JP2022126894A - ゲルの製造方法、及びゲルの製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高密度のベース液層の上に、平衡厚みよりも薄い原料液層を形成でき、ひいては平衡厚みよりも薄いゲル層を形成できる、技術を提供する。【解決手段】ゲルの原料液で形成される原料液層を、前記原料液層よりも高密度のベース液層の型枠で外周を囲まれる液面に、前記原料液層の上に配置されるプレス部材で押し付け、前記原料液層を平衡厚み未満の厚みに薄化し、前記プレス部材によって前記ベース液層の液面に押し付けた前記原料液層を、前記ベース液層の液面の上でゲル化する、ゲルの製造方法。【選択図】図1B
Description
本開示は、ゲルの製造方法、及びゲルの製造装置に関する。
特許文献1には、ゲルの製造方法が開示されている。この方法によれば、底板と、底板の周縁から上方に延びる側板と、からなる容器内において、第1の液状物からなる第1の液層の上に、ゲル原料を含む第2の液状物からなる第2の液層を存在させた状態で、第2の液層をゲル化させる。
ゲルの原料液を原料液よりも高密度のベース液層Bの上に供給すると、ベース液層Bの上に原料液層Aが形成される。ベース液層Bが原料液層Aよりも十分に広ければ、原料液層Aの厚みは自然に一定の厚みになろうとする。その厚みを、平衡厚みとも呼ぶ。平衡厚みHA0は、下記式(1)から求められる。
平衡厚みHA0は、原料液層Aの材料である原料液と、ベース液層Bの材料であるベース液との組み合せで決まる。
本開示の一態様は、高密度のベース液層の上に、平衡厚みよりも薄い原料液層を形成でき、ひいては平衡厚みよりも薄いゲル層を形成できる、技術を提供する。
〔1〕本開示の一態様に係るゲルの製造方法は、ゲルの原料液で形成される原料液層を、前記原料液層よりも高密度のベース液層の型枠で外周を囲まれる液面に、前記原料液層の上に配置されるプレス部材で押し付け、前記原料液層を平衡厚み未満の厚みに薄化し、前記プレス部材によって前記ベース液層の液面に押し付けた前記原料液層を、前記ベース液層の液面の上でゲル化する。
〔2〕上記〔1〕に記載の方法であって、前記ベース液層の液面の上方から前記原料液を供給し、前記ベース液層の液面の一部に前記原料液層を形成し、前記原料液層の上に前記プレス部材を載せ、前記プレス部材によって前記原料液層を押し広げる。
〔3〕上記〔1〕に記載の方法であって、前記ベース液層に前記プレス部材を浮かべ、前記プレス部材を浮かべた前記ベース液層の内部に前記原料液を供給し、前記プレス部材と前記ベース液層との間に前記原料液層を形成する。
〔4〕上記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一つに記載の方法であって、前記プレス部材を載せた状態で、前記原料液層を前記型枠の内周全体に接し、前記型枠の内周全体に接した後の前記原料液層から前記プレス部材を取り外し、前記プレス部材を取り外した状態で、前記原料液層を前記ベース液層の液面の上でゲル化する。
〔5〕上記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一つに記載の方法であって、前記プレス部材を載せた状態で、前記原料液層を前記ベース液層の液面の上でゲル化する。
〔6〕上記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一つに記載の方法であって、前記プレス部材は、前記原料液層の上面に接する可撓性シートと、前記可撓性シートを上方から平坦に保持する剛性板とを含み、前記剛性板を前記可撓性シートから取り外し、次いで、前記可撓性シートを曲げ、前記可撓性シートを前記原料液層の上面の一端から他端に向けて徐々に引き剥がす。
〔7〕上記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一つに記載の方法であって、前記ベース液層は、フッ素原子を有する液状化合物である。
〔8〕上記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一つに記載の方法であって、前記原料液層をゲル化して得られるゲル層を、前記ベース液層から持ち上げる。
〔9〕上記〔8〕に記載の方法であって、前記ベース液層の前記液面の上に前記原料液層を形成する前に、前記ベース液層と前記原料液層の界面よりも下に、前記ベース液層から前記ゲル層を持ち上げる際に前記ゲル層を下方から支持する支持板を設置する。
〔10〕上記〔1〕乃至〔9〕のいずれか一つに記載の方法であって、前記原料液層をゲル化して得られるゲル層の内部に含まれる溶媒を、別の溶媒に置換する。
〔11〕上記〔1〕乃至〔10〕のいずれか一つに記載の方法であって、前記原料液層をゲル化して得られるゲル層の内部に含まれる溶媒を、除去する。
〔12〕本開示の一態様に係るゲルの製造装置は、ゲルの原料液よりも高密度のベース液層の液面の外周を囲む型枠と、前記型枠の内側に前記原料液を供給し、前記ベース液層の液面の上に原料液層を形成する原料液供給部と、前記原料液層の上方から前記原料液層を前記ベース液層の液面に押し付け、前記原料液層を平衡厚み未満の厚みに薄化するプレス部材と、前記プレス部材によって前記ベース液層の液面に押し付けた前記原料液層を、前記ベース液層の液面の上でゲル化させるゲル化促進部と、を有する。
〔13〕上記〔12〕に記載の装置であって、前記プレス部材は、前記原料液層の上面に接する可撓性シートと、前記可撓性シートを上方から平坦に保持する剛性板とを含む。
〔14〕上記〔12〕又は〔13〕に記載の装置であって、前記ベース液層と前記原料液層の界面よりも下に、前記原料液層をゲル化して得られるゲル層を前記ベース液層から持ち上げる際に前記ゲル層を下方から支持する支持板を有する。
〔15〕上記〔14〕に記載の装置であって、前記支持板は、前記支持板の表裏面を貫通する貫通穴を、前記支持板の主面方向に間隔をおいて複数有する。
本開示の一態様によれば、高密度のベース液層の上に、平衡厚みよりも薄い原料液層を形成でき、ひいては平衡厚みよりも薄いゲル層を形成できる。
先ず、本明細書及び特許請求の範囲における用語について説明する。「ゲル」とは、「湿潤ゲル」と「キセロゲル」との両方を含む。
「湿潤ゲル」とは、三次元網目が膨潤剤によって膨潤したゲルを意味する。膨潤剤が水であるヒドロゲル、膨潤剤がアルコールであるアルコゲル、膨潤剤が有機溶媒であるオルガノゲルを包含する。
「キセロゲル」とは、「国際純正応用化学連合(IUPAC)無機化学部会及び高分子部会高分子用語法小委員会」の「ゾル,ゲル,網目,及び無機有機複合材料の構造とプロセスに関する術語の定義(IUPAC勧告2007)」によれば「ゲルから膨潤剤を除去して形成された開放網目からなるゲル。」を意味する。超臨界乾燥によって膨潤剤を除去したものをエアロゲル、通常の蒸発乾燥によって膨潤剤を除去したものをキセロゲル、凍結乾燥によって膨潤剤を除去したものをクライオゲルとする分類法もあるが、本明細書及び特許請求の範囲においては、これらを総称してキセロゲルと称する。
「表面張力」とは、液体又は固体の、気体(例えば空気)との境界に作用する力である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向及びY軸方向は水平方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
(ゲルの製造装置)
図1A及び図1Bに示すように、原料液層Aは、原料液層Aよりも高密度のベース液層Bの液面の上で、薄化され、続いてゲル化され、ゲル層Cになる。
図1A及び図1Bに示すように、原料液層Aは、原料液層Aよりも高密度のベース液層Bの液面の上で、薄化され、続いてゲル化され、ゲル層Cになる。
製造装置1は、ベース液層Bを収容する収容部2を有する。収容部2は、例えば、型枠21と、型枠21の開口部を下方から塞ぐ底蓋22とを含む。型枠21は、底蓋22の周縁全体から上方に突出する。底蓋22は、ベース液層Bを下方から支持し、ベース液層Bの下面に接する。
型枠21は、ベース液層Bの液面の外周を囲む。その液面の上に、原料液層Aが形成される。原料液層Aは、薄化され、続いてゲル化され、ゲル層Cになる。それゆえ、型枠21の開口部の形状と大きさは、製造物であるゲル層Cの形状と大きさに合わせて適宜決められる。
