JP2022126119A - 樹脂射出成形用金型 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022126119000001
【課題】スプル部の断面積を大きくすることなく、コストを抑えつつ、冷却時間の短縮ならびにサイクルタイムが短縮できる樹脂射出成形用金型を提供する。
【解決手段】分割面PLを境として固定側型部Aと可動側型部Bとに二分され、固定側型部Aおよび可動側型部Bにて形成される製品部に溶融樹脂を充填して樹脂製品を成形する樹脂射出成形用金型100で、固定側型部Aは、溶融樹脂を射出充填する中空のスプル部9を備えたスプルブッシュ8を有し、スプル部9において溶融樹脂が射出充填される充填方向Xが長手方向Xとなる固化遅延ピン16を備え、固定側型部Aと可動側型部Bとが分割面PLにて密接されるとスプル部9内に固化遅延ピン16が挿入される。
【選択図】図1

Description

本願は、樹脂射出成形用金型に関するものである。
従来は、工業製品に用いられている多くの金属部品は、軽量化およびコストダウンの要求によって樹脂部品への置き換えが進んでいる。その樹脂部品の成形手段の1つである射出成形において、樹脂部品を効率よく成形するためには、”溶融樹脂の射出および保圧、冷却および計量、金型開閉、樹脂部品の突出しなどの工程で構成される一連の成形プロセスに要する時間(以下、当該時間のことをサイクルタイムと称す)”を短縮することが求められる。
樹脂部品の形状およびサイズ、使用する樹脂および要求される品質などにより左右されるため一概には言えないが、このサイクルタイムの中で特に時間を要する工程が、冷却工程である。冷却工程は、射出ユニット内部で高温に加熱溶融された樹脂が、金型温調機により30℃~150℃に調整された金型表面に接触するときの熱交換により冷却されて、固化する工程である。この冷却工程は、樹脂部品を金型に彫り込んだ形状を転写した状態で金型外に取り出すために不可欠な工程である。
高温で溶融した樹脂が金型内部に射出されるときに最初に通過するスプル部は、その時点から金型表面との間で熱交換が開始され、スプル部の冷却固化は経時的に進んでいく。このスプル部が完全に固化すると、その先に繋がっているランナ部、ゲート部、および樹脂部品形状を彫り込んだ製品部に溶融樹脂が充填されず、ショートまたはヒケと言ったあらゆる成形不良を引き起こす原因となる。
そのため、スプル部はランナ部などの他の部分に比べて樹脂断面積が大きくなるように設計することが一般的であり、その結果、金型内で最後に冷却固化が完了する冷却時間の律速部になることが多い。従って、サイクルタイムを短縮して、樹脂部品の生産性を向上するためには、スプル部の冷却時間を短縮する方法が効果的であり、例えば、従来、スプルブッシュの外側に冷却水の通路を設け、この通路を流れる冷却水によってスプル部の樹脂を冷却する。この構成により、スプル部の樹脂の冷却固化が促進されるため、サイクルタイムの短縮している(例えば、特許文献1参照)。
特開2011-218735号公報
従来の樹脂射出成形用金型は、スプルブッシュ内部に冷却水の通路を設けるため構造が複雑であり、製造コストが高くなるのに加えて、冷却水を循環するために新たなエネルギーが必要となりランニングコストも嵩む。また、射出および保圧工程中にスプル部の樹脂が冷却固化してしまわないように、スプル部の面積を通常よりも太くしておく必要があり、廃棄する樹脂材料が増加し製造コストが嵩むという問題点があった。
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、スプル部の断面積を大きくすることなく、コストを抑えつつ、冷却時間の短縮ならびにサイクルタイムが短縮できる樹脂射出成形用金型を提供することを目的とする。
本願に開示される樹脂射出成形用金型は、
分割面を境として固定側型部と可動側型部とに二分され、前記固定側型部および前記可動側型部が前記分割面で密接された状態で、前記固定側型部および前記可動側型部にて形成される製品部に溶融樹脂を充填して樹脂製品を成形する樹脂射出成形用金型において、
前記固定側型部は、外部から前記溶融樹脂を射出充填する中空のスプル部を備えたスプルブッシュを有し、
前記スプル部において前記溶融樹脂が射出充填される充填方向が長手方向となる固化遅延ピンを備え、前記固定側型部と前記可動側型部とが前記分割面にて密接されると前記スプル部内に前記固化遅延ピンが挿入されるものである。
