JP2022130750A - ゲルの製造方法、及びゲルの製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高密度のベース液層の上に、平衡厚みよりも薄い原料液層を形成でき、ひいては平衡厚みよりも薄いゲル層を形成できる、技術を提供する。【解決手段】ゲルの原料液を前記原料液よりも高密度のベース液層の型枠で外周を囲まれる液面の上に供給し、前記型枠の内部で水平方向に移動可能な可動壁の移動方向後側に、前記型枠の内周一部と前記可動壁とで外周を囲まれる原料液層を形成し、前記型枠の前記内周一部と前記可動壁とに接した後の前記原料液層を前記ベース液層の前記液面の上で引き伸ばすように前記可動壁を水平方向に移動し、前記原料液層を平衡厚み未満の厚みに薄化し、前記薄化した前記原料液層を、前記ベース液層の前記液面の上でゲル化する、ゲルの製造方法。【選択図】図1B

Description

本開示は、ゲルの製造方法、及びゲルの製造装置に関する。
特許文献1には、ゲルの製造方法が開示されている。この方法によれば、底板と、底板の周縁から上方に延びる側板と、からなる容器内において、第1の液状物からなる第1の液層の上に、ゲル原料を含む第2の液状物からなる第2の液層を存在させた状態で、第2の液層をゲル化させる。
国際公開第2019/044669号
ゲルの原料液を原料液よりも高密度のベース液層Bの上に供給すると、ベース液層Bの上に原料液層Aが形成される。ベース液層Bが原料液層Aよりも十分に広ければ、原料液層Aの厚みは自然に一定の厚みになろうとする。その厚みを、平衡厚みとも呼ぶ。平衡厚みHA0は、下記式(1)から求められる。
Figure 2022130750000002
平衡厚みHA0(m)は、上記式(1)に示すように、原料液層Aの密度ρ(kg/m)と、ベース液層Bの密度ρ(kg/m)と、原料液層Aの表面張力σ(N/m)と、ベース液層Bの表面張力σ(N/m)と、原料液層Aとベース液層Bとの界面張力σA-B(N/m)とから求められる。なお、上記式(1)において「g」は、重力加速度であり、9.8(m/s)である。
平衡厚みHA0は、原料液層Aの材料である原料液と、ベース液層Bの材料であるベース液との組み合せで決まる。
本開示の一態様は、高密度のベース液層の上に、平衡厚みよりも薄い原料液層を形成でき、ひいては平衡厚みよりも薄いゲル層を形成できる、技術を提供する。
〔1〕本開示の一態様に係るゲルの製造方法は、ゲルの原料液を前記原料液よりも高密度のベース液層の型枠で外周を囲まれる液面の上に供給し、前記型枠の内部で水平方向に移動可能な可動壁の移動方向後側に、前記型枠の内周一部と前記可動壁とで外周を囲まれる原料液層を形成し、前記型枠の前記内周一部と前記可動壁とに接した後の前記原料液層を前記ベース液層の前記液面の上で引き伸ばすように前記可動壁を水平方向に移動し、前記原料液層を平衡厚み未満の厚みに薄化し、前記薄化した前記原料液層を、前記ベース液層の前記液面の上でゲル化する。
〔2〕上記〔1〕に記載の方法であって、前記原料液層の形成後、前記可動壁と前記ベース液層の下面との間に隙間を形成した状態で前記可動壁を水平方向に移動させ、前記原料液層を薄化する。
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕に記載の方法であって、前記原料液層の薄化後に前記可動壁を前記型枠外に取り出し、前記原料液層の外周全体を前記型枠の内周に接した状態で、前記原料液層をゲル化する。
〔4〕上記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一つに記載の方法であって、前記型枠の開口部は、平面視で長方形である。
〔5〕上記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一つに記載の方法であって、前記ベース液層は、フッ素原子を有する液状化合物である。
〔6〕上記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一つに記載の方法であって、前記原料液層をゲル化して得られるゲル層を、前記ベース液層から持ち上げる。
〔7〕上記〔6〕に記載の方法であって、前記ベース液層の前記液面の上に前記原料液層を形成する前に、前記ベース液層と前記原料液層の界面よりも下に、前記ベース液層から前記ゲル層を持ち上げる際に前記ゲル層を下方から支持する支持板を設置する。
〔8〕上記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一つに記載の方法であって、前記原料液層をゲル化して得られるゲル層の内部に含まれる溶媒を、別の溶媒に置換する。
〔9〕上記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一つに記載の方法であって、前記原料液層をゲル化して得られるゲル層の内部に含まれる溶媒を、除去する。
〔10〕本開示の一態様に係るゲルの製造装置は、ゲルの原料液よりも高密度のベース液層の液面の外周を囲む型枠と、前記型枠の内部で水平方向に移動可能な可動壁と、前記型枠で外周を囲まれる前記液面の上に前記原料液を供給し、前記可動壁の移動方向後側に、前記型枠の内周一部と前記可動壁とで外周を囲まれる原料液層を形成する原料液供給部と、前記型枠の前記内周一部と前記可動壁とに接し且つ前記可動壁の水平方向の移動によって薄化した前記原料液層を、前記ベース液層の前記液面の上でゲル化させるゲル化促進部と、を有する。
〔11〕上記〔10〕に記載の装置であって、前記可動壁は、前記ベース液層の下面との間に隙間を形成するように配置される。
〔12〕上記〔10〕又は〔11〕に記載の装置であって、前記ベース液層と前記原料液層の界面よりも下に、前記原料液層をゲル化して得られるゲル層を前記ベース液層から持ち上げる際に前記ゲル層を下方から支持する支持板を有する。
〔13〕上記〔12〕に記載の装置であって、前記支持板は、前記支持板の表裏面を貫通する貫通穴を、前記支持板の主面方向に間隔をおいて複数有する。
本開示の一態様によれば、高密度のベース液層の上に、平衡厚みよりも薄い原料液層を形成でき、ひいては平衡厚みよりも薄いゲル層を形成できる。
図1Aは、一実施形態に係るゲルの製造装置を示す断面図であって、原料液層の薄化前の状態を示す断面図である。 図1Bは、図1Aに示す原料液層の薄化後の状態を示す断面図である。 図2は、図1AのII-II線に沿った型枠及び可動壁の断面図である。 図3Aは、原料液層の外周全体が型枠及び可動壁の両方から離れている時の力のつり合いの一例を示す断面図である。 図3Bは、原料液層の外周一部が型枠に接し、原料液層の外周残部が可動壁に接している時の力の釣り合いの一例を示す断面図であって、原料液層の薄化前の状態を示す断面図である。 図3Cは,図3Bに示す原料液層の薄化後の状態を示す断面図である。 図3Dは、型枠の側面に形成される凹凸の一例を示す断面図である。 図4Aは、可動壁の動きの一例を示す断面図であって、可動壁のスライド開始時の状態を示す断面図である。 図4Bは、図4Aに続き可動壁の動きを示す断面図であって、可動壁のスライド途中の状態を示す断面図である。 図4Cは、図4Bに続き可動壁の動きを示す断面図であって、可動壁のスライド終了時の状態を示す断面図である。 図5Aは、可動壁の動きの別の一例を示す断面図であって、可動壁のスライド終了時の状態を示す断面図でる。 図5Bは、図5Aに続き可動壁の動きを示す断面図であって、可動壁が型枠の短辺に対して傾斜した状態を示す断面図である。 図5Cは、図5Bに続き可動壁の動きを示す断面図であって、可動壁が型枠の短辺に対して更に傾斜した状態を示す断面図である。 図5Dは、図5Cに続き可動壁の動きを示す断面図であって、可動壁が型枠の長辺に平行に接した状態を示す断面図である。 図6Aは、ベース液供給部及び回収部の一例を示す断面図であって、ベース液層の液面上昇前の状態を示す断面図である。 図6Bは、図6Aに示すベース液層の液面上昇後の状態を示す断面図である。 図7は、一実施形態に係るゲルの製造方法を示すフローチャートである。 図8は、型枠からのゲルの取出の一例を示す断面図である。 図9は、型枠からのゲルの取出の別の一例を示す断面図である。
