Iw+|-|Iv-|・・・(15)
このΔIu、ΔIv、ΔIwは、正の電圧を印加した時の電流値と、負の電圧を印加した時の電流値のそれぞれの絶対値の差であるので、同期電動機200の磁気飽和の度合いを示す値となる。
座標変換部654は、各相の電流ピーク値の絶対値の差であるΔIu、ΔIv、ΔIwを、以下の式(16)、(17)を用いて変換し、ΔPα、ΔPβとして出力する。
ΔPα=2/3×{ΔIu-1/2×ΔIv-1/2×ΔIw}・・・(16)
ΔPβ=2/3×{(√(3)/2)×(ΔIv-ΔIw)}・・・(17)
極性演算部655は、ΔPα、ΔPβを入力として、次式(18)より求まる第二の磁極位置θest2に基づいて、磁石の極性がN極であるかS極であるかを判別する。
θest2=arctan{ΔPβ/ΔPα}・・・(18)
ここで、ΔPα、ΔPβは、各相の電流ピーク値Iu+、Iu-、Iv+、Iv-、Iw+、Iw-のそれぞれの絶対値の差であるΔIu、ΔIv、ΔIwから求まる値である。同期電動機200が磁気飽和しているとき、飽和している方向の電流ピーク値の絶対値が大きくなるので、各相の電流ピーク値の絶対値の差ΔIu、ΔIv、ΔIwは、磁気飽和の度合いを示している。
磁気飽和の度合いは、正弦波状に現れるとは限らないため、精度は高くないものの、埋込磁石型同期電動機・表面磁石型同期電動機のいずれであっても、0~360度の範囲で(すなわち、回転子の磁石の極性も含めて)磁極位置を推定することができる。極性判別器650ではこれを利用して、磁気飽和の度合いから求めた第二の磁極位置θest2の極性を判別し、その判別結果を極性NSとして出力する。例えば、θest2が所定の範囲にあるときはN極とし、所定の範囲外にあるときはS極と判定する。ここで、所定の範囲とは、例えばθest2が0~180度の範囲である。具体的には、θest2が0~180度の場合にはN極とし、θest2が180~360度の場合はS極として判定する。
図5の説明に戻ると、第二の磁極位置演算部660は、第一の磁極位置演算部640により演算された第一の磁極位置θest1と、極性判別器650により第二の磁極位置θest2が演算されることで判別された極性NSとに基づいて、同期電動機200の回転子位置を演算する。
第一の磁極位置θest1は0~180度の範囲でしか得られないが、第二の磁極位置演算部660では、これに極性判別器650による判別の結果である極性NSを利用して、初期磁極位置θestを推定する。具体的には、極性判別器650により極性NSがN極と判定された場合には、第一の磁極位置θest1をそのまま初期磁極位置θestとして出力する。一方、極性判別器650により極性NSがS極と判定された場合には、第一の磁極位置θest1に180度加算した値を、初期磁極位置θestとして出力する。
本実施形態の磁極位置推定部600Aによれば、同期電動機200の停止中に、電圧パルス作成部400Aにより同期電動機200の各相に正負の電圧を順次印加したときの各相電流のピークトゥピーク値と、各相電流の直交成分のピークトゥピーク値とを検出する構成とした。そして、検出した各相電流のピークトゥピーク値と、各相電流の直交成分のピークトゥピーク値とを用いて、磁気飽和に起因する電流変化を排除し、突極性に起因する電流変化を得るようにした。また、同期電動機200が表面磁石型同期電動機の場合であっても、磁気飽和によるインダクタンス変化により相電流の直交成分が生じることを利用し、その電流変化を得るようにした。これにより、同期電動機200が埋込磁石型・表面磁石型のいずれであっても、精度良く回転子の初期磁極位置を推定できる。したがって本実施形態では、埋込磁石型・表面磁石型同期電動機の双方に適用可能な汎用性がありながらも、高い精度で初期磁極位置を推定することができる。このため、同期電動機200のセンサレス制御も高い精度で実施することができる。例えば、同期電動機200を電動車両の駆動用モータに用いた場合も、車両駆動用モータとしての制御性能が向上し、乗員に快適な乗り心地を提供することができる。また、同期電動機200を電動車両の電動パワーステアリング装置や電動ブレーキ装置のような補機装置に用いた場合も、補機装置の制御性能が向上し、ドライバビリティの向上を提供することができる。
