JP2022135416A - クリヤー塗料組成物、クリヤー塗膜及び塗装物品 - Google Patents

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侑紀 井上
Yuki Inoue
安紀 三輪
Yasunori Miwa
雅俊 大隣
Masatoshi Odonari
みずほ 富樫
Mizuho Togashi
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Abstract

【課題】耐擦り傷性及び外観に優れたクリヤー塗膜を形成することができ、且つ貯蔵安定性に優れたクリヤー塗料組成物、クリヤー塗膜、塗装物品、及び塗装物品の製造方法を提供する。【解決手段】表面修飾コロイダルシリカ(A)と、水酸基含有樹脂(B)と、多官能イソシアネート化合物(C)とを含むクリヤー塗料組成物であって、前記表面修飾コロイダルシリカ(A)を構成するシリカ粒子の平均一次粒子径が、5nm以上30nm以下であり、前記シリカ粒子の表面修飾量が、100μg/m2以上2000μg/m2以下であり、前記水酸基含有樹脂(B)の水酸基価が、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であるクリヤー塗料組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、クリヤー塗料組成物、クリヤー塗膜及び塗装物品に関する。
例えば、自動車を構成する基材等の被塗物上には、意匠及び耐性等の付与を目的としてベース塗膜が設けられ、更に、耐擦り傷性等を付与するために、ベース塗膜上、又は上塗り塗膜上に、被塗物の最表面を覆うクリヤー塗膜が設けられている。そのようなクリヤー塗膜は、例えば、特許文献1及び2に開示されている。
特開2015-183168号公報 国際公開第2017/051718号
このようなクリヤー塗膜には、耐擦り傷性に優れていることに加えて、外観に優れていることが求められる。更に、クリヤー塗膜を形成するクリヤー塗料組成物には、貯蔵安定性に優れていることも求められる。しかし、上述の技術を始めとした広範な検討がなされているにも関わらず、クリヤー塗膜の耐擦り傷性及び外観を向上させ、更にクリヤー塗料組成物の貯蔵安定性を高めるための技術が不十分であるのが現状である。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐擦り傷性及び外観に優れたクリヤー塗膜を形成することができ、且つ貯蔵安定性に優れたクリヤー塗料組成物、クリヤー塗膜、塗装物品、及び塗装物品の製造方法を提供することである。
本発明は、下記態様[1]~[4]を提供する。
[1]
表面修飾コロイダルシリカ(A)と、水酸基含有樹脂(B)と、イソシアネート化合物(C)とを含むクリヤー塗料組成物であって、
前記表面修飾コロイダルシリカ(A)を構成するシリカ粒子の平均一次粒子径が、5nm以上30nm以下であり、
前記シリカ粒子の表面修飾量が、100μg/m以上2000μg/m以下であり、
前記水酸基含有樹脂(B)の水酸基価が、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である
クリヤー塗料組成物。
[2]
前記クリヤー塗料組成物から形成したクリヤー塗膜において、前記シリカ粒子が、塗膜内部に比べて塗膜表面近傍に多く存在する、[1]に記載のクリヤー塗料組成物。
[3]
前記水酸基含有樹脂(B)が、水酸基含有アクリル樹脂(B1)および水酸基含有アクリル樹脂(B2)の2種の混合であり、
更にアミノプラスト樹脂(D)を含有し、
前記水酸基含有アクリル樹脂(B1)が、ガラス転移温度20~35℃、水酸基価100~200mgKOH/g、溶解性パラメータ9.5~11.5および脂環式(メタ)アクリレートを水酸基含有アクリル樹脂(A)の固形分全量に対して20~40質量%の量で含み、
前記水酸基含有アクリル樹脂(B2)が、ガラス転移温度15~30℃、水酸基価150~250mgKOH/gおよび溶解性パラメータ10.5~12.5を有し、
前記水酸基含有アクリル樹脂(B1)の溶解性パラメータが前記水酸基含有アクリル樹脂(B2)の溶解性パラメータよりも低く、かつ、その差が0.5以上である、[1]または[2]に記載のクリヤー塗料組成物。
[4]
上記アミノプラスト樹脂(D)以外の全水酸基含有樹脂(X)の水酸基当量(α)と上記多官能イソシアネート化合物(C)のイソシアネート当量(β)の比率が、下記式(1)
1.20>β/α>0.80:式(1)
を満足し、かつ、
上記多官能イソシアネート化合物(C)の固形分質量(Mc)および上記アミノプラスト樹脂(D)の固形分質量(Mc)の比率が、下記式(2)
8.0>Mc/Md>1.0:式(2)
を満足する、[3]に記載のクリヤー塗料組成物。
[5]
[1]~[4]のいずれかに記載のクリヤー塗料組成物から形成したクリヤー塗膜。
[6]
[5]に記載のクリヤー塗膜を最表面に含む、塗装物品。
[7]
被塗物、及び
被塗物上に設けられた中塗り塗膜又はプライマー塗膜と、プライマー塗膜又は中塗り塗膜上に設けられたベース塗膜と、ベース塗膜上に設けられたクリヤー塗膜とを含む複層塗膜
を含む塗装物品の製造方法であって、
被塗物上に、中塗り塗料組成物を塗装して未硬化の中塗り塗膜を形成する、又はプライマー塗料組成物を塗装して未硬化のプライマー塗膜を形成する工程、
未硬化のプライマー塗膜又は未硬化の中塗り塗膜上に、ベース塗料組成物を塗装して未硬化のベース塗膜を形成する工程、
未硬化のベース塗膜上に、[1]~[4]のいずれかに記載のクリヤー塗料組成物を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程、及び
未硬化のプライマー塗膜又は未硬化の中塗り塗膜と、未硬化のベース塗膜と、未硬化のクリヤー塗膜とを加熱硬化させて複層塗膜を形成する工程
を含む塗装物品の製造方法。
本発明により、耐擦り傷性及び外観に優れたクリヤー塗膜を形成することができ、且つ貯蔵安定性に優れたクリヤー塗料組成物、クリヤー塗膜、塗装物品、及び塗装物品の製造方法が提供される。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、表面修飾量及び平均一次粒子径が所定の範囲内であるシリカ粒子から構成されるコロイダルシリカに加えて、所定の範囲の水酸基価を有する水酸基含有樹脂とイソシアネート化合物とを含むクリヤー塗料組成物を用いることにより、耐擦り傷性及び外観に優れたクリヤー塗膜を形成するできることを見出した。
以下、本発明の実施形態に係るクリヤー塗料組成物、クリヤー塗膜及び塗装物品の製造方法の詳細を説明する。
[クリヤー塗料組成物、クリヤー塗膜]
本発明の実施形態に係るクリヤー塗料組成物は、表面修飾コロイダルシリカ(A)と、水酸基含有樹脂(B)と、イソシアネート化合物(C)とを含む。
表面修飾コロイダルシリカ(A)を構成するシリカ粒子の平均一次粒子径は、5nm以上30nm以下であり、シリカ粒子の表面修飾量は、100μg/m以上2000μg/m以下である。
水酸基含有樹脂(B)の水酸基価は、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である。
(1)表面修飾コロイダルシリカ(A)
