JP2022141297A - 音響室 - Google Patents
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Abstract
【課題】空間内の利便性や意匠性を損なわずに定在波を抑制する。【解決手段】音音響室1Aは、奥行方向と、幅方向と、高さ方向の、各寸法が定められている音響室1Aであって、奥行方向の寸法と高さ方向の寸法が略等しく形成されている。そして、開口された一方端3aと閉塞された他方端3bとを有し、一方端3aから他方端3bまでが奥行方向の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管3Aを備えている。そして、音響管3Aは、奥行方向で互いに対向する2つの横壁1a、1bのうち横壁1bで当該横壁1bと一方端3aが連結されて音響空間2の外側へ延在するとともに、一方端3aが高さ方向に延びるように配置されている。【選択図】図3
Description
本発明は、所定の音響空間を有する音響室に関する。
音響空間に定在波が発生すると、特定の周波数の音が強調されたり、減衰して聴こえたりするため、音響空間の周波数特性に偏りが発生する。
定在波を抑制する方法としては、例えば特許文献1に音響空間としてスピーカのキャビネット内に音響管を設けることが提案されている。特許文献1には、スピーカユニットのキャビネット内の内部空間において、複数の壁面のうちの少なくとも一の壁面に沿って形成される、略一様な中空断面を有すると共に一方の端部に開口部を有する音響管と、当該音響管の開口部を塞いで、内部空間と音響管の内部空間とを隔離する吸音材と、を備え、音響管は、内部空間において発生する定在波のうち、一の壁面に沿って発生する定在波の最低共振モードに対応する波長の略1/(4n)(nは2以上の自然数)倍の管長を有し、開口部が、定在波の粒子速度分布の節の近傍に位置するように配されている。
特許文献1に記載された発明を、例えばスタジオ等の音の聴取者が収容される空間に適用すると、スタジオ内に音響管を設置することとなる。音響管の管長は定在波の波長に応じて決定されるので、当該空間内の利便性や意匠性に影響を及ぼす場合がある。
本発明が解決しようとする課題としては、空間内の利便性や意匠性を損なわずに定在波を抑制することが一例として挙げられる。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、第1の方向と、前記第1の方向と交わる第2の方向と、前記第1の方向、前記第2の方向それぞれと交わる第3の方向と、の各寸法が定められている音響空間を有する音響室であって、前記第1の方向の寸法と前記第2の方向の寸法が略等しく形成されており、開口された第1の端部と閉塞された第2の端部とを有し、前記第1の端部から前記第2の端部までが前記第1の方向の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管を備え、前記音響管は、前記第1の方向で互いに対向する2つの壁面のうち一方の壁面で当該壁面と前記第1の端部が連結されて前記音響空間の外側へ延在するとともに、前記第1の端部が前記第2の方向に延びるように配置されていることを特徴としている。
請求項2に記載の発明は、6面の壁により奥行と幅と高さとが定められ、前記奥行の寸法、前記幅の寸法及び前記高さの寸法が略等しい音響空間を有する音響室であって、開口された第1の端部と閉塞された第2の端部とを有し、前記第1の端部から前記第2の端部までが前記奥行の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管を備え、前記音響管は、前記奥行側の一方の壁面で当該壁面と前記第1の端部が連結されて前記音響空間の外側へ延在するとともに、前記第1の端部が前記一方の壁面の中心を含むように配置されていることを特徴としている。
請求項7に記載の発明は、第1の方向と、第1の方向と、前記第1の方向と交わる第2の方向と、前記第1の方向、前記第2の方向それぞれと交わる第3の方向と、の各寸法が定められている音響空間を有する音響室における音響調整方法であって、前記音響室の前記第1の方向の寸法と前記第2の方向の寸法が略等しく形成されている場合、開口された第1の端部と閉塞された第2の端部とを有し、前記第1の端部から前記第2の端部までが前記第1の方向の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管を、前記第1の方向で互いに対向する2つの壁面のうち、一方の壁面で当該壁面と前記第1の端部が連結されて前記音響空間の外側へ延在させるとともに、前記第1の端部が前記第2の方向に延びるように配置することを特徴としている。
