JP2022124813A - 深絞り成形加工用原紙および深絞り成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境負荷が低く、伸張性が高く、かつ深絞り成形した際に紙面に亀裂が発生しにくい、深絞り成形加工用原紙、およびこれを用いた深絞り成形品を提供すること。【解決手段】深絞り成形加工用原紙であり、該原紙は、紙基材からなる紙基材層を備え、該紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.60mm以上2.40mm以下であり、該紙基材を構成するパルプ中、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合が8%以上35%以下であり、該原紙の縦方向および横方向の破断伸びが、それぞれ3.0%以上であり、かつ、縦方向および横方向の破断伸びの相乗平均が4.0%以上である、深絞り成形加工用原紙。【選択図】なし

Description

本発明は、深絞り成形加工用原紙および深絞り成形品に関する。
従来、食品容器、あるいは各種工業製品の包装材料として、成形が容易であること、大量生産できること、安価に製造できることなどから、プラスチック製容器が大量に使用されてきた。これらのプラスチック製容器としては、例えば、発泡ポリスチレンビーズをモウルド成形または発泡ポリスチレンシートをプレス成形して得た発泡スチロール容器、またポリプロピレン容器、ポリエチレンテレフタレート容器、ポリ塩化ビニル容器等が広く用いられている。しかしながら、上記のようなプラスチック製容器は、廃棄処分時の環境に対する負荷が高いという問題があった。すなわち、埋め立て処理をすると半永久的に分解されず地中に残存し、また、焼却処理をすると、燃焼カロリーが高いため焼却炉を傷めやすいこと、完全燃焼しにくいこと、特にポリ塩化ビニルを使用したものは、腐食性の強い塩化水素ガスを発生する恐れがあることなどの問題があった。
そこで、近年、環境問題、リサイクル問題、省資源を考慮し、前述のプラスチック製容器に代わるものとして、リサイクルが可能で、廃棄された場合の燃焼カロリーも低く、生分解性能を有し、環境に対する負荷の低いパルプを素材とする容器が求められている。
パルプ、もしくはパルプを主体とする素材による三次元形状を有する成形品としては、従来からパルプモウルド容器が存在する。パルプモウルド製容器は、以前から包装容器として広く使用されている。しかし、パルプモウルドの製造には時間もかかり生産性に問題があった。さらに、パルプモウルド容器には食品用のトレー容器にはしばしば要求される十分な耐水性や耐油性を付与することが困難であった。
パルプモウルド以外で、パルプを主体した成形品を得る方法として、板紙等のパルプを主体とした基材シートを加熱下でプレス成形する方法が知られている。この方法は、雌雄型の間に予め罫線を入れた基材シートを装填し、熱圧でプレス成形したものである。このようなプレス成形法は、1回のプレスで成形品が得られるため、生産性が非常に高い。しかし、樹脂や金属と異なり、紙パルプを主体とする基材シートは一般に延伸性、延展性、伸縮性に乏しい。従って、ある程度の深さを持つトレーを成形しようとして深いプレス成形を行うと、基材シートがその延伸に耐えられず破断する恐れがある。従って通常の板紙等を基材として使用した場合、いわゆる紙皿と呼ばれるような深さのほとんどない成形容器しか製造することできず、得られる成形品の形状が非常に限られていた。
このような問題を解決するため、例えば、特許文献1には、2層以上からなる多層抄きされた成形容器用原紙において、表層と裏層の表面に澱粉とアルキルケテンダイマーの混合液を塗工した成形容器用原紙が記載されている。
特開2014-167192号公報
特許文献1に記載の成形容器用原紙は、表面にアルキルケテンダイマー(AKD)を含有する塗工層を使用して伸張性を向上させている。しかし、紙基材の表面にアルキルケテンダイマー(AKD)を使用すると、紙基材とラミネートフィルムとの密着性が低下し、ラミネートフィルムが剥離してしまうという問題があった。
本発明は、環境負荷が低く、伸張性が高く、かつ深絞り成形した際に紙面に亀裂が発生しにくい、深絞り成形加工用原紙、およびこれを用いた深絞り成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、深絞り成形加工用原紙を構成するパルプの長さ加重平均繊維長、および微細繊維の本数割合を特定の範囲とし、かつ、縦方向および横方向の破断伸び、ならびに縦方向および横方向の破断伸びの相乗平均を特定の範囲とすることにすることにより、上記の課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>~<7>に関する。
<1> 深絞り成形加工用原紙であり、該原紙は、紙基材からなる紙基材層を備え、該紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.60mm以上2.40mm以下であり、該紙基材を構成するパルプ中、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合が8%以上35%以下であり、
該原紙の縦方向および横方向の破断伸びが、それぞれ3.0%以上であり、かつ、縦方向および横方向の破断伸びの相乗平均が4.0%以上である、
