JP2022125963A - 電気化学素子用セパレータおよび電気化学素子用セパレータの製造方法 - Google Patents
電気化学素子用セパレータおよび電気化学素子用セパレータの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】ポリオレフィン微多孔膜と多孔質層の優れた密着性およびポリオレフィン微多孔膜のシャットダウン温度を超える温度領域でも安定的なシャットダウン特性を維持し、メルトダウン耐性および機械的強度に優れた電気化学素子用セパレータ、及びその製造方法を提供すること。【解決手段】ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に、樹脂バインダおよび無機粒子を含む多孔質層が積層された電気化学素子用セパレータであって、前記電気化学素子用セパレータを200℃まで昇温させた後、室温まで降温させ、赤外分光法の全反射法で前記電気化学素子用セパレータの多孔質層側を測定した際の、2800cm-1から3000cm-1に出現するピークのABSORBANCEが0.05以上0.17未満であることを特徴とする電気化学素子用セパレータ。【選択図】なし
Description
本発明は、電気化学素子用セパレータおよびその製造方法に関するものである。
リチウムイオン二次電池のような二次電池は、スマートフォン、タブレット、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯ゲーム機などのポータブルデジタル機器用途、電動工具、電動バイク、電動アシスト補助自転車などのポータブル機器用途、および電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車などの自動車用途など、幅広く使用されている。
リチウムイオン二次電池は、一般的に、正極活物質を正極集電体に積層した正極と、負極活物質を負極集電体に積層した負極との間に、二次電池用セパレータと電解質が介在した構成を有している。
二次電池用セパレータとしては、ポリオレフィン系多孔質膜基材が用いられている。二次電池用セパレータに求められる特性としては、多孔構造中に電解液を含み、イオン移動を可能にする特性と、リチウムイオン二次電池が異常発熱した場合に、熱で溶融することで多孔構造が閉鎖され、絶縁性が発現するシャットダウン特性が挙げられる。しかし、高いエネルギーを有する二次電池において異常発熱時の発熱量が大きく、シャットダウン温度を超えても温度が上昇し続ける場合がある。このような場合、セパレータの破膜によりシャットダウン特性が損なわれ、短絡が起こり、さらなる発熱を引き起こす恐れがある。このような二次電池における異常発熱時においても、セパレータの膜構造を維持する機能は、メルトダウン耐性と呼ばれる。
このような事情のもと、多孔質基材が破膜した場合でも正極と負極が直接接触するのを阻むべく、多孔質基材の表面に耐熱性が高い無機粒子を含んだ多孔質層を形成することが提案されている。
特許文献1には、多孔質の樹脂基材の表面に多孔質絶縁層を備え、樹脂基材は親水性官能基が存在する親水性表面を有し、多孔質絶縁層は、無機フィラーとフィブリル化されたポリマーを含有し、フィブリル化されたポリマーは、繊維長1μm~10μmのセルロース系繊維が凝集した塊状集合体を構成しており、該集合体の外表部にフィブリル繊維が突出しており、該集合体の外表部に突出したフィブリル繊維の平均繊維径が0.05μm~0.5μmであり、多孔質絶縁層の全質量を100質量%としたときに、フィブリル化されたポリマーの含有量が0.3質量%~5質量%であることを特徴とする二次電池用セパレータが提案されている。
また、特許文献2では、ポリオレフィン樹脂微多孔膜の少なくとも片面に、無機フィラーと樹脂バインダとを含む多孔層を備え、前記多孔層が次の(A)~(C)、
(A)前記無機フィラーの平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下、
(B)前記樹脂バインダが、前記無機フィラーと前記樹脂バインダとの総量に占める割合が、体積分率で0.5%以上8%以下、
(C)前記多孔層の層厚が、総層厚に占める割合が15%以上50%以下、
を同時に満たし、前記ポリオレフィン樹脂多孔膜の、表面の濡れ指数(測定法:JIS K-6768)が40mN/m以上であることを特徴とする多層多孔膜が提案されている。
(A)前記無機フィラーの平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下、
(B)前記樹脂バインダが、前記無機フィラーと前記樹脂バインダとの総量に占める割合が、体積分率で0.5%以上8%以下、
(C)前記多孔層の層厚が、総層厚に占める割合が15%以上50%以下、
を同時に満たし、前記ポリオレフィン樹脂多孔膜の、表面の濡れ指数(測定法:JIS K-6768)が40mN/m以上であることを特徴とする多層多孔膜が提案されている。
また、特許文献3では、多孔基材層から成るA層と、カルボキシル基含有モノマー単位を2質量%以上27質量%未満有する水溶性(メタ)アクリル系樹脂(b1)及びその塩から選択される第1の水溶性ポリマーを含有するB層とを有することを特徴とする、蓄電デバイス用セパレータが提案されている。
特許文献1では、親水性表面を有する多孔質の樹脂基材の表面に、無機フィラーとフィブリル化されたポリマーを含有した多孔質絶縁層を備えた二次電池用セパレータを提案しているが、樹脂基材のシャットダウン温度を超えても温度が上昇し、樹脂基材が破膜した場合、多孔質絶縁層に含まれるポリマーも溶融し、正極と負極間に無機フィラーのみが存在する部分が発生する恐れがある。そのような部分ではイオン移動が起こり続けるため、異常発熱の進行を防ぐ絶縁性が得られず、シャットダウン特性を維持できない。
特許文献2では、ポリオレフィン樹脂微多孔膜の少なくとも片面に、無機フィラーと樹脂バインダとを含む多孔層を備え、前記無機フィラーの平均粒径と、前記樹脂バインダが前記無機フィラーと前記樹脂バインダとの総量に占める割合、前記多孔層が総層厚に占める割合、前記ポリオレフィン樹脂微多孔膜表面の濡れ性をそれぞれ規定した多層多孔膜が提案されているが、使用される融点および/または中間点ガラス転移温度が180℃以上である樹脂バインダは、室温における高分子鎖の流動性が低く粘着性が低いため、ポリオレフィン樹脂微多孔膜と多孔層の剥離強度が低下し、多孔層の剥がれが発生する懸念がある。また、ポリオレフィン微多孔膜表面に施すコロナ処理の処理強度が50W・min/m2以上の場合、ポリオレフィン微多孔膜のネットワーク構造が損傷を受け、機械的強度が損なわれる恐れがある。
特許文献3では、多孔基材層から成るA層と水溶性ポリマーを含有するB層とを有することを特徴とする、蓄電デバイス用セパレータが提案されているが、A層のシャットダウン温度を超えても温度が上昇し、A層が破膜した場合、B層に含まれる水溶性ポリマーの中間点ガラス転移温度が120℃以下であるため、B層も破膜し、シャットダウン特性を維持できない恐れがある。
本発明の目的は、上記問題を鑑み、機械的強度を有し、ポリオレフィン微多孔膜と多孔質層の優れた密着性およびポリオレフィン微多孔膜のシャットダウン温度を超える温度領域でも安定的なシャットダウン特性を維持しつづける、メルトダウン耐性に優れた電気化学素子用セパレータ、及びその製造方法を提供することである。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた。
上記課題を解決するため本発明の電気化学素子用セパレータは次の構成を有する。
(1)ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に、樹脂バインダおよび無機粒子を含む多孔質層が積層された電気化学素子用セパレータであって、前記電気化学素子用セパレータを200℃まで昇温させた後、室温まで降温させ、赤外分光法の全反射法で前記電気化学素子用セパレータの多孔質層側を測定した際の、2800cm-1から3000cm-1に出現するピークのABSORBANCEが0.05以上0.17未満であることを特徴とする電気化学素子用セパレータとする。
(2)ポリオレフィン微多孔膜の、樹脂バインダおよび無機粒子を含む多孔質層が積層される面の表面酸素濃度が1%以上であることを特徴とする(1)に記載の電気化学素子用セパレータ。
(3)インピーダンス法によるメルトダウン温度が180℃以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電気化学素子用セパレータ。
(4)前記多孔質層に含まれる樹脂バインダが、中間点ガラス転移温度が-80℃以上0℃以下のアクリル系樹脂であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の電気化学素子用セパレータ。
(5)(A)ポリオレフィン微多孔膜にコロナ処理を実施する工程
(B)前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に樹脂バインダおよび無機粒子を含んだ塗工液にて塗布し乾燥する工程
を含む電気化学素子用セパレータの製造方法であって、前記コロナ処理の処理条件が、放電量20W・min/m2以上50W・min/m2未満であることを特徴とする、(1)から(4)のいずれかに記載の電気化学素子用セパレータの製造方法。
(1)ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に、樹脂バインダおよび無機粒子を含む多孔質層が積層された電気化学素子用セパレータであって、前記電気化学素子用セパレータを200℃まで昇温させた後、室温まで降温させ、赤外分光法の全反射法で前記電気化学素子用セパレータの多孔質層側を測定した際の、2800cm-1から3000cm-1に出現するピークのABSORBANCEが0.05以上0.17未満であることを特徴とする電気化学素子用セパレータとする。
(2)ポリオレフィン微多孔膜の、樹脂バインダおよび無機粒子を含む多孔質層が積層される面の表面酸素濃度が1%以上であることを特徴とする(1)に記載の電気化学素子用セパレータ。
(3)インピーダンス法によるメルトダウン温度が180℃以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電気化学素子用セパレータ。
(4)前記多孔質層に含まれる樹脂バインダが、中間点ガラス転移温度が-80℃以上0℃以下のアクリル系樹脂であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の電気化学素子用セパレータ。
(5)(A)ポリオレフィン微多孔膜にコロナ処理を実施する工程
(B)前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に樹脂バインダおよび無機粒子を含んだ塗工液にて塗布し乾燥する工程
