JP2022140345A - Vリブドベルト、動力伝達機構、及びvリブドベルトの製造方法 - Google Patents

Vリブドベルト、動力伝達機構、及びvリブドベルトの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】長手方向に伸張可能なVリブドベルトにおいて、高湿環境で保管された後、治具による伸張装着法でプーリレイアウトに装着された場合でも、走行時に十分な張力を維持可能なVリブドベルトを提供する。【解決手段】ベルト長手方向に沿って延びる複数のリブ3が、内周側の圧縮層2に形成された環状のベルト本体10と、ベルト本体10の長手方向に沿って埋設された心線6とを備えたVリブドベルト1に関して、心線6は、脂肪族ポリアミド繊維を含む繊維で形成された撚糸コードであり、Vリブドベルト1を3.5%伸張させるのに必要な応力が1リブ当たり290~360Nであり、且つ、当該Vリブドベルト1に147Nの初荷重をかけ、100°Cの雰囲気下30分放置した後に発生した、5本の心線6あたりの応力(N)で定義される、ベルト乾熱時収縮応力が、125~200Nである。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば自動車エンジンの補機駆動システムに適用される、Vリブドベルトに関する。
自動車エンジンや一般産業機械の駆動用として、摩擦伝動ベルトが広く用いられている。摩擦伝動ベルトとしては、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルトなどが例示でき、摩擦伝動ベルトは、プーリの歯溝部とベルトの歯部との機械的な嵌合により動力を伝達する歯付ベルトをはじめとする噛み合い伝動ベルトとは区別して用いられている。中でも、Vリブドベルトは伝動容量の高さと耐屈曲疲労性を両立できることから、自動車エンジンの補機駆動用として汎用されている。
伝動ベルトの分野では、ベルトの伸びやすさの指標として、「伸長率」や「弾性率」で表す。「伸長率」は伸びやすさであり、「弾性率」は伸びにくさであって、裏返しの関係にある。すなわち、「低い弾性率(低モジュラス)」と「高い伸長率(高伸長)」とは同じことを表す。
伝動ベルトでは、プーリにベルトを装着する張力によって、伝達性能、耐久寿命、省燃費性などに大きく影響するために、走行しても張力を維持する必要がある。しかし、走行中にベルトが伸びて緩むと張力が低下しまうので、基本的には伸びないベルト、すなわちモジュラスの高い(低伸長)ベルトが適する。特に、走行条件の厳しい用途ほど、「高モジュラス(低伸長)」化したベルトが必要になる。
このような観点で、伝動ベルトでは、弾性率(モジュラス)の水準によって、グレードが層別される。ベルトの弾性率は、心線に用いる繊維材料の選択が最も大きく影響し、Vリブドベルトの場合、代表的な心線は、ポリエステル繊維を「標準」グレードとして、よりモジュラスの高い(低伸長)グレードとしてアラミド繊維、標準よりもモジュラスが低いグレードとして脂肪族ポリアミド(ナイロン)繊維が汎用されている。本明細書では、標準よりもモジュラスが低い(高伸長)グレードのVリブドベルトを「低モジュラスベルト」と称す。
すなわち、「低モジュラスベルト」は、標準(心線がポリエステル繊維)のVリブドベルトよりも、弾性率の低い脂肪族ポリアミド繊維を主体にした心線を用いて、プーリへの装着に必要な若干の伸び(1~5%程度)を確保したベルトである。
次に、Vリブドベルトをプーリへ装着する方法について説明する。Vリブドベルトをプーリへ装着する方法には、以下の方法が適用されている。
(A)2つ以上のプーリ間に懸架した弛緩状態のベルトをテンショナ(テンションプーリ)で押す、または引っ張ることで、ベルトに張力を付与する。
(B)ベルトを2つ以上のプーリ間に懸架した弛緩状態で、少なくとも1つのプーリ軸を移動させて、プーリの軸間距離を拡げることで、ベルトに張力を付与する。
(C)プーリ間のレイアウト周長よりも若干短いベルトを、1つのプーリに懸架した状態で、治具を使ってベルトを伸張(1~5%程度)させながら、他のプーリにベルトを嵌めていく(治具による伸張装着法)。
このうち、上記(C)の方法で、「治具を使って伸張させながら、他のプーリにベルトを嵌めていく」という装着操作は、モジュラスの高い標準(心線がポリエステル繊維)のVリブドベルトではできない。そのために必要な若干の伸びを確保したベルトが「低モジュラスベルト」である。
低モジュラスベルトについては、特許文献1において、伝動ベルトの装着対象である互いに離隔配置された2以上の回転体(プーリ)のレイアウト周長に対して2.0~3.5%短い基準周長を有し、前記回転体に装着したときの前記周長方向の張力が30~150N/リブであることを特徴とする伝動ベルト(低モジュラスベルト)が開示されている。
この伝動ベルトでは、回転体への装着後にも十分な張力を維持可能であり、伝動ベルト及び回転体を含む動力伝達機構の駆動開始後の早い段階において伝動ベルトが伸びることなく、動力伝達を確実に行うことができる。また、低モジュラスベルトは、モジュラスの高いベルトと比較して急激な張力低下が抑制されること、また、装着対象であるプーリの軸間距離を固定したまま、且つ張力付与機構(テンションプーリ、テンショナ等)を用いないプーリレイアウトに装着する方法(上記(C)の治具による伸張装着法)を採用できるという利点がある。この方法の採用により、上記(A)(B)のような張力付与機構や軸間距離を拡げる機構が不要になり、エンジンの軽量化やコストダウンに貢献する。
特開2011―012790号公報
特許文献1には、低モジュラスベルトにおいて、ベルトの装着時張力を一定以上の水準に確保することで、当該プーリレイアウトへの装着後において十分な張力を維持可能である、旨が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の低モジュラスベルトにおいて、治具による伸張装着法で、ベルトの装着時張力を一定以上の水準に確保することで、プーリレイアウトへ装着した後の急激な張力低下を抑制し、十分な張力を維持可能にできるのは、比較的低湿な環境(例えば23℃×50%)で保管されたベルトが当該プーリレイアウトに装着された場合に限られる。
一方、比較的高湿な環境(例えば23℃×90%)で保管されたベルトが当該プーリレイアウトに装着された場合には、比較的低湿な環境(例えば23℃×50%)で保管されたベルトが当該プーリレイアウトに装着された場合と比較して、走行時に十分なベルト張力を維持できなくなる(つまりベルト張力保持率が大きく低下する)可能性があることがわかった。
これは、心線(脂肪族ポリアミド繊維)の吸水によるベルト物性(モジュラス)の低下に起因するものであると考えられた。
本発明の目的は、長手方向に伸張可能なVリブドベルトにおいて、高湿環境で保管された後、治具による伸張装着法でプーリレイアウトに装着された場合でも、走行時に十分な張力を維持可能なVリブドベルトを提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明は、ベルト長手方向に沿って延びる複数のリブが、内周側の圧縮層に形成された環状のベルト本体と、前記ベルト本体の長手方向に沿って前記ベルト本体に埋設された心線と、を備えたVリブドベルトであって、
前記心線は、脂肪族ポリアミド繊維を含む繊維で形成された撚糸コードであり、
当該Vリブドベルトを3.5%伸張させるのに必要な応力が1リブ当たり290~360Nであり、且つ、当該Vリブドベルトに147Nの初荷重をかけ、100°Cの雰囲気下30分放置した後に発生した、心線5本あたりの応力(N)で定義される、ベルト乾熱時収縮応力が、125~200Nであることを特徴としている。
上記構成によれば、低モジュラスベルトとして、心線に脂肪族ポリアミド繊維を含む繊維で形成された撚糸コードを用い、Vリブドベルトを3.5%伸張させるのに必要な応力(3.5%モジュラス)が290~360N/リブと比較的低い水準に抑えられているため、プーリ間のレイアウト周長がVリブドベルトの基準周長よりも若干長いドライブシステムに、治具による伸張装着法でVリブドベルトを取り付けるのが容易という効果を得ることができる。
それとともに、上記モジュラスを比較的低い水準に抑えているにもかかわらず、ベルト乾熱時収縮応力が125~200Nと比較的高い水準に確保されるため、比較的低湿な環境(例えば23℃×50%)で保管されたVリブドベルトが治具による伸張装着法でプーリレイアウトに装着された場合のみならず、比較的高湿な環境(例えば23℃×90%)で保管された(心線部分が吸水した)Vリブドベルトが、治具による伸張装着法でプーリレイアウトに装着された場合であっても、走行時の急激な張力低下を抑制し、十分なベルト張力を維持できる効果(詳細には、心線の吸水によりモジュラスが低下し伸び易い状態となるが、収縮応力が十分に大きい水準に確保されているためVリブドベルトの伸びを抑制して、ベルト張力保持率の低下を抑制できる効果)を得ることができる。
また、本発明は、上記Vリブドベルトにおいて、前記リブの少なくとも一部が、当該Vリブドベルトが巻き掛けられるプーリと接触可能な摩擦伝動面を有し、
