JP2022135010A - スチレン系熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

スチレン系熱可塑性エラストマー組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】液漏れシール性と摺動性に優れる成形体を可能とするスチレン系熱可塑性エラストマー組成物を提供する。【解決手段】下記成分(A)~(C)を含み、かつデュロ硬度Aが40~80である、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物。このスチレン系熱可塑性エラストマー組成物よりなる成形体およびシリンジガスケット。成分(A):スチレン系熱可塑性エラストマー成分(B):エチレン系重合体成分(C):ビニルアルコール系重合体【選択図】なし

Description

本発明はスチレン系熱可塑性エラストマー組成物に関する。本発明はまた、このスチレン系熱可塑性エラストマー組成物よりなる成形体及びシリンジガスケットに関する。
医療用器具である「ディスポーザブルシリンジ」や「プレフィルドシリンジ」は、筒体であるシリンジと、シリンジ先端部に取り付けられた注射針もしくは投与用器具と、ガスケットと呼ばれるシール性部品とから構成される。この医療用器具は、ガスケットを押し込んでシリンジ内を摺動させることにより、シリンジ内に充填された薬液や注射液を投与するように用いられる。ガスケットは、加硫ゴムやスチレン系の熱可塑性エラストマーから形成されている。
ガスケットを押し込んでシリンジ内を摺動させる操作を円滑に行うために、従来より、様々な取り組みがされている。
例えば非特許文献1には、シリンジ内面やガスケットの表面にシリコーンオイル塗布することが記載されている。
また、特許文献1には、脈動現象を生じさせないために特定の配合割合でスチレン・イソプレンブロック共重合体の水素添加誘導体および/またはスチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加誘導体と、ゴム用軟化剤とポリエチレン系樹脂を含有するガスケット用樹脂組成物が記載されている。
凝集体の抑制と材質設計を意識したバイオ医薬品に適したプレフィルドシリンジ開発 サイエンス&テクノロジー ISBN978-4-86428-201-7
特開2004-123977号公報
プレフィルドシリンジは操作が簡便であり、既に薬液が充填されているために現場で薬剤を調製する必要がないことから、細菌の感染を防止するだけではなく、調剤時間が短縮化されるなどの多くの利点を有しているため、治療の効率化、医療過誤防止などの観点から、各種薬剤のプレフィルド化が望まれてきている。
また、バイオ医薬品の市場規模が年々拡大しており、バイオ薬液をシリンジに充填し、プレフィルドシリンジ(PFS)製剤として供給されるケースが増加している。従来の低分子医薬品に比べてバイオ医薬品の多くは、物理的、化学的に不安定であり、変質しやすく、シリンジ内面やガスケット表面に塗布されたシリコーンオイルが、PFS中のバイオ医薬品の主成分であるタンパク質成分を凝集させることがわかっており、タンパク質成分の凝集によるバイオ医薬品の有効性、安全性への影響を防止する観点から、非特許文献1のようにシリンジ内面やシリンジガスケットの表面にシリコーンオイルを塗布せずとも、ガスケットを押し込んでシリンジ内を摺動させる操作を円滑に行うことができる、即ち、摺動性に優れるガスケット材が求められている。
ガスケット材の摺動性には主に下記(1)~(3)の3つの要素があり、これらを制御することで、所望の摺動性が得られる。
(1) 摺動抵抗値が適切である。
(2) 脈動を生じさせない。
(3) 摺動抵抗値が一定になるまでの時間が適切である。
しかしながら、特許文献1のガスケット用樹脂組成物、例えば特許文献1の実施例2に相当するガスケット用樹脂組成物は、後掲の比較例1に示すように摺動性の面で改良の余地があった。
本発明は、上記実状に鑑み、液漏れシール性と摺動性に優れる成形体を可能とするスチレン系熱可塑性エラストマー組成物を提供することを課題とする。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、スチレン系熱可塑性エラストマーとエチレン系重合体とビニルアルコール系共重合体を含み、かつデュロ硬度Aが40~80であるスチレン系熱可塑性エラストマー組成物を用いることで、液漏れシール性と摺動性に優れる成形体が可能となることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は以下の特徴を有する。
[1] 下記成分(A)~(C)を含み、かつデュロ硬度Aが40~80である、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A):スチレン系熱可塑性エラストマー
成分(B):エチレン系重合体
成分(C):ビニルアルコール系重合体
[2] 前記成分(A)~(C)の合計100質量%における前記成分(C)の含有率が8~35質量%である、[1]に記載のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物。
[3] 前記成分(B)のエチレン系重合体の密度が0.900~0.980g/cmである、[1]又は[2]に記載のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物よりなる成形体。
[5] [1]~[3]のいずれかに記載のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物よりなるシリンジガスケット。