[第2の実施形態]
図9は、第2の実施形態に係る磁極位置推定部600Bの詳細な構成図である。第1の実施形態における磁極位置推定部600Aと同一の個所には同一の符号を附してその説明を省略する。なお、図1に示す同期電動機200の駆動装置100Aの構成図、図2に示す電圧パルス作成部400Aの詳細な構成図、図3に示す三相の電圧指令と三相電流の関係を示す図は、本実施形態においても同様である。
第1の実施形態では、第二の磁極位置演算部660が行なう極性NSの判別において、各相の電流ピーク値の絶対値の差ΔIu、ΔIv、ΔIwから求められた第二の磁極位置θest2のみを利用したが、本実施形態では、第一の磁極位置θest1および第二の磁極位置θest2から極性NSを求める。
本実施形態では、図9に示すように、磁極位置推定部600Bは、極性判別器650および第二の磁極位置演算部660に替えて、第三の磁極位置演算部670および第四の磁極位置演算部680を備える。第三の磁極位置演算部670は、電流検出部500によって検出された相電流Iu、Iv、Iwに基づいて、第二の磁極位置θest2を演算する。第四の磁極位置演算部680には、第三の磁極位置演算部670から第二の磁極位置θest2が、第一の磁極位置演算部640から第一の磁極位置θest1がそれぞれ入力される。第四の磁極位置演算部680は、これらの磁極位置に基づいて初期磁極位置θestを演算する。
図10は、第三の磁極位置演算部670の主たる機能を示した構成図である。本実施形態における第三の磁極位置演算部670は、ピーク値検出器671と、絶対値演算部672と、減算部673と、座標変換674と、位置演算部675を備えている。
ピーク値検出器671、絶対値演算部672、減算部673、座標変換674は、第1の実施形態における極性判別器650のピーク値検出器651、絶対値演算部652、減算部653、座標変換部654とそれぞれ同様の処理を実施する。
位置演算部675は、座標変換674から出力されるΔPα、ΔPβを入力として、前述の式(18)に従い第二の磁極位置θest2を演算する。第三の磁極位置演算部670は、位置演算部675により演算された第二の磁極位置θest2を第四の磁極位置演算部680へ出力する。
図11は、第四の磁極位置演算部680の主たる機能を示した構成図である。第四の磁極位置演算部680は、減算処理部681、絶対値処理部682、閾値判定部683、初期磁極位置算出部684を備える。
減算処理部681は、第一の磁極位置θest1と第二の磁極位置θest2との差を求める。絶対値処理部682は、第一の磁極位置θest1と第二の磁極位置θest2との差の絶対値を求める。そして、閾値判定部683は、第一の磁極位置θest1と第二の磁極位置θest2との差の絶対値が所定の範囲にあるときはS極とし、所定の範囲外にあるときはN極と判定する。ここで、所定の範囲とは、第二の磁極位置θest2の誤差を考慮して設定しておけば良く、例えば第一の磁極位置θest1と第二の磁極位置θest2の差の絶対値が90~270度の範囲である。
初期磁極位置算出部684は、閾値判定部683でS極と判定された場合は、第一の磁極位置θest1に180度を加算した値を、N極と判定された場合は、第一の磁極位置θest1を、初期磁極位置θestとして出力する。
ここで、第1の実施形態で述べたように、第二の磁極位置θest2のみから極性NSを判別した場合、第二の磁極位置θest2は精度が低いため、極性NSを誤るおそれがある。例えば、第二の磁極位置θest2が0~180度の場合にN極、第二の磁極位置θest2が180~360度の場合にS極と決定すると、実際の初期磁極位置と第二の磁極位置θest2には誤差があるため、初期磁極位置θestが180度或いは360度付近において極性を誤ってしまう恐れがある。
一方で、本実施形態に示すように、第一の磁極位置θest1および第二の磁極位置θest2から極性NSを判別することにより、第二の磁極位置θest2の誤差を考慮することができるため、極性NSを誤らずに回転子の初期磁極位置θestを推定することができる。