請求項8に記載の発明によれば、6面の壁により奥行と幅と高さとが定められている音響空間を有する音響室における音響調整方法であって、前記奥行の寸法、前記幅の寸法及び前記高さの寸法が略等しく形成されている場合、開口された第1の端部と閉塞された第2の端部とを有し、前記第1の端部から前記第2の端部までが前記奥行の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管を、前記奥行側の一方の壁面で当該壁面と前記第1の端部が連結されて前記音響空間の外側へ延在させるとともに、前記第1の端部が前記一方の壁面の中心を含むように配置することを特徴としている。
以下、本発明の一実施形態にかかる音響室を説明する。本発明の一実施形態にかかる音響室は、第1の方向と、第1の方向と交わる第2の方向と、第1の方向、第2の方向それぞれと交わる第3の方向の、各寸法が定められている音響空間を有する音響室である。この音響室は、第1の方向の寸法と第2の方向の寸法が略等しく形成され、開口された第1の端部と閉塞された第2の端部とを有し、第1の端部から第2の端部までが第1の方向の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管を備えている。そして、音響管は、第1の方向で互いに対向する2つの壁面のうち一方の壁面で当該壁面と第1の端部が連結されて当該音響空間の外側へ延在するとともに、第1の端部が第2の方向に延びるように配置されている。このようにすることにより、例えば奥行、幅、高さの各寸法が定められている部屋において、奥行と幅が略等しい場合、奥行と高さが略等しい場合などにおいて、定在波を抑制することができる。また、音響管を音響空間内に設置する必要が無いので、音響空間内の利便性や意匠性を損なわない。
また、本発明の他の実施形態にかかる音響室は、6面の壁により奥行と幅と高さとが定められ、奥行の寸法、幅の寸法及び高さの寸法が略等しい音響空間を有する音響室である。この音響室は、開口された第1の端部と閉塞された第2の端部とを有し、第1の端部から第2の端部までが奥行の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管を備えている。そして、音響管は、奥行側の一方の壁面で当該壁面と第1の端部が連結されて当該音響空間の外側へ延在するとともに、第1の端部が一方の壁面の中心を含むように配置されている。このようにすることにより、例えば奥行、幅、高さの各寸法が定められている部屋において、全ての寸法が略等しい場合において、定在波を抑制することができる。また、音響管を音響空間内に設置する必要が無いので、音響空間内の利便性や意匠性を損なわない。
また、音響管は、音響空間を構成する壁面から直線状に突出して設けられていてもよい。このようにすることにより、音響管を直管とすることができる。したがって、音響管内における反射の影響を少なくして効率良く定在波を抑制することができる。
また、音響管は、第1の端部及び第2の端部と直交する一の側面が音響空間を構成する壁面に沿うように設けられてもよい。このようにすることにより、音響管の突出量を少なくでき、音響室として構成する全体の大きさを抑えることができる。
また、音響管は、複数が並べて配置されていてもよい。例えば、縦長や横長の形状の音響管を1つ設ける場合は、1つの音響管のサイズが大きくなる場合があり、運搬や施工に手間がかかることがある。そこで、音響管を複数に分割して並べて配置することで、音響管の運搬や施工が行い易くなる。また、施工現場において、音響管の本数を変更することで、音響空間の特性を調整することも可能となる。
また、音響管は、第2の端部が別体に構成されていてもよい。このようにすることにより、例えば、第2の端部を蓋状の部品とすることで、音響管の長さを調節することができる。したがって、施工現場において、音響空間の特性を調整することが容易となる。また、胴部分と蓋部分に分けることで、胴部分を共通部品とすることができる。
また、本発明の一実施形態にかかる音響調整方法は、第1の方向と、第1の方向と交わる第2の方向と、第1の方向、第2の方向それぞれと交わる第3の方向の、各寸法が定められている音響空間を有する音響室における音響調整方法である。この音響調整方法は、音響室の第1の方向の寸法と第2の方向の寸法が略等しく形成されている場合に、開口された第1の端部と閉塞された第2の端部とを有し、第1の端部から第2の端部までが第1の方向の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管を、第1の方向で互いに対向する2つの壁面のうち、一方の壁面で当該壁面と第1の端部が連結されて当該音響空間の外側へ延在させるとともに、第1の端部が第2の方向に延びるように配置する。このようにすることにより、例えば奥行、幅、高さの各寸法が定められている部屋において、奥行と幅が略等しい場合、奥行と高さが略等しい場合などにおいて、定在波を抑制することができる。また、音響管を音響空間内に設置する必要が無いので、音響空間内の利便性や意匠性を損なわない。