本発明によれば、液漏れシール性と摺動性に優れる成形体を可能とするスチレン系熱可塑性エラストマー組成物を提供できる。
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物よりなるシリンジガスケットにより、取り扱い性に優れた「プレフィルドシリンジ」、「ディスポーザブルシリンジ」等の医療用シリンジを提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、本発明において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
[スチレン系熱可塑性エラストマー組成物]
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物は、下記成分(A)~(C)を含み、かつデュロ硬度Aが40~80であることを特徴とする。本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物は、下記成分(A)~(C)に加えて、更に下記成分(D)を含むことが好ましい。
成分(A):スチレン系熱可塑性エラストマー
成分(B):エチレン系重合体
成分(C):ビニルアルコール系重合体
成分(D):炭化水素系ゴム用軟化剤
<デュロ硬度A>
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物のデュロ硬度Aの下限は、シリンジ押し子との係合力、摺動抵抗の観点から通常40以上であり、好ましくは45以上である。また本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物のデュロ硬度Aの上限は、成形品の組み立て性の観点から通常80以下であり、好ましくは75以下である。
ここで、本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物のデュロ硬度Aとは、後掲の実施例の項に記載されるようにISO 7619-1に基づくISO硬度である。
これに対して、JIS硬度は同一硬度であってもISO硬度よりも5ポイント程度高い測定値となる。よって、本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物のISOデュロ硬度Aは、JIS硬度に換算すると45~85、好ましくは50~80である。
スチレン系熱可塑性エラストマー組成物のデュロ硬度Aは、後に説明する通り、成分(A)~(D)の配合割合を制御することで調整できる。
<成分(A):スチレン系熱可塑性エラストマー>
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物は、スチレン系熱可塑性エラストマーを含む。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ビニル芳香族化合物に由来する少なくとも1個の重合体ブロックPと、共役ジエンに由来する少なくとも1個の重合体ブロックQとを有するブロック共重合体、並びに該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体(水添ブロック共重合体)よりなる群から選ばれるブロック共重合体が使用できる。
重合体ブロックPは、ビニル芳香族化合物を主体とする単量体の重合体ブロックであり、一方、重合体ブロックQは、共役ジエンを主体とする単量体の重合体ブロックである。ここで「主体とする」とは、ブロック中の含有率が50モル%以上であることを意味する。
重合体ブロックPを構成する単量体のビニル芳香族化合物は限定されないが、スチレン、α-メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン誘導体が好ましい。これらの中でも、スチレンを主体とすることが好ましい。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なお、当該重合体ブロックPには、ビニル芳香族化合物以外の単量体が原料として含まれていてもよい。
重合体ブロックQを構成する単量体は限定されないが、好ましくはブタジエン単独、イソプレン単独、ブタジエン及びイソプレンの混合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なお、重合体ブロックQには、ブタジエン及びイソプレン以外の単量体が原料として含まれていてもよい。
また、重合体ブロックQは、重合後に有する二重結合を水素添加した水素添加誘導体、即ち水添ブロック共重合体であってもよい。重合体ブロックQの水素添加率は限定されないが、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましい。重合体ブロックQを前記範囲で水素添加することにより、熱安定性、耐候安定性が向上する傾向にある。なお、重合体ブロックPが、原料としてジエン成分を用いた場合についても同様である。水素添加率は、13C-NMRにより測定することができる。
スチレン系熱可塑性エラストマーはスチレン単位含有率が8~45質量%であることが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン単位含有率が上記下限以上であると、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物からの炭化水素系ゴム用軟化剤のブリードアウトを抑制できる。一方、上記上限以下であると、スチレン系熱可塑性エラストマーの硬度が高くなりすぎることを抑制できる。スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン単位含有率は、より好ましくは10~40質量%である。