前記摩擦伝動面は、圧縮層に積層された表層を有していることを特徴としてもよい。
上記構成によれば、要求特性に応じて、摩擦伝動面の性状を改質することができる。さらに、摩擦伝動面に表層を有するVリブドベルトが、治具による伸張装着法でプーリレイアウトに装着された場合であっても、走行時の急激な張力低下を抑制し、十分なベルト張力を維持できる効果を得ることができる。
また、本発明は、上記Vリブドベルトにおいて、前記表層が、繊維層、塗膜層、ゴム層、又は樹脂層であることを特徴としてもよい。
上記構成によれば、圧縮層との接着性が高く、圧縮層と一体化しやすい表層を、簡易な方法で設けることができる。
また、本発明は、上記Vリブドベルトと、
前記Vリブドベルトの装着対象である、互いに離隔配置された2以上のプーリと、を備え、
前記Vリブドベルトの装着前の基準周長が、前記2以上のプーリのレイアウト周長に対して1.0~3.5%短いことを特徴とする、動力伝達機構である。
上記構成によれば、低モジュラスベルトとして、心線に脂肪族ポリアミド繊維を含む繊維で形成された撚糸コード用い、ベルトを3.5%伸張させるのに必要な応力(3.5%モジュラス)が290~360N/リブと比較的低い水準に抑えられているため、互いに離隔配置された2以上のプーリのレイアウト周長がベルトの基準周長よりも1.0~3.5%長いドライブシステムに、治具による伸張装着法で容易にベルトを取り付けられ、且つベルトに充分な張力を付与できるという効果を得ることができる。
また、本発明は、上記Vリブドベルトの製造方法であって、
当該Vリブドベルトの原型となる、心線を含む未架橋ベルト前駆体を構成する積層材料を一体化して架橋ベルト前駆体を形成する、架橋工程は、
膨張可能なブラダを、所定の膨張率で膨張させて当該ブラダの外径を拡張させ、前記ブラダの外周側に巻き付けた前記心線を、前記ブラダの外径の拡張に追随して伸張させるステップを含み、
当該架橋工程における、前記心線を含む前記前駆体の伸張率が、1.0~4.0%の範囲であることを特徴とする。
上記製造方法によれば、製造後のVリブドベルトには、おのずと、心線の巻き付け時に心線に付与される張力(心線巻き付け張力)に起因する残留応力のみならず、架橋工程でのブラダの伸張に起因する残留応力が残った状態となる。これにより、乾熱時収縮応力を比較的高い水準に確実に確保できる。つまり、高湿環境で保管された(心線部分が吸水した)Vリブドベルトが、軸間距離固定で且つ張力付与機構を有さないプーリのレイアウトに装着された場合でも、走行時に急激な張力低下を抑制し、十分な走行時ベルト張力を維持(ベルト張力保持率の低下を抑制)できる効果を確実に得ることができる。
長手方向に伸張可能なVリブドベルトにおいて、高湿環境で保管された後、治具による伸張装着法でプーリレイアウトに装着された場合でも、走行時に十分な張力を維持可能なVリブドベルトを提供することができる。
図1は本発明のVリブドベルトの一例を示す概略断面図である。 図2は表層を有するVリブドベルト1の一例を示す概略断面図である。 図3は動力伝達機構の構成、及び、Vリブドベルトをプーリ間に装着する方法の説明図である。 図4はVリブドベルトをプーリ間に装着する方法の説明図である。 図5はVリブドベルトをプーリ間に装着する方法の説明図である。 図6はVリブドベルトをプーリ間に装着する方法の説明図である。 図7はVリブドベルトを製造するためのベルト成形装置の内型の一例を示す概略斜視図(a)およびその上側部分の拡大概略断面図(b)である。 図8は成形工程におけるベルト成形装置の状態を示す説明図である。 図9は内型に外型を組み合わせたベルト成形装置に関する図面であり、詳しくは、未架橋ベルト前駆体を装着した内型を外型に挿入する工程を示す概略斜視図(a)および内型を外型に挿入した状態を示す部分拡大概略断面図(b)である。 図10は架橋工程におけるベルト成形装置の状態を示しており、詳しくは、外型に内型を挿入したベルト成形装置のブラダを膨張させた状態の概略斜視図(a)およびその部分拡大概略断面図(b)である。 図11は仕上げ工程におけるベルト成形装置を示しており、ベルト成形装置から内型を抜き取る工程を示す概略斜視図(a)およびベルト成形装置から内型を抜き取った状態を示す部分拡大概略断面図(b)である。 図12はVリブドベルトの製造方法を説明する概念図である。 図13は実施例1~8および比較例1、3~4のVリブドベルトの、架橋工程でのベルト伸張率と、ベルト乾熱時収縮応力との関係線図である。
(実施形態)
以下、図面に基づき、本発明の実施形態の一例を説明する。
(Vリブドベルト1)
本実施形態のVリブドベルト1は、図1に示すように、ベルト下面(内周面)からベルト上面(外周面)に向かって順に、圧縮層2、心線6を埋設した接着層4、布帛(織物、編物、不織布など)又はゴム組成物で構成された伸張層5を積層した形態を有している。圧縮層2には、ベルト長手方向に延びる複数の断面V字状の溝が形成され、この溝の間には断面V字形(逆台形)の複数のリブ3(図1に示す例では4個)が形成されており、この各リブ3の二つの傾斜面(表面)が摩擦伝動面を形成し、プーリと接して動力を伝達(摩擦伝動)する。
なお、接着層4は、伸張層5及び圧縮層2との接着性を向上させる目的で設けられるが、必須のものではない。接着層4の形態としては、接着層4に心線6全体を埋設する形態でもよく、接着層4と伸張層5との間又は接着層4と圧縮層2との間に心線6を埋設する形態でもよい。また、図2のように、接着層を設けない形態でもよい。また、少なくとも圧縮層2が、以下に詳細に説明するゴム組成物で形成されていればよく、接着層4は、接着層4として利用される慣用のゴム組成物で形成されていればよい。伸張層5は、伸張層5として利用される慣用の布帛又はゴム組成物で形成されていればよく、圧縮層2と同一のゴム組成物でも異なるゴム組成物であってもよい。
また、別の形態として、図2に示すように、リブ3の表面、即ち圧縮層2の表面を表層7で被覆(積層)した形態であってもよい。この形態では、表層7がプーリと接する摩擦伝動面を構成する。同様に、図1に示すVリブドベルト1のリブ3の表面、即ち圧縮層2の表面を表層7で被覆(積層)した形態であってもよい。
上記のように、本発明のVリブドベルトは、ベルト長手方向に沿って延びる複数のリブ3が、内周側の圧縮層2に形成された環状のベルト本体10と、ベルト本体10の長手方向に沿ってベルト本体10に埋設された心線6とを備えていれば、特に制限されない。
(圧縮層2、伸張層5、接着層4:ゴム組成物)
圧縮層2、接着層4及び伸張層5は、ゴム成分を含むゴム組成物で形成されていてもよい。ゴム成分としては、加硫又は架橋可能なゴムを用いてよく、例えば、ジエン系ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴム等)、エチレン-α-オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらのゴム成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいゴム成分は、エチレン-α-オレフィンエラストマー(エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)等)、及び、クロロプレンゴムである。さらに、耐オゾン性、耐熱性、耐寒性、耐候性を有し、ベルト重量を低減できる点から、エチレン-α-オレフィンエラストマー(エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)等)が特に好ましい。ゴム成分がエチレン-α-オレフィンエラストマーを含む場合、ゴム成分中のエチレン-α-オレフィンエラストマーの割合は50質量%以上(特に80~100質量%程度)であってもよく、100質量%(エチレン-α-オレフィンエラストマーのみ)が特に好ましい。
ゴム組成物は、短繊維をさらに含んでいてもよい。短繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等)、ポリアミド繊維(ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維、アラミド繊維等)、ポリアルキレンアリレート系繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維等のC2-4アルキレンC8-14アリレート系繊維)、ビニロン繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維等の合成繊維;綿、麻、羊毛等の天然繊維;炭素繊維等の無機繊維等が挙げられる。これらの短繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ゴム組成物中での分散性や接着性を向上させるため、短繊維には、心線6と同様に、慣用の接着処理(又は表面処理)を施してもよい。