先ず、本明細書及び特許請求の範囲における用語について説明する。「ゲル」とは、「湿潤ゲル」と「キセロゲル」との両方を含む。
「湿潤ゲル」とは、三次元網目が膨潤剤によって膨潤したゲルを意味する。膨潤剤が水であるヒドロゲル、膨潤剤がアルコールであるアルコゲル、膨潤剤が有機溶媒であるオルガノゲルを包含する。
「キセロゲル」とは、「国際純正応用化学連合(IUPAC)無機化学部会及び高分子部会高分子用語法小委員会」の「ゾル,ゲル,網目,及び無機有機複合材料の構造とプロセスに関する術語の定義(IUPAC勧告2007)」によれば「ゲルから膨潤剤を除去して形成された開放網目からなるゲル。」を意味する。超臨界乾燥によって膨潤剤を除去したものをエアロゲル、通常の蒸発乾燥によって膨潤剤を除去したものをキセロゲル、凍結乾燥によって膨潤剤を除去したものをクライオゲルとする分類法もあるが、本明細書及び特許請求の範囲においては、これらを総称してキセロゲルと称する。
「表面張力」とは、液体又は固体の、気体(例えば空気)との境界に作用する力である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向及びY軸方向は水平方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
(ゲルの製造装置)
図1A及び図1Bに示すように、原料液層Aは、原料液層Aよりも高密度のベース液層Bの液面の上で、薄化され、続いてゲル化され、ゲル層Cになる。
製造装置1は、ベース液層Bを収容する収容部2を有する。収容部2は、例えば、型枠21と、型枠21の開口部を下方から塞ぐ底蓋22とを含む。型枠21は、底蓋22の周縁全体から上方に突出する。底蓋22は、ベース液層Bを下方から支持し、ベース液層Bの下面に接する。
型枠21は、ベース液層Bの液面の外周を囲む。その液面の上に、原料液層Aが形成される。原料液層Aは、薄化され、続いてゲル化され、ゲル層Cになる。それゆえ、型枠21の開口部の形状と大きさは、製造物であるゲル層Cの形状と大きさに合わせて適宜決められる。
型枠21の開口部の形状としては、平面視にて図2に示す長方形の他に、円形又は楕円形などが挙げられる。長方形は、角が直角のものだけではなく、角が丸められたものを含む。長方形は、正方形を含む。
型枠21の高さは、図1Aに示す薄化前の原料液層Aの上面よりも高くなるように決められる。薄化前の原料液層Aの体積と薄化後の原料液層Aの体積とは同じであるので、薄化後の原料液層Aの体積と後述の可動壁23の水平方向の移動距離とから、薄化前の原料液層Aの厚みHが決まり、型枠21の高さが決まる。
型枠21の材質は、原料液及びベース液によって変質や膨潤せず、且つ原料液層A及びベース液層Bと互いに反応しないものであれば特に限定されず、金属、樹脂、ゴム、ガラス、及びセラミックなどのいずれでもよい。大面積のゲル層Cを製造する場合、耐荷重性の観点から、ステンレスなどの金属が好適である。金属製の型枠21の側面に、樹脂のコーティングが施されてもよい。また、原料液層Aのゲル化時に原料液層Aが加熱される場合、型枠21の材質は、原料液層Aの加熱温度に耐えられるものであればよい。なお、底蓋22の材質は、型枠21の材質と同様であってよい。
収容部2は、型枠21の内部で水平方向に移動可能な可動壁23を含む。可動壁23は水平方向だけではなく鉛直方向にも移動可能であってもよい。可動壁23は、図2に示すように型枠21の開口部を2つのゾーンに区分けする。可動壁23は、例えば鉛直な板であって、その板の主面に直交する水平方向にスライドしてよい。この場合、型枠21の開口部の形状としては、平面視にて図2に示すように長方形が好適である。
可動壁23は、図1に示すようにベース液層Bと原料液層Aとの界面よりも下方に突出し、原料液が可動壁23の下に潜り込み、可動壁23の片側から反対側に回り込むのを防止する。また、可動壁23は、原料液層Aの上面よりも上方に突出し、原料液が可動壁23の上を乗り越え、可動壁23の片側から反対側に回り込むのを防止する。
可動壁23は、ベース液層Bの下面との間に隙間Sを形成するように配置されてよく、例えば底蓋22との間に隙間Sを形成するように配置されてよい。隙間Sの大きさは、後述するように可動壁23の移動速さに応じて適宜決められるが、例えば10mm以上である。
可動壁23と底蓋22との間に隙間Sが存在すると、可動壁23が水平方向に移動する時に、底蓋22からの摩擦抵抗がないので、可動壁23を円滑に移動できる。また、可動壁23とベース液層Bの下面との間に隙間Sが存在すると、ベース液が隙間Sを自由に通れるので、可動壁23の水平方向の移動によってベース液層Bに強い流れが形成されるのを抑制できる。なお、隙間Sの大きさが10mm未満であっても、可動壁23の移動速さを遅くすれば、ベース液層Bに強い流れが形成されるのを抑制できる。
可動壁23と型枠21との間には、図2に示すように隙間が全く存在しなくてもよいが、僅かな隙間が存在してよい。その隙間の大きさは、例えば0.1mm~1mmである。可動壁23と型枠21との間に隙間が存在すると、可動壁23が水平方向に移動する時に、型枠21からの摩擦抵抗を低減でき、可動壁23を円滑に移動できる。一方、可動壁23と型枠21との間に隙間が全く存在しないと、可動壁23の片側に可動壁23と型枠21とで外周を完全に囲まれる原料液層Aを形成できる。
可動壁23の材質は、型枠21と同様の材質であってよい。可動壁23の材質が樹脂又はゴムなどの柔軟なものであれば、可動壁23と型枠21との隙間が無くなるように、可動壁23を変形させることも可能である。
製造装置1は、ゲルの原料液をベース液層Bの液面の上に供給する原料液供給部3を有する。原料液の総供給体積Vは、例えば、製造物であるゲル層Cの体積Vと、原料液層Aからゲル層Cへの体積収縮率rとから求められる。体積収縮率rは、収縮前の体積Vと収縮後の体積Vとの差(V-V)を、収縮前の体積Vで除した値((V-V)/V)であり、予め実験等で求められる。また、原料液の総供給質量Wは、例えば、原料液の総供給体積Vと、原料液の密度ρとの積として求められる。原料液の密度ρは、予め実験等で求められる。
原料液供給部3は、図2に示すように可動壁23の片側、つまり、可動壁23の移動方向後側に、可動壁23と型枠21とで外周を囲まれる原料液層Aを形成する。原料液層Aは、ベース液層Bの型枠21で囲まれる液面の一部のみに形成される。ベース液層Bの液面の一部に原料液層Aを形成すれば、後で原料液層Aを引き伸ばし、原料液層Aを薄化できる。ベース液層Bは、原料液層Aよりも大きな密度を有するので、ベース液層Bの上に原料液層Aを安定的に形成できる。
ベース液層Bの液面は重力によって自然に水平に整えられるので、その水平な液面を利用して平坦で厚みの均一な原料液層Aが容易に得られる。また、ベース液層Bの液面は原料液層Aのゲル化時の膨張及び収縮、並びにゲル層Cの取出に応じて流動するので、ゲル層Cにかかるストレスが少なく、ゲル層Cの欠陥が少ない。さらに、ゲル層Cの下面全体が水平に支持されるので、ゲル層Cの大面積化が可能である。
ベース液層Bの液面の上で得られるゲル層Cは、膨潤剤である溶媒を含む湿潤ゲルである。湿潤ゲルの厚みは、例えば0.1mm~20mm、好ましくは0.5mm~10mmである。湿潤ゲルは、乾燥され、キセロゲルになる。キセロゲルの厚みは、例えば0.1mm~20mm、好ましくは0.5mm~10mmである。キセロゲルは、多孔質なモノリスであって、透明性と断熱性とを有するものであってよい。透明性と断熱性を有するキセロゲルは、例えば、自動車用窓ガラスや建物用窓ガラスにおける透明断熱材として用いられる。