「スチレン単位含有率」とはスチレン単位の含有率のみならず、スチレン単位の芳香環に水素原子以外の原子又は原子団が置換した構成単位の含有率も含む意味で用いられる。スチレン単位含有率は13C-NMRにより測定することができる。
スチレン系熱可塑性エラストマーにおける前記の重合体ブロックP及び重合体ブロックQを有する共重合体の化学構造は、直鎖状、分岐状、放射状等の何れであってもよいが、下記式(1)又は(2)で表されるブロック共重合体であることが好ましい。
更に、下記式(1)又は(2)で表されるブロック共重合体は、水素添加誘導体(水添ブロック共重合体)であることが好ましい。下記式(1)又は(2)で表される共重合体が水添ブロック共重合体であると、耐熱安定性、耐候安定性が良好となる傾向にある。
P-(Q-P) (1)
(P-Q) (2)
(式中、Pは重合体ブロックPを、Qは重合体ブロックQをそれぞれ表し、mは1~5の整数を表し、nは1~5の整数を表す。)
式(1)又は(2)においてm及びnは、ゴム的高分子体としての秩序-無秩序転移温度を下げる点では大きい方がよいが、製造のしやすさ及びコストの点では小さい方がよい。
なお、スチレン系熱可塑性エラストマーのブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体(以下、まとめて「(水添)ブロック共重合体」と記す)としては、ゴム弾性に優れることから、式(2)で表される(水添)ブロック共重合体よりも式(1)で表される(水添)ブロック共重合体の方が好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量の上限は限定されないが、通常700,000以下、好ましくは600,000以下、より好ましくは500,000以下である。また、スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量の下限は限定されないが、通常40,000以上、好ましくは60,000以上、より好ましくは90,000以上である。スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量を上記上限以下とすることで、成形性や成形品外観を良好に保持できる。また、重量平均分子量を上記下限以上とすることで、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物から炭化水素系ゴム用軟化剤がブリードアウトすることを抑制したり、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物成形品の表面を適度に荒らすことで、摺動抵抗を小さくすることができる。
なお、スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略記する場合がある)により下記条件で測定したポリスチレン換算の値である。
<ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定条件>
機器 :東ソー株式会社製HLC-8120
カラム :東ソー株式会社製TSKgel Super H1000+H2000+H3000
検出器 :示差屈折率検出器(RI/内蔵)
溶媒 :テトラヒドロフラン
温度 :40℃
流速 :0.5mL/分
注入量 :10μL
濃度 :0.2質量%
較正試料:単分散ポリスチレン
較正法 :ポリスチレン換算
スチレン系熱可塑性エラストマーの製造方法は、上述の構造と物性が得られればどのような方法でもよく、特に限定されない。例えば、リチウム触媒等を用いて不活性溶媒中でブロック重合を行うことによって得ることができる。また、ブロック共重合体の水素添加(水添)には、不活性溶媒中で水添触媒の存在下で行う等の公知の方法を採用することができる。
上記説明してきたもののうちでも、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物が好ましく、スチレン・共役ジエンブロック共重合体の共役ジエンがイソプレン、ブタジエンから選択される1種以上で構成される水素添加物が好適である。スチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物は必要に応じて極性基を有していてもよい。
スチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物としては、スチレン・ブタジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体及び/又はその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及び/又はその水素添加物、スチレン・ブタジエン・イソプレンブロック共重合体及び/又はその水素添加物、スチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物等が挙げられる。
スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物としては、スチレン・ブタジエン・ブチレン共重合体(SBB)、スチレン・エチレン・ブチレン共重合体(SEB)、スチレン・エチレン・ブチレン共重合体(SEB)等が挙げられる。
スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物としては、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)が挙げられる。
