JP2022136771A - セラミック電子部品 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022136771000001
【課題】メッキ性が良好で、かつ、素子本体へのメッキの侵入を抑制できる焼付電極層を有するセラミック電子部品を提供することである。
【解決手段】
セラミック層と内部電極層とが積層された素子本体と、素子本体の端面に形成してあり、内部電極層の少なくとも一端と電気的に接続している外部電極と、を有するセラミック電子部品であって、外部電極が焼付電極層を有し、焼付電極層が、素子本体の端面と接しており素子本体との接合境界の近傍に位置する第1領域と、第1領域の外側に位置し焼付電極層の外表面を構成している第2領域と、を有しており、第1領域には、所定の組成を有する第1ガラスが含まれ、第2領域には、所定の組成を有する第2ガラスが含まれているセラミック電子部品。
【選択図】図1

Description

本発明は、外部電極を有するセラミック電子部品に関する。
特許文献1に示すように、セラミック成分を含む素子本体と、当該素子本体の外面に形成してある外部電極と、を備えるセラミック電子部品が知られている。セラミック電子部品の外部電極としては、焼付電極が広く採用されており、焼付電極は、導体粉末とガラスフリットとを含む導電ペーストを素子本体表面に塗布して焼き付けることで形成できる。特許文献1では、上記のような焼付電極の上にメッキ電極を形成することにより、外部電極のハンダ濡れ性を向上させている。
しかし、特許文献1で開示している外部電極では、高温で焼き付けるとガラスフリットが電極の表面に析出してメッキがつきにくくなる不具合があり、低温で焼き付けると電極に空隙が多数生じ、メッキ時にメッキが外部電極内部に侵入して素子本体に達して不具合が生じるという問題がある。
以上のように、特許文献1に示すような従来技術では、焼付電極のメッキ性(メッキ電極の形成しやすさ)と素子本体へのメッキの侵入の抑制とを両立させることが困難である。
特開平4-171912号公報
本発明は、このような実情を鑑みてなされ、その目的は、メッキ性が良好で、かつ、素子本体へのメッキの侵入を抑制できる焼付電極層を有するセラミック電子部品を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明に係るセラミック電子部品は、
セラミック層と内部電極層とが積層された素子本体と、
前記素子本体の端面に形成してあり、前記内部電極層の少なくとも一端と電気的に接続している外部電極と、を有するセラミック電子部品であって、
前記外部電極が、焼付電極層を有し、
前記焼付電極層が、前記素子本体の前記端面と接しており前記素子本体との接合境界の近傍に位置する第1領域と、前記第1領域の外側に位置し前記焼付電極層の外表面を構成している第2領域と、を有しており、
前記第1領域には、第1ガラスが含まれ、前記第2領域には、第2ガラスが含まれており、
前記第1ガラスにおけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対するBの酸化物換算でのモル含有率が、前記第2ガラスにおけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対するBの酸化物換算でのモル含有率よりも高く、
前記第1ガラスにおけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対するSiの酸化物換算でのモル含有率が、前記第2ガラスにおけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対するSiの酸化物換算でのモル含有率よりも低く、
Bの酸化物はBとし、Siの酸化物はSiOとし、Znの酸化物はZnOとして酸化物換算する。
本発明者は、セラミック電子部品が上記の構成を有することにより、焼付電極層のメッキ性が良好となり、かつ、素子本体へのメッキの侵入を抑制できることを見出した。上記の効果が得られる理由は、必ずしも明らかではないが、以下に示す事由が考えられる。
まず、上記の通り本発明のセラミック電子部品では、メッキ電極と接することとなる焼付電極層の外表面に、所定の組成の第2ガラスを含む第2領域が存在している。この第2ガラスは軟化点が高い。このため、焼付電極層の外表面に第2ガラスが析出することを抑制できると考えられる。その結果、焼付電極層の上にメッキ電極を形成する際に、メッキ不良が生じることを抑制できる。
また、本発明のセラミック電子部品では、素子本体の端面と接合する第1領域に、所定の組成の第1ガラスが含まれている。この第1ガラスは軟化点が低い。このため、第1ガラスが含まれることにより焼付電極層の焼結性が向上する。また、第1ガラスは、導体同士および導体と素子本体の端面との間に濡れ広がり、充填する。これらの結果、外部電極(焼付電極層)の素子本体の近傍の構造は緻密になる。このため、素子本体へのメッキの侵入を有効に抑制することができる。
前記セラミック層にはABOで表されるペロブスカイト型化合物が主成分として含まれてもよい。
前記ABOで表されるペロブスカイト型化合物は、(Ba1-a-bSrCa(Ti1-c-dZrHf)Oで表されるペロブスカイト型化合物であり、0.94<m<1.1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1および0≦d≦1の式を満たしてもよい。
メッキ液は酸性を示す。このため、メッキが素子本体の内部電極層へ侵入すると、Niなどを含む内部電極層(以下では、「Ni内部電極層」とする)は腐食されやすい。この場合、セラミック層と内部電極層との界面が特に腐食されやすい。さらに、セラミック層の主成分が(Ca,Sr)ZrOまたは(Ca,Sr)(Ti,Zr)Oである場合は、セラミック層の主成分がBaTiOである場合に比べて硬く、なおかつ(Ca,Sr)ZrOまたは(Ca,Sr)(Ti,Zr)OとNi内部電極層との線膨張係数の差は大きい。このため、セラミック層の主成分が(Ca,Sr)ZrOまたは(Ca,Sr)(Ti,Zr)Oである場合には、素子本体の内部電極層にメッキ液が侵入すると、内部電極層と誘電体層の界面には応力が生じているために特に腐食しやすく、腐食により内部電極層とセラミック層との界面が剥離すると考えられ、クラックが発生し易い。
これに対して、本発明によれば、上記の通り素子本体へのメッキの侵入を抑制できることから、セラミック層の主成分が(Ca,Sr)ZrOまたは(Ca,Sr)(Ti,Zr)Oであっても、クラックの発生を抑制できる。
さらに、メッキ液は酸性を示すために水素イオンを含む。水素イオンが素子本体へ侵入することにより、コンデンサの電気抵抗が低下する恐れがある。特に、セラミック層の主成分がBaTiOである場合はセラミック層の主成分が(Ca,Sr)ZrOである場合に比べて素子本体が水素イオンを透過し易い。
これに対して、本発明によれば、素子本体へのメッキの侵入を抑制できることから、セラミック層の主成分がBaTiOであっても、コンデンサの電気抵抗の低下を抑制できる。
上記の結果、本発明のセラミック電子部品は、十分な抵抗を有していると共に、クラック数も低く抑えることができる。
好ましくは、前記外部電極にはCuおよびCu合金からなる群から選ばれる少なくとも1種が主成分として含まれる。
好ましくは、前記第2ガラスにおけるB、SiおよびZnの酸化物換算での合計含有量を1モル部としたとき、
前記第2ガラスにおけるBの酸化物換算での含有量は0.25~0.4モル部であり、
前記第2ガラスにおけるSiの酸化物換算での含有量は0.4~0.6モル部であり、
前記第2ガラスにおけるZnの酸化物換算での含有量は0.1~0.35モル部である。
これにより、外部電極(焼付電極層)のメッキ性がより向上する。
前記第1ガラスにおけるB、SiおよびZnの酸化物換算での含有量を1モル部としたとき、
前記第1ガラスにおけるBの酸化物換算での含有量は0.4~0.6モル部であり、
前記第1ガラスにおけるSiの酸化物換算での含有量は0.15~0.35モル部であり、
前記第1ガラスにおけるZnの酸化物換算での含有量は0.1~0.35モル部である。
これにより、素子本体へのメッキの侵入をより抑制することができる。
前記第1ガラスおよび前記第2ガラスにおいてBはBとして含まれ、SiはSiOとして含まれ、ZnはZnOとして含まれてもよい。
好ましくは、前記焼付電極層の平均厚み(Ts)に対する前記第2領域の平均厚み(t2)の比(t2/Ts)が0.22~0.78である。
t2/Tsが上記の範囲内にある場合には、上記の範囲を上回る場合に比べて素子本体へのメッキの侵入抑制効果を高めることができる。また、t2/Tsが上記の範囲内にある場合には、上記の範囲を下回る場合に比べて、焼付電極層のメッキ性がより良好となる。
好ましくは、前記焼付電極層の単位断面積(M)に対する非金属成分および空隙の合計面積(N)の比(N/M)の平均値が、0.10~0.45であり、前記非金属成分には、前記第1ガラスおよび前記第2ガラスが含まれる。
N/Mが上記の範囲内にある場合には、上記の範囲を下回る場合に比べて素子本体へのメッキの侵入抑制効果を高めることができる。また、N/Mが上記の範囲内にある場合には、上記の範囲を上回る場合に比べて、焼付電極層のメッキ性がより良好となる。
好ましくは、前記素子本体が、前記セラミック層の端部に境界層を有し、
前記セラミック層にはABOで表されるペロブスカイト型化合物が主成分として含まれ、
前記境界層にはAサイトの元素およびBサイトの元素が主成分として含まれ、
前記境界層に含まれるAサイトの元素およびBサイトの元素の合計を1モル部としたとき、
前記境界層にはAサイトの元素が0.27~0.40モル部含まれる。
前記ABOで表されるペロブスカイト型化合物は、(Ba1-a-bSrCa(Ti1-c-dZrHf)Oで表されるペロブスカイト型化合物であり、0.94<m<1.1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1および0≦d≦1の式を満たしてもよい。
好ましくは、(Ba1-a-bSrCa(Ti1-c-dZrHf)Oで表されるペロブスカイト型化合物は、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1および0≦d<1の式を満たす。