また、本発明の他の実施形態にかかる音響調整方法は、6面の壁により奥行と幅と高さとが定められている音響空間を有する音響室において音響調整方法である。この音響調整方法は、奥行の寸法、幅の寸法及び高さの寸法が略等しく形成されている場合、開口された第1の端部と閉塞された第2の端部とを有し、第1の端部から第2の端部までが奥行の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管を、奥行側の一方の壁面で当該壁面と第1の端部が連結されて当該音響空間の外側へ延在させるとともに、第1の端部が一方の壁面の中心を含むように配置する。このようにすることにより、例えば奥行、幅、高さの各寸法が定められている部屋において、全ての寸法が略等しい場合において、定在波を抑制することができる。また、音響管を音響空間内に設置する必要が無いので、音響空間内の利便性や意匠性を損なわない。
本発明の第1の実施例にかかる音響室を図1~図5を参照して説明する。本実施例にかかる音響室1は、例えばスタジオに設けられる防音室などの、建造物に設けられる部屋である。
ここで、以降の説明において、図1に示したx軸の方向(x方向)を幅方向、y軸の方向(y方向)を奥行方向、z軸の方向(z方向)を高さ方向と呼ぶ。x方向はy方向、z方向と直交し、y方向はx方向、z方向と直交し、z方向はx方向、y方向と直交する。
まず、本実施例を説明する前に本発明に係る音響室での定在波の削減原理について説明する。
まず、本実施例を説明する前に本発明に係る音響室での定在波の削減原理について説明する。
音響室1は、横壁1a、1b、1c、1dと、天井1eと、床面1fと、により囲まれた空間により音響空間2を形成する。なお、以降の説明では、横壁1a、1b、1c、1dに限らず、天井1e、床面1fも合わせて壁面と称する。横壁1aと横壁1bとは互いに向き合っている(対向している)。また、横壁1cと横壁1dとは互いに向き合っている(対向している)。そして、音響室1は、幅(x)方向よりも奥行(y)方向の方が長くなっている。即ち、音響室は、各方向の長さが異なる、直方体状に形成されている。
横壁1a、1b、1c、1dや天井1e及び床面1fの材質は、防音室に用いられるものに限らず、一般的な家屋等の部屋に用いられる材質であってもよい。
音響室1の内部(音響空間2)には、スピーカ11、12と、テーブル13、14と、ソファ等の椅子15と、が設置されている。
音源としてのスピーカ11、12は、横壁1aに設置され、椅子15に着席している聴取者に向けて音を放射(放音)する。椅子15は、横壁1b側に設置され、聴取者がスピーカ11、12に向かって着席することができる。つまり、スピーカ11、12は、横壁1bに向かって放音している。テーブル14は音響空間2の略中央、テーブル13は横壁1aとテーブル14の中間にそれぞれ設置されている。
横壁1bには、音響管3が設けられている。音響管3は、一方端(第1の端部)3aが開口されるとともに他方端(第2の端部)3bが閉塞される直方体状の中空管である。音響管3は、図1に示したように、横壁1bから音響空間2の外部へ直線状に突出するように設けられている(延在している)。音響管3は、横壁1b等と同じ材質(木材等)で形成すればよいが、塩化ビニル樹脂等の異なる材質で形成してもよい。また、音響室1の用途や特性に応じて音響管3内壁の材質を変更することにより吸音率を調整することができる。例えば吸音率を小さくすると後述する定在波の抑制効果が大きくなる。一方、吸音率を大きくすると周波数特性を滑らかにすることができる。
また、音響管3は、開口された一方端3a側で横壁1bと接続されている。横壁1bには音響管3と接続される位置に開口が形成されており、横壁1bで音響管3が接続されることで、音響管3の内部空間が音響空間2と空間的に連結される。
また、音響管3は、横壁1bよりも幅方向が狭く、高さ方向も小さい。そして、音響管3は、一方端から他方端までの長さは、音響空間の長さの略1/2となっている(図2を参照)。
図2に示したように、音響管3の奥行(y)方向の長さ(管長)L1は、音響空間2の奥行方向の長さHの略1/2となっている。この管長L1は、音響管3の一方端から他方端までの長さである。音響管3をこのような長さに設定することにより音響空間2内に生じる定在波を抑えることができる。
図2は、音響空間2に生じる定在波と音響管3によって生じる共振波を模式的に表した図である。音響空間2内の奥行方向には、横壁1a及び横壁1bを音圧分布が最大となる位置とし、奥行方向の長さHをλ/2(λ:波長)とする最低共振モード及びその高次モードが定在波として生じる。つまり、音響空間2では、横壁1aから横壁1bの2つの壁面間に音響路が形成されている。そして、音響管3は、音響路長(H)の略1/2倍の管長を有している。