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物としては、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)等が挙げられる。
スチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物としてはスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEEPS)が挙げられる。
これらの中でも引張強度や圧縮永久歪の観点からスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物であるスチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)、スチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物であるスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物であるスチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)が好ましい。これらは、全て水素添加されたものであっても、部分的に水素添加されたものであってもよい。
スチレン系熱可塑性エラストマーは、市販品を用いることも可能である。市販品としては、クレイトンポリマージャパン株式会社製「クレイトン(登録商標)」Gシリーズ、TSRC社製「TAIPOL(登録商標)」、「VECTOR(登録商標)」シリーズ、クラレ社製「セプトン(登録商標)」シリーズ等から該当するものを適宜選択して用いることができる。
スチレン系熱可塑性エラストマーは、1種のみを用いてもよく、物性やブロック構造、水添の有無等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
<成分(B):エチレン系重合体>
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物は、成分(B)としてエチレン系重合体を含む。スチレン系熱可塑性エラストマー組成物に成分(B)を配合することで、摺動抵抗を低く制御することができる。
エチレン系重合体としては、公知のものが使用でき、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンとα-オレフィンやその他の単量体との共重合体であってもよい。
エチレン系重合体の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン・プロピレン共重合体が挙げられる。
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物に含まれるエチレン系重合体は、液漏れシール性と摺動性の両立の観点からJIS K7112に従って測定した密度が0.900~0.980g/cmであることが好ましい。エチレン系重合体の密度の下限は、0.940g/cm以上であることがより好ましい。一方、その上限は、0.970g/cm以下であることがより好ましい。
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物に含まれるエチレン系重合体の密度を上記範囲とすることで、高圧蒸気滅菌後に変形しにくくなり、液漏れしにくく、また摺動抵抗が低いスチレン系熱可塑性エラストマー組成物を提供できると考えられる。
エチレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、1.0g/10分以上であることが好ましく、2.0g/10分以上であることがより好ましく、100g/10分以下であることが好ましく、80g/10分以下であることがより好ましい。エチレン系重合体のMFRが上記範囲であると、本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる成形品の圧縮永久歪と摺動抵抗と高圧蒸気滅菌後の外観が優れたものとなる傾向がある。
ここで、エチレン系重合体のMFRはJIS K7210-1、またはJIS K6922-2に従い、温度190℃、荷重21.2N、10分の条件で測定された値である。
エチレン系重合体は市販品として入手することができる。市販品としては、日本ポリエチレン社製「ノバテック(登録商標)」シリーズ、旭化成社製「クレオレックス(登録商標)」シリーズ、宇部丸善ポリエチレン株式会社製「ユメリットシリーズ」等から該当するものを適宜選択して用いることができる。
エチレン系重合体は、1種のみを用いてもよく、物性や共重合成分組成、構造等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
<成分(C):ビニルアルコール系重合体>
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物に含まれる成分(C)のビニルアルコール系重合体としては、ビニルアルコールと、エチレンやブチレン、その他の単量体との共重合体であるビニルアルコール系共重合体が好適に使用でき、好ましくはエチレン・ビニルアルコール系共重合体である。
エチレン・ビニルアルコール系共重合体は、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体(エチレン・ビニルエステル系共重合体)をケン化することにより得られる樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。エチレン・ビニルアルコール系共重合体は、エチレン由来の構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