前記外部電極は前記境界層側の面の少なくとも一部に界面突起部を有してもよい。
好ましくは、前記界面突起部にはAサイトの元素、Bサイトの元素およびSiが主成分として含まれ、
前記界面突起部に含まれるAサイトの元素、Bサイトの元素およびSiの合計を1モル部としたとき、
前記界面突起部にはAサイトの元素が0.35~0.45モル部含まれ、
前記界面突起部にはBサイトの元素が0.10~0.30モル部含まれ、
前記界面突起部にはSiが0.35~0.45モル部含まれる。
好ましくは、前記境界層の平均厚みは2~20μmである。
好ましくは、前記内部電極層と接するように前記境界層が備えられており、
前記内部電極層はNiまたはNi合金を主成分として含む。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す概略断面図である。 図2は、図1に示す領域IIを拡大した要部断面図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す断面図である。 図4は、図3に示す領域IVを拡大した要部断面図である。
第1実施形態
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき詳細に説明する。
本実施形態では、本発明に係るセラミック電子部品の一例として、図1に示す積層セラミックコンデンサ2について説明する。積層セラミックコンデンサ2は、素子本体4と、当該素子本体4の外面に形成してある一対の外部電極6と、を有する。
図1に示す素子本体4の形状は、通常、略直方体状であって、X軸方向で対向する2つの端面4aと、Y軸方向で対向する2つの側面4bと、Z軸方向で対向する2つの側面4bとを有する。ただし、素子本体4の形状は、特に制限されず、楕円柱状、円柱状、その他角柱状等であってもよい。また、素子本体4の外形寸法も、特に制限されず、たとえば、X軸方向の長さL0を0.4mm~5.7mm、Y軸方向の幅W0を0.2mm~5.0mm、Z軸方向の高さT0を0.2mm~3.0mmとすることができる。
本実施形態において、X軸、Y軸、Z軸は、相互に垂直である。また、本実施形態において、「内側」は、積層セラミックコンデンサ2の中心により近い側を意味し、「外側」は、積層セラミックコンデンサ2の中心からより離れた側を意味する。
素子本体4は、X軸およびY軸を含む平面に実質的に平行な誘電体層10(セラミック層)と内部電極層12とを有し、素子本体4の内部では、誘電体層10と内部電極層12とがZ軸方向(積層方向)に沿って交互に積層してある。ここで、「実質的に平行」とは、ほとんどの部分が平行であるが、多少平行でない部分を有していてもよいことを意味し、誘電体層10と内部電極層12とは、多少、凹凸があったり、傾いていたりしてもよい。
また、図1によれば、素子本体4のX軸方向の端面は、平面であり、言い換えると、誘電体層10と内部電極層12とが面一となるように積層されている。しかし、素子本体4のX軸方向の端面は、平面でない部分を有していてもよい。また、誘電体層10と内部電極層12とが面一とならずに、たとえば誘電体層10の一部が削れていたり、内部電極層12の一部が突き出た状態で積層されていてもよい。
誘電体層10の材料は特に限定されず、たとえばABOで表されるペロブスカイト型化合物、タングステンブロンズ型化合物などを主成分として含むことができ、好ましくは、誘電体層10にはABOで表されるペロブスカイト型化合物が主成分として含まれる。
誘電体層10の主成分とは、誘電体層10に80質量%以上含まれる成分である。
ABOで表されるペロブスカイト型化合物は、たとえば(Ba1-a-bSrCa(Ti1-c-dZrHf)Oで表されるペロブスカイト型化合物であり、0.94<m<1.1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1および0≦d≦1の式を満たしてもよい。
mはAサイトとBサイトの元素比率を示し、たとえば0.94<m<1.1である。
aはSrの元素比率を示し、たとえば0≦a≦1であり、好ましくは0≦a<1である。
bはCaの元素比率を示し、0≦b≦1であり、好ましくは0≦b<1である。
cはZrの元素比率を示し、0≦c≦1であり、好ましくは0≦c<1である。
dはHfの元素比率を示し、0≦d≦1であり、好ましくは0≦d<1である。
なお、上記組成式における酸素(O)の元素比率は、化学量論組成から多少偏奇していてもよい。
本実施形態に係る誘電体層10は、これらの主成分の他にMn化合物、Mg化合物、Cr化合物、Ni化合物、希土類元素化合物、Si化合物、Li化合物、B化合物、V化合物などの副成分を含んでいてもよい。副成分の種類や組み合わせ、およびその添加量は特に限定されない。
内部電極層12に挟まれている誘電体層10の平均厚み(Td)は、特に制限されず、たとえば30μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。また、誘電体層10の積層数については、所望の特性に応じて決定すればよく、特に限定されない。たとえば、20層以上、より好ましくは50層以上とすることができる。
一方、内部電極層12は、各誘電体層10の間に積層され、その積層数は、誘電体層10の積層数に応じて決定される。そして、内部電極層12の1層当たりの平均厚み(Te)は、特に制限されず、たとえば、3.0μm以下とすることができる。
さらに、複数の内部電極層12については、一方の端部が、素子本体4のX軸方向で対向する2つの端面4aに交互に露出するように、積層してある。そして、一対の外部電極6が、それぞれ、素子本体4の一方の端面4aに形成され、交互に配置された内部電極層12の露出端に電気的に接続してある。このように内部電極層12および外部電極6を形成することで、外部電極6と内部電極層12とで、コンデンサ回路が構成される。
つまり、内部電極層12は、コンデンサ回路の一部として、各誘電体層10に電圧を印加する機能を果たす。そのため、内部電極層12の材質は、導電材を含んで構成される。具体的な材質としては、たとえば、Cu、Ni、Ag、Pd、Au、Pt、またはこれらの金属元素のうち少なくとも1種を含む合金を用いることができる。より好ましくは、内部電極層12に含まれる導電材は、誘電体層10の構成材料が耐還元性を有するため、NiまたはNi系合金である。また、NiまたはNi系合金を主成分とする場合には、Mn、Cu、Crなどから選択された1種類以上の内部電極用副成分が含有されていてもよい。
なお、内部電極層12には、上記の導電材の他に、誘電体層10に含まれるセラミック成分が共材として含まれていてもよく、SやP等の非金属成分が微量に(たとえば、0.1質量%以下程度)含まれていてもよい。
図1に示すように、本実施形態の外部電極6は、素子本体4のX軸方向の端面4aに形成される端面部と、素子本体4の4つの側面4bにおいてX軸方向の端部に形成された延長部と、を一体的に有する。すなわち、一対の外部電極6は、それぞれ、素子本体4の端面4aから側面4bに回り込むように形成されている。なお、一対の外部電極6は、X軸方向で互いに接触しないように絶縁されている。
上述したように、本実施形態では、外部電極6の延長部が、素子本体4の4つの側面4bにそれぞれ形成してある。ただし、外部電極6の延長部は、必須ではなく、外部電極6が端面部のみで構成してあってもよい。もしくは、積層セラミックコンデンサ2を基板に面実装する場合には、外部電極6の延長部は、少なくとも基板の実装面と対向する側面4bに形成されていればよく、実装面とは反対側の側面4bには形成しなくともよい。
図2は、外部電極6と素子本体4との接合境界46を拡大した概略断面図である。なお、図2では、一対の外部電極6のうち一方を示しているが、他方の外部電極6も図2と同様の特徴を有している。以下、図2に基づいて、本実施形態における外部電極6の詳細な特徴、および、外部電極6と素子本体4との接合状態について説明する。
図2に示すように、外部電極6は、導体61と非金属成分62とを含む焼付電極層6aを有しており、当該焼付電極層6aは、素子本体4の外面(端面4a)に接している。
外部電極6は、単一の電極層で構成してあってもよいし、複数の電極層を積層して構成してあってもよい。好ましくは、図2に示すように、メッキ電極層6bを有する。メッキ電極層6bを形成することにより、外部電極6のハンダ濡れ性が良好となる。
なお、複数の電極層で外部電極6を構成する場合は、素子本体4の外面と接するように上記の焼付電極層6aを形成し、その焼付電極層6aの上に、他の焼付電極層6aや樹脂電極層、もしくはメッキ電極層などを形成する。図2では、焼付電極層6a-Niメッキ層6b1-Snメッキ層6b2の三層構造(記載の順番に積層する)からなる外部電極6を例示している。
端面4aと接する焼付電極層6aの平均厚みTsは、5μm~200μmとすることができ、20μm~50μmとすることが好ましい。また、外部電極6が複数層で構成される場合は、外部電極6の平均厚みTtは、5μm~300μm程度とすることができ、100μm以下であることが好ましい。
本実施形態では、焼付電極層6aが、少なくとも2つの領域に分けられ、第1領域6a1および第2領域6a2を有する。
第1領域6a1は、素子本体4の端面4aと接しており、素子本体4と焼付電極層6aとの境界部である接合境界46の近傍に位置する。なお、図2に示すように本実施形態における接合境界46は、素子本体4と焼付電極層6aとの厳密な境界ではなく、素子本体4と焼付電極層6aとの境界に概ね位置する直線として示される。
一方、第2領域6a2は、第1領域6a1の外側に位置しており、焼付電極層6aの外表面6abを構成している。すなわち、第2領域6a2は、メッキ電極層6bと接する外表面6ab近傍領域である。
第1領域6a1と第2領域6a2とは、いずれも、焼付電極層6aの一部であり、導体61と、導体61中に分散した非金属成分62とを含む。第1領域6a1では、非金属成分62として、所定の組成を有する第1ガラス621が分散している。なお、第1領域6a1の非金属成分62には、第1ガラス621の他に、空隙63や酸化物粒子などが含まれていてもよい。