ゴム組成物は、慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、加硫剤又は架橋剤(硫黄系加硫剤、有機過酸化物、等)、共架橋剤(ビスマレイミド類等)、加硫助剤又は加硫促進剤(チウラム系促進剤等)、加硫遅延剤、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウム等)、補強剤(例えば、カーボンブラックや、含水シリカ等の酸化ケイ素)、充填剤(クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等)、軟化剤(例えば、パラフィンオイルや、ナフテン系オイル等のオイル類等)、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィン、脂肪酸アマイド等)、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤等)、着色剤、粘着付与剤、可塑剤、カップリング剤(シランカップリング剤等)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤等)、難燃剤、帯電防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、金属酸化物は架橋剤として作用してもよい。また、特に接着ゴム層4を構成するゴム組成物は、接着性改善剤(レゾルシン-ホルムアルデヒド共縮合物、アミノ樹脂等)を含んでいてもよい。
圧縮層2、接着層4及び伸張層5を構成するゴム組成物は、互いに同一であってもよく、互いに異なってもよい。同様に、圧縮層2、接着層4及び伸張層5に含まれる短繊維も、互いに同一であってもよく、互いに異なってもよい。
(伸張層5:布帛)
伸張層5は、布帛で形成されていてもよい。布帛は、例えば、織布、広角度織布、編布、不織布などの布材(好ましくは織布)などで形成でき、必要であれば、接着処理、例えば、RFL処理液で処理(浸漬処理など)したり、接着層用ゴム組成物を布材にすり込むフリクション処理や、接着層用ゴム組成物と布材とを積層(コーティング)した後、前記の形態で圧縮層2及び/又は接着層4に積層してもよい。
(表層7)
リブ3の表面、即ち圧縮層2の表面を表層7で被覆(積層)したVリブドベルト1においては、圧縮層2の表面を被覆しプーリと接する摩擦伝動面を構成する当該表層7は、圧縮層2に積層可能な形態(構造)であればよく、ベルトの要求特性に応じて適宜選択することで摩擦伝動面の性状を改質できる。
表層7の例としては、繊維層、樹脂層、ゴム層、塗膜層など挙げられる。
繊維層としては、布帛層や植毛層などが挙げられる。
樹脂層としては、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂が溶融固化して形成される樹脂単独のスキン層(フィルム層)や、繊維が混在した繊維樹脂混合スキン層(フィルム層)などが挙げられる。例えば、圧縮層2の表面に熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布を配置し、後述する架橋工程で加圧加熱して不織布を溶融した後、冷却固化することで、圧縮層2と一体化した熱可塑性樹脂によるスキン層(表層7)を形成できる。
ゴム層としては、圧縮層用ゴム組成物とは異なる表層用ゴム組成物であって、摩擦伝動面の性状を調整するための各種配合剤を添加したゴム組成物の架橋物が挙げられる。配合剤としては、滑剤として作用して摩擦状態を安定化する無機粒子(金属炭酸塩、クレー、タルクなど)や樹脂粒子(ポリオレフィン系樹脂粒子、フッ素系樹脂粒子など)、親水性(水との濡れ性)を高めるための可塑剤、界面活性剤、親水性樹脂粒子(ポリビニルアルコール系樹脂粒子、ポリビニルピロリドン系樹脂粒子、など)、摩擦伝動面の摩擦係数を下げるための短繊維、などが挙げられる。これらの配合剤を含む表層用ゴム組成物の未架橋ゴムシートを圧縮層2の表面に配置し、後述する架橋工程で加圧加熱することで圧縮層2と一体化した表面ゴム層(表層7)を形成できる。
塗膜層としては、上記ゴム層の配合剤として例示した各種粒子を散布又は吹き付けて形成する付着層や、各種粒子あるいは各種粒子を配合したゴム組成物を溶媒中に分散させた液状組成物を塗布して形成する塗布層が挙げられる。各種粒子を散布又は吹き付ける方法としては、慣用の粉体塗装方法(例えば、スプレーで吹き付ける静電塗装方法、粒子の流動層に浸漬する流動浸漬塗装法)を利用できる。液状組成物の塗布方法としては、慣用の方法、例えば、コーター法、流延法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、コーター法やスプレー法などが利用できる。圧縮層2の表面に、これらの操作(散布、吹き付け、塗布)を行った後、後述する架橋工程で加圧加熱することで圧縮層2と一体化した塗膜層(表層7)を形成できる。
この中でも、耐発音性、耐摩耗性、低摩擦係数などの高性能化の観点で、繊維層が好適に用いられ、特に布帛層が好ましい。圧縮層2の表面に布帛を配置し、後述する架橋工程で加圧加熱することで、圧縮層2と一体化した布帛層(表層7)を形成できる。布帛層は、通常、編布、織布、不織布などから選択された少なくとも1種の布帛が用いられる。これらの布帛のうち、耐久性や伸張性に優れる点から、編布が好適に用いられる。編布は、伸縮性に優れるため、摩擦伝動面の輪郭(リブ形状など)に沿わせて布帛層を積層するために好適である。さらに、架橋工程でのゴムの流れに追従して拡張し、圧縮層2のゴム組成物が摩擦伝動面に露出するのを防ぐことができる。
編布は、緯編であっても経編であってもよい。緯編は伸縮性に優れるので、編布が緯編である場合にはリブ形状が形成された摩擦伝動面に編布をより容易に添わせることができる。緯編で単層に編成されたものとしては、平編(天竺編)、ゴム編、タック編、パール編などが挙げられ、多層に編成されたものとしては、スムース編、インターロック編、ダブルリブ編、シングルピケ編、ポンチローマ編、ミラノリブ編、ダブルジャージ編、鹿の子編(表鹿の子、裏鹿の子、両面鹿の子)などが挙げられる。経編で単層に編成されたものとしては、シングルデンビー、シングルコードなどが挙げられ、多層に編成されたものとしては、ハーフトリコット、ダブルデンビー、ダブルアトラス、ダブルコード、ダブルトリコットなどが挙げられる。
また、編布を編成する糸には、単一の種類の繊維からなる糸(単一の糸)や複数の種類の繊維からなる糸(複合糸)を用いることができる。これらはそれぞれ単独で用いることができるが、編布に異なる特性を付与できることから、組み合わせて用いることが好ましく、例えば、編布はポリエステル系複合糸とセルロース系天然紡績糸(例えば綿糸)とで編成されていてもよい。ポリエステル系複合糸はポリエステル繊維と、ポリエステル繊維以外の繊維とを含む複合糸である。ポリエステル系複合糸は嵩高加工糸であってもよい。嵩高加工糸は、繊維にちぢれ(捲縮性)を生じさせたり、芯糸を別の糸でカバリングしたりして、断面の嵩を大きくした加工糸である。嵩高加工糸には、コンジュゲート糸、カバリング糸、捲縮加工糸、ウーリー加工糸、タスラン加工糸、インタレース加工糸などがあるが、ポリエステル系複合糸としては、コンジュゲート糸やカバリング糸が好ましい。
コンジュゲート糸は、2種類のポリマーを繊維軸方向に貼り合わせた断面構造を持ち、製造時や加工時に熱が加わると、両ポリマーの収縮率の違いにより捲縮が生じて嵩高い糸となる。例えばポリトリメチレンテレフタレート(PTT)とポリエチレンテレフタレート(PET)からなるコンジュゲート糸(PTT/PETコンジュゲート糸)や、ポリブチレンテレフタレート(PBT)とポリエチレンテレフタレート(PET)からなるコンジュゲート糸(PBT/PETコンジュゲート糸)がある。また、カバリング糸は、芯糸の周囲を別の糸で覆う(カバリング)することにより、糸全体の断面の嵩を大きくした糸である。例えば、伸縮性に優れたポリウレタン(PU)糸を芯として、その表面をポリエチレンテレフタレート(PET)で覆ったカバリング糸(PET/PUカバリング糸)や、PUを芯として、その表面をポリアミド(PA)で覆ったカバリング糸(PA/PUカバリング糸)がある。これらのうち、編布に含まれるポリエステル系複合糸としては、伸縮性や耐摩耗性に優れる、PTT/PETコンジュゲート糸又はPET/PUカバリング糸が好ましい。
セルロース系天然紡績糸は、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維(綿繊維(コットンリンター)、カポックなど)、ジン皮繊維(例えば、麻、コウゾ、ミツマタなど)、葉繊維(例えば、マニラ麻、ニュージーランド麻など)などの天然植物由来のセルロース繊維(パルプ繊維)、羊毛、絹、ホヤセルロースなどの動物由来のセルロース繊維、バクテリアセルロース繊維、藻類のセルロースなどを紡績した糸が例示できる。このうち、特に吸水性に優れる点で、綿繊維が好ましい。
セルロース系天然紡績糸の編成比率は好ましくは50~95質量%とされている。また、編布の編布組織は単層又は多層を使用することができ、ベルト本体10のゴムの滲み出しをより確実に防止するためには多層の編布組織が好ましい。