表面修飾コロイダルシリカ(A)を構成するシリカ粒子の平均一次粒子径は、5nm以上30nm以下であり、シリカ粒子の表面修飾量は、100μg/m以上2000μg/m以下である。これにより、優れた耐擦り傷性及び外観を得ることができる。
表面修飾コロイダルシリカ(A)は、粒径100nm以下のコロイド状シリカ粒子を分散媒に分散させたものであり、シリカ粒子は、シリカ粒子表面近傍のシラノール基と化学的に反応、もしくは物理的に吸着した有機化合物により修飾されている。有機化合物は特に限定されず、例えば、シランカップリング剤や、加水分解性シリル基含有樹脂、反応性官能基を有する樹脂などが好適に用いられる。
シランカップリング剤の種類については特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトキメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤の市販品として、例えば、KBM-1003、KBE-1003、KBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-1403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103P、KBM-573、KBM-575、KBE-585A、KBE-9007、KBM-9659、KBM-802、及びKBM-803のような信越化学工業(株)製のシランカップリング剤等が挙げられる。
加水分解性シリル基含有樹脂は特に限定されず、加水分解性シリル基が含有されているものであれば使用可能であるが、塗装作業性や耐候性の観点からα,β-エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得られる樹脂が好ましい。
加水分解性シリル基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及び3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。市販品として、例えば、KBM-1003、KBE-1003、KBM-1403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、及びKBM-5103のような信越化学工業(株)製の加水分解性シリル基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーが挙げられる。
これらの加水分解性シリル基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーは他のα,β-エチレン性不飽和モノマーとの共重合体として利用され、加水分解性シリル基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーの質量割合は、α,β-エチレン性不飽和モノマー総量の5質量%~20質量%であることが好ましい。
加水分解性シリル基を含有しないα,β-エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボロニル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸グリシジルオキシブチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボロニル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル;酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類;スチレン等の芳香環を有するα,β-エチレン性不飽和モノマー等が挙げられる。モノマーの組成は、求められる各種物性に応じて適宜調節される。α,β-エチレン性不飽和モノマー重合体は、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の溶剤を用いて重合できる。また、溶剤の種類、重合時のモノマーの濃度、或いは重合開始剤の種類、量、重合温度、重合時間等の重合条件は、α,β-エチレン性不飽和モノマー重合体に求められる各種物性に応じて適宜調整できる。
コロイダルシリカと加水分解性シリル基含有α,β-エチレン性不飽和モノマー重合体の反応は、それらを20~200℃の条件で0.5時間~10時間混合させることで実施される。必要に応じて触媒等を使用することも可能である。
シランカップリング剤による表面修飾によりシリカ粒子表面に反応性官能基を導入した場合、その官能基を利用して表面修飾量を増加させることが可能である。シリカ粒子表面に導入する反応性官能基は特に限定されないが、貯蔵安定性及び塗料化後の作業性の観点からα,β-エチレン性不飽和基、エポキシ基、及びアミノ基が好ましい。
シリカ粒子表面にα,β-エチレン性不飽和基を導入した場合、上述のα,β-エチレン性不飽和モノマーと共重合させることで表面修飾量を増加させることができる。シリカ粒子表面へのα,β-エチレン性不飽和基の導入にはシランカップリング剤を好適に用いることができ、例えば、上述の加水分解性シリル基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーを用いることができる。
シリカ粒子表面にエポキシ基を導入した場合、これらと反応しうる官能基を含有した樹脂と反応させることで表面修飾量を増加させることができる。
シリカ粒子表面へのエポキシ基の導入にはシランカップリング剤を好適に用いることができ、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。市販品として、例えば、KBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE-402、及びKBE-403のような信越化学工業(株)製アミノ基含有シランカップリング剤が挙げられる。
エポキシ基含有コロイダルシリカと反応させる樹脂は特に限定されず、エポキシ基と反
応可能な官能基が含有されているものであれば使用可能であるが、塗装作業性や耐候性の観点からα,β-エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得られる樹脂が好ましい。また、エポキシ基と反応可能な官能基は耐候性の観点からカルボキシル基が好ましい。カルボキシル基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸やメタクリル酸を好適に用いることができる。
エポキシ基含有コロイダルシリカとカルボキシル基含有α,β-エチレン性不飽和モノマー重合体の反応は、それらを20~200℃の条件で0.5時間~10時間混合させることで実施される。必要に応じて触媒等を使用することも可能である。
シリカ粒子表面にアミノ基を導入した場合、これらと反応しうる官能基を含有した樹脂と反応させることで表面修飾量を増加させることができる。
シリカ粒子表面へのアミノ基の導入にはシランカップリング剤を好適に用いることができ、例えば、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、及びN-フェニル-3-アミノプロピルトキメトキシシラン等が挙げられる。市販品として、例えば、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103P、及びKBM-573のような信越化学工業(株)製アミノ基含有シランカップリング剤が挙げられる。