を含む電気化学素子用セパレータの製造方法であって、前記コロナ処理の処理条件が、放電量20W・min/m2以上50W・min/m2未満であることを特徴とする、(1)から(4)のいずれかに記載の電気化学素子用セパレータの製造方法。
本発明によれば、機械的強度を有し、ポリオレフィン微多孔膜と多孔質層の優れた密着性が得られる。また、ポリオレフィン微多孔膜のシャットダウン温度を超える温度領域でも安定的にシャットダウン特性を維持する、即ちメルトダウン耐性に優れた電気化学素子用セパレータが得られる。
以下、本発明について詳細に説明する。本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されるべきものではなく、本発明の技術的思想に符合する意味と概念に沿って解釈されるべきものである。
(ポリオレフィン微多孔膜)
本発明のポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル1-ペンテン、1-ヘキセンなどを重合した単独重合体、2段階重合体、共重合体またはこれらの混合物等が挙げられる。単一物又は2種以上の異なるポリオレフィン樹脂の混合物、例えば、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物であってもよいし、異なるオレフィンの共重合体でもよい。特に、シャットダウン特性の観点からポリエチレンが好ましく、ポリエチレンの融点(軟化点)は70~150℃であることがより好ましい。
本発明のポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル1-ペンテン、1-ヘキセンなどを重合した単独重合体、2段階重合体、共重合体またはこれらの混合物等が挙げられる。単一物又は2種以上の異なるポリオレフィン樹脂の混合物、例えば、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物であってもよいし、異なるオレフィンの共重合体でもよい。特に、シャットダウン特性の観点からポリエチレンが好ましく、ポリエチレンの融点(軟化点)は70~150℃であることがより好ましい。
本発明のポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン樹脂を主成分とすることが好ましい。ポリエチレン樹脂の含有量はポリオレフィン樹脂の全質量を100質量%として、70質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
ポリエチレンとしては、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどが挙げられる。また、重合触媒には特に制限はなく、チーグラー・ナッタ系触媒やフィリップス系触媒やメタロセン系触媒などを用いることができる。これらのポリエチレンはエチレンの単独重合体のみならず、他のα-オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。エチレン以外のα-オレフィンとしてはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステル、スチレン等が好適である。ポリエチレンとしては、単一物でもよいが、2種以上のポリエチレンを用いてなるポリエチレン混合物であることが好ましい。
ポリエチレン混合物としては、重量平均分子量(Mw)の異なる2種類以上の超高分子量ポリエチレンの混合物、高密度ポリエチレンの混合物、中密度ポリエチレンの混合物、又は低密度ポリエチレンの混合物を用いてもよいし、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンを用いてなる群から選ばれた2種以上のポリエチレンの混合物を用いてもよい。特に、Mwが5×105以上の超高分子量ポリエチレンとMwが1×104~5×105未満のポリエチレンを用いてなる混合物が好ましい。混合物中の超高分子量ポリエチレンの含有量は、引っ張り強度の観点から1~40質量%が好ましい。ポリエチレンの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、機械的強度の観点から5~200の範囲内であることが好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜の厚みは、3μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上30μm以下である。ポリオレフィン微多孔膜の厚みを50μm以下とすることでポリオレフィン微多孔膜の内部抵抗が高くなることを抑制できる。また、ポリオレフィン微多孔膜の厚みを3μm以上とすることで製造が容易となり、また十分な力学特性を得ることができる。
ポリオレフィン微多孔膜に存在する細孔のサイズは0.01~50μmが好ましく、多孔質膜基材の空孔率は10~95%であることが好ましい。このような厚み、細孔のサイズ、空孔率を有することにより、十分なイオン電導性を得られ、また十分な機械的強度と絶縁性を得ることが出来る。
ここで細孔のサイズとは、JIS K3832やASTM F316-86に記載のあるバブルポイント法(ハーフドライ法)に準じて測定された貫通孔径である。
また、ここで空孔率とは、構成材料がa、b・・・、nからなり、構成材料の質量がWa、Wb・・・、Wn(g・cm2)であり、それぞれの真密度がda、db・・・、dn(g/cm3)で、着目する膜厚をt(cm)としたとき、次式(1)で求められる値(ε(%))である。
ε={1-(Wa/da+Wb/db+・・・+Wn/dn)/t}×100・・・(1)
ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度は、50秒/100cm3以上1,000秒/100cm3以下であることが好ましく、より好ましくは50秒/100cm3以上500秒/100cm3以下である。透気抵抗度を1,000秒/100cm3以下とすることで、十分なイオン移動性が得られ、電池特性を良好にすることができる。透気抵抗度を50秒/100cm3以上とすることで、力学特性を良好にすることができる。
ε={1-(Wa/da+Wb/db+・・・+Wn/dn)/t}×100・・・(1)
ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度は、50秒/100cm3以上1,000秒/100cm3以下であることが好ましく、より好ましくは50秒/100cm3以上500秒/100cm3以下である。透気抵抗度を1,000秒/100cm3以下とすることで、十分なイオン移動性が得られ、電池特性を良好にすることができる。透気抵抗度を50秒/100cm3以上とすることで、力学特性を良好にすることができる。
ポリオレフィン微多孔膜に、後述する多孔質層を積層した電気化学素子用セパレータを、200℃まで昇温させた後、室温まで降温させ、赤外分光法の全反射法で上記電気化学素子用セパレータの多孔質層側を測定した際の、2800cm-1から3000cm-1に出現するピークのABSORBANCEが0.05以上0.17未満である必要がある。ABSORBANCE0.05以上が意味するところは、本来樹脂バインダと無機粒子を用いてなる多孔質層(製造時はポリオレフィンは含まれていない)に、ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンが浸透し、無機粒子の空隙を充填していて、一部は表層にたどり着いていることを意味する。上記ピークのABSORBANCEが0.05以上であれば、ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリエチレンの融点以上の150℃以上の温度領域で、安定的にシャットダウン機能を維持するため、ポリオレフィン微多孔膜に、後述する多孔質層を積層した電気化学素子用セパレータのインピーダンス法によるメルトダウン温度が180℃以上の特性を発現することができる。このような電気化学素子用セパレータは、ポリオレフィン微多孔膜に単に多孔質層を積層するだけでは得ることができない。そこで本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、後述する条件にてコロナ処理をポリオレフィン微多孔膜に施したのちに多孔質層を積層したものについて、かかる性能を発現することを突き止め、本発明に至った。メカニズムは必ずしも明確ではないが、ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンの高分子結合の面内方向の切断、または150℃以上の温度領域でポリオレフィン微多孔膜が溶融する際の応力緩和が起こり、ポリオレフィン微多孔膜の面内収縮が抑えられ、溶融したポリオレフィンは多孔質層側に浸透すると考えられる。多孔質層に浸透したポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンは多孔質層に含まれる無機粒子間の空隙を閉塞するため、多孔質層がシャットダウン特性を担い、ポリオレフィン微多孔膜自体のシャットダウン温度を超える温度領域においても、安定的にシャットダウン機能を維持することができると考えられる。一方、コロナ処理を施さないまたはコロナ処理の条件が適切でない場合には、多孔質層に溶融したポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンは多孔質層側に浸透が進行せず、ポリオレフィン微多孔膜の面内収縮が起こり、電気化学素子用セパレータ全体で見たときには多孔質層の空隙がポリオレフィンで閉塞されること無くそのまま存在するため、150℃以上の温度領域で安定的にシャットダウン機構を維持できない。
ABSORBANCEが0.17以上となると、ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンの高分子結合の面内方向の切断が過多となり、力学強度の低下を誘発し、電気化学素子としての安全性が低下する。ABSORBANCEは0.1以上0.17未満がより好ましい。 電気化学素子用セパレータのインピーダンス法によるメルトダウン温度は180℃以上が好ましく、上限は特に制限されるものではないが、実質的に230℃以下であり、より好ましくは250℃以下である。メルトダウン温度が180℃以上であることにより、電気化学素子用セパレータを用いた電池が加熱された際、あるいは内部短絡等により電池内部の温度が上昇した際でも、電気化学素子用セパレータの抵抗値が高い状態を維持し、短絡しにくい、あるいは短絡しても大電流が流れず、電池を熱暴走に至らしめにくい効果が高いことを意味する。