型枠21の開口部の形状としては、平面視にて長方形、円形又は楕円形などが挙げられる。長方形は、角が直角のものだけではなく、角が丸められたものを含む。長方形は、正方形を含む。
型枠21の高さは、図1Aに示す薄化前の原料液層Aの上面よりも高くなるように決められる。薄化前の原料液層Aはベース液層Bの液面の一部に形成されるので、薄化前の原料液層Aの厚みHAは平衡厚みHA0になる。
型枠21の材質は、原料液及びベース液によって変質や膨潤せず、且つ原料液層A及びベース液層Bと互いに反応しないものであれば特に限定されず、金属、樹脂、ゴム、ガラス、及びセラミックなどのいずれでもよい。大面積のゲル層Cを製造する場合、耐荷重性の観点から、ステンレスなどの金属が好適である。金属製の型枠21の側面に、樹脂のコーティングが施されてもよい。また、原料液層Aのゲル化時に原料液層Aが加熱される場合、型枠21の材質は、原料液層Aの加熱温度に耐えられるものであればよい。なお、底蓋22の材質は、型枠21の材質と同様であってよい。
製造装置1は、ゲルの原料液をベース液層Bの液面の上に供給する原料液供給部3を有する。原料液の総供給体積VAは、例えば、製造物であるゲル層Cの体積VCと、原料液層Aからゲル層Cへの体積収縮率rとから求められる。体積収縮率rは、収縮前の体積VAと収縮後の体積VCとの差(VA-VC)を、収縮前の体積VAで除した値((VA-VC)/VA)であり、予め実験等で求められる。また、原料液の総供給質量WAは、例えば、原料液の総供給体積VAと、原料液の密度ρAとの積として求められる。原料液の密度ρAは、予め実験等で求められる。
原料液供給部3は、図1Aに示すように、ベース液層Bの液面の一部に原料液層Aを形成する。ベース液層Bの液面の一部に原料液層Aを形成すれば、図1Bに示すように、原料液層Aを押し広げ、原料液層Aを薄化できる。ベース液層Bは、原料液層Aよりも大きな密度を有するので、ベース液層Bの上に原料液層Aを安定的に形成できる。
ベース液層Bの液面は重力によって自然に水平に整えられるので、その水平な液面を利用して平坦で厚みの均一な原料液層Aが容易に得られる。また、ベース液層Bの液面は原料液層Aのゲル化時の膨張及び収縮、並びにゲル層Cの取出に応じて流動するので、ゲル層Cにかかるストレスが少なく、ゲル層Cの欠陥が少ない。さらに、ゲル層Cの下面全体が水平に支持されるので、ゲル層Cの大面積化が可能である。
ベース液層Bの液面の上で得られるゲル層Cは、膨潤剤である溶媒を含む湿潤ゲルである。湿潤ゲルの厚みは、例えば0.1mm~20mm、好ましくは0.5mm~10mmである。湿潤ゲルは、乾燥され、キセロゲルになる。キセロゲルの厚みは、例えば0.1mm~20mm、好ましくは0.5mm~10mmである。キセロゲルは、多孔質なモノリスであって、透明性と断熱性とを有するものであってよい。透明性と断熱性を有するキセロゲルは、例えば、自動車用窓ガラスや建物用窓ガラスにおける透明断熱材として用いられる。
キセロゲルの用途が透明断熱材である場合、キセロゲルの波長500nmにおける透過率は、厚み1mm換算で70%以上が好ましく、80%以上が好ましく、90%以上が好ましい。透過率は、日本工業規格(JIS R 3106:1998)に準拠して測定される。
キセロゲルの用途としては、例えば、断熱材の他に、フィルター、吸着剤、吸音材、吸湿材、吸油材、又は分離膜が挙げられる。キセロゲルは、用途によっては透明でなくてもよく、不透明でもよい。
キセロゲルの種類は、本実施形態では(1)ポリシロキサンキセロゲルであるが、(2)ポリマーキセロゲル、又は(3)セルロースキセロゲルなどの多糖類キセロゲルであってもよい。
原料液は、例えばゲルの原料(以下、「ゲル原料」とも呼ぶ。)と、ゲル原料を溶かす溶媒とを含む。ゲル原料は、最終的に得られるキセロゲルの種類に応じて適宜選択される。溶媒は、例えば水又は有機溶媒である。有機溶媒としては、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコール等)、非プロトン性極性有機溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、ケトン(シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等)、炭化水素(n-ヘキサン、ヘプタン等)等が挙げられる。
キセロゲルが(1)ポリシロキサンキセロゲルの場合、ゲル原料としては、例えば(1A)シラン化合物と(1B)触媒とを含むものが挙げられる。(1B)触媒は、ゲル化を均一に促進するためのものである。ゲル原料は、(1C)界面活性剤を更に含んでもよい。
(1A)シラン化合物としては、アルコキシシラン、6員環含有骨格と加水分解性シリル基とを有する6員環含有シラン化合物、有機ポリマー骨格と加水分解性シリル基とを有するシリル基含有ポリマー等が挙げられる。
アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、モノアルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン(ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等)、トリメトキシフェニルシラン、アルキレン基の両末端にアルコキシシリル基を有する化合物(1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(メチルジエトキシシリル)ヘキサン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジエトキシシリル)エタン等)、ペルフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン(ペルフルオロポリエーテルトリエトキシシラン、ペルフルオロポリエーテルメチルジエトキシシラン等)、ペルフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン(ペルフルオロエチルトリエトキシシラン等)、ペンタフルオロフェニルエトキシジメチルシラン、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン、ビニル基を有するアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン等)、アリル基を有するアルコキシシラン(アリルトリメトキシシラン、アリルジメトキシメチルシラン、アリルジエトキシメチルシラン等)、エポキシ基を有するアルコキシシラン(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等)、アクリロイルオキシ基を有するアルコキシシラン(3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、メタクリロイルオキシ基を有するアルコキシシラン(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等)等及び上記のアルコキシシランのオリゴマーが挙げられる。
6員環含有シラン化合物における6員環含有骨格は、イソシアヌル環、トリアジン環及びベンゼン環からなる群から選ばれる少なくとも1種の6員環を有する有機骨格である。
シリル基含有ポリマーにおける有機ポリマー骨格は、ポリエチレン鎖、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖及びポリカーボネート鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種の鎖を有する有機骨格である。
(1B)触媒としては、塩基触媒又は酸触媒が挙げられ、それらの水溶液であってもよい。塩基触媒としては、アミン(トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等)、尿素、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。酸触媒としては、無機酸(硝酸、硫酸、塩酸等)、有機酸(ギ酸、シュウ酸、酢酸、モノクロル酢酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸、モノフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸等)が挙げられる。