本実施形態に示した極性NSの判別は、図3に示した電圧パルス印加中に極性を確定することができるため、初期磁極位置θestの推定に要する時間を最小化することが可能であり、好適である。ただし、第一の磁極位置θest1を演算した後に、一般に公知な方法を用いて極性を確定させても良いことは言うまでもない。
[第3の実施形態]
図12は、第3の実施形態に係る駆動装置100Bの構成図である。本実施形態の駆動装置100Bは、同期電動機200の停止中に、電力変換器300が同期電動機200の各相に正負のパルス電圧を順次印加するパルス電圧印加を、互いに異なるパルス幅で複数回行うものである。なお、図1に示す第1および第2の実施形態に係る駆動装置100Aの構成図と同一の個所には同一の符号を附してその説明を省略する。
第1および第2の実施形態では、電圧パルス作成部400Aにおける位相切替器420は、電圧指令作成部410で作成されたd軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*を三相の電圧指令に変換するための位相指令θ*を作成した。具体的には、同期電動機200の停止中に初期磁極位置θestを推定するための位相指令θ*として、0度(0ラジアン)、120度(2/3πラジアン)、240度(4/3πラジアン)を順に出力していた。これに対して、本実施形態では図12に示すように、駆動装置100Bは、電圧パルス作成部400Aに替えて、電圧パルス作成部400Bを備える。電圧パルス作成部400Bは、同期電動機200の停止中に、電力変換器300が同期電動機200に対してパルス電圧印加を互いに異なるパルス幅で複数回行うことができるように、位相指令θ*を生成して出力する。
電圧パルス作成部400Bから出力された位相指令θ*は、第1の実施形態で述べた磁極位置推定部600A、または第2の実施形態で述べた磁極位置推定部600Bに入力される。なお、本実施形態では磁極位置推定部600A、600Bのいずれを用いて初期磁極位置θestを推定しても良い。
図13は、第3の実施形態に係る電圧パルス作成部400Bの詳細な構成図である。電圧パルス作成部400Bは、電圧指令作成部410と、位相切替器420と、指令座標変換部430と、パルス幅・繰り返し数設定部440と、を備えている。なお、電圧指令作成部410、位相切替器420、指令座標変換部430については、第1の実施形態において電圧パルス作成部400Aが備えるものとそれぞれ同一である。
本実施形態の駆動装置100Bでは、磁極位置推定部600A、600Bにおいて、第1もしくは第2の実施形態で述べた一連の動作が繰り返し実行されることにより、初期磁極位置θestが推定される。本実施形態の電圧パルス作成部400Bにおいて、パルス幅・繰り返し数設定部440は、磁極位置推定部600A、600Bによる一連の動作の繰り返し回数Nmaxと、n回目の動作に対して電圧指令作成部410が出力するd軸電圧指令Vd*のパルス幅Dnとを出力する。ただしnは1以上Nmax以下の自然数である。なお、NmaxおよびDnの値は、パルス幅・繰り返し数設定部440において予め設定されていてもよいし、ユーザが任意に指定可能としてもよい。
第3の実施形態における駆動装置100Bの動作を、図14を参照して説明する。図14は、第3の実施形態における位相指令θ*と電圧指令および同期電動機200に流れる電流との関係を示す図である。図14では、パルス幅・繰り返し数設定部440から出力される繰り返し回数Nmaxを2とした場合の位相指令θ*、電圧指令、電流の例を示している。なお、図14(A)~図14(J)は、図3(A)~図3(J)とそれぞれ同じものを示している。
図14の場合、Nmax=2としているので、磁極位置推定部600A、600Bは、第1もしくは第2の実施形態で述べた初期磁極位置推定の一連の動作を2回行う。このときパルス幅・繰り返し数設定部440は、1回目の動作(第一のシーケンスとする)に対するd軸電圧指令Vd*のパルス幅をD1に設定している。一方、2回目の動作(第二のシーケンスとする)に対しては、第一のシーケンスと異なり、d軸電圧指令Vd*のパルス幅をD2としている。
