JP2022132199A - ポリイミド繊維、繊維パッケージ、配線基板およびポリイミド繊維の製造方法 - Google Patents

ポリイミド繊維、繊維パッケージ、配線基板およびポリイミド繊維の製造方法 Download PDF

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Yusuke Oe
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Abstract

【課題】特殊な構造のポリイミドを使用し、加工温度が下げられ、またポリイミドとしての耐熱性を担保しつつ、従来にはない優れた低水性も得られるポリイミド繊維、繊維パッケージ、配線基板およびポリイミド繊維の製造方法を提供する。【解決手段】式(1)で示される繰り返し構成単位及び式(2)で示される繰り返し構成単位を含み、該式(1)の繰り返し構成単位と該式(2)の繰り返し構成単位の合計に対する該式(1)の繰り返し構成単位の含有比が20モル%以上、40モル%未満であるポリイミド樹脂を含むポリイミド繊維。【化1】JPEG2022132199000024.jpg3799【選択図】図1

Description

本発明は、ポリイミド繊維、繊維パッケージ、配線基板およびポリイミド繊維の製造方法に関する。
ポリイミド樹脂は分子鎖の剛直性、共鳴安定化、強い化学結合によって、高熱安定性、高強度、高耐溶媒性を有する有用なエンジニアリングプラスチックであり、幅広い分野で応用されている。また、結晶性を有しているポリイミド樹脂はその耐熱性、強度、耐薬品性をさらに向上させることができることから、金属代替等としての利用が期待されている。しかしながら、ポリイミド樹脂は高耐熱性である反面、熱可塑性を示さず、成形加工性が低いという問題がある。
特に、ポリイミド樹脂はその剛直な構造から、分解温度以前に融点を持たないのが通常であるため、ポリイミド樹脂を用いて繊維を作ることは技術的に困難であった。従来のポリイミド繊維は、強い極性を持つ溶媒に溶解させて乾湿式紡糸にて繊維化する方法が考案されている。
しかしながら、湿式紡糸法によって作られたポリイミド繊維は、溶媒の回収が必要であり、環境面およびコスト面の問題があった。
そこで、近年、ポリイミド樹脂を熱可塑性樹脂とすることによって、溶融紡糸法によりポリイミド樹脂を繊維化する方法が注目されている。
例えば、特許文献1(特開2002-309441号公報)には、溶融紡糸法によっても得られる熱可塑性ポリイミドからなり、細繊度で高強度であり、かつ、寸法安定性、熱安定性等の特性にも優れたポリイミド繊維及びこのようなポリイミド繊維を得るための製造方法が提案されている。
特許文献1には、主鎖中に特定の構造式で表される繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミドからなるマルチフィラメントであって、結晶化度が20%以上、かつ単糸の平均繊維径が20μm以下である結晶化したポリイミド繊維の発明が記載されている。
特許文献2(特開2004-176212号公報)には、溶融紡糸法によって得られる熱可塑性ポリイミドからなり、マルチフィラメントとして糸斑(C%)が小さく、単糸繊度が小さく、かつマルチフィラメントを構成する各単糸繊度にばらつきが少ない、糸斑の低減されたポリイミド繊維及びその製造方法が提案されている。
特許文献2には、主鎖中に特定の繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミドからなるマルチフィラメントであって、単糸数が30本以上、単糸繊度が6dtex以下であり、マルチフィラメントの太さ斑がウースタノーマルC%で10%以下、かつ、マルチフィラメントを繊維軸方向に対して垂直に切断したときの各単糸の断面積のばらつきが20%以下であることを特徴とする糸斑の低減されたポリイミド繊維の発明が記載されている。
さらに、特許文献3(特開平6-33316号公報)には、繊維強化複合材の母材樹脂に好適なポリイミド繊維を長時間安定して生産する、ポリイミド繊維の製造方法が提案されている。
特許文献3には、溶融粘度が7000ポイズ以下の熱可塑性ポリイミドを溶融紡糸するに際し、樹脂の溶融温度、滞留時間、圧力、吐出線速度、口金温度、加熱筒の雰囲気温度を特定し、増粘やゲルの生成あるいは分解ガスの発生を防止するポリイミド繊維の製造方法の発明が記載されている。
また、特許文献4(国際公開第2016/147996号)には、下記式(1)で示される繰り返し構成単位及び下記式(2)で示される繰り返し構成単位を含み、該式(1)の繰り返し構成単位と該式(2)の繰り返し構成単位の合計に対する該式(1)の繰り返し構成単位の含有比が20モル%以上、40モル%未満であり、かつ、所定の条件を満たすポリイミド樹脂が記載されている。
Figure 2022132199000002
また、特許文献5(国際公開第2015/020016号公報)には、下記式(1)の繰り返し構成単位、下記式(2)の繰り返し構成単位、及び下記式(A)の繰り返し構成単位又は下記式(B)の構成単位を含み、式(1)と式(2)の合計に対する式(1)の含有比が40~70モル%、式(1)と式(2)の合計に対する式(A)又は下記式(B)の含有比が0モル%超25モル%以下であるポリイミド樹脂の発明が記載されている。
Figure 2022132199000003
特開2002-309441号公報 特開2004-176212号公報 特開平6-33316号公報 国際公開第2016/147996号 国際公開第2015/020016号
特許文献1から3には、溶融紡糸法によりポリイミド繊維を作製する方法として、熱可塑性のポリイミド樹脂を使用する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1から3の方法では、ポリイミド樹脂の融点が高く、また溶融粘度も高く、さらにメルトフラクチャーが発生しやすいため、紡糸可能な機台が限定され、また安定してポリイミド繊維を生産することが困難であった。また、特許文献1または3の方法で得られるポリイミド樹脂の繊維は、加工温度が高いため加工が困難であり加工可能な機台が限定されるという問題もあった。
ポリイミド樹脂の融点を低くする方法の一つとしては、原料ジアミンとして長直鎖の脂肪族ジアミンを使用する方法がある。この方法によると、ポリイミド樹脂の剛直性が低下するため、融点を低くすることができる。しかしながら、この方法では、融点の低下とともにガラス転移温度も低下し、特に高温時の強度低下が起こる懸念がある。更に、脂肪族ジアミンを主成分とする原料ジアミンを用いたポリイミド樹脂の合成は困難であるという問題があった。
特許文献4および5には、特定の鎖状脂肪族基を含むポリイミド樹脂を用いることによって樹脂の物性が改善されて加工特性のよいポリイミド樹脂にする技術が開示されている。しかしながら、特許文献4および5のような鎖状脂肪族基を含むポリイミド樹脂を用いて溶融紡糸しようとすると、紡糸の途中で糸切れや気泡混入などの不具合が発生しやすく、また、繊維の破断強度にばらつきがでるなど、繊維化が難しいという欠点があった。
本発明は、上記のような問題点を解決し、溶融紡糸法によって高強度であり、かつ、寸法安定性、熱安定性等の特性にも優れたポリイミド繊維、繊維パッケージ、配線基板およびポリイミド繊維の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、融点が非常に高いポリイミド繊維であっても、後加工性に優れたポリイミド繊維を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、耐熱性、寸法安定性、電気特性等に優れたポリイミド繊維を溶融紡糸法を用いて安定的に製造する方法を提供することを目的とする。
(1)
一局面に従うポリイミド繊維は、下記式(1)で示される繰り返し構成単位及び下記式(2)で示される繰り返し構成単位:
Figure 2022132199000004

(Rは少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含む炭素数6~22の2価の基である。Rは炭素数5~16の2価の鎖状脂肪族基である。X及びXは、それぞれ独立に、少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6~22の4価の基である。)を含み、
該式(1)の繰り返し構成単位と該式(2)の繰り返し構成単位の合計に対する該式(1)の繰り返し構成単位の含有比が20モル%以上、40モル%未満であり、かつ、下記条件(a)、(b)及び(c)を満たすポリイミド樹脂を含み、以下物性(A)、(B)および(C)からなる群から選択される少なくとも1つの物性を有するものである。
条件(a):融点(Tm)が280℃以上345℃以下
条件(b):ガラス転移温度(Tg)が150℃以上200℃以下
条件(c):示差走査型熱量計測定により、溶融後、降温速度20℃/分で冷却した際に観測される結晶化発熱ピークの熱量が17.0mJ/mg以上
物性(A):ポリイミド繊維の破断強度が1.5cN/dtex以上
物性(B):ポリイミド繊維の破断強度ばらつきが±0.2cN/dtex以内
物性(C):ポリイミド繊維の破断伸度が20%以上。
本発明によれば、耐熱性、寸法安定性、電気特性等に優れたポリイミド樹脂を、溶融紡糸法を用いて安定的に繊維化することができる。これにより、特に高耐熱性、電気絶縁性、低線膨張係数、強度に優れたポリイミド繊維にすることができる。そして、溶媒の回収等が不要な溶融紡糸法で比較的低温で繊維化することができるため、特殊な紡糸装置を必要とせず、環境およびコストの観点で優れたポリイミド繊維とすることができる。
また、破断強度が高い繊維とすることができ、繊維の破断強度ばらつきが少ない高品質な繊維とすることができる。
また、破断伸度が高い繊維とすることができ、後工程で加工が容易であるため、製品に応じた加工または機能付与が容易な繊維とすることができる。
また、ガラス転移温度(Tg)が低いため、後工程で高温の環境を必要としないため、製品に応じた加工または機能付与が容易な繊維とすることができる。
(2)
第2の発明にかかるポリイミド繊維は、一局面に従うポリイミド繊維において、ポリイミド樹脂の融点(Tm)が310℃以上335℃以下、ガラス転移温度(Tg)が170℃以上190℃以下、360℃における剪断速度100s-1での溶融粘度が1050Pa・s以下であってもよい。
これにより、さらに高強度であり、かつ、さらに寸法安定性、熱安定性等の特性にも優れたポリイミド繊維とすることができる。また、融点が非常に高いポリイミド繊維であっても、後加工性に優れたポリイミド繊維とすることができる。
(3)
第3の発明にかかるポリイミド繊維は、一局面または第2の発明にかかるポリイミド繊維であって、Rが下記式(R1-1)又は(R1-2)で表される2価の基であってもよい。
Figure 2022132199000005