(1C)界面活性剤としては、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、プルロニックF127(BASF社商品名)、又はEH-208(日油社商品名)などが挙げられる。
キセロゲルが(2)ポリマーキセロゲルの場合、ゲル原料としては、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、加熱すると溶媒に溶解し、冷却するとモノリス(多孔体)を形成できるものが挙げられ、具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、アクリレート及びメタクリレートのいずれか一方又は両方と光重合開始剤とを含むもの等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、アクリレート及びメタクリレートのいずれか一方又は両方と熱重合開始剤とを含むものなどの他に、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの付加縮合物、メラミンとホルムアルデヒドとの付加縮合物等が挙げられる。
キセロゲルが(3)多糖類キセロゲルの場合、ゲル原料としては、(3A)多糖類ナノファイバーと(3B)酸とを含むものが挙げられる。多糖類としては、セルロースの他に、キチン、キトサン、ジェランガムなども挙げられる。
(3A)多糖類ナノファイバーとしては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)酸化セルロースナノファイバー等が挙げられる。(3A)多糖類ナノファイバーとしては、セルロースナノファイバーの他に、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバーなども挙げられる。
(3B)酸としては、前記無機酸又は前記有機酸が挙げられる。酸の代わりに、塩基も使用可能である。
ベース液層Bは、その上に原料液層Aを安定的に存在させるべく、原料液層Aとの密度差の大きい方が好ましい。その密度差は、好ましくは0.1g/cm3以上であり、より好ましくは0.5g/cm3以上である。なお、軽量化の観点から、その密度差は、好ましくは3.0g/cm3以下であり、より好ましくは2.0g/cm3以下である。
また、ベース液層Bは、その上に原料液層Aを安定的に存在させるべく、原料液層Aとの相溶性の低いものが好ましい。ベース液層Bと原料液層Aとの相溶性は、ベース液層Bの液体100gに溶解する原料液の上限量によって見積もることができる。その上限量は、100g以下が好ましく、10g以下がより好ましく、1g以下がさらに好ましい。その上限量が100g以下であれば、ベース液層Bと原料液層Aとの分離状態を長時間保つことができる。その上限量は、少ないほどよく、0gであってもよい。
また、ベース液層Bは、その上に原料液層Aを安定的に存在させるべく、原料液層Aと互いに反応しないものを用いることが好ましい。ベース液層Bは、実質的にゲル原料を含まないことが好ましい。実質的にゲル原料を含まないとは、原料液層Aから移行してきたゲル原料以外のゲル原料を含まないことを意味する。
ベース液は、原料液の溶媒に応じて適宜選択される。ベース液としては、フッ素原子を有する液状化合物、塩素原子を有する液状化合物、ケイ素原子を有する液状化合物、水、水銀等が挙げられ、原料液と密度差があるのであれば、フッ素、塩素、臭素、あるいは、ヨウ素などのハロゲン原子や、ケイ素原子などを含む必要はない。水は、ベース液層Bの密度を調整するために水溶性塩を含んでいてもよい。水溶性塩としては、塩化ナトリウム等が挙げられる。
フッ素原子を有する液状化合物は、高密度、高沸点、高耐熱分解性、及び不燃性である点で優れている。フッ素原子を有する液状化合物としては、フッ素系溶媒、フッ素系オイル等が挙げられる。
フッ素系溶媒としては、ハイドロフルオロアルカン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロモノエーテル、パーフルオロモノエーテル、ペルフルオロアルカン、ペルフルオロポリエーテル、ペルフルオロアミン、フッ素原子含有アルケン、フッ素原子含有芳香族化合物、フッ素原子含有ケトン、フッ素原子含有エステル等が挙げられる。フッ素系溶媒の市販品としては、旭硝子社登録商標のアサヒクリンAK-225(CF3CF2CHCl2)、AC-2000(CF3CF2CF2CF2CF2CHF2)、AC-6000(CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH3)、AE-3000(CF3CH2OCF2CHF2);3M社商品名のフロリナートやノベック7100(C4F9OCH3)、7200(C4F9OC2H5)、7300(C2F5CF(OCH3)CF(CF3)2);三井・デュポンフロロケミカル社商品名のバートレルXF(CF3CHFCHFC2F5)、MCA、XH;日本ゼオン社商品名のゼオローラH(ヘプタフルオロシクロペンタン)等が挙げられる。
フッ素系オイルの市販品としては、ソルベイ社商品名のフォンブリン、ダイキン工業社商品名のデムナムやダイフロイル等が挙げられる。
フッ素系溶媒としては、ハイドロフルオロアルカン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロモノエーテル、パーフルオロモノエーテル、ペルフルオロアルカン、ペルフルオロポリエーテル、ペルフルオロアミン、フッ素原子含有アルケン、フッ素原子含有芳香族化合物、フッ素原子含有ケトン、フッ素原子含有エステル等が挙げられる。フッ素系溶媒の市販品としては、旭硝子社登録商標のアサヒクリンAK-225(CF3CF2CHCl2)、AC-2000(CF3CF2CF2CF2CF2CHF2)、AC-6000(CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH3)、AE-3000(CF3CH2OCF2CHF2);3M社商品名のフロリナートやノベック7100(C4F9OCH3)、7200(C4F9OC2H5)、7300(C2F5CF(OCH3)CF(CF3)2);三井・デュポンフロロケミカル社商品名のバートレルXF(CF3CHFCHFC2F5)、MCA、XH;日本ゼオン社商品名のゼオローラH(ヘプタフルオロシクロペンタン)等が挙げられる。
フッ素系オイルの市販品としては、ソルベイ社商品名のフォンブリン、ダイキン工業社商品名のデムナムやダイフロイル等が挙げられる。
塩素原子を有する液状化合物としては、塩素系溶媒、塩素系オイル等が挙げられる。塩素系溶媒としては、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン等が挙げられる。
ケイ素原子を有する液状化合物としては、シリコーンオイル等が挙げられる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等が挙げられる。シリコーンオイルの市販品としては、信越化学工業社商品名のKF-96等が挙げられる。
ベース液層Bの厚みは、原料液の供給時に原料液がベース液層Bを突き破り底蓋22に達しないように、例えば10mm以上であってよい。原料液は、底蓋22に達してしまうと、濡れ効果によって底蓋22に付着し、沈んだままになるからである。ベース液層Bの厚みが厚ければ、原料液の供給速度を速くできる。
原料液供給部3は、例えば、原料液を一時的に貯留する貯留槽31を含む。貯留槽31は、例えば、(1A)シラン化合物と(1B)触媒とを混合する混合槽であってよい。混合槽は、ゲル化の進行を抑制すべく、原料液を冷却する冷却装置を含んでもよい。混合槽の温度は、ゲル化の進行抑止の観点からは低いほど好ましいが、凍結防止の観点から、原料液の凝固点よりも高く設定されてよく、例えば0℃~20℃に設定される。
混合槽は、原料液を撹拌する撹拌装置を含んでもよい。シラン化合物と触媒とを短時間で混合でき、原料液を短時間で均一化できる。