本願に開示される樹脂射出成形用金型によれば、スプル部の断面積を大きくすることなく、コストを抑えつつ、冷却時間の短縮ならびにサイクルタイムが短縮できる。
実施の形態1による樹脂射出成形用金型の構成を示す断面図である。 図1に示した樹脂射出成形用金型の固化遅延ピンの構成を示す断面図である。 図2Aに示した樹脂射出成形用金型の固化遅延ピンのZ-Z線断面を示す断面図である。 図1に示した樹脂射出成形用金型を用いた樹脂成形プロセスを説明する断面図である。 図1に示した樹脂射出成形用金型を用いた樹脂成形プロセスを説明する断面図である。 図1に示した樹脂射出成形用金型を用いた樹脂成形プロセスを説明する断面図である。 図1に示した樹脂射出成形用金型を用いた樹脂成形プロセスを説明する断面図である。 図1に示した樹脂射出成形用金型を用いた樹脂成形プロセスを説明する断面図である。 図1に示した樹脂射出成形用金型を用いた樹脂成形プロセスを説明する断面図である。 図1に示した樹脂射出成形用金型の固化遅延ピンの他の例の構成を示した模式図である。 図1に示した樹脂射出成形用金型の固化遅延ピンの他の例の構成を示した模式図である。 図1に示した樹脂射出成形用金型の固化遅延ピンの他の例の構成を示した模式図である。 図1に示した樹脂射出成形用金型の固化遅延ピンの他の例の構成を示した模式図である。 図1に示した樹脂射出成形用金型の固化遅延ピンの他の例の構成を示した模式図である。 実施の形態2による樹脂射出成形用金型の構成を示す断面図である。 図14に示した樹脂射出成形用金型の固化遅延ピンの他の例の構成を示す断面図である。 実施の形態3による樹脂射出成形用金型の構成を示す断面図である。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による樹脂射出成形用金型(以下、金型と称す)100の構成を示す断面図である。図2Aは、図1に示した金型100の固化遅延ピン16の構成を示す断面図である。図2Bは、図2Aに示した金型100の固化遅延ピンのZ-Z線断面を示す断面図である。図3から図8は、図1に示した金型100を用いた樹脂成形プロセスを説明する断面図である。図3は、型閉じ工程を示した図である。図4は、射出充填、保圧、冷却工程を示した図である。図5は、型開き工程を示した図である。図6は、離型工程を示した図である。図7は取り出工程を示した図である。図8はエジェクタピン戻り工程を示した図である。図9から図13は図1に示した金型100の固化遅延ピンの他の構成を示した図である。
図1において、金型100は、分割面(一般的に、パーティングラインとも称す)PLにて二分される固定側型部Aと可動側型部Bとを備える。固定側型部Aおよび可動側型部Bの分割面PLが密接された状態で、固定側型部Aおよび可動側型部Bにて形成される製品部Cが形成される。金型100は、製品部Cに溶融樹脂を充填して樹脂製品を成形する。
固定側型部Aは、固定側取付板1、固定側型板2、スプル部9を有するスプルブッシュ8、製品部Cとしての固定側製品部12を備える。
可動側型部Bは、可動側型板3、スペーサブロック5、上エジェクタプレート6、下エジェクタプレート7、連通部としてのランナ部10、連通部としてのゲート部11、製品部Cとしての可動側製品部13、製品エジェクタピン14、ランナエジェクタピン15、固化遅延ピン16を備える。
可動側型部Bを設置する取付部Dとして、可動側取付板4、固定ボルト17、上固定プレート18、下固定プレート19、ボルト20を備える。
尚、近年は金型100の内部に樹脂温度、金型温度、速度、樹脂圧力などを測定できる各種センサを実装して、金型100内部における溶融樹脂の流動時、固化時の挙動を観察して、成形現象のメカニズム解明および樹脂部品の品質管理等に活用する取り組みが多方面で検討実施されている。この場合、可動側取付板4と下エジェクタプレート7の間に、例えば金属製のスペーサを挟むなどして、各種センサの配線が可動側取付板4と下エジェクタプレート7の間に挟み込まないように設計している場合が多い。そのため、可動側取付板4と下エジェクタプレート7が、必ずしも接触するように構成する必要はない。