ここで、音響路とは、一般的には、対向する壁面間に、壁面と垂直に直線状に形成される。ただし、周囲の壁が歪んでいたり、障害物がある場合等には、必ずしも対向する壁面間に限られず、また直線状にも限られない。すなわち、本実施例による対策を取らない場合に定在波が発生する経路が音響路となる。
また、音響管3の一方端3aは音響空間2内の奥行方向に生じる定在波の音圧分布が最大となる位置に配されている。したがって、音響管3は、スピーカ11、12から放音される音波によって管共振し、その管長に対応する共振波を生じる。この共振波は、音響管3の閉塞された他方端3bで音圧分布が最大となる位置となり、開口部である一方端3a付近で音圧分布が最小となる位置となるように生じる共振波である。
図2は、音響空間2の長さHがλ/2となる定在波110(つまり、奥行方向に生じる定在波のうちの最低共振モード)が生じる場合を示している。図2において、音響空間2内に定在波110が生じるが、この場合に音響管3は管長L1が定在波110の約1/4波長分の長さを有するので、管共振により定在波110の約1/4波長分の共振波112が生じる。
定在波110及び共振波112は、音圧が大きく分布する位置に近いほど音響インピーダンスが高くなり、音圧が小さく分布する位置に近いほど音響インピーダンスが低くなる。そこで、図2に示すように共振波112の音圧が最小となる位置が定在波110の音圧が最大となる位置の近傍に配される。つまり、定在波110に開口端部でそれとは逆位相の音圧分布を有する共振波112が付加されると、共振波112は定在波110によって生じる音響空間2内の音圧の分布差を緩和することになり、音響管3が定在波110の振幅を抑制することになる。
図3に本実施例にかかる音響室1Aを示す(テーブル13、14や椅子15等は省略する)。音響室1Aは、基本的な構造は図1と同様であるが、奥行(y)方向の寸法と高さ(z)方向の寸法とが略等しくなっている。また、音響管3Aは、図1に示したような横長(x方向に延びる)に形成されているのではなく、縦長(z方向に延びる)に形成されている。なお、音響管3Aの管長L1は図1と同様に音響空間の長さ(y方向)の略1/2となっている。
即ち、本実施例では、奥行方向が第1の方向、高さ方向が第2の方向、幅方向が第3の方向となっている。そして、音響管3Aは、一端部が第2の方向である高さ方向に延びるように配置されている。
また、音響管3Aの設置位置は、図3に示すような幅(x)方向の中央に限らず、幅方向で左右にずらしてもよい。また、音響管3Aは、横壁1bでなく横壁1aに設けてもよい。本実施例では、音響管3Aが設置された壁面と、その壁面と対向する壁面とを結ぶ方向を奥行とする。
次に、本実施例にかかる音響室1Aにおいて、音響管3Aを設置したことによる効果を図4及び図5を参照して説明する。図4及び図5は、音響室1Aの固有モードの音圧分布を示した図である。また、図4及び図5で固有モードの解析に用いた音響室1Aは、奥行方向の寸法を2.2m、高さ方向の寸法を2.2m、幅方向の寸法を1.8mとしている。また、図4及び図5においては、色が濃くなるほど音圧が小さくなることを示している。なお、図4及び図5においては、奥行方向の寸法と高さ方向の寸法が一致する例を示しているが、図4及び図5のような傾向を示すのであれば、厳密に一致しなくても良く近い値であってもよい。
図3に示した音響室1Aにおける1次の固有モード周波数は、奥行方向が77.8Hz、幅方向が98.3Hz、高さ方向が77.8Hzとなる。つまり、奥行方向と高さ方向の周波数が一致しているため、固有モード分布(音圧分布)は一方向にはならず図4及び図5に示した2つの分布となる。なお、実際の音場は、音源位置に応じて2つの固有モード分布に重みづけがされ重ね合わされて形成される。例えば、図3では、音源であるスピーカ11は、横壁1bに対向する横壁1aの下部中央に設置されているので、その位置に応じた重みづけがされる。なお、図4及び図5は音響室1A自体が有する固有の特性であるのでスピーカ11の位置には影響されない。
図3の音響室1Aは、図4及び図5に示したように、横壁1bの上端や下端に音圧が小さく分布する部分があり、その中間部分に音圧が大きく分布する部分があるため、図3のような縦長の音響管3Aを設けることで、確実に音圧が大きく分布する部分をカバーすることができる。したがって、奥行方向の寸法と高さ方向の寸法とが略等しい音響室1Aにおいて、図2に示したように定在波に開口端部でそれとは逆位相の音圧分布を有する共振波を付加することができ、共振波により定在波によって生じる音響空間内の音圧の分布差を緩和して、音響管3Aが定在波の振幅を抑制することができる。