嵩高加工糸を含んで編布を編成することにより、編布の嵩高性を大きくすることができる。編布の嵩高性は、2.0cm3/g以上が好ましく、より好ましくは2.4cm3/g以上である。上限は特に限定されないが、例えば4.0cm3/g以下、又は3.5cm3/g以下であってよい。なお、嵩高性(cm3/g)は、編布の厚み(cm)を単位面積当たりの質量(g/cm2)で除したものである。また、ベルト本体10のゴムの摩擦伝動面への滲み出しをより確実に防止するためには、摩擦伝動面に前記編布の嵩高い層を設けることも好ましい。
編布を多層の編布組織とする場合は、編布の厚み方向で、吸水性に優れるセルロース系天然紡績糸を摩擦伝動面側の層に多く配することにより、摩擦伝動面での吸水性をより高めることができる。多層の編布を編成する場合に、一方の層をセルロース系天然紡績糸のみ、又は、セルロース系天然紡績糸とポリエステル系複合糸で編成し、他方の層をポリエステル系複合糸のみで編成することにより、一方の層にセルロース系天然紡績糸を多く配した多層編布を編成することもできる。セルロース系天然紡績糸を多く配した層を摩擦伝動面側に配置することにより、摩擦伝動面での吸水性をより高めることができる。
また、編布には、圧縮層2を構成するゴム組成物との接着性を向上させる目的で、接着処理を施してもよい。このような編布の接着処理としては、エポキシ化合物又はイソシアネート化合物を有機溶媒(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン等)に溶解させた樹脂系処理液への浸漬処理、レゾルシン-ホルマリン-ラテックス液(RFL液)への浸漬処理、ゴム組成物を有機溶媒に溶かしたゴム糊への浸漬処理が挙げられる。この他の接着処理の方法として、例えば、編布とゴム組成物とをカレンダーロールに通して編布にゴム組成物を刷り込むフリクション処理、編布にゴム糊を塗布するスプレディング処理、編布にゴム組成物を積層するコーティング処理等も採用することができる。このように編布を接着処理することにより、圧縮層2との接着性を向上させて、Vリブドベルト1の走行時の編布の剥離を防止することができる。また、接着処理をすることで、リブ3の耐摩耗性を向上させることもできる。
繊維層は植毛層であってもよい。植毛層は、公知の静電植毛機を用いて、圧縮層2の表面に静電植毛層を形成することができる。
上記のように、Vリブドベルト1の摩擦伝動面に表層7を有することにより、後述する治具による伸張装着法でVリブドベルト1をプーリレイアウトに装着した場合であっても、走行時の急激な張力低下を抑制し、十分なベルト張力を維持できる効果を得ることができる。
(心線6)
Vリブドベルト1のベルト本体10(接着層4)には、抗張体として機能する心線6がベルト長手方向に沿って埋設されている。心線6は、通常、ベルト長手方向に略平行に延びる撚糸コードが、ベルト幅方向に所定の間隔で並列的に延びて螺旋状に配設されている。螺旋状に配設する場合、ベルト長手方向に対する心線6の角度は、例えば5°以下であってもよく、ベルト走行性の点から、0°に近いほど好ましい。例えば、図1に示す態様では、心線6は接着層4のベルト幅方向の一方の端から他方の端にかけて、所定の間隔(又はピッチ)をおいて(又は等間隔で)埋設されている。隣接する心線6の中心間の距離である間隔(スピニングピッチ)は、心線径に応じて、心線径よりも大きければよく、例えば0.5~2mm、好ましくは0.7~1.7mm、さらに好ましくは0.8~1.5mm程度であってもよい。
心線6は、(標準グレードのポリエステル繊維よりも)弾性率を相対的に低くする観点から、原糸に脂肪族ポリアミド繊維(ナイロン繊維)を含む撚糸コードが用いられる。脂肪族ポリアミド繊維の例としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46等が挙げられる。例えば、800~1200dtexのフィラメント群を上撚り数8~13回/10cm、下撚り数15~30回/10cmで諸撚りした、総繊度4800~7200dtexの上記撚糸コードを用いることができる。なお、撚糸コードを構成する繊維は、脂肪族ポリアミド繊維を単独で用いても、他の繊維を併用してもよい。
心線6の平均直径(平均線径)は、例えば0.3~1.5mm、好ましくは0.5~1.3mm、さらに好ましくは0.7~1.2mm程度であってもよい。
(Vリブドベルト1の3.5%モジュラス及びベルト乾熱時収縮応力)
Vリブドベルト1は、当該Vリブドベルト1を3.5%伸張させるのに必要な応力(3.5%モジュラス)が、1つのリブ3当たり290~360N(290~360N/リブ)としている(後述する実施例等参照)。
更に、Vリブドベルト1は、当該Vリブドベルト1(詳細は後述するが、Vリブドベルト1から短冊状に切り出した、5本の心線6からなる測定試料)に147Nの初荷重をかけ、100°Cの雰囲気下30分放置した後に発生した、5本の心線6あたりの応力(N)で定義される、ベルト乾熱時収縮応力を、125~200Nとしている(後述する実施例等参照)。
Vリブドベルト1の3.5%モジュラスが290N/リブ未満である、もしくは/そしてベルト乾熱時収縮応力が125N未満である場合には、Vリブドベルト1のプーリレイアウトの装着時張力を一定以上の水準(30~150N/リブ)に確保したとしても、比較的高湿な環境(例えば23℃×90%)で保管されたVリブドベルト1が、治具による伸張装着法でプーリレイアウトに装着された場合(後述のプーリへの装着方法参照)に、走行時のベルト張力低下が大きく、当該プーリレイアウトへの装着後にVリブドベルト1の十分な走行時張力を維持することが困難となる他、負荷の度合いによってはVリブドベルト1の走行時にスリップや発音が生じ得る。
一方、Vリブドベルト1のベルト乾熱時収縮応力が200Nを超える場合には、ベルト寸法の経時収縮(乾熱時収縮を含む)が過大になる傾向がある。また、Vリブドベルト1の3.5%モジュラスが360Nより大きい場合、治具による伸張装着法でVリブドベルト1を3.5%伸張させて取り付けることが困難となる。
上記理由を踏まえて、本実施形態では、Vリブドベルト1の3.5%モジュラス及びベルト乾熱時収縮応力を上記範囲内にしている。
(Vリブドベルトのプーリへの装着方法)
次に、図3~6を参照し、本発明の一実施形態に係る動力伝達機構20の構成、及び、Vリブドベルト1をプーリ21、22に装着する方法について説明する。
動力伝達機構20は、例えば自動車エンジンの補機駆動システムに適用されるものであって、Vリブドベルト1、及び、同径の2つのプーリ21、22を含む構成である(プーリレイアウト)。プーリ21、22の各軸は固定されており、即ちこれらの軸間距離は変更不能である。プーリ21、22の外周面上には、Vリブドベルト1のリブ3と係合可能な円周方向に沿った溝が複数形成されている。Vリブドベルト1は、リブ3を内周側に、伸張層5を外周側にし、各プーリ21、22に巻回しつつこれらの間に架渡されるようにして、プーリ21、22に装着される。
一方のプーリ21は、エンジンの出力軸(レシプロエンジンのクランクシャフト、ロータリーエンジンのエキセントリックシャフト等)に連結された駆動プーリであり、他方のプーリ22は、各種補機(エアコン、ウォーターポンプ、オルタネータ等)に連結された従動軸に取り付けられた従動プーリである。出力軸のトルクによって駆動プーリ21が回転すると、当該駆動プーリ21の回転に伴ってVリブドベルト1が走行する。そしてVリブドベルト1の走行に伴って従動プーリ22が回転することにより、各種補機が駆動するように構成されている。
一方のプーリ21は、2段構成となっており、軸方向に積層された2つのプーリ21a、21bを有する。各プーリ21a、21bは、他方のプーリ22と同じサイズ及び形状を有する。これらプーリ21a、21bは一体となっており、動力伝達機構20の駆動時に共に回転する。プーリ21a、21b、22の軸方向長さはVリブドベルト1の幅と略同じであり、Vリブドベルト1は一方のプーリ21の下側プーリ21bと他方のプーリ22とに巻回されている。
Vリブドベルト1のプーリ21、22への装着は、例えば以下のような方法により行われる。
先ず、プーリ21、22のレイアウト周長Lpを取得する(取得ステップ)。
ここで、「プーリのレイアウト周長」とは、ベルトの装着対象である互いに離隔配置された2以上のプーリにおける、各プーリの外周を連結するように当該外周に沿って環状に形成された線(即ち、ベルトの経路)の長さをいう。本実施形態では、「プーリ21、22のレイアウト周長Lp」は、Vリブドベルト1の装着対象である互いに離隔配置されたプーリ21、22における、各プーリ21、22の外周を連結するように当該外周に沿って環状に形成された線(即ち、Vリブドベルト1の経路)の長さとなる。本実施形態においては、プーリ21、22が同径であってVリブドベルト1がプーリ21、22間において平行に延在するため、各プーリ21、22の半円周とプーリ21、22の軸間距離の2倍との和により、概略的に算出される。レイアウト周長Lpは、演算により取得してもよいし、実測等により取得してもよい。
次に、上記取得ステップにおいて取得されたレイアウト周長Lpに対して1.0~3.5%短い基準周長Lbを有するVリブドベルト1を準備する(準備ステップ)。