本発明のポリオレフィン微多孔膜の、樹脂バインダおよび無機粒子を含む多孔質層が積層される面の表面酸素濃度は、1%以上であることが好ましく、上限は特に制限されるものではないが、10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下である。表面酸素濃度が1%以上であれば、ポリオレフィンを多孔質層へ浸透させるために十分なポリオレフィンの高分子結合の切断効果が得られることを意味する。表面酸素濃度が1%未満であれば、ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンの高分子結合の切断効果が不十分であるとみなせる。表面酸素濃度が10%より大きい場合、ポリオレフィン微多孔膜へコロナ処理を施す際に、ポリオレフィン微多孔膜のネットワーク構造が破損し、機械的強度が損なわれる恐れがある。ポリオレフィン微多孔膜の表面酸素濃度が1%以上であれば、次の群からなる酸素を含む極性基を少なくとも1種以上有するとみなせる。(上記極性基:-COOH、-OH、-CO-R、-COO-R(Rはアルキル基であり、アルキル基の炭素鎖は直鎖状でも枝分かれであってもよい。))なお、ポリオレフィン微多孔膜の表面に上記極性基を有するかは、後述するX線光電子分光法(XPS)による表面酸素濃度から判断できる。
(多孔質層)
ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面には、多孔質層が積層している。本発明における多孔質層とは、内部に空孔を有する層をいう。多孔質層は、樹脂バインダおよび無機粒子を含んでおり、樹脂バインダは無機粒子同士を結合させる役割やポリオレフィン微多孔膜と多孔層とを結合させる役割を担う目的で使用され、無機粒子は多孔質層の強度を担保するために使用される。
ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面には、多孔質層が積層している。本発明における多孔質層とは、内部に空孔を有する層をいう。多孔質層は、樹脂バインダおよび無機粒子を含んでおり、樹脂バインダは無機粒子同士を結合させる役割やポリオレフィン微多孔膜と多孔層とを結合させる役割を担う目的で使用され、無機粒子は多孔質層の強度を担保するために使用される。
(樹脂バインダ)
多孔質層に含まれる樹脂バインダは、その中間点ガラス転移温度が-80℃~0℃が好ましく、より好ましくは、-40℃~0℃である。樹脂バインダの中間点ガラス転移温度が0℃より大きいと、室温における樹脂バインダに含まれる高分子鎖の流動性が低く粘着性が低いため、ポリオレフィン微多孔膜と多孔層の剥離強度が低下し、多孔層の剥がれが発生する懸念がある。樹脂バインダの中間点ガラス転移温度が0℃以下であると、室温における樹脂バインダに含まれる高分子鎖の流動性が大きく粘着性が高いため、良好なポリオレフィン微多孔膜と多孔層の密着性が得られる。樹脂バインダの中間点ガラス転移温度が-80℃未満であると、室温における樹脂バインダの流動性が高く粘着性が高いため、電気化学素子用セパレータのみを捲回した場合に、ブロッキングが発生し生産性が低下する恐れがある。また、ガラス転移温度が-40℃以上であると、室温における樹脂バインダの流動性を抑えることができるため、ポリオレフィン微多孔膜に多孔質層を積層した際に、ポリオレフィン微多孔膜と多孔質層の積層面に存在するポリオレフィン微多孔膜中の微多孔に多孔質層に含まれる樹脂バインダが侵入し、電気化学素子用セパレータの透気抵抗度が増加し、イオン移動性が悪化する恐れが低減できる。ここで中間点ガラス転移温度とは、「JIS K7121:2012プラスチックの転移温度測定方法」の規定に準じた示差走査熱量測定(DSC)において、昇温、冷却した後の2回目の昇温時の低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になるような点で引いた接線との交点を意味する。
多孔質層に含まれる樹脂バインダは、その中間点ガラス転移温度が-80℃~0℃が好ましく、より好ましくは、-40℃~0℃である。樹脂バインダの中間点ガラス転移温度が0℃より大きいと、室温における樹脂バインダに含まれる高分子鎖の流動性が低く粘着性が低いため、ポリオレフィン微多孔膜と多孔層の剥離強度が低下し、多孔層の剥がれが発生する懸念がある。樹脂バインダの中間点ガラス転移温度が0℃以下であると、室温における樹脂バインダに含まれる高分子鎖の流動性が大きく粘着性が高いため、良好なポリオレフィン微多孔膜と多孔層の密着性が得られる。樹脂バインダの中間点ガラス転移温度が-80℃未満であると、室温における樹脂バインダの流動性が高く粘着性が高いため、電気化学素子用セパレータのみを捲回した場合に、ブロッキングが発生し生産性が低下する恐れがある。また、ガラス転移温度が-40℃以上であると、室温における樹脂バインダの流動性を抑えることができるため、ポリオレフィン微多孔膜に多孔質層を積層した際に、ポリオレフィン微多孔膜と多孔質層の積層面に存在するポリオレフィン微多孔膜中の微多孔に多孔質層に含まれる樹脂バインダが侵入し、電気化学素子用セパレータの透気抵抗度が増加し、イオン移動性が悪化する恐れが低減できる。ここで中間点ガラス転移温度とは、「JIS K7121:2012プラスチックの転移温度測定方法」の規定に準じた示差走査熱量測定(DSC)において、昇温、冷却した後の2回目の昇温時の低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になるような点で引いた接線との交点を意味する。
多孔質層に用いる樹脂バインダとして、例えば、ポリビニルアルコール、セルロースエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂などが挙げられる。樹脂バインダは水溶液または水分散液として用いることができ、市販されているものでもよい。
(無機粒子)
無機粒子としては、酸化アルミニウム、ベーマイト、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウムなどの無機酸化物粒子、窒化アルミニウム、窒化硅素などの無機窒化物粒子、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶粒子などが挙げられる。これらの粒子を1種類で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
無機粒子としては、酸化アルミニウム、ベーマイト、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウムなどの無機酸化物粒子、窒化アルミニウム、窒化硅素などの無機窒化物粒子、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶粒子などが挙げられる。これらの粒子を1種類で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
用いる無機粒子の形状としては、球状、板状、針状、棒状、楕円状などが挙げられ、いずれの形状であってもよい。その中でも、表面修飾性、分散性、塗工性の観点から球状であることが好ましい。
無機粒子の含有量の下限は、樹脂バインダと無機粒子との合計に対して、50質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上97質量%未満が好ましい。無機粒子の含有量がこの範囲であると、多孔質層の強度が適度に保たれる。
無機粒子の1次平均粒径は、多孔質層の強度、空隙率の観点から0.10μm以上5.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.10μm以上2.5μm以下である。1次平均粒径の下限を0.10μm以上とすることで、多孔質層が緻密になり、ポリオレフィン微多孔膜の孔を閉孔させてしまうことで透気抵抗度が高くなり電池特性が悪化することを防止できる。また、1次平均粒径の上限を5.0μm以下とすることで、第1多孔質層が不均一な構造となり十分な熱収縮率が得られなくなることを防ぎ、また多孔質層の膜厚が増大し、電池特性が低下することを防止できる。なお、無機粒子の1次平均粒径は、JISZ8825(2013)に従いレーザー回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA-960V2)を用いて評価ができ、体積基準積算率が50%のときの値を無機粒子の1次平均粒径とした。
(ポリオレフィン微多孔膜の製造方法)
次いで、ポリオレフィン微多孔膜の製造方法について説明する。
次いで、ポリオレフィン微多孔膜の製造方法について説明する。
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、乾式法(成形用溶剤を用いず結晶核剤や粒子を用いて多孔化する方法(延伸開孔法ともいう。))、湿式法(相分離法)があり、微細孔の均一化や平面性の観点から湿式法が好ましい。
湿式法による製造方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂と成形用溶剤とを加熱溶融混練し、得られた樹脂溶液をダイより押出し、冷却することにより未延伸ゲル状シートを形成し、得られた未延伸ゲル状シートに対して少なくとも一軸方向に延伸を実施し、前記成形用溶剤を除去し、乾燥することによって微多孔膜を得る方法などが挙げられる。
ポリオレフィン微多孔膜は単層膜であってもよいし、分子量あるいは平均細孔径の異なる二層以上からなる多層膜であってもよい。多層膜の場合、少なくとも一つの最外層のポリエチレン樹脂が前記分子量、および分子量分布を満足することが好ましい。
二層以上からなる多層ポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、例えば、a層及びb層を構成する各ポリオレフィン樹脂を成形用溶剤と加熱溶融混練し、得られた各樹脂溶液をそれぞれの押出機から1つのダイに供給し、一体化させて共押出する方法や各層を重ね合わせて熱融着する方法のいずれでも作製できる。共押出法の方が、層間の接着強度を得やすく、層間に連通孔を形成しやすいため高い透過性を維持しやすく、生産性にも優れているため好ましい。
本発明のポリオレフィン微多孔膜を得るための製造方法について詳述する。
本発明では未延伸ゲル状シートをロール法、テンター法もしくはこれらの方法の組み合わせによって機械方向(「MD」又は「縦方向」ともいう)及び幅方向(「TD」又は「横方向」ともいう)の二方向に所定の倍率で延伸する。延伸は縦方向及び横方向を順次行う、逐次二軸延伸法と、縦方向及び横方向に同時に行う同時二軸延伸法の2種類あるが、本発明においては延伸法を問わない。
本発明に用いるポリオレフィン微多孔膜の製造方法は以下の(a)~(f)の工程を含むものである。
(a)ポリオレフィン樹脂と成形用溶剤とを溶融混練し、ポリオレフィン樹脂溶液を調製する工程
(b)前記ポリオレフィン樹脂溶液を押出し、冷却し、未延伸ゲル状シートを形成する工程
(c)前記のゲル状シートを延伸する延伸工程
(d)前記二軸延伸ゲル状シートから成形用溶剤を除去し、乾燥する工程