一方、第2領域6a2では、非金属成分62として、所定の組成を有する第2ガラス622が分散している。なお、第2領域6a2の非金属成分62には、第2ガラス622の他に、空隙63や酸化物粒子などが含まれていてもよい。
第1ガラス621および第2ガラス622は、共に主成分としてB、SiおよびZnを含むガラスであるが、下記の通りそれぞれ異なる組成の特徴を有する。
すなわち、Bの酸化物をBとし、Siの酸化物をSiOとし、Znの酸化物をZnOとして酸化物換算したとき、第1ガラス621におけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対するBの酸化物換算でのモル含有率が、第2ガラス622におけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対するBの酸化物換算でのモル含有率よりも高い。また、第1ガラス621におけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対するSiの酸化物換算でのモル含有率が、第2ガラス622におけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対するSiの酸化物換算でのモル含有率よりも低い。なお、本実施形態では、Bの酸化物の酸化物換算はB換算とし、Siの酸化物の酸化物換算はSiO換算とし、Znの酸化物の酸化物換算はZnO換算とする。
具体的には、本実施形態では、第1ガラス621におけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対する第1ガラス621におけるBの酸化物換算でのモル含有率を「FB」とし、第1ガラス621におけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対する第1ガラス621におけるSiの酸化物換算でのモル含有率を「FSi」とし、第2ガラス622におけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対する第2ガラス622におけるBの酸化物換算でのモル含有率を「SB」とし、第2ガラス622におけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対する第2ガラス622におけるSiの酸化物換算でのモル含有率を「SSi」としたとき、(SB/FB)<1および(SSi/FSi)>1を満たし、好ましくは0.4≦(SB/FB)≦0.8および1.2≦(SSi/FSi)≦3.2を満たす。これにより、焼付電極層6aのメッキ性が良好となり、かつ、素子本体4へのメッキの侵入を抑制できる。
なお、「第1ガラス621は、主成分としてB、SiおよびZnを含む」とは、第1ガラス621に含まれる酸素以外の元素を100モル部としたとき、第1ガラス621にB、SiおよびZnが合計で40モル部以上含まれることが好ましく、50モル部以上含まれることがより好ましい。
また、「第2ガラス622は、主成分としてB、SiおよびZnを含む」とは、第2ガラス622に含まれる酸素以外の元素を100モル部としたとき、第2ガラス622にB、SiおよびZnが合計で40モル部以上含まれることが好ましく、50モル部以上含まれることがより好ましい。
第1ガラス621および第2ガラス622においてBはBとして含まれ、SiはSiOとして含まれ、ZnはZnOとして含まれてもよい。
第1ガラス621の軟化点は導体61の融点よりも低いことが好ましい。ここで、本実施形態において「融点」とは、酸化物が融解し始める温度を意味し、状態図における固相線温度を指す。Cuの融点は1085℃である。接合境界46に接する第1領域6a1に上記の第1ガラス621が含まれることで、焼付電極層6aの焼結性が向上すると共に、第1ガラス621が導体61間および導体61と素子本体4との間に濡れ広がり焼付電極層6aに充填される。これにより、焼付電極層6aを緻密にすることができると共に、素子本体4に対する焼付電極層6aの結合を高める働きをすると考えられる。
本実施形態では、導体61の融点が、第1ガラス621の軟化点よりも高く、その導体61の融点よりも第2ガラス622の軟化点の方が高くなっている。このため、外表面6abにおけるガラス成分の析出が抑制されると考えられる。
第1ガラス621におけるB、SiおよびZnの酸化物換算での含有量を1モル部としたとき、第1ガラス621におけるBの酸化物換算での含有量は好ましくは0.4~0.6モル部であり、より好ましくは0.5~0.6モル部である。
第1ガラス621におけるB、SiおよびZnの酸化物換算での含有量を1モル部としたとき、第1ガラス621におけるSiの酸化物換算での含有量は好ましくは0.15~0.35モル部であり、より好ましくは0.20~0.30モル部である。
第1ガラス621におけるB、SiおよびZnの酸化物換算での含有量を1モル部としたとき、第1ガラス621におけるZnの酸化物換算での含有量は好ましくは0.1~0.35モル部であり、より好ましくは0.20~0.30モル部である。
第1ガラス621が上記の組成比を満たすことで、メッキの素子本体4への侵入抑制効果がより高まる。また、上記の組成比を満たす第1ガラス621の軟化点は550~750℃である。
第1ガラス621には、上記の主成分(B,SiおよびZn)の他に、誘電体層10のペロブスカイト型化合物を構成しているAサイト元素が含まれることが好ましい。第1ガラス621にBaなどのAサイト元素が含まれることで、焼付電極層6aの接合強度がより向上する傾向となる。
第1ガラス621は微量添加物としてBaを含んでいてもよい。BaはAサイト元素である。第1ガラス621におけるB、SiおよびZnの酸化物換算での含有量を1モル部としたとき、第1ガラス621におけるBaの酸化物換算での含有量は0.2モル部以下である。
さらに、第1ガラス621には、Al、Zr、Mn、Mg、Ti、K、Na、Ba、Sr、Ca、希土類元素などが含まれていてもよい。
本実施形態では、X-Z断面の第1領域6a1の範囲において、円相当径で1μm以上の第1ガラス621が好ましくは単位面積あたり0.002~0.020個/μm確認され、より好ましくは0.003~0.010個/μm確認される。X-Z断面の第1領域6a1の範囲において、円相当径で1μm以上の第2ガラス622が好ましくは0.001個/μm以下確認される。
第2ガラス622は、以下の組成比を満たすことがより好ましい。
第2ガラス622におけるB、SiおよびZnの酸化物換算での合計含有量を1モル部としたとき、第2ガラス622におけるBの酸化物換算での含有量は好ましくは0.25~0.4モル部であり、より好ましくは0.25~0.35モル部である。
第2ガラス622におけるB、SiおよびZnの酸化物換算での合計含有量を1モル部としたとき、第2ガラス622におけるSiの酸化物換算での含有量は好ましくは0.4~0.6モル部であり、より好ましくは0.4~0.57モル部である。
第2ガラス622におけるB、SiおよびZnの酸化物換算での合計含有量を1モル部としたとき、第2ガラス622におけるZnの酸化物換算での含有量は0.1~0.35モル部であり、より好ましくは0.1~0.33モル部である。
第2ガラス622は微量添加物としてBaを含んでいてもよい。第2ガラス622におけるB、SiおよびZnの酸化物換算での含有量を1モル部としたとき、第2ガラス622におけるBaの酸化物換算での含有量は0.2モル部以下である。
上記の組成を満たす第2ガラス622は、第1ガラス621と同成分であるため接合しやすく、焼付電極層6aの焼結性や接合強度の向上に寄与する。また、上記の組成を満たす第2ガラス622は、軟化点が高いため、焼付電極層6aの外表面6abに対するガラス成分の析出をより効果的に抑制でき、焼付電極層6aのメッキ性がより向上する。上記の組成を満たす第2ガラス622の軟化点は具体的には600~800℃である。
本実施形態では、X-Z断面の第2領域6a2の範囲において、円相当径で1μm以上の第2ガラス622が好ましくは単位面積あたり0.003~0.030個/μm確認される。X-Z断面の第2領域6a2の所定の範囲において、円相当径で1μm以上の第1ガラス621が好ましくは0.001個/μm以下確認される。
上記の通り、第2ガラス622は、第2領域6a2だけでなく第1領域6a1中にも存在していてもよい。同様に、第1ガラス621も第2領域6a2中に存在していてもよい。特に、第1領域6a1と第2領域6a2との境界では、第1ガラス621と第2ガラス622とが混在し得る。
ただし、第1ガラス621は、外表面6abに実質的に露出していないことが好ましい。換言すると、第1ガラス621が、メッキ電極層6bと実質的に接していないことが好ましい。より具体的に、図2に示すような焼付電極層6aの断面において、メッキ電極層6bに対する第1ガラス621の接触箇所が、1箇所/100μm以下であることが好ましい。
同様に、第2ガラス622は、接合境界46に実質的に露出していないことが好ましい。換言すると、第2ガラス622が、素子本体4と実質的に接していないことが好ましい。より具体的に、図2に示すような焼付電極層6aの断面において、接合境界46に対する第2ガラス622の接触箇所が、1箇所/100μm以下であることが好ましい。
上述した接触箇所の個数は、SEMなどで撮影した断面観察において、外表面6abの長さ100μm中に含まれる接触箇所の数を計測することで測定できる。なお、外表面6abの長さは、焼付電極層6aとメッキ電極層6bとの境界線の長さを意味し、当該境界線は、蛇行していたり、部分的に不明瞭となっていたりする場合がある。接触箇所の個数を測定する際には、境界線の蛇行箇所不明瞭箇所などを正確に測定する必要はない。境界線(外表面6ab)と断面写真の1辺が実質的に平行となるように断面写真を撮影し、断面写真の幅を、境界線の長さ(外表面6abの長さ)とみなせばよい。
また、第1領域6a1の導体61と第2領域6a2の導体61とは、それぞれ組成が異なっていてもよいが、共通の組成であることが好ましい。焼付電極層6aの導体61は、CuおよびCu合金からなる群から選ばれる少なくとも1種が主成分として含まれる。導体61をCu合金とする場合、導体61には、Cu以外にAl、Ni、Ag、Pd、Sn、Zn、P、Fe、Mnなどの元素が含まれ得る。そして、Cu以外の元素は、Cu100モル部に対して、5モル部以下とするのが好ましい。