(m11及びm12は、それぞれ独立に、0~2の整数である。m13~m15は、それぞれ独立に、0~2の整数である。)
これにより、さらに高強度であり、かつ、さらに寸法安定性、熱安定性等の特性にも優れたポリイミド繊維とすることができる。また、融点が非常に高いポリイミド繊維であっても、後加工性に優れたポリイミド繊維とすることができる。
(4)
第4の発明にかかるポリイミド繊維は、一局面から第3の発明にかかるポリイミド繊維であって、Rが下記式(R1-3)で表される2価の基であってもよい。
Figure 2022132199000006
これにより、さらに高強度であり、かつ、さらに寸法安定性、熱安定性等の特性にも優れたポリイミド繊維とすることができる。また、融点が非常に高いポリイミド繊維であっても、後加工性に優れたポリイミド繊維とすることができる。
(5)
第5の発明にかかるポリイミド繊維は、一局面から第4の発明にかかるポリイミド繊維であって、Rが炭素数7~12のアルキレン基であってもよい。
これにより、さらに高強度であり、かつ、さらに寸法安定性、熱安定性等の特性にも優れたポリイミド繊維とすることができる。また、融点が非常に高いポリイミド繊維であっても、後加工性に優れたポリイミド繊維とすることができる。
(6)
第6の発明にかかるポリイミド繊維は、一局面から第5の発明にかかるポリイミド繊維であって、X及びXが、それぞれ独立に、下記式(X-1)~(X-4)のいずれかで表される4価の基であってもよい。
Figure 2022132199000007
(R11~R18は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基である。p11~p13は、それぞれ独立に、0~2の整数である。p14、p15、p16及びp18は、それぞれ独立に、0~3の整数である。p17は0~4の整数である。L11~L13は、それぞれ独立に、単結合、エーテル基、カルボニル基又は炭素数1~4のアルキレン基である。)
これにより、さらに高強度であり、かつ、さらに寸法安定性、熱安定性等の特性にも優れたポリイミド繊維とすることができる。また、融点が非常に高いポリイミド繊維であっても、後加工性に優れたポリイミド繊維とすることができる。
(7)
他の局面に従うポリイミド繊維は、融点(Tm)が280℃以上345℃以下、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上200℃以下、360℃における剪断速度100s-1での溶融粘度が1050Pa・s以下である熱可塑性乾燥ポリイミド樹脂を含み、以下物性(A)、(B)および(C)からなる群から選択される少なくとも1つの物性を有する、ポリイミド繊維である。
物性(A):ポリイミド繊維の破断強度が1.5cN/dtex以上
物性(B):ポリイミド繊維の破断強度ばらつきが±0.3cN/dtex未満
物性(C):ポリイミド繊維の破断伸度が10%以上。
本発明においては、基本的に、一局面に従ってポリイミド樹脂を用いて、ポリイミド繊維を製造することができる。
本発明によれば、耐熱性、寸法安定性、電気特性等に優れたポリイミド樹脂を、溶融紡糸法を用いて安定的に繊維化することができる。これにより、特に高耐熱性、電気絶縁性、低線膨張係数、強度に優れたポリイミド繊維にすることができる。そして、溶媒の回収等が不要な溶融紡糸法で比較的低温で繊維化することができるため、特殊な紡糸装置を必要とせず、環境およびコストの観点で優れたポリイミド繊維とすることができる。
また、破断強度が高い繊維とすることができ、繊維の破断強度ばらつきが少ない高品質な繊維とすることができる。
また、破断伸度が高い繊維とすることができ、後工程で加工が容易であるため、製品に応じた加工または機能付与が容易な繊維とすることができる。
また、ガラス転移温度(Tg)が低いため、後工程で高温の環境を必要としないため、製品に応じた加工または機能付与が容易な繊維とすることができる。
(8)
第8の発明にかかるポリイミド繊維は、第7の局面に従うポリイミド繊維において、融点(Tm)が310℃以上335℃以下であり、ガラス転移温度(Tg)が170℃以上190℃以下であり、物性(A)、(B)および(C)を有してもよい。
これにより、さらに高強度であり、かつ、さらに寸法安定性、熱安定性等の特性にも優れたポリイミド繊維とすることができる。また、融点が非常に高いポリイミド繊維であっても、後加工性に優れたポリイミド繊維とすることができる。
(9)
第9の発明にかかる繊維パッケージは、一局面から第8の発明にかかるポリイミド繊維を紙管などの管に巻き付けてなる繊維パッケージであってもよい。
これにより、高強度であり、かつ、寸法安定性、熱安定性等の特性にも優れたポリイミド繊維からなる繊維パッケージとすることができる。
(10)
他の局面に従う配線基板は、一局面から第8の発明にかかるポリイミド繊維を含むものであってもよい。
誘電正接が低く耐熱性にも優れたポリイミド繊維を半導体基板の材料に用いることによって、薄地化・小型化し高速通信に好適な配線基板とすることができる。
この場合において、ポリイミド繊維は2dtex以下の単糸繊度とすることが好ましい。これにより、回路基板の薄地化・小型化を好ましく行うことができる。
(11)
他の局面に従うポリイミド繊維の製造方法は、融点(Tm)が280℃以上345℃以下、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上200℃以下であるポリイミド樹脂を乾燥して水分率が50ppm以下の乾燥ポリイミド樹脂を得る乾燥工程と、乾燥ポリイミド樹脂を、以下の条件(a)~(c)で押出機を用いて加熱しながら溶融させ口金より押出し、紡出糸を形成する紡糸工程と、
条件(a):乾燥ポリイミド樹脂の360℃における剪断速度100s-1での溶融粘度が1050Pa・s以下、
条件(b):紡糸温度が、ポリイミド樹脂の融点+20℃以上380℃以下
条件(c):溶融滞留時間が12分以下
口金より吐出成形された紡出糸を1本のフィラメントに集束する集束工程と、フィラメントを管に巻き取る巻取工程と、を含むものである。
本発明によれば、耐熱性、寸法安定性、電気特性等に優れたポリイミド樹脂を、溶融紡糸法を用いて安定的に繊維化することができる。これにより、特に高耐熱性、電気絶縁性、低線膨張係数、強度に優れたポリイミド繊維を製造することができる。そして、溶媒の回収等が不要な溶融紡糸法で比較的低温で繊維化することができるため、特殊な紡糸装置を必要とせず、環境およびコストの観点で優れたポリイミド繊維を製造することができる。また、破断強度が高い繊維とすることができ、繊維の破断強度ばらつきが少ない高品質な繊維とすることができる。
また、破断伸度が高い繊維とすることができ、後工程での加工が容易であるため、製品に応じた加工または機能付与が容易な繊維とすることができる。
また、ガラス転移温度(Tg)が低いため、後工程で高温の環境を必要としないため、製品に応じた加工または機能付与が容易な繊維とすることができる。
(12)
第12の発明にかかるポリイミド繊維の製造方法は、第11の発明にかかるポリイミド繊維の製造方法であって、集束されたフィラメントを150℃以上300℃以下で加熱しながら延伸する延伸工程をさらに含んでもよい。
これにより、融点が非常に高いポリイミド繊維であっても、後加工性に優れたポリイミド繊維とすることができる。
(13)
第13の発明にかかるポリイミド繊維の製造方法は、第11または12の発明にかかるポリイミド繊維の製造方法であって、紡糸工程が、以下の条件を満足するものである。
条件(d):線速度が5.0m/min以上50.0m/min以下、
条件(e):剪断速度が700s-1以上90,000s-1以下、
条件(f):巻取行程の巻取速度(紡糸速度)が300m/分以上3500m/分以下
これにより、耐熱性、寸法安定性、電気特性等に優れたポリイミド繊維を溶融紡糸法を用いて安定的に製造することができる。
図1は、ポリイミド樹脂を溶融押出し、溶融紡糸してポリイミド繊維を製造する方法を示す概略説明図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、特定の化学構造を有する熱可塑性ポリイミド樹脂を原料とし、溶融紡糸、延伸の条件を適切に選択することにより、結晶化され、強度が高く、熱安定性、寸法安定性等にも優れたポリイミド繊維、およびそのポリイミド繊維の製造方法である。本発明によれば、耐熱性、寸法安定性、電気特性等に優れたポリイミド繊維を溶融紡糸法を用いて安定的に製造することができる。
[ポリイミド樹脂]
本発明に使用するポリイミド樹脂は、特定の異なるポリイミド構成単位を、上記の特定の比率で組み合わせてなり、かつ、所定の特性を満たすものであるため、成形加工性と耐熱性とのバランスが良好である。
本発明のポリイミド繊維は、以下のポリイミド樹脂からなり、または以下のポリイミド樹脂を主に含有する。
ポリイミド樹脂は、下記式(1)で示される繰り返し構成単位及び下記式(2)で示される繰り返し構成単位を含む。
Figure 2022132199000008