ここで、「ベルトの基準周長」とは、リブが形成された面を外側にした状態でベルトを2つの平プーリ(外周面に溝が形成されていないプーリ)に巻回しつつこれらの間に架渡されるように装着し、ベルトの長手方向の撓みが除去される程度の張力をベルトに付加したときの、ベルトの長手方向の長さをいう。本実施形態では、「ベルトの基準周長Lb」は、リブ3が形成された面を外側にした状態でVリブドベルト1を2つの平プーリ(外周面に溝が形成されていない回転体)に巻回しつつこれらの間に架渡されるように装着し、Vリブドベルト1の長手方向の撓みが除去される程度の張力をVリブドベルト1に付加したときの、Vリブドベルト1の長手方向の長さである。また、「基準周長Lbがレイアウト周長Lpに対して1.0~3.5%短い」とは、基準周長Lbと当該基準周長Lbの1.0~3.5%の長さとの和がレイアウト周長Lpに等しいことを意味する。
次に、上記準備ステップにおいて準備されたVリブドベルト1を長手方向に伸張させつつプーリ21、22に装着する(装着ステップ)。
装着ステップは、例えば図4~6に示すように、治具50を用いて行ってよい。即ち、先ず図4に示すように、一方のプーリ21のボス21cにレンチ60の連結部60aを固定し、治具50におけるプーリ21の外周に沿った湾曲形状を有する湾曲部51を上側プーリ21aの外周に沿わせつつ、平面視においてプーリ21、22の軸21x、22xを結ぶ線と軸21xと治具50とを結ぶ線とが略直角になるように、治具50を配置する。そしてVリブドベルト1を、治具50の当該湾曲部51と突出部52との間に挿入し且つガイド53に当接させつつ、他方のプーリ22とレンチ60の連結部60aとに架渡す。ガイド53は、治具50の本体50aにおける角部(図4において突出部52が突出した面の下端の辺)に丸みを付すことで形成されたものである。Vリブドベルト1は、ガイド53により屈曲され、ガイド53より下方の部分が下側プーリ21bの外周に沿うように配置される。
その後、治具50を上側プーリ21aに対して固定しつつ、レンチ60を用いてプーリ21をA方向に略110°回転させる(図5参照)。このとき上側プーリ21a及び下側プーリ21bは一体となって回転すると共に、上側プーリ21aに固定された治具50も軸21xに関してA方向に略110°回転する。また、この回転時においてVリブドベルト1に長手方向の引張力が徐々に付加されるが、このときVリブドベルト1に生ずる張力が治具50を上側プーリ21aに対して押圧するよう作用する。図5の状態において、Vリブドベルト1はレンチ60の連結部60aから離隔し、また、Vリブドベルト1における治具50の回転の軌跡に対応する部分は下側プーリ21bに巻回されている。
その後、図5に示す状態からさらにレンチ60を用いてプーリ21をA方向に略10°回転させると、図6に示すように、Vリブドベルト1は、引張力により蓄えられた弾性エネルギーが最小となるよう、治具50の湾曲部51と突出部52との間から下方に移動し、治具50及び上側プーリ21aから離隔して、下側プーリ21bに巻回される。この後、治具50を回収する。
上記のような装着ステップにおいて、Vリブドベルト1をプーリ21、22に装着したときのベルト長手方向の張力(Vリブドベルト1の装着時張力)は、100~250N/リブ程度の水準とする。本実施形態の装着方法により装着されたVリブドベルト1は、その周長が基準周長から1.0~3.5%伸張し、且つ、長手方向に100~250N/リブの張力を有しつつ、プーリ21、22に装着されている。
Vリブドベルト1の装着時張力が小さいと、Vリブドベルト1が長手方向に伸張し易く、プーリ21、22への装着後にVリブドベルト1が十分な張力を維持することが困難となる。一方、Vリブドベルト1の装着時張力が大きいと、Vリブドベルト1の装着作業が困難となるほか、プーリ21、22やそれらが取り付けられた軸の耐久性にも問題が生じる。
本実施形態のVリブドベルト1、動力伝達機構20によると、Vリブドベルト1の装着時張力を100~250N/リブとすることで、上記の問題を回避できる。
また、Vリブドベルト1の基準周長Lbをプーリ21、22のレイアウト周長Lpに対して1.0~3.5%短くしたことで、プーリ21、22への装着方法として、上記のように治具50によりVリブドベルト1を伸張させつつプーリ21、22に装着する方法、即ち、張力付与機構や軸間距離を移動させる機構が不要で、且つ装着作業が容易な方法を採用することができる。
Vリブドベルト1は、自動車用エンジンの補機駆動システムに適用されるものである。この場合、上記のとおり張力付与機構や軸間距離を移動させる機構が不要なため、エンジンの軽量化による省燃費化や低コスト化に貢献できる。
(Vリブドベルト1の製造方法)
本実施形態のVリブドベルト1は、図7~11に示す、外型81と、この外型81の中空部に挿入および脱着可能な内型71とを備えたベルト成形装置によって製造できる。
図7に示されているように、金型である内型71の形状は、円柱状または円筒状である。内型71の外周面には、ブラダ75が装着されている。このブラダ75は、伸縮自在でかつ気密性を有するゴム組成物の架橋体で形成されている。このブラダ75は、長手方向の両端面(上端面および下端面)の全周を、それぞれ上端フランジ72aおよび下端フランジ72bに密着させて装着されている。そのため、内型71の外周面とブラダ75の内周面との間は上下両端のフランジで密閉されている。
また、内型71は、上端フランジ72aおよび内型71を貫通する流体供給路73を備えている。内型71では、この流体供給路73を通して内型71の外周面とブラダ75の内周面との間にエアーなどの流体を供給すると、ブラダ75は流体の流入に伴って外方へ膨張される。また、流体供給路73から流体が供給されていないときには、ブラダ75は内型71の外周面に密接した状態になっている。
外型81は、図9に示されるように、内型71を挿入可能な円筒形状を有しており、図9(b)に示されるように、外型81の成形面となる内周面に成形用凸部84が形成されている。成形用凸部84は、目的とするリブ3に対応した鋳型形状(反転形状)として形成され、かつ外型81の内周面の全周面に亘って突設されており、外型81の内周面の周方向と直交する方向に所定の一定間隔で平行に多数本形成されている。
本実施形態のVリブドベルト1は、上記のベルト成形装置を用いて製造されるが、本明細書では、本実施形態でVリブドベルトを製造する方法を「ブラダ拡張法」と称する。ブラダ拡張法による第1の製造方法として、以下の方法を例示できる。具体的な工程としては、未架橋ベルト前駆体10Aを成形する成形工程、未架橋ベルト前駆体10Aを架橋する架橋工程、架橋ベルト前駆体(ベルトスリーブ10B)からVリブドベルト1を製造する仕上げ工程を経て得られる。
(成形工程)
成形工程は、外周面にブラダ75を装着した内型71を用いて未架橋ベルト前駆体10Aを形成する工程である。
図8は、成形工程におけるベルト成形装置の状態を示しており、詳しくは、図7の内型71に未架橋ベルト前駆体10Aを装着した状態の概略斜視図(a)およびその上側部分の拡大概略断面図(b)である。図8に示すように、未架橋ベルト前駆体10Aは、ブラダ75の外周面に螺旋状に巻き付ける心線6と、ブラダ75の外周面に巻き付ける前駆体シートとの積層体として形成される。図8の実施の形態では、前駆体シートは、少なくとも未架橋ゴムシートを含む2種類のシートが使用されており、ブラダ75の外周面に、内周側から伸張層形成用のシート5a、心線6を形成する撚糸コード、圧縮層形成用の未架橋ゴムシート2aの積層材料を順に巻き付けて積層し、未架橋ベルト前駆体10Aを形成する。伸張層形成用のシート5aは、布帛または未架橋ゴムシートを用いる。なお、心線6を接着層4に埋設した態様とする場合には、伸張層形成用のシート5aと未架橋ゴムシート2aとの間には、心線6を埋設するための接着層形成用の未架橋ゴムシートを設けてもよく、上記の層構成に限定されない。
また、圧縮層2の表面に摩擦伝動面を構成する表層7を設ける態様の場合は、上記の積層体の最も外周側(圧縮層形成用の未架橋ゴムシート2aの外周面)に、表層7を構成する材料を配置する。配置する方法はその態様に応じて、表層用シート材7a(布帛、未架橋ゴムシート、樹脂シート、など)を積層してもよく、外周面に静電植毛、粉体塗装、液状組成物の塗布などの処理を行ってもよい。
なお、本工程で形成された未架橋ベルト前駆体10Aでは、心線巻き付け張力に起因する残留応力が残った状態となっている。
(架橋工程)
架橋工程とは、未架橋ベルト前駆体10Aに対して、金型の形状に対応した所望の形状に圧縮成形(型付け)を行うとともに、各ゴム層を構成するゴム成分の架橋反応を行うことで、未架橋ベルト前駆体10Aを構成する積層材料を接着して一体化を行って、ベルトスリーブ10B(架橋ベルト前駆体)(後述する図11(b))を形成する工程である。この架橋工程では、未架橋ベルト前駆体10Aを架橋すると共に、リブ3を形成してベルトスリーブ10Bが得られるため、架橋工程では架橋と同時に圧縮層を成形している。
図9は、架橋工程に未架橋ベルト前駆体10Aを供するための準備段階を示しており、詳しくは、前述の通りである。図10は、架橋工程におけるベルト成形装置の状態を示しており、詳しくは、図9の外型81に内型71を挿入したベルト成形装置のブラダ75を膨張させた状態の概略斜視図(a)およびその部分拡大概略断面図(b)である。