深絞り成形加工用原紙。
<2> 前記原紙の縦方向および横方向の破断伸びが、それぞれ9.0%以上であり、かつ、縦方向および横方向の破断伸びの相乗平均が10.0%以上である、<1>に記載の深絞り成形加工用原紙。
<3> 前記紙基材を構成するパルプのカール値が5%以上12%以下である、<1>または<2>に記載の深絞り成形加工用原紙。
<4> 前記原紙の地合指数が20以上である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の深絞り成形加工用原紙。
<5> 前記原紙の坪量が100g/m以上400g/m以下であり、紙厚が0.1mm以上0.5mm以下であり、かつ、密度が0.80g/cm以上1.0g/cm以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の深絞り成形加工用原紙。
<6> 前記紙基材層の少なくとも一方の面に、さらに熱可塑性樹脂層を有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の深絞り成形加工用原紙。
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の深絞り成形加工用原紙を用いてなる、深絞り成形品。
本発明によれば、環境負荷が低く、伸張性が高く、かつ深絞り成形した際に紙面に亀裂が発生しにくい、深絞り成形加工用原紙、およびこれを用いた深絞り成形品が提供される。
プレスによる深絞り成形加工の模式図である。 実施例で作製した成形品の平面図、および正面図である。
[深絞り成形加工用原紙]
本実施形態の深絞り成形加工用原紙(以下、単に「原紙」ともいう)は、紙基材からなる紙基材層を備え、該紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.60mm以上2.40mm以下であり、該紙基材を構成するパルプ中、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合が8%以上35%以下であり、該原紙の縦方向および横方向の破断伸びが、それぞれ3.0%以上であり、かつ、縦方向および横方向の破断伸びの相乗平均が4.0%以上である。
本実施形態の深絞り成形加工用原紙によれば、環境負荷が低く、伸張性が高く、かつ深絞り成形した際に紙面に亀裂が発生しにくい、深絞り成形加工用原紙が提供される。
従来のプラスチック容器に比べ、パルプを主体とする紙基材層を備える本実施形態の深絞り成形加工用原紙を用いて深絞り成形品を得ることにより、環境負荷が低減される。
また、深絞り成形した際に紙基材面に亀裂が発生しにくい理由としては、以下のように考えらえる。紙基材は、パルプ繊維の集合した不均一はシートであるため、繊維間結合が多く、深絞り成形した際に亀裂が生じにくい箇所と、繊維間結合が少なく、深絞り成形した際の破断し、亀裂が生じやすい箇所とが混在している。深絞り成形した際に紙面に亀裂が発生するのは、繊維間結合が少ない箇所が存在するためであると考えられた。そこで、同じ質量であれば、繊維本数が多い、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合を特定の範囲とすることにより、繊維間結合を増やし、繊維間結合が少なく伸びにくい箇所が減少し、深絞り成形時の亀裂の発生が抑制されたものと考えられる。また、紙基材層を構成するパルプの長さ加重平均繊維長を特定の範囲とすることにより、紙基材の強度と深絞り成形時の亀裂の発生抑制が両立されたものと考えられる
さらに、原紙の縦方向および横方向の破断伸び、ならびに縦方向および横方向の破断伸びの相乗平均を特定の値以上とすることにより、深絞り成形した際に紙基材面における亀裂の発生がさらに抑制されると考えられる。なお、深絞り成形では、短時間での延伸による紙基材面における亀裂の発生を抑制する必要があり、一方、破断伸びの測定では、深絞り成形時に比べて時間を掛けて原紙を破断させるため、破断伸びに優れる原紙を使用することで、必ずしも深絞り成形時に紙面の亀裂が抑制されるものではないものの、上記の破断伸びの要件を満たしていない原紙では、十分な成形加工性が得られない。
なお、深絞り成形とは、切断、接着等の加工をせずに、一枚のシートから立体的な成形品を得る成形方法である。深絞り成形としては、プレス成形、真空成形、圧空成形が例示される。
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
深絞り成形加工用原紙は、紙基材からなる紙基材層を備える。なお、深絞り成形加工用原紙は、少なくとも一層の紙基材層を備えるものであり、二層以上の紙基材層を備えるものであってもよい。これらの中でも、一層または二層の紙基材層を備えることが好ましく、一層の紙基材層を備えることがより好ましい。紙基材層を二層有する態様としては、二層の紙基材層でポリエチレンフィルムを挟んだポリサンド紙が例示される。なお、ポリサンド紙の一方の面または両面に、さらに熱可塑性樹脂層を設けてもよい。
深絞り成形加工用原紙は、紙基材層のみから構成されていてもよいが、紙基材層に加えて、紙基材層の少なくとも一方の面に、さらに熱可塑性樹脂層を有することが好ましい。熱可塑性樹脂層は、深絞り成形加工品としたときに、少なくとも食品接触面に熱可塑性樹脂層を有することが好ましい。なお、食品接触面とは反対面にも熱可塑性樹脂層を設けてもよい。