なお、Rは少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含む炭素数6~22の2価の基である。Rは炭素数5~16の2価の鎖状脂肪族基である。X及びXは、それぞれ独立に、少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6~22の4価の基である。
該式(1)の繰り返し構成単位と該式(2)の繰り返し構成単位の合計に対する該式(1)の繰り返し構成単位の含有比が20モル%以上、40モル%未満であり、かつ、下記条件(a)、(b)及び(c)を満たす。
条件(a):融点(Tm)が280℃以上、345℃以下
条件(b):ガラス転移温度(Tg)が150℃以上、200℃以下
条件(c):示差走査型熱量計測定により、溶融後、降温速度20℃/分で冷却した際に観測される結晶化発熱ピークの熱量が17.0mJ/mg以上。
このようなポリイミド樹脂は、熱可塑性で熱加工性に優れると共に結晶性を有するポリイミド樹脂である。
(ポリイミド樹脂の構成単位)
式(1)の繰り返し構成単位について、以下に詳述する。
は少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含む炭素数6~22の2価の基である。ここで、脂環式炭化水素構造とは、脂環式炭化水素化合物から誘導される環を意味し、該脂環式炭化水素化合物は、飽和であっても不飽和であってもよく、単環であっても多環であってもよい。
脂環式炭化水素構造としては、シクロヘキサン環等のシクロアルカン環、シクロヘキセン等のシクロアルケン環、ノルボルナン環等のビシクロアルカン環、及びノルボルネン等のビシクロアルケン環が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはシクロアルカン環、より好ましくは炭素数4~7のシクロアルカン環、さらに好ましくはシクロヘキサン環である。
の炭素数は6~22であり、好ましくは8~17である。
は脂環式炭化水素構造を少なくとも1つ含み、好ましくは1~3個含む。
は、好ましくは下記式(R1-1)又は(R1-2)で表される2価の基である。
Figure 2022132199000009

(m11及びm12は、それぞれ独立に、0~2の整数であり、好ましくは0又は1である。m13~m15は、それぞれ独立に、0~2の整数であり、好ましくは0又は1である。)
は、特に好ましくは下記式(R1-3)で表される2価の基である。
Figure 2022132199000010
なお、上記の式(R1-3)で表される2価の基において、2つのメチレン基のシクロヘキサン環に対する位置関係はシスであってもトランスであってもよく、またシスとトランスの比は如何なる値でもよい。
は少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6~22の4価の基である。芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、及びテトラセン環が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、より好ましくはベンゼン環である。
の炭素数は6~22であり、好ましくは6~18である。
は芳香環を少なくとも1つ含み、好ましくは1~3個含む。
は、好ましくは下記式(X-1)~(X-4)のいずれかで表される4価の基である。
Figure 2022132199000011

(R11~R18は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基である。p11~p13は、それぞれ独立に、0~2の整数であり、好ましくは0である。p14、p15、p16及びp18は、それぞれ独立に、0~3の整数であり、好ましくは0である。p17は0~4の整数であり、好ましくは0である。L11~L13は、それぞれ独立に、単結合、エーテル基、カルボニル基又は炭素数1~4のアルキレン基である。)
なお、Xは少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6~22の4価の基であるので、式(X-2)におけるR12、R13、p12及びp13は、式(X-2)で表される4価の基の炭素数が6~22の範囲に入るように選択される。
同様に、式(X-3)におけるL11、R14、R15、p14及びp15は、式(X-3)で表される4価の基の炭素数が6~22の範囲に入るように選択され、式(X-4)におけるL12、L13、R16、R17、R18、p16、p17及びp18は、式(X-4)で表される4価の基の炭素数が6~22の範囲に入るように選択される。
は、特に好ましくは下記式(X-5)又は(X-6)で表される4価の基である。
Figure 2022132199000012
次に、式(2)の繰り返し構成単位について、以下に詳述する。
は炭素数5~16の2価の鎖状脂肪族基であり、好ましくは炭素数6~14、より好ましくは炭素数7~12、更に好ましくは炭素数8~10である。ここで、鎖状脂肪族基とは、鎖状脂肪族化合物から誘導される基を意味し、該鎖状脂肪族化合物は、飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖状であっても分岐状であってもよく、酸素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
は、好ましくは炭素数5~16のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数6~14、更に好ましくは炭素数7~12のアルキレン基であり、なかでも好ましくは炭素数8~10のアルキレン基である。アルキレン基は、直鎖アルキレン基であっても分岐アルキレン基であってもよいが、好ましくは直鎖アルキレン基である。
は、好ましくはオクタメチレン基及びデカメチレン基から選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましくはオクタメチレン基である。
また、Rの別の好適な様態として、エーテル基を含む炭素数5~16の2価の鎖状脂肪族基が挙げられる。該炭素数は、好ましくは炭素数6~14、より好ましくは炭素数7~12、更に好ましくは炭素数8~10である。その中でも好ましくは下記式(R2-1)又は(R2-2)で表される2価の基である。
Figure 2022132199000013

(m21及びm22は、それぞれ独立に、1~15の整数であり、好ましくは1~13、より好ましくは1~11、更に好ましくは1~9である。m23~m25は、それぞれ独立に、1~14の整数であり、好ましくは1~12、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~8である。)
なお、Rは炭素数5~16(好ましくは炭素数6~14、より好ましくは炭素数7~12、更に好ましくは炭素数8~10)の2価の鎖状脂肪族基であるので、式(R2-1)におけるm21及びm22は、式(R2-1)で表される2価の基の炭素数が5~16(好ましくは炭素数6~14、より好ましくは炭素数7~12、更に好ましくは炭素数8~10)の範囲に入るように選択される。すなわち、m21+m22は5~16(好ましくは6~14、より好ましくは7~12、更に好ましくは8~10)である。
同様に、式(R2-2)におけるm23~m25は、式(R2-2)で表される2価の基の炭素数が5~16(好ましくは炭素数6~14、より好ましくは炭素数7~12、更に好ましくは炭素数8~10)の範囲に入るように選択される。すなわち、m23+m24+m25は5~16(好ましくは炭素数6~14、より好ましくは炭素数7~12、更に好ましくは炭素数8~10)である。
は、式(1)におけるXと同様に定義され、好ましい様態も同様である。
式(1)の繰り返し構成単位と式(2)の繰り返し構成単位の合計に対する、式(1)の繰り返し構成単位の含有比は20モル%以上、40モル%未満である。該含有量比が20モル%未満であると融点が上昇するため紡糸加工性が低下する。
また、該含有量比が40モル%未満であると結晶化発熱ピークの熱量(以下「結晶化発熱量」ともいう)が増加するため、耐熱性が良好である。式(1)の繰り返し構成単位の含有比が上記範囲である場合、ポリイミド樹脂を十分に結晶化させることが可能となる。
式(1)の繰り返し構成単位と式(2)の繰り返し構成単位の合計に対する、式(1)の繰り返し構成単位の含有比は、紡糸加工性の観点から、好ましくは25モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは32モル%以上であり、結晶化発熱量の増加、すなわち耐熱性の観点から、好ましくは38モル%以下、より好ましくは37モル%以下、更に好ましくは36モル%以下である。
ポリイミド樹脂を構成する全繰り返し単位に対する、式(1)の繰り返し構成単位と、式(2)の繰り返し構成単位の合計の含有比は、好ましくは50~100モル%、より好ましくは75~100モル%、更に好ましくは80~100モル%、より更に好ましくは85~100モル%である。
ポリイミド樹脂は、さらに、下記式(3)の繰り返し構成単位を含有してもよい。その場合、式(1)の繰り返し構成単位と式(2)の繰り返し構成単位の合計に対する、式(3)の繰り返し構成単位の含有比は、好ましくは25モル%以下である。一方で、下限は特に限定されず、0モル%を超えていればよい。
前記含有比は、耐熱性の向上という観点からは、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、一方で結晶性を維持する観点からは、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下である。
Figure 2022132199000014