固定側型板2と可動側型板3は、樹脂部品21の分割面PLを境として接触しており、可動側型板3の他端側の面はスペーサブロック5に接触して構成される。固定側取付板1および固定側型板2の内部には、スプルブッシュ8が内挿されている。スプルブッシュ8は、外部の図示しないシリンダ内部で加熱された溶融樹脂を金型100に導入するために取り付けられており、スプルブッシュ8の内部には中空の溶融樹脂の流路となるスプル部9が設けられている。
スプル部9において溶融樹脂が射出充填される方向を充填方向Xとし、入口側X1、出口側X2とする。スプル部9を通過した溶融樹脂は二方向に分流されたランナ部10に導入された後、ゲート部11を介して製品部Cとしての固定側製品部12および可動側製品部13に充填される。よって、ランナ部10とゲート部11は、製品部Cとスプル部9とを連通する連通部である。連通部は、スプル部9から製品部Cへの溶融樹脂の流れを良好に保つために設置されるものである。
尚、本実施の形態1では、一例として取り数2個、サイドゲートを利用した金型100を示しているが、取り数、ゲート方式は本実施の形態1に記載の条件に限定されるものではない。例えば、取り数が4個、8個、16個などさらに多数個取りの場合でもよいし、ピンゲートまたはサブマリンゲートなど射出成形機の離型動作に伴って自動で切断されるゲート方式を採用してもよい。
製品部Cとしての固定側製品部12および可動側製品部13は、樹脂部品21の外形状を規定するように彫り込まれており、図示しないシリンダの内部で加熱された溶融樹脂が、スプル部9、ランナ部10、ゲート部11を経て充填された後、図示しない温度調節機構により温度調節された固定側型板2および可動側型板3により冷却固化された後に、金型100から取り出すことで固定側製品部12および可動側製品部13の形状を有する樹脂部品21が成形できる。
可動側型板3は、固定側型板2およびスペーサブロック5と、対向する一面が接触して構成される。スペーサブロック5は、可動側型板3と可動側取付板4の間にて突き出し動作を行うための空間を保つために構成されており、スペーサブロック5により設けられた空間には上エジェクタプレート6および下エジェクタプレート7が設置される。上エジェクタプレート6と下エジェクタプレート7の2枚のエジェクタプレート6、7は一面を密接させた状態で螺合されている。
また、上エジェクタプレート6と下エジェクタプレート7の2枚のエジェクタプレート6、7の間には、製品エジェクタピン14およびランナエジェクタピン15が固定されている。ここで、固定側型板2および可動側型板3を構成する材料は特に限定されないが、例えば冷間金型用合金工具鋼(SKD(Steel Kogu Diceの略称)-11)、ステンレス鋼(SUS(Steel Use Stainlessの略称)-420、SUS-440)などの鋼材が用いられる。
図2は本実施の形態1によるスプル部9の固化遅延ピン16の機構を説明する構成図であり、金型100が閉じている状態を示している。スプルブッシュ8のスプル部9の内側に、固化遅延ピン16を内挿する。固化遅延ピン16は、スプル部9において溶融樹脂が射出充填される充填方向Xが長手方向Xとなる。固化遅延ピン16は、可動側型部Bを設置するための取付部Dの固定ボルト17に螺合され一体化して固定されるとともに、上エジェクタプレート6と下エジェクタプレート7の間に固定されたランナエジェクタピン15とランナ部10に面する一方の面が同一になるように内挿されている。このように固化遅延ピン16は、可動側型部Bに備えられる。固定ボルト17が固化遅延ピン16の固定部となる。
図2Aに示すように、固定側型部Aと可動側型部Bとが分割面PLにて密接されると、固化遅延ピン16は、固定側型部Aのスプルブッシュ8のスプル部9内に挿入される。また、固化遅延ピン16は、例えば円柱形状にて形成される。ここでは、図2Bに示すように、スプル部9の中心に沿って、固化遅延ピン16が配置される。尚、これに限られることはなく、固化遅延ピン16は、スプル部9内に溶融樹脂が射出充填できる箇所であればいずれの箇所に設置されていてもよい。
固定ボルト17は、可動側取付板4に嵌装する上固定プレート18と下固定プレート19の2枚のプレート18、19の間で固定されている。上固定プレート18と下固定プレート19の2枚のプレート18、19は、ボルト20により可動側取付板4を一体化構成される。固化遅延ピン16は熱伝導率の高い金属材料、例えばベリリウム銅合金またはアルミ合金などで構成されていることが好ましい。