本実施形態の電圧パルス作成部400Bにおいて、電圧指令作成部410は、パルス幅・繰り返し数設定部440から出力されるパルス幅D1、D2に基づき、図14(B)に示すように、これらのパルス幅に応じたd軸電圧指令Vd*を、第一のシーケンスと第二のシーケンスでそれぞれ作成する。これにより、図14(C)~図14(E)に示すように、第一のシーケンスにおいてはパルス幅D1で、第二のシーケンスにおいてはパルス幅D2で、正負にそれぞれ交番する三相の電圧指令Vu*、Vv*、Vw*が、指令座標変換部430から順次出力される。
本実施形態では、図14(F)~図14(H)に示すように、第一のシーケンスと第二のシーケンスにおいて、それぞれに対して設定されたパルス幅D1、D2に応じた三相電流Iu、Iv、Iwが同期電動機200に流れる。また、図14(I)~図14(J)に示すように、第一のシーケンスと第二のシーケンスにおいて、それぞれに対して設定されたパルス幅D1、D2に応じた三相電流の直交成分Iγ、Iδが同期電動機200に流れる。
第1の実施形態で述べたように、埋込磁石型同期電動機の場合、各相電流のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppには、突極性に起因した電流変化だけでなく、磁気飽和に起因した電流変化が生じてしまうため、これが初期磁極位置の誤差要因となっている。第1、第2の実施形態では、この誤差要因に対して直交成分Iδのピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppを利用することで、初期磁極位置θestの推定精度を改善していた。ところが、このように相電流に対する直交成分を利用した初期磁極位置θestの推定方法を採用しても、同期電動機200の構造や、電力変換器300を構成する半導体素子のばらつき等によっては、磁気飽和の影響を完全に排除できないことがある。
そこで、本実施形態の駆動装置100Bでは、電圧パルス作成部400Bにおいてパルス幅・繰り返し数設定部440を設けることで、同期電動機200の停止中に、電力変換器300が互いに異なるパルス幅D1、D2で、同期電動機200の各相に正負のパルス電圧を順次印加する。そして、磁極位置推定部600A、600Bにより、これらのパルス電圧印加に対してそれぞれ検出された各相電流のピーク値Iu+、Iu-、Iv+、Iv-、Iw+、Iw-に基づいて、初期磁極位置θestを推定するようにしている。
具体的には、磁極位置推定部600Aまたは600Bは、第一のシーケンスにおいてパルス幅D1で行われたパルス電圧印加に対して、第一のピークトゥピーク検出器610で求められた相電流Iu、Iv、Iwのピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppと、第二のピークトゥピーク検出器620で求められた各相電流の直交成分Iδのピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppとに基づき、第一の磁極位置演算部640により第一の磁極位置θest1を演算する。また、第二のシーケンスにおいてパルス幅D2で行われたパルス電圧印加に対して、前述の式(18)に従って第二の磁極位置θest2を求めることで、極性判別器650または第四の磁極位置演算部680により、回転子の磁石の極性がN極であるかS極であるかを判別する。こうして得られた第一の磁極位置θest1および極性判別結果に基づき、初期磁極位置θestを推定することができる。
このとき、第一のシーケンスのパルス幅D1を、例えば磁気飽和が発生しない程度に短くしておいて、予め磁気飽和の影響を極力小さくしておくことで、より磁気飽和の影響を受けにくくすることができる。しかしながら、磁気飽和が発生しないことにより、極性判別を誤る恐れがある。そこで、第二のシーケンスでは、パルス幅D2をD1よりも大きくして磁気飽和を発生させ、極性判別を確実なものとする。そして、第一のシーケンスで求まる第一の磁極位置θest1と、第二のシーケンスで求まる極性とを用いて、初期磁極位置θestを求めることにより、高精度に初期磁極位置θestを求めることが可能となる。
本実施形態では、以上説明したように、電圧パルス作成部400Bにおいてパルス幅・繰り返し数設定部440を設けることにより、初期磁極位置θestの推定精度をより向上することができる。