(e)前記乾燥後のシートを熱処理してポリオレフィン微多孔膜を得る工程
以下、各工程について説明する。
(a)ポリオレフィン樹脂と成形用溶剤とを溶融混練し、ポリオレフィン樹脂溶液を調製する工程
(b)前記ポリオレフィン樹脂溶液を押出し、冷却し、未延伸ゲル状シートを形成する工程
(c)前記のゲル状シートを延伸する延伸工程
(d)前記二軸延伸ゲル状シートから成形用溶剤を除去し、乾燥する工程
(e)前記乾燥後のシートを熱処理してポリオレフィン微多孔膜を得る工程
以下、各工程について説明する。
(a)ポリオレフィン樹脂溶液の調製工程
ポリオレフィン樹脂溶液の調製工程としては、ポリオレフィン樹脂に成形用溶剤を添加した後、溶融混練し、ポリオレフィン樹脂溶液を調製する。溶融混練方法として、例えば、特公平06-104736号公報および日本国特許第3347835号公報に記載の二軸押出機を用いる方法を利用することができる。溶融混練方法は公知であるので説明を省略する。
ポリオレフィン樹脂溶液の調製工程としては、ポリオレフィン樹脂に成形用溶剤を添加した後、溶融混練し、ポリオレフィン樹脂溶液を調製する。溶融混練方法として、例えば、特公平06-104736号公報および日本国特許第3347835号公報に記載の二軸押出機を用いる方法を利用することができる。溶融混練方法は公知であるので説明を省略する。
成形用溶剤としては、ポリオレフィンを十分に溶解できるものであれば特に限定されない。例えば、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィンなどの脂肪族または環式の炭化水素、あるいは沸点がこれらに対応する鉱油留分などがあげられるが、流動パラフィンのような不揮発性の溶剤が好ましい。
ポリオレフィン樹脂溶液中のポリオレフィン樹脂濃度は、ポリオレフィン樹脂と成形用溶剤の合計を100重量部として、25~40重量部であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂濃度が上記範囲であると、ポリオレフィン樹脂溶液を押し出す際のダイ出口でスウェルやネックインを防止でき、ゲル状シートの成形性及び自己支持性が維持される。
(b)未延伸ゲル状シートを成形する工程
未延伸ゲル状シートを成形する工程としては、ポリオレフィン樹脂溶液を押出機から直接的に又は別の押出機を介してダイに送給し、シート状に押し出し、冷却して未延伸ゲル状シートを成形する。同一または異なる組成の複数のポリオレフィン溶液を、押出機から一つのダイに送給し、そこで層状に積層し、シート状に押出してもよい。
未延伸ゲル状シートを成形する工程としては、ポリオレフィン樹脂溶液を押出機から直接的に又は別の押出機を介してダイに送給し、シート状に押し出し、冷却して未延伸ゲル状シートを成形する。同一または異なる組成の複数のポリオレフィン溶液を、押出機から一つのダイに送給し、そこで層状に積層し、シート状に押出してもよい。
押出方法はフラットダイ法及びインフレーション法のいずれでもよい。押出し温度は140~250℃が好ましく、押出速度は0.2~15m/分が好ましい。ポリオレフィン溶液の各押出量を調節することにより、膜厚を調節することができる。押出方法としては、例えば、特公平06-104736号公報および日本国特許第3347835号公報に開示の方法を利用することができる。
シート状に押し出されたポリオレフィン樹脂溶液を冷却することによりゲル状シートを形成する。冷却方法としては冷風、冷却水等の冷媒に接触させる方法、冷却ロールに接触させる方法等を用いることができるが、冷媒で冷却したロールに接触させて冷却させることが好ましい。例えば、冷媒で表面温度20℃から40℃に設定した回転する冷却ロールにシート状に押し出されたポリオレフィン樹脂溶液を接触させることにより未延伸ゲル状シートを形成することができる。押出されたポリオレフィン樹脂溶液は25℃以下まで冷却するのが好ましい。
(c)延伸工程
次に、得られたゲル状シートを少なくとも一軸方向に延伸する。ゲル状シートは成膜用溶剤を含むので、均一に延伸することができる。ゲル状シートは、加熱後、テンター法、ロール法、インフレーション法、またはこれらの組合せにより、所定の倍率で延伸することが好ましい。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましく用いられる。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸および多段延伸(例えば、同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれも用いることができる。
次に、得られたゲル状シートを少なくとも一軸方向に延伸する。ゲル状シートは成膜用溶剤を含むので、均一に延伸することができる。ゲル状シートは、加熱後、テンター法、ロール法、インフレーション法、またはこれらの組合せにより、所定の倍率で延伸することが好ましい。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましく用いられる。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸および多段延伸(例えば、同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれも用いることができる。
この延伸工程における延伸倍率(面積延伸倍率)は、9倍以上が好ましく、16倍以上がより好ましく、25倍以上が特に好ましい態様である。また、機械方向(MD)および幅方向(TD)での延伸倍率は、互いに同じでも異なってもよい。この延伸工程における延伸倍率とは、延伸工程直前のゲル状シートを基準として、次工程に供される直前の微多孔性基材の面積延伸倍率のことをいう。
この延伸工程の延伸温度は、ポリオレフィンの結晶分散温度(Tcd)~Tcd+30℃の範囲内にすることが好ましく、Tcd+5℃~Tcd+28℃の範囲内にすることがより好ましく、Tcd+10℃~Tcd+26℃の範囲内にすることが特に好ましい態様である。例えば、ポリエチレンの場合は、延伸温度を90~140℃とすることが好ましく、より好ましくは100~130℃にする。結晶分散温度(Tcd)は、ASTM D4065による動的粘弾性の温度特性測定により求められる。
以上のような延伸により、例えばポリオレフィンとしてポリエチレンを用いた場合、ポリエチレンラメラ間に開裂が起こり、ポリエチレン相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成し、ゲル状シートは微多孔質基材となる。延伸により機械的強度が向上するとともに細孔が拡大するが、適切な条件で延伸を行うことにより、貫通孔径を制御し、さらに薄い膜厚でも高い空孔率を有することが可能となる。
所望の物性に応じて、膜厚方向に温度分布を設けて延伸することができ、これにより機械的強度に優れた微多孔性基材が得られる。その方法の詳細は、日本国特許第3347854号公報に記載されている。
(d)二軸延伸ゲル状シートから成形用溶剤を除去し、乾燥する工程
二軸延伸ゲル状シートから洗浄溶剤を用いて成形用溶剤を除去(洗浄)し、乾燥する。洗浄溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素などの塩素化炭化水素、三フッ化エタンなどのフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類などの易揮発性のものを用いることができる。これらの洗浄溶剤はポリオレフィンの溶解に用いた成形用溶剤に応じて適宜選択し、単独もしくは混合して用いる。洗浄方法は、洗浄溶剤に浸漬し抽出する方法、洗浄溶剤をシャワーする方法、洗浄溶剤をシートの反対側から吸引する方法、またはこれらの組合せによる方法などにより行うことができる。上述のような洗浄は、シートの残留溶剤が1質量%未満になるまで行う。その後、シートを乾燥するが、乾燥方法は加熱乾燥、風乾などの方法で行うことができる。
二軸延伸ゲル状シートから洗浄溶剤を用いて成形用溶剤を除去(洗浄)し、乾燥する。洗浄溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素などの塩素化炭化水素、三フッ化エタンなどのフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類などの易揮発性のものを用いることができる。これらの洗浄溶剤はポリオレフィンの溶解に用いた成形用溶剤に応じて適宜選択し、単独もしくは混合して用いる。洗浄方法は、洗浄溶剤に浸漬し抽出する方法、洗浄溶剤をシャワーする方法、洗浄溶剤をシートの反対側から吸引する方法、またはこれらの組合せによる方法などにより行うことができる。上述のような洗浄は、シートの残留溶剤が1質量%未満になるまで行う。その後、シートを乾燥するが、乾燥方法は加熱乾燥、風乾などの方法で行うことができる。
(e)乾燥後のシートを熱処理してポリオレフィン微多孔膜を得る工程
乾燥後のシートを熱処理してポリオレフィン微多孔膜を得る。熱処理は熱収縮率及び透気抵抗度の観点から90~150℃の範囲内の温度で行うのが好ましい。熱処理工程の滞留時間は、特に限定されることはないが、通常は1秒以上10分以下、好ましくは3秒から2分以下で行われる。熱処理はテンター方式、ロール方式、圧延方式、フリー方式のいずれも採用できる。
乾燥後のシートを熱処理してポリオレフィン微多孔膜を得る。熱処理は熱収縮率及び透気抵抗度の観点から90~150℃の範囲内の温度で行うのが好ましい。熱処理工程の滞留時間は、特に限定されることはないが、通常は1秒以上10分以下、好ましくは3秒から2分以下で行われる。熱処理はテンター方式、ロール方式、圧延方式、フリー方式のいずれも採用できる。
熱処理工程では縦方向及び横方向の両方向の固定を行いながら、縦方向及び横方向の少なくとも一方向に収縮させるのが好ましい。熱処理工程によってポリオレフィン微多孔膜の残留歪の除去を行うことができる。熱処理工程における縦方向又は横方向の収縮率は、熱収縮率及び透気抵抗度の観点から0.01~50%が好ましく、より好ましくは3~20%である。さらに、機械的強度向上のために再加熱し、再延伸してもよい。再延伸工程は延伸ロール式もしくはテンター式のいずれでもよい。
(コロナ処理工程)
上記方法で得られたポリオレフィン微多孔膜の多孔質層を積層する面に、コロナ処理を行うことが好ましい。なお、前記(e)の工程から連続して行ってもよいし、(e)の工程後一旦巻き取ったフィルムを、再度巻き出してコロナ処理してもよい。コロナ処理により、ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンの高分子結合を切断する作用が、ポリオレフィンの融点以上の温度領域において、ポリオレフィンが溶融する際に、ポリオレフィン微多孔膜の面内方向の収縮応力を低下させ、ポリオレフィン微多孔膜の面間方向(厚み方向)の多孔質層へ浸透させることができる。