〔紙基材層〕
紙基材層は紙基材からなり、紙基材は、原料としてパルプを含む。パルプの製法および種類は、特に限定されない
<原料パルプ>
本実施形態において、紙基材を構成するパルプとしては、環境負荷低減の観点から、天然パルプ繊維が好ましく、天然パルプ繊維としては、木材繊維(化学パルプ、機械パルプ)、非木材繊維、古紙パルプなどが必要に応じて任意に使用される。木材繊維のうち化学パルプとしては、木材チップ蒸解時に苛性ソーダと硫化ナトリウムを使用するクラフトパルプや、亜硫酸と亜硫酸水素塩を使用する亜硫酸パルプなどが挙げられる。これらのパルプは未晒品でも、漂白処理を施したもの(晒品)でもよい。また、機械パルプとしては、丸太をグラインダーで磨砕して得られるグラウンドウッドパルプ(GP)、製材工場の廃材をリファイナーで磨砕(リファイニング)して得られるリファイナーグラウンドウッドパルプ(RGP)、木材チップを加熱、リファイニング処理して得られるサーモメカニカルパルプ(TMP)などが挙げられる。これらの機械パルプのうち、シートの嵩高さ、および強度の点からTMPが最適である。なおTMPとしては、木材チップを化学処理した後に加圧下でリファイニングするC-TMP、さらに漂白処理を施したBC-TMP等も含むものとする。
また、こうした木材繊維パルプのうち、マツ、カラマツ、スギ、モミ、ヒノキ等の針葉樹から得られる繊維長の長いパルプは紙シートの延伸性、強度を向上させるために好適に使用される。また、本発明の効果を損なわない範囲で、ユーカリ、アカシア、カバ、ブナ、カエデ、ニレ、クリ等の広葉樹から得られる繊維長の短いパルプを併用することもできる。
また、本実施形態で使用できる非木材繊維としては、コウゾ、ミツマタ、ガンピ、アマ、タイマ、ケナフ、チョマ、ジュート、サンヘンプなどの靱皮繊維類や、木綿、コットンリンターなどの種毛繊維類や、マニラ麻、サイザル麻、エスパルトなどの葉繊維類や、竹、イネワラ、ムギワラ、サトウキビバガスなどの茎繊維類などが挙げられる。特にコウゾ、ミツマタ、ケナフ、マニラ麻、サイザル麻、木綿、コットンリンターなどは、繊維長も長く、本発明原紙の延伸性、強度を向上させることができるため好適に用いられる。非木材繊維の蒸解は、木材繊維と同様の方法で行うことができる。
本実施形態で使用できる古紙パルプとしては、段ボール古紙、雑誌古紙などが挙げられる。
これらのパルプ繊維は単独で、あるいは2種類以上を併用して使用することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて合成樹脂繊維を混合することができる。使用できる合成樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維などが挙げられる。
本実施形態では、後述する所望の長さ加重平均繊維長を得る観点から、原料パルプが針葉樹パルプを含有することが好ましい。
<パルプ特性>
(長さ加重平均繊維長)
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長は、原紙としての紙力を得る観点から、0.60mm以上、好ましくは0.65mm以上、さらに好ましくは0.70mm以上であり、そして、2.40mm以下であり、好ましくは2.35mm以下である。
紙基材を構成する繊維の長さ加重平均繊維長は、原紙を実施例に記載の方法にて離解し、得られたパルプスラリーの繊維長を繊維長測定器(例えば、バルメット社製、型式FS-5、UHDベースユニット付き)にて測定して、算出する。
なお、長さ加重平均繊維長は、長さ0.2mm以上7.6mm以下の繊維を選択して測定した繊維長に対して、長さ加重平均繊維長を算出する。
(微細繊維の本数割合)
紙基材を構成するパルプ中、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合は、8%以上35%以下である。微細繊維の本数割合が8%以上であると、繊維間結合が増加し、深絞り成形時の亀裂等の発生が抑制される。また、微細繊維の本数割合が35%以下であると、微細繊維の増加による破断伸びの低下が抑制される。
繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合は、好ましくは8.5%以上であり、そして、好ましくは32%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは28%以下、よりさらに好ましくは26%以下である。
紙基材を構成する繊維のパルプ中、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数は、原紙を実施例に記載の方法にて離解し、得られたパルプスラリーの繊維長を繊維長測定器(例えば、バルメット社製、型式FS-5、UHDベースユニット付き)にて測定して、算出する。繊維長が0.2mm以下であり、かつ、繊維幅が75μm以下の繊維を微細繊維とし、測定したパルプの本数に対する、微細繊維の本数割合を算出する。
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長および微細繊維の本数割合を上記の範囲内とするためには、原料パルプの選択、パルプの化学的処理や機械的処理における濾過の有無、叩解処理の濃度および叩解負荷などを選択することで適宜調整すればよい。