図示しないシリンダで加熱された溶融樹脂がスプルブッシュ8のスプル部9に射出充填される際に、固化遅延ピン16と溶融樹脂の間でせん断熱が発生する。このせん断熱により固化遅延ピン16の表面温度は即座に高くなり、スプル部9に射出充填された溶融樹脂が冷却固化されるのを遅延できる。
一方で、射出充填、保圧工程が終わり、スプル部9における溶融樹脂の移動が停止して、固化遅延ピン16と溶融樹脂の間のせん断熱も次第に小さくなる。これに伴って固化遅延ピン16の表面温度も徐々に低下して、スプル部9に充填されている溶融樹脂の冷却固化を促進することが期待できる。
また、図2Bに示したZ-Z断面図から分かるように、固化遅延ピン16が内挿されたスプル部9の流路は中空円柱形状となる。例えば、スプル部9の直径R1を5mm、固化遅延ピン16の直径R2を3mmとした場合、スプル部9の実効的な樹脂流路断面積は(2.5-1.5)×π=4πとなり、スプル部9の直径R1が4mmの樹脂流路断面積と同等になる。
比較例として、金型においてスプル部の直径が4mmの場合、スプルブッシュの内周面からスプル部の中心までのスプル部に射出充填される樹脂の厚みは2mmになる。一方で、本実施の形態1に記載の構成であれば、スプル部9の直径R1が5mm、固化遅延ピン16の直径R2が3mmのため、スプルブッシュ8の内周面80から固化遅延ピン16の外周面までのスプル部9に射出充填される樹脂の厚みは1mmとなり、比較例に比べてスプル部に射出充填される樹脂の厚みが薄くなる。これにより、実効的な樹脂流路断面積を同じにしたまま、冷却工程におけるスプル部9の冷却時間を短縮することが期待できる。また、樹脂流路断面積が同等であるため、樹脂流動特性が低下したり、廃棄樹脂量が多くなったりするなどの問題が生じることもない。
次に、上記のように構成された実施の形態1の金型100を用いた樹脂成形プロセスを図3から図8を用いて説明する。ここでは、金型100を用いて、樹脂部品21を成形する一連の樹脂成形プロセスを示す。図3に示すように、型閉じ工程では、可動側取付板4を固定した射出成形機のプラテンがもう一方の固定側取付板1に向けて移動して、固定側型板2と可動側型板3とが分割面PLを挟んで密接される。この型閉じ工程により、固定ボルト17に固定された固化遅延ピン16は、スプル部9に内挿される。
次に、図4に示すように、射出充填、保圧、冷却工程に移行する。射出充填工程では、前述の通り、シリンダで加熱された溶融樹脂がスプル部9、ランナ部10、ゲート部11を経て、固定側製品部12および可動側製品部13に充填される。このとき、スプル部9に射出充填される溶融樹脂とスプルブッシュ8の内周面80および固化遅延ピン16の外周面との間でせん断熱が発生する。熱伝導率が高い金属材料で構成される固化遅延ピン16の表面温度は即座に高くなり、射出充填工程におけるスプル部9の溶融樹脂の冷却固化を遅延できる。また、この効果は保圧工程時も継続される。
その後、冷却工程に移行すると、シリンダ内部のスクリュの前進が停止して、次ショットに備えた溶融樹脂の計量のためにスクリュが後退し始める。金型100への溶融樹脂の移動が停止するため、溶融樹脂と固化遅延ピン16との間に発生していたせん断熱も停止する。これに伴って、スプル部9の溶融樹脂の冷却が進行する。
ここで、図示していないが、固定側型板2および可動側型板3の内部には媒体流路が配置されており、金型100の外部に設置された媒体供給装置に接続されて、温度調節回路を構成している。この媒体供給装置は、水または油などの温度調節媒体の温度を設定された温度に維持する機能を有しており、所望の温度に調節された温度調節媒体を媒体供給装置から固定側型板2および可動側型板3の媒体流路に流通して、固定側型板2および可動側型板3の温度を調節する。
このとき、固定側型板2および可動側型板3の媒体流路に対して、同一の媒体供給装置から同一温度の温度調節媒体を流通する必要はなく、複数の媒体供給装置に対して固定側型板2と可動側型板3の媒体流路を個別に接続して、同一温度または異なる温度に調節された温度調節媒体を流通してもよい。