なお、本実施形態の駆動装置100Bにおいて、電圧パルス作成部400Bのパルス幅・繰り返し数設定部440により設定される繰り返し回数Nmaxを2以上とし、磁極位置推定部600A、600Bがそれぞれのシーケンスで推定した初期磁極位置θestの値から、最終的な初期磁極位置θestの推定結果を確定してもよい。具体的には、各シーケンスにおける初期磁極位置θestを磁極位置推定部600A、600Bにおいて記憶しておくことにより、繰り返し回数Nmaxに応じた複数の初期磁極位置θestを取得する。そして、取得した複数の初期磁極位置θestに対して、例えば平均化処理や収斂計算など所定の統計処理を行うことにより、最終的な初期磁極位置θestの推定結果を求めることが可能となる。これ以外にも、種々の応用が可能である。
[第4の実施形態]
図15は、第4の実施形態に係る駆動装置100Cの構成図である。本実施形態の駆動装置100Cは、同期電動機200の磁極位置を検出する位置センサ210を備え、同期電動機200の停止中に推定した初期磁極位置θestと、位置センサ210で検出された磁極位置とを比較することで、位置センサ210の異常の有無を判定するものである。なお、図1に示す第1および第2の実施形態に係る駆動装置100Aの構成図と同一の個所、および図12に示す第3の実施形態に係る駆動装置100Bの構成図と同一の個所には、同一の符号を附してその説明を省略する。
本実施形態では、同期電動機200は、同期電動機200の磁極位置を検出する位置センサ210を備えている。位置センサ210で検出された磁極位置は、比較部700の一方へ入力される。比較部700の他方には、第1の実施形態で述べた磁極位置推定部600A、または第2の実施形態で述べた磁極位置推定部600Bで推定した初期磁極位置θestが入力される。磁極位置推定部600A、600Bは、第1の実施形態で述べた電圧パルス作成部400A、または第3の実施形態で述べた電圧パルス作成部400Bから出力される位相指令θ*を用いて、初期磁極位置θestを推定する。なお、本実施形態では磁極位置推定部600A、600Bのいずれを用いて初期磁極位置θestを推定しても良い。比較部700は、同期電動機200が停止中に、推定した初期磁極位置θestと位置センサ210で検出された磁極位置とを比較し、比較結果に基づいて位置センサ210の異常の有無を判定する。
レゾルバなどの位置センサ210は、その出力巻線の断線或いは短絡によって故障することがある。同期電動機200が回転している場合には、その故障を検出できるが、同期電動機200が停止中には故障を検出することは困難であった。第1、第2の実施形態でそれぞれ説明した磁極位置推定部600A、600Bは、同期電動機200の停止中に初期磁極位置θestを推定できるので、同期電動機200が停止している場合にも位置センサ210の故障を検知することができる。これにより、より信頼性の高い同期電動機200の駆動装置100Cを提供することができる。
第1の実施形態から第4の実施形態では、電圧パルス作成部400A、400B、磁極位置推定部600A、600B、比較部700等はハードウエアとして説明したが、コンピュータとプログラムによってその機能を実現してもよい。そして、プログラムを、CPU、メモリなどを備えたコンピュータにより処理することができる。その全部の処理、または一部の処理をハードロジック回路により実現してもよい。更に、このプログラムは、記憶媒体やデータ信号(搬送波)などの種々の形態のコンピュータ読み込み可能なコンピュータプログラム製品として供給してもよい。
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)同期電動機200の駆動装置100A、100B、100Cは、同期電動機200の各相に正負の電圧を順次印加して同期電動機200を駆動する電力変換器300と、同期電動機200に流れる相電流を検出する電流検出部500と、電流検出部500で検出された相電流に基づいて同期電動機200の回転子の磁極位置を推定する磁極位置推定部600A、600Bと、を備える。