エチレン・ビニルアルコール系共重合体の具体例としては、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、変性エチレン・ビニルアルコール樹脂が挙げられる。
エチレン・ビニルアルコール系共重合体のエチレン単位含有率は、ISO 14663に基づいて測定した値で10~70モル%が好ましく、より好ましくは20~60モル%である。
エチレン・ビニルアルコール系共重合体等のビニルアルコール系重合体は、耐熱性と摺動性の観点から、23℃での乾式密度法で測定した密度が1.00~1.40g/cmであることが好ましく、より好ましくは1.10~1.30g/cmである。
エチレン・ビニルアルコール系共重合体等のビニルアルコール系重合体のメルトフローレート(MFR)は、摺動抵抗と高圧蒸気滅菌後の外観の観点から0.5g/10分以上であることが好ましく、1.0g/10分以上であることがより好ましく、50g/10分以下であることが好ましく、30g/10分以下であることがより好ましい。
ここでビニルアルコール系重合体のMFRは温度210℃、荷重21.2N、10分の条件で測定された値である。
エチレン・ビニルアルコール系共重合体等のビニルアルコール系重合体の融点は、高圧蒸気滅菌後の外観の観点から80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましい。一方、成分(A)及び成分(B)との相溶性の観点から、ビニルアルコール系重合体の融点は220℃以下であることが好ましく、210℃以下であることがより好ましい。
ここで、ビニルアルコール系共重合体の融点は、DSC法で昇温および降温速度10℃/分で測定された値である。
本発明に用いられるエチレン・ビニルアルコール系共重合体には、エチレン構造単位、ビニルアルコール構造単位(未ケン化のビニルエステル構造単位を含む)の他、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、更に含まれていてもよい。前記コモノマーとしては、例えば、プロピレン、イソブテン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のα-オレフィン;3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、3-ブテン-1、2-ジオール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物などのヒドロキシ基含有α-オレフィン誘導体;不飽和カルボン酸又はその塩,部分アルキルエステル,完全アルキルエステル,ニトリル,アミド若しくは無水物;不飽和スルホン酸又はその塩;ビニルシラン化合物;塩化ビニル;スチレン等が挙げられる。
更に、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性
」されたエチレン・ビニルアルコール系重合体を用いることもできる。
エチレン・ビニルアルコール系共重合体は市販品として入手することができる。市販品としては、三菱ケミカル社製「ソアノール(登録商標)」シリーズ、「ソアレジン(登録商標)」シリーズ、クラレ社製「エバール(登録商標)」等から該当するものを適宜選択して用いることができる。
ビニルアルコール系重合体は、1種のみを用いてもよく、物性や共重合成分組成、構造等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
例えば、本発明で使用されるエチレン・ビニルアルコール系共重合体は、異なる2種以上のエチレン・ビニルアルコール系共重合体の混合物であってもよい。この場合、エチレン含有率が異なるもの、ケン化度が異なるもの、メルトフローレート(MFR)(210℃、荷重21.2N)が異なるもの、他の共重合成分が異なるもの、変性量が異なるもの(例えば、1,2-ジオール構造単位の含有量が異なるもの)などの混合物として用いることができる。
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物において、成分(C)のビニルアルコール系重合体は、摺動抵抗と高圧蒸気滅菌後のシート外観の観点から、成分(A)~(C)の合計量を100質量%としたときに8~35質量%含有されていることが好ましい。摺動抵抗の観点からは成分(C)は多いほうが望ましく、高圧蒸気滅菌後の外観からは成分(C)は少ないほうが望ましい。
<成分(D):炭化水素系ゴム用軟化剤>
本発明の好適態様のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物は、上述した成分(A)~(C)に加え、成分(D)の炭化水素系ゴム用軟化剤を含有することが好ましい。
成分(D)の炭化水素系ゴム用軟化剤としては、炭化水素系オイル等のプロセスオイルが用いられる。炭化水素系オイルとしては、パラフィン系、ナフテン系等のプロセスオイルが用いられる。このうち、パラフィン系プロセスオイルは、本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物を効果的に軟化させるので好ましい。
成分(D)の炭化水素系ゴム用軟化剤は、市販品を用いることも可能である。市販品としてはJX日鉱日石エネルギー社製「日石ポリブテン(登録商標)」HVシリーズ、出光興産社製「ダイアナ(登録商標)プロセスオイル」PWシリーズ、三井化学社製「ルーカント(登録商標)」シリーズが挙げられ、これらの中から適宜選択して使用することができる。