次に、金型100の内部に充填された溶融樹脂の冷却固化が進行すると、図5に示すように、型開き工程に移行する。可動側取付板4を固定した射出成形機のプラテンが固定側取付板1から離れるように移動させ、固定側型板2と可動側型板3とを離間させる。このとき、スプル部9および固定側製品部12に充填された樹脂は、可動側製品部13に充填された樹脂と一体となり、樹脂部品21として固定側型板2から離型する。尚、ここでは、便宜上、樹脂部品21として、スプル部9、ランナ部10およびゲート部11内に充填され硬化した樹脂部分も含む。当然のことながら、樹脂部品21において、実際に製品として利用される部分は、製品部C内にて形成された部分である。
次に、図6に示すように、離型工程では、図示しない射出成形機に配置されているエジェクタロッドが移動することにより、上エジェクタプレート6および下エジェクタプレート7が可動側型板3に近づくように移動する。この動作に伴って、上エジェクタプレート6と下エジェクタプレート7の2枚のエジェクタプレート6、7の間に固定された、製品エジェクタピン14およびランナエジェクタピン15も同じ方向に移動することで、図5の型開き工程の可動側型板3のランナ部10、ゲート部11および可動側製品部13から樹脂部品21が離型する。
固化遅延ピン16は、固定ボルト17により可動側取付板4に固定されているため、製品エジェクタピン14およびランナエジェクタピン15と連動せず、ランナエジェクタピン15がスプル部9を突き出すことにより、固化遅延ピン16がスプル部9内に形成された樹脂部品21から離型される。
次に、図7に示すように、取り出し工程において、可動側型板3から離型された樹脂部品21は、取り出しロボットまたは自動落下、人の手により金型100の外部に取り出される。次に、図8に示すように、エジェクタピン戻り工程では、エジェクタロッドが可動側型板3から離れるように移動することで、上エジェクタプレート6と可動側型板3の間に配置されるスプリングの反力により上エジェクタプレート6および下エジェクタプレート7が可動側取付板4に近づくように押し戻される。この状態から、再び図3に示す型閉じ工程に移行して、以後図3から図8の工程を繰り返しながら樹脂部品21の量産成形が執り行われる。
図9から図13は本実施の形態1における固化遅延ピン16の他の構成例を示す。各図において、上記実施の形態1の場合と異なる部分を中心に説明する。他の部分は上記実施の形態1と同様であるため、その説明は適宜省略する。
図9に示す固化遅延ピン160は、直径が長手方向Xの溶融樹脂の入口側X1から出口側X2に向かって大きくなるように形成され、外形31が長手方向Xに傾斜して形成される。よって、固化遅延ピン160は、例えば、円錐台形状にて形成される。この構成により、最も溶融樹脂の固化が遅く、冷却時間ならびにサイクルタイムの長期化を招く原因になるスプル部9の溶融樹脂の出口側X2(根元側)の肉盗み量が多くなり、冷却時間短縮の効果を促進できる。また、固化遅延ピン160の外形31に傾斜を持たせることで、固化遅延ピン160とスプル部9との離型性が向上し、図6の離型工程に起因する成形不良を抑制できる。さらに、固化遅延ピン160の出口側X2(根元部)を他の箇所より太く形成できるため、破損に対する懸念が低減できる。
次に、図10に示す固化遅延ピン161は、長手方向Xにおいて、溶融樹脂の入口側X1の端面32がR形状の曲面形状にて形成される。尚、図10において、全体を曲面形状にて形成する例を示したが、これに限られることはなく、部分的に曲面形状を形成してもよい。この構成により、シリンダで加熱された溶融樹脂がスプル部9に射出充填されるときに、固化遅延ピン161に負荷する応力の集中を抑制できるとともに、先に示した、離型性の向上が期待できる。
次に、図11に示す固化遅延ピン162は、セラミックスまたは熱硬化性樹脂の芯材33と、芯材33を覆うセラミックスまたは熱硬化性樹脂の熱伝導率より高い熱伝導率を有する部材にてなる被膜部としての熱伝導薄膜34とにて形成される。この構成により、シリンダで加熱された溶融樹脂がスプル部9に射出充填されるときに、熱伝導薄膜34と溶融樹脂との間で発生するせん断熱が、固化遅延ピン162の芯材33を伝って、他の箇所としての、固定ボルト17およびランナエジェクタピン15を経由して可動側型板3に逃げるのを抑制でき、熱伝導薄膜34および芯材33を有する固化遅延ピン162の保温効果が高くなる。このため、スプル部9の直径をさらに小さくしても溶融樹脂の流動性を確保でき、射出成形後に廃棄するスプル部の樹脂材料を低減できる。
この効果は、例えば、固化遅延ピン16を固定するための固定部としての固定ボルト17を、固化遅延ピン16の熱伝導率よりも熱伝導率が低い例えば、セラミックスまたは熱硬化性樹脂にて形成しても同様の効果を得ることができる。