磁極位置推定部600A、600Bは、相電流の最大値と最小値の差分を表す第一のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppを検出する第一のピークトゥピーク検出器610と、相電流に対する直交成分Iδを検出する直交成分検出器630と、直交成分Iδの最大値と最小値の差分を表す第二のピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppを検出する第二のピークトゥピーク検出器620とを備える。そして、同期電動機200の停止中に、第一のピークトゥピーク検出器610により検出された第一のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppと、第二のピークトゥピーク検出器620により検出された第二のピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppとに基づいて、第一の磁極位置演算部640により第一の磁極位置θest1を演算し、この第一の磁極位置θest1に基づいて、第二の磁極位置演算部660または第四の磁極位置演算部680により回転子の初期磁極位置θestを推定する。このようにしたので、同期電動機200が埋込磁石型同期電動機・表面磁石型同期電動機のいずれであっても、同期電動機200の停止中に、同期電動機200の回転子の初期磁極位置θestを高精度に推定することができる。
(2)磁極位置推定部600Aは、回転子の磁石の極性NSを判別する極性判別器650をさらに備え、極性判別器650により判別された極性NSと第一の磁極位置θest1に基づいて、第二の磁極位置演算部660により初期磁極位置θestを推定する。このようにしたので、回転角に対して1/2倍の周期で現れる突極性によるインダクタンスの変化を利用した第一の磁極位置θest1から、初期磁極位置θestを正確に推定することができる。
(3)極性判別器650は、相電流の最大値と最小値のそれぞれの絶対値の減算値ΔIu、ΔIv、ΔIwに基づいて極性NSを判別する。このようにしたので、同期電動機200の磁気飽和の度合いから極性NSを正確に判別することができる。
(4)磁極位置推定部600Bは、同期電動機200の停止中に、相電流の最大値と最小値のそれぞれの絶対値の減算値ΔIu、ΔIv、ΔIwから、第三の磁極位置演算部670により第二の磁極位置θest2を演算し、第一の磁極位置θest1および第二の磁極位置θest2から、第四の磁極位置演算部680により回転子の磁石の極性を判別し、判別した極性と第一の磁極位置θest1に基づいて回転子の初期磁極位置θestを推定する。このようにしたので、初期磁極位置θestの推定に要する時間を最小化しつつ、初期磁極位置θestを高精度に推定することができる。
(5)駆動装置100Bにおいて、電力変換器300は、同期電動機200の停止中に、電圧パルス作成部400Bから出力される電圧指令Vu*、Vv*、Vw*に応じて、同期電動機200の各相に正負のパルス電圧を順次印加するパルス電圧印加を、互いに異なるパルス幅で複数回行う。磁極位置推定部600A、600Bは、電力変換器300により行われた複数回のパルス電圧印加に対してそれぞれ検出された相電流の最大値と最小値に基づいて初期磁極位置θestを推定する。具体的には、磁極位置推定部600A、600Bは、第一のパルス幅D1で行われたパルス電圧印加に対して検出された相電流の最大値と最小値に基づく第一のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppと、当該相電流に対する直交成分の最大値と最小値に基づく第二のピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppとに基づいて、第一の磁極位置θest1を演算する。また、第一のパルス幅D1よりも大きい第二のパルス幅D2で行われたパルス電圧印加に対して検出された相電流の最大値と最小値のそれぞれの絶対値の減算値ΔIu、ΔIv、ΔIwに基づいて、回転子の磁石の極性NSを判別する。こうして得られた第一の磁極位置θest1の演算結果および極性NSの判別結果に基づいて、初期磁極位置θestを推定する。あるいは、磁極位置推定部600A、600Bは、複数回のパルス電圧印加に対して初期磁極位置θestの推定をそれぞれ行うことで複数の初期磁極位置θestを取得し、取得した複数の初期磁極位置θestに基づいて初期磁極位置θestの推定結果を確定する。このようにしたので、初期磁極位置θestの推定精度をより一層向上することができる。