焼付電極層6aの導体61の主成分とは、焼付電極層6aの導体61に90質量%以上含まれる成分である。
焼付電極層6aでは、焼付電極層6aの単位断面積(M)に対する非金属成分62および空隙63の合計面積(N)の比(N/M)の平均値が、0.10~0.45であることが好ましい。ここで、「非金属成分62」には、第1ガラス621および第2ガラス622も含まれる。また、「非金属成分62」には、金属酸化物も含まれる。さらに、「非金属成分62」には後述する界面突起部16も含まれる。N/Mが上記の範囲内であることにより、焼付電極層6aのメッキ性がより良好になると共に、素子本体4へのメッキの侵入抑制効果がより高まる。
なお、「単位断面積」とは、少なくとも接合境界46付近から外表面6ab付近までを含む面積であることが好ましい。
N/Mを調節する方法は特に限定されないが、各導電性ペーストに添加する非金属成分62の配合比により調節してもよいし、各導電性ペーストに添加するバインダの配合比によっても調節してもよい。
本実施形態では、第1領域6a1の空隙63の大きさよりも第2領域6a2の空隙63の大きさの方が大きい。具体的には、第2領域6a2の空隙63の平均円相当径(D2)に対する第1領域6a1の空隙63の平均円相当径(D1)の比(D1/D2)は0.8以下であることが好ましい。
これによりメッキが第2領域6a2の空隙63に入り易く、焼付電極層6aとNiメッキ層6b1とが強固に接続し易くなり、なおかつメッキの素子本体4への侵入を抑制できる。
なお、外部電極6は、SEM(走査型電子顕微鏡)またはSTEM(走査透過型電子顕微鏡)などによる断面観察で解析することができる。また、導体61、第1ガラス621、第2ガラス622の組成は、断面観察の際に、電子線マイクロアナライザ(EPMA)による成分分析を行うことで測定できる。本実施形態において、EPMAで成分分析等を行う場合、X線分光器として、EDS(エネルギー分散型分光器)、もしくはWDS(波長分散型分光器)を使用することができる。成分分析は、少なくとも3箇所以上で実施し、測定結果の平均値により各要素(61,621,622)の組成を算出することが好ましい。
たとえば焼付電極層6aの単位断面積(M)に対する非金属成分62および空隙63の合計面積(N)の比(N/M)は、SEMやSTEMなどの断面観察により得られた断面写真を画像解析することで測定できる。SEMの反射電子像やSTEMのHAADF像などで焼付電極層6aの断面を観察した場合、他の部分と比較して密度が高いことが多い導体61は、コントラストの明るい部分として認識できることが多く、第1ガラス621または第2ガラス622などの非金属成分62および空隙63などはコントラストの暗い部分として認識できることが多い。そのため、上記のN/Mは、断面写真を二値化するなどして、測定視野全体の面積に対するコントラストの暗い部分の面積の比率として算出できることが多い。
具体的には、N/Mの平均値は下記の方法により求められる。X-Z断面の少なくとも接合境界46付近から外表面6ab付近までを含む面積を単位断面積(M)とする。5箇所の単位断面積についてそれぞれ金属成分62および空隙63の合計面積(N)を求め、N/Mの平均値を算出する。
なお、上記のような断面観察において、第1領域6a1と第2領域6a2との間には、境界が視認できる場合もあれば、境界が視認できない場合もある。そのため、第1領域6a1の接合境界46からX軸方向の外側に向かって測定される第1領域6a1の(層厚み)厚み(t1)、および外表面6abからX軸方向の内側に向かって測定される第2領域6a2の厚み(層厚み)(t2)は、たとえば下記の方法により決定される。
X-Z断面のZ軸方向の所定範囲において、接合境界46から外表面6abまで概ねX軸方向に沿って非金属成分62を順次、好ましくは10箇所以上成分分析する。Z軸方向の所定範囲としては特に限定されないが、たとえば5~10μmの範囲である。各非金属成分62についてそれぞれ3点ずつ成分分析して平均値を算出する。
そして、X軸方向に接合境界46から外表面6abまでのB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対する各点のBの酸化物換算でのモル含有率(以下では「B含有率」とする)およびSiの酸化物換算でのモル含有率(以下では「Si含有率」とする)を算出する。
次に、「B含有率<Si含有率を満たし、接合境界46から最も離れている地点」を確認する。そして、「B含有率<Si含有率を満たし、接合境界46から最も離れている地点」から接合境界46までの距離をt01とする。この作業を10箇所の異なる視野において行うことで、t01の平均値を求め、t01の平均値を第1領域6a1の厚み(t1)とする。
次に、「B含有率>Si含有率を満たし、外表面6abから最も離れている地点」を確認する。そして、「B含有率>Si含有率を満たし、外表面6abから最も離れている地点」から外表面6abまでの距離をt02とする。この作業を10箇所の異なる視野において行うことで、t02の平均値を求め、t02の平均値を第2領域6a2の厚み(t2)とする。
焼付電極層6aの平均厚み(Ts)に対する第2領域6a2の平均厚み(t2)の比(t2/Ts)は、0.12~0.87であることが好ましく、0.22~0.78であることがより好ましい。
次に、図1に示す積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。
まず、素子本体4の製造工程について、説明する。素子本体4の製造工程では、焼成後に誘電体層10となる誘電体用ペーストと、焼成後に内部電極層12となる内部電極層用ペーストとを準備する。
誘電体用ペーストは、たとえば以下のような方法で製造される。まず、誘電体原料を湿式混合等の手段によって均一に混合し、乾燥させる。その後、所定の条件で熱処理することで、仮焼粉を得る。次に、得られた仮焼粉に、公知の有機ビヒクルまたは公知の水系ビヒクルを加えて混練し、誘電体層用ペーストを調製する。こうして得られた誘電体層用ペーストを、ドクターブレード法などの手法によりシート化することで、セラミックグリーンシートを得る。なお、誘電体層用ペーストには、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリットなどから選択される添加物が含有されていてもよい。
一方、内部電極層用ペーストは、導電性金属またはその合金からなる導電性粉末と、公知のバインダや溶剤とを、混練して調製する。なお、内部電極層用ペーストには、必要に応じて、共材としてセラミック粉末(たとえばチタン酸バリウム粉末やジルコン酸カルシウムストロンチウム粉末)が含まれていてもよい。共材は、焼成過程において導電性粉末の焼結を抑制する作用を奏する。
次に、セラミックグリーンシート上に、スクリーン印刷等の各種印刷法や転写法により、内部電極層用ペーストを所定のパターンで塗布する。そして、内部電極パターンを形成したグリーンシートを複数層に渡って積層した後、積層方向にプレスすることでマザー積層体を得る。なお、この際、マザー積層体の積層方向の上面および下面には、セラミックグリーンシートが位置するように、セラミックグリーンシートと内部電極パターンとを積層する。
上記の工程により得られたマザー積層体を、ダイシングや押切りにより所定の寸法に切断し、複数のグリーンチップを得る。グリーンチップは、必要に応じて、可塑剤などを除去するために固化乾燥をしてもよく、固化乾燥後に水平遠心バレル機などを用いてバレル研磨してもよい。バレル研磨では、グリーンチップを、メディアおよび研磨液とともに、バレル容器内に投入し、当該バレル容器に対して回転運動や振動などを与えることで、切断時に生じたバリなどの不要箇所を研磨する。なお、バレル研磨後のグリーンチップは、水などの洗浄液で洗浄し乾燥させる。
次に、上記で得られたグリーンチップに対して、脱バインダ処理および焼成処理を施し、素子本体4を得る。
脱バインダ処理の条件は、誘電体層10の主成分組成や内部電極層12の主成分組成に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。たとえば、昇温速度を好ましくは5~300℃/時間、保持温度を好ましくは180~400℃、温度保持時間を好ましくは0.5~24時間とする。また、脱バインダ雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とする。
焼成処理の条件は、誘電体層10の主成分組成や内部電極層12の主成分組成に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。たとえば、焼成時の保持温度は、好ましくは1200~1400℃、より好ましくは1220~1300℃であり、その保持時間は、好ましくは0.5~8時間、より好ましくは1~3時間であり、昇温速度および冷却速度(降温速度)は好ましくは50~500℃/時間である。また、焼成雰囲気は、還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることができる。さらに、内部電極層12をNiやNi合金等の卑金属で構成する場合には、焼成雰囲気中の酸素分圧を、1.0×10-14~1.0×10-10MPaとすることが好ましい。
なお、焼成処理後には、必要に応じてアニールを施してもよい。アニールは、誘電体層10を再酸化するための処理であり、焼成処理を還元性雰囲気で実施した場合には、アニールを実施することが好ましい。アニール処理の条件も誘電体層10の主成分組成などに応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。たとえば、保持温度を950~1150℃とすることが好ましく、温度保持時間を0~20時間とすることが好ましく、昇温速度および降温速度を50~500℃/時間とすることが好ましい。また、雰囲気ガスとして加湿したNガス等を用いることが好ましく、アニール雰囲気中の酸素分圧は、1.0×10-9~1.0×10-5MPaとすることが好ましい。
上記した脱バインダ処理、焼成処理およびアニール処理において、Nガスや混合ガス等を加湿するためには、たとえばウェッター等を使用すればよく、この場合、水温は5~75℃程度が好ましい。また、脱バインダ処理、焼成処理およびアニール処理は、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