詳細には、未架橋ベルト前駆体10Aを架橋工程に供するためには、図9に示されるように、未架橋ベルト前駆体10Aを装着した内型71は、外型81の円筒内部(中空内部)に挿入される。外型81の内部は全周に亘って密閉された中空部として加熱・冷却ジャケット82が形成されており、外型81の外周壁81aの上方には、蒸気などの加熱媒体を供給するための熱媒供給口83が形成されており、外周壁81aの下方には、冷却水などの冷却媒体を供給するための冷媒供給口85が形成されている。
架橋工程では、図10に示されるように、熱媒供給口83から加熱媒体を供給して加熱・冷却ジャケット82で外型81を加熱すると共に、流体供給路73からエアーなどの流体を内型71の外周とブラダ75の内周の間に供給して、図10(b)に示されるように、流体の圧力でブラダ75を外型81の内周面(成形用凸部84)に向かって膨張させて、ブラダ75の外周面に巻き付けて装着されている未架橋ベルト前駆体10Aを外型81の内周面に押し付け、ブラダ75と外型81との間で未架橋ベルト前駆体10Aを加熱・加圧する。この際に未架橋ベルト前駆体10Aが外型81の内周面に押し付けられて加圧されることによって、外型81の成形用凸部84間の凹部に未架橋ベルト前駆体10Aの外周面が圧入するため、外周面にリブ3を形成できる。なお、加熱温度は、例えば120~180℃、成形圧力は、例えば0.5~1.5MPa、加熱時間は例えば15~30分である。この工程により、未架橋ベルト前駆体10Aは架橋成形されてベルトスリーブ10Bが得られる(図11(b)参照)。
本工程で形成されたベルトスリーブ10Bには、心線巻き付け張力に起因する残留応力に加え、架橋工程での心線6の伸張に起因する残留応力が残った状態となっている。
なお、架橋工程でのベルト伸張率は、未架橋ベルト前駆体10A(成形体)の基準周長に対する、架橋工程における心線6の伸張長さの割合(百分率)で表せる。例えば、図12を参照し、図12(a)(ブラダ膨張前)における心線6の断面中心を通る円周の直径をD、図12(b)(ブラダ膨張時)における心線6の断面中心を通る円周の直径をD'とすると、架橋工程でのベルト伸張率は、(D'-D)/Dの百分率(%)、で算出される。
なお、架橋工程でのベルト伸張率は、ブラダの拡張率(膨張率)と比例関係にある。架橋工程でのベルト伸張率が大きくなるほど、ブラダ75の拡張(膨張)による未架橋ベルト前駆体10Aの外型81への圧入が容易となり、つまり、リブ3の形成が容易となる。逆に、架橋工程でのベルト伸張率が小さくなるほど、当該圧入が困難となり、つまり、リブ3の形成が困難となる。
本実施形態の場合、リブ3の形成容易性の観点では、架橋工程でのベルト伸張率の好ましい範囲は1~5%である。架橋工程でのベルト伸張率が1%を下回ると、リブ3の形成が不十分となり、架橋工程でのベルト伸張率が5%を上回ると、心線6の配列並びが乱れるなど、成形不良が発生し易くなる。また、前述のように、ベルト乾熱時収縮応力を比較的高い水準で確保しつつ、ベルト寸法の経時収縮(乾熱時収縮を含む)が過大になるのを抑制する観点では、架橋工程でのベルト伸張率の好ましい範囲は1~4%である。
(仕上げ工程)
仕上げ工程では、架橋工程で得られたベルトスリーブ10BからVリブドベルト1を製造する。図11は、仕上げ工程におけるベルト成形装置を示しており、図10に示す状態のベルト成形装置から内型71を抜き取る工程を示す概略斜視図(a)およびベルト成形装置から内型71を抜き取った状態を示す部分拡大概略断面図(b)である。
架橋工程において、ベルトスリーブ10Bが架橋成形し、加熱を停止した後、流体供給路73からの流体の供給を停止することによって、ブラダ75を収縮させて膨張前の状態に戻し、さらに冷媒供給口85から冷却媒体を供給して外型81を冷却する。ブラダ75が元の状態にまで収縮すると、ブラダ75は外径が小さくなって、架橋成形されたベルトスリーブ10Bの内径よりも小さくなるので、図11に示されるように、架橋成形されたベルトスリーブ10Bを外型81の内周に残したまま内型71を外型81から抜き出すことができる。
外型81より内型71を抜き取り、外周に複数のリブ3を有するベルトスリーブ10Bを外型81から脱型した後、カッターを用いて、ベルトスリーブ10Bを所定の幅でベルト長手方向に輪切りして、ベルトを1本ずつに分離し、内周側と外周側とを裏返す(反転させる)ことによりVリブドベルト1に仕上げる。
以上のように、ブラダ拡張法によるVリブドベルト1の製造方法(第1の製造方法)を説明したが、ブラダ拡張法による第2の製造方法として、下記に示す予備成形体を形成する工程を含む方法で行ってもよい。具体的には、ブラダ75の外周面に圧縮層形成用の未架橋ゴムシート2aのみを巻き付けて第1未架橋前駆体を形成し、ブラダ75を外型81の内周面(成形用凸部84)に向かって膨張させて、外周面にリブ3を形成した予備成形体(半架橋状態)を形成する工程、次いで、ブラダ75の膨張を解いて予備成形体を密着させた外型81からブラダ75を装着した内型71を離間させる工程、次いで、ブラダ75の外周面に伸張層形成用の未架橋ゴムシート2a及び心線6を順次配置した第2未架橋前駆体を形成する工程、さらに、ブラダ75を再び膨張させて予備成形体を密着させた外型81に第2未架橋前駆体を内周側から押圧して予備成形体と一体的に架橋する工程、を経て、最外周面にリブ3を形成したベルトスリーブを得る方法が例示できる。なお、圧縮層2の表面に表層7を設ける態様の場合は、上記の圧縮層形成用の未架橋ゴムシート2aの外周面に、表層7を構成する材料を配置した積層体を第1未架橋前駆体とする。
これらの方法のうち、第1の製造方法は、工程が簡素であり生産性に優れ、第2の製造方法は、内型71と外型81の間隔を小さくすることにより心線6の拡張率を小さくできるため、心線6へのダメージを抑制することができ、Vリブドベルト1の耐久性の低下を抑制できる。生産性と耐久性のうち、優先する項目により製造方法を選択することができる。
また、上記製造方法では、心線6の巻き付け時に心線6に付与される張力(心線巻き付け張力)に起因する残留応力に加え、架橋工程でのブラダ75の拡張に伴う心線6の伸張に起因する残留応力が、Vリブドベルト1(心線6)に残るようにVリブドベルト1を製造している。そうすることにより、架橋工程でのベルトスリーブ10B(心線6)の伸張率の度合いに応じてベルト張力保持率の低下を抑制できる水準までベルト乾熱収縮応力を底上げしている。
そして、架橋工程でのベルトスリーブ10B(心線6)の伸張率が、1.0~4.0%の範囲内となるように作製することで、治具によりVリブドベルト1を1.0~3.5%伸張させつつ、動力伝達機構20のプーリレイアウトに装着可能で、3.5%モジュラスが290~360N/リブの範囲内、且つ、ベルト乾熱時収縮応力が125~200Nの範囲内のVリブドベルト1を作製することができる。
上記Vリブドベルト1によれば、低モジュラスベルトとして、心線6に脂肪族ポリアミド繊維を含む繊維で形成された撚糸コード用い、Vリブドベルト1を3.5%伸張させるのに必要な応力(3.5%モジュラス)が290~360N/リブと比較的低い水準に抑えられているため、互いに離隔配置されたプーリ21、22のレイアウト周長LpがVリブドベルト1の基準周長Lbよりも1.0~3.5%長いドライブシステムに、治具50による伸張装着法でVリブドベルト1を取り付けるのが容易という効果を得ることができる。
それとともに、上記モジュラスを比較的低い水準に抑えているにもかかわらず、ベルト乾熱時収縮応力が125~200Nと比較的高い水準に確保されるため、比較的低湿な環境(例えば23℃×50%)で保管されたVリブドベルト1が治具50による伸張装着法でプーリレイアウトに装着された場合のみならず、比較的高湿な環境(例えば23℃×90%)で保管された(心線部分が吸水した)Vリブドベルト1が、治具50による伸張装着法でプーリレイアウトに装着された場合であっても、走行時の急激な張力低下を抑制し、十分なベルト張力を維持できる効果(詳細には、心線の吸水によりモジュラスが低下し伸び易い状態となるが、収縮応力が十分に大きい水準に確保されているためVリブドベルト1の伸びを抑制して、ベルト張力保持率の低下を抑制できる効果)を得ることができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下に、ゴム組成物の調製方法、ベルトの作製方法、各物性の測定方法または評価方法などを示す。
[使用材料]
(ゴム組成物)
表1に示す配合のゴム組成物をバンバリーミキサーで混練りし、この練りゴムをカレンダーロールに通して所定厚みの圧延ゴムシートとして、圧縮層形成用の未架橋ゴムシート、及び伸張層形成用の未架橋ゴムシートを作製した。なお、表1の成分は下記の通りである。
(ゴム組成物の配合)
Figure 2022140345000002
EPDM:ダウ・ケミカル日本(株)製「NORDEL(登録商標)IP3640」、エチレン含有量55%、エチリデンノルボルネン含有量1.8%
酸化亜鉛:正同化学工業(株)製、「酸化亜鉛3種」
ステアリン酸:日油(株)製「ステアリン酸つばき」
カーボンブラックHAF:東海カーボン(株)製「シースト(登録商標)3」
パラフィン系オイル:出光興産(株)製「ダイアナ(登録商標)プロセスオイル」