アミノ基含有コロイダルシリカと反応させる樹脂は特に限定されず、アミノ基と反応可能な官能基が含有されているものであれば使用可能であるが、塗装作業性や耐候性の観点からα,β-エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得られる樹脂が好ましい。また、アミノ基と反応可能な官能基は耐候性の観点からエポキシ基が好ましい。エポキシ基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸グリシジルオキシブチルやメタクリル酸グリシジルを好適に用いることができる。
アミノ基含有コロイダルシリカとエポキシ基含有α,β-エチレン性不飽和モノマー重合体の反応は、それらを20~200℃の条件で0.5時間~10時間混合させることで実施される。必要に応じて触媒等を使用することも可能である。
コロイダルシリカの表面修飾には、上記の方法が主として用いられるが、アルコール化合物による修飾や、化学的に結合及び/又は物理的に吸着した樹脂での修飾も考えられる。このような表面修飾も表面修飾量等の要件を満足すれば使用可能である。
シリカ粒子の表面修飾量は、遠心分離・乾燥後の表面処理コロイダルシリカについて、空気存在下、10℃/分の昇温速度で、常温から800℃まで熱重量・示差熱測定(TG-DTA)を行い、以下の式で求めることができる。

表面修飾量[μg/m]=有機化合物量[g]/(無機物量[g]×シリカ粒子の比表面積[m/g])×10

有機化合物量は、800℃における重量減少量であり、無機物量は、800℃における表面処理コロイダルシリカの残分の質量であり、シリカ粒子の比表面積は以下の式で求めることができる。
比表面積[m/g]=粒子表面積[m]/粒子質量[g]
シリカ粒子の表面修飾量が100μg/m未満であると、溶媒に対するシリカ粒子の分散が不良となる。そのため、耐擦り傷性が劣り、及び/又はシリカ粒子の凝集によりクリヤー塗膜が白濁する。また凝集した粗大粒子の沈降により塗料の貯蔵安定性も低下する。
シリカ粒子の表面修飾量が2000μg/mより大きいと、粒子表面に結合していない修飾成分が増加することで、ハジキ等の塗膜欠陥が発生し及び/又はシリカ粒子を修飾する有機化合物と樹脂成分との相溶性が低くクリヤー塗膜が白濁する。更に、シリカ粒子の表面修飾量が2000μg/m以上であると、修飾成分が増加して、塗料の貯蔵安定性が悪化する。
また、コロイダルシリカではなく、例えば、フュームドシリカを用いた場合には、分散性が悪く、シリカ粒子の二次凝集が大きく、耐擦り傷性及び/又は外観が劣り、更に、塗料の貯蔵安定性が劣る。
シリカ粒子の表面修飾量は、好ましくは150μg/m以上、より好ましくは200μg/m以上であり、好ましくは1800μg/m以下、より好ましくは1500μg/m以下である。
シリカ粒子の平均一次粒子径が5nm未満、又は30nm超であると、耐擦り傷性が劣る。シリカ粒子の平均一次粒子径は、好ましくは10nm以上20nm以下である。
シリカ粒子の平均一次粒子径は、体積平均粒子径(D50)であり、例えば、ゼータ電位・粒径・分子量測定システム(大塚電子社製、ELSZ-2000ZS)等の粒度測定装置を用いて測定することができる。
シリカ粒子の分散媒として、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノール、n-ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール等の多価アルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール誘導体;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶剤等;及びこれらの混合物が挙げられる。
表面修飾コロイダルシリカ(A)の製造方法は特に限定されず、当業者により通常用いられる方法を用い、シリカ粒子の表面修飾量が100μg/m以上2000μg/m以下となるように表面修飾コロイダルシリカ(A)を製造してよい。例えば、親水性シリカ粒子水性分散体に対しシランカップリング剤等の加水分解性シラン化合物を修飾する段階、次いで該分散体の水を有機溶剤へと変換することにより得る方法や、樹脂を粒子表面に吸着、または結合させることにより得る方法等があげられる。また、上記加水分解性シラン化合物を修飾する段階、及び該分散体の水を有機溶剤へと変換する段階を同時に行うことが、製造性の観点からより好ましい。
表面処理に用いられる有機化合物の溶解性パラメータ(SP)は特に限定されず、例えば、水酸基含有樹脂(B)とのΔSPが0.2以上であってよく、1.5以下であってよい。SP値は次の方法によって実測することができる[参考文献:SUH、CLARKE、J.P.S.A-1、5、1671~1681(1967)]。
測定温度:20℃
サンプル:樹脂0.5gを100mLビーカーに秤量し、良溶媒10mLを、ホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより溶解する。
溶媒:
良溶媒…ジオキサン、アセトン等
貧溶媒…n-ヘキサン、イオン交換水等
濁点測定:50mLビュレットを用いて貧溶媒を滴下し、濁りが生じた点を滴下量とする。
SP値δは次式によって与えられる。
δ=(Vml1/2δml+Vmh1/2δmh)/(Vml 1/2+Vmh 1/2
=V/(φ+φ
δ=φδ+φδ
:溶媒の分子容(mL/mol)
φ:濁点における各溶媒の体積分率
δ:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶媒混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
表面修飾コロイダルシリカ(A)の市販品として、例えば、MEK-AC-2140Z、MEK-EC-2430Z、MIBK-AC-2140Z、MIBK-EC-2430Z、PGM-AC-2140Y(いずれも日産化学工業社製)等が挙げられる。
表面修飾コロイダルシリカ(A)は、2種以上を併用してよい。
表面修飾コロイダルシリカ(A)の含有量は特に限定されず、例えば、クリヤー塗料組成物の樹脂固形分に対するコロイダルシリカの固形分の質量割合は、0.01質量%以上であってよく、10質量%以下であってよい。
クリヤー塗料組成物の樹脂固形分は、樹脂成分と、イソシアネート化合物(C)と、含まれ得る他の硬化剤とを意味する。
なお、クリヤー塗料組成物は、表面修飾コロイダルシリカ(A)以外の他の無機粒子、例えば、アルミナゾル、チタニアゾル、セリアゾル等を含み得る。表面修飾コロイダルシリカ(A)以外の他の無機粒子を含む場合、当該他の無機粒子の含有量は、クリヤー塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上10質量部以下である。
(2)水酸基含有樹脂(B)
クリヤー塗料組成物は、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下の水酸基価を有する水酸基含有樹脂(B)を含む。これにより、後述するイソシアネート化合物(C)と反応して硬化し、クリヤー塗膜の耐擦り傷性を高めることができる。