次に、上記で得られた素子本体4の外面に、焼付電極層6aを形成する。焼付電極層6aの形成では、まず、第1領域6a1を構成するための第1導電性ペーストと、第2領域6a2を構成するための第2導電性ペーストとを準備する。第1導電性ペーストには、焼き付け処理後に導体61となる金属粉末と第1ガラス621とが含まれる。一方、第2導電性ペーストには、焼き付け処理後に導体61となる金属粉末と第2ガラス622の粉末とが含まれる。なお、第1導電性ペーストおよび第2導電性ペーストには、上記の他に、適宜、バインダ、溶剤、分散剤、可塑剤、酸化物粉末などの副成分原料などが含まれ得る。
なお、第1ガラス621は、たとえば、ZnO粉末、SiO粉末、B粉末、BaCO粉末、その他酸化物粉末などの出発原料を所定の比率で混ぜ合わせた後、るつぼに入れた後に、炉に入れて加熱して溶融し、溶融した状態でトングを用いて炉から取り出し、るつぼを傾けて溶融体を水中に入れて急冷し、その後に乳鉢で砕き、さらにボールミル等を用いて所定の粒径に粉砕することで製造できる。第1ガラス621の組成は、出発原料の配合比により調整すればよい。また、第2ガラス622についても、ZnO粉末、SiO粉末、B粉末、BaCO粉末、その他酸化物粉末などの出発原料を所定の比率で混ぜ合わせた後、るつぼに入れた後に、炉に入れて加熱して溶融し、溶融した状態でトングを用いて炉から取り出し、るつぼを傾けて溶融体を水中に入れて急冷し、その後に乳鉢で砕き、さらにボールミル等を用いて所定の粒径に粉砕することで製造できる。第2ガラス622の組成は、出発原料の配合比により調整すればよい。
また、各導電性ペーストで使用するバインダや溶剤、分散剤は、特に限定されず誘電体層用ペーストと同様の材質を使用することができる。たとえば、バインダは、アクリル、ブチラール、エチルセルロース等の通常の各種バインダから適宜選択することができ、溶剤は、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、ターピネオール、ブチルカルビトール等の各種有機溶剤や水系溶剤から適宜選択することができる。
上述した2種類の導電性ペーストを準備した後、ディップ法または印刷法により、素子本体4の外面に第1導電性ペーストを塗布し乾燥させる。そして、素子本体4を、700℃~1000℃の温度で、0.1時間~3時間保持することで、第1導電性ペーストを焼付処理する。その後、ディップ法または印刷法により、焼き付けた第1導電性ペーストの上に、第2導電性ペーストを塗布し乾燥させる。そして、素子本体4を、700℃~1000℃の温度で、0.1時間~3時間保持することで、第2導電性ペーストを焼付処理する。これにより、所定の第1領域6a1と第2領域6a2とを有する焼付電極層6aを形成することができる。なお、上記の工法では、第1導電性ペーストと第2導電性ペーストとを、別途、焼付処理したが、これらを同時に焼付処理してもよい。
焼付電極層6aの形成後は、電解メッキや無電解メッキなどのメッキ処理を施すことで、焼付電極層6aの上にメッキ電極層6bを形成することができる。なお、焼付電極6aの上に樹脂電極を形成してもよく、この場合は、ディップ法や印刷法などにより、熱硬化性樹脂を含む樹脂電極用導電性ペーストを、焼付電極層6aを覆うように塗布し、その後、硬化処理を施せばよい。樹脂電極の上にさらにメッキ電極層を形成してもよい。
以上の工程により、外部電極6を有する積層セラミックコンデンサ2が得られる。
得られた積層セラミックコンデンサ2は、ハンダ(溶融ハンダ、ハンダクリーム、ハンダペーストを含む)または導電性接着剤を用いて、プリント配線板などの基板に面実装することができ、各種電子機器等に使用される。もしくは、積層セラミックコンデンサ2は、ワイヤ状のリード端子や板状の金属端子を介して、基板に実装することも可能である。
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、焼付電極層6aを有している。この焼付電極層6aは、素子本体4の端面4aと接する第1領域6a1と、メッキ電極層6bと接する第2領域6a2とを有し、第1領域6a1に所定の元素を含む第1ガラス621が含まれ、第2領域6a2に所定の元素を含む第2ガラス622が含まれている。
本発明者は、積層セラミックコンデンサ2が上記の構成を有することにより、焼付電極層6aのメッキ性が良好となり、かつ、素子本体4へのメッキの侵入を抑制できることを見出した。
上記の効果が得られる理由は、必ずしも明らかではないが、以下に示す事由が考えられる。
まず、本実施形態では、メッキ電極層6bと接する焼付電極層6aの外表面6abに第2ガラス622を含む第2領域6a2が存在している。本実施形態に係る第2ガラス622は比較的軟化点が低い。このように、外表面6abの近傍に第2ガラス622が存在することで、焼付電極層6aの外表面6abに、第2ガラス622が析出することを抑制できると考えられる。その結果、焼付電極層6aの上にメッキ電極層6bを形成する際に、メッキ不良が生じることを抑制できると考えられる。
また、本実施形態では、素子本体4の端面4aと接合する第1領域6a1に、所定の元素を含む第1ガラス621が含まれている。当該第1ガラス621は、焼き付け時に軟化して、導体61中および導体61と端面4aとの間に入り込み、焼付電極層6aの素子本体4付近に充填され、焼付電極層6aの構造を緻密にする。その結果、メッキの素子本体4への侵入を抑制できると共に素子本体4に対する焼付電極層6aの接合強度を向上させると考えられる。その結果、積層セラミックコンデンサ2では、熱衝撃を受けたとしても、素子本体4の端面4aから外部電極6が剥離することを抑制できる。
また、メッキ液は酸性を示す。このため、メッキが素子本体4へ侵入すると、Ni内部電極層12は腐食されやすい。この場合、誘電体層10と内部電極層12との界面が特に腐食されやすい。さらに、誘電体層10の主成分が(Ca,Sr)ZrOまたは(Ca,Sr)(Ti,Zr)Oである場合には、誘電体層10の主成分がBaTiOである場合に比べて硬く、なおかつNi内部電極層12との線膨張係数の差が大きい。このため、誘電体層10の主成分が(Ca,Sr)ZrOまたは(Ca,Sr)(Ti,Zr)Oである場合には、素子本体4にメッキ液が侵入すると、Ni内部電極層12の腐食によりNi内部電極層12と誘電体層10との界面が剥離すると考えられ、クラックが発生し易い。
これに対して、本実施形態によれば、メッキの素子本体4への侵入を抑制できることから、誘電体層10の主成分が(Ca,Sr)ZrOまたは(Ca,Sr)(Ti,Zr)Oであっても、クラックの発生を抑制できる。
さらに、メッキ液は酸性を示すために水素イオンを含む。水素イオンが素子本体4へ侵入することにより、コンデンサの電気抵抗が低下する恐れがある。特に、誘電体層10の主成分がBaTiOである場合は誘電体層10の主成分が(Ca,Sr)ZrOである場合に比べて素子本体10が水素イオンを透過し易い。
これに対して、本実施形態によれば、メッキの素子本体4への侵入を抑制できることから、誘電体層10の主成分がBaTiOであっても、コンデンサの電気抵抗の低下を抑制できる。
特に、第1ガラス621、および第2ガラス622が、所定の組成比を満たすことで、焼付電極層6aのメッキ性とメッキの素子本体4への侵入抑制効果とを、より好適に両立させることができる。
第2実施形態
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサは、以下に示す以外は、第1実施形態の積層セラミックコンデンサと同様である。
図3に示すように、本実施形態に係る素子本体4は、誘電体層10のX軸方向の端部に境界層14を有していてもよい。また、境界層14は内部電極層12と接するように備えられていてもよい。
境界層14は、外部電極6と内部電極層12との接続が確保されるように素子本体4のX軸方向の端面を断続的に覆っている。すなわち、境界層14は、内部電極層12のX軸方向の端部が外部電極6と接続する部分では、部分的に途切れている。
外部電極6と、内部電極層12との接続界面は明確でなくてもよく、外部電極6の一部が境界層14の内部に入り込んでもよく、あるいは、内部電極層12の端部が境界層14の内部に入り込んでもよい。
X-Z断面を観察した場合、素子本体4のX軸方向の端面付近では、境界層14が一部の内部電極層12のX軸方向の端部を覆っている箇所が存在していてもよい。各内部電極層12は、X軸方向だけでなくY軸方向に沿っても存在しており、各内部電極層12の端部がY軸方向において一部でも境界層14を貫通して外部電極6と電気的に接続していれば、内部電極層12の端部が部分的に境界層14に覆われていたとしても、各内部電極層12と外部電極6との電気的接続は確保できる。
本実施形態に係る境界層14にはAサイトの元素およびBサイトの元素が主成分として含まれる。
「境界層14にはAサイトの元素およびBサイトの元素が主成分として含まれる」とは、境界層14において、酸素以外の元素の合計を100モル部としたとき90モル部以上をAサイトの元素およびBサイトの元素の合計が占めるという趣旨である。
境界層14に含まれるAサイトの元素としては特に限定されないが、Baであってもよい。また、境界層14に含まれるBサイトの元素としては特に限定されないが、Tiであってもよい。
本実施形態では、境界層14に含まれるBaおよびTiの合計を1モル部としたとき、境界層14にはBaが0.27~0.40モル部含まれることが好ましい。この場合に、境界層14の線膨張係数γは13.0ppm/℃~14.5ppm/℃の範囲に含まれる傾向となる。本実施形態では、境界層14がBaTiであることがさらに好ましい。
誘電体層10の線膨張係数をαとし、外部電極6の線膨張係数をβとしたとき、α、βおよびγの大小関係は、β>γ>αとなることが好ましい。
たとえば、誘電体層10の主成分であるBaTiOの線膨張係数αは9.4ppm/℃である。また、外部電極6に用いられるCuの線膨張係数βは17.5ppm/℃である。さらに、境界層14を構成するBaTiの線膨張係数γは13.3ppm/℃である。
また、内部電極層12の線膨張係数をσとしたとき、α、β、γおよびσの大小関係は、β>γ>σ>αとなることが好ましい。