また、微細繊維の本数割合を増やすことを目的として、パルプ繊維を機械粉砕した粉末パルプを添加してもよい。
さらに、紙基材を製造する際に、抄紙工程においてカチオン性ポリマーである歩留向上剤を添加することにより、微細繊維が抄紙の際に紙基材に留まる割合が高くなるため、抄紙工程でのカチオン性ポリマーの添加により微細繊維の本数割合を増加させてもよい。
(カール値)
紙基材を構成するパルプのカール値は、繊維間結合を増加させる観点、原紙の破断伸びを所望の範囲とする観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは5.2%以上、さらに好ましくは5.4%以上、よりさらに好ましくは5.6%以上、特に好ましくは5.8%以上であり、そして、好ましくは12%以下、より好ましくは11%以下、さらに好ましくは10%以下である。
前記紙基材を構成するパルプのカール値(カール指数ともいう)は、パルプ繊維を真っすぐに伸ばしたときの繊維の長さ(L)およびカールしている状態での繊維の長さ(L)を用いて、以下のように示される。
カール値(%)=(L-L)/L×100
ここで、繊維の長さ(L)および繊維の長さ(L)は、Lが長さ0.2mm以上7.6mm以下の繊維を選択して測定した繊維の長さに対して、長さ加重平均値を算出する。なお、上述した長さ加重平均繊維長は、Lの長さ加重平均繊維長である。
およびLは画像処理にて算出される。Lは、繊維の長さが最長になるように画像処理し、Lは、カールしている(曲がった)状態で、長さが最長になるように画像処理を行う。
なお、叩解時のパルプスラリーの濃度を高くすることによって、カール値は高くなる傾向にある。従って、叩解時のパルプスラリーの濃度を調整することによって、原紙を構成するパルプのカール値を調整することができる。
紙基材を構成するパルプのカール値は、原紙を実施例に記載の方法にて離解し、得られたパルプスラリーのカール値を繊維長測定器(例えば、バルメット社製、型式FS-5、UHDベースユニット付き)にて測定して、算出される。
<任意成分>
紙基材は、必要に応じて、例えば、アニオン性、カチオン性もしくは両性の歩留剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、填料、サイズ剤等の内添助剤、染料、蛍光増白剤等の任意成分を含んでいてもよい。
乾燥紙力増強剤としては、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。乾燥紙力増強剤の含有量は、特に限定されず、使用するパルプや抄造方法等の特性に合わせて適宜使用量を調整すればよい。
湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
填料としては、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機填料、アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の有機填料が挙げられる。
サイズ剤としては、ロジンサイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤等の内添サイズ剤、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体等の表面サイズ剤が挙げられる。
<紙基材の製造方法>
紙基材の製造方法は、上記の原料パルプを含むスラリーを抄紙する工程を含むことが好ましい。
抄紙方法については、特に限定されず、例えばpHが4.5付近で抄紙を行う酸性抄紙法、pHが約6~約9で抄紙を行う中性抄紙法等が挙げられる。
抄紙工程では、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙工程用薬剤を適宜添加できる。
抄紙機についても、特に限定されず、例えば長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、またはこれらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。
(クルパック処理)
紙基材は、クルパック処理を施していていもよい。クルパック処理とは、抄紙機上で紙を微細に収縮することによって、伸長性能を与える処理である。
具体的な製造方法は、抄紙機ドライヤーの一部にクルパック装置を設置し、湿紙をニップロールのあるエンドレスの厚い弾性ゴム製ブランケットと加熱ドライヤーの間に通し、予め伸長させておいたブランケットが収縮して走行する紙匹を収縮させ、破断伸びが高められ造られる。なお、できた縮みは後工程で伸びないように乾燥・固定する。
クルパック装置では、主にクルパック装置入り側の製造スピードと、クルパック装置出側の製造スピードの比率によって紙の縦方向の破断伸びを調整することができる。
<紙基材の特性>
紙基材は、単層抄きの紙であってもよく、多層抄きの紙であってもよいが、好ましくは単層抄き以上7層抄き以下、より好ましくは単層抄き以上5層抄き以下である。
また、紙基材として、二層以上の紙層を接着剤により積層した多層紙を使用してもよい。