水酸基含有樹脂(B)の重量平均分子量は、2000以上40000以下であることが好ましく、より好ましくは4000以上30000以下である。重量平均分子量は、ポリスチレンを標準とするGPC法により決定することができる。
水酸基含有樹脂(B)の水酸基価は、好ましくは100mgKOH/g以上、より好ましくは120mgKOH/g以上であり、好ましくは250mgKOH/g以下、より好ましくは230mgKOH/g以下である。また、水酸基含有樹脂(B)の酸価は、2mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であってよい。
水酸基価及び酸価は、既知の方法を用いた実測又は計算により求めることができる。例えば、水酸基価及び酸価は、JIS K 0070:1992に準拠して測定してよい。
水酸基含有樹脂(B)は、例えば、水酸基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーを含むモノマーを重合させることにより得てよい。水酸基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、アリルアルコール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε-カプロラクトンとの付加物等が挙げられる。
水酸基含有樹脂(B)として、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられるが塗装作業性や光沢の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。
水酸基含有樹脂(B)の含有量は特に限定されないが、クリヤー塗料組成物の樹脂固形分中、50質量%以上であってよく、85質量%以下であってよい。
なお、クリヤー塗料組成物は、水酸基含有樹脂(B)以外の他の樹脂を含み得る。水酸基含有樹脂(B)以外の他の樹脂を含む場合、当該他の樹脂の含有量は、クリヤー塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上10質量部以下である。
水酸基含有樹脂(B)が、アクリル系樹脂の場合、2種以上を併用するのが好ましい。水酸基含有樹脂(B)が、アクリル樹脂であって、2種を含む場合、水酸基含有アクリル樹脂(B1)および水酸基含有アクリル樹脂(B2)の混合であって、水酸基含有アクリル樹脂(B1)が、ガラス転移温度20~35℃、水酸基価100~200mgKOH/g、溶解性パラメータ9.5~11.5および脂環式(メタ)アクリレートを水酸基含有アクリル樹脂(B1)の固形分全量に対して20~40質量%の量で含み、水酸基含有アクリル樹脂(B2)がガラス転移温度15~30℃、水酸基価150~250mgKOH/gおよび溶解性パラメータ10.5~12.5を有し、前記水酸基含有アクリル樹脂(B1)の溶解性パラメータが前記水酸基含有アクリル樹脂(B2)の溶解性パラメータよりも低く、かつ、その差が0.5以上であることが好ましい。この態様で、水酸基含有アクリル樹脂を2種類用いる時には、クリヤー塗料組成物を塗装後、水酸基含有アクリル樹脂のSP差によって、2層に分離する傾向にあり、クリヤー塗膜の表層と内部層との間に異なる機能を持たせることが可能である。
水酸基含有アクリル樹脂を上記のように水酸基含有アクリル樹脂(B1)および水酸基含有アクリル樹脂(B2)の2種類を用いる場合には、クリヤー塗膜表面は耐薬品性およびドライ擦り傷性が高くなり、クリヤー塗膜の内部の特性の影響で洗車擦り傷が高くなる。また、同時に、複層塗膜に欠陥があったときに、複層塗膜研磨後に、再度複層塗膜を形成する場合に、再形成複層塗膜との密着性、即ちリコート密着性が高くなる。
(3)多官能イソシアネート化合物(C)
クリヤー塗料組成物は、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下の水酸基価を有する水酸基含有樹脂(B)を含む。これにより、後述するイソシアネート化合物(C)と反応して硬化し、クリヤー塗膜の耐擦り傷性を高めることができる。
多官能イソシアネート化合物(C)は特に限定されず、例えば、脂肪族、脂環式、芳香族基含有脂肪族又は芳香族の、ジイソシアネート、ジイソシアネートの二量体、ジイソシアネートの三量体(好ましくはイソシアヌレート型イソシアネート(いわゆるイソシアヌレート))等の多官能イソシアネート化合物であってよい。
ジイソシアネートとして、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルへキサンジイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート-(1,11)、リジンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-及び1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート:IPDI)、4,4’-ジイソシアナトジシクロメタン、ω,ω’-ジプロピルエーテルジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート、シクロヘキシル-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,5-ジメチル-2,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,5-トリメチル-2,4-ビス(ω-イソシアナトエチル)-ベンゼン、1,3,5-トリメチル-2,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリエチル-2,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、ジシクロヘキシルジメチルメタン-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。また、2,4-ジイソシアナトトルエン及び/又は2,6-ジイソシアナトトルエン、4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,4-ジイソシアナトイソプロピルベンゼンのような芳香族ジイソシアネートも用いることができる。イソシアヌレート型イソシアネートとしては上述のジイソシアネートの三量体を挙げることができる。
多官能イソシアネート化合物(C)は、2種以上を併用してよい。
多官能イソシアネート化合物(C)の含有量は特に限定されないが、より適切に硬化反応を促進させる観点から、水酸基含有樹脂(B)の水酸基のモル数に対するイソシアネート化合物(C)のイソシアネート基のモル数の比(NCO/OH)は、0.6以上1.4以下であってよく、好ましくは0.8以上1.2以下である。
(4)アミノプラスト樹脂(D)
本発明では、水酸基含有樹脂(B)が、水酸基含有アクリル樹脂(B1)および水酸基含有アクリル樹脂(B2)の2種類を用いる時には、アミノプラスト樹脂(D)を配合する。