図4は図3のIV部の拡大図である。図4に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、誘電体層10のX軸方向の端部に形成された境界層14に接続され、外部電極6の内部に食い込んで形成される不定形の界面突起部16を有していてもよい。
本実施形態における界面突起部16は、アンカー効果が得られる形状であることが好ましい。「アンカー効果が得られる形状」とは、界面突起部16が境界層14の外面(Y-Z平面)に沿って薄く広がるのではなく、図4に示すように、境界層14の外面から外部電極6の内部に向かって(すなわちX軸方向の外側に向かって)、3次元的に広がることを意味する。
図4に示すように、好ましくは、界面突起部16はX軸方向においてくびれを有する。このような形状は、たとえば界面突起部用ペーストに添加する界面突起部用粒子の形状を制御することにより実現できる。界面突起部16の形状が上記の特徴を有することにより、素子本体4に対する外部電極6の接合強度がより向上する。
界面突起部16は、素子本体4と外部電極6との界面付近のZ軸方向の所定長さLz中に、所定の数以上存在することが好ましい。具体的には、素子本体4と外部電極6の界面付近を含む断面(X-Z断面)において、所定長さLzを100μmとすると、界面突起部16が2個以上存在することが好ましく、10個以上存在することがより好ましい。界面突起部16の個数の上限は特に制限されないが、内部電極層12と外部電極6との電気的接続を確保する観点から、15個以下であることが好ましい。
なお、所定長さLzは素子本体4と外部電極6との界面付近の2点間の距離である。このため、素子本体4と外部電極6の界面に凹凸がある場合には、所定長さLzは凹凸の長さではなく、凹凸上の2点を決定して、その2点間の距離を所定長さLzとする。
本実施形態に係る界面突起部16にはAサイトの元素、Bサイトの元素およびSiが主成分として含まれる。
「界面突起部16にはAサイトの元素、Bサイトの元素およびSiが主成分として含まれる」とは、界面突起部16において、酸素以外の元素の合計を100モル部としたとき90モル部以上をAサイトの元素、Bサイトの元素およびSiの合計が占めるという趣旨である。
界面突起部16に含まれるAサイトの元素としては特に限定されないが、Baであってもよい。界面突起部16に含まれるBサイトの元素としては特に限定されないが、Tiであってもよい。
本実施形態では、界面突起部16に含まれるBa、TiおよびSiの合計を1モル部としたとき、界面突起部16にはBaが0.35~0.45モル部含まれることが好ましい。
本実施形態では、界面突起部16に含まれるBa、TiおよびSiの合計を1モル部としたとき、界面突起部16にはTiが0.10~0.30モル部含まれることが好ましい。
本実施形態では、界面突起部16に含まれるBa、TiおよびSiの合計を1モル部としたとき、界面突起部16にはSiが0.35~0.45モル部含まれることが好ましい。
本実施形態では、界面突起部16の組成は、BaTi(SiOであることであることがさらに好ましい。
本実施形態に係る界面突起部16の線膨張係数をδとしたとき、α、β、γおよびδの大小関係は、β>γ>α>δとなることが好ましい。
たとえば、界面突起部16の主成分であるBaTi(SiOの線膨張係数δは5.9ppm/℃である。
境界層14および界面突起部16の構造は、SEMまたはSTEMなどによる断面観察で解析できる。また、境界層14および界面突起部16の組成は、断面観察の際に、EPMAによる成分分析を行うことで測定できる。成分分析は少なくとも3箇所以上で実施し、測定結果の平均値により境界層14の組成を算出することが好ましい。
また、境界層14は、第1導電性ペーストを高温焼付処理するか、もしくは、境界層用ペーストを使用して形成することができ、境界層用ペーストを使用する方法を採用することが好ましい。なお、境界層14は、ペーストを用いずに、各種蒸着法によるセラミックコーティングにより形成してもよい。
高温焼付処理を採用する場合は、保持温度を800℃~1000℃とすることが好ましく、保持時間を0.1時間~3時間とすることが好ましい。通常の焼付処理よりも、より高い温度で第1導電性ペーストを焼き付けるか、もしくは、長時間かけて第1導電性ペーストを焼き付けることにより、境界層14が形成される。
境界層用ペーストを使用する場合は、焼成前のグリーンチップの外面、もしくは、焼成後の素子本体4の外面に、境界層用ペーストを塗布して焼き付けることで、境界層14を形成することができる。
この場合、境界層用ペーストには、境界層用粉末と、バインダ、溶剤が含まれ、その他必要に応じて、分散剤、可塑剤などを添加してもよい。境界層用粉末は、BaCO粉末と、TiO粉末などの出発原料を所定の比率で混合した後、仮焼きし粉砕することで得られる。
グリーンチップまたは素子本体4への境界層用ペーストの塗布方法としては、ディップ法、スクリーン印刷などの各種印刷法、ディスペンサーなどを用いた塗布法、スプレーを用いた噴霧法などを適用することができる。また、境界層用ペーストは、少なくとも端面4aに塗布し、その他、側面4bの一部に塗布してもよい。この際、境界層用ペーストの塗布量を制御することで、境界層14の平均長さLr(平均厚み)を調整することができる。
素子本体4に境界層用ペーストを塗布した場合は、塗布後に境界層用ペーストを乾燥させ、700℃~1000℃の温度で、0.1時間~3時間、焼き付け処理し、境界層14を形成する。この場合、境界層用ペーストの焼き付けは、第1導電性ペーストの焼き付けと同時に実施してもよい。境界層14の平均長さLrは、焼き付け処理の条件にも影響される。焼き付け処理時の温度を低く設定したり、保持時間を短くしたりすると、平均長さLrが小さくなる(平均厚みが薄くなる)傾向となる。平均長さLrは、上記の他に、境界層用ペーストの塗布厚みなどにも影響され得る。なお、グリーンチップに対して境界層用ペーストを塗布した場合は、グリーンチップの焼成時に、境界層用ペーストが焼き付けられる。
なお、ペーストを使用して境界層14を形成する場合、ペーストの塗布前、および/または、ペーストの焼き付け後に、素子本体4に対してバレル研磨を施すことが好ましい。バレル研磨では、内部電極層12の端部よりもセラミック成分(誘電体層10または境界層14)が選択的に研磨され、端面4aの最表面に内部電極層12の端部が露出しやすくなる。つまり、バレル研磨により、外部電極6に対する内部電極層12の電気的接合が良好となる。
なお、境界層用ペーストと第1導電性ペーストとを同時に焼き付けた場合であっても、焼付電極層6aと内部電極層12とは導通をとることができる。なぜならば、内部電極層12の導電材と焼付電極層6aの導体61とが反応した後に、境界層14を構成するAサイトの元素の酸化物および/またはBサイト元素の酸化物などと、誘電体層10を構成するABOと、が反応するため、内部電極層12のX軸方向の端部に境界層用ペーストによる酸化物が形成されにくいからである。
界面突起部16を有する場合には、界面突起部16を構成する化合物(界面突起部用粒子)と、導体61を構成する金属粉末と、を含む界面突起部用ペーストを用いる以外は上記と同様にして製造することができる。「界面突起部用粒子」とは、上記した界面突起部16の組成を満たす化合物であることが好ましく、たとえばBaTi(SiOである。
本実施形態では、たとえば、焼成された素子本体4に、境界層用ペーストを塗布し、その上に界面突起部用ペーストを塗布し、その上に第1導電性ペーストを塗布し、その上に第2導電性ペーストを塗布し、境界層用ペースト、界面突起部用ペースト、第1導電性ペーストおよび第2導電性ペーストを同時焼き付けする。焼き付け温度は特に限定されないが、800~1000℃である。
なお、この場合でも外部電極6と内部電極層12とは導通をとることができる。なぜならば、内部電極層12の導電材と外部電極6の導体61とが反応した後に、界面突起部16を構成するBaTi(SiOなどと、境界層14を構成するBaTiなどと、誘電体層10を構成するABOとが反応するため、内部電極層12のX軸方向の端部に境界層用ペーストによる酸化物が形成されにくいからである。
本実施形態では、境界層14を有することにより、焼き付け時の冷却時や、製造時または使用時の熱衝撃などで、外部電極6と誘電体層10との界面に熱応力が生じることを有効に防止することができる。その理由は下記の通りであると考えられる。
本実施形態では、誘電体層10にはABOで表されるペロブスカイト型化合物が主成分として含まれ、素子本体4が誘電体層10の端部にAサイトの元素およびBサイトの元素を所定のモル比で含む境界層14を有することとしている。このため、誘電体層10および境界層14は、相互拡散し易く、誘電体層10と境界層14とが強固に接合されると考えられる。
さらに、境界層14のBサイトの元素の含有量がAサイトの元素の含有量より多いため外部電極6と境界層14とが強固に接合されると考えられる。
本実施形態では、このように誘電体層10および境界層14が強固に接合されると共に、外部電極6および境界層14も強固に接合されることから、素子本体4と外部電極6とが強固に接合されている。なお、接合強度が高いことは、たとえば引張強度試験などで確認することができる。
さらに、外部電極6の焼付電極層6aの導体にはCuおよびCu合金からなる群から選ばれる少なくとも1種が主成分として含まれることにより、境界層14の線膨張係数γが外部電極6の線膨張係数βより小さく、誘電体層10の線膨張係数αより大きくなる。本実施形態では、このような境界層14が備えられていることにより外部電極6と誘電体層10との界面に生じる熱応力を緩和することができ誘電体層10と外部電極6との接合強度をより高めることができると考えられる。
さらに、内部電極層12がNiまたはNi合金を主成分として含む場合には、誘電体層10の線膨張係数α、境界層14の線膨張係数γおよび内部電極層12の線膨張係数σの大小関係がγ>σ>αとなっている。また、本実施形態では、内部電極層12と接するように境界層14が備えられている。このため、内部電極層12に線膨張係数の近い境界層14が接することになり、素子本体4の表面付近の誘電体層10と内部電極層12の剥がれを抑制できる効果が高められる。