キセロゲルの用途が透明断熱材である場合、キセロゲルの波長500nmにおける透過率は、厚み1mm換算で70%以上が好ましく、80%以上が好ましく、90%以上が好ましい。透過率は、日本工業規格(JIS R 3106:1998)に準拠して測定される。
キセロゲルの用途としては、例えば、断熱材の他に、フィルター、吸着剤、吸音材、吸湿材、吸油材、又は分離膜が挙げられる。キセロゲルは、用途によっては透明でなくてもよく、不透明でもよい。
キセロゲルの種類は、本実施形態では(1)ポリシロキサンキセロゲルであるが、(2)ポリマーキセロゲル、又は(3)セルロースキセロゲルなどの多糖類キセロゲルであってもよい。
原料液は、例えばゲルの原料(以下、「ゲル原料」とも呼ぶ。)と、ゲル原料を溶かす溶媒とを含む。ゲル原料は、最終的に得られるキセロゲルの種類に応じて適宜選択される。溶媒は、例えば水又は有機溶媒である。有機溶媒としては、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコール等)、非プロトン性極性有機溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、ケトン(シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等)、炭化水素(n-ヘキサン、ヘプタン等)等が挙げられる。
キセロゲルが(1)ポリシロキサンキセロゲルの場合、ゲル原料としては、例えば(1A)シラン化合物と(1B)触媒とを含むものが挙げられる。(1B)触媒は、ゲル化を均一に促進するためのものである。ゲル原料は、(1C)界面活性剤を更に含んでもよい。
(1A)シラン化合物としては、アルコキシシラン、6員環含有骨格と加水分解性シリル基とを有する6員環含有シラン化合物、有機ポリマー骨格と加水分解性シリル基とを有するシリル基含有ポリマー等が挙げられる。
アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、モノアルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン(ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等)、トリメトキシフェニルシラン、アルキレン基の両末端にアルコキシシリル基を有する化合物(1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(メチルジエトキシシリル)ヘキサン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジエトキシシリル)エタン等)、ペルフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン(ペルフルオロポリエーテルトリエトキシシラン、ペルフルオロポリエーテルメチルジエトキシシラン等)、ペルフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン(ペルフルオロエチルトリエトキシシラン等)、ペンタフルオロフェニルエトキシジメチルシラン、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン、ビニル基を有するアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン等)、アリル基を有するアルコキシシラン(アリルトリメトキシシラン、アリルジメトキシメチルシラン、アリルジエトキシメチルシラン等)、エポキシ基を有するアルコキシシラン(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等)、アクリロイルオキシ基を有するアルコキシシラン(3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、メタクリロイルオキシ基を有するアルコキシシラン(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等)等及び上記のアルコキシシランのオリゴマーが挙げられる。
6員環含有シラン化合物における6員環含有骨格は、イソシアヌル環、トリアジン環及びベンゼン環からなる群から選ばれる少なくとも1種の6員環を有する有機骨格である。
シリル基含有ポリマーにおける有機ポリマー骨格は、ポリエチレン鎖、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖及びポリカーボネート鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種の鎖を有する有機骨格である。
(1B)触媒としては、塩基触媒又は酸触媒が挙げられ、それらの水溶液であってもよい。塩基触媒としては、アミン(トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等)、尿素、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。酸触媒としては、無機酸(硝酸、硫酸、塩酸等)、有機酸(ギ酸、シュウ酸、酢酸、モノクロル酢酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸、モノフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸等)が挙げられる。
(1C)界面活性剤としては、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、プルロニックF127(BASF社商品名)、又はEH-208(日油社商品名)などが挙げられる。
キセロゲルが(2)ポリマーキセロゲルの場合、ゲル原料としては、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、加熱すると溶媒に溶解し、冷却するとモノリス(多孔体)を形成できるものが挙げられ、具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、アクリレート及びメタクリレートのいずれか一方又は両方と光重合開始剤とを含むもの等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、アクリレート及びメタクリレートのいずれか一方又は両方と熱重合開始剤とを含むものなどの他に、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの付加縮合物、メラミンとホルムアルデヒドとの付加縮合物等が挙げられる。
キセロゲルが(3)多糖類キセロゲルの場合、ゲル原料としては、(3A)多糖類ナノファイバーと(3B)酸とを含むものが挙げられる。多糖類としては、セルロースの他に、キチン、キトサン、ジェランガムなども挙げられる。
(3A)多糖類ナノファイバーとしては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)酸化セルロースナノファイバー等が挙げられる。(3A)多糖類ナノファイバーとしては、セルロースナノファイバーの他に、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバーなども挙げられる。
(3B)酸としては、前記無機酸又は前記有機酸が挙げられる。酸の代わりに、塩基も使用可能である。
ベース液層Bは、その上に原料液層Aを安定的に存在させるべく、原料液層Aとの密度差の大きい方が好ましい。その密度差は、好ましくは0.1g/cm以上であり、より好ましくは0.5g/cm以上である。なお、軽量化の観点から、その密度差は、好ましくは3.0g/cm以下であり、より好ましくは2.0g/cm以下である。