アミノプラスト樹脂は、アミンあるいはアミド化合物とアルデヒドの反応によって生成する熱硬化性樹脂の総称であって、尿素樹脂、アニリン-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、チオ尿素樹脂等が挙げられる。アルデヒドとしては,おもにホルムアルデヒドが用いられる。アミノ化合物またはアミド化合物とホルムアルデヒドの反応により,窒素原子にホルムアルデヒドが付加してメチロール体(ヒドロキシメチル化合物)を生成する。
アミノプラスト樹脂(D)の含有量は、特に限定されないが、リコート密着性及び耐薬品性の観点から、クリヤー塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、1質量部以上25質量部以下であってよく、好ましくは5質量部以上15質量部以下である。
本発明では、上記多官能イソシアネート化合物(C)およびアミノプラスト樹脂(D)と、水酸基含有アクリル樹脂(B1)および(B2)との配合の各当量の関係が、クリヤー塗膜の性能に寄与する。具体的には、上記アミノプラスト樹脂(D)以外の全水酸基含有アクリル樹脂(X)の水酸基当量(α)と上記多官能イソシアネート化合物(C)のイソシアネート当量(β)の比率が、下記式(1)
1.20>β/α>0.80:式(1)
を満足し、かつ、
上記多官能イソシアネート化合物(C)の固形分質量(Mc)および上記アミノプラスト樹脂(D)の固形分質量(Md)の比率が、下記式(2)
8.0>Mc/Md>1.0:式(2)
を満足することを必要とする。
上記において、水酸基含有アクリル樹脂(X)というのは、水酸基含有アクリル樹脂(B1)および水酸基含有アクリル樹脂(B2)の合計を意味し、式中の(α)は、水酸基当量の合計量である。
上記式(1)において、イソシアネート当量(β)/水酸基当量(α)は、当量が0.80~1.20であって、ほぼ同じ当量で使用することを示している。イソシアネート当量(β)/水酸基当量(α)は、好ましくは0.90~1.10である。この当量比率が、上記範囲を外れると、硬化が十分でなくなり、外観やドライ擦り傷性等が悪くなる。
上記式(2)において、多官能イソシアネート化合物の固形分質量(Mc)/アミノプラスト樹脂の固形分質量(Md)は、配合量が1.0~8.0であって、多官能イソシアネート化合物(C)の配合質量がアミノプラスト樹脂(D)の配合質量と同じぐらいか、かなり多いことを意味する。多官能イソシアネート化合物の固形分質量(Mc)/アミノプラスト樹脂の固形分質量(Md)は、好ましくは1.0~3.0である。多官能イソシアネート化合物の固形分質量(C)が、アミノプラスト樹脂の固形分質量(D)より少ないと、リコート密着性が悪くなる。逆に、多官能イソシアネート化合物の固形分質量(C)が、アミノプラスト樹脂の固形分質量(D)の8倍より大きいと、耐薬品性等の性能が悪くなる。
[クリヤー塗料組成物]
クリヤー塗料組成物は、水系であってよく、有機溶剤系であってもよい。
有機溶剤として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
水と有機溶剤とは併用してよく、また、2種類以上の有機溶剤を用いてよい。なお、水は特に限定されず、イオン交換水等であってよい。
クリヤー塗料組成物は、硬化触媒、粘性調整剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン)、酸化防止剤、表面調整剤、造膜助剤、防錆剤、顔料、帯電防止剤等を含んでよい。
クリヤー塗料組成物の製造方法は特に限定されず、ディスパー、ホモジナイザー、ロール、サンドグラインドミル又はニーダー等を用いて上述の材料を攪拌、混練又は分散する等、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。
クリヤー塗料組成物は、一液型塗料であってよく、二液型塗料等の多液型塗料であってもよい。ブロック化されていない多官能イソシアネート化合物(C)を使用する場合には、貯蔵安定性の観点から、水酸基含有樹脂(B)を含む主剤と多官能イソシアネート化合物(C)とを含む二液型塗料とし、使用直前に両者を混合して使用することが好ましい。
[クリヤー塗膜]
本発明の実施形態に係るクリヤー塗膜は、本発明の実施形態に係るクリヤー塗料組成物から形成される。本クリヤー塗膜中ではシリカ粒子が塗膜内部に比べて塗膜表面近傍に多く存在する。これにより塗膜再表層硬度が上昇し、優れた耐擦り傷性を示す。
塗膜内部及び塗膜表面近傍におけるシリカ粒子の分布は、例えば、クリヤー塗膜の平面方向に垂直な断面を透過電子顕微鏡で観察することができる。
本発明の実施形態に係るクリヤー塗膜の形成方法は特に限定されず、例えば、後述の方法により形成してよい。
[塗装物品]
本発明の実施形態に係る塗装物品は、本発明の実施形態に係るクリヤー塗膜を最表面に含む。
ある実施形態において、塗装物品は、被塗物上に設けられた中塗り塗膜又はプライマー塗膜と、中塗り塗膜又はプライマー塗膜上に設けられたベース塗膜と、ベース塗膜上に設けられた本発明の実施形態に係るクリヤー塗膜とを含む複層塗膜を含んでよい。
(1)被塗物
被塗物は特に限定されず、例えば、金属基材、プラスチック基材及びその発泡体等が挙げられる。
金属基材として、例えば、鉄、鋼、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等の金属及びこれらの金属を含む合金等が挙げられる。金属基材として、具体的には、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体及び自動車車体用の部品等が挙げられる。このような金属基材は、予め電着塗膜が形成されていることが好ましい。また、電着塗膜形成前に、必要に応じて化成処理(例えば、リン酸亜鉛化成処理、ジルコニウム化成処理等)が行われていてよい。
プラスチック基材として、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。プラスチック基材として具体的には、スポイラー、バンパー、ミラーカバー、グリル、ドアノブ等の自動車部品等が挙げられる。これらのプラスチック基材は、純水及び/又は中性洗剤で洗浄されたものであることが好ましい。
(2)中塗り塗膜、プライマー塗膜
被塗物が金属基材である場合、電着塗装が形成された金属基材上に中塗り塗膜が設けられてよい。また、被塗物がプラスチック基材である場合、プラスチック基材上にプライマー塗膜が設けられてよい。
中塗り塗膜及びプライマー塗膜は特に限定されず、それぞれ、例えば、塗膜形成樹脂及び必要に応じて硬化剤等を含む中塗り塗料組成物又はプライマー塗料組成物を用いて形成してよい。
(3)ベース塗膜
中塗り塗膜又はプライマー塗膜上にベース塗膜が設けられてよい。ベース塗膜は特に限定されず、顔料、塗膜形成樹脂及び必要に応じて硬化剤等を含むベース塗料組成物を用いて形成してよい。ベース塗料組成物の形態として、溶剤型及び水性型のものが挙げられる
ベース塗料組成物の例として、顔料と、塗膜形成樹脂として水酸基を有するアクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂と、硬化剤としてメラミン樹脂とを含むものが挙げられる。
ベース塗料組成物は、粘性制御剤を含んでもよい。粘性制御剤として、例えば、架橋あるいは非架橋の樹脂粒子、脂肪酸アマイドの膨潤分散体、アマイド系脂肪酸、長鎖ポリアミノアマイドのリン酸塩等のポリアマイド系のもの、酸化ポリエチレンのコロイド状膨潤分散体等のポリエチレン系等のもの、有機酸スメクタイト粘土、モンモリロナイト等の有機ベントナイト系のもの等を挙げることができる。