老化防止剤:精工化学(株)製「ノンフレックス(登録商標)OD3」
有機過酸化物:化薬アクゾ(株)製「パーカドックス(登録商標)14RP」
ナイロン短繊維:旭化成(株)製「ナイロン66」、繊維長約0.5mm
(心線)
940dtexのポリアミド66(ナイロン66)繊維の束を2本引き揃えて下撚り糸を作製し、次いで、下撚り糸を3本引き揃え、下撚りとは反対方向に上撚りし、総繊度5640dtex、心線径1.0mmの諸撚りコードを作製した。次いで、諸撚りコードを下記RFL処理液に浸漬後、乾燥させて処理コードを作製した。
(編布(表層))
吸水性繊維としての綿紡績糸(40番手、1本)と、非吸水性繊維としてのPTT/PETコンジュゲート糸(繊度84dtex)とを編成し、編組織が緯編(鹿の子、2層)の編布を作製した。編布を下記RFL処理液に浸漬後、乾燥させて処理編布を作製した。なお、ベルト中の編布の平均厚みは0.6mmであった。
(RFL処理液)
レゾルシン2.6質量部、37質量%ホルマリン1.4質量部、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス17.2質量部および水78.8質量部を含む溶液を調製した。
[Vリブドベルトの製造]
実施例1~8、比較例2、4のVリブドベルトは、上記実施の形態で説明したブラダ拡張法による第1の製造方法で、心線巻き付け張力を心線1本あたり20N、心線の配列ピッチを約1.2mmとして、6PK1200(リブピッチ3.56mm、リブ高さ2.0mm、リブ角度40°、リブの数6、基準周長1200mm、ベルト幅約21mm)のVリブドベルトを作製した。これらのVリブドベルトは、図2に示す態様、即ち、接着層を設けず、且つ圧縮層表面を編布で被覆して、摩擦伝動面を編布層(表層)で構成する態様とした。
比較例3のVリブドベルトは、上記実施の形態で説明したブラダ拡張法による第2の製造方法(半架橋状態の予備成形体を形成する工程を含む方法)により、心線巻き付け張力を心線1本あたり20N、心線の配列ピッチを約1.2mmとして、上記実施例1~8、比較例2、4と同一仕様(形状・寸法)で作製した。
比較例1のVリブドベルトは、特許文献1の実施例で用いられている研削法によって、心線巻き付け張力を心線1本あたり20N、心線の配列ピッチを約1.2mmの6PK1200(リブピッチ3.56mm、リブ高さ2.9mm、リブ角度40°、リブの数6、基準周長1200mm、ベルト幅約21mm)のVリブドベルトを作製した。研削法は、円筒状金型の外周に、内周側から伸張層形成用の未架橋ゴムシート、心線、圧縮層形成用の未架橋ゴムシートを順に巻き付けて未架橋ベルト前駆体を形成し、公知の架橋装置(加硫缶など)にて架橋成形を行ってベルトスリーブを作製し、研削によってリブを形成する方法である。研削法では、架橋成形において心線の伸張を伴わない(伸張率0%)製造方法である。このベルトでは、圧縮層の表面が研削面になるため、表層は設けなかった。実施例1~8および比較例1~4で作製したVリブドベルトの心線の作製条件、摩擦伝動面の構成、ベルト製造条件(架橋工程でのベルト伸張率)、ベルト評価結果を表2に示す。
Figure 2022140345000003
実施例1~8および比較例1~4のVベルトでは、架橋工程でのベルトスリーブ(心線)の伸張率(以下、「架橋工程でのベルト伸張率」)を0%から4.5%まで順次変量させた。
外型の内周面と成形体の外周面との間には所定の隙間が設けられる(図12参照)。この隙間の大きさが大きいほど、また、ベルトサイズ(基準周長)が小さいほど、架橋工程でのベルト伸張率を大きくする必要がある。実施例1~8、比較例2~4における、架橋工程でのベルト伸張率の各水準は、同一内径の外型に対して、ブラダの外径(厚み)を変更する方法で、前記隙間の大きさを変量(現実的にはブラダの厚みを変更)することで設定した。
また、心線の製造条件のひとつであるヒートセット延伸率は、2%を軸に±1%の範囲内で変量させた。一般的に、ヒートセット延伸率を上げるとモジュラスが大きくなり、ヒートセット延伸率を下げるとモジュラスが小さくなる傾向がある。
[Vリブドベルトの評価]
表2に示す実施例1~8、比較例1~4について、課題を解決し得るVリブドベルト(低モジュラスベルト)が得られたかどうかを見極めるための評価(ベルト3.5%モジュラス、ベルト乾熱時収縮応力、ベルト乾熱収縮率、ベルト張力保持率(高湿環境保管後、低湿環境保管後))、を行った。
[ベルト評価(項目、方法、基準)]
〈ベルト3.5%モジュラス〉
ベルトを3.5%伸張させるのに必要な応力のことであり、低モジュラスベルトとして機能するか否かの基本的な代用特性として測定、評価されるものである。
(測定方法)
ベルトを2つのリブ溝付きプーリ間に掛架し巻き掛け、一方のプーリを50mm/分の速度で引っ張って、プーリの移動距離と荷重との関係から、ベルトを3.5%伸ばすのに必要な応力を測定し、1リブ(3.56mm)当たりの応力(N/リブ)に換算した。なお、測定は、低湿環境(23℃×50%)下に1日間フリー状態(外力が加えられていない状態)で放置したベルトについて行った。
(判定基準)
主に低モジュラスベルトとして機能するか否かの基本的な代用特性としての観点から、ベルト3.5%モジュラスが290~360N/リブの範囲内であれば、実用上問題はなく、低モジュラスベルトとして機能すると評価し、a判定とした。
ベルト3.5%モジュラスが290~360N/リブの範囲外であれば、低モジュラスベルトとして機能しないと評価し、b判定とした。
本用途での実使用に対する適正(低モジュラスベルトとして機能するか否か)の観点から、a判定のベルトを合格レベルとした。
〈ベルト乾熱時収縮応力〉
ベルトの動的性能が十分に確保されるか否かの信頼性評価(例えば、後述のベルト張力保持率)の代用特性として、測定されるものである。
本発明で規定する「ベルト乾熱時収縮応力」は、前述のとおり、「ベルトに147Nの初荷重をかけ、100℃の雰囲気下30分放置した後に発生した、心線5本あたりの応力(N)」のことである。
(測定方法)
(1)ベルトから心線を埋設したゴム層を短冊状に切り出す。
(2)ゴム層の両側から余分の心線を取り除き、心線5本からなる測定試料(長さ250mm)を作製する。
(3)この心線5本からなる測定試料に147Nの初荷重をかけ(チャック間距離は200mm)、100℃の雰囲気下(恒温槽内)で30分放置した後に発生した、荷重検知器(ロードセル)によって検知される値(N)を読み取り、これをベルト乾熱時収縮応力(N/5本)とする。
(判定基準)
主にベルトの動的性能が十分に確保されるか否かの代用特性としての観点から、ベルト乾熱時収縮応力が125~200N/5本の範囲内であれば、実用上問題はなく、ベルトの動的性能を満足すると評価し、a判定とした。
ベルト乾熱時収縮応力が125~200N/5本の範囲外であれば、ベルトの動的性能を満足しないと評価し、b判定とした。
本用途での実使用に対する適正(ベルトの動的性能確保)の観点から、a判定のベルトを合格レベルとした。
〈ベルト乾熱収縮率〉
ベルト寸法安定性評価の一環として、測定されるものである。
(測定方法)
120℃雰囲気下(恒温槽内)にベルトを1時間フリー状態(外力が加えられていない状態)で放置し、放置前後でのベルト外周長さの変化率をベルト乾熱収縮率として求めた。
(判定基準)
主にベルトの寸法安定性確保の観点から、ベルト乾熱収縮率が2.3%以下であれば、実用上問題はなく、ベルトの寸法安定性を確保できると評価し、a判定とした。
ベルト乾熱収縮率が2.3%を超えれば、ベルトの寸法安定性を確保できないと評価し、b判定とした。
本用途での実使用に対する適正(ベルトの寸法安定性確保)の観点から、a判定のベルトを合格レベルとした。
〈ベルト張力保持率(高湿環境保管後、低湿環境保管後)〉
ベルトの動的性能が十分に確保されるか否かの信頼性評価の一環として、測定されるものであり、高湿環境もしくは低湿環境で30日間保管されたベルトを治具による伸張装着法でプーリレイアウトに装着し走行させた際の、走行時ベルト張力の保持率(詳細な測定方法は下記参照)をベルト張力保持率として求めた。
(測定方法)
高湿環境(23℃×90%)下(恒温調湿槽内)で30日間(ベルトの心線部分の水分率が平衡状態に達する時間に相当)フリー状態(外力が加えられていない状態)で保管されたベルト、もしくは低湿環境(23℃×50%)下(恒温調湿槽内)で30日間フリー状態で保管されたベルトを、駆動プーリ(120φ)と従動プーリ(120φ)とを備え、軸間距離固定で且つ張力付与機構を有さず、レイアウト周長がベルトの基準周長に対して3%長いプーリレイアウトに掛架した。このとき、プーリ間に装着されたことで、ベルトの周長が基準周長から3%伸張し、例えば、実施例1のベルトには185N/リブ程度の装着時張力、実施例8のベルトには230N/リブ程度の装着時張力が付与される。そして、ベルト保管時の環境と同じ環境下(23℃×90%の恒温調湿槽内、もしくは23℃×50%の恒温調湿槽内)で駆動プーリを4800rpmで回転させて、2分間ベルトを無負荷走行させた時の走行時ベルト張力(2分間走行時ベルト張力)を軸荷重検知器(ロードセル)によって検知される軸荷重から算出し、これを同じ環境下でのベルト保管1日後(保管初期)における2分間走行時ベルト張力の値で除して、その百分率をベルト張力保持率(%)とした。