上記方法で得られたポリオレフィン微多孔膜の多孔質層を積層する面に、コロナ処理を行うことが好ましい。なお、前記(e)の工程から連続して行ってもよいし、(e)の工程後一旦巻き取ったフィルムを、再度巻き出してコロナ処理してもよい。コロナ処理により、ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンの高分子結合を切断する作用が、ポリオレフィンの融点以上の温度領域において、ポリオレフィンが溶融する際に、ポリオレフィン微多孔膜の面内方向の収縮応力を低下させ、ポリオレフィン微多孔膜の面間方向(厚み方向)の多孔質層へ浸透させることができる。
コロナ処理の処理強度は、20W・min/m2以上50W・min/m2未満が好ましい。コロナ処理の処理強度を20W・min/m2以上にすることで、ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンが溶融する際に、ポリオレフィンを多孔質層へ浸透させるために十分なポリオレフィンの高分子結合の切断効果が得られる。また、コロナ処理の処理強度を50W・min/m2未満に設定すると、ポリオレフィン微多孔膜のネットワーク構造が損傷を受けることなく、強度を維持したまま表面改質を行うことができる。これまで、ポリオレフィン微多孔膜と多孔質層の密着性を向上させること、あるいは、ポリオレフィン微多孔膜への多孔質層の均一塗布性を向上させることが目的で、ポリオレフィン微多孔膜に対して、コロナ処理の施し、疎水性を有するポリオレフィン微多孔膜表面に極性基を生成させることが公知の技術である(特許文献1、2)。一般的に、ポリオレフィン微多孔膜に対して、コロナ処理を施すことで、ポリオレフィン微多孔膜と多孔質層の密着性、あるいは、ポリオレフィン微多孔膜への多孔質層の均一塗布性を向上させるためには、コロナ処理の処理強度は50W・min/m2以上が必要である。その結果として、ポリオレフィン微多孔膜のネットワーク構造が破損し、ポリオレフィン微多孔膜の機械的強度が損なわれる不具合が起こることが懸念される。本発明では、ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンの高分子結合を切断し、加熱処理後の電気化学素子用セパレータのポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンが多孔質層へ浸透し、多孔質層へ浸透したポリオレフィンの一部が多孔質層表面に到達するために必要なコロナ処理の処理強度が、疎水性を有するポリオレフィン微多孔膜表面に極性基を生成させ、ポリオレフィン微多孔膜と多孔質層の密着性、あるいは、ポリオレフィン微多孔膜への多孔質層の均一塗布性を向上させるために必要なコロナ処理の処理強度より低いことに着目し、コロナ処理の処理強度を20W・min/m2以上50W・min/m2未満の範囲とし、かつ中間点ガラス転移温度が-80~0℃の樹脂バインダを多孔質層に用いる。このことで、機械的強度を損なうことなく、密着性とメルトダウン耐性に優れた電気化学素子用セパレータを得ることができる。
(多孔質層の製造方法)
多孔質層の組成や形成方法は特に制限されないが、塗工工程及び膜固定工程を行うことによって得ることができる。
多孔質層の組成や形成方法は特に制限されないが、塗工工程及び膜固定工程を行うことによって得ることができる。
多孔質層を形成するための塗工液を調製する順序としては特に限定はされないが、無機粒子を均一分散し、塗工液中の無機粒子の1次平均粒径を均一にする観点から、樹脂バインダと極性溶媒を混合、溶解させた溶解液と、無機粒子と極性溶媒を用いて分散させた分散液を混合し、さらに必要に応じてその他の有機樹脂、添加剤等を添加し、塗工液を調製することが好ましい。
ここで、無機粒子を分散させる溶媒としては、水、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、エチレンカーボネート、フルフリルアルコール、及びメタノール等の極性溶媒を用いることができる。
塗工液中には、樹脂バインダと無機粒子以外にも、必要に応じて、有機樹脂、分散剤、増粘剤、安定化剤、消泡剤、レベリング剤等を添加してもよい。
塗工液の分散方法としては、特に限定はされないが、多孔質層の表面形状を平たん均一化する観点から、塗工液中の無機粒子が均一分散し、無機粒子の1次平均粒径が均一であることが重要であり、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミルなどを用いて、無機粒子を溶媒に分散したのち、当該溶媒に有機樹脂を分散させることが好ましい。特に、塗工液中の無機粒子の1次平均粒径の均一性の観点から、ビーズミルを用いて分散することが好ましく、ビーズミルに用いるビーズ径は0.1~1mmが好ましく、使用するビーズの材質は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ジルコニア強化アルミナなどを用いることが好ましい。
また、フッ素含有樹脂を加えての分散は、複数回行うことが好ましく、さらに樹脂を溶媒と混合する際に使用する混合装置の周速は、無機粒子を溶媒に分散する速度より高速でかつ、段階的に高速にすることが、塗工液中の無機粒子の1次平均粒径の均一性の観点から好ましい。
塗工液の粘度は、3mPa・s以上、200mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上、150mPa・s以下であることがより好ましく、10mPa・s以上、100mPa・s以下であることがさらに好ましい。塗工液の粘度が200mPa・s以下であると、高速塗工が可能であり良好な生産性が得られる。塗工液が低粘度であれば高速塗工に適するため好ましいが、例えば安定な塗膜形成の観点から3mPa・sを下回らないことが好ましい。塗工液の粘度は、塗工液の固形分濃度、有機樹脂と無機粒子の混合比率、有機樹脂の分子量によって制御することができる。
得られた塗工液をポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に塗工する際に用いる塗工方法としては、例えば、ディップコーティング、グラビアコーティング、チャンバードクターコーティング、スリットダイコーティング、ナイフコーティング、コンマコーティング、キスコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、スクリーン印刷、パット印刷などの方式が挙げられる。これらの中でも、塗膜層の量産性の観点から、グラビアコーティング、チャンバードクターコーティング、スリットダイコーティングが好ましく、塗工液をポリオレフィン微多孔膜の両面に塗工する場合は、グラビアコーティング、チャンバードクターコーティングが特に好ましい。上記のようにして、塗工工程において塗膜層を形成することができる。
連続的に塗工工程を行う場合、ポリオレフィン微多孔膜の搬送速度は例えば5m/分~200m/分の範囲に設定でき、生産性と塗膜の厚みの均一性の点から、塗工方式に応じて適宜設定することができる。
多孔質層は、塗膜層を膜固定して多孔質層とする膜固定工程を行うことによって得ることができる。膜固定とは、塗工液に含まれる溶媒を乾燥によって除去し、多孔質層を得ることをいう。多孔質層は、イオン透過性の観点から、内部に空隙を含むことが好ましく、膜固定工程によって内部に空隙を含むことができる。
膜固定工程は、塗工液に含まれる溶媒が揮発する手法であれば限定されることなく、温風乾燥、赤外線乾燥、吸引乾燥、真空乾燥、マイクロ波乾燥から選択される少なくとも一つの工程を含むことが好ましい。乾燥は、例えば100℃以下の熱風で行うことができる。
多孔質層の膜厚(微多孔膜の両面に有する場合はその合計)は、好ましくは1.0~5.0μmより好ましくは1.5~4.0μmである。膜厚が1.0μmより小さいと、ポリオレフィンの融点以上でポリオレフィン微多孔膜が溶融収縮することを抑制できず、破膜を引き起こし絶縁性が損なわれる恐れがある。膜厚が1.0μm以上であれば、ポリオレフィン微多孔膜が融点以上で溶融収縮することを防ぎ、破膜強度と絶縁性を確保できる。膜厚が5.0μmより大きいと、ポリオレフィンの融点以上で溶融したポリオレフィンが多孔質層の表層まで到達できず、良好なメルトダウン耐性を維持できない。膜厚が5.0μm以下であれば、巻き嵩を抑えることができ、電気化学素子の高容量化に適している。
(電気化学素子)
本発明で言う電気化学素子は、電極組立体と、電極組立体を収容する電池ケースとを備える。
電極組立体は、正極、負極、及び正極と負極との間に介されたセパレータを含む。本発明のポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に、樹脂バインダおよび無機粒子を含む多孔質層が積層された電気化学素子用セパレータは上記セパレータに好適に用いることができる。
本発明で言う電気化学素子は、電極組立体と、電極組立体を収容する電池ケースとを備える。
電極組立体は、正極、負極、及び正極と負極との間に介されたセパレータを含む。本発明のポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に、樹脂バインダおよび無機粒子を含む多孔質層が積層された電気化学素子用セパレータは上記セパレータに好適に用いることができる。
このような電気化学素子としては、例えば、一次電池、二次電池、電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサ等が挙げられる。
一次電池としては、例えば、マンガン乾電池、アルカリマンガン乾電池、フッ化黒鉛・リチウム電池、二酸化マンガン・リチウム電池、固体電解質電池、注水電池、熱電池等が挙げられる。
二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池、ニッケル・カドニウム電池、ニッケル・水素電池、ニッケル・鉄蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、二酸化マンガン・リチウム二次電池、コバルト酸リチウム・炭酸系二次電池、バナジウム・リチウム二次電池等が挙げられる。
これらの中でも、長期に利用できることから、二次電池が好ましく、有機溶媒を利用することにより高エネルギー密度を実現しているリチウムイオン二次電池がより好ましい。
電池ケースとしては、例えば、アルミニウム製のケース、内面がニッケルメッキされた鉄製のケース、アルミニウムラミネートフィルムからなるケース等を用いることができる。
電池ケースの形状は、パウチ型、円筒型、角型、コイン型等が挙げられる。これらの中でも、高エネルギー密度を実現でき、低コストで自由に形状を設計できることから、パウチ型が好ましい。
正極は、活物質、バインダ樹脂、および導電助剤を用いてなる正極材が集電体上に積層されたものである。