また、図12に示すようにスプルブッシュ8の外周面にセラミックスまたは熱硬化性樹脂など、スプルブッシュ8を設置する固定側取付板1および固定側型板2よりも熱伝導率が低い部材で構成する断熱層23を形成しても同様に効果が期待できる。尚、スプルブッシュ8の外周面に対してセラミックスの断熱層23を形成する方法としては、例えばコールドスプレなどの溶射による方法が適切である。
次に、図13に示すように、固化遅延ピン163の表面に微細な凹凸形状を設ける。これにより、スプル部9に射出充填される溶融樹脂の流動速度が局所的に変化するため乱流化し、スプル部9において溶融樹脂が攪拌される。これにより、スプル部9における溶融樹脂の温度ムラが低減し、圧力損失低減および溶融樹脂の流動性確保に効果が期待できる。冷却工程においては微細な凹凸形状により溶融樹脂と固化遅延ピン163の接触面積が増大するため、冷却効率が促進される。尚、図13は凹凸形状が理解できるように、実際より大きく図示している。
但し、離型性が低下することが懸念されるため、固化遅延ピン163の凹凸形状の表面にPTFE(polytetrafluoroethylene)を含む薄膜など離型性および潤滑性に富んだ潤滑層24を形成することが考えられる。
上記のように構成された実施の形態1の樹脂射出成形用金型によれば、
分割面を境として固定側型部と可動側型部とに二分され、前記固定側型部および前記可動側型部が前記分割面で密接された状態で、前記固定側型部および前記可動側型部にて形成される製品部に溶融樹脂を充填して樹脂製品を成形する樹脂射出成形用金型において、
前記固定側型部は、外部から前記溶融樹脂を射出充填する中空のスプル部を備えたスプルブッシュを有し、
前記スプル部において前記溶融樹脂が射出充填される充填方向が長手方向となる固化遅延ピンを備え、前記固定側型部と前記可動側型部とが前記分割面にて密接されると前記スプル部内に前記固化遅延ピンが挿入されるので、
溶融樹脂がスプル部内に射出充填される際に、固化遅延ピンと溶融樹脂と間に発生するせん断熱により固化遅延ピンが加熱され、固化遅延ピンと溶融樹脂と間における熱交換効率が低下し、スプル部内における溶融樹脂の冷却固化を抑制できる。さらに、スプルブッシュの内部の流路が、固化遅延ピンの挿入により中空形状となるため、流路断面積が同じスプル部に対して流路の厚みを小さくできるため、冷却工程におけるスプル部の冷却時間を短縮できる。よって、スプル部の断面積を大きくすることなく、コストを抑えつつ、冷却時間の短縮ならびにサイクルタイムが短縮できる。
また、前記固化遅延ピンは、前記可動側型部を設置する取付部に固定して設置されるので、
固化遅延ピンが確実に固定できる。
また、前記固化遅延ピンは、直径が前記長手方向の前記スプル部の前記溶融樹脂の入口側から出口側に向かって大きくなるように形成され、外形が前記長手方向に傾斜して形成されるので、
溶融樹脂の固化が遅く、冷却時間ならびにサイクルタイムの長期化を招く原因になるスプル部の出口側(根元)の肉盗み量が多くなり、冷却時間短縮の効果を促進できる。また、固化遅延ピンの外形に傾斜を持たせることでスプル部の離型性が向上でき、離型工程に起因する成形不良を抑制できる。さらに、固化遅延ピンの出口側(根元)を太くできるため、破損に対する懸念が低減できる。
また、前記固化遅延ピンの前記長手方向の前記スプル部の前記溶融樹脂の入口側の端面は、部分的、または全体的に曲面形状にて形成されるので、
溶融樹脂がスプル部に射出充填されるときに固化遅延ピンに負荷する応力が集中することを、固化遅延ピンの曲面形状にて抑制するとともに、離型性の向上が期待できる。
また、前記固化遅延ピンは、芯材がセラミックスまたは熱硬化性樹脂にて形成され、前記セラミックスまたは熱硬化性樹脂の熱伝導率よりも熱伝導率が高い部材が前記芯材を覆って形成される被膜部を備えたので、
溶融樹脂がスプル部に射出充填されるときに固化遅延ピンの被膜部と溶融樹脂との間で発生するせん断熱が、固化遅延ピンの芯材を伝って他の箇所を経由して逃げるのを抑制でき、固化遅延ピンの保温効果が高くなる。このため、スプル部の直径をさらに小さくしても溶融樹脂の流動性を確保でき、射出成形後に廃棄するスプル部の樹脂材料を低減できる。