混合槽は、図示していないが、第1配管を介してシラン化合物の供給源と接続され、第2配管を介して触媒の供給源と接続される。第1配管にはシラン化合物の流量を制御する第1流量制御器が設けられ、第2配管には触媒の流量を制御する第2流量制御器が設けられる。シラン化合物の流量と触媒の流量とを制御できるので、混合槽での滞留時間を短くできる。シラン化合物の流量と触媒の流量とは、ベース液層Bの上に供給される原料液の流量に応じて適宜決定される。
原料液供給部3は、貯留槽31から供給される原料液を型枠21の内側に供給する吐出ノズル32を含む。吐出ノズル32は、ベース液層Bの液面の上に、原料液を供給する。吐出ノズル32は、原料液の供給時に原料液がベース液層Bを突き破らないように、ベース液層Bの液面に近い位置に配置されてよく、型枠21の内側に配置されてよい。
吐出ノズル32は、図1Aに示すように型枠21の内側に配置され原料液を供給する場合、原料液を供給する位置と、その型枠21の外側の位置との間で移動可能に構成されてもよい。後述のプレス部材4で原料液層Aをベース液層Bの液面に押し付ける際に、吐出ノズル32を型枠21の外側に退避でき、吐出ノズル32とプレス部材4との干渉を防止できる。また、原料液層Aをゲル化した後、ゲル層Cを型枠21から取り出す際に、吐出ノズル32を型枠21の外側に退避でき、吐出ノズル32とゲル層Cとの干渉を防止できる。
また、原料液供給部3は、貯留槽31と吐出ノズル32とを接続する供給ライン33の途中に、原料液を送る供給ポンプ34を含む。供給ポンプ34を作動させると、吐出ノズル32が原料液を吐出する。一方、供給ポンプ34の作動を停止させると、吐出ノズル32が原料液の吐出を停止する。
また、原料液供給部3は、供給ライン33の途中に、原料液の流量を計測する流量計を含んでもよい。流量は、体積流量と質量流量のいずれでもよい。流量を時間積分すれば、原料液の総供給量を算出でき、原料液の総供給量が目標値に達したか否かをチェックできる。総供給量は、体積と質量のいずれでもよい。原料液の総供給量が目標値に達すると、原料液の供給が停止される。
また、原料液供給部3は、貯留槽31の質量変化を計測する質量計を含んでもよい。貯留槽31の質量減少量は原料液の総供給質量に等しいので、原料液の総供給質量が目標値に達したか否かをチェックできる。原料液の総供給質量が目標値に達すると、原料液の供給が停止される。
製造装置1は、原料液層Aの上方から原料液層Aをベース液層Bの液面に押し付けるプレス部材4を有する。プレス部材4は、原料液層Aの上に載置され、原料液層Aをベース液層Bの液面に押し付ける。原料液層Aは、プレス部材4の重さで、押し広げられる。プレス部材4の下面は、原料液層Aと接触するので、平坦面であってよい。
プレス部材4と原料液層Aとの積層体が、ベース液層Bに浮かべられる。その結果、プレス部材4の下面が水平になるので、平坦で厚みの均一な原料液層Aが得られる。プレス部材4は、その上方から均等に押されてもよいが、押されなくてよい。プレス部材4が上方から押されることで、プレス部材4の下面が傾斜してしまうと、原料液層Aの少なくとも上面が傾斜してしまい、原料液層Aの厚みが不均一になるからである。
プレス部材4の密度は、プレス部材4と原料液層Aとの積層体がベース液層Bに浮かぶ限り、ベース液層Bの密度よりも小さくても大きくてもよいが、小さいことが好ましい。プレス部材4の密度がベース液層Bの密度よりも小さければ、プレス部材4と原料液層Aとの積層体をベース液層Bに確実に浮かべることができる。
また、プレス部材4の密度は、更に、原料液層Aの密度よりも小さくても大きくてもよいが、小さいことが好ましい。プレス部材4の密度が原料液層Aの密度よりも小さければ、原料液層Aの原料液がプレス部材4の上方に回り込むのを抑制できる。
プレス部材4の密度が小さくなるように、プレス部材の内部が多孔質であってもよい。但し、プレス部材4の下面は、原料液層Aと接触するので、原料液が浸入しないように、緻密であってよい。つまり、プレス部材4は、内部が多孔質であって且つ表面が緻密なものであってもよい。具体例として、例えば、発泡スチロールなどの発泡樹脂が挙げられる。
プレス部材4の材質は、型枠21の材質と同様に、原料液及びベース液によって変質や膨潤せず、且つ原料液層A及びベース液層Bと互いに反応しないものであれば特に限定されず、金属、樹脂、ゴム、ガラス、及びセラミックなどのいずれでもよい。
プレス部材4は、本実施形態では不透明であるが、透明であってもよい。プレス部材4が透明であれば、プレス部材4の上方からプレス部材4の下方の様子を確認できる。
プレス部材4の下面の表面張力が小さいほど、プレス部材4の下面と原料液層Aとの吸着力が小さく、プレス部材4を原料液層Aから取り外しやすい。プレス部材4と原料液層Aとの吸着力は、プレス部材4の下面の表面張力の他に、原料液層Aの表面張力にも依存し、プレス部材4の下面に対する原料液の接触角が大きいほど、吸着力が小さい。
なお、本実施形態では、原料液層Aをゲル化する前に、プレス部材4を原料液層Aから取り外すが、原料液層Aをゲル化した後に、ゲル層Cからプレス部材4を取り外してもよい。後者の場合も、プレス部材4の下面の表面張力が小さいほど、プレス部材4の下面と原料液層Aとの吸着力が小さいので、その原料液層Aをゲル化して得られるゲル層Cからプレス部材4を取り外しやすい。
プレス部材4の下面の材質は、その表面張力を低減すべく、例えばフッ素樹脂であってもよい。プレス部材4は、全体がフッ素樹脂で形成されたものでもよいし、金属などの母材にフッ素樹脂がコーティングされたものでもよい。コーティング剤として、フッ素樹脂の他に、撥水コーティング剤、又は撥油コーティング剤も使用可能である。
プレス部材4は、単層構造でもよいが、本実施形態では複数層構造である。図1A及び図1Bに示すように、プレス部材4は、原料液層Aの上面に接する可撓性シート41と、可撓性シート41を上方から平坦に保持する剛性板42とを含む。剛性板42と可撓性シート41は、接着剤、アンカー効果、水素結合、表面張力、静電気などによって接着していてもよい。また、可撓性シート41を原料液層Aの上に密度差あるいは表面張力で浮かべた後で、可撓性シート41の上に剛性板42を載せてもよい。
可撓性シート41は、可撓性を有するものであれば特に限定されないが、原料液層Aの上面に接するので、その表面張力を低減すべく、例えばフッ素樹脂シートであってよい。一方、剛性板42は、可撓性シート41を上方から平坦に保持すべく、変形しないものであれば特に限定されない。なお、剛性板42と可撓性シート41との間には、更に別の部材が配置されてもよい。
詳しくは後述するが、図4Bに示すように、プレス部材4を原料液層Aに載せる際には、剛性板42が可撓性シート41を上方から平坦に保持するので、プレス部材4で原料液層Aを平坦に押さえられる。
また、図4Cに示すように、プレス部材4を持ち上げ原料液層Aから取り外す際には、先ず、剛性板42を持ち上げ可撓性シート41から取り外す。次いで、可撓性シート41を曲げ、可撓性シート41を原料液層Aの上面の一端から他端に向けて徐々に引き剥がす。可撓性シート41を徐々に引き剥がすので、原料液層Aにかかる応力を低減でき、原料液層Aの形状崩れを抑制できる。
なお、原料液層Aをゲル化した後に、ゲル層Cからプレス部材4を取り外す場合も、同様に、剛性板42を可撓性シート41から取り外し、次いで、可撓性シート41を曲げ、可撓性シート41をゲル層Cの上面の一端から他端に向けて徐々に引き剥がしてよい。ゲル層Cに係る応力を低減でき、ゲル層Cの形状崩れを抑制できる。
なお、プレス部材4が単層構造であって剛性板42のみを含む場合、プレス部材4の下面が水平のままでプレス部材4を持ち上げるのではなく、プレス部材4の下面が傾斜するようにプレス部材4を持ち上げてよい。後者の場合、前者の場合に比べて、原料液層Aにかかる応力を低減でき、原料液層Aの形状崩れを抑制できる。
ところで、プレス部材4が原料液層Aの上に載置されると、原料液層Aがプレス部材4に隠れ、上から確認できない。そこで、型枠21の側面に貫通穴が形成され、その貫通穴に透明部材23が嵌め込まれてよい。透明部材23は、原料液層Aの側方に設けられる。透明部材23を介して横から原料液層Aを確認できる。確認は、人間の目で行われてもよいし、カメラで行われてもよい。
透明部材23は、例えば、原料液層Aとベース液層Bとの界面よりも下方に突出し、且つ、原料液層Aの上面よりも上方に突出するように、配置される。ベース液層Bの液面の高さと、原料液層Aの厚みを確認できる。透明部材23は、原料液層Aの上に載置されたプレス部材4よりも更に上方に突出するように、配置されてもよい。プレス部材4の動きが正常か否かを確認できる。