活物質としては、LiCoO2、LiNiO2、Li(NiCoMn)O2などの層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMn2O4などのスピネル型マンガン酸化物、およびLiFePO4などの鉄系化合物などが挙げられる。
バインダ樹脂としては、耐酸化性が高い樹脂を使用すればよい。具体的には、フッ素含有樹脂、アクリル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂などが挙げられる。
導電助剤としては、カーボンブラック、黒鉛などの炭素材料などが挙げられる。
集電体としては、金属箔が好適であり、特にアルミニウムが用いられることが多い。
負極は、活物質およびバインダ樹脂を用いてなる負極材が集電体上に積層されたものである。
活物質としては、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなどの炭素材料、スズ、シリコンなどのリチウム合金系材料、リチウムなどの金属材料、およびチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)などが挙げられる。
バインダ樹脂としては、フッ素含有樹脂、アクリル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂などが挙げられる。
集電体としては、金属箔が好適であり、特に銅箔が用いられることが多い。
本発明の電気化学素子は、電解液を含有することが好ましい。電解液は、二次電池等の電気化学素子の中で正極と負極との間でイオンを移動させる場となっており、電解質を有機溶媒にて溶解させた構成をしている。
電解質としては、LiPF6、LiBF4、およびLiClO4などが挙げられるが、有機溶媒への溶解性、イオン電導度の観点からLiPF6が好適に用いられている。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどが挙げられ、これらの有機溶媒を2種類以上混合して使用してもよい。
以下、電気化学素子の中でも好ましく用いられるリチウムイオン二次電池の作製方法について説明する。
リチウムイオン二次電池の作製方法としては、まず活物質と導電助剤をバインダ樹脂溶液中に分散して電極用塗布液を調製し、この塗布液を集電体上に塗工して、溶媒を乾燥させることで正極、負極がそれぞれ得られる。乾燥後の塗工膜の膜厚は50μm以上500μm以下とすることが好ましい。
得られた正極と負極の間にリチウムイオン二次電池用セパレータを、それぞれの電極の活物質層と接するように配置し、アルミラミネートフィルム等の外装材に封入し、電解液を注入後、負極リードや安全弁を設置し、外装材を封止する。
このようにして得られたリチウムイオン二次電池は、電極との接着性が高く、かつ優れた電池特性を有し、また、低コストでの製造が可能となる。
(その他の用途)
本発明の多孔複合フィルムは、多孔質ゆえに物質の分離や選択透過及び隔離材等として用いられうる。具体的には、用途として、上記した電気化学素子以外に、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料、および医療用材料等が挙げられる。
本発明の多孔複合フィルムは、多孔質ゆえに物質の分離や選択透過及び隔離材等として用いられうる。具体的には、用途として、上記した電気化学素子以外に、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料、および医療用材料等が挙げられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
[測定法]
(電気化学素子用セパレータおよび多孔質層の厚み)
接触式膜厚計((株)ミツトヨ製「ライトマチック」(登録商標)series318)を使用して測定した。測定は、超硬球面測定子φ9.5mmを用いて、加重0.01Nの条件で20点を測定し、得られた測定値の平均値を厚みとした。また、多孔質層の厚みtは、次式を用いて計算した。
t=多孔質層形成後の試料の厚み(t1)-多孔質層形成前の試料の厚み(t2)。
(電気化学素子用セパレータおよび多孔質層の厚み)
接触式膜厚計((株)ミツトヨ製「ライトマチック」(登録商標)series318)を使用して測定した。測定は、超硬球面測定子φ9.5mmを用いて、加重0.01Nの条件で20点を測定し、得られた測定値の平均値を厚みとした。また、多孔質層の厚みtは、次式を用いて計算した。
t=多孔質層形成後の試料の厚み(t1)-多孔質層形成前の試料の厚み(t2)。
(透気抵抗度)
100mm×100mmサイズの試料3枚からそれぞれ無作為に抽出した一箇所を選び、王研式透気抵抗度測定装置(旭精工(株)社製EG01-5-1MR)を用いて、JIS P 8117(2009)に準拠して測定し、その平均値を透気抵抗度(秒/100cm3)とした。
100mm×100mmサイズの試料3枚からそれぞれ無作為に抽出した一箇所を選び、王研式透気抵抗度測定装置(旭精工(株)社製EG01-5-1MR)を用いて、JIS P 8117(2009)に準拠して測定し、その平均値を透気抵抗度(秒/100cm3)とした。
(突刺強度)
突刺強度は、IMADA製デジタルフォースゲージ(Model DS2-20N)を用いて、直径1mm(先端は0.5mmR)の針(カトーテック製P-3000S-102G-10)を用い、速度2mm/secで把持された膜厚T1(μm)の電気化学素子用セパレータを突刺したときの最大荷重値(P1)とした。下記の式により、膜厚を20μmとして換算したときの20μm換算突刺強度P2を算出した。
式:P2=(P1×20)/T1
20μm換算突刺強度は下記3段階にて評価を行った。
評価基準
A(良):8.3N以上
B(可):7.3N以上8.3N未満
C(不可):7.3N未満。
突刺強度は、IMADA製デジタルフォースゲージ(Model DS2-20N)を用いて、直径1mm(先端は0.5mmR)の針(カトーテック製P-3000S-102G-10)を用い、速度2mm/secで把持された膜厚T1(μm)の電気化学素子用セパレータを突刺したときの最大荷重値(P1)とした。下記の式により、膜厚を20μmとして換算したときの20μm換算突刺強度P2を算出した。
式:P2=(P1×20)/T1
20μm換算突刺強度は下記3段階にて評価を行った。
評価基準
A(良):8.3N以上
B(可):7.3N以上8.3N未満
C(不可):7.3N未満。
(多孔質層の密着性)
ジュラルミン板(5cm×15cm)を用意し、中央に1.8cm×5cmの3M社製スコッチ透明両面テープ(アクリル系粘着剤、品番665-1-18)を貼り付けた。次いで、試料(3cm×6cm)を、多孔質層が両面テープ側に向きかつ両面テープを覆うようにハンドローラーにより貼り付けた後、5分間室温で放置した。その後、ジュラルミン板を固定し、試料端部を把持して剥離角度が180度となる剥離方式によって、島津製作所製オートグラフAGS-Jを用いて、剥離速度300mm/分にて剥離試験を行い、剥離強度を調べた。このとき、テープ部分の長さ3cm分の剥離試験における剥離強度の平均値を剥離強度とした。剥離強度は下記4段階にて評価を行った。
評価基準
A(優):60gf/25mm以上
B(良):40gf/25mm以上60gf/25mm未満
C(可):20gf/25mm以上40gf/25mm未満
D(不可):20gf/25mm未満。
ジュラルミン板(5cm×15cm)を用意し、中央に1.8cm×5cmの3M社製スコッチ透明両面テープ(アクリル系粘着剤、品番665-1-18)を貼り付けた。次いで、試料(3cm×6cm)を、多孔質層が両面テープ側に向きかつ両面テープを覆うようにハンドローラーにより貼り付けた後、5分間室温で放置した。その後、ジュラルミン板を固定し、試料端部を把持して剥離角度が180度となる剥離方式によって、島津製作所製オートグラフAGS-Jを用いて、剥離速度300mm/分にて剥離試験を行い、剥離強度を調べた。このとき、テープ部分の長さ3cm分の剥離試験における剥離強度の平均値を剥離強度とした。剥離強度は下記4段階にて評価を行った。
評価基準
A(優):60gf/25mm以上
B(良):40gf/25mm以上60gf/25mm未満
C(可):20gf/25mm以上40gf/25mm未満
D(不可):20gf/25mm未満。
(シャットダウン温度、メルトダウン温度)
電気化学素子用セパレータから、測定用サンプルとして、直径19mmの円形状の測定用サンプルを切り出した。また、宝泉社製2032型コインセルの部材(上蓋、下蓋、PFA製ガスケット、直径15.5mm、厚み1.0mmの円形状のスペーサー、ウェーブワッシャー)を用意した。
電気化学素子用セパレータから、測定用サンプルとして、直径19mmの円形状の測定用サンプルを切り出した。また、宝泉社製2032型コインセルの部材(上蓋、下蓋、PFA製ガスケット、直径15.5mm、厚み1.0mmの円形状のスペーサー、ウェーブワッシャー)を用意した。
まず、露点温度を―35℃以下としたドライルーム内にて、下蓋の上に、下蓋側から順に、測定用サンプル、ガスケットを配置したセルを2個ずつ作製した。そして、作製した上記セルに、LiBF4にエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(EC/PC=50/50(重量比))を配合した濃度1Mのキシダ化学株式会社製電解液に、DIC製界面活性剤F-444を0.3wt.%添加した溶液を注液した。次いで、ガスケット中空部の測定用サンプルの上に、スペーサーを設置した後、セルを約-50kPaの圧力で1分間静置することを2回繰り返し、測定用サンプルに電解液を含浸させた。その後、スペーサーの上に、スペーサー側から順に、ウェーブワッシャー、上蓋を載置し、コインセルカシメ器で密閉してサンプルセルを得た。
得られたサンプルセルはオーブン内に設置した同軸コンタクトプローブで挟み、日置電機製LCRメータを用いて、振幅50mV、周波数1kHzにて該セルの抵抗を測定した。コインセルの温度は、該セルの上蓋に測温抵抗体を密着させて測定した。室温から50℃に昇温したのち、10分静置し、5℃/分の速度で180℃まで昇温しながら抵抗を測定した。抵抗が1kΩcm2に到達したときの温度をシャットダウン温度とし、前記シャットダウン温度に到達後さらに昇温を継続しながら測定した抵抗が再び1kΩcm2となる温度をメルトダウン温度とした。上記メルトダウン温度が180℃以上であれば、電気化学素子用セパレータを含んだ電池が加熱された際、あるいは内部短絡等により電池内部の温度が上昇した際でも、電気化学素子用セパレータがシャットダウン特性を維持しており、短絡しにくい、あるいは短絡しても大電流が流れず、メルトダウン耐性が高いと判断した。
(表面酸素濃度)