成分(D)の炭化水素系ゴム用軟化剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
<成分含有割合>
本発明の好適態様のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)~(C)に加え、成分(D)を含有する。
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物が成分(D)を含有する場合、成分(A)~(D)の合計量を100質量%としたときの成分(A)の含有率は10~50質量%が好ましく、26~38質量%であることがより好ましい。成分(B)の含有率は10~25質量%あることが好ましい。成分(C)の含有率は5~20質量%が好ましい。成分(D)の含有率は5~50質量%が好ましい。
また、成分(A)と成分(D)の合計量を100質量%としたときの成分(A)の含有率は35~65質量%が好ましい。
成分(A)、(B)、(D)は非極性であるが、成分(C)は極性樹脂であるため、成分(C)の含有率を上記好ましい範囲内で添加することで、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物としての強度を損なうことなく、所望の特性が得られる。
成分(A)、(B)、(C)、(D)の含有率を上記範囲とすることで、良好な柔軟性、圧縮永久歪、摺動抵抗値、高圧蒸気滅菌後のシート外観が得られやすい。
特に柔軟性に影響するデュロ硬度Aに関し、成分(A)~(D)の合計量を100質量%としたときの成分(B)と成分(C)の合計の含有率を15~38質量%の範囲とすることで、デュロ硬度Aを40~80の範囲に制御しやすくなる。
成分(A)~(C)の総含有率は、熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。
更に成分(D)を用いる場合には、成分(A)~(D)の総含有率は、熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
<その他の成分>
本発明の好適態様のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて上記成分(A)~(D)以外の他の成分が含まれていてもよい。
本発明の好適態様のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物が含有していてもよい他の成分としては、タルク、炭酸カルシウムなどの各種フィラー、各種のブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、結晶核剤、着色剤、成分(A),(B)、(C)以外の樹脂等が挙げられる。
ここで、酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトール テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]や、4,4’,4”-[(2,4,6-トリメチル-1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(メチレン)]トリス[2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェノール等のフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤、還元型牛脂を原料にしたアルキルアミンの酸化生成物等のヒドロキシルアミン系加工熱安定剤が好ましい。酸化防止剤を用いる場合、その配合量は、成分(A)100質量部に対して、0.01~1.0質量部が好ましく、より好ましくは0.05~0.5質量部である。
本発明の好適態様のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物が含有し得る成分(A),(B)、(C)以外の樹脂としては、成分(B)、成分(C)以外のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、液晶樹脂、各種エラストマー(成分(A)に該当するものを除く。)等が挙げられる。上記で挙げたその他の樹脂は1種のみを含有しても2種以上を含有してもよい。
本発明の好適態様のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物が成分(A)~(C)以外の他の樹脂を含有する場合、成分(A)~(C)を含有することによる効果を十分に得る上で、他の樹脂の含有量は、成分(A)~(D)の合計100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。
<熱可塑性エラストマー組成物の製造方法>
本発明の好適態様のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物は、上記成分(A)~(C)、必要に応じて配合される成分(D)やその他の成分を、公知の方法、例えば、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、タンブラーブレンダーで機械的に混合した後、公知の方法で機械的に溶融混練し、ダイから押し出すことにより、ペレット等の固形物として得られる。前記機械的溶融混練には、バンバリーミキサー、各種ニーダー、単軸又は二軸押出機等の一般的な溶融混練機を用いることができる。
[用途]
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物によれば、液漏れシール性と摺動性に優れた成形体を得ることができる。本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物よりなる成形体は、特に医療用器具である医療用シリンジのガスケットと呼ばれるシール性部品(シリンジガスケット)に好適に用いられる。