透明部材23の材質は、型枠21の材質と同様に、原料液及びベース液によって変質や膨潤せず、且つ原料液層A及びベース液層Bと互いに反応しないものであれば特に限定されず、樹脂、ガラスなどのいずれでもよい。
なお、型枠21が透明であってもよく、その場合、透明部材23は不要である。透明部材23は、型枠21が不透明である場合に設けられる。
プレス部材4の外周と、型枠21の内周との間には、図4Bに示すように隙間Sが存在してよい。隙間Sが存在すると、プレス部材4が昇降する時に、型枠21からの摩擦抵抗を低減でき、プレス部材4を円滑に昇降できる。また、隙間Sが存在すると、プレス部材4が昇降する時に、空気が抜けやすい。隙間Sが存在しても、原料液層Aの表面張力によって、原料液層Aを型枠21の内周全体に接することは可能である。
プレス部材4の上面には、搬送用の取っ手などが設けられてよい。プレス部材4を型枠21の外部から内部に押し込む作業、及びプレス部材4を型枠21の内部から外部に引き抜く作業が容易である。これらの作業は、人間によって実施されてもよいが、機械によって実施されてもよい。
図1A及び図1Bに示すように、製造装置1は、プレス部材4を搬送する搬送部5を有してもよい。搬送部5は、例えば搬送ロボットであって、プレス部材4を型枠21の外部から内部に押し込み、また、プレス部材4を型枠21の内部から外部に引き抜く。これらの作業を自動で実施できる。
図1Bに示すように、製造装置1は、薄化した原料液層Aを、ベース液層Bの液面の上でゲル化するゲル化促進部6を含む。ゲル原料が(1A)シラン化合物と(1B)触媒とを含むものである場合、原料液層Aのゲル化は、加熱によって行われる。シラン化合物は、酸触媒などで加水分解され、シラノール基(Si-OH)を有するゾルになる。ゾルが加熱されると、シラノール基同士が分子間で脱水縮合反応しSi-O-Si結合を形成し、原料液層Aがゲル化される。
ゲル化促進部6は、例えば、原料液層Aを加熱する加熱器61を有する。加熱器61は、収容部2の外部に配置されてもよいし、内部に配置されてもよいし、外部と内部の両方に配置されてもよい。
加熱器61は、収容部2の内部に配置される場合、例えばベース液層Bの内部に配置され、ベース液層Bを加熱することで、原料液層Aを下方から加熱する。また、加熱器61は、収容部2の外部に配置される場合、原料液層Aの上方、側方、及び下方のうちの少なくとも1箇所に配置されればよい。加熱器61は、原料液層Aを上下両側から加熱するように配置されることが好ましい。また、加熱器61は、原料液層Aの外周全体を側方から加熱するように配置されることが好ましい。
加熱器61の加熱方式は、特に限定されないが、例えば、抵抗加熱式、赤外線加熱式、及びアーク加熱式などのなかから、加熱器61の設置場所に応じて適宜選択される。
なお、原料液層Aをゲル化させる手段は、加熱器には限定されず、ゲル原料の種類に応じて適宜選択される。
例えば、ゲル原料が熱可塑性樹脂である場合、原料液層Aをゲル化させる手段は、冷却器である。冷却器は、ベース液層Bの上で原料液層Aを冷却し、原料液層Aをゲル化させる。冷却器も、加熱器と同様に、配置され、制御されてよい。冷却器による強制冷却の代わりに、自然冷却が実施されてもよい。
また、ゲル原料が光硬化性樹脂である場合、原料液層Aをゲル化させる手段は、光源である。光源は、ベース液層Bの上に存在する原料液層Aに対して紫外線等の光を照射し、光硬化性モノマーを硬化し、原料液層Aをゲル化する。光源も、加熱器と同様に、配置され、制御されてよい。光が原料液層Aに達するようにプレス部材4などは透明な材質であってよい。
また、ゲル原料が熱硬化性樹脂である場合、原料液層Aをゲル化させる手段は、加熱器である。
また、ゲル原料が多糖類ナノファイバーである場合、多糖類ナノファイバーは酸触媒又は塩基触媒に接触すると、短時間でゲル化する。従って、原料液は、多糖類ナノファイバーを含み、酸触媒又は塩基触媒を含まなくてよい。酸触媒又は塩基触媒は、ベース液層Bの上に形成された原料液層Aに対して、上方からシャワー状に供給されてよい。この場合、原料液層Aをゲル化させる手段は、原料液層Aに対して上方から酸触媒又は塩基触媒を供給する供給器である。なお、この場合、プレス部材4を原料液層Aの上から取り除いた後で、酸触媒又は塩基触媒を供給することが好ましい。
原料液層Aのゲル化の最終段階では、硬化収縮が生じるので、その硬化収縮によってゲル層Cの外周が型枠21から剥離されてもよい。ゲル層Cの大きさが型枠21の開口部の大きさよりも小さくなるので、ゲル層Cを型枠21から取り出すのが容易である。
ところで、ベース液層Bの液面の上で原料液層Aをゲル化する過程で、原料液層Aが硬化収縮し、ゲル層Cの内部から溶媒が押し出されることがある。溶媒そのものは蒸発しやすいが、溶媒に溶けている触媒又は界面活性剤が溶媒の蒸発を抑えてしまう。その結果、ゲル層Cの内部から押し出された溶媒は、ゲル層Cをベース液層Bの液面の上から取り出した後も、その液面の上に溜まり、次回以降の原料液層Aの形成又はゲル化を阻害し得る。
そこで、製造装置1は、ゲル層Cをベース液層Bの液面の上から取り出した後、その液面の上に溜まる原料液の溶媒を除去すべく、図2A及び図2Bに示すように、収容部2の内部にベース液を供給してもよい。ベース液の供給によってベース液層Bの厚みが図2Aに示す厚みから図2Bに示す厚みに厚くなるので、ベース液層Bの液面の上に溜まった液体が収容部2の上端からあふれ出し、除去される。この動作は、定期的に行われてよい。
製造装置1は、収容部2の内部にベース液を供給するベース液供給部7を有する。ベース液供給部7は、例えば、ベース液を一時的に貯留する貯留槽71と、貯留槽71から供給されるベース液を収容部2の内部に供給する供給ノズル72とを含む。供給ノズル72は、ベース液層Bの液面の上に溜まる原料液の溶媒と、新たに供給するベース液との混合を防止すべく、ベース液層Bの液面よりも下にベース液を吐出する。
ベース液供給部7は、貯留槽71と供給ノズル72とを接続する供給ライン73の途中に、ベース液を送る供給ポンプ74を含む。供給ポンプ74を作動させると、供給ノズル72がベース液を吐出する。一方、供給ポンプ74の作動を停止させると、供給ノズル72がベース液の吐出を停止する。
ベース液供給部7は、例えばベース液層Bの液面が収容部2の上端のうちの最も低い部位と同じ高さ以上になるまで、ベース液を収容部2の内部に供給する。収容部2の上端は、特定の部位から液体があふれ出すように、一部の高さが残部の高さよりも低くなっている。つまり、収容部2の上端の一部には切欠きNが形成されており、その切欠きNから液体があふれ出す。
製造装置1は、収容部2の周辺を清浄に保つべく、収容部2の上端からあふれ出した液体を回収する回収部8を有してよい。回収部8は、収容部2の上端のうちの特定の部位からあふれ出した液体を回収する。回収した液体は、複数の成分を含むので、廃棄されてもよいし、精製された後、リサイクルされてもよい。
製造装置1は、ベース液層Bの厚みを元の厚みに戻すべく、ベース液層Bからベース液を排出する排液ライン75と、排液ライン75の途中に設けられる開閉バルブ76とを有してよい。開閉バルブ76が開放されると、ベース液層Bからベース液が排出され、ベース液層Bの厚みが元の厚みに戻る。排出されたベース液は、廃棄されてもよいし、リサイクルされてもよい。
なお、供給ポンプ74が両方向にベース液を送るものである場合、供給ノズル72がベース液層Bからベース液を排出し、貯留槽71に送り返すことも可能である。この場合、排液ライン75及び開閉バルブ76は、不要である。
なお、原料液層Aの硬化収縮の大きさはゲルの種類毎に異なるので、ゲル層Cの内部から押し出される溶媒の量もゲルの種類毎に異なる。従って、ベース液供給部7及び回収部8等は、不要な場合もあり、ゲルの種類に応じて設置されればよい。
(ゲルの製造方法)
図3に示すように、ゲルの製造方法は、例えば、原料液層Aの形成(S1)と、プレス部材4の載置(S2)と、プレス部材4の取り外し(S3)と、原料液層Aのゲル化(S4)と、を有する。なお、図3に示す処理の順番は特に限定されない。例えば、上記の通り、原料液層Aのゲル化(S4)の後で、プレス部材4の取り外し(S3)が行われてもよい。