(Rは少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6~22の2価の基である。Xは少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6~22の4価の基である。)
は少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6~22の2価の基である。前記芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、及びテトラセン環が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、より好ましくはベンゼン環である。
の炭素数は6~22であり、好ましくは6~18である。
は芳香環を少なくとも1つ含み、好ましくは1~3個含む。
また、前記芳香環には1価もしくは2価の電子求引性基が結合していてもよい。1価の電子求引性基としてはニトロ基、シアノ基、p-トルエンスルホニル基、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、フェニル基、アシル基などが挙げられる。2価の電子求引性基としては、フッ化アルキレン基(例えば-C(CF-、-(CF-(ここで、pは1~10の整数である))のようなハロゲン化アルキレン基のほかに、-CO-、-SO-、-SO-、-CONH-、-COO-などが挙げられる。
は、好ましくは下記式(R3-1)又は(R3-2)で表される2価の基である。
Figure 2022132199000015
(m31及びm32は、それぞれ独立に、0~2の整数であり、好ましくは0又は1である。m33及びm34は、それぞれ独立に、0~2の整数であり、好ましくは0又は1である。R21、R22、及びR23は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、又は炭素数2~4のアルキニル基である。p21、p22及びp23は0~4の整数であり、好ましくは0である。L21は、単結合、エーテル基、カルボニル基又は炭素数1~4のアルキレン基である。)
なお、Rは少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6~22の2価の基であるので、式(R3-1)におけるm31、m32、R21及びp21は、式(R3-1)で表される2価の基の炭素数が6~22の範囲に入るように選択される。
同様に、式(R3-2)におけるL21、m33、m34、R22、R23、p22及びp23は、式(R3-2)で表される2価の基の炭素数が12~22の範囲に入るように選択される。
は、式(1)におけるXと同様に定義され、好ましい様態も同様である。
ポリイミド樹脂を構成する全繰り返し構成単位に対する、式(3)の繰り返し構成単位の含有比は、25モル%以下であることが好ましい。一方で、下限は特に限定されず、0モル%を超えていればよい。
前記含有比は、耐熱性の向上という観点からは、好ましくは5モル%以上、より好ましくは7モル%以上であり、一方で結晶性を維持する観点からは、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下である。
ポリイミド樹脂は、さらに、下記式(4)で示される繰り返し構成単位を含有してもよい。
Figure 2022132199000016

(Rは-SO-又は-Si(R)(R)O-を含む2価の基であり、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1~3の鎖状脂肪族基又はフェニル基を表す。Xは少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6~22の4価の基である。)
は、式(1)におけるXと同様に定義され、好ましい様態も同様である。
ポリイミド樹脂の末端構造には特に制限はないが、炭素数5~14の鎖状脂肪族基を末端に有することが好ましい。
該鎖状脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖状であっても分岐状であってもよい。ポリイミド樹脂が上記特定の基を末端に有すると、耐熱老化性に優れる。
炭素数5~14の飽和鎖状脂肪族基としては、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、ラウリル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルペンチル基、2-メチルヘキシル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、イソノニル基、2-エチルオクチル基、イソデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基等が挙げられる。
炭素数5~14の不飽和鎖状脂肪族基としては、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、1-へキセニル基、2-へキセニル基、1-ヘプテニル基、2-ヘプテニル基、1-オクテニル基、2-オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基等が挙げられる。
中でも、上記鎖状脂肪族基は飽和鎖状脂肪族基であることが好ましく、飽和直鎖状脂肪族基であることがより好ましい。また耐熱老化性を得る観点から、上記鎖状脂肪族基は好ましくは炭素数6以上、より好ましくは炭素数7以上、更に好ましくは炭素数8以上であり、好ましくは炭素数12以下、より好ましくは炭素数10以下、更に好ましくは炭素数9以下である。上記鎖状脂肪族基は1種のみでもよく、2種以上でもよい。
上記鎖状脂肪族基は、特に好ましくはn-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基から選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはn-オクチルアミン、イソオクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、及びイソノニルアミンから選ばれる少なくとも1種であり、最も好ましくはn-オクチル基、イソオクチル基、及び2-エチルヘキシル基から選ばれる少なくとも1種である。
また、ポリイミド樹脂は、耐熱老化性の観点から、末端アミノ基及び末端カルボキシル基以外に、炭素数5~14の鎖状脂肪族基のみを末端に有することが好ましい。上記以外の基を末端に有する場合、その含有量は、好ましくは炭素数5~14の鎖状脂肪族基に対し10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
ポリイミド樹脂中の上記炭素数5~14の鎖状脂肪族基の含有量は、優れた耐熱老化性を発現する観点から、ポリイミド樹脂中の全繰り返し構成単位の合計100モル%に対し、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、更に好ましくは0.2モル%以上である。また、十分な分子量を確保し良好な機械的物性を得るためには、ポリイミド樹脂中の上記炭素数5~14の鎖状脂肪族基の含有量は、ポリイミド樹脂中の全繰り返し構成単位の合計100モル%に対し、好ましくは10モル%以下、より好ましくは6モル%以下、更に好ましくは3.5モル%以下である。
ポリイミド樹脂中の上記炭素数5~14の鎖状脂肪族基の含有量は、ポリイミド樹脂を解重合することにより求めることができる。
(ポリイミド樹脂の条件)
本発明に使用するポリイミド樹脂は、下記条件(a)、(b)及び(c)を満たすことを特徴とする。
条件(a):融点(Tm)が280℃以上、345℃以下
条件(b):ガラス転移温度(Tg)が150℃以上、200℃以下
条件(c):示差走査型熱量計測定により、溶融後、降温速度20℃/分で冷却した際に観測される結晶化発熱ピークの熱量(結晶化発熱量)が17.0mJ/mg以上
ポリイミド樹脂は、上記条件(a)~(c)のすべてを満たすことで、紡糸加工性と耐熱性とのバランスが良好である。
また、一般的に結晶性樹脂においては、結晶化度が高いもの、すなわち結晶化発熱量が大きいものは、融点以上に加熱された場合の流動性が良好となり、紡糸加工性が向上する。一般的に、結晶性樹脂中の結晶部分は融点以上に加熱されると溶融し、急激な粘度低下が発生する。そのため、結晶部分が多い樹脂ほど融点以上の温度での流動性が向上する。すなわち、条件(a)及び(c)の両方を満たすポリイミド樹脂は、良好な紡糸加工性を有するものともなる。
条件(a)に関して、ポリイミド樹脂の融点(Tm)は、耐熱性を発現する観点から、280℃以上であり、好ましくは290℃以上、より好ましくは300℃以上であり、高い紡糸加工性の観点からは、345℃以下、好ましくは340℃以下、より好ましくは335℃以下、更に好ましくは330℃以下である。
ポリイミド樹脂の融点(Tm)が280℃未満であると耐熱性が不十分であり、345℃を超えると紡糸加工性が不十分である。
条件(b)に関して、ポリイミド樹脂のガラス転移温度(Tg)は、耐熱性の観点から150℃以上であり、スーパーエンプラとして高い評価を受けているポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のTg(153℃)以上であることが好ましい。すなわち、ポリイミド樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、高い紡糸加工性を発現する観点からは、好ましくは195℃以下、より好ましくは190℃以下、更に好ましくは185℃以下である。
ポリイミド樹脂のガラス転移温度(Tg)が150℃未満であると耐熱性が低く不十分である。
ポリイミド樹脂の融点、ガラス転移温度は、いずれも示差走査型熱量計により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
また条件(c)に関して、ポリイミド樹脂を溶融後、降温速度20℃/分で冷却した際に観測される結晶化発熱量は、示差走査型熱量計により測定される値である。
具体的には、ポリイミド樹脂をサンプリングし、示差走査型熱量計を用いて一定速度で昇温し、ポリイミド樹脂を一度溶融させる。その後、所定の降温速度で冷却した際に観測される結晶化発熱ピークの面積から結晶化発熱量を算出する。
本発明に使用するポリイミド樹脂においては、結晶化発熱量が17.0mJ/mg以上である。該結晶化発熱量が17.0mJ/mg未満であると十分な繊維加工特性が得られない。十分な繊維加工特性を得る観点から、結晶化発熱量は、好ましくは18.0mJ/mg以上、より好ましくは18.5mJ/mg以上である。結晶化発熱量の上限値は特に限定されないが、通常、45.0mJ/mg以下である。
本発明に使用するポリイミド樹脂の0.5質量%濃硫酸溶液の30℃における対数粘度は、好ましくは0.2~2.0dL/g、より好ましくは0.3~1.8dL/gの範囲である。
対数粘度が0.2dL/g以上であれば繊維化した際に十分な機械的強度が得られ、2.0dL/g以下であると、紡糸加工性及び取り扱い性が良好である。
対数粘度μは、キャノンフェンスケ粘度計を使用して、30℃において濃硫酸及び上記ポリイミド樹脂溶液の流れる時間をそれぞれ測定し、下記式から求められる。
μ=ln(ts/t)/C
:濃硫酸の流れる時間
ts:ポリイミド樹脂溶液の流れる時間
C:0.5(g/dL)
本発明に使用するポリイミド樹脂は、荷重1.80MPaにおける荷重たわみ温度(HDT)が160℃以上180℃以下が好ましく、比重が1.24g/cm以上1.34g/cm以下が好ましく、吸水率(23℃、24時間)が0.3%以下であることが好ましい(いずれも出願時におけるJIS試験方法による)。
[ポリイミド樹脂の製造方法]
ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させることにより製造することができる。該テトラカルボン酸成分は少なくとも1つの芳香環を含むテトラカルボン酸及び/又はその誘導体を含有し、該ジアミン成分は少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含むジアミン及び鎖状脂肪族ジアミンを含有する。
少なくとも1つの芳香環を含むテトラカルボン酸は4つのカルボキシル基が直接芳香環に結合した化合物であることが好ましく、構造中にアルキル基を含んでいてもよい。またテトラカルボン酸は、炭素数6~26であるものが好ましい。テトラカルボン酸としては、ピロメリット酸、2,3,5,6-トルエンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸等が好ましい。これらの中でもピロメリット酸がより好ましい。
少なくとも1つの芳香環を含むテトラカルボン酸の誘導体としては、少なくとも1つの芳香環を含むテトラカルボン酸の無水物又はアルキルエステル体が挙げられる。テトラカルボン酸誘導体は、炭素数6~38であるものが好ましい。テトラカルボン酸の無水物としては、ピロメリット酸一無水物、ピロメリット酸二無水物、2,3,5,6-トルエンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。テトラカルボン酸のアルキルエステル体としては、ピロメリット酸ジメチル、ピロメリット酸ジエチル、ピロメリット酸ジプロピル、ピロメリット酸ジイソプロピル、2,3,5,6-トルエンテトラカルボン酸ジメチル、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸ジメチル、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジメチル、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジメチル、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジメチル等が挙げられる。上記テトラカルボン酸のアルキルエステル体において、アルキル基の炭素数は1~3が好ましい。
少なくとも1つの芳香環を含むテトラカルボン酸及び/又はその誘導体は、上記から選ばれる少なくとも1つの化合物を単独で用いてもよく、2つ以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含むジアミンの炭素数は6~22が好ましく、例えば、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、カルボンジアミン、リモネンジアミン、イソフォロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルプロパン等が好ましい。これらの化合物を単独で用いてもよく、これらから選ばれる2つ以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが好適に使用できる。なお、脂環式炭化水素構造を含むジアミンは一般的には構造異性体を持つが、シス体/トランス体の比率は限定されない。
鎖状脂肪族ジアミンは、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数は5~16が好ましく、6~14がより好ましく、7~12が更に好ましい。また、鎖部分の炭素数が5~16であれば、その間にエーテル結合を含んでいてもよい。鎖状脂肪族ジアミンとして例えば1,5-ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタン-1,5-ジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,11-ウンデカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、1,13-トリデカメチレンジアミン、1,14-テトラデカメチレンジアミン、1,16-ヘキサデカメチレンジアミン、2,2’-(エチレンジオキシ)ビス(エチレンアミン)等が好ましい。
鎖状脂肪族ジアミンは本発明の範囲内であれば1種類あるいは複数を混合して使用してもよい。これらのうち、炭素数が8~10の鎖状脂肪族ジアミンが好適に使用でき、特に1,8-オクタメチレンジアミン及び1,10-デカメチレンジアミンから選ばれる少なくとも1種が好適に使用できる。
ポリイミド樹脂を製造する際、少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含むジアミンと鎖状脂肪族ジアミンの合計量に対する、少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含むジアミンの仕込み量のモル比は20モル%以上、40モル%未満であることが好ましい。該モル量は、好ましくは25モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは32モル%以上であり、優れた成形加工性を発現する観点から、好ましくは40モル%未満、より好ましくは38モル%以下、更に好ましくは37モル%以下、更に好ましくは36モル%以下である。
また、上記ジアミン成分中に、少なくとも1つの芳香環を含むジアミンを含有してもよい。少なくとも1つの芳香環を含むジアミンの炭素数は6~22が好ましく、例えば、オルトキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,2-ジエチニルベンゼンジアミン、1,3-ジエチニルベンゼンジアミン、1,4-ジエチニルベンゼンジアミン、1,2-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)1,4-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(3-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,6-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン等が挙げられる。
上記において、少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含むジアミンと鎖状脂肪族ジアミンの合計量に対する、少なくとも1つの芳香環を含むジアミンの仕込み量のモル比は、25モル%以下であることが好ましい。一方で、下限は特に限定されず、0モル%を超えていればよい。
モル比は、耐熱性の向上という観点からは、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、一方で結晶性を維持する観点からは、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下である。
また、モル比は、ポリイミド樹脂の着色を少なくする観点からは、好ましくは12モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下、より更に好ましくは0モル%である。
ポリイミド樹脂を製造する際、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の仕込み量比は、テトラカルボン酸成分1モルに対してジアミン成分が0.9~1.1モルであることが好ましい。
ポリイミド樹脂を製造するための重合方法としては、ポリイミド樹脂を製造するための公知の重合方法が適用でき、特に限定されないが、例えば溶液重合、溶融重合、固相重合、懸濁重合法等が挙げられる。この中で特に有機溶媒を用いた高温条件下における懸濁重合が好ましい。高温条件下における懸濁重合を行う際は、150℃以上で重合を行うのが好ましく、180~250℃で行うのがより好ましい。重合時間は使用するモノマーにより適宜変更するが、0.1~6時間程度行うのが好ましい。
ポリイミド樹脂の製造方法としては、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、下記式(I)で表されるアルキレングリコール系溶媒を含む溶媒の存在下で反応させる工程を含むことが好ましい。これにより、粉末状のポリイミド樹脂を得ることができる。
当該製造方法によれば、JIS K0069の方法によりふるい分け試験を行ったときに、JIS試験用の公称目開き500μmのふるいを通過する割合が90質量%以上のポリイミド樹脂粉末、及び、レーザー回折光散乱式粒度分布測定器による粒度測定で、D10が8~100μm、D50が12~250μm、D90が20~500μmのポリイミド樹脂粉末が容易に得られる点で好ましい。
Figure 2022132199000017