また、上記した音響室1Aのように音響管3Aを配置することで、音響室の第1の方向の寸法と第2の方向の寸法が略等しく形成されている場合、開口された第1の端部と閉塞された第2の端部とを有し、第1の端部から第2の端部までが第1の方向の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管を、第1の方向で互いに対向する2つの壁面のうち、一方の壁面で当該壁面と第1の端部が連結されて音響空間の外側へ延在させるとともに、第1の端部が第2の方向に延びるように配置することを特徴とする音響調整方法を実行することとなる。
本実施例によれば、音響室1Aは、奥行方向と、幅方向と、高さ方向の、各寸法が定められている音響室1Aであって、奥行方向の寸法と高さ方向の寸法が略等しく形成されている。そして、開口された一方端3aと閉塞された他方端3bとを有し、一方端3aから他方端3bまでが奥行方向の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管3Aを備えている。そして、音響管3Aは、奥行方向で互いに対向する2つの横壁1a、1bのうち横壁1bで当該横壁1bと一方端3aが連結されて音響空間2の外側へ延在するとともに、一方端3aが高さ方向に延びるように配置されている。このようにすることにより、奥行、幅、高さの各寸法が定められている部屋において、奥行と高さが略等しい場合において、定在波を抑制することができる。また、音響管3Aを音響空間内に設置する必要が無いので、音響空間2内の利便性や意匠性を損なわない。
また、音響管3Aは、音響空間を構成する壁面から直線状に突出して設けられている。このようにすることにより、音響管3Aを直管とすることができる。したがって、音響管内における反射の影響を少なくして効率良く定在波を抑制することができる。
次に、本発明の第2の実施例にかかる音響室を図6~図8を参照して説明する。なお、前述した第1の実施例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
図6に本実施例にかかる音響室1Bを示す。音響室1Bは、基本的な構造は第1の実施例と同様であるが、奥行(y)方向の寸法と幅(x)方向の寸法とが略等しくなっている。また、音響管3Bは、図1に示したような横長(x方向に延びる)に形成されている。なお、音響管3Bの管長L1は図1と同様に音響空間の長さ(y方向)の略1/2となっている。
即ち、本実施例では、奥行方向が第1の方向、幅方向が第2の方向、高さ方向が第3の方向となっている。そして、音響管3Aは、一端部が第2の方向である幅方向に延びるように配置されている。
また、音響管3Bの設置位置は、図6に示すような高さ(z)方向の中央に限らず、高さ方向で上下にずらしてもよい。勿論音響管3Bは、横壁1bでなく横壁1aに設けてもよい。
次に、本実施例にかかる音響室1Bにおいて、音響管3Bを設置したことによる効果を図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8は、音響室1Bの固有モードの音圧分布を示した図である。また、図7及び図8で固有モードの解析に用いた音響室1Bは、奥行方向の寸法を2.2m、高さ方向の寸法を1.8m、幅方向の寸法を2.2mとしている。また、図7及び図8においても、図4、図5と同様に色が濃くなるほど音圧が小さくなることを示している。なお、図7及び図8においては、奥行方向の寸法と幅方向の寸法が一致する例を示しているが、図7及び図8のような傾向を示すのであれば、厳密に一致しなくても良く近い値であってもよい。
図3に示した音響室1Aにおける1次の固有モード周波数は、奥行方向が77.8Hz、幅方向が77.8Hz、高さ方向が98.3Hzとなる。つまり、奥行方向と幅方向の周波数が一致しているため、固有モード分布(音圧分布)は一方向にはならず図7及び図8に示した2つの分布となる。なお、実際の音場は、音源位置に応じて2つの固有モード分布に重みづけがされ重ね合わされて形成される。なお、図7及び図8は音響室1B自体が有する固有の特性であるのでスピーカ11の位置には影響されない。
図3の音響室1Aは、図7及び図8に示したように、横壁1bの左端や右端に音圧が小さく分布する部分があり、その中間部分に音圧が大きく分布する部分があるため、図6のような横長の音響管3Aを設けることで、確実に音圧が大きく分布する部分をカバーすることができる。したがって、奥行方向の寸法と幅方向の寸法とが略等しい音響室1Bにおいて、図2に示したように定在波に開口端部でそれとは逆位相の音圧分布を有する共振波を付加することができ、共振波により定在波によって生じる音響空間内の音圧の分布差を緩和して、音響管3Bが定在波の振幅を抑制することができる。