ある実施形態において、着色顔料を含むベース塗料組成物から形成した第1ベース塗膜と、鱗片状顔料を含むベース塗料組成物から形成した第2ベース塗膜とを併用して、フリップフロップ性が付与された複層塗膜を形成してよい。
塗装物品の製造方法は特に限定されず、例えば、以下に説明する本発明の実施形態に係る製造方法により作製してよい。
[塗装物品の製造方法]
本発明の実施形態に係る塗装物品の製造方法は、
被塗物上に、中塗り塗料組成物を塗装して未硬化の中塗り塗膜を形成する、又はプライマー塗料組成物を塗装して未硬化のプライマー塗膜を形成する工程、
未硬化のプライマー塗膜又は未硬化の中塗り塗膜上に、ベース塗料組成物を塗装して未硬化のベース塗膜を形成する工程、
未硬化のベース塗膜上に、本発明の実施形態に係るクリヤー塗料組成物を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程、及び
未硬化のプライマー塗膜又は未硬化の中塗り塗膜と、未硬化のベース塗膜と、未硬化のクリヤー塗膜とを加熱硬化させて複層塗膜を形成する工程
を含む。
(1)未硬化の中塗り塗膜又は未硬化のプライマー塗膜を形成する工程
上述の中塗り塗料組成物又はプライマー塗料組成物を被塗物に塗装して、未硬化の中塗り塗膜又は未硬化のプライマー塗膜を形成する。その際、必要に応じて、例えば、40℃以上80℃以下の温度で1分以上10分以下のプレヒート工程を行ってよい。
未硬化の中塗り塗膜又はプライマー塗膜を形成する場合、その膜厚は、乾燥膜厚として、例えば、8μm以上40μm以下であってよく、15μm以上30μm以下であってよい。
(2)未硬化のベース塗膜を形成する工程
ベース塗料組成物を未硬化の中塗り塗膜又は未硬化のプライマー塗膜に塗装して、未硬化のベース塗膜を形成する。その際、必要に応じて、例えば、40℃以上80℃以下の温度で1分以上10分以下のプレヒート工程を行ってよい。
未硬化のベース塗膜の膜厚は、乾燥膜厚として、例えば、10μm以上30μm以下であるのが好ましい。
(3)未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程
本発明の実施形態に係るクリヤー塗料組成物を未硬化のベース塗膜に塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する。
未硬化のクリヤー塗膜の膜厚は、乾燥膜厚として、例えば、10μm以上80μm以下であってよく、20μm以上50μm以下であってよい。
(4)未硬化の塗膜を加熱硬化させて複層塗膜を形成する工程
未硬化の塗膜、すなわち、未硬化の中塗り塗膜又は未硬化のプライマー塗膜と、未硬化のベース塗膜と、未硬化のクリヤー塗膜とを加熱硬化させて複層塗膜を形成する。加熱硬化温度は、例えば、80℃以上150℃以下であってよく、加熱硬化時間は、例えば、20分以上40分以下の範囲で適宜調整してよい。
中塗り塗料組成物、プライマー塗料組成物、ベース塗料組成物、及び本発明の実施形態に係るクリヤー塗料組成物の塗装方法は特に限定されない。被塗物の種類に応じて、例えば、エアースプレー塗装、ベル塗装、エアー静電スプレー塗装による多ステージ塗装又は1ステージ塗装、あるいは、エアー静電スプレー塗装と、メタリックベルと言われる回転霧化式の静電塗装機とを組み合わせた塗装方法等、塗装分野において一般的に用いられる塗装方法を用いてよい。
未硬化の塗膜を加熱硬化させるのに用いる加熱装置として、例えば、熱風、電気、ガス、赤外線等の加熱源を利用した乾燥炉等が挙げられる。また、これらの加熱源を2種以上併用した乾燥炉を用いると、乾燥時間が短縮されるため好ましい。
本発明の実施形態に係る塗装物品の製造方法によれば、未硬化の塗膜に順次上層の塗膜を形成し、複数の未乾燥の塗膜を一括して加熱硬化するため、工程を短縮することができ、経済性及び環境面からも好ましい。
なお、本発明の実施形態に係る塗装物品は、各塗料組成物を塗布する毎に塗膜を加熱硬化させ、順次上層の塗膜を形成することによって製造することもできる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例により何ら制限されるものではない。実施例中、「部」及び「%」は、ことわりのない限り質量基準による。
(製造例1)表面修飾コロイダルシリカ(A-1)
撹拌機及び温度調節機を備えた3Lの反応容器にスノーテックスO(商品名、日産化学社製、水分散コロイダルシリカ、平均一次粒子径;12nm、シリカ濃度;20質量%) 800部を仕込み、撹拌しながら次いでエタノール 1600部、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート 800部を添加した。その後、シランカップリング剤(KBM-503:商品名、信越化学工業社製、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン) 16部を添加し、温度を80℃とした。次いで、外温を80℃に維持しつつ減圧状態で揮発成分を1600部留出させた。その後、エタノール 400部、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート 1200部を添加し、再度外温を80℃に維持しつつ減圧状態で揮発成分を2400部留出させることで、表面修飾コロイダルシリカ(A-1)を得た。
シリカ粒子の表面修飾量は、200μg/mであり、シリカ粒子の平均一次粒子径は、15nmであった。
(製造例2)表面修飾コロイダルシリカ(A-2)
窒素導入管、撹拌機、温度調節機、滴下ロートおよび冷却管を備えた2Lの反応容器にプロピレングリコールメチルエーテルアセテート220部を仕込んで、温度を120℃とした。次に、製造例1で製造した表面修飾コロイダルシリカ(A-1) 1296部、スチレン 24部、メタクリル酸ヒドロキシエチル 28部、メタクリル酸エチルヘキシル 67部、及びアクリル酸 1.2部を混合することによりモノマー溶液を別途調製した。このモノマー溶液と、トリゴノックス21S(商品名、化薬ヌーリオン社製、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート) 4.8部及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート40部の混合溶液を、反応容器に撹拌下、2時間かけて並行滴下した後、30分間撹拌を継続し、更に、トリゴノックス21S 2.2部とプロピレングリコールメチルエーテルアセテート 40部との混合液を30分間で滴下した後、1時間攪拌を継続させることで、表面修飾コロイダルシリカ(A-2)を得た。
シリカ粒子の表面修飾量は、1000μg/mであり、シリカ粒子の平均一次粒子径は、18nmであった。
(製造例3)表面修飾コロイダルシリカ(A-3)
撹拌機及び温度調節機を備えた3Lの反応容器にスノーテックスO 800部を仕込み、撹拌しながら次いでプロピレングリコールモノメチルエーテル 1600部を添加し、温度を80℃とした。次いで、外温を80℃に維持しつつ減圧状態で揮発成分を1280部留出させた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテル 640部を添加し、再度外温を80℃に維持しつつ減圧状態で揮発成分を960部留出させることで、表面修飾コロイダルシリカ(A-3)を得た。