さらに、境界層14および界面突起部16に、共にAサイトの元素およびBサイトの元素を含ませることで、相互拡散し易く、境界層14と界面突起部16とが強固に接合される。
また、本実施形態では、界面突起部16と第1ガラス621とは共に酸化物であることから、界面突起部16と、第1ガラスを含む焼付電極層6aと、が相互に濡れ易く、界面突起部16と、第1ガラス621を含む焼付電極層6aとが強固に接合される。
また、Ba、TiおよびSiを所定のモル比で含む界面突起部16は比較的線膨張係数が低い。このような界面突起部16が外部電極6の境界層14側の面に備えられていることにより、焼き付け時の冷却時に外部電極6を構成する成分が界面突起部16を熱応力で締め付ける。これにより、誘電体層10と外部電極6とをより強固に接合することができ、接合強度をより高めることができると考えられる。
さらに、本実施形態では、第1領域6a1の接合境界46付近に境界層14および/または界面突起部16による凹凸が形成され易い。このため、第1領域6a1に含まれる第1ガラス621は、境界層14および/または界面突起部16により形成された凹凸部に入り込んで濡れ広がることができ、素子本体4の接合境界46付近をより緻密な構造にすることができる。その結果、メッキの素子本体4への侵入抑制効果をより高めることができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、本実施形態では、セラミック電子部品として積層セラミックコンデンサ2を例示したが、本発明のセラミック電子部品は、たとえば、バンドパスフィルタ、積層三端子フィルタ、サーミスタ、バリスタなどであってもよい。
また、本実施形態では、誘電体層10と内部電極層12とをZ軸方向に積層したが、積層方向は、X軸方向もしくはY軸方向であってもよい。その場合、内部電極層12の露出面に合わせて外部電極6を形成すればよい。また、素子本体4は、必ずしも積層体である必要はなく、単層であってもよい。さらに、内部電極層12は、スルーホール電極を介して、素子本体4の外面に引き出されていてもよく、この場合、スルーホール電極と外部電極6とが電気的に接合する。
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
(実験1)
実験1では、以下に示す手順で、試料番号1~6に係る積層セラミックコンデンサ2を作製した。まず、誘電体層用ペーストと内部電極層用ペーストを作製し、これらペーストを用いて、シート法によりグリーンチップを製造した。この際、誘電体層10の主成分となる誘電体原料として、試料番号1~4では、BaTiOを用い、試料番号5および6では(Ca0.7Sr0.3)(Ti 0.04Zr0.96)Oを用いた。また、各試料では、いずれも、誘電体層10の副成分として、MnO、Al、SiOなどを添加し、内部電極層12の主成分はNiとした。
次いで、上記で得られたグリーンチップに対して、実施形態で述べた条件で脱バインダ処理を施し、その後、焼成処理することで素子本体4を得た。焼成処理の条件は、保持温度:1300℃、保持時間:2時間、雰囲気ガス:加湿したN+H混合ガスとした。そして、上記の素子本体4に対して、実施形態で述べた条件でアニール処理を施した。
次に、焼付電極層用の第1導電性ペーストと第2導電性ペーストとを準備した。第1導電性ペーストには、導体61を構成するCu粉末100質量部と、非金属成分62として表1に記載の組成となるB-SiO-ZnO系ガラス7質量部とを添加した。一方、第2導電性ペーストには、導体61を構成するCu粉末100質量部と、非金属成分62として表1に記載の組成となるB-SiO-ZnO系ガラス7質量部とを添加した。
次に、上記の第1導電性ペーストを、ディップ法により素子本体4の外面(端面4aおよび側面4bの一部)に塗布し、乾燥させ、さらに、第2導電性ペーストをディップ法により塗布し、乾燥させた。その後、素子本体4を800℃で、0.2時間保持して、第2導電性ペーストを焼き付け、第1領域6a1と第2領域6a2とを有する焼付電極層6aを形成した。
また、焼付電極層6aの上には、Niメッキ電極層6b1およびSnメッキ電極層6b2を形成した。このようにして、外部電極6が形成されたコンデンサ試料(積層セラミックコンデンサ2)を得た。
実験1では、いずれも、コンデンサ試料における素子本体4の寸法が、L0×W0×T0=2.0mm×1.25mm×1.25mmであった。また、内部電極層12に挟まれた誘電体層10の積層数は、80とした。
また、実験1に係るコンデンサ試料から破壊検査用のサンプルを抽出し、当該サンプルを用いてSEMによる断面観察を行った。具体的に、抽出したサンプルをX-Z面に沿って切断し、当該断面を鏡面研磨した後、SEMにより誘電体層10の平均厚みTd、内部電極層12の平均厚みTe、焼付電極層6aの平均厚みTs、端面側における外部電極6の平均厚みTtを測定した。実験1の測定結果は、いずれも下記のとおりであった。
誘電体層10の平均厚みTd:10μm
内部電極層12の平均厚みTe:1.5μm
焼付電極層6aの平均厚みTs:8.2μm
外部電極6の平均厚みTt:89μm
また、上記の断面観察では、EPMAにより焼付電極層6aに含まれる導体61および非金属成分62(ガラス)の成分分析を実施し、第1実施形態に記載の方法により、第1領域6a1および第2領域6a2をそれぞれ決定した。
ただし、試料番号3、試料番号4、試料番号6、は、第1導電性ペーストと第2導電性ペーストに同じガラスを入れたため、第1領域6a1と第2領域6a2が区別しない。
また、試料番号2では、第1導電性ペーストに第1ガラスを入れておらず、第2導電性ペーストに第2ガラスを入れていないので、下記の方法により第1領域6a1および第2領域6a2を決定した。
すなわち、第1領域6a1の平均厚み(t1)を、焼付電極層6aの平均厚みTsに対して(1/2)倍とし、第2領域6a2の平均厚み(t2)を焼付電極層6aの平均厚みTsに対して、(1/2)倍として、第1領域6a1および第2領域6a2を決定した。
成分分析の結果、第1導電性ペーストに添加した原料粉末の組成と第1領域6a1の組成とが概ね一致しており、第2導電性ペーストに添加した原料粉末の組成と第2領域6a2の組成とが概ね一致していることが確認できた。
実験1では、作製したコンデンサ試料のメッキ性(メッキ不良の有無)を評価するために、はんだ付け性試験を実施した。また、メッキの素子本体4への侵入抑制効果を評価するために240時間後抵抗試験およびクラック数試験を行った。結果を表2に示す。以下、各試験の詳細を説明する。
はんだ付け性試験
コンデンサ試料を、245℃のはんだ槽に3秒間浸漬させた。この際、Sn-Ag-Cuのはんだを使用し、コンデンサ試料の端面側0.1mmをはんだ槽に浸漬させた。そして、コンデンサ試料をはんだ槽から引き上げた後、コンデンサ試料の端面4aを観察し、端面4aに対してはんだが濡れ広がった面積が95%以上である場合を合格とし、95%未満を不合格とした。当該試験は、各実施例につき10個のコンデンサ試料に対して実施し、不合格となったサンプルの比率(NG比率)を算出した。
240時間後抵抗試験
得られた80個のコンデンサ試料に対し、125℃にて、50Vの直流電圧の印加状態に240時間保持し、印加開始から絶縁抵抗が一桁以上落ちた個数を数えた。
クラック数試験
コンデンサ試料をFR4基板(ガラスエポキシ基板) にSn-Ag-Cu半田で実装し、プレッシャークッカー槽に投入し、121℃、湿度95%の雰囲気下で100時間行う加速耐湿試験を実施した。各コンデンサ試料について、100個ずつ試験を実施した。各コンデンサ試料の不良数を「クラック数試験」の結果として示す。
Figure 2022136771000002
Figure 2022136771000003
表1および表2より、(SB/FB)<1および(SSi/FSi)>1を満たす場合(試料番号1)は(SB/FB)が1.74であり、(SSi/FSi)が0.46である場合(試料番号2)や、(SB/FB)が1.00であり、(SSi/FSi)が1.00であり、なおかつ第2領域6a2のBの含有量が多くSiの含有量が少ない場合(試料番号4)に比べてはんだ付け性試験が良好な結果となることが確認できた。
(SB/FB)<1および(SSi/FSi)>1を満たす場合(試料番号1)はメッキ電極と接することとなる焼付電極層6aの外表面6abに、所定の組成の第2ガラス622を含む第2領域6a2が存在している。この第2ガラス622は軟化点が高い。このように外表面6ab側に所定の第2ガラス622が存在していると、焼付電極層6aの外表面6abに、第2ガラス622が析出することを抑制できると考えられる。その結果、焼付電極層6aの上にメッキ電極を形成する際に、メッキ不良が生じることを抑制できたと考えられる。
表1および表2より、(SB/FB)<1および(SSi/FSi)>1を満たす場合(試料番号1)は(SB/FB)が1.00であり、(SSi/FSi)が1.00であり、なおかつ第1領域6a1のBの含有量が少なく、Siの含有量が多い場合(試料番号3)に比べて240時間後抵抗試験が良好な結果となることが確認できた。
(SB/FB)<1および(SSi/FSi)>1を満たす場合(試料番号1)は素子本体4の端面と接合する第1領域6a1に、所定の組成を有する第1ガラス621が含まれている。この第1ガラス621は軟化点が低い。このため、第1ガラス621が含まれることにより焼付電極層6aの焼結性が向上する。また、第1ガラス621は、導体61中および導体61と素子本体4の端面との間に濡れ広がり、充填する。これらの結果、外部電極6の素子本体4の近傍の構造は緻密になる。このため、メッキの素子本体4への侵入を抑制することができる。
水素イオンが素子本体4へ侵入することにより、コンデンサの電気抵抗が低下する恐れがある。しかし、試料番号1では、メッキの素子本体4への侵入を抑制できることから、コンデンサの電気抵抗の低下を抑制できたと考えられる。
表1および表2より、(SB/FB)<1および(SSi/FSi)>1を満たす場合(試料番号6)は(SB/FB)が1.00であり、(SSi/FSi)が1.00であり、なおかつ第1領域6a1のBの含有量が少なく、Siの含有量が多い場合(試料番号6)に比べてクラック数が良好な結果となることが確認できた。(SB/FB)<1および(SSi/FSi)>1を満たす場合(試料番号5)は試料番号1と同様の理由により、メッキの素子本体4への侵入を抑制することができたと考えられる。