ポリオレフィン微多孔膜の表面酸素濃度は、次の手順に従ってX線光電子分光(XPS)によって求めることができる。測定には、島津製作所株式会社製KRATOS ULTRA2を使用した。ポリオレフィン微多孔膜をカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げた後、光電子入射角度を90度に設定し、X線源としてAlKαを用い、試料チャンバー内を1×10-6[Pa]の真空度に保った。 測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。O1sピーク面積は、528~536eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、C1sピーク面積は、281~289eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。ポリオレフィン微多孔膜の表面に、-COOH、-OH、-CO-R、-COO-R(Rはアルキル基であり、アルキル基の炭素鎖は直鎖状でも枝分かれであってもよい。)の極性基の少なくとも1種以上有する場合、528~536eVの結合エネルギーの範囲にピークが出現する。ポリオレフィン微多孔膜の表面酸素濃度は、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比で計算して求めた。ポリオレフィン微多孔膜表面の酸素を含む極性基の存在は、表面酸素濃度比から判断した。表面酸素濃度は、下記基準に基づき行った。
〇(良):表面酸素濃度が1%以上であった。
×(不良):表面酸素濃度が1%未満であった。
ポリオレフィン微多孔膜の表面酸素濃度は、次の手順に従ってX線光電子分光(XPS)によって求めることができる。測定には、島津製作所株式会社製KRATOS ULTRA2を使用した。ポリオレフィン微多孔膜をカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げた後、光電子入射角度を90度に設定し、X線源としてAlKαを用い、試料チャンバー内を1×10-6[Pa]の真空度に保った。 測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。O1sピーク面積は、528~536eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、C1sピーク面積は、281~289eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。ポリオレフィン微多孔膜の表面に、-COOH、-OH、-CO-R、-COO-R(Rはアルキル基であり、アルキル基の炭素鎖は直鎖状でも枝分かれであってもよい。)の極性基の少なくとも1種以上有する場合、528~536eVの結合エネルギーの範囲にピークが出現する。ポリオレフィン微多孔膜の表面酸素濃度は、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比で計算して求めた。ポリオレフィン微多孔膜表面の酸素を含む極性基の存在は、表面酸素濃度比から判断した。表面酸素濃度は、下記基準に基づき行った。
〇(良):表面酸素濃度が1%以上であった。
×(不良):表面酸素濃度が1%未満であった。
(赤外分光法全反射法 2800cm-1から3000cm-1に出現するピークのABSORBANCE)
電気化学素子用セパレータから、測定用サンプルとして、長さ15mm(機械方向)×幅7mmの長方形状の測定用サンプルを切り出した。幅13mmのチューコーフロー製耐熱ポリイミドテープAPI-114AFRの中央部に5mm×5mmの正方形の孔を開け、ポリオレフィン微多孔膜側を全方向把持した状態で貼付け固定した。このサンプルを固定したポリイミドテープをΦ5mmの穴の開いた長さ30mm×幅20mm、厚さ0.5mmのアルミ板上に貼り、もう1枚の同形状のアルミ板で挟み、これらをポリイミドテープでスライドガラス上に固定し観察用可視光が透過することができるサンドサンプルを得た。サンドサンプルをメトラー・トレド製ホットステージFP82HTに装着、顕微鏡下で100℃に昇温後、1分間静置し、2℃/分の速度で200℃まで昇温した後、-30℃/分の速度で25℃まで降温させ、加熱処理後の電気化学素子用セパレータをスライドガラスから取り出した。
電気化学素子用セパレータから、測定用サンプルとして、長さ15mm(機械方向)×幅7mmの長方形状の測定用サンプルを切り出した。幅13mmのチューコーフロー製耐熱ポリイミドテープAPI-114AFRの中央部に5mm×5mmの正方形の孔を開け、ポリオレフィン微多孔膜側を全方向把持した状態で貼付け固定した。このサンプルを固定したポリイミドテープをΦ5mmの穴の開いた長さ30mm×幅20mm、厚さ0.5mmのアルミ板上に貼り、もう1枚の同形状のアルミ板で挟み、これらをポリイミドテープでスライドガラス上に固定し観察用可視光が透過することができるサンドサンプルを得た。サンドサンプルをメトラー・トレド製ホットステージFP82HTに装着、顕微鏡下で100℃に昇温後、1分間静置し、2℃/分の速度で200℃まで昇温した後、-30℃/分の速度で25℃まで降温させ、加熱処理後の電気化学素子用セパレータをスライドガラスから取り出した。
堀場製作所製FT-720を用いて、スキャン回数:30、装置関数:H-G、走査速度:5.0、分解能:4、ゲイン:AUTO、測定波数領域:600cm-1~4000cm-1の条件にて、加熱処理後の電気化学素子用セパレータの長さ方向と幅方向ともに中心位置の多孔質層側をATR法(ATRクリスタル:ダイヤモンド)で測定した。測定は、装置付属のサンプルホルダ上に加熱処理後の電気化学素子用セパレータの多孔質層側をATRクリスタル側に向けてのせ、装置付属の抑え棒で押さえつけ、実施した。得られたスペクトルの2700cm-1と3000cm-1とを結ぶ線分をベースラインとし、ベースライン補正を行った。そして、得られたスペクトルの2800cm-1から3000cm-1の波数の範囲における、ABSORBANCEを記録した。赤外分光法全反射法におけるセパレータの厚み方向の赤外線の侵入深さは2μm以下であるため、多孔質層の厚みが2μmよりも大きい電気化学素子用セパレータでは、上記ABSORBANCEが0.05より小さければ、加熱処理後の電気化学素子用セパレータのポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンが多孔質層へ浸透が進行しておらず、当該ABSORBANCEが0.05以上であれば、加熱処理後の電気化学素子用セパレータのポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンが多孔質層へ浸透し、多孔質層へ浸透したポリオレフィンの一部が多孔質層の表面に到達したと判断した。
[実施例1]
(ポリオレフィン微多孔膜の作製)
質量平均分子量2.7×106の超高分子量ポリエチレン40質量%と質量平均分子量2.6×105の高密度ポリエチレン60質量%とからなる組成物100質量部に、テトラキス[メチレン‐3‐(3,5‐ジターシャリーブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート]メタン0.375質量部をドライブレンドし、ポリエチレン組成物を作成した。得られたポリエチレン組成物23重量部を二軸押出機に投入した。さらに、流動パラフィン77重量部を二軸押出機のサイドフィーダーから供給し、溶融混練して、押出機中にてポリエチレン樹脂溶液を調製した。続いて、この押出機の先端に設置されたダイから190℃でポリエチレン樹脂溶液を押し出し、内部冷却水温度を25℃に保った冷却ロールで引き取りながら未延伸ゲル状シートを成形した。
(ポリオレフィン微多孔膜の作製)
質量平均分子量2.7×106の超高分子量ポリエチレン40質量%と質量平均分子量2.6×105の高密度ポリエチレン60質量%とからなる組成物100質量部に、テトラキス[メチレン‐3‐(3,5‐ジターシャリーブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート]メタン0.375質量部をドライブレンドし、ポリエチレン組成物を作成した。得られたポリエチレン組成物23重量部を二軸押出機に投入した。さらに、流動パラフィン77重量部を二軸押出機のサイドフィーダーから供給し、溶融混練して、押出機中にてポリエチレン樹脂溶液を調製した。続いて、この押出機の先端に設置されたダイから190℃でポリエチレン樹脂溶液を押し出し、内部冷却水温度を25℃に保った冷却ロールで引き取りながら未延伸ゲル状シートを成形した。
得られた未延伸ゲル状シートを逐次二軸延伸機に導入し、シート搬送方向(MD)及びシート幅方向(TD)にそれぞれ5×5倍に延伸を行った。この時、予熱/延伸/熱固定の温度を115/115/100℃に調整した。得られた二軸延伸ゲル状シートを30℃まで冷却し、25℃に温調した塩化メチレンの洗浄槽内にて流動パラフィンを除去し、60℃に調整された乾燥炉で乾燥し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
(ポリオレフィン微多孔膜へのコロナ処理)
ウェッジ株式会社製のCTW-0112N型のコロナ処理装置に、電極として外径5mm、電極幅200mmのステンレス製電極ロッドを2本使用し、ポリオレフィン微多孔膜片面にコロナ処理を行った。コロナ放電は、周波数27.8kHz、電圧値76V、電流値2A、電力値0.16kWの条件で発生させ、ポリオレフィン微多孔膜を20m/minの速度で搬送させることで、放電量40W・min/m2の処理強度でコロナ処理を行った。ここで得られたコロナ処理済ポリオレフィン微多孔膜について、上記表面酸素濃度を求めた。結果を表1に示す。
ウェッジ株式会社製のCTW-0112N型のコロナ処理装置に、電極として外径5mm、電極幅200mmのステンレス製電極ロッドを2本使用し、ポリオレフィン微多孔膜片面にコロナ処理を行った。コロナ放電は、周波数27.8kHz、電圧値76V、電流値2A、電力値0.16kWの条件で発生させ、ポリオレフィン微多孔膜を20m/minの速度で搬送させることで、放電量40W・min/m2の処理強度でコロナ処理を行った。ここで得られたコロナ処理済ポリオレフィン微多孔膜について、上記表面酸素濃度を求めた。結果を表1に示す。
(塗布液の調製)
アルミナ(略球形状、粒子サイズ0.5μm)、アクリル系樹脂A(中間点ガラス転移温度―25℃)、カルボキシルメチルセルロース(回転半径25nm)を、重量比98:1:1の割合で水に添加して撹拌することで均一な分散スラリーを得た。
アルミナ(略球形状、粒子サイズ0.5μm)、アクリル系樹脂A(中間点ガラス転移温度―25℃)、カルボキシルメチルセルロース(回転半径25nm)を、重量比98:1:1の割合で水に添加して撹拌することで均一な分散スラリーを得た。
〈多孔質層の積層〉
ポリオレフィン微多孔膜のコロナ処理を施した面に、グラビアコート法にてスラリーを塗布し、熱風乾燥炉(温度60℃)で20秒間乾燥し、多孔質層厚み4μmの電気化学素子用セパレータを得た。本電気化学素子用セパレータにつき、電気化学素子用セパレータおよび多孔質層の厚み、透気抵抗度、突刺強度、多孔層の密着性、シャットダウン温度、メルトダウン温度、赤外分光法全反射法を評価した。結果を表1に示す。