シリカ粒子の表面修飾量は、50μg/mであり、シリカ粒子の平均一次粒子径は、15nmであった。
(製造例4)表面修飾コロイダルシリカ(A-4)
窒素導入管、撹拌機、温度調節機、滴下ロートおよび冷却管を備えた2Lの反応容器にプロピレングリコールメチルエーテルアセテート341部を仕込んで、温度を120℃とした。次に、製造例1で製造した表面修飾コロイダルシリカ(A-1) 861部、スチレン 87部、メタクリル酸ヒドロキシエチル 101部、メタクリル酸エチルヘキシル 242部、及びアクリル酸 4部を混合することによりモノマー溶液を別途調製した。このモノマー溶液と、トリゴノックス21S(商品名、化薬ヌーリオン社製、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート) 17部及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート62部の混合溶液を、反応容器に撹拌下、2時間かけて並行滴下した後、30分間撹拌を継続し、更に、トリゴノックス21S 3部とプロピレングリコールメチルエーテルアセテート 62部との混合液を30分間で滴下した後、1時間攪拌を継続させることで、表面修飾コロイダルシリカ(A-4)を得た。
シリカ粒子の表面修飾量は、2500μg/mであり、シリカ粒子の平均一次粒子径は、20nmであった。
(製造例5)表面修飾コロイダルシリカ(A-5)
撹拌機及び温度調節機を備えた3Lの反応容器にスノーテックスOL(商品名、日産化学社製、水分散コロイダルシリカ、平均一次粒子径;45nm、シリカ濃度;20質量%) 800部を仕込み、撹拌しながら次いでエタノール 1600部、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート 800部を添加した。その後、シランカップリング剤(KBM-503) 16部を添加し、温度を80℃とした。次いで、外温を80℃に維持しつつ減圧状態で揮発成分を1600部留出させた。その後、エタノール 400部、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート 1200部を添加し、再度外温を80℃に維持しつつ減圧状態で揮発成分を2400部留出させることで、表面修飾コロイダルシリカ(A-5)を得た。
シリカ粒子の表面修飾量は、200μg/mであり、シリカ粒子の平均一次粒子径は、45nmであった。
(製造例6)水酸基含有樹脂(B)
窒素導入管、撹拌機、温度調節機、滴下ロートおよび冷却管を備えた2Lの反応容器にプロピレングリコールメチルエーテルアセテート300部を仕込んで、温度を120℃とした。次に、スチレン 200部、アクリル酸ブチル 429部、アクリル酸ヒドロキシエチル 107部、メタクリル酸ヒドロキシエチル 251部及びアクリル酸 13部を混合することによりモノマー溶液を別途調製した。このモノマー溶液と、トリゴノックス21S 100部及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート40部の混合溶液を、反応容器に撹拌下、3時間かけて並行滴下した後、30分間撹拌を継続し、更に、トリゴノックス21S 5部とプロピレングリコールメチルエーテルアセテート 30部との混合液を30分間で滴下した後、1時間攪拌を継続し、不揮発分65%、水酸基価160mgKOH/g、酸価10mgKOH/gの水酸基含有樹脂(アクリル樹脂)(B)を得た。酸価及び水酸基価は、JIS K 0070:1992に準拠して測定した。
(製造例7)水酸基含有アクリル樹脂(B1)
モノマー溶液の調整をスチレン 45部、メタクリル酸エチルヘキシル 423部、メタクリル酸イソボロニル 200部、メタクリル酸ヒドロキシエチル 232部及びメタクリル酸 10部を用いて実施した以外は製造例6と同様に実施し、不揮発分65%、ガラス転移温度20℃、水酸基価100mgKOH/g、溶解性パラメータ9.6、酸価6.5mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂(B1)を得た。
(製造例8)水酸基含有アクリル樹脂(B2)
モノマー溶液の調整をアクリル酸エチル 143部、メタクリル酸メチル 280部、メタクリル酸-tert-ブチル 50部、アクリル酸ヒドロキシエチル 518部及びメタクリル酸 10部を用いて実施した以外は製造例6と同様に実施し、不揮発分65%、ガラス転移温度15℃、水酸基価250mgKOH/g、溶解性パラメータ12.5、酸価6.5mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂(B2)を得た。
実施例1~3および比較例1~4
表1に記載の組成で原料を配合して攪拌することにより、実施例1~3及び比較例1~4のクリヤー塗料組成物を得た。なお、表1中の組成の単位は質量部であり、また、有機溶剤を除いて、固形分換算量である。
また、実施例1~2及び比較例1~4において、水酸基含有樹脂(B)の水酸基のモル数に対するイソシアネート化合物(C)のイソシアネート基のモル数の比(NCO/OH)は、1.20であった。実施例3において、水酸基含有アクリル樹脂(B1)及び水酸基含有アクリル樹脂(B2)の水酸基のモル数に対するイソシアネート化合物(C)のイソシアネート基のモル数の比(NCO/OH)は、0.83であった。
Figure 2022135416000001
表1中、フュームドシリカ(A-6)は、AEROSIL R805(商品名、日本アエロジル社製、疎水性フュームドシリカ、平均一次粒子径12nm)、シリカ粒子の表面修飾量は、200μg/mであり、シリカ粒子の平均一次粒子径は、12nmであった。
イソシアネート化合物(C)は、住化コベストロウレタン社製「デスモジュールN 3300」であり、アミノプラスト樹脂(D)はBASF社製「LUWIPAL 018」であり、有機溶剤は、メチルアミルケトンである。
(塗装物品の作製)
リン酸処理鋼板にパワートップU-50(商品名、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製、カチオン電着塗料)を乾燥膜厚が25μmになるように塗装して加熱硬化させた試験版に、アクアレックスAR-800(商品名、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製、水性プライマー塗料)を乾燥膜厚が20μmになるように塗装し、次いでアクアレックスAR-2000(商品名、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製、水性ベース塗料)ブラック色を乾燥膜厚が10μmになるように塗装し、80℃で5分間乾燥を行った。その上にウェットオンウェットで実施例1のクリヤー塗料組成物を乾燥膜厚が40μmになるように塗布して140℃で30分間焼付け乾燥を行い、実施例1の塗装物品を得た。
表1に示すクリヤー塗料組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2、3及び比較例1~4の塗装物品を得た。