この場合、筒体であるシリンジの素材はポリプロピレン、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィン共重合体(COC)、ガラスであることが多いが、他の素材であっても構わない。本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物は、シリンジ内面やガスケットの表面にシリコーンオイルを塗布しなくても優れた摺動性を示すが、シリンジ内面やガスケット表面にシリコーンオイルを適量塗布しても良い。
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物は、「ディスポーザブルシリンジ」や「プレフィルドシリンジ」どちらの医療用シリンジにも好適に用いられる。
医療用シリンジの滅菌方法としては高圧蒸気滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、電子線滅菌、ガンマ線滅菌などが挙げられるが、本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物はいずれの滅菌方法にも好適に適用される。
耐熱性が最も必要とされるのは高圧蒸気滅菌であるため、後掲の実施例では高圧蒸気滅菌後のシート外観から高圧蒸気滅菌適用性を評価した。
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物は、医療用シリンジガスケットのような優れた液漏れシール性と摺動性を必要とするガスケットに適用できるが、その用途は医療用シリンジに限らない。例えば、非医療用シリンジ、スポイト、水差し、ボトルポンプ、注射器型フィーダー、水鉄砲用ガスケット、調理器具用ガスケット、自動車用外装モール、自動車用ウインドウワイパー等などにも好適に用いられる。
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物からガスケットで封止する容器内の内容物は、液体、粉体、固体、ゲル状物質、気体等問わないが、本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物は、特に薬剤が充填される医療用シリンジとして好適である。
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[原材料]
以下の実施例及び比較例で使用した原材料を以下に示す。
成分(A):スチレン系熱可塑性エラストマー
A-1:スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)
クラレ社製 商品名セプトン(登録商標)2005
スチレン単位含有率:20質量%
重量平均分子量(Mw):295,000
A-2:スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)
クラレ社製 商品名セプトン(登録商標)2006
スチレン単位含有率:35質量%
重量平均分子量(Mw):276,000
A-3:スチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEEPS)
クラレ社製 商品名セプトン(登録商標)4077
スチレン単位含有率:30質量%
重量平均分子量(Mw):381,000
A-4:スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)
クレイトンコーポレーション社製 商品名クレイトン(登録商標)G1651HU
スチレン単位含有率:33質量%
重量平均分子量(Mw):264,000
成分(B):エチレン系重合体
B-1:高密度ポリエチレン
旭化成社製 商品名クレオレックス(登録商標)T701A
MFR:12g/10分
(測定条件:190℃、荷重21.2N(JIS K7210-1))
密度:0.966g/cm
B-2:高密度ポリエチレン
日本ポリエチレン社製 商品名ノバテックHD(登録商標)HJ492
MFR:20g/10分
(測定条件:190℃、荷重21.2N(JIS K6922-2))
密度:0.958g/cm
B-3:高密度ポリエチレン
日本ポリエチレン社製 商品名ノバテックHD(登録商標)HM160
MFR:5g/10分
(測定条件:190℃、荷重21.2N(JIS K6922-2))
密度:0.953g/cm
B-4:低密度ポリエチレン
日本ポリエチレン社製 商品名ノバテックLD(登録商標)LC607K
MFR:8.0g/10分
(測定条件:190℃、荷重21.2N(JIS K6922-2))
密度:0.919g/cm
成分(C):ビニルアルコール系重合体
C-1:エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)
三菱ケミカル社製 商品名ソアノール(登録商標)H4815B
エチレン単位含有率:48モル%
MFR:15g/10分
(測定条件:210℃、荷重21.2N)
密度:1.12g/cm
融点:158℃
C-2:エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)
三菱ケミカル社製 商品名ソアノール(登録商標)A4412B
エチレン単位含有率:44モル%
MFR:12g/10分
(測定条件:210℃、荷重21.2N)
密度:1.14g/cm
融点:164℃
C-3:変性エチレン・ビニルアルコール樹脂
三菱ケミカル社製 商品名ソアレジン(登録商標)SG931