(6)駆動装置100Cにおいて、同期電動機200は、同期電動機200の磁極位置を検出する位置センサ210を備える。また、同期電動機200の駆動装置100Cは、磁極位置推定部600A、600Bにより得られる初期磁極位置θestと、位置センサ210により得られる磁極位置とを比較する比較部700を備える。比較部700は、同期電動機200が停止中に、比較部700による比較結果に基づいて位置センサ210の異常の有無を判定する。このようにしたので、同期電動機200が停止している場合にも位置センサ210の故障を検知し、より信頼性の高い同期電動機200の駆動装置を提供することができる。
(7)同期電動機200の駆動方法は、同期電動機200の各相に正負の電圧を順次印加して同期電動機200を駆動する電力変換器300と、同期電動機200に流れる相電流を検出する電流検出部500とを備えた同期電動機200の駆動装置100A、100B、100Cにおける同期電動機200の駆動方法である。この同期電動機200の駆動方法は、同期電動機200の停止中に、電流検出部500により検出された相電流の最大値と最小値の差分を表す第一のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppと、相電流に対する直交成分Iδの最大値と最小値の差分を表す第二のピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppとを取得し、取得した第一のピークトゥピーク値Iupp、Ivpp、Iwppと第二のピークトゥピーク値Iδupp、Iδvpp、Iδwppとに基づいて第一の磁極位置θest1を演算し、演算した第一の磁極位置θest1に基づいて同期電動機200の回転子の初期磁極位置θestを推定する。これにより、同期電動機200が埋込磁石型同期電動機・表面磁石型同期電動機のいずれであっても、同期電動機200の停止中に、同期電動機200の回転子の初期磁極位置θestを高精度に推定することができる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えてもよく、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えてもよい。
100A、100B、100C…駆動装置、200…同期電動機、210…位置センサ、300…電力変換器、400A、400B…電圧パルス作成部、410…電圧指令作成部、420…位相切替器、430…指令座標変換部、440…パルス幅・繰り返し数設定部、500…電流検出部、600A、600B…磁極位置推定部、610…第一のピークトゥピーク検出器、620…第二のピークトゥピーク検出器、630…直交成分検出器、640…第一の磁極位置演算部、650…極性判別器、651…ピーク値検出器、652…絶対値演算部、653…減算部、654…座標変換部、655…極性演算部、660…第二の磁極位置演算部、670…第三の磁極位置演算部、671…ピーク値検出器、672…絶対値演算部、673…減算部、674…座標変換、675…位置演算部、680…第四の磁極位置演算部、681…減算処理部、682…絶対値処理部、683…閾値判定部、684…初期磁極位置算出部、700…比較部。

Claims (9)

  1. 同期電動機の各相に正負の電圧を順次印加して前記同期電動機を駆動する電力変換器と、前記同期電動機に流れる相電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部で検出された相電流に基づいて前記同期電動機の回転子の磁極位置を推定する磁極位置推定部と、を備えた同期電動機の駆動装置において、
    前記磁極位置推定部は、
    前記相電流の最大値と最小値の差分を表す第一のピークトゥピーク値を検出する第一のピークトゥピーク検出器と、
    前記相電流に対する直交成分を検出する直交成分検出器と、
    前記直交成分の最大値と最小値の差分を表す第二のピークトゥピーク値を検出する第二のピークトゥピーク検出器と、を備え、