(Raは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Raは炭素数2~6の直鎖のアルキレン基であり、nは1~3の整数である。)
均一な粉末状のポリイミド樹脂を得るには、ワンポットの反応において(1)ポリアミド酸を均一に溶解させる、あるいはナイロン塩を均一に分散させる、(2)ポリイミド樹脂を全く溶解、膨潤させない、の二つの特性が溶媒に備わっていることが望ましいと考えられる。上記式(I)で表されるアルキレングリコール系溶媒を含む溶媒はこの2つの特性を概ね満たしている。
アルキレングリコール系溶媒は、常圧において高温条件で重合反応を可能にする観点から、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは180℃以上の沸点を有する。
式(I)中のRaは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
式(I)中のRaは炭素数2~6の直鎖のアルキレン基であり、好ましくは炭素数2~3の直鎖のアルキレン基であり、より好ましくはエチレン基である。
式(I)中のnは1~3の整数であり、好ましくは2又は3である。
アルキレングリコール系溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(別名:2-(2-メトキシエトキシ)エタノール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(別名:2-(2-エトキシエトキシ)エタノール)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール等が挙げられる。これら溶媒を単独で用いてもよく、これらから選ばれる2つ以上の溶媒を組み合わせて用いてもよい。これら溶媒のうち、好ましくは2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール及び1,3-プロパンジオールであり、より好ましくは2-(2-メトキシエトキシ)エタノール及び2-(2-エトキシエトキシ)エタノールである。
溶媒中におけるアルキレングリコール系溶媒の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。溶媒は、アルキレングリコール系溶媒のみからなっていてもよい。
溶媒が、アルキレングリコール系溶媒とそれ以外の溶媒を含む場合、当該「それ以外の溶媒」の具体例としては水、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、クロロベンゼン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、ジメチルスルホキシド、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、フェノール、p-クロルフェノール、2-クロル-4-ヒドロキシトルエン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ジオキサン、γ-ブチロラクトン、ジオキソラン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、ジブロモメタン、トリブロモメタン、1,2-ジブロモエタン、1,1,2-トリブロモエタン等が挙げられる。これら溶媒を単独で用いてもよく、これらから選ばれる2つ以上の溶媒を組み合わせて用いてもよい。
ポリイミド樹脂の好適な製造方法としては、例えば、上記アルキレングリコール系溶媒を含む溶媒中にテトラカルボン酸成分を含ませてなる溶液(a)と、アルキレングリコール系溶媒を含む溶媒中にジアミン成分を含ませてなる溶液(b)を別々に調製した後、溶液(a)に対し溶液(b)を添加して又は溶液(b)に対し溶液(a)を添加して、ポリアミド酸を含有する溶液(c)を調製し、次いで、溶液(c)を加熱することによりポリアミド酸をイミド化して、ポリイミド樹脂を合成する方法が挙げられる。
テトラカルボン酸成分とジアミン成分との反応は、常圧下又は加圧下のいずれで行うこともできるが、常圧下であれば耐圧性容器を必要としない点で、常圧下で行われることが好ましい。
末端封止剤を使用する場合には、溶液(a)と溶液(b)を混合し、この混合液中に末端封止剤を混合して、ポリアミド酸を含有する溶液(c)を調製し、次いで、溶液(c)を加熱することが好ましく、溶液(a)に溶液(b)を添加し終わった後に末端封止剤を添加して、ポリアミド酸を含有する溶液(c)を調製し、次いで、溶液(c)を加熱することがより好ましい。
また、ポリイミド樹脂中の副生成物の量を低減する観点からは、ポリイミド樹脂の製造方法は、テトラカルボン酸成分がテトラカルボン酸二無水物を含み、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させる工程が、テトラカルボン酸成分とアルキレングリコール系溶媒とを含む溶液(a)に、ジアミン成分とアルキレングリコール系溶媒とを含む溶液(b)を添加することで、ポリアミド酸を含有する溶液(c)を調製する工程(i)、及び溶液(c)を加熱してポリアミド酸をイミド化することにより、ポリイミド樹脂を得る工程(ii)を含み、工程(i)において、テトラカルボン酸成分1molに対する単位時間当たりのジアミン成分の添加量が0.1mol/min以下となるように、溶液(a)に溶液(b)を添加する、ことが好ましい。
また、本発明に使用するポリイミド樹脂には、その特性が阻害されない範囲で、艶消剤、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、及び、樹脂改質剤等の任意成分を、必要に応じて配合することができる。
さらにポリイミド樹脂は、該ポリイミド樹脂が本来有する物性を利用しつつ、所望の性能を付与する観点から、充填剤、難燃剤、着色剤、摺動性改良剤、酸化防止剤、及び導電剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤を配合した樹脂組成物としてもよい。
本発明に使用するポリイミド樹脂及びこれを含むポリイミド樹脂組成物は290~350℃という比較的低い温度で溶融紡糸を行うことが可能であるため、ポリイミド繊維を容易にかつ安定して製造することができる。溶融紡糸する際の温度は、好ましくは310℃以上345℃以下である。
[ポリイミド樹脂の溶融紡糸]
次に、ポリイミド樹脂の溶融紡糸方法について説明する。
上記で得られた、融点(Tm)が280℃以上345℃以下、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上200℃以下であるポリイミド樹脂を、乾燥して水分率が50ppm以下の乾燥ポリイミド樹脂を得る(乾燥工程)。
その後、乾燥ポリイミド樹脂を、以下の条件(a)~(c)で押出機1を用いて加熱しながら溶融させ口金より押出し、紡出糸を形成する(紡糸工程)。
条件(a):乾燥ポリイミド樹脂の360℃における剪断速度100s-1での溶融粘度が1050Pa・s以下
条件(b):紡糸温度が、ポリイミド樹脂の融点+20℃以上380℃以下
条件(c):溶融滞留時間が12分以下
そして、口金より吐出成形された紡出糸を1本のフィラメントに集束する(集束工程)。
さらに、集束工程で得られたフィラメントを管に巻き取る(巻取工程)。
なお、後工程として、集束されたフィラメントを150℃以上300℃以下で加熱しながら延伸する延伸工程をさらに行っても良い。
また、後工程として、集束されたフィラメントを150℃以上300℃以下で加熱した後、熱処理工程をさらに行ってもよい。
以下、各工程について詳説する。
(乾燥工程)
上記で得られたポリイミド樹脂を真空乾燥機内に貯蔵して100℃以上200℃以下に加温した状態で、10時間以上30時間以下乾燥する。
ポリイミド樹脂の水分率は、乾燥工程によって50ppm以下とする。ポリイミド樹脂の水分率は、30ppm以下とすることが好ましく、25ppm以下とすることがさらに好ましい。これにより、紡糸時の気泡の発生を防止することができる。
ポリイミド樹脂はペレット状でも粉体状であってもよい。特にペレット状であることが好ましい。乾燥は、窒素流通下で行ってもよく、またタンブラーなどを用いて流動下乾燥させてもよい。
ポリイミド樹脂の含水率が50ppmを超えると、溶融時に水分によるガスが発生し、紡出糸中にボイドが含まれたり、ゲル状の不溶解物が発生して安定した紡糸が行えなくなるなどの問題が生じるため好ましくない。
(紡糸工程)
本発明におけるポリイミド樹脂の溶融押出は、溶融紡糸に適するものであればよく、公知の方法を用いればよい。例えば、ポリイミド樹脂は、ペレット化され、エクストルーダー型の押出機によって溶融押出される。
図1に、押出機1からポリイミド樹脂を溶融押出し、溶融紡糸してポリイミド繊維を製造する方法の一例を示す。