得られた塗装物品を用いて、以下の要領で、耐擦り傷性、及び外観(白濁、塗膜平滑性)を評価した。結果を表1に示す。
(耐擦り傷性)
塗装物品のクリヤー塗膜の20°光沢度G[%]を、鏡面光沢度計(ビックケミー社製、マイクロトリグロス)用い測定した。次に、平面摩耗試験機(大栄科学精器製作所社製)に治具先端が摩耗する物体の表面に対して水平である直径16mmの金属製円柱型治具を取り付け、治具先端にフェルトと摩耗紙(3M社製、Wetordry Polishing Paper 281Q 9.0 Micron Sheet)を、治具先端、フェルト、摩耗紙の順で固定し、治具に固定した摩耗紙表面に合計で900gの荷重が加わるように荷重を加え、10cmのストローク長さで1分間に60往復する速度で得られた塗膜の表面を10往復摩耗した。擦過後のクリヤー塗膜の20°光沢度G[%]を同様に測定し、光沢保持率GR[%](=G/G×100)を算出した。GRが大きい程、耐擦り傷性に優れている。
評価基準は以下の通りであり、〇を合格、×を不合格とした。
〇:GR値が80%以上
×:GR値が80%未満
(外観)
塗装物品のクリヤー塗膜を目視で観察し、白濁及び塗膜欠陥を評価した。
白濁の評価基準は以下の通りであり、〇を合格、×を不合格とした。
〇:白濁が有る
×:白濁が無い
塗膜欠陥の評価基準は以下の通りであり、〇を合格、×を不合格とした。
〇:ハジキ等の塗膜欠陥がない
×:ハジキ等の塗膜欠陥がある
(貯蔵安定性)
実施例1及び比較例1~4のクリヤー塗料組成物について、それぞれイソシアネート化合物(C)との混合前の組成物を40℃の恒温試験機に1か月保管し、目視にて塗料性状を確認し貯蔵安定性を評価した。
評価基準は以下の通りであり、〇を合格、×を不合格とした。
〇:流動性を失うほどの増粘がない、及び/又は目視で確認できる沈殿物が存在しない
×:流動性を失うほどの増粘がある、及び/又は目視で確認できる沈殿物が存在する
また、実施例1~3の塗装物品について、透過電子顕微鏡(日本電子社製、JEM-2100)を用いてクリヤー塗膜の平面方向に垂直な断面を観察し、塗膜内部及び塗膜表面近傍におけるシリカ粒子の分布を評価しところ、シリカ粒子が、塗膜内部に比べて塗膜表面近傍に多く存在していた。比較例2においても同様にシリカ粒子が塗膜表面近傍に多く存在していた。
比較例1、3および4については、シリカ粒子が塗膜表面近傍には局在化していなかった。これらの塗膜内部には500nmより小さいがシリカ粒子の凝集体が確認された。
本発明の実施形態で規定する要件を満足する実施例1~3の塗装物品は、耐擦り傷性及び外観に優れたクリヤー塗膜を備えている。
一方、比較例1は、シリカ粒子の表面修飾量が50μg/mと少ないコロイダルシリカを用いたため、塗料中での分散性が悪くシリカ粒子が塗膜表面近傍に局在化せず、結果として光沢保持率が低く、耐擦り傷性が劣っていた。
比較例2は、シリカ粒子の表面修飾量が2500μg/mと多く、粒子表面に結合していない修飾成分が多数存在するため、クリヤー塗膜に白濁が見られ、且つハジキ等の塗膜欠陥があり、更に、クリヤー塗料組成物の貯蔵安定性が劣っていた。
比較例3は、シリカ粒子の平均一次粒子径が45nmと大きいコロイダルシリカを用いたため、シリカ粒子が塗膜表面近傍に局在化せず、結果として光沢保持率が低く、耐擦り傷性が劣っていた。
比較例4は、フュームドシリカを用いたため、塗料中では多くの粒子が二次粒子として存在しており、それ故シリカ粒子が塗膜表面近傍に局在化せず、結果としてクリヤー塗膜に白濁が見られ、且つハジキ等の塗膜欠陥があり、更に、クリヤー塗料組成物の貯蔵安定性が劣っていた。

Claims (7)

  1. 表面修飾コロイダルシリカ(A)と、水酸基含有樹脂(B)と、多官能イソシアネート化合物(C)とを含むクリヤー塗料組成物であって、
    前記表面修飾コロイダルシリカ(A)を構成するシリカ粒子の平均一次粒子径が、5nm以上30nm以下であり、
    前記シリカ粒子の表面修飾量が、100μg/m以上2000μg/m以下であり、
    前記水酸基含有樹脂(B)が、水酸基価100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下を有する
    クリヤー塗料組成物。
  2. 前記クリヤー塗料組成物から形成したクリヤー塗膜において、前記シリカ粒子が、塗膜内部に比べて塗膜表面近傍に多く存在する、請求項1に記載のクリヤー塗料組成物。
  3. 前記水酸基含有樹脂(B)が、水酸基含有アクリル樹脂(B1)および水酸基含有アクリル樹脂(B2)の2種の混合であり、
    更にアミノプラスト樹脂(D)を含有し、
    前記水酸基含有アクリル樹脂(B1)が、ガラス転移温度20~35℃、水酸基価100~200mgKOH/g、溶解性パラメータ9.5~11.5および脂環式(メタ)アクリレートを水酸基含有アクリル樹脂(B1)の固形分全量に対して20~40質量%の量で含み、
    前記水酸基含有アクリル樹脂(B2)が、ガラス転移温度15~30℃、水酸基価150~250mgKOH/gおよび溶解性パラメータ10.5~12.5を有し、
    前記水酸基含有アクリル樹脂(B1)の溶解性パラメータが前記水酸基含有アクリル樹脂(B2)の溶解性パラメータよりも低く、かつ、その差が0.5以上である、請求項1または2に記載のクリヤー塗料組成物。
  4. 上記アミノプラスト樹脂(D)以外の全水酸基含有樹脂(X)の水酸基当量(α)と上記多官能イソシアネート化合物(C)のイソシアネート当量(β)の比率が、下記式(1)
    1.20>β/α>0.80:式(1)
    を満足し、かつ、
    上記多官能イソシアネート化合物(C)の固形分質量(Mc)および上記アミノプラスト樹脂(D)の固形分質量(Mc)の比率が、下記式(2)
    8.0>Mc/Md>1.0:式(2)
    を満足する、請求項3に記載のクリヤー塗料組成物。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載のクリヤー塗料組成物から形成したクリヤー塗膜。
  6. 請求項5に記載のクリヤー塗膜を最表面に含む、塗装物品。
  7. 被塗物、及び
    被塗物上に設けられた中塗り塗膜又はプライマー塗膜と、前記プライマー塗膜又は前記中塗り塗膜上に設けられたベース塗膜と、前記ベース塗膜上に設けられたクリヤー塗膜とを含む複層塗膜
    を含む塗装物品の製造方法であって、
    被塗物上に、中塗り塗料組成物を塗装して未硬化の中塗り塗膜を形成する、又はプライマー塗料組成物を塗装して未硬化のプライマー塗膜を形成する工程、
    前記未硬化のプライマー塗膜又は前記未硬化の中塗り塗膜上に、ベース塗料組成物を塗装して未硬化のベース塗膜を形成する工程、
    前記未硬化のベース塗膜上に、請求項1~4のいずれか1項に記載のクリヤー塗料組成物を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程、及び
    前記未硬化のプライマー塗膜又は前記未硬化の中塗り塗膜と、前記未硬化のベース塗膜と、前記未硬化のクリヤー塗膜とを加熱硬化させて複層塗膜を形成する工程、
    を含む塗装物品の製造方法。
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