    前記同期電動機の停止中に、前記第一のピークトゥピーク検出器により検出された前記第一のピークトゥピーク値と、前記第二のピークトゥピーク検出器により検出された前記第二のピークトゥピーク値とに基づいて、第一の磁極位置を演算し、
    前記第一の磁極位置に基づいて前記回転子の初期磁極位置を推定する、同期電動機の駆動装置。
  2. 請求項1に記載の同期電動機の駆動装置において、
    前記磁極位置推定部は、前記回転子の磁石の極性を判別する極性判別器をさらに備え、前記極性判別器により判別された前記極性と前記第一の磁極位置に基づいて前記初期磁極位置を推定する、同期電動機の駆動装置。
  3. 請求項2に記載の同期電動機の駆動装置において、
    前記極性判別器は、前記相電流の最大値と最小値のそれぞれの絶対値の減算値に基づいて前記極性を判別する、同期電動機の駆動装置。
  4. 請求項1に記載の同期電動機の駆動装置において、
    前記磁極位置推定部は、前記同期電動機の停止中に、前記相電流の最大値と最小値のそれぞれの絶対値の減算値から第二の磁極位置を演算し、前記第一の磁極位置および前記第二の磁極位置から前記回転子の磁石の極性を判別し、判別した前記極性と前記第一の磁極位置に基づいて前記回転子の初期磁極位置を推定する、同期電動機の駆動装置。
  5. 請求項1に記載の同期電動機の駆動装置において、
    前記電力変換器は、前記同期電動機の停止中に、前記同期電動機の各相に正負のパルス電圧を順次印加するパルス電圧印加を、互いに異なるパルス幅で複数回行い、
    前記磁極位置推定部は、前記電力変換器により行われた複数回の前記パルス電圧印加に対してそれぞれ検出された前記相電流の最大値と最小値に基づいて前記初期磁極位置を推定する、同期電動機の駆動装置。
  6. 請求項5に記載の同期電動機の駆動装置において、
    前記磁極位置推定部は、
    第一のパルス幅で行われた前記パルス電圧印加に対して検出された前記相電流の最大値と最小値に基づく前記第一のピークトゥピーク値と、当該相電流に対する直交成分の最大値と最小値に基づく前記第二のピークトゥピーク値とに基づいて、前記第一の磁極位置を演算し、
    前記第一のパルス幅よりも大きい第二のパルス幅で行われた前記パルス電圧印加に対して検出された前記相電流の最大値と最小値のそれぞれの絶対値の減算値に基づいて、前記回転子の磁石の極性を判別し、
    前記第一の磁極位置の演算結果および前記極性の判別結果に基づいて前記初期磁極位置を推定する、同期電動機の駆動装置。
  7. 請求項5に記載の同期電動機の駆動装置において、
    前記磁極位置推定部は、複数回の前記パルス電圧印加に対して前記初期磁極位置の推定をそれぞれ行うことで複数の前記初期磁極位置を取得し、取得した複数の前記初期磁極位置に基づいて前記初期磁極位置の推定結果を確定する、同期電動機の駆動装置。
  8. 請求項1に記載の同期電動機の駆動装置において、
    前記同期電動機は、前記同期電動機の磁極位置を検出する位置センサを備え、
    前記同期電動機の駆動装置は、前記磁極位置推定部により得られる前記初期磁極位置と、前記位置センサにより得られる磁極位置とを比較する比較部を備え、
    前記比較部は、前記同期電動機が停止中に、前記比較部による比較結果に基づいて前記位置センサの異常の有無を判定する、同期電動機の駆動装置。
  9. 同期電動機の各相に正負の電圧を順次印加して前記同期電動機を駆動する電力変換器と、前記同期電動機に流れる相電流を検出する電流検出部とを備えた同期電動機の駆動装置における同期電動機の駆動方法であって、
    前記同期電動機の停止中に、前記電流検出部により検出された前記相電流の最大値と最小値の差分を表す第一のピークトゥピーク値と、前記相電流に対する直交成分の最大値と最小値の差分を表す第二のピークトゥピーク値とを取得し、前記第一のピークトゥピーク値と前記第二のピークトゥピーク値とに基づいて第一の磁極位置を演算し、前記第一の磁極位置に基づいて前記同期電動機の回転子の初期磁極位置を推定する、同期電動機の駆動方法。
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