図3に示すように、ゲルの製造方法は、例えば、原料液層Aの形成(S1)と、プレス部材4の載置(S2)と、プレス部材4の取り外し(S3)と、原料液層Aのゲル化(S4)と、を有する。なお、図3に示す処理の順番は特に限定されない。例えば、上記の通り、原料液層Aのゲル化(S4)の後で、プレス部材4の取り外し(S3)が行われてもよい。
原料液層Aの形成(S1)では、例えば図4Aに示すように、ベース液層Bの液面の一部に原料液層Aを形成する。原料液層Aは、図4Aでは型枠21の内周全体から離れているが、ベース液層Bの液面の一部に形成されればよく、型枠21の内周一部のみに接していてもよい。
図4Aに示すように、型枠21の内周全体から原料液層Aが離れている時、原料液層Aの厚みHAは平衡厚みHA0になる。この時、原料液層Aの外周全体にて、第1内向き力F1と、第1外向き力F2とが釣り合う。
第1内向き力F1は、原料液層Aの表面張力によって生じ、原料液層Aを内向きに縮め、原料液層Aの厚みHAを厚くする。一方、第1外向き力F2は、重力によって生じ、原料液層Aを外向きに広げ、原料液層Aの厚みHAを薄くする。第1外向き力F2は、重力によって生じるので、原料液層Aの厚みHAに依存する。厚みHAが厚いほど、第1外向き力F2が大きい。
図4Aに示す状態から、外乱によって原料液層Aの厚みHAが平衡厚みHA0よりも大きくなると、第1外向き力F2が第1内向き力F1よりも大きくなるので、原料液層Aが外向きに広がり、原料液層Aの厚みHAが薄くなり平衡厚みHA0に戻る。
一方、図4Aに示す状態から、外乱によって原料液層Aの厚みHAが平衡厚みHA0よりも小さくなると、第1外向き力F2が第1内向き力F1よりも小さくなるので、原料液層Aが内向きに縮まり、原料液層Aの厚みHAが厚くなり平衡厚みHA0に戻る。
従って、型枠21の内周全体から原料液層Aが離れている時、原料液層Aの厚みHAは平衡厚みHA0になる。
プレス部材4の載置(S2)では、例えば図4Bに示すように、原料液層Aの上にプレス部材4を載せ、プレス部材4によって原料液層Aを押し広げ、平衡厚みHA0よりも薄化する。薄化前の原料液層Aの厚みHAは、図4Aに示すように平衡厚みHA0以上である。また、原料液層Aの外周全体が型枠21に接する。
図4Bに示すように、原料液層Aの上にプレス部材4が載せられると、プレス部材4の重さで原料液層Aが押し広げられるので、原料液層Aの外周全体に第2外向き力F3が作用する。第2外向き力F3は、プレス部材4の重さWによって生じるので、プレス部材4の重さWに依存する。プレス部材4の重さWが重いほど、第2外向き力F3が大きい。
また、図4Bに示すように、型枠21の内周全体に原料液層Aが接している時、原料液層Aの外周全体が型枠21に吸着され、その吸着によって第3外向き力F4が生じる。第3外向き力F4は、吸着によって生じるので、原料液層Aと型枠21との接触面積、換言すると、原料液層Aの厚みHAに依存する。厚みHAが厚いほど、第3外向き力F4が大きい。
なお、図4Bに示すように、第1外向き力F2と第2外向き力F3と第3外向き力F4との合力が第1内向き力F1よりも大きい場合、型枠21が原料液層Aを押し返し、その押し返しによって第2内向き力F5が生じる。第2内向き力F5は、力の釣り合いを保つべく生じ、換言すれば、帳尻合わせのために生じるので、ゼロであってもよい。
プレス部材4の取り外し(S3)では、例えば図4Cに示すように、プレス部材4を原料液層Aから取り外す。プレス部材4を持ち上げ原料液層Aから取り外す際には、例えば、先ず、剛性板42を持ち上げ可撓性シート41から取り外す。次いで、可撓性シート41を曲げ、可撓性シート41を原料液層Aの上面の一端から他端に向けて徐々に引き剥がす。可撓性シート41を徐々に引き剥がすので、原料液層Aにかかる応力を低減でき、原料液層Aの形状崩れを抑制できる。
プレス部材4を取り外すと、第2外向き力F3が消えるが、第3外向き力F4が生じたままであるので、原料液層Aの厚みHAを平衡厚みHA0よりも薄い状態に維持できる。第3外向き力F4が原料液層Aの外周全体に作用するように、原料液層Aの外周全体が型枠21の内周全体に接する。
なお、原料液層Aは型枠21の内周全体に完全に接しなくてもよく、プレス部材4を取り外す際に原料液層Aが破れない程度に、原料液層Aが型枠21の内周全体に実質的に接すればよい。言い換えると、プレス部材4を取り外す際に原料液層Aが破れない程度に、原料液層Aの外周全体が型枠21に実質的に接すればよい。原料液層Aと型枠21の界面に小さな泡がある程度であれば、プレス部材4を取り外す際に原料液層Aは破れない。また、系の揺らぎで直ぐに埋められる程度の隙間は許される。
但し、原料液層Aの厚みHAが薄くなるほど、上記の通り、第3外向き力F4が小さくなる。第1外向き力F2も同様である。第1外向き力F2と第3外向き力F4との合力が第1内向き力F1以上となるように、原料液層Aの厚みHAが設定される。仮に上記合力が第1内向き力F1よりも小さくなると、力のバランスが崩れ、原料液層Aが破れてしまうからである。
型枠21の表面張力が大きいほど、型枠21の側面に原料液層Aが吸着されやすいので、第3外向き力F4が大きく、原料液層Aをより薄化できる。第3外向き力F4は型枠21の表面張力の他に原料液層Aの表面張力にも依存し、型枠21に対する原料液の接触角が小さいほど、濡れ性が良いので、第3外向き力F4が大きくなる。上記接触角は、好ましくは90°未満である。型枠21の材質が樹脂である場合、樹脂の中では、ナイロンやポリエステル等が、表面張力が高いので、原料液層Aの薄化に好適である。
また、図5に示すように、型枠21の側面のうち、少なくとも原料液層Aと接触する部位に、凹凸211が形成されてもよい。凹凸211の形状は、図5では三角波状であるが、矩形波状又は正弦波状でもよく、特に限定されない。凹凸211によって型枠21と原料液層Aとの接触面積を増大でき、吸着によって生じる第3外向き力F4を増大できるので、厚みHAを更に薄くできる。
但し、図5に示すように、型枠21の側面に凹凸211が形成される場合、凹凸211の形状がゲル層Cの側面に転写される。図4Bに示すように、型枠21の側面に凹凸211が無ければ、ゲル層Cの側面が滑らかになる。
なお、ゲル層Cは底蓋22とは接触しないので、底蓋22の上面の形状がゲル層Cの下面に転写されることは無い。従って、底蓋22の上面の粗さが問題になることはなく、型枠21で囲まれる底蓋22の上面を滑らかにする特殊な加工が不要である。
原料液層Aのゲル化(S4)では、プレス部材4を取り外した状態で、原料液層Aをベース液層Bの液面の上でゲル化する。ゲル化の手段は、上記の通り、ゲル原料の種類に応じて適宜選択される。
本実施形態によれば、原料液層Aのゲル化(S4)の前にプレス部材4の取り外し(S3)が行われるので、原料液層Aの上面が自然に水平になり、平坦で厚みの均一なゲル層Cが得られる。また、プレス部材4の下面の表面形状がゲル層Cに転写されるのを防止できる。
また、本実施形態によれば、原料液層Aのゲル化(S4)の前にプレス部材4の取り外し(S3)が行われるので、原料液層Aの外周全体が型枠21に接するように、プレス部材4が原料液層Aを押し広げる。プレス部材4の取り外しによって第2外向き力F3が消えても、第3外向き力F4が残るので、原料液層Aの厚みHAを平衡厚みHA0よりも薄い状態に維持できる。
なお、本実施形態では原料液層Aのゲル化(S4)の前にプレス部材4の取り外し(S3)が行われるが、上記の通り、プレス部材4の取り外し(S3)の前に原料液層Aのゲル化(S4)が行われてもよい。
S3の前にS4が行われる場合、プレス部材4が載置された状態で、原料液層Aがベース液層Bの液面の上でゲル化される。ゲル化時に第2外向き力F3が残ったままであるので、第2外向き力F3と第3外向き力F4の両方を利用でき、原料液層Aの厚みHAをより薄くできる。
但し、プレス部材4を載せた状態で、原料液層Aをベース液層Bの液面の上でゲル化する場合、図6に示すように、原料液層Aの外周全体が型枠21から離れていてもよい。この場合、上記の通り、ゲル化時に第2外向き力F3が残ったままであるので、第3外向き力F4が発生しなくても、原料液層Aの厚みHAを平衡厚みHAよりも薄化できる。
また、S3の前にS4が行われる場合、プレス部材4が取り外される前に、原料液層Aがゲル化され、固化される。ゲル層Cは原料液層Aに比べて固いので、プレス部材4の取り外し時の形状崩れを抑制できる。