紙基材層の厚みは、合計して、好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上、さらに好ましくは80μm以上であり、そして、好ましくは500μm以下、より好ましくは450μm以下、さらに好ましくは400μm以下、よりさらに好ましくは350μm以下である。
紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
紙基材の坪量は、合計して、好ましくは30g/m以上、より好ましくは40g/m以上、さらに好ましくは50g/m以上であり、そして、好ましくは500g/m以下、好ましくは400g/m以下、さらに好ましくは350g/m以下、よりさらに好ましくは320g/m以下である。
紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
紙基材の密度は、合計して、好ましくは0.4g/cm以上、より好ましくは0.5g/cm以上、さらに好ましくは0.6g/cm以上、よりさらに好ましくは0.65g/cmであり、そして、好ましくは1.2g/cm以下、好ましくは1.1g/cm以下、さらに好ましくは1.0g/cm以下、よりさらに好ましくは0.9g/cm以下である。
紙基材の密度は、紙基材の厚みおよび坪量から算出される。
深絞り成形加工用原紙中の紙基材の含有量は、環境負荷低減の観点から、原紙の総質量に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、よりさらに好ましくは52質量%以上であり、上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
〔他の層〕
<顔料塗工層>
本実施形態の深絞り成形加工用原紙は、必要に応じて、上述した紙基材層の少なくとも一方の面に、顔料および接着剤を含む塗工層を設けてもよい。このような塗工層を設けることにより、深絞り成形加工用原紙表面に良好な印刷適性を付与することができる。さらに、染料インキ、顔料インキ等の任意のインキを用い、通常用いられる印刷機を使用して印刷層を設けてもよい。
前記顔料塗工層に用いられる顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、酸化チタン、プラスチックピグメント等既知のものが任意に使用できる。
前記顔料塗工層に用いられる接着剤としては、澱粉、カゼイン、SBRラテックス、ポリビニルアルコールなど既知のものが任意に使用できる。
これらの顔料塗工層は単層、あるいは多層に形成することができる。また、その塗工量は全体で20g/m以上30g/m以下程度が望ましい。また、このような塗工層を設ける場合は、顔料塗工層直下の層は、叩解度を高め、表面をより平滑にしておくことがさらに好ましい。このような塗工層は、公知である各種の塗工装置を適宜用いて塗工することができる。また、このような顔料塗工層の上にさらに印刷層を設けることが可能である。
<耐水性塗工層>
本実施形態の深絞り加工成形用原紙には、必要に応じてその片面または両面に、液体の浸み込みや液漏れを防止するために、耐水性塗工層を設けることができる。この耐水性塗工層は、紙基材上に直接設けてもよく、または前記顔料塗工層上もしくは印刷層上に設けてもよく、任意の箇所に設けることができる。
耐水性塗工層を設ける方法としては、耐水性塗料を塗工すればよい。
紙基材表面などに塗工して耐水性をもたせる耐水性塗料としては、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等のワックス類のエマルジョン、SBRラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス等のラテックス類、アクリルエマルジョン類、自己乳化型ポリオレフィン類、ポリエチレン系共重合樹脂エマルジョン等の各種合成樹脂エマルジョンが存在する。
これら耐水性塗料の塗工設備としては、通常用いられるバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ゲートロール、サイズプレス等のいずれでも良く、特に限定されるものではない。また、これらの塗工量は全体で1.0g/m以上20.0g/m以下程度が好適であり、これら塗工層を単層、もしくは多層に形成することができる。
<熱可塑性樹脂層>
本実施形態の深絞り成形加工用原紙は、紙基材層の少なくとも一方の面に、さらに熱可塑性樹脂層を有することが好ましい。熱可塑性樹脂層は、紙基材上に直接設けてもよく、または前記顔料塗工層もしくは印刷層上に設けてもよい。なお、熱可塑性樹脂層を設けることで、深絞り成形品に耐水性や窒素、酸素、水蒸気などへのガスバリア性を付与することができる。従って、深絞り成形品が食品容器である場合には、熱可塑性樹脂層は、少なくとも食品接触面に設けることが好ましく、食品接触面の最表層として設けることが好ましい。
熱可塑性樹脂層に使用される熱可塑性樹脂としては特に限定されず、紙基材層上に積層可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂から適宜選択すればよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリウレタン樹脂;ナイロン等のポリアミド樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリアクリロニトリル樹脂;ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等が例示される。
これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステル、ポリアミド樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体が好ましい。
上記の熱可塑性樹脂の中では、押し出しラミネート性と耐水性が優れることからポリエチレンが好ましい。ポリエチレン(PE)は、大きくは直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)のように区分される。これらの中では、押し出しラミネート性に優れることから、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。
なお、熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂の積層フィルムを用いて設けてもよく、例えば、酸素、水蒸気、窒素等へのガスバリア性に優れるポリアミド樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールなどを少なくとも一層有する多層積層フィルムを使用することも好ましい。窒素ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂層を有すると、不活性を充填する深絞り成形品用の原紙として好適に使用される。本実施形態の深絞り成形加工用原紙が、ガスバリア性に優れる樹脂から形成された熱可塑性樹脂層を少なくとも一層有することにより、ガスバリア性に優れる成形品が得られる。なお、上記ガスバリア性に優れる熱可塑性樹脂層は、食品接触面側に設けることが好ましい。また、耐水性やラミネート性に優れるポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン層を有することが好ましい。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、成形時または成形後に、樹脂層を発泡させて、発泡樹脂層としてもよい。
熱可塑性樹脂層を積層させる方法としては、通常用いられるウェットラミネーション、ホットメルトラミネーション、押出ラミネーション、ドライラミネーション、サーマルラミネーション等の中から、適宜選択すればよい。
<深絞り成形加工用原紙の特性>
(破断伸び)
深絞り成形加工用原紙の破断伸びは、深絞り成形加工時の亀裂の発生を抑制する観点から、縦方向および横方向の破断伸びが、それぞれ3.0%以上であり、かつ、縦方向および横方向の破断伸びの相乗平均が4.0%以上である。
なお、縦方向とは、抄紙方向を意味し、横方向とは、抄紙方向に対して垂直は方向を意味する。
縦方向および横方向の破断伸びは、それぞれ、好ましくは3.4%以上、より好ましくは5.0%以上、さらに好ましくは7.0%以上、よりさらに好ましくは8.0%以上、特に好ましくは9.0%以上であり、そして、上限は特に限定されないが、製造性の観点から、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは12%以下である。
縦方向および横方向の破断伸びの相乗平均は、好ましくは4.5%以上、より好ましくは5.0%以上、さらに好ましくは7.0%以上、よりさらに好ましくは10.0%以上であり、そして、上限は特に限定されないが、製造性の観点から、好ましくは20%以下、より好ましくは16%以下、さらに好ましくは12%以下である。
深絞り成形加工用原紙の破断伸びは、JIS P 8113:2006に準拠して測定され、23±5℃、50±10%RHの環境下に1日以上静置し、調温調湿した原紙を対象として測定される。詳細は、実施例に記載の通りである。
(地合指数)
深絞り成形加工用原紙の地合指数は、表面状態の均一性を向上させ、深絞り成形時の亀裂の発生を抑制する観点から、好ましくは20以上、より好ましくは25以上、さらに好ましくは40以上、よりさらに好ましくは55以上、特に好ましくは70以上であり、そして、上限は特に限定されないが、製造容易性の観点から、好ましくは95以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは85以下である。
ここで、地合い指数とは、M/K Systems,Inc.(MKS社)製の3Dシートアナライザー(M/K950)を使い、そのアナライザーの絞りを直径1.5mmとし、マイクロフォーメーションテスター(MFT)を用いて測定したものである。
すなわち、3Dシートアナライザーにおける回転するドラム上にサンプル(原紙)を取り付け、ドラム軸に取り付けられた光源と、ドラムの外側に光源と対応して取り付けられたフォトディテクターとによって、サンプルの局部的な坪量差を光量差として測定する。この時の測定対象範囲は、フォトディテクターの入光部に取り付けられる絞りの径で設定される。次に、その光量差(偏差)を増幅し、A/D変換し、64の光測定的な坪量階級に分級し、1回のスキャンで1000000個のデータを取り、そのデータ分のヒストグラム度数を得る。そして、そのヒストグラムの最高度数(ピーク値)を64の階級に分級されたもののうち100以上の度数を持つ階級の数で割り、それを1/100にした値が地合い指数として算出される。この地合い指数は、その値が大きいほど地合いがよいことを示す。