また、ベース液層Bは、その上に原料液層Aを安定的に存在させるべく、原料液層Aとの相溶性の低いものが好ましい。ベース液層Bと原料液層Aとの相溶性は、ベース液層Bの液体100gに溶解する原料液の上限量によって見積もることができる。その上限量は、100g以下が好ましく、10g以下がより好ましく、1g以下がさらに好ましい。その上限量が100g以下であれば、ベース液層Bと原料液層Aとの分離状態を長時間保つことができる。その上限量は、少ないほどよく、0gであってもよい。
また、ベース液層Bは、その上に原料液層Aを安定的に存在させるべく、原料液層Aと互いに反応しないものを用いることが好ましい。ベース液層Bは、実質的にゲル原料を含まないことが好ましい。実質的にゲル原料を含まないとは、原料液層Aから移行してきたゲル原料以外のゲル原料を含まないことを意味する。
ベース液は、原料液の溶媒に応じて適宜選択される。ベース液としては、フッ素原子を有する液状化合物、塩素原子を有する液状化合物、ケイ素原子を有する液状化合物、水、水銀等が挙げられ、原料液と密度差があるのであれば、フッ素、塩素、臭素、あるいは、ヨウ素などのハロゲン原子や、ケイ素原子などを含む必要はない。水は、ベース液層Bの密度を調整するために水溶性塩を含んでいてもよい。水溶性塩としては、塩化ナトリウム等が挙げられる。
フッ素原子を有する液状化合物は、高密度、高沸点、高耐熱分解性、及び不燃性である点で優れている。フッ素原子を有する液状化合物としては、フッ素系溶媒、フッ素系オイル等が挙げられる。
フッ素系溶媒としては、ハイドロフルオロアルカン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロモノエーテル、パーフルオロモノエーテル、ペルフルオロアルカン、ペルフルオロポリエーテル、ペルフルオロアミン、フッ素原子含有アルケン、フッ素原子含有芳香族化合物、フッ素原子含有ケトン、フッ素原子含有エステル等が挙げられる。フッ素系溶媒の市販品としては、旭硝子社登録商標のアサヒクリンAK-225(CFCFCHCl)、AC-2000(CFCFCFCFCFCHF)、AC-6000(CFCFCFCFCFCFCHCH)、AE-3000(CFCHOCFCHF);3M社商品名のフロリナートやノベック7100(COCH)、7200(COC)、7300(CCF(OCH)CF(CF);三井・デュポンフロロケミカル社商品名のバートレルXF(CFCHFCHFC)、MCA、XH;日本ゼオン社商品名のゼオローラH(ヘプタフルオロシクロペンタン)等が挙げられる。
フッ素系オイルの市販品としては、ソルベイ社商品名のフォンブリン、ダイキン工業社商品名のデムナムやダイフロイル等が挙げられる。
塩素原子を有する液状化合物としては、塩素系溶媒、塩素系オイル等が挙げられる。塩素系溶媒としては、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン等が挙げられる。
ケイ素原子を有する液状化合物としては、シリコーンオイル等が挙げられる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等が挙げられる。シリコーンオイルの市販品としては、信越化学工業社商品名のKF-96等が挙げられる。
ベース液層Bの厚みは、原料液の供給時に原料液がベース液層Bを突き破り底蓋22に達しないように、例えば10mm以上であってよい。原料液は、底蓋22に達してしまうと、濡れ効果によって底蓋22に付着し、沈んだままになるからである。ベース液層Bの厚みが厚ければ、原料液の供給速度を速くできる。
原料液供給部3は、例えば、原料液を一時的に貯留する貯留槽31を含む。貯留槽31は、例えば、(1A)シラン化合物と(1B)触媒とを混合する混合槽であってよい。混合槽は、ゲル化の進行を抑制すべく、原料液を冷却する冷却装置を含んでもよい。混合槽の温度は、ゲル化の進行抑止の観点からは低いほど好ましいが、凍結防止の観点から、原料液の凝固点よりも高く設定されてよく、例えば0℃~20℃に設定される。
混合槽は、原料液を撹拌する撹拌装置を含んでもよい。シラン化合物と触媒とを短時間で混合でき、原料液を短時間で均一化できる。
混合槽は、図示していないが、第1配管を介してシラン化合物の供給源と接続され、第2配管を介して触媒の供給源と接続される。第1配管にはシラン化合物の流量を制御する第1流量制御器が設けられ、第2配管には触媒の流量を制御する第2流量制御器が設けられる。シラン化合物の流量と触媒の流量とを制御できるので、混合槽での滞留時間を短くできる。シラン化合物の流量と触媒の流量とは、ベース液層Bの上に供給される原料液の流量に応じて適宜決定される。
原料液供給部3は、貯留槽31から供給される原料液を型枠21の内側に供給する吐出ノズル32を含む。吐出ノズル32は、ベース液層Bの液面の上に、原料液を供給する。吐出ノズル32は、原料液の供給時に原料液がベース液層Bを突き破らないように、ベース液層Bの液面に近い位置に配置されてよく、型枠21の内側に配置されてよい。
吐出ノズル32は、図1Aに示すように型枠21の内側に配置され原料液を供給する場合、原料液を供給する位置と、その型枠21の外側の位置との間で移動可能に構成されてもよい。原料液層Aをゲル化した後、ゲル層Cを型枠21から取り出す際に、吐出ノズル32を型枠21の外側に退避でき、吐出ノズル32とゲル層Cとの干渉を防止できる。
また、原料液供給部3は、貯留槽31と吐出ノズル32とを接続する供給ライン33の途中に、原料液を送る供給ポンプ34を含む。供給ポンプ34を作動させると、吐出ノズル32が原料液を吐出する。一方、供給ポンプ34の作動を停止させると、吐出ノズル32が原料液の吐出を停止する。
また、原料液供給部3は、供給ライン33の途中に、原料液の流量を計測する流量計を含んでもよい。流量は、体積流量と質量流量のいずれでもよい。流量を時間積分すれば、原料液の総供給量を算出でき、原料液の総供給量が目標値に達したか否かをチェックできる。総供給量は、体積と質量のいずれでもよい。原料液の総供給量が目標値に達すると、原料液の供給が停止される。
また、原料液供給部3は、貯留槽31の質量変化を計測する質量計を含んでもよい。貯留槽31の質量減少量は原料液の総供給質量に等しいので、原料液の総供給質量が目標値に達したか否かをチェックできる。原料液の総供給質量が目標値に達すると、原料液の供給が停止される。
原料液供給部3は、可動壁23の片側、つまり、可動壁23の移動方向後側に、型枠21の内周一部と可動壁23とで外周全体を囲まれる原料液層Aをベース液層Bの液面の一部に形成する。原料液層Aの外周一部は型枠21に接し、原料液層Aの外周残部は可動壁23に接する。
図3Aに示すように、原料液層Aの外周全体が型枠及21及び可動壁23の両方から離れている時、原料液層Aの厚みHは平衡厚みHA0になる。この時、原料液層Aの外周全体にて、第1内向き力F1と、第1外向き力F2とが釣り合う。
第1内向き力F1は、原料液層Aの表面張力によって生じ、原料液層Aを内向きに縮め、原料液層Aの厚みHを厚くする。一方、第1外向き力F2は、重力によって生じ、原料液層Aを外向きに広げ、原料液層Aの厚みHを薄くする。第1外向き力F2は、重力によって生じるので、原料液層Aの厚みHに依存する。厚みHが厚いほど、第1外向き力F2が大きい。
図3Aに示す状態から、外乱によって原料液層Aの厚みHが平衡厚みHA0よりも大きくなると、第1外向き力F2が第1内向き力F1よりも大きくなるので、原料液層Aが外向きに広がり、原料液層Aの厚みHが薄くなり平衡厚みHA0に戻る。
一方、図3Aに示す状態から、外乱によって原料液層Aの厚みHが平衡厚みHA0よりも小さくなると、第1外向き力F2が第1内向き力F1よりも小さくなるので、原料液層Aが内向きに縮まり、原料液層Aの厚みHが厚くなり平衡厚みHA0に戻る。
従って、原料液層Aの外周全体が型枠及21及び可動壁23の両方から離れている時、原料液層Aの厚みHは平衡厚みHA0になる。