また、前記固化遅延ピンを固定する固定部は、前記固化遅延ピンの熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する部材にて形成されるので、
溶融樹脂がスプル部に射出充填されるときに固化遅延ピンと溶融樹脂との間で発生するせん断熱が、固化遅延ピンを伝って、他の箇所、例えば、固定ボルトまたはランナエジェクタピンを経由して可動側型板に逃げるのを抑制でき、固化遅延ピンの保温効果が高くなる。このため、スプル部の直径をさらに小さくしても溶融樹脂の流動性を確保でき、射出成形後に廃棄するスプル部の樹脂材料を低減できる。
また、前記スプルブッシュの外周面に、セラミックスまたは熱硬化性樹脂にて形成される断熱層を備えるので、
スプル部に射出充填されるときに、スプルブッシュの内壁面と溶融樹脂の間で発生するせん断熱が、スプルブッシュを伝って、他の箇所に逃げるのを抑制でき、スプル部の溶融樹脂の固化を遅延できる。このため、スプル部の直径をさらに小さくしても溶融樹脂の流動性を確保でき、射出成形後に廃棄するスプル部の樹脂材料を低減できる。
また、前記固化遅延ピンの表面は、凹凸形状を備えたので、
固化遅延ピンの表面の凹凸形状により、スプル部に射出充填される溶融樹脂の流動速度が局所的に変化するため乱流化し、スプル部において溶融樹脂が攪拌される。これにより、スプル部における溶融樹脂の温度ムラが低減し、圧力損失低減および溶融樹脂の流動性確保に効果が期待できる。冷却工程においては当該凹凸形状により溶融樹脂と固化遅延ピンとの接触面積が増大するため、冷却効率が促進される。
また、前記スプルブッシュの前記スプル部から前記製品部に連通する連通部を備えたので、
スプル部から製品部への溶融樹脂の流れが容易にできる。
実施の形態2.
図14は、実施の形態2による樹脂射出成形用金型の構成を示す断面図である。図15は、図14に示した樹脂射出成形用金型の固化遅延ピンの他の例の構成を示す断面図である。
図において、上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。上記実施の形態1においては、固化遅延ピン16は、可動側型部Bの取付部Dとしての可動側取付板4に固定ボルト17にて螺合して一体化されている例を示したが、これに限られることはなく、図14に示すように、可動側型板3に固定した固定ボルト170に対して、固化遅延ピン16を螺合して一体化して固定してもよい。よって、固化遅延ピン16を固定する固定部は固定ボルト170となる。
この構成により、より簡易な構造で固化遅延ピン16を配置できるため、金型100の加工費用の低減を見込むことができるとともに、連続成形時における摺動部の破損および摩耗に対しても信頼性が向上する。また、別の構成としては、固化遅延ピン16を可動側型板3に直接螺合することも可能であり、固定ボルト170が不要となるためさらに金型100の構造を簡易にできる。この場合、固化遅延ピン16を固定する固定部は可動側型板3となる。
また、図15に示すように、固化遅延ピン164の内部に、可動側型板3に配置した温度調節媒体(流通方向を矢印Tにて示す)を流通する媒体流路25に連通する媒体流路250を構成する。この構成により、固化遅延ピン164の温度は、媒体流路250に流通する温度調節媒体により、射出充填時、保圧時、冷却時で変化できる。例えば、冷却時は低温に温度調節された温度調節媒体を媒体流路250に流通し冷却効率を促進して、冷却時間およびサイクルタイムを短縮できる。尚、媒体流路250に流通する温度調節媒体は、可動側型板3に螺合により固定された金属製のバッフル板26により固化遅延ピン16の内部に導くことができる。また、固化遅延ピン16は円柱状など単純な構成のため、媒体流路250は単純に形成できる。
上記のように構成された実施の形態2の樹脂射出成形用金型によれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、
前記固化遅延ピンは、固定して設置されるので、
簡易な構造で固化遅延ピンを配置できるため、金型の加工費用の低減を見込むことができるとともに、連続成形時における摺動部の破損および摩耗に対しての信頼性が向上する。
また、前記固化遅延ピンの内部に、温度調節媒体を挿入出可能な媒体流路を備えたので、
固化遅延ピンの温度を各工程時で変化できるため、例えば冷却時は低温に温度調節された温度調節媒体を媒体流路に流通することにより冷却効率が促進できる。
実施の形態3.