押出機1から押出された溶融樹脂は配管を通り、紡糸ヘッドへ送られ、ギアポンプ2等の公知の計量装置で計量され、紡糸パック3内でフィルターを通過した後、紡糸口金3aに入る。
本発明における紡糸温度は、配管から紡糸口金3aまでの溶融樹脂の温度であり、ポリイミド樹脂の融点温度以上400℃以下であることが好ましく、390℃未満であることがより好ましい。紡糸温度が下限より低いと濾過圧上昇の問題が生じ、上限を超えると熱分解の影響により繊維の品質が劣化する可能性がある。本発明における好適な紡糸温度は、融点+20℃以上380℃以下である。好ましくは、320℃以上370℃以下であり、340℃以上360℃以下が最も好ましい。
本発明におけるポリイミド樹脂の溶融粘度は、360℃における剪断速度100s-1において、700Pa・s以上であることが好ましく、750Pa・s以上とすることがより好ましく、800Pa・s以上とすることがさらに好ましい。また、本発明におけるポリイミド樹脂の溶融粘度は、360℃における剪断速度100s-1において、1050Pa・s以下であり、1000Pa・s以下とすることが好ましく、900Pa・s以下とすることがより好ましい。
溶融粘度が上限を超えると溶融紡糸時の曳糸性が悪くなり、溶融粘度が下限を超えると安定した紡糸が安定した紡出が困難となる。
本発明における紡糸口金孔内の剪断速度は、700sec-1以上90,000sec-1以下とすることが好ましく、1,000sec-1以上80,000sec-1以下とすることがより好ましく、3,000sec-1以上60,000sec-1以下とすることがさらに好ましく、5,000sec-1以上50,000sec-1以下とすることがより好ましい。
本発明にいう剪断速度γは、次式により求める。
γ=4Q/πr
(但し、rは紡糸口金孔の半径(cm)、Qは単孔当たりのポリマー吐出量(cm/sec))
上記範囲であると、繊維の配向が十分となり、細繊度の繊維が得られやすく、目的の物性が得られやすい傾向にある。
本発明における溶融樹脂の滞留時間は、12分以下であり、10分以下とすることが好ましく、9分以下とすることがより好ましい。
本発明における滞留時間は、樹脂が押出機1に投入されてから紡糸口金3aから吐出されるまでの合計時間である。滞留時間が長くなると熱分解の影響により溶融粘度が低下したり気泡が発生して繊維の品質が劣化したり糸切れが生じたりする。
本発明における紡糸口金3aの孔径D(直径)は、0.09mm以上0.70mm以下が好ましく、0.12mm以上0.45mm以下がより好ましい。
また、紡糸口金3aの直下には、ヒーターおよび保温筒を設置することで、吐出された繊維の径を安定化させると共に、外気によって紡糸口金表面温度及び紡糸口金下の雰囲気温度の変化を抑えられ、ドラフトによる細化が均一になり、糸切れや毛羽発生等がない安定した紡糸とすることができる。
本発明における紡糸口金3aにおける紡糸繊維の線速度は、5.0m/min以上50.0m/min以下とすることが好ましく、10.0m/min以上40.0m/min以下とすることがより好ましい。
本発明における紡糸口金孔内の剪断速度は、700sec-1以上90,000sec-1以下とすることが好ましく、1,000sec-1以上80,000sec-1以下とすることがより好ましく、3,000sec-1以上60,000sec-1以下とすることがさらに好ましく、5,000sec-1以上50,000sec-1以下とすることがより好ましい。また、集束位置は、7cm以上300cm以下とすることが好ましく、20cm以上200cm以下とすることがより好ましい。
そして、本発明における巻取速度(紡糸速度)は、300m/min以上3500m/minであることが好ましく、300m/min以上1700m/min以下とすることがより好ましく、400m/min以上1600m/min以下とすることがさらに好ましい。
また、線速度に対する巻取速度の比は、40倍以上1600倍以下とすることが好ましい。
これにより、溶融紡糸法によって高品質のポリイミド繊維繊を製造することがきる。
(集束工程)
紡糸口金3aより吐出成形された紡出糸は、油剤付与装置で所定の油剤が塗布され、1本のフィラメントに集束される。
本発明のポリイミド繊維はフィラメントであるが、モノフィラメントでもマルチフィラメントでもよい。マルチフィラメントの場合、その単糸数は6以上とすることが好ましい。単糸数が6未満であるとマルチフィラメント自体の強力が弱くなり、工程通過性よく延伸、巻き取りを行うことが困難となり、糸切れ等を生じやすく、生産性が低下する可能性がある。
また、各単糸の断面形状は特に限定するものではなく、丸断面のもののみならず、目的や用途に応じて異形断面としてもよい。
(巻取工程)
集束工程を経てマルチフィラメントとなったポリイミド繊維は、その後、第一ゴデットロール4および第二ゴデットロール5で引き取られ、巻取りボビン6に巻き取られる。巻取速度は300m/min以上3500m/minであることが好ましく、300m/min以上1700m/min以下とすることがより好ましく、400m/min以上1600m/min以下とすることがさらに好ましい。
第二ゴデットロール5と巻取りボビン6との間で測定される紡糸巻取り張力は4.7cN以上47cN以下が好ましい。張力が4.7cN未満になると、繊維が弛むことにより第二ゴデットロール5に糸が巻きついたり、巻取りボビン6の形状不良を起こしたりする。なお、本発明において紡糸巻取り張力は、巻取りボビン6で巻き取られる際にかかる張力について測定したものを示したものである。
(ポリイミド繊維の物性)
上述のようにして得られたポリイミド繊維は、上記の剪断速度γ、孔径D、巻取速度比などを調整することによって、以下の物性とすることが好ましい。
すなわち、溶融紡糸して得られるポリイミド繊維の繊度は、総繊度として、50dtex以上であることが好ましく、100dtex以上が好ましい。単糸繊度として、1dtex以上12dtex程度が好ましい。
また、ポリイミド繊維の破断強度は、1.5cN/dtex以上であることが好ましく、2.0cN/dtex以上がより好ましく、2.2cN/dtex以上がさらに好ましい。さらに、ポリイミド繊維の破断強度のばらつきは、±0.3cN/dtex未満であることが好ましく、±0.2cN/dtex以内とすることがより好ましい。
また、ポリイミド繊維の破断伸度は、10%以上90%以下であることが好ましく、20%以上80%以下がより好ましい。また、延伸されたポリイミド繊維の破断伸度は20%以上50%以下がさらに好ましく、非延伸のポリイミド繊維の破断伸度は50%以上80%以下がさらに好ましい。
また、ポリイミド繊維の10%伸長時の強度(10%SS)は、1.5cN/dtex以上3.5cN/dtex以下であることが好ましい。
また、ポリイミド繊維の弾性率は、20cN/dtex以上であることが好ましい。また、本発明においては、上限として70cN/dtex以下が好ましい。
これによって、高強度であり、かつ、寸法安定性、熱安定性等の特性にも優れたポリイミド繊維にすることができる。
(後工程:延伸工程)
本発明のポリイミド繊維は、さらに延伸工程によって延伸処理することができる。なお、延伸工程は集束工程と連続して行ってもよいし、巻取工程で一旦巻き取りを行った後に行ってもよい。
延伸工程では、マルチフィラメントをポリイミド樹脂のガラス転移温度Tg-100℃以上Tg-30℃以下の温度で予熱をまず行ってもよい。予熱方法は限定するものではないが、加熱した回転ローラなどで予熱を施すことができる。
続いて、ポリイミド樹脂のガラス転移温度Tg℃以上Tg+100℃以下の温度で加熱しながら、ポリイミド樹脂のTg-50℃以上Tg+50℃以下の温度の引取ローラで引き取って、延伸倍率1.2~5.0倍で延伸することが好ましい。加熱温度がポリイミドのTg未満であると、延伸工程等で糸切れが発生しやすく、Tg+100℃を超えると、糸条の軟化が進行し、延伸応力に耐えきれずに糸切れする可能性がある。
次に、加熱されたマルチフィラメントを引取ローラで引き取りながらさらに延伸を行う。引取ローラの温度は、ポリイミド樹脂のTg-50℃以上~Tg+50℃以下とすることが好ましい。また、引取ローラの速度は、5.0倍以下となるような速度とする。一方、延伸倍率が5.0倍を超えると、延伸時に糸切れが多発し、操業性が悪化するとともに得られる繊維の強度も低下したり、単糸切れの生じた繊維となる。
(後工程:)
上述のようにして得られたポリイミド繊維の結晶化をさらに促進する目的で、緊張させた状態で一定時間加熱処理をしてもよい。
加熱工程の加熱処理は、延伸後に続いて行うことが好ましく、窒素ガスなどの不活性雰囲気下において行ってもよい。
[ポリイミド繊維の用途]
本発明のポリイミド繊維の用途としては、バグフィルター、スポーツ用(救命ロープ、ヨットの帆)等が挙げられる。