図3B及び図3Cに示すように、原料液層Aの外周一部は型枠21に接し、原料液層Aの外周残部は可動壁23に接する時、原料液層Aの外周全体が型枠21又は可動壁23に吸着され、その吸着によって第2外向き力F3が生じる。第2外向き力F3は、吸着によって生じるので、原料液層Aと型枠21との接触面積、換言すると、原料液層Aの厚みHに依存する。厚みHが厚いほど、第2外向き力F3が大きい。
なお、図3B及び図3Cに示すように、第1外向き力F2と第2外向き力F3との合力が第1内向き力F1よりも大きい場合、型枠21及び可動壁23が原料液層Aを押し返し、その押し返しによって第2内向き力F4が生じる。第2内向き力F4は、力の釣り合いを保つべく生じ、換言すれば、帳尻合わせのために生じるので、ゼロであってもよい。第2内向き力F4は、原料液層Aの薄化には利用しない。
本実施形態によれば、型枠21の内周一部と可動壁23とで外周全体を囲まれる原料液層Aを形成し、原料液層Aの外周一部は型枠21に接し、原料液層Aの外周残部は可動壁23に接するので、原料液層Aの外周全体に第2外向き力F3が作用する。第2外向き力F3によって原料液層Aの外周全体を外向きに引っ張るので、後述するように可動壁23の水平方向の移動によって原料液層Aを引き伸ばし、図3Cに示すように原料液層Aの厚みHを平衡厚みHA0よりも薄くできる。なお、薄化前の原料液層Aの厚みHは、図3Bに示すように平衡厚みHA0以上である。
但し、原料液層Aの厚みHが薄くなるほど、上記の通り、第2外向き力F3が小さくなる。第1外向き力F2も同様である。図3Cに示すように、第1外向き力F2と第2外向き力F3との合力が第1内向き力F1を超える範囲で、原料液層Aの薄化が行われる。仮に上記合力が第1内向き力F1よりも小さくなると、力のバランスが崩れ、原料液層Aが破れてしまうからである。
型枠21の表面張力が大きいほど、型枠21の側面に原料液層Aが吸着されやすいので、第2外向き力F3が大きく、原料液層Aをより薄化できる。第2外向き力F3は型枠21の表面張力の他に原料液層Aの表面張力にも依存し、型枠21に対する原料液の接触角が小さいほど、濡れ性が良いので、第2外向き力F3が大きくなる。上記接触角は、好ましくは90°未満である。型枠21の材質が樹脂である場合、樹脂の中では、ナイロンやポリエステル等が、表面張力が高いので、原料液層Aの薄化に好適である。なお、可動壁23の表面張力も、型枠21の表面張力と同様である。また、可動壁23に対する原料液の接触角も、型枠21に対する原料液の接触角と同様である。
また、図3Dに示すように、型枠21の側面のうち、少なくとも原料液層Aと接触する部位に、凹凸211が形成されてもよい。凹凸211の形状は、図3Dでは三角波状であるが、矩形波状又は正弦波状でもよく、特に限定されない。凹凸211によって型枠21と原料液層Aとの接触面積を増大でき、吸着によって生じる第2外向き力F3を増大できるので、厚みHを更に薄くできる。なお、可動壁23の側面の凹凸231も、型枠21の側面の凹凸211と同様である。
但し、図3Dに示すように、型枠21の側面に凹凸211が形成される場合、凹凸211の形状がゲル層Cの側面に転写される。図3B及び図3Cに示すように、型枠21の側面に凹凸211が無ければ、ゲル層Cの側面が滑らかになる。なお、可動壁23の側面に凹凸231が形成される場合も、型枠21の側面に凹凸211が形成される場合と同様である。
なお、ゲル層Cは底蓋22とは接触しないので、底蓋22の上面の形状がゲル層Cの下面に転写されることは無い。従って、底蓋22の上面の粗さが問題になることはなく、型枠21で囲まれる底蓋22の上面を滑らかにする特殊な加工が不要である。
図1A及び図1Bに示すように、製造装置1は、型枠21の内周一部と可動壁23とに接した原料液層Aをベース液層Bの液面の上で引き伸ばすように可動壁23を水平方向に移動させる駆動部5を有する。ベース液層Bの液面は水平であるので、可動壁23の移動方向も水平方向である。第2外向き力F3によって原料液層Aの外周全体を外向きに引っ張った状態で、原料液層Aを引き伸ばすので、原料液層Aの厚みHを平衡厚みHA0よりも薄くできる。駆動部5は、上記の通り、可動壁23を水平方向だけではなく鉛直方向にも移動させてもよい。
なお、原料液層Aの外周全体が完全に型枠21の内周一部と可動壁23とに接しなくてもよく、原料液層Aの薄化時に力のバランスが崩れ原料液層Aが破れない程度に、原料液層Aの外周全体が実質的に型枠21の内周一部と可動壁23とに接していればよい。原料液層Aの外周全体が実質的に型枠21の内周一部と可動壁23とに接する場合としては、上記の通り、型枠21と可動壁23との間に僅かな隙間が形成される場合が挙げられる。その隙間の大きさは、上記の通り、例えば0.1mm~1mmである。また、原料液層Aと型枠21の界面に小さな泡がある程度であれば、原料液層Aの薄化時に原料液層Aは破れない。また、系の揺らぎで直ぐに埋められる程度の隙間は許される。
可動壁23の水平方向の移動速さは、可動壁23の移動に原料液層Aが追従できる速さであれば、特に限定されない。可動壁23の水平方向の移動速さは、途中で変化してもよいが、移動開始の加速時と移動終了の減速時を除き、一定であってよい。可動壁23の水平方向の移動速さを一定にすれば、原料液層Aを引き伸ばす速度を一定にでき、原料液層Aの薄化を安定化できる。
なお、本実施形態では可動壁23を自動で移動させるべく、製造装置1が駆動部5を有するが、可動壁23を手動で移動させてもよく、製造装置1が駆動部5を有しなくてもよい。可動壁23を手動で移動させる場合、可動壁23を移動終了地点にテープ又はネジなどで固定してよい。
図4A、図4B及び図4Cに示す例では、可動壁23が鉛直な板であって、型枠21の開口部28の形状が長方形であり、その長方形の内側コーナーの曲率半径が小さい。
先ず、可動壁23は、図4Aで示すように、開口部28の短辺に平行に設置され、開口部28を長手方向に2つのゾーンに区分けする。この状態で、可動壁23の片側(図4A中左側)のゾーン全体に行き渡るように原料液が供給され、可動壁23の左側に原料液層A1が形成される。
次いで、可動壁23は、図4Aに示す位置から、図4Bに示す位置を経て、図4Cに示す位置まで、開口部28の長辺に沿って右側にスライドする。可動壁23の左側のゾーンが大きくなるので、原料液層A1が薄く引き伸ばされる。
ところで、可動壁23が右側にスライドする途中で、原料液が可動壁23と型枠21との僅かな隙間を通り、可動壁23の右側に回り込み、図4Bに示すように可動壁23の右側面に沿って原料液層A2が形成されることがある。可動壁23のスライド終了時点で、可動壁23の側面に沿って形成される原料液層A2は、図4Cに示すように、型枠21と可動壁23とで外周全体を囲まれる。
可動壁23のスライド終了後、可動壁23をベース液層Bから上方に引き上げると、可動壁23とベース液層Bとの間に原料液層A1、A2が入り込み、一体化し、型枠21の開口部28の全体に原料液層Aが形成される。原料液層Aの外周全体が型枠21に接し、原料液層Aの外周全体に第2外向き力F2が作用するので、原料液層Aの厚みHが平衡厚みHA0よりも薄い状態を維持できる。また、原料液層Aのゲル化時に、可動壁23の固定が不要になる。
図5A、図5B、図5C及び図5Dに示す例では、可動壁23が鉛直な板であって、型枠21の開口部28の形状が長方形であり、その長方形の内側コーナーの曲率半径が大きい。
図5A等に示す例では、図4A等に示す例と同様に、可動壁23が設置され、可動壁23の片側(図5中左側)に原料液が供給され、その後、可動壁23が右側にスライドする。図5A等に示す例では、図4A等に示す例とは異なり、スライドの途中で、原料液が可動壁23の右側に回り込まないが、回り込んでもよい。