本実施例によれば、音響室は、奥行方向と、幅方向と、高さ方向の、各寸法が定められている音響室1Bであって、奥行方向の寸法と幅方向の寸法が略等しく形成されている。そして、開口された一方端3aと閉塞された他方端3bとを有し、一方端3aから他方端3bまでが奥行方向の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管3Bを備えている。そして、音響管3Bは、奥行方向で互いに対向する2つの横壁1a、1bのうち横壁1bで当該横壁1bと一方端3aが連結されて当該音響空間の外側へ延在するとともに、一方端3aが幅方向に延びるように配置されている。このようにすることにより、奥行、幅、高さの各寸法が定められている部屋において、奥行と幅が略等しい場合において、定在波を抑制することができる。また、音響管3Bを音響空間内に設置する必要が無いので、音響空間内の利便性や意匠性を損なわない。
次に、本発明の第3の実施例にかかる音響室を図9~図13を参照して説明する。なお、前述した第1、第2の実施例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
本実施例にかかる音響室は、奥行(y)方向の寸法、幅(x)方向の寸法、高さ(z)方向の寸法が全て略等しくなっている。本実施例にかかる音響管は、図3に示した縦長(z方向に延びる)、図6に示した横長(x方向に延びる)のいずれでもよく、幅方向、高さ方向にずらしても良いが、壁面の略中心を通るように設けるのが好ましい。なお、音響管の管長L1は図1と同様に音響空間の長さ(y方向)の略1/2となっている。また、本実施例においても音響管は、横壁1bでなく横壁1aに設けてもよい。
即ち、奥行の寸法、幅の寸法及び高さの寸法が略等しい音響室であって、音響管の一方端3aが一方の壁面である横壁1bの中心を含むように配置されている。
次に、本実施例にかかる音響室において、音響管を設置したことによる効果を図9~図11を参照して説明する。図9~図11は、本実施例の音響室の固有モードの音圧分布を示した図である。また、図9~図11で固有モードの解析に用いた音響室は、奥行方向の寸法、高さ方向の寸法、幅方向の寸法の全てが2.2mとしている。また、図9~図11においても、先の実施例と同様に色が濃くなるほど音圧が小さくなることを示している。なお、図9~図11においては、奥行方向の寸法、幅方向の寸法及び高さ方向の寸法が一致する例を示しているが、図9~図11のような傾向を示すのであれば、厳密に一致しなくても良く近い値であってもよい。
本実施例にかかる音響室における1次の固有モード周波数は、奥行方向、幅方向、高さ方向ともに77.8Hzとなる。つまり、奥行方向、幅方向、高さ方向の周波数が一致しているため、固有モード分布(音圧分布)は一方向にはならず。図9~図11に示した3つの分布となる。なお、実際の音場は、音源位置に応じて3つの固有モード分布に重みづけがされ重ね合わされて形成される。なお、図9~図11は音響室1C自体が有する固有の特性であるのでスピーカ11の位置には影響されない。
本実施例にかかる音響室は、図9~図11に示したように、横壁1bの中心以外に音圧が小さく分布する部分があり、横壁1bの中心部分に音圧が大きく分布する部分があるため、図3や図6に示した形状で壁面の中心を通るよう設けることで、確実に音圧が大きく分布する部分をカバーすることができる。したがって、奥行方向の寸法と幅方向の寸法と高さ方向の寸法とが略等しい音響室において、図2に示したように定在波にそれとは逆の音圧分布を有する共振波を付加することができ、共振波により定在波によって生じる音響空間内の音圧の分布差を緩和して、音響管が定在波の振幅を抑制することができる。
なお、本実施形態では、音響管は、上述したように横壁1bの中心部分を通るような形状、つまり、横壁1bの中心部分が一端部と接続される部分に含まれるような形状であればよい。そのため、図12や図13に示したように横壁1bの中心部分で接続するようにしてもよい。図12に示した音響室1Cは、横壁1bの中心部分に円筒状の音響管3Cが設けられている。また、図13に示した音響室1Dは、横壁1bの中心部分に四角柱状の音響管3Dが設けられている。
なお、図12に示した形態や図13に示した形態は第1の実施例や第2の実施例でも有効である。つまり、第1の実施例や第2の実施例においても、横壁1bの中心部に音響管を設けてもよい。これは、図4、図5、図7及び図8に示したように、音圧が大きく分布する位置に音響管を設置することになるからである。
また、本実施例にかかる音響室に音響管3Cや3Dを配置することで、奥行の寸法、幅の寸法及び高さの寸法が略等しく形成されている場合、開口された第1の端部と閉塞された第2の端部とを有し、第1の端部から第2の端部までが奥行の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管を、奥行側の一方の壁面で当該壁面と第1の端部が連結されて音響空間の外側へ延在させるとともに、第1の端部が一方の壁面の中心を含むように配置することを特徴とする音響調整方法を実行することとなる。