図16は、実施の形態3による樹脂射出成形用金型の構成を示す断面図である。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。上記各実施の形態においては、金型100は、固定側型部Aを1枚の固定側型板2を備え、連通部としてのランナ部10、ゲート部11を可動側型部Bに備える、サイドゲート方式の例を示したが、これに限られることは無く、本実施の形態3においては、ピンゲート方式の例を示す。図16に示すように、固定側型部Aとして2枚の固定側型板2、200を備える。そして、スプル部9から製品部Cに連通する連通部を固定側型板200に、ランナ部101、ゲート部110を備える。
そして、図16に示すように、固定側型板200に固定した固定ボルト180に対して、固化遅延ピン16を螺合して一体化して固定してもよい。よって、固化遅延ピン16を固定する固定部は固定ボルト180となる。尚、この場合、製品部Cは、固定側型部Aの分割面PLと可動側型部Bの可動側製品部13にて形成されることとなる。
上記実施の形態3に示したように金型100が形成される場合であっても、上記各実施の形態に示したように、スプルブッシュ8、スプル部9および固化遅延ピン16との関係は同様であるため、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
本願は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
1 固定側取付板、10 ランナ部、100 金型、11 ゲート部、
12 固定側製品部、13 可動側製品部、14 製品エジェクタピン、
15 ランナエジェクタピン、16 固化遅延ピン、160 固化遅延ピン、
161 固化遅延ピン、162 固化遅延ピン、163 固化遅延ピン、
164 固化遅延ピン、17 固定ボルト、170 固定ボルト、
18 上固定プレート、180 固定ボルト、19 下固定プレート、2 固定側型板、
20 ボルト、21 樹脂部品、22 熱伝導薄膜、23 断熱層、24 潤滑層、
25 媒体流路、26 バッフル板、3 可動側型板、33 芯材、4 可動側取付板、
5 スペーサブロック、6 上エジェクタプレート、7 下エジェクタプレート、
8 スプルブッシュ、9 スプル部、A 固定側型部、B 可動側型部、C 製品部、
D 取付部、R1 直径、R2 直径、X 長手方向(充填方向)、X1 入口側、
X2 出口側、PL 分割面。

Claims (9)

  1. 分割面を境として固定側型部と可動側型部とに二分され、前記固定側型部および前記可動側型部が前記分割面で密接された状態で、前記固定側型部および前記可動側型部にて形成される製品部に溶融樹脂を充填して樹脂製品を成形する樹脂射出成形用金型において、
    前記固定側型部は、外部から前記溶融樹脂を射出充填する中空のスプル部を備えたスプルブッシュを有し、
    前記スプル部において前記溶融樹脂が射出充填される充填方向が長手方向となる固化遅延ピンを備え、前記固定側型部と前記可動側型部とが前記分割面にて密接されると前記スプル部内に前記固化遅延ピンが挿入される樹脂射出成形用金型。
  2. 前記固化遅延ピンは、直径が前記長手方向の前記スプル部の前記溶融樹脂の入口側から出口側に向かって大きくなるように形成され、外形が前記長手方向に傾斜して形成される請求項1に記載の樹脂射出成形用金型。
  3. 前記固化遅延ピンの前記長手方向の前記スプル部の前記溶融樹脂の入口側の端面は、部分的、または全体的に曲面形状にて形成される請求項1または請求項2に記載の樹脂射出成形用金型。
  4. 前記固化遅延ピンは、芯材がセラミックスまたは熱硬化性樹脂にて形成され、前記セラミックスまたは熱硬化性樹脂の熱伝導率よりも熱伝導率が高い部材が前記芯材を覆って形成される被膜部を備えた請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂射出成形用金型。
  5. 前記固化遅延ピンを固定する固定部は、前記固化遅延ピンの熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する部材にて形成される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂射出成形用金型。
  6. 前記スプルブッシュの外周面に、セラミックスまたは熱硬化性樹脂にて形成される断熱層を備える請求項1から請求項5いずれか1項に記載の樹脂射出成形用金型。
  7. 前記固化遅延ピンの表面は、凹凸形状を備えた請求項1から請求項6いずれか1項に記載の樹脂射出成形用金型。
  8. 前記固化遅延ピンの内部に、温度調節媒体を挿入出可能な媒体流路を備えた請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂射出成形用金型。
  9. 前記スプルブッシュの前記スプル部から前記製品部に連通する連通部を備えた請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の樹脂射出成形用金型。
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