図7に示す製造方法は、図3に示す製造方法とは異なり、プレス部材4の載置(S2)の後に、原料液層Aの形成(S1)を行う。
プレス部材4の載置(S2)では、図8Aに示すように、ベース液層Bにプレス部材4を浮かべる。プレス部材4はベース液層Bに接しており、プレス部材4とベース液層Bとの間に原料液層Aは存在しない。
原料液層Aの形成(S1)では、図8Bに示すように、プレス部材4を浮かべたベース液層Bの内部に原料液を供給する。原料液の密度はベース液の密度よりも低いので、原料液はベース液層Bの内部からベース液層Bの液面に浮上し、ベース液層Bとプレス部材4との間に、原料液層Aが形成される。
原料液供給部3の吐出ノズル32は、図8Bに示すように型枠21を水平に貫通する貫通穴に挿入されてもよいし、底蓋22を鉛直に貫通する貫通穴に挿入されてもよい。いずれにしろ、吐出ノズル32は、ベース液層Bの液面よりも下方から原料液を吐出する。
型枠21の側面の貫通穴に透明部材23が嵌め込まれる場合、透明部材23はベース液層Bの液面よりも上方に突出し、且つ、吐出ノズル32の吐出口321よりも下方に突出するように配置されてよい。原料液が吐出口321から吐出されてからベース液層Bの液面まで浮上するのを、透明部材23を介して確認できる。
原料液層Aがベース液層Bとプレス部材4との間に形成されると、プレス部材4が上に持ち上げられる。プレス部材4と原料液層Aとの間に空気層はなく、原料液層Aの上にプレス部材4が載置される。原料液層Aは、その上に載置されるプレス部材4によって、ベース液層Bの液面に押し付けられる。従って、原料液層Aの厚みHAを平衡厚みHA0よりも薄くできる。
なお、図7では、プレス部材4の取り外し(S3)の後に、原料液層Aのゲル化(S4)を実施するが、図3の説明で述べたように、原料液層Aのゲル化(S4)の後に、プレス部材4の取り外し(S3)を実施してもよい。
図9に示すように、ゲルの製造方法は、例えば、ゲル層Cの取り出し(S5)と、ゲル層Cの溶媒置換(S6)と、ゲル層Cの乾燥(S7)と、を有する。
なお、ゲルの製造方法は図9に示す処理を全て含まなくてもよく、例えば原料液の溶媒が乾燥(S7)に適したものである場合、溶媒置換(S6)が実施されなくてもよい。また、ゲルの製造方法は、図9に示す処理とは別の処理を含んでもよい。
取出(S5)では、ゲル層Cを、ベース液層Bから持ち上げ、型枠21から取り出す。ゲル化(S4)の最終段階で、原料液層Aの硬化収縮の大きさが大きければ、ゲル層Cの外周が型枠21から剥離されるので、図10のように収容部2を傾けることは不要であり、ゲル層Cを容易に取り出せる。
図10に示すように、ゲル層Cがベース液層Bの上に存在する状態で、収容部2を傾けると、ベース液層Bの液面が水平になろうとするので、ゲル層Cが図10に二点鎖線で示す状態から図10に実線で示す状態になり、型枠21に対して上下にずれ、ゲル層Cが型枠21から剥離する。また、収容部2を傾けると、ベース液層Bの液面の面積が広くなるのに対し、ゲル層Cの下面の面積は変わらないので、ゲル層Cが型枠21から剥離する。このように、収容部2を傾ければ、ゲル層Cを型枠21から剥離する時に、無理な力をゲル層Cにかけずに済み、また、ゲル層Cを容易に取り出せる。
図11に示すように、収容部2は、型枠21の他に、型枠21を収容する容器24と、型枠21の下に設置される支持板25と、支持板25を支持する支持棒26とを有してもよい。支持板25は図1A及び図1Bに示す底蓋22に代えて用いられ、支持板25の上に型枠21が分離可能に載置される。
容器24は、底板241と、底板241の周縁全体から上方に延びる側板242とを含む。容器24の内部にはベース液層Bが形成され、ベース液層Bの液面の一部を型枠21が囲む。型枠21は容器24の側板242から離して配置される。
原料液層Aは、型枠21の内側に形成され、型枠21の外側には形成されない。型枠21は、原料液層Aとベース液層Bとの界面よりも下方に突出し、且つ原料液層Aの上面よりも上方に突出する。
支持板25は、ベース液層Bの液面の上に原料液層Aを形成する前に、ベース液層Bと原料液層Aの界面よりも下に設置される。支持板25は、ベース液層Bからゲル層Cを持ち上げる際にゲル層Cを下方から支持する。支持板25がゲル層Cを下方から支持するので、重力によってゲル層Cが割れるのを抑制できる。
支持板25は、支持板25の表裏面を貫通する貫通穴Hを、支持板25の主面方向に間隔をおいて複数有してもよい。支持板25としては、例えばパンチングメタル又は金網等が用いられる。ベース液層Bからゲル層Cを持ち上げる際に、支持板25の上方に存在するベース液が貫通穴Hを通り、支持板25の下方に抜ける。従って、支持板25とゲル層Cとが直接接触するので、ゲル層Cの滑りを摩擦によって抑制でき、ゲル層Cの支持板25からの落下を抑制できる。
ゲル化(S4)の最終段階で、原料液層Aの硬化収縮の大きさが小さく、ゲル層Cの外周が型枠21から剥離しない場合、型枠21を複数の部品に分解してゲル層Cから取り外すことができる。型枠21は容器24の側板242から離して配置されるので、側板242と型枠21との間に、型枠21を複数の部品に分解する作業スペースを確保できるからである。
一方、ゲル化(S4)の最終段階で、原料液層Aの硬化収縮の大きさが大きく、ゲル層Cの外周が型枠21から剥離する場合、型枠21を複数の部品に分解してもよいが、分解しなくても、ゲル層Cから型枠21を取り外すことができる。
ゲル層Cから型枠21を取り外した後、支持棒26を引き上げれば、支持板25でゲル層Cを支持できる。その状態で、支持板25とゲル層Cとを、容器24とは別の容器に貯留された溶媒中に浸漬し、溶媒置換(S6)を実施してもよい。この場合に、支持板25が貫通穴Hを有すれば、ゲル層Cの表裏面側から溶媒置換を実施できる。
但し、溶媒置換(S6)は、容器24の内部でも実施可能である。その場合、容器24の内部は一旦空にされ、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒と置換される溶媒が容器24の内部に貯留される。ゲル層Cの内部に含まれる溶媒が水である場合、水と置換される溶媒は通常水よりも低い密度を有するので、水と置換される溶媒中にゲル層Cが沈み、溶媒置換が効率的に行われる。この場合も、支持板25が貫通穴Hを有すれば、ゲル層Cの表裏面側から溶媒置換を実施できる。
溶媒置換(S6)では、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒を別の溶媒に置換する。ゲル層Cは、微細な多孔質体であり、内部に溶媒を含む。溶媒置換(S6)は、乾燥(S7)の前に実施され、乾燥時に溶媒の表面張力によってゲル層Cが収縮するのを抑制し、ゲル層Cの微細構造が破損するのを抑制する目的で実施される。
溶媒置換では、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒を、ゲル化に適した溶媒(つまり、原料液の溶媒)から、乾燥に適した溶媒に置換する。置換後の溶媒は、乾燥方法に応じて適宜選択される。乾燥方法としては、超臨界乾燥、凍結乾燥、又は常圧乾燥が用いられる。
超臨界乾燥は、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒を、超臨界流体に置換する。超臨界乾燥に適した溶媒として、例えばメタノール、エタノール、又はイソプロピルアルコールなどが用いられる。超臨界流体として、一般的に、超臨界状態の二酸化炭素ガスが用いられる。超臨界乾燥は、密閉式の高圧容器の内部で実施される。
凍結乾燥は、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒を凍結した後で、真空中で蒸発させる。通常これを、昇華と呼ぶ。凍結乾燥に適した溶媒として、水、tert-ブチルアルコール、シクロヘキサン、1,4-ジオキサン、又はフッ素系溶媒等が用いられる。凍結乾燥は、密閉式の真空容器の内部で実施される。
常圧乾燥は、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒を、常圧下で蒸発させる。溶媒蒸発に伴う毛細管力によるゲル層Cの微細骨格の収縮力を小さくすることが重要なので、常圧乾燥に適した溶媒としては、表面張力の小さな溶媒、例えばヘキサン若しくはヘプタンなどの低分子量の脂肪族炭化水素系の溶媒、又はフッ素系溶媒が用いられる。常圧乾燥は、常圧で行われるので、密閉式の容器が不要である。