ポリオレフィン微多孔膜のコロナ処理を施した面に、グラビアコート法にてスラリーを塗布し、熱風乾燥炉(温度60℃)で20秒間乾燥し、多孔質層厚み4μmの電気化学素子用セパレータを得た。本電気化学素子用セパレータにつき、電気化学素子用セパレータおよび多孔質層の厚み、透気抵抗度、突刺強度、多孔層の密着性、シャットダウン温度、メルトダウン温度、赤外分光法全反射法を評価した。結果を表1に示す。
[実施例2]
多孔質層厚みを3μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
多孔質層厚みを3μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
多孔質層厚みを2μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
多孔質層厚みを2μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
コロナ放電処理時のポリオレフィン微多孔膜の搬送速度を変更することで、コロナ処理の放電量を表1記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
コロナ放電処理時のポリオレフィン微多孔膜の搬送速度を変更することで、コロナ処理の放電量を表1記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
[実施例5]
塗布液の調整に用いる樹脂バインダをアクリル系樹脂B(中間ガラス転移温度-40℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、多孔質層を積層する面にコロナ処理を施したポリオレフィン微多孔膜に、多孔質層を積層した電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
塗布液の調整に用いる樹脂バインダをアクリル系樹脂B(中間ガラス転移温度-40℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、多孔質層を積層する面にコロナ処理を施したポリオレフィン微多孔膜に、多孔質層を積層した電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
[実施例6]
コロナ放電処理時のポリオレフィン微多孔膜の搬送速度を変更することで、コロナ処理の放電量を表1記載のとおりに変更した以外は、実施例5と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜に多孔質層を積層した電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
コロナ放電処理時のポリオレフィン微多孔膜の搬送速度を変更することで、コロナ処理の放電量を表1記載のとおりに変更した以外は、実施例5と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜に多孔質層を積層した電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
[実施例7]
塗布液の調整に用いる樹脂バインダをアクリル系樹脂C(中間ガラス転移温度-7℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、多孔質層を積層する面にコロナ処理を施したポリオレフィン微多孔膜に、多孔質層を積層した電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
塗布液の調整に用いる樹脂バインダをアクリル系樹脂C(中間ガラス転移温度-7℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、多孔質層を積層する面にコロナ処理を施したポリオレフィン微多孔膜に、多孔質層を積層した電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
[実施例8]
コロナ放電処理時のポリオレフィン微多孔膜の搬送速度を変更することで、コロナ処理の放電量を表1記載のとおりに変更した以外は、実施例7と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜に多孔質層を積層した電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
コロナ放電処理時のポリオレフィン微多孔膜の搬送速度を変更することで、コロナ処理の放電量を表1記載のとおりに変更した以外は、実施例7と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜に多孔質層を積層した電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
[実施例9]
コロナ放電処理時のポリオレフィン微多孔膜の搬送速度を変更することで、コロナ処理の放電量を表1記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
コロナ放電処理時のポリオレフィン微多孔膜の搬送速度を変更することで、コロナ処理の放電量を表1記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
[実施例10]
塗布液の調整に用いる樹脂バインダをアクリル系樹脂D(中間ガラス転移温度50℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、多孔質層を積層する面にコロナ処理を施したポリオレフィン微多孔膜に、多孔質層を積層した電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
塗布液の調整に用いる樹脂バインダをアクリル系樹脂D(中間ガラス転移温度50℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、多孔質層を積層する面にコロナ処理を施したポリオレフィン微多孔膜に、多孔質層を積層した電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
ポリオレフィン微多孔膜にコロナ処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
ポリオレフィン微多孔膜にコロナ処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
[比較例2、3]
コロナ放電処理時のポリオレフィン微多孔膜の搬送速度を変更することで、コロナ処理の放電量を表1記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
コロナ放電処理時のポリオレフィン微多孔膜の搬送速度を変更することで、コロナ処理の放電量を表1記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
[比較例4]
ポリオレフィン微多孔膜にコロナ処理を行わなかった以外は、実施例5と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
ポリオレフィン微多孔膜にコロナ処理を行わなかった以外は、実施例5と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
[比較例5]
ポリオレフィン微多孔膜にコロナ処理を行わなかった以外は、実施例7と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
ポリオレフィン微多孔膜にコロナ処理を行わなかった以外は、実施例7と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
[比較例6]
ポリオレフィン微多孔膜にコロナ処理を行わなかった以外は、実施例10と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
ポリオレフィン微多孔膜にコロナ処理を行わなかった以外は、実施例10と同様にしてポリオレフィン微多孔膜および電気化学素子用セパレータを製造し、測定及び評価した。結果を表1に示す。
表1および実施例と比較例との対比から、ポリオレフィン微多孔膜に適切にコロナ処理を施したうえで多孔質層を形成したものについて、機械的強度を有し、多孔質層とポリオレフィン微多孔膜との密着性を維持しつつ、高いメルトダウン温度を有していることがわかる。
Claims (5)
- ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に、樹脂バインダおよび無機粒子を含む多孔質層が積層された電気化学素子用セパレータであって、前記電気化学素子用セパレータを200℃まで昇温させた後、室温まで降温させ、赤外分光法の全反射法で前記電気化学素子用セパレータの多孔質層側を測定した際の、2800cm-1から3000cm-1に出現するピークのABSORBANCEが0.05以上0.17未満であることを特徴とする電気化学素子用セパレータ。
- ポリオレフィン微多孔膜の、樹脂バインダおよび無機粒子を含む多孔質層が積層される面の表面酸素濃度が1%以上であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学素子用セパレータ。
- インピーダンス法によるメルトダウン温度が180℃以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気化学素子用セパレータ。
- 前記多孔質層に含まれる樹脂バインダが、中間点ガラス転移温度が-80℃以上0℃以下のアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電気化学素子用セパレータ。
- (A)ポリオレフィン微多孔膜にコロナ処理を実施する工程
(B)前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に樹脂バインダおよび無機粒子を含んだ塗工液にて塗布し乾燥する工程
を含む電気化学素子用セパレータの製造方法であって、前記コロナ処理の処理条件が、放電量20W・min/m2以上50W・min/m2未満であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の電気化学素子用セパレータの製造方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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