MFR:15g/10分
(測定条件:210℃、荷重21.2N)
密度:1.14g/cm
融点:95℃
成分(D):炭化水素系ゴム用軟化剤(炭化水素系オイル)
D:出光興産株式会社製 商品名ダイアナプロセスオイル(登録商標)PW90
成分(E):ポリプロピレン系重合体(比較用)
E:日本ポリプロ社製 商品名ノバテックPP(登録商標)FA3KM
MFR:10g/10分
(測定条件:230℃、荷重21.2N(JIS K7210))
密度:0.900g/cm
[実施例1~15、および比較例1~7]
<スチレン系熱可塑性エラストマー組成物からなるペレットの作成>
表-1,2に記載の実施例1~15および比較例1~5の各原材料と配合量(質量部)で混合した。
得られた混合物100質量部と、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン株式会社製イルガノックス(登録商標)1010)0.1質量部とを、同方向二軸押出機(東芝機械社製「TEM26-SS」、シリンダ径口26mmに20kg/時間の速度で投入し、200℃で溶融混練し、ダイからストランド状に押出し後、カッティングしてスチレン系熱可塑性エラストマー組成物からなるペレットを得た。
比較例6と7は購入した成分C-1,C-2のペレットを以下のシート作成に使用した。
<スチレン系熱可塑性エラストマー組成物シートの作成>
得られたペレットをインラインスクリュウタイプ射出成形機(東芝機械社製IS130GN)に供給し、射出圧力50MPa、シリンダ温度220℃、金型温度40℃の条件で射出成形して、肉厚2mmのスチレン系熱可塑性エラストマー組成物のシートを得た。
このスチレン系熱可塑性エラストマー組成物シートを用いて、シリンジガスケット性能としての評価を下記(1)~(4)の評価項目について行った。これらの評価結果を表-1,2に示す。
(1)柔軟性(デュロ硬度A,デュロ硬度D)
ISO 7619-1に基づき、デュロ硬度A(タイプAデュロメータ)、もしくはISO 868-2003に基づき、デュロ硬度D(タイプDデュロメータ)を測定した。
(2)圧縮永久歪
ISO815-1に基づき、圧縮永久歪(CS)を測定した。シリンジガスケットとして用いるには、圧縮永久歪が60%以下であることが好ましい。
(3)摺動抵抗
<ポリプロピレンシートの作成>
シリンジ筒体を想定し、日本ポリプロピレン製のノバテックPP(登録商標)FA3KMをインラインスクリュウタイプ射出成形機(東芝機械社製IS130GN)に供給し、射出圧力50MPa、シリンダ温度220℃、金型温度40℃の条件で射出成形して、肉厚2mmのポリプロピレンのシートを得た。
<摺動抵抗の測定>
治具を用いてスチレン系熱可塑性エラストマー組成物シートの角部をポリプロピレンシートに対して60°の角度で当接した状態で、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物シートを引張試験機により引っ張り、ポリプロピレンシートの表面を100mm/分の速度で沿わせた際の最大試験力を測定した。測定は4回行った。4回の最大試験力の測定値の平均値が4.0N以下であることが好ましい。
(4)高圧蒸気滅菌後のシート外観
スチレン系熱可塑性エラストマー組成物シートを高圧蒸気滅菌機に入れて、121℃で30分間高圧蒸気滅菌を行い、滅菌前のシートに対する滅菌後のシートの外観と寸法を比較し、下記基準で評価した。
◎:変化なし
〇:やや変化有
△:変化有
×:大きい変化有
Figure 2022135010000001
Figure 2022135010000002
[考察]
表-1,2より以下のことが分かる。
実施例1~15のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物より得られたシートは、デュロ硬度A、圧縮永久歪、摺動抵抗値、高圧蒸気滅菌後のシート外観のいずれの評価結果も良好であり、シリンジガスケット成形体として好適である。
比較例1は成分(C)を含んでいないため、摺動抵抗が高かった。
比較例2はデュロ硬度Aが85と高いため、ガスケットには不適当である。
比較例3はデュロ硬度Aが36と低いため、摺動抵抗が高かった。
比較例4、5は成分(B)のエチレン系重合体の代わりに成分(E)のプロピレン系重合体を用いているため摺動抵抗が高かった。
比較例6、7は成分(C)のビニルアルコール系重合体単品であり、硬度が高いためにガスケットには不適当である。

Claims (5)

  1. 下記成分(A)~(C)を含み、かつデュロ硬度Aが40~80である、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物。
    成分(A):スチレン系熱可塑性エラストマー
    成分(B):エチレン系重合体
    成分(C):ビニルアルコール系重合体
  2. 前記成分(A)~(C)の合計100質量%における前記成分(C)の含有率が8~35質量%である、請求項1に記載のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 前記成分(B)のエチレン系重合体の密度が0.900~0.980g/cmである、請求項1又は2に記載のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物よりなる成形体。
  5. 請求項1~3のいずれか1項に記載のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物よりなるシリンジガスケット。
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