溶媒置換は、溶媒の沸騰によってゲル層Cの微細構造が破損するのを抑制すべく、溶媒の沸点以下の温度で実施される。但し、溶媒の置換効率を高めるべく、溶媒を沸点以下の温度で加熱してもよい。加熱温度は、例えば40℃~100℃である。
溶媒の置換回数は、本実施形態では1回であるが、複数回であってもよい。つまり、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒は、原料液の溶媒から、第1溶媒に置換され、更に第2溶媒に置換されてもよい。
原料液の溶媒と第2溶媒との相溶性が低い場合には、置換効率が悪くなるので、その間に一旦、第1溶媒での置換を導入することで、原料液の溶媒から第2溶媒への置換にかかる時間を短縮できる。第1溶媒としては、原料液の溶媒と第2溶媒との両方に対し高い相溶性を有するものが用いられる。
なお、原料液の溶媒が乾燥に適したものである場合、溶媒置換は不要である。
乾燥(S7)では、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒を除去する。ゲル層Cの乾燥方法としては、上記の通り、超臨界乾燥、凍結乾燥、又は常圧乾燥が用いられる。これらの中でも、常圧乾燥は、密閉式の容器が不要である点で優れている。
常圧乾燥は、溶媒の沸騰によってゲル層Cの微細構造が破損するのを抑制すべく、溶媒の沸点以下の温度で実施される。但し、溶媒の除去効率を高めるべく、ゲル層Cを沸点以下の温度で加熱してもよい。ゲル層Cの乾燥温度は、例えば室温~100℃である。
常圧乾燥では、ゲル層Cに対して風を送ることで、ゲル層Cの内部に含まれる溶媒の蒸発を促進できる。常圧乾燥で蒸発させた溶媒は、回収され、廃棄又は必要に応じてリサイクルされる。
乾燥後に得られるゲル層Cは、キセロゲルであり、多孔質なモノリスである。
乾燥(S7)は、支持板25でゲル層Cを支持した状態で、実施されてもよい。この場合に、支持板25が貫通穴Hを有すれば、ゲル層Cの表裏面側から溶媒を除去できる。
以上、本開示に係るゲルの製造方法、及びゲルの製造装置について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
1 製造装置
21 型枠
3 原料液供給部
4 プレス部材
41 可撓性シート
42 剛性板
6 ゲル化促進部
A 原料液層
B ベース液層
C ゲル層
21 型枠
3 原料液供給部
4 プレス部材
41 可撓性シート
42 剛性板
6 ゲル化促進部
A 原料液層
B ベース液層
C ゲル層
Claims (15)
- ゲルの原料液で形成される原料液層を、前記原料液層よりも高密度のベース液層の型枠で外周を囲まれる液面に、前記原料液層の上に配置されるプレス部材で押し付け、前記原料液層を平衡厚み未満の厚みに薄化し、
前記プレス部材によって前記ベース液層の液面に押し付けた前記原料液層を、前記ベース液層の液面の上でゲル化する、
ゲルの製造方法。 - 前記ベース液層の液面の上方から前記原料液を供給し、前記ベース液層の液面の一部に前記原料液層を形成し、前記原料液層の上に前記プレス部材を載せ、前記プレス部材によって前記原料液層を押し広げる、請求項1に記載の方法。
- 前記ベース液層に前記プレス部材を浮かべ、前記プレス部材を浮かべた前記ベース液層の内部に前記原料液を供給し、前記プレス部材と前記ベース液層との間に前記原料液層を形成する、請求項1に記載の方法。
- 前記プレス部材を載せた状態で、前記原料液層を前記型枠の内周全体に接し、前記型枠の内周全体に接した後の前記原料液層から前記プレス部材を取り外し、前記プレス部材を取り外した状態で、前記原料液層を前記ベース液層の液面の上でゲル化する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記プレス部材を載せた状態で、前記原料液層を前記ベース液層の液面の上でゲル化する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記プレス部材は、前記原料液層の上面に接する可撓性シートと、前記可撓性シートを上方から平坦に保持する剛性板とを含み、前記剛性板を前記可撓性シートから取り外し、次いで、前記可撓性シートを曲げ、前記可撓性シートを前記原料液層の上面の一端から他端に向けて徐々に引き剥がす、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記ベース液層は、フッ素原子を有する液状化合物である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記原料液層をゲル化して得られるゲル層を、前記ベース液層から持ち上げる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記ベース液層の前記液面の上に前記原料液層を形成する前に、前記ベース液層と前記原料液層の界面よりも下に、前記ベース液層から前記ゲル層を持ち上げる際に前記ゲル層を下方から支持する支持板を設置する、請求項8に記載の方法。
- 前記原料液層をゲル化して得られるゲル層の内部に含まれる溶媒を、別の溶媒に置換する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
- 前記原料液層をゲル化して得られるゲル層の内部に含まれる溶媒を、除去する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
- ゲルの原料液よりも高密度のベース液層の液面の外周を囲む型枠と、
前記型枠の内側に前記原料液を供給し、前記ベース液層の液面の上に原料液層を形成する原料液供給部と、
前記原料液層の上方から前記原料液層を前記ベース液層の液面に押し付け、前記原料液層を平衡厚み未満の厚みに薄化するプレス部材と、
前記プレス部材によって前記ベース液層の液面に押し付けた前記原料液層を、前記ベース液層の液面の上でゲル化させるゲル化促進部と、
を有する、ゲルの製造装置。 - 前記プレス部材は、前記原料液層の上面に接する可撓性シートと、前記可撓性シートを上方から平坦に保持する剛性板とを含む、請求項12に記載の装置。
- 前記ベース液層と前記原料液層の界面よりも下に、前記原料液層をゲル化して得られるゲル層を前記ベース液層から持ち上げる際に前記ゲル層を下方から支持する支持板を有する、請求項12又は13に記載の装置。
- 前記支持板は、前記支持板の表裏面を貫通する貫通穴を、前記支持板の主面方向に間隔をおいて複数有する、請求項14に記載の装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2019132668A JP2022126894A (ja) | 2019-07-18 | 2019-07-18 | ゲルの製造方法、及びゲルの製造装置 |
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JP2019132668A JP2022126894A (ja) | 2019-07-18 | 2019-07-18 | ゲルの製造方法、及びゲルの製造装置 |
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Family Applications (1)
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JP2019132668A Pending JP2022126894A (ja) | 2019-07-18 | 2019-07-18 | ゲルの製造方法、及びゲルの製造装置 |
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JP2012055847A (ja) * | 2010-09-10 | 2012-03-22 | Seiko Epson Corp | ゲル製造装置及びゲル製造方法 |
EP3677618A4 (en) * | 2017-09-01 | 2021-05-26 | AGC Inc. | WET GEL AND XEROGEL PRODUCTION PROCESSES |
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