本実施例によれば、6面の壁により奥行と幅と高さとが定められ、奥行の寸法、幅の寸法及び高さの寸法が略等しい音響室1C、1Dであって、開口された一方端3aと閉塞された他方端3bとを有し、一方端3aから他方端3bまでが奥行の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管3C、3Dを備えている。そして、音響管3C、3Dは、奥行側の一方の横壁1bで当該横壁1bと一方端3aが連結されて当該音響空間の外側へ延在するとともに、一方端3aが一方の横壁1bの中心を含むように配置されている。このようにすることにより、奥行、幅、高さの各寸法が定められている部屋において、全ての寸法が略等しい場合において、定在波を抑制することができる。また、音響管3C、3Dを音響空間内に設置する必要が無いので、音響空間内の利便性や意匠性を損なわない。
なお、音響管は、一端部及び他端部と直交する一の側面が音響空間を構成する壁面に沿うように設けられてもよい。このようにすることにより、音響管の突出量を少なくでき、音響室として構成する全体の大きさを抑えることができる。具体例を図14に示す。
図14は、音響管を壁面に沿うように設けた例である。図14は、図6に示した構成に対して横壁1bに沿って設けた例である。図14において、音響管3Bは、音響管3Bの閉塞された他方端3bが上向きになるように音響管3Bの側面を構成する面3cが横壁1bと向き合っている。なお、横壁1bと面3cとは接触していてもよいし、隙間が空いていてもよい。
そして、音響管3Bの開口された一方端3aには、継手3dが取り付けられている。継手3dは、横壁1bの開口部と音響管3Bの一方端3aとを接続する部品である。継手3dは、上向きになる一方端3aを90度曲げて横壁1bの開口部と連結する中空状の管であり、実質的に一方端3aを延長するものである。
なお、図14は、図6に示した構成に基づいていたが、勿論図3や図12、図13に示した構成について壁面に沿うように構成してもよい。壁面に沿う方向も図14のような上向きに限らず、下向きや右向き、左向きであってもよい。
また、音響管を直線状以外の形状とするものとしては、図14に示した構成以外に、音響管の任意の箇所に湾曲部を設けるようにしてもよい。このような湾曲部を設ける具体例としては、渦巻き状に形成することが挙げられる。このようにすることにより、音響管の実寸を抑えつつ管長を稼ぐことができる。そのため、例えば壁の隙間等に音響管を設置することも可能となる。
また、音響管は、複数が並べて配置されていてもよい。具体例を図15示す。図15は、図3に示した音響管3Aを音響管3Eに置き換えたものである。音響管3Eは、複数の音響管3E1~3E10からなる。そして、音響管3E1~3E10を縦に一列に並べるように配置することで、図3の構成と同様の効果を得ることができる。
図3に示した縦長や図6に示した横長の形状の音響管を1つ設ける場合は、1つの音響管のサイズが大きくなる場合があり、運搬や施工に手間がかかることがある。そこで、図15に示した音響管3Eのように、複数の音響管3E1~3E10に分割して並べて配置されることで、音響管の運搬や施工が行い易くなる。また、施工現場において、音響管の本数を変更することで、音響空間の特性を調整することも可能となる。
また、音響管は、第2の端部が別体に構成されていてもよい。図16に具体例を示す。図16は、音響管3の他方端3bを示した図である。図16において、他方端3bは、蓋体3gとして形成されており、音響管3の胴部3fとは別体となっている。胴部3fは、一方端3aを有し、図16では円筒状に形成されている。蓋体3gは、音響管3の他方端3bとして、音響管3を閉塞する円形の底部3g1と、底部3g1の円の周囲から立設した側面部3g2と、を備えている。そして、側面部3g2が胴部3fの端部を内側に収容することで、胴部3fを閉塞して音響管3となる。蓋体3gは、接着剤やテープ等の周知の方法により胴部3fに固定される。
図16に示したように構成することにより、他方端3bを蓋体3gとすることで、例えば、胴部3fと蓋体3gとの接合位置を調整したり、側面部3g2の長さが異なる蓋体3gに変更したりすることにより音響管3の長さを調節することができる。したがって、施工現場において、音響空間の特性を調整することも可能となる。また、図15に示したように複数の音響管から構成される場合は音響管ごとに調整可能となり、対象となる音響室に応じた調整が可能となる。また、胴部3fと蓋体3gに分けることで、胴部3fを共通部品とすることができる。
また、本発明は上記実施例に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の音響室を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
1A~1E 音響室
1a 横壁(2つの壁面)
1b 横壁(2つの壁面)
2 音響空間