例えば、結晶化したポリイミド繊維であるので、種々の産業資材用途の素材などとして使用することができる。例えば、長繊維として用い、あるいは製編織して布帛としたり、短繊維として不織布としてもよく、耐熱衣、断熱材、耐熱フィルター、絶縁紙やプリント基板材料などの素材として有用である。
特に、本発明のポリイミド繊維は、誘電正接が0.004程度(10GHz)と低く、耐熱性(特に高温での寸法安定性)にも優れていおり、かつ細繊度化した紡糸も可能であるため、薄地化・小型化した高速通信用の配線基板の用途にも好適である。この場合、ポリイミド繊維は2dtex以下の単糸繊度とすることが好ましい。これにより、配線基板を好ましく薄地化し小型化することができる。また、本発明のポリイミド繊維は、布状(ヤーン状、不織布状)に加工してプリプレグ(半硬化樹脂材料)の含浸材料として用いてもよい。配線基板にはポリイミド繊維を含む層が1層設けられてもよいし複数層設けられてもよい。
また、本発明のポリイミド繊維は、加工性にも優れているため、複数種類の繊維を混繊してコミングル繊維としたり、繊維強化プラスチックに加工することもできる。また、本発明のポリイミド繊維を短繊維で用いることで不織布としたり、不織布積層体または繊維強化プラスチックとして用いることもできる。このようにして得られたポリイミド繊維の加工品は、その優れた強度から軽量化が可能となり、かつ過酷な環境にも耐え得ることから、宇宙、航空、自動車等の用途(構造体、エンジン部品など)にも好適である。
次に実施例を挙げて本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<ポリイミド樹脂の測定方法>
ポリイミド樹脂の融点Tm、ガラス転移温度Tg、結晶化温度Tc、及び結晶化発熱量は、示差走査熱量計装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「DSC-6220」)を用いて測定した。
窒素雰囲気下、ポリイミド樹脂に下記条件の熱履歴を課した。熱履歴の条件は、昇温1度目(昇温速度10℃/分)、その後冷却(降温速度20℃/分)、その後昇温2度目(昇温速度10℃/分)である。
融点は昇温2度目で観測された吸熱ピークのピークトップ値を読み取り決定した。ガラス転移温度は昇温2度目で観測された値を読み取り決定した。また、結晶化温度は冷却時に観測された発熱ピークのピークトップ値を読み取り決定した。
結晶化発熱量(mJ/mg)は、上記冷却時に観測された結晶化発熱ピークの面積から算出した。
<ポリイミド樹脂の製造例>
一実施形態に係るポリイミド樹脂の製造方法を示す。本発明のポリイミド樹脂の製造方法は、以下に示すポリイミド樹脂の製造例に限定されない。
ディーンスターク装置、リービッヒ冷却管、熱電対、4枚パドル翼を設置した2Lセパラブルフラスコ中に、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール(日本乳化剤(株)製)600gとピロメリット酸二無水物(三菱ガス化学(株)製)218.58g(1.00mol)を導入し、窒素フローした後、均一な懸濁溶液になるように150rpmで撹拌した。一方で、500mLビーカーを用いて、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学(株)製)49.42g(0.347mol)、1,8-オクタメチレンジアミン(関東化学(株)製)93.16g(0.645mol)を2-(2-メトキシエトキシ)エタノール250gに溶解させ、混合ジアミン溶液を調製する。
この混合ジアミン溶液を、プランジャーポンプを使用して徐々に加える。混合ジアミン溶液の滴下中はすべて窒素フロー状態とし、撹拌翼回転数は250rpmとした。滴下が終わったのちに、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール130gと、末端封止剤であるn-オクチルアミン(関東化学(株)製)1.934g(0.0149mol)を加えさらに撹拌する。この段階で、淡黄色のポリアミド酸溶液が得られる。次に、撹拌速度を200rpmとした後に、2Lセパラブルフラスコ中のポリアミド酸溶液を190℃まで昇温する。昇温を行っていく過程において、液温度が120~140℃の間にポリイミド樹脂粉末の析出と、イミド化に伴う脱水が確認される。190℃で30分保持した後、室温まで放冷を行い、濾過を行う。得られたポリイミド樹脂粉末を2-(2-メトキシエトキシ)エタノール300gとメタノール300gにより洗浄、濾過を行った後、乾燥機で180℃、10時間乾燥を行い、316gのポリイミド樹脂の粉末を得ることができる(ポリイミド樹脂のIRスペクトルにおいて、ν(C=O)1768、1697(cm-1)にイミド環の特性吸収が認められ、対数粘度は0.96dL/g)。
<ポリイミド繊維の測定方法>
実施例中の各特性値の測定は下記方法により行った。
1.溶融粘度
溶融粘度はキャピログラフ(登録商標)(東洋精機製作所製 型式1B)を用い、径0.5mm、長さ5mmのノズルで、試料を360℃または紡糸温度に昇温し、試料がノズルを通る際、100sec-1の剪断速度がかかった時の粘度で定義される。
2.破断強度、破断伸度、弾性率、破断強度ばらつき
1)引張り試験(強度、伸度、10%SS、弾性率)
JISL 1013(2010)の標準時試験に準じ、島津製作所製の引張り試験機AGS-500NXを用い、試料長200mm、引張り速度200mm/分にて破断強度、破断伸度及び弾性率(初期引張抵抗度)を求め、10点の平均値で表した。伸度10%時の強度を10%SSとした。破断強度を50回測定した際の最大値と最小値との差を破断強度ばらつきとした。
<ポリイミド繊維の評価方法>
1.紡糸状況評価
2時間以上紡糸した際の紡糸状況を下記のように評価した。
○ 糸切れがなく安定的に紡糸ができた。
△ 2時間の紡糸中に糸切れが発生した。
(気泡:捲き付け可能だが、ノズル直下で樹脂劣化と思われる気泡が発生し糸切れや強度ムラが起きる)
巻取不可: 糸切れが多発して巻き取りができなかった(樹脂劣化の糸切れもしくはろ過圧上昇により捲き付け不可)。
紡糸不可:そもそも巻付けができなかった。
2.250℃乾熱収縮率
〔乾熱収縮率〕
JIS-L1013 8.18.2 b) フィラメント収縮率(B法)にて、250℃の条件で乾熱収縮率(%)を求めた。
(実施例1)
<ポリイミド樹脂の溶融紡糸工程>
ポリイミド樹脂として、サープリム(登録商標)T O65(三菱ガス化学株式会社製)のチップを用いた。
このポリイミド樹脂の融点は323℃、ガラス転移点は185℃、結晶化発熱量は23.7mJ/mgであり、360℃における剪断速度100s-1での溶融粘度は1000Pa・sであった。
このチップを140℃の真空乾燥機中で20時間乾燥した。水分率は表1の通りであった。
このチップを、押出機1にて溶融押出し、ギアポンプ2で計量して、紡糸パック3にチップを供給した。樹脂を、押出機1を用いて加熱しながら溶融させた。紡糸温度370℃、溶融滞留時間を7分として、紡糸口金3aより押出し、繊維状に形成した。口金孔数は24個であり、紡糸口金3aより押出しした際の線速度は11.2m/min、剪断速度5976s-1であった。
紡糸口金3aより吐出成形された紡出糸は、固化したところで油剤を付与し、口金直下30cmのところで、1本のマルチフィラメントに集束した後、ワインダーを用いて巻取速度(紡糸速度)650m/分で紙管に巻き取り、220dtex/24fのポリイミド繊維を得た。
得られた物性、紡糸性評価結果を表2に示す。
(実施例2)
紡糸条件を表1の通りとする以外は実施例1と同様にして、ポリイミド繊維を得た。
(実施例3)
紡糸条件を表1の通りとし、マルチフィラメントの集束位置を口金直下100cmとして、剪断速度を31,857s-1とする以外は、実施例1と同様に溶融紡糸し、ポリイミド繊維を得た。
巻き取ったポリイミド繊維をローラに架けて捲き出し、185℃に加熱したロールヒーターへ導き、ついで、210℃に加熱したプレートヒーターを介して、延伸倍率2.3倍として延伸した後、ワインダーを用いて紙管に巻き取り、延伸糸を得た。
(比較例1~8)
紡糸条件を表1の通りとする以外は実施例1と同様に紡出した。
比較例1~5は滞留時間が長く、紡糸できなかった。
比較例6は、水分率が高く、気泡ができて糸にならなかった。
比較例7は、紡糸温度が高過ぎて、粘度が低くなりすぎて、気泡ができて糸にならなかった。
比較例8は、紡糸温度が低過ぎて、巻取り不可であった。
Figure 2022132199000018
Figure 2022132199000019
表1および表2の結果から、実施例1ないし3のポリイミド繊維は、破断強度が1.5cN/dtex以上、破断強度ばらつきが±0.2cN/dtex以内、破断伸度が20%以上であることが確認された。
1 押出機
2 ギアポンプ
3 紡糸パック
3a 紡糸口金
4 第一ゴデットロール
5 第二ゴデットロール
6 巻取りボビン