原料液が可動壁23の右側に回り込むか否かに関係なく、図5A等に示す例では、図4A等に示す例とは異なり、図5Aに示すようにスライドの終了時点で、可動壁23の右側には可動壁23と型枠21とで外周全体を囲まれる原料液層が存在しない。開口部28の内側コーナーの曲率半径が大きく、スライドの終了時点で、可動壁23と開口部28の右辺とが大きく離れているからである。
そこで、可動壁23は、図5Aに示す位置から、図5Bに示す位置、及び図5Cに示す位置を経て、図5Dに示す位置まで移動する。この間、可動壁23の一端232は、開口部28の長辺281に沿って移動する。一方、可動壁23の他端233は、開口部28の長辺282から、内側コーナー283、短辺284、内側コーナー285を経て、長辺281まで移動する。
最終的に、可動壁23は、図5Dに示すように、開口部28の一つの長辺281に平行に接し、可動壁23の片側にのみ原料液層Aが形成される。この状態で、可動壁23をベース液層Bから上方に引き上げると、可動壁23とベース液層Bとの間に原料液層Aが入り込み、型枠21の開口部28の全体に原料液層Aが形成される。原料液層Aの外周全体が型枠21に接し、原料液層Aの外周全体に第2外向き力F2が作用するので、原料液層Aの厚みHが平衡厚みHA0よりも薄い状態を維持できる。また、原料液層Aのゲル化時に、可動壁23の固定が不要になる。
なお、可動壁23が図5Dに示す位置にテープ又はネジなどで固定された状態で、原料液層Aのゲル化が行われてもよい。
図1Bに示すように、製造装置1は、薄化した原料液層Aを、ベース液層Bの液面の上でゲル化するゲル化促進部6を含む。ゲル原料が(1A)シラン化合物と(1B)触媒とを含むものである場合、原料液層Aのゲル化は、加熱によって行われる。シラン化合物は、酸触媒などで加水分解され、シラノール基(Si-OH)を有するゾルになる。ゾルが加熱されると、シラノール基同士が分子間で脱水縮合反応しSi-O-Si結合を形成し、原料液層Aがゲル化される。
ゲル化促進部6は、例えば、原料液層Aを加熱する加熱器61を有する。加熱器61は、収容部2の外部に配置されてもよいし、内部に配置されてもよいし、外部と内部の両方に配置されてもよい。
加熱器61は、収容部2の内部に配置される場合、例えばベース液層Bの内部に配置され、ベース液層Bを加熱することで、原料液層Aを下方から加熱する。また、加熱器61は、収容部2の外部に配置される場合、原料液層Aの上方、側方、及び下方のうちの少なくとも1箇所に配置されればよい。加熱器61は、原料液層Aを上下両側から加熱するように配置されることが好ましい。また、加熱器61は、原料液層Aの外周全体を側方から加熱するように配置されることが好ましい。
加熱器61の加熱方式は、特に限定されないが、例えば、抵抗加熱式、赤外線加熱式、及びアーク加熱式などのなかから、加熱器61の設置場所に応じて適宜選択される。
なお、原料液層Aをゲル化させる手段は、加熱器には限定されず、ゲル原料の種類に応じて適宜選択される。
例えば、ゲル原料が熱可塑性樹脂である場合、原料液層Aをゲル化させる手段は、冷却器である。冷却器は、ベース液層Bの上で原料液層Aを冷却し、原料液層Aをゲル化させる。冷却器も、加熱器と同様に、配置され、制御されてよい。冷却器による強制冷却の代わりに、自然冷却が実施されてもよい。
また、ゲル原料が光硬化性樹脂である場合、原料液層Aをゲル化させる手段は、光源である。光源は、ベース液層Bの上に存在する原料液層Aに対して紫外線等の光を照射し、光硬化性モノマーを硬化し、原料液層Aをゲル化する。光源も、加熱器と同様に、配置され、制御されてよい。
また、ゲル原料が熱硬化性樹脂である場合、原料液層Aをゲル化させる手段は、加熱器である。
また、ゲル原料が多糖類ナノファイバーである場合、多糖類ナノファイバーは酸触媒又は塩基触媒に接触すると、短時間でゲル化する。従って、原料液は、多糖類ナノファイバーを含み、酸触媒又は塩基触媒を含まなくてよい。酸触媒又は塩基触媒は、ベース液層Bの上に形成された原料液層Aに対して、上方からシャワー状に供給されてよい。この場合、原料液層Aをゲル化させる手段は、原料液層Aに対して上方から酸触媒又は塩基触媒を供給する供給器である。
原料液層Aのゲル化の最終段階では、硬化収縮が生じるので、その硬化収縮によってゲル層Cの外周が型枠21から剥離されてもよい。ゲル層Cの大きさが型枠21の開口部の大きさよりも小さくなるので、ゲル層Cを型枠21から取り出すのが容易である。
ところで、ベース液層Bの液面の上で原料液層Aをゲル化する過程で、原料液層Aが硬化収縮し、ゲル層Cの内部から溶媒が押し出されることがある。溶媒そのものは蒸発しやすいが、溶媒に溶けている触媒又は界面活性剤が溶媒の蒸発を抑えてしまう。その結果、ゲル層Cの内部から押し出された溶媒は、ゲル層Cをベース液層Bの液面の上から取り出した後も、その液面の上に溜まり、次回以降の原料液層Aの形成又はゲル化を阻害し得る。
そこで、製造装置1は、ゲル層Cをベース液層Bの液面の上から取り出した後、その液面の上に溜まる原料液の溶媒を除去すべく、図6A及び図6Bに示すように、収容部2の内部にベース液を供給してもよい。ベース液の供給によってベース液層Bの厚みが図6Aに示す厚みから図6Bに示す厚みに厚くなるので、ベース液層Bの液面の上に溜まった液体が収容部2の上端からあふれ出し、除去される。この動作は、定期的に行われてよい。
製造装置1は、収容部2の内部にベース液を供給するベース液供給部7を有する。ベース液供給部7は、例えば、ベース液を一時的に貯留する貯留槽71と、貯留槽71から供給されるベース液を収容部2の内部に供給する供給ノズル72とを含む。供給ノズル72は、ベース液層Bの液面の上に溜まる原料液の溶媒と、新たに供給するベース液との混合を防止すべく、ベース液層Bの液面よりも下にベース液を吐出する。
ベース液供給部7は、貯留槽71と供給ノズル72とを接続する供給ライン73の途中に、ベース液を送る供給ポンプ74を含む。供給ポンプ74を作動させると、供給ノズル72がベース液を吐出する。一方、供給ポンプ74の作動を停止させると、供給ノズル72がベース液の吐出を停止する。
ベース液供給部7は、例えばベース液層Bの液面が収容部2の上端のうちの最も低い部位と同じ高さ以上になるまで、ベース液を収容部2の内部に供給する。収容部2の上端は、特定の部位から液体があふれ出すように、一部の高さが残部の高さよりも低くなっている。つまり、収容部2の上端の一部には切欠きNが形成されており、その切欠きNから液体があふれ出す。
製造装置1は、収容部2の周辺を清浄に保つべく、収容部2の上端からあふれ出した液体を回収する回収部8を有してよい。回収部8は、収容部2の上端のうちの特定の部位からあふれ出した液体を回収する。回収した液体は、複数の成分を含むので、廃棄されてもよいし、精製された後、リサイクルされてもよい。
製造装置1は、ベース液層Bの厚みを元の厚みに戻すべく、ベース液層Bからベース液を排出する排液ライン75と、排液ライン75の途中に設けられる開閉バルブ76とを有してよい。開閉バルブ76が開放されると、ベース液層Bからベース液が排出され、ベース液層Bの厚みが元の厚みに戻る。排出されたベース液は、廃棄されてもよいし、リサイクルされてもよい。
なお、供給ポンプ74が両方向にベース液を送るものである場合、供給ノズル72がベース液層Bからベース液を吸引し、貯留槽71に送り返すことも可能である。この場合、排液ライン75及び開閉バルブ76は、不要である。
なお、原料液層Aの硬化収縮の大きさはゲルの種類毎に異なるので、ゲル層Cの内部から押し出される溶媒の量もゲルの種類毎に異なる。従って、ベース液供給部7及び回収部8等は、不要な場合もあり、ゲルの種類に応じて設置されればよい。
(ゲルの製造方法)
図7に示すように、ゲルの製造方法は、例えば、原料液層Aの形成(S1)と、原料液層Aの薄化(S2)と、原料液層Aのゲル化(S3)と、ゲル層Cの取出(S4)と、ゲル層Cの溶媒置換(S5)と、ゲル層Cの乾燥(S6)と、を有する。