(判定基準)
主にベルトの動的性能確保の観点から、高湿環境で保管されたベルト、もしくは低湿環境で保管されたベルト、のどちらの場合も、ベルト張力保持率が90%以上であれば、実用上全く問題はなく、ベルトの動的性能を十分に満足すると評価し、a判定とした。
高湿環境で保管されたベルト、もしくは低湿環境で保管されたベルト、のどちらの場合も、ベルト張力保持率が85%以上であるが、どちらか一方でも、ベルト張力保持率が85%以上90%未満であれば、実用上問題はなく、ベルトの動的性能を満足すると評価し、b判定とした。
高湿環境で保管されたベルト、もしくは低湿環境で保管されたベルト、のどちらか一方でも、ベルト張力保持率が85%未満であれば、ベルトの動的性能を満足しないと評価し、c判定とした。
本用途での実使用に対する適正(ベルトの動的性能確保)の観点から、a判定、b判定のベルトを合格レベルとした。
[総合判定]
本課題を解決し得る低モジュラスベルトとしての総合的な判定(ランク付け)の基準は、上記4つのベルト評価(ベルト3.5%モジュラス、ベルト乾熱時収縮応力、ベルト乾熱収縮率、ベルト張力保持率(高湿環境保管後、低湿環境保管後))における判定の結果から、以下の通りとした。
ランクA:上記4つのベルト評価で、すべてa判定であった場合は、実用上全く問題ないものと判断し、最良のランクとした。
ランクB:上記4つのベルト評価で、「ベルト3.5%モジュラス」、「ベルト乾熱時収縮応力」、および「ベルト乾熱収縮率」の3つの判定がすべてa判定であったが、「ベルト張力保持率(高湿環境保管後、低湿環境保管後)」の判定がb判定であった場合は、実用上問題ないが、ランクAよりやや劣るランクとした。
ランクC:上記4つのベルト評価で、「ベルト3.5%モジュラス」、「ベルト乾熱時収縮応力」、および「ベルト乾熱収縮率」の3つの判定において1つでもb判定があった場合、ならびに/もしくは、「ベルト張力保持率(高湿環境保管後、低湿環境保管後)」の判定がc判定であった場合は、本課題の解決策として不充分なランク(不合格)とした。
[評価結果]
実施例1~8および比較例1、3~4のVリブドベルトの、架橋工程でのベルト伸張率と、ベルト乾熱時収縮応力との関係線図を図13に示した。架橋工程でのベルト伸張率と、ベルト乾熱時収縮応力とは、略直線の比例関係を示した。
実施例および比較例のVリブドベルトの評価結果を表2に示した。
(得られた効果)
表2によると、実施例1~8の結果から、架橋工程でのベルト伸張率が1.0~4.0%の範囲内となるようにVリブドベルトを作製することで、本発明で特徴とするベルト特性(3.5%モジュラスが290~360N/リブであり(a判定)、且つ、 ベルト乾熱時収縮応力が125~200N(a判定))を兼ね備えた低モジュラスベルトを得ることができ、これにより、課題とした、高湿環境で保管されたベルトを、治具による伸張法で装着するプーリレイアウトに装着された場合でも、走行時に十分な張力を維持可能[ベルト張力保持率(高湿環境保管後、低湿環境保管後)が90%以上(a判定)または85%以上90%未満(b判定)(総合判定でもランクAまたはB)]にできるVリブドベルトを提供できることがわかった。
このことは、図13のグラフからもわかるように、上記本発明で特徴とするベルト特性を兼ね備えたVリブドベルトは、心線の巻き付け時に心線に付与される張力(心線巻き付け張力)に起因する残留応力に加え、架橋工程での心線の伸張に起因する残留応力がベルト(心線)に残るようにベルトを作製することで、架橋工程でのベルト伸張率の度合いに応じてベルト張力保持率の低下を抑制できる水準までベルト乾熱収縮応力を底上げできることで得られるとの考え(設計思想)を裏付けるものであった。
(評価結果に対する考察)
・実施例4~8(実施例1~3と比較)
架橋工程でのベルト伸張率が2.0~4.0%の範囲内となるようにベルトを作製した場合(実施例4~8の場合)は、架橋工程でのベルト伸張率が1.0~1.5%の範囲内となるようにベルトを作製した場合(実施例1~3の場合)と比較し、ベルト乾熱時収縮応力を同じ合格レベル(a判定)の範囲内(125~200N/5本)でありながら、より高い水準(約150~約200N/5本)に底上げできたことで、高湿環境(23℃×90%)下で保管後のベルト張力保持率をより高い水準(90.0~99.6%でa判定)に底上げできることがわかった(総合判定でもランクA)。
・実施例1~8
実施例5の場合、ベルト3.5%モジュラスは、315N/リブであったが、その際、ベルト2.0%モジュラスは、180N/リブであった。同様に、実施例1~8における、ベルト2.0%モジュラスは、約165N/リブ(実施例1)~約205N/リブ(実施例8)の範囲内であった。
・比較例1
比較例1は、架橋工程でのベルト伸張率が0%でベルトが作製(研削法で作製)されたものであるため、架橋工程での心線の伸張に起因する残留応力をベルト(心線)に付与できず、ベルト乾熱時収縮応力は、101N/5本にとどまった(b判定)。そのため、高湿環境(23℃×90%)下で保管後のベルト張力保持率が85%未満の水準にとどまり(c判定)、ベルトの動的性能を満足しないものと判断された(総合判定でランクC)。
・比較例2
比較例2は、実施例1~8、比較例4と同様、ブラダ拡張法による第1の製造方法(半架橋状態の予備成形体を形成する工程を含まない方法)でベルトが作製されたものであるが、架橋工程でのベルト伸張率が1.0%を下回る水準(0.5%)に設定されたものであるため、リブの形成が不十分となり、ベルトが製造できなかった。
・比較例3
比較例3は、唯一、ブラダ拡張法による第2の製造方法(半架橋状態の予備成形体を形成する工程を含む方法)でベルトが作製されたものであるため、架橋工程でのベルト伸張率が1.0%を下回る水準(0.5%)に設定されたものの、リブの形成は十分可能であり、ベルトが製造できた。
しかしながら、架橋工程でのベルト伸張率が1.0%を下回る水準(0.5%)に設定されたものであるため、架橋工程での心線の伸張に起因する残留応力をベルト(心線)に十分に付与できず、ベルト乾熱時収縮応力は、120N/5本にとどまった(b判定)。
そのため、高湿環境(23℃×90%)下で保管後のベルト張力保持率が85%未満の水準にとどまり(c判定)、ベルトの動的性能を満足しないものと判断された(総合判定でランクC)。
・比較例4
比較例4は、架橋工程でのベルト伸張率が4.5%と比較的高い水準に設定され、ベルト乾熱時収縮応力が210N/5本と、200N/5本を超える水準となった(b判定)。このため、ベルト乾熱収縮率が許容上限(2.3%)を超える水準に達し(b判定)、ベルトの寸法安定性を確保できないものと判断された(総合判定でランクC)。そのため、ベルト動的評価(ベルト張力保持率の評価)は行わなかった。
1 Vリブドベルト
2 圧縮層
3 リブ
4 接着層
5 伸張層
6 心線
7 表層
10 ベルト本体
20 動力伝達機構

Claims (5)

  1. ベルト長手方向に沿って延びる複数のリブが、内周側の圧縮層に形成された環状のベルト本体と、前記ベルト本体の長手方向に沿って前記ベルト本体に埋設された心線と、を備えたVリブドベルトであって、
    前記心線は、脂肪族ポリアミド繊維を含む繊維で形成された撚糸コードであり、
    当該Vリブドベルトを3.5%伸張させるのに必要な応力が1リブ当たり290~360Nであり、且つ、当該Vリブドベルトに147Nの初荷重をかけ、100°Cの雰囲気下30分放置した後に発生した、心線5本あたりの応力(N)で定義される、ベルト乾熱時収縮応力が、125~200Nであることを特徴とする、Vリブドベルト。
  2. 前記リブの少なくとも一部が、当該Vリブドベルトが巻き掛けられるプーリと接触可能な摩擦伝動面を有し、
    前記摩擦伝動面は、圧縮層に積層された表層を有していることを特徴とする、請求項1に記載のVリブドベルト。
  3. 前記表層は、繊維層、塗膜層、ゴム層、又は樹脂層であることを特徴とする、請求項2に記載のVリブドベルト。
  4. 請求項1~3の何れかに記載のVリブドベルトと、
    前記Vリブドベルトの装着対象である、互いに離隔配置された2以上のプーリと、を備え、
    前記Vリブドベルトの装着前の基準周長が、前記2以上のプーリのレイアウト周長に対して1.0~3.5%短いことを特徴とする、動力伝達機構。
  5. 請求項1~3の何れかに記載のVリブドベルトの製造方法であって、
    当該Vリブドベルトの原型となる、心線を含む未架橋ベルト前駆体を構成する積層材料を一体化して架橋ベルト前駆体を形成する、架橋工程は、
    膨張可能なブラダを、所定の膨張率で膨張させて当該ブラダの外径を拡張させ、前記ブラダの外周側に巻き付けた前記心線を、前記ブラダの外径の拡張に追随して伸張させるステップを含み、
    当該架橋工程における、前記心線を含む前記前駆体の伸張率が、1.0~4.0%の範囲であることを特徴とする、Vリブドベルトの製造方法。
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