Claims (13)

  1. 下記式(1)で示される繰り返し構成単位及び下記式(2)で示される繰り返し構成単位:
    Figure 2022132199000020

    (Rは少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含む炭素数6~22の2価の基である。Rは炭素数5~16の2価の鎖状脂肪族基である。X及びXは、それぞれ独立に、少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6~22の4価の基である。)
    を含み、
    該式(1)の繰り返し構成単位と該式(2)の繰り返し構成単位の合計に対する該式(1)の繰り返し構成単位の含有比が20モル%以上40モル%未満であり、かつ、
    下記条件(a)、(b)及び(c)を満たすポリイミド樹脂を含み、
    以下物性(A)、(B)および(C)からなる群から選択される少なくとも1つの物性を有する、ポリイミド繊維。
    条件(a):融点(Tm)が280℃以上345℃以下
    条件(b):ガラス転移温度(Tg)が150℃以上200℃以下
    条件(c):示差走査型熱量計測定により、溶融後、降温速度20℃/分で冷却した際に観測される結晶化発熱ピークの熱量が17.0mJ/mg以上
    物性(A):前記ポリイミド繊維の破断強度が1.5cN/dtex以上
    物性(B):前記ポリイミド繊維の破断強度ばらつきが±0.2cN/dtex以内
    物性(C):前記ポリイミド繊維の破断伸度が20%以上
  2. 前記ポリイミド樹脂の前記融点(Tm)が310℃以上335℃以下、前記ガラス転移温度(Tg)が170℃以上190℃以下、360℃における剪断速度100s-1での溶融粘度が1050Pa・s以下である、請求項1に記載のポリイミド繊維。
  3. が下記式(R1-1)又は(R1-2)で表される2価の基である、請求項1または2に記載のポリイミド繊維。
    Figure 2022132199000021

    (m11及びm12は、それぞれ独立に、0~2の整数である。m13~m15は、それぞれ独立に、0~2の整数である。)
  4. が下記式(R1-3)で表される2価の基である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリイミド繊維。
    Figure 2022132199000022
  5. が炭素数7~12のアルキレン基である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリイミド繊維。
  6. 及びXが、それぞれ独立に、下記式(X-1)~(X-4)のいずれかで表される4価の基である、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリイミド繊維。
    Figure 2022132199000023

    (R11~R18は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基である。p11~p13は、それぞれ独立に、0~2の整数である。p14、p15、p16及びp18は、それぞれ独立に、0~3の整数である。p17は0~4の整数である。L11~L13は、それぞれ独立に、単結合、エーテル基、カルボニル基又は炭素数1~4のアルキレン基である。)
  7. 融点(Tm)が280℃以上345℃以下、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上200℃以下、360℃における剪断速度100s-1での溶融粘度が1050Pa・s以下である熱可塑性ポリイミド樹脂を含み、
    以下物性(A)、(B)および(C)からなる群から選択される少なくとも1つの物性を有する、ポリイミド繊維。
    物性(A):前記ポリイミド繊維の破断強度が1.5cN/dtex以上
    物性(B):前記ポリイミド繊維の破断強度ばらつきが±0.3cN/dtex未満
    物性(C):前記ポリイミド繊維の破断伸度が10%以上
  8. 前記融点(Tm)が310℃以上335℃以下であり、前記ガラス転移温度(Tg)が170℃以上190℃以下であり、
    前記物性(A)、(B)および(C)を有する、請求項7に記載のポリイミド繊維。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載のポリイミド繊維を管に巻き付けてなる繊維パッケージ。
  10. 請求項1~8のいずれか1項に記載のポリイミド繊維含む、配線基板。
  11. 融点(Tm)が280℃以上345℃以下、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上200℃以下であるポリイミド樹脂を乾燥して水分率が50ppm以下の乾燥ポリイミド樹脂を得る乾燥工程と、
    前記乾燥ポリイミド樹脂を、以下の条件(a)~(c)で押出機を用いて加熱しながら溶融させ口金より押出し、紡出糸を形成する紡糸工程と、
    条件(a):前記乾燥ポリイミド樹脂の360℃における剪断速度100s-1での溶融粘度が1050Pa・s以下
    条件(b):紡糸温度が、ポリイミド樹脂の融点+20℃以上380℃以下
    条件(c):溶融滞留時間が12分以下
    前記口金より吐出成形された紡出糸を1本のフィラメントに集束する集束工程と、
    前記フィラメントを管に巻き取る巻取工程と、
    を含む、ポリイミド繊維の製造方法。
  12. 集束された前記フィラメントを150℃以上300℃以下で加熱しながら延伸する延伸工程をさらに含む、請求項11に記載のポリイミド繊維の製造方法。
  13. 前記紡糸工程が、以下の条件を満足する、請求項11または12に記載のポリイミド繊維の製造方法。
    条件(d):線速度が5.0m/min以上50.0m/min以下
    条件(e):剪断速度が700s-1以上90,000s-1以下
    条件(f):前記巻取工程の巻取速度が300m/分以上3500m/分以下
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