原料液層Aの形成(S1)と、原料液層Aの薄化(S2)と、原料液層Aのゲル化(S3)は、例えば上記製造装置1によって実施する。S1~S3については、上記の通りであるので、説明を省略する。
以下、残りの、ゲル層Cの取出(S4)と、ゲル層Cの溶媒置換(S5)と、ゲル層Cの乾燥(S6)とについて説明する。
なお、ゲルの製造方法は図7に示す処理を全て含まなくてもよく、例えば原料液の溶媒が乾燥(S6)に適したものである場合、溶媒置換(S5)が実施されなくてもよい。また、ゲルの製造方法は、図7に示す処理とは別の処理を含んでもよい。
取出(S4)では、ゲル層Cを、ベース液層Bから持ち上げ、型枠21から取り出す。ゲル化(S3)の最終段階で、原料液層Aの硬化収縮の大きさが大きければ、ゲル層Cの外周が型枠21から剥離されるので、図8のように収容部2を傾けることは不要であり、ゲル層Cを容易に取り出せる。
図8に示すように、ゲル層Cがベース液層Bの上に存在する状態で収容部2を傾けると、ベース液層Bの液面が水平になろうとするので、ゲル層Cが図8に二点鎖線で示す状態から図8に実線で示す状態になり、型枠21に対して上下にずれ、ゲル層Cが型枠21から剥離する。また、収容部2を傾けると、ベース液層Bの液面の面積が広くなるのに対し、ゲル層Cの下面の面積は変わらないので、ゲル層Cが型枠21から剥離する。このように、収容部2を傾ければ、ゲル層Cを型枠21から剥離する時に、無理な力をゲル層Cにかけずに済み、また、ゲル層Cを容易に取り出せる。
図9に示すように、収容部2は、型枠21の他に、型枠21を収容する容器24と、型枠21の下に設置される支持板25と、支持板25を支持する支持棒26とを有してもよい。支持板25は図1A及び図1Bに示す底蓋22に代えて用いられ、支持板25の上に型枠21が分離可能に載置される。
容器24は、底板241と、底板241の周縁全体から上方に延びる側板242とを含む。容器24の内部にはベース液層Bが形成され、ベース液層Bの液面の一部を型枠21が囲む。型枠21は容器24の側板242から離して配置される。
原料液層Aは、型枠21の内側に形成され、型枠21の外側には形成されない。型枠21は、原料液層Aとベース液層Bとの界面よりも下方に突出し、且つ原料液層Aの上面よりも上方に突出する。
支持板25は、ベース液層Bの液面の上に原料液層Aを形成する前に、ベース液層Bと原料液層Aの界面よりも下に設置される。支持板25は、ベース液層Bからゲル層Cを持ち上げる際にゲル層Cを下方から支持する。支持板25がゲル層Cを下方から支持するので、重力によってゲル層Cが割れるのを抑制できる。
支持板25は、支持板25の表裏面を貫通する貫通穴Hを、支持板25の主面方向に間隔をおいて複数有してもよい。支持板25としては、例えばパンチングメタル又は金網等が用いられる。ベース液層Bからゲル層Cを持ち上げる際に、支持板25の上方に存在するベース液が貫通穴Hを通り、支持板25の下方に抜ける。従って、支持板25とゲル層Cとが直接接触するので、ゲル層Cの滑りを摩擦によって抑制でき、ゲル層Cの支持板25からの落下を抑制できる。
ゲル化(S3)の最終段階で、原料液層Aの硬化収縮の大きさが小さく、ゲル層Cの外周が型枠21から剥離しない場合、型枠21を複数の部品に分解してゲル層Cから取り外すことができる。型枠21は容器24の側板242から離して配置されるので、側板242と型枠21との間に、型枠21を複数の部品に分解する作業スペースを確保できるからである。
一方、ゲル化(S3)の最終段階で、原料液層Aの硬化収縮の大きさが大きく、ゲル層Cの外周が型枠21から剥離する場合、型枠21を複数の部品に分解してもよいが、分解しなくても、ゲル層Cから型枠21を取り外すことができる。
ゲル層Cから型枠21を取り外した後、支持棒26を引き上げれば、支持板25でゲル層Cを支持できる。その状態で、支持板25とゲル層Cとを、容器24とは別の容器に貯留された溶媒中に浸漬し、溶媒置換(S5)を実施してもよい。この場合に、支持板25が貫通穴Hを有すれば、ゲル層Cの表裏面側から溶媒置換を実施できる。
但し、溶媒置換(S5)は、容器24の内部でも実施可能である。その場合、容器24の内部は一旦空にされ、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒と置換される溶媒が容器24の内部に貯留される。ゲル層Cの内部に含まれる溶媒が水である場合、水と置換される溶媒は通常水よりも低い密度を有するので、水と置換される溶媒中にゲル層Cが沈み、溶媒置換が効率的に行われる。この場合も、支持板25が貫通穴Hを有すれば、ゲル層Cの表裏面側から溶媒置換を実施できる。
溶媒置換(S5)では、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒を別の溶媒に置換する。ゲル層Cは、微細な多孔質体であり、内部に溶媒を含む。溶媒置換(S5)は、乾燥(S6)の前に実施され、乾燥時に溶媒の表面張力によってゲル層Cが収縮するのを抑制し、ゲル層Cの微細構造が破損するのを抑制する目的で実施される。
溶媒置換では、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒を、ゲル化に適した溶媒(つまり、原料液の溶媒)から、乾燥に適した溶媒に置換する。置換後の溶媒は、乾燥方法に応じて適宜選択される。乾燥方法としては、超臨界乾燥、凍結乾燥、又は常圧乾燥が用いられる。
超臨界乾燥は、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒を、超臨界流体に置換する。超臨界乾燥に適した溶媒として、例えばメタノール、エタノール、又はイソプロピルアルコールなどが用いられる。超臨界流体として、一般的に、超臨界状態の二酸化炭素ガスが用いられる。超臨界乾燥は、密閉式の高圧容器の内部で実施される。
凍結乾燥は、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒を凍結した後で、真空中で蒸発させる。通常これを、昇華と呼ぶ。凍結乾燥に適した溶媒として、水、tert-ブチルアルコール、シクロヘキサン、1,4-ジオキサン、又はフッ素系溶媒等が用いられる。凍結乾燥は、密閉式の真空容器の内部で実施される。
常圧乾燥は、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒を、常圧下で蒸発させる。溶媒蒸発に伴う毛細管力によるゲル層Cの微細骨格の収縮力を小さくすることが重要なので、常圧乾燥に適した溶媒としては、表面張力の小さな溶媒、例えばヘキサン若しくはヘプタンなどの低分子量の脂肪族炭化水素系の溶媒、又はフッ素系溶媒が用いられる。常圧乾燥は、常圧で行われるので、密閉式の容器が不要である。
溶媒置換は、溶媒の沸騰によってゲル層Cの微細構造が破損するのを抑制すべく、溶媒の沸点以下の温度で実施される。但し、溶媒の置換効率を高めるべく、溶媒を沸点以下の温度で加熱してもよい。加熱温度は、例えば40℃~100℃である。
溶媒の置換回数は、本実施形態では1回であるが、複数回であってもよい。つまり、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒は、原料液の溶媒から、第1溶媒に置換され、更に第2溶媒に置換されてもよい。
原料液の溶媒と第2溶媒との相溶性が低い場合には、置換効率が悪くなるので、その間に一旦、第1溶媒での置換を導入することで、原料液の溶媒から第2溶媒への置換にかかる時間を短縮できる。第1溶媒としては、原料液の溶媒と第2溶媒との両方に対し高い相溶性を有するものが用いられる。
なお、原料液の溶媒が乾燥に適したものである場合、溶媒置換は不要である。
乾燥(S6)では、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒を除去する。ゲル層Cの乾燥方法としては、上記の通り、超臨界乾燥、凍結乾燥、又は常圧乾燥が用いられる。これらの中でも、常圧乾燥は、密閉式の容器が不要である点で優れている。