(紙厚)
深絞り成形加工用原紙の紙厚は、成形品としての強度、および深絞り成形加工時の破断を抑制する観点から、好ましくは0.10mm以上、より好ましくは0.12mm以上、さらに好ましくは0.14mm以上であり、そして、好ましくは0.50mm以下、より好ましくは0.45mm以下、さらに好ましくは0.40mm以下である。
深絞り成形加工用原紙の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
(坪量)
深絞り成形加工用原紙の坪量は、成形品としての強度、および深絞り成形加工時の破断を抑制する観点から、好ましくは100g/m以上、より好ましくは105g/m以上、さらに好ましくは110g/m以上、よりさらに好ましくは115g/m以上であり、そして、好ましくは400g/m以下、より好ましくは395g/m以下、さらに好ましくは390g/m以下、よりさらに好ましくは385g/m以下である。
深絞り成形加工用原紙の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
(密度)
深絞り成形加工用原紙の密度は、成形品としての強度、および深絞り成形加工時の破断を抑制する観点から、好ましくは0.80g/cm以上であり、そして、好ましくは1.0g/cm以下、より好ましくは0.95g/cm以下、さらに好ましくは0.92g/cm以下である。
原紙の密度は、紙厚および坪量から算出される。
[深絞り成形品]
本実施形態の深絞り成形品は、上述した深絞り成形加工用原紙を用いてなる。すなわち、本実施形態の深絞り成形品は、上述した原紙を、例えば、プレス加工、真空成形、または圧空成形して得られる。
<深絞り成形品の製造方法>
(1)原紙水分調整
本実施形態の深絞り成形品の製造方法としては、深絞り成形加工用原紙を容器ブランクシートに打ち抜き、雄型と雌型よりなるプレス型に該ブランクシートを挟み、加熱、加圧して成形する、いわゆるプレス成形という製造方法が例示される。また、加熱下に、雄型または雌型のみを使用して、型とブランクシートとの間を真空にして、シートを型に密着させて成形する、真空成形加工、加熱下に雄型または雌型を使用して、一方の型と他方の圧空装置の間にシートを挟み、圧力装置からの圧力よりシートを型に密着させて成形する、圧空成形が例示される。
このとき、深絞り成形加工用原紙は、予め調湿し、原紙水分量を調節することが好ましい。原紙水分量は、好ましくは10%以上20%以下、より好ましくは11%以上17%以下、さらに好ましくは12%以上15%以下、最も好ましくは12.5%以上14.5%以下である。なお、ここでいう原紙水分とは、熱可塑性樹脂層も含めた深絞り成形加工用原紙全体の絶乾質量に対する、水分の質量%をいう。原紙水分をこの好適範囲とすると、成形加工原紙の可塑化が起こって成形性が向上し、また、成形時の紙層の破壊を低減することができる。この結果、より深さがあり、外観が滑らかで美しく、しかも高い剛性を有した絞り成形品を得ることができる。
なお、原紙水分の調整方法として、プレス成形直前に原紙に水分を供与する方法や、紙基材の抄造時において、ドライヤーを出た後に加湿し、水分が維持される状態で輸送・保存する方法などが挙げられる。
(2)成形方法
次に、ブランクシートから成形品を製造する工程について説明する。
本発明で深絞り成形をプレス加工で行う場合には、一対のプレス用金型により行う。一対の加熱プレス用金型とは、凸状で成形品の内容積部に対応する形状の凸型と、凹状で成形品の外形に対応する形状の凹型である。前記一対のプレス用金型は前後または上下方向に少なくとも片方の型が動くことにより成形品をプレスすることができる。以下説明の便宜上、凸状の型を上型とし、凹状の型を下型とし、上型が下方に移動することによりプレスする方式(図1)で説明する。
図1(A)では、凸状の型(雄型)1を上型とし、凹状の型(雌型)2を下型とし、凸状の型1と凹状の型2との間に深絞り成形加工用原紙を予め所望の形状に打ち抜いたブランクシート3を挟み、凸状の型(雄型)1を上方から下方へと動かすことで、ブランクシートを加圧成形(プレス成形)して、所望の形状に成形する。このとき、上述のように、加熱下に加圧成形を行うことが好ましい。(B)に示すように、凸状の型(雄型)1を上方へ動かすことによって、成形品が得られる。
深絞り成形を真空成形で行う場合には、雌型または雄型のいずれか一方の金型だけを用いてシートを金型に合わせた形状に成形する。好ましくは加熱下に、ブランクシートと型との隙間を減圧し、ブランクシートを型に密着させて成形し、必要に応じて冷却後空気を吹き込んで成形品を取り出す。
深絞り加工を圧空成形で行う場合には、雄型または雌型のいずれか一方の金型と、圧空装置(圧空ボックスともいう)を使用して金型に合わせた形状に成形する。型と圧空装置の間にブランクシートを挟み、好ましくは加熱下に、圧力装置からの圧力よりシートを型に密着させて成形し、必要に応じて冷却後、成形品を取り出す。
ブランクシートを加熱する方法としては、高周波加熱、熱風加熱、赤外線加熱などの方法でもよい。また、金型全体を加熱しておいてもよい。この場合、金型を加熱する手段を必要とする。金型加熱手段としては該金型に電熱加熱装置を設け加熱することが一般的であるが、金型に高周波発振機を接続して、高周波を印加して乾燥する手段もある。また、電熱加熱と高周波加熱を併用することもできる。