3A~3D 音響管
3E 音響管(複数が並べて配置されている)
3a 一方端(第1の端部)
3b 他方端(第2の端部)
3g 蓋体(第2の端部が別体に構成されている)
1a 横壁(2つの壁面)
1b 横壁(2つの壁面)
2 音響空間
3A~3D 音響管
3E 音響管(複数が並べて配置されている)
3a 一方端(第1の端部)
3b 他方端(第2の端部)
3g 蓋体(第2の端部が別体に構成されている)
Claims (8)
- 第1の方向と、前記第1の方向と交わる第2の方向と、前記第1の方向、前記第2の方向それぞれと交わる第3の方向と、の各寸法が定められている音響空間を有する音響室であって、
前記第1の方向の寸法と前記第2の方向の寸法が略等しく形成されており、
開口された第1の端部と閉塞された第2の端部とを有し、前記第1の端部から前記第2の端部までが前記第1の方向の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管を備え、
前記音響管は、前記第1の方向で互いに対向する2つの壁面のうち一方の壁面で当該壁面と前記第1の端部が連結されて前記音響空間の外側へ延在するとともに、前記第1の端部が前記第2の方向に延びるように配置されていることを特徴とする音響室。 - 6面の壁により奥行と幅と高さとが定められ、前記奥行の寸法、前記幅の寸法及び前記高さの寸法が略等しい音響空間を有する音響室であって、
開口された第1の端部と閉塞された第2の端部とを有し、前記第1の端部から前記第2の端部までが前記奥行の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管を備え、
前記音響管は、前記奥行側の一方の壁面で当該壁面と前記第1の端部が連結されて前記音響空間の外側へ延在するとともに、前記第1の端部が前記一方の壁面の中心を含むように配置されていることを特徴とする音響室。 - 前記音響管は、前記一方の壁面から直線状に突出して設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の音響室。
- 前記音響管は、前記第1の端部及び前記第2の端部と直交する一の側面が前記一方の壁面に沿うように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の音響室。
- 前記音響管は、複数が並べて配置されていることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の音響室。
- 前記音響管は、前記第2の端部が別体に構成されていることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の音響室。
- 第1の方向と、前記第1の方向と交わる第2の方向と、前記第1の方向、前記第2の方向それぞれと交わる第3の方向と、の各寸法が定められている音響空間を有する音響室における音響調整方法であって、
前記音響室の前記第1の方向の寸法と前記第2の方向の寸法が略等しく形成されている場合、
開口された第1の端部と閉塞された第2の端部とを有し、前記第1の端部から前記第2の端部までが前記第1の方向の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管を、前記第1の方向で互いに対向する2つの壁面のうち、一方の壁面で当該壁面と前記第1の端部が連結されて前記音響空間の外側へ延在させるとともに、前記第1の端部が前記第2の方向に延びるように配置することを特徴とする音響調整方法。 - 6面の壁により奥行と幅と高さとが定められている音響空間を有する音響室における音響調整方法であって、
前記奥行の寸法、前記幅の寸法及び前記高さの寸法が略等しく形成されている場合、
開口された第1の端部と閉塞された第2の端部とを有し、前記第1の端部から前記第2の端部までが前記奥行の寸法の略1/(2n)倍(nは1以上の自然数)の管長を有する音響管を、前記奥行側の一方の壁面で当該壁面と前記第1の端部が連結されて前記音響空間の外側へ延在させるとともに、前記第1の端部が前記一方の壁面の中心を含むように配置することを特徴とする音響調整方法。
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JP2021041524A Pending JP2022141297A (ja) | 2021-03-15 | 2021-03-15 | 音響室 |
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- 2021-03-15 JP JP2021041524A patent/JP2022141297A/ja active Pending
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