また、水素を含むメッキが素子本体4へ侵入すると、Ni内部電極層12は腐食されやすい。この場合、誘電体層10とNi内部電極層12との界面が特に腐食されやすい。さらに、誘電体層10の主成分が(Ca,Sr)ZrOである場合には、誘電体層10の主成分がBaTiOである場合に比べて硬く、なおかつNi内部電極層12との線膨張係数の差が大きい。このため、誘電体層10の主成分が(Ca,Sr)ZrOである場合には、素子本体4に水素イオンが侵入した場合に、Ni内部電極層12の腐食によるNi内部電極層12と誘電体層10との界面の応力がより大きくなることから、クラックが発生し易い。
これに対して、試料番号5では、メッキの素子本体4への侵入を抑制できることから、誘電体層10の主成分が(Ca,Sr)ZrOであっても、クラックの発生を抑制できたと考えられる。
なお、表1および表2より、試料番号5は、第1領域6a1に第1ガラス621を含み、第2領域6a2に第2ガラス622を含むことが確認できた。
(実験2)
実験2では、試料番号21~24について第2導電性ペーストの塗布厚みを変えることにより焼付電極層6aの平均厚み(Ts)に対する第1領域6a2の平均厚み(t2)を変化させた以外は実験1と同様にしてコンデンサ試料を得た。試料番号1および21~24についてはんだ付け性試験、PCT後はんだ付け性試験、240時間後抵抗試験および500時間後抵抗試験を行った。結果を表3に示す。なお、PCT後はんだ付け性試験および500時間後抵抗試験は下記の通り行った。
なお、試料番号1および21~24のt2/Tsは第1実施形態に記載の方法により測定した。
PCT後はんだ付け性試験
試験の前処理として、コンデンサ試料を、温度:105℃-相対湿度100%RHで管理した恒温槽(PCT槽)内に、4時間保持した。その後、コンデンサ試料を、245℃のはんだ槽に3秒間浸漬させた。この際、Sn-Ag-Cuのはんだを使用し、コンデンサ試料の端面側0.1mmをはんだ槽に浸漬させた。そして、コンデンサ試料をはんだ槽から引き上げた後、コンデンサ試料の端面4aを観察し、端面4aに対してはんだが濡れ広がった面積が95%以上である場合を合格とし、95%未満を不合格とした。当該試験は、各実施例につき10個のコンデンサ試料に対して実施し、不合格となったサンプルの比率(NG比率)を算出した。
500時間後抵抗試験
得られた80個のコンデンサ試料に対し、125℃にて、50Vの直流電圧の印加状態に500時間保持し、印加開始から絶縁抵抗が一桁以上落ちた個数を数えた。
Figure 2022136771000004
表3より、t2/Tsが0.22~0.78の場合(試料番号22、1、23)は、t2/Tsが0.12の場合に比べてPCT後はんだ付け性試験の結果が良好になることが確認できた。
これは、試料番号22、1、23では、第1領域6a2の厚みを十分な厚みにすることができたことから、メッキ性がより良好になったためであると考えられる。
t2/Tsが0.22~0.78の場合(試料番号22、1、23)は、t2/Tsが0.87の場合に比べて500時間後抵抗試験の結果が良好になることが確認できた。
これは、試料番号22、1、23では、第2領域6a2の厚みが厚くなりすぎていないため、第1領域6a1の厚みを十分に確保できたことから、メッキの素子本体4への侵入抑制効果がより高まり、コンデンサの電気抵抗の低下を十分に抑制できたと考えられる。
(実験3)
実験3では、試料番号31および32について第1導電性ペーストに含まれる第1ガラス621の量および第2導電性ペーストに含まれる第2ガラス622の量を変化させることにより、焼付電極層6aの単位断面積(M)に対する非金属成分62および空隙63の合計面積(N)の比(N/M)の平均値を変化させた以外は実験1と同様にしてコンデンサ試料を作製した。試料番号1、31および32のはんだ付け性試験、240時間後抵抗試験および500時間後抵抗試験の結果を表4に示す。
なお、試料番号1、31および32のN/Mは第1実施形態に記載の方法により測定した。
Figure 2022136771000005
N/Mの平均値が0.22以下の場合(試料番号32および1)は、N/Mの平均値が0.41の場合(試料番号31)に比べて500時間後抵抗試験の結果が良好になることが確認できた。
試料番号32および1では、素子本体4へのメッキの侵入抑制効果がより高まり、コンデンサの電気抵抗の低下を十分に抑制できたと考えられる。
(実験4)
実験4では、試料番号41~44について、第1導電性ペーストに含まれる第1ガラス621を表5に記載の組成となるように変化させ、第2導電性ペーストに含まれるに第2ガラス621を表5に記載の組成となるように変化させた以外は、実験1と同様にしてコンデンサ試料を作製した。はんだ付け性試験および240時間後抵抗試験の結果を表6に示す。
Figure 2022136771000006
Figure 2022136771000007
表6より、(SB/FB)<1および(SSi/FSi)>1を満たし、第2ガラス622におけるB、SiおよびZnの酸化物換算での合計含有量を1モル部としたとき、第2ガラス622におけるBの酸化物換算での含有量は0.25~0.4モル部であり、第2ガラス622におけるSiの酸化物換算での含有量は0.4~0.6モル部であり、第2ガラス622におけるZnの酸化物換算での含有量は0.1~0.35モル部であり、第1ガラス621におけるB、SiおよびZnの酸化物換算での含有量を1モル部としたとき、第1ガラス621におけるBの酸化物換算での含有量は0.4~0.6モル部であり、第1ガラス621におけるSiの酸化物換算での含有量は0.15~0.35モル部であり、第1ガラス621におけるZnの酸化物換算での含有量は0.1~0.35モル部である試料番号1および41~44は、はんだ付け性試験および240時間後抵抗試験が良好であることが確認できた。
2 … 積層セラミックコンデンサ
4 … 素子本体
4a … 端面
4b … 側面
10 … セラミック層(誘電体層)
12 … 内部電極層
14 … 境界層
16 … 界面突起部
6 … 外部電極
6a … 焼付電極層
6a1 … 第1領域
6a2 … 第2領域
61 … 導体
62 … 非金属成分
63 … 空隙
621 … 第1ガラス
622 … 第2ガラス
6ab … 外表面(焼付電極層とメッキ電極層との境界)
6b … メッキ電極層
6b1 … Niメッキ層
6b2 … Snメッキ層
46 … 接合境界

Claims (8)

  1. セラミック層と内部電極層とが積層された素子本体と、
    前記内部電極層の少なくとも一端と電気的に接続している外部電極と、を有するセラミック電子部品であって、
    前記外部電極が、焼付電極層を有し、
    前記焼付電極層が、前記素子本体の前記端面と接しており前記素子本体との接合境界の近傍に位置する第1領域と、前記第1領域の外側に位置し前記焼付電極層の外表面を構成している第2領域と、を有しており、
    前記第1領域には、第1ガラスが含まれ、前記第2領域には、第2ガラスが含まれており、
    前記第1ガラスにおけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対するBの酸化物換算でのモル含有率が、前記第2ガラスにおけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対するBの酸化物換算でのモル含有率よりも高く、
    前記第1ガラスにおけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対するSiの酸化物換算でのモル含有率が、前記第2ガラスにおけるB、SiおよびZnの酸化物換算でのモル合計含有量に対するSiの酸化物換算でのモル含有率よりも低く、
    Bの酸化物はBとし、Siの酸化物はSiOとし、Znの酸化物はZnOとして酸化物換算するセラミック電子部品。
  2. 前記セラミック層にはABOで表されるペロブスカイト型化合物が主成分として含まれる請求項1に記載のセラミック電子部品。
  3. 前記ABOで表されるペロブスカイト型化合物は、(Ba1-a-bSrCa(Ti1-c-dZrHf)Oで表されるペロブスカイト型化合物であり、0.94<m<1.1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1および0≦d≦1の式を満たす請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
  4. 前記焼付電極層の導体にはCuおよびCu合金からなる群から選ばれる少なくとも1種が主成分として含まれる請求項1~3のいずれかに記載のセラミック電子部品。
  5. 前記第2ガラスにおけるB、SiおよびZnの酸化物換算での合計含有量を1モル部としたとき、
    前記第2ガラスにおけるBの酸化物換算での含有量は0.25~0.4モル部であり、
    前記第2ガラスにおけるSiの酸化物換算での含有量は0.4~0.6モル部であり、
    前記第2ガラスにおけるZnの酸化物換算での含有量は0.1~0.35モル部である請求項1~4のいずれかに記載のセラミック電子部品。
  6. 前記第1ガラスにおけるB、SiおよびZnの酸化物換算での含有量を1モル部としたとき、
    前記第1ガラスにおけるBの酸化物換算での含有量は0.4~0.6モル部であり、
    前記第1ガラスにおけるSiの酸化物換算での含有量は0.15~0.35モル部であり、
    前記第1ガラスにおけるZnの酸化物換算での含有量は0.1~0.35モル部である請求項1~5のいずれかに記載のセラミック電子部品。
  7. 前記焼付電極層の平均厚みに対する前記第2領域の平均厚みの比が0.22~0.78である請求項1~6のいずれかに記載のセラミック電子部品。
  8. 前記焼付電極層の単位断面積に対する非金属成分および空隙の合計面積の比の平均値が、0.10~0.45であり、前記非金属成分には、前記第1ガラスおよび前記第2ガラスが含まれる請求項1~7のいずれかに記載のセラミック電子部品。
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