常圧乾燥は、溶媒の沸騰によってゲル層Cの微細構造が破損するのを抑制すべく、溶媒の沸点以下の温度で実施される。但し、溶媒の除去効率を高めるべく、ゲル層Cを沸点以下の温度で加熱してもよい。ゲル層Cの乾燥温度は、例えば室温~100℃である。
常圧乾燥では、ゲル層Cに対して風を送ることで、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒の蒸発を促進できる。常圧乾燥で蒸発させた溶媒は、回収され、廃棄又は必要に応じてリサイクルされる。
乾燥後に得られるゲル層Cは、キセロゲルであり、多孔質なモノリスである。
乾燥(S6)は、支持板25でゲル層Cを支持した状態で、実施されてもよい。この場合に、支持板25が貫通穴Hを有すれば、ゲル層Cの表裏面側から溶媒を除去できる。
以下、実施例について説明する。下記の例1が実施例である。
(例1)
原料液層の形成(S1)では、先ず、原料液であるゾル液を作製した。具体的には、ビニルメチルジメトキシシラン(VMDMS;東京化成工業社製)60gと、重合開始剤としてジーt-ブチルパーオキサイド(DTBP;東京化成工業社製)0.66gとを、内槽がPTFE製である100mlのSUS製耐圧容器に入れ、上部の空気層を窒素に置換した状態で容器を密閉した。この容器を120℃のオーブン中で48時間維持した後、オーブンから取り出して室温まで冷却し、粘調な透明オリゴマー液体を得た。この透明オリゴマー液体5gと、ベンジルアルコール20gと、を50mlのガラス製バイアル容器に入れ、マグネチックスターラーで10分撹拌した後、撹拌したものに塩基触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)の0.75モル水溶液を1.5g加えて、室温にて3分間撹拌してゾル液を作製した。
次いで、作製したゾル液を、縦75mm、横105mm、高さ25mmのポリメチルメタクリレート(PMMA)製の直方体容器の内部に滴下した。その容器の内部には、予め厚み10mmのベース液層を形成した。ベース液としては、密度が1.88g/cmであるフッ素系溶媒(3M社商品名:フロリナートFC-43)を用いた。直方向体容器の開口部には、その開口部を横方向に2つのゾーンに等分割するように、可動壁であるガラス板を設置した。ガラス板は、幅74.9mm、高さ50mm、厚み2mmであった。ゾル液は、スポイトによってガラス板の左側に滴下した。その結果、ガラス板の左側に、ガラス板と直方体容器とで外周全体を囲まれる、厚み4mmのゾル液層が得られた。ゾル液層の外周一部が直方体容器の内周一部に接し、ゾル液の外周残部がガラス板に接した。
原料液層の薄化(S2)では、ゾル液層の液面を乱さないように、ガラス板の下辺をPMMA容器の底から3mmほど浮かせた状態で、ガラス板を右側にスライドさせ、ゾル液層を引き伸ばした。その間にゾル液がガラス板と直方体容器との隙間を通りガラス板の右側に回り込み、ガラス板の右側面に沿ってゾル液層が形成され、ガラス板のスライド終了時には、ガラス板の右側にもガラス板と直方体容器とで外周全体を囲まれるゾル液層が形成された。その後、ガラス板を上に引き抜いたところ、直方体容器の開口部全体に、厚み2mmのゾル液層が形成された。
その後、厚み2mmのゾル液層の上から、ベース液と同じFC-43を滴下したところ、ゾル液層が破れ、ゾル液が1箇所に集まったことから、平衡厚みよりも薄い厚みのゾル液層が形成されたことを確認できた。
その後、再度、上記の原料液層の形成(S1)と薄化(S2)とをやり直し、厚み2mmのゾル液層を得た。
ゾル液層のゲル化(S3)では、PMMA容器の蓋を閉じ、PMMA容器を80℃のオーブンに1時間入れた。その後オーブンから取り出して室温まで冷却したところ、ベース液層の上に浮かぶゲル層が得られた。ゲル層の厚みは1.9mmであり、硬化収縮によってゲル層の外周全体がPMMA容器の内周全体から離れていた。
以上、本開示に係るゲルの製造方法、及びゲルの製造装置について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
1 製造装置
2 収容部
21 型枠
23 可動壁
3 原料液供給部
6 ゲル化促進部
A 原料液層
B ベース液層
C ゲル層

Claims (13)

  1. ゲルの原料液を前記原料液よりも高密度のベース液層の型枠で外周を囲まれる液面の上に供給し、前記型枠の内部で水平方向に移動可能な可動壁の移動方向後側に、前記型枠の内周一部と前記可動壁とで外周を囲まれる原料液層を形成し、
    前記型枠の前記内周一部と前記可動壁とに接した後の前記原料液層を前記ベース液層の前記液面の上で引き伸ばすように前記可動壁を水平方向に移動し、前記原料液層を平衡厚み未満の厚みに薄化し、
    前記薄化した前記原料液層を、前記ベース液層の前記液面の上でゲル化する、
    ゲルの製造方法。
  2. 前記原料液層の形成後、前記可動壁と前記ベース液層の下面との間に隙間を形成した状態で前記可動壁を水平方向に移動させ、前記原料液層を薄化する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記原料液層の薄化後に前記可動壁を前記型枠外に取り出し、前記原料液層の外周全体を前記型枠の内周に接した状態で、前記原料液層をゲル化する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記型枠の開口部は、平面視で長方形である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記ベース液層は、フッ素原子を有する液状化合物である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記原料液層をゲル化して得られるゲル層を、前記ベース液層から持ち上げる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記ベース液層の前記液面の上に前記原料液層を形成する前に、前記ベース液層と前記原料液層の界面よりも下に、前記ベース液層から前記ゲル層を持ち上げる際に前記ゲル層を下方から支持する支持板を設置する、請求項6に記載の方法。
  8. 前記原料液層をゲル化して得られるゲル層の内部に含まれる溶媒を、別の溶媒に置換する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記原料液層をゲル化して得られるゲル層の内部に含まれる溶媒を、除去する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
  10. ゲルの原料液よりも高密度のベース液層の液面の外周を囲む型枠と、
    前記型枠の内部で水平方向に移動可能な可動壁と、
    前記型枠で外周を囲まれる前記液面の上に前記原料液を供給し、前記可動壁の移動方向後側に、前記型枠の内周一部と前記可動壁とで外周を囲まれる原料液層を形成する原料液供給部と、
    前記型枠の前記内周一部と前記可動壁とに接し且つ前記可動壁の水平方向の移動によって薄化した前記原料液層を、前記ベース液層の前記液面の上でゲル化させるゲル化促進部と、
    を有する、ゲルの製造装置。
  11. 前記可動壁は、前記ベース液層の下面との間に隙間を形成するように配置される、請求項10に記載の装置。
  12. 前記ベース液層と前記原料液層の界面よりも下に、前記原料液層をゲル化して得られるゲル層を前記ベース液層から持ち上げる際に前記ゲル層を下方から支持する支持板を有する、請求項10又は11に記載の装置。
  13. 前記支持板は、前記支持板の表裏面を貫通する貫通穴を、前記支持板の主面方向に間隔をおいて複数有する、請求項12に記載の装置。
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