また、成形時の加熱温度は加工原紙が100℃以上150℃以下となるような範囲が好ましく、さらに好ましくは110℃以上140℃以下である。加熱温度が100℃以上であると、成形が短時間で行われるため、生産性が向上する。また、150℃以下であると、特に原紙水分量が多い場合であっても、ブリスターの発生が抑制されるので好ましい。深絞り成形加工用原紙は、前記した加熱されたプレス機械や、真空機械、圧空機械にセットした際に前記所定の温度にすることができる。また、別の手段として、水分を含有する深絞り成形加工用原紙にマイクロ波などの電磁波をあてて昇温させてから、プレス機械や、真空機械、圧空機械に導入する方法も可能である。
深絞り成形を完了した成形品は、金型から取り出し、空冷してもよいが、寸法安定性を高めるためには、高温の成形品を冷却用の金型に一定時間だけ固定冷却することも好ましい。
前記金型の材質としては、アルミニウム、アルミニウム系合金、黄銅、鉄、ステンレス鋼、セラミックなど公知のものが使用できる。
金型を動作させる方法としては、油圧プレス、エアーシリンダー、カム機構のいずれの方法も可能である。本発明で上型と下型のクリアランスを制御する具体的な方式としては、油圧あるいはエアー圧による場合、成形品厚さに応じて、コンピューター制御により圧力を制御してもよいし、ストッパーの位置を制御してもよい。カム機構による場合、予め設計されたカム形状と型の下降速度により制御することが可能である。
プレス成形時のプレス時間については、成形性、作業性の点から2秒間以上30秒間以下が好ましい。
<成形品の形状>
本実施形態の深絞り成形品は、1枚の深絞り成形加工用原紙を成形して得られる成形品である。成形品は、一対の凸型(雄型)と凹型(雌型)のプレス金型で絞り加工されて得られることが好ましい。
当該成形品は、容器であることが好ましく、容器上部は開口しており、上部端縁はフランジを有する形態が代表的なものである。また、フランジをカーリング成形したものでもよい。
容器の平面図の外形としては、正方形、長方形、円形、楕円形などである。各形の場合、角の部分は通常は丸みを帯びている。図2に、本発明の絞り成形容器の一例を、平面図(A)および正面図(B)として記載する。
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[評価および分析]
実施例および比較例の原料パルプおよび深絞り成形加工用原紙について、以下の評価および分析を行った。
〔原料パルプ〕
<カナダ標準ろ水度(CSF)の測定>
原料パルプのカナダ標準ろ水度(CSF)は、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定した。
〔深絞り成形加工用原紙〕
<厚さ(紙厚)>
深絞り成形加工用原紙の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定した。
なお、樹脂層を有する場合には、深絞り成形加工用原紙の断面の電子顕微鏡(SEM)の観察像から、紙基材層、および熱可塑性樹脂層のそれぞれについて、厚みを測定した。
<坪量>
深絞り成形加工用原紙の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定した。
<密度>
上述した測定方法により得られた厚さおよび坪量から、深絞り成形加工用原紙の密度を算出した。
<長さ加重平均繊維長、微細繊維の本数割合、およびカール値の測定>
実施例および比較例の深絞り成形加工用原紙を40cm角に切り出し、それをイオン交換水に浸し、濃度2%に調整した上で、24時間浸した。
24時間浸した後、標準型離解機(熊谷理機工業株式会社製)を用いて、未離解繊維がなくなるまで処理して、パルプを繊維状に離解した。樹脂層を有する場合には、樹脂層を除いた離解後のスラリー(パルプ繊維の分散液)を分取し、繊維長測定機(型式FS-5 UHDベースユニット付、バルメット社製)を使用して、「長さ荷重平均繊維長(ISO)」、「微細繊維量(FinesA)」、「カール値」を測定した。
なお、「長さ荷重平均繊維長(ISO)」は0.2mm以上7.6mm以下の繊維を選択して計算した長さ加重平均繊維長である。
また、「微細繊維量(FineA)」は、離解されたパルプ繊維中の、繊維幅75μm以下、かつ、長さ0.2mm以下の微細繊維の本数割合である。
<破断伸び>
JIS P 8113:2006(紙および板紙引張特性の試験方法)に準じて、23±5℃、50±10%の環境下に1日以上静置し、調温および調湿処理した原紙を幅15mm、長さ150mmに切り出したサンプルを準備した。
引張試験機(型式RTC-1210A、株式会社エーアンドディ製)にて、チャック間距離を100mmとなるようサンプルを装着し、20mm/minの速度で引張試験を行い、T(縦方向)、Y(横方向)それぞれの破断伸びを測定した。
<地合指数>
実施例および比較例の深絞り成形加工用原紙を、それぞれA4サイズに切り出し、3Dシートアナライザー(型式M/K950R、株式会社エムケイシステム製)を用いて、レンジ:1、しぼり:1.5mmの条件で測定した。
<成形性>
実施例および比較例の深絞り成形加工用原紙を切り出して、ブランクシートを得た。ブランクシートを、成形用金型とプレス成形機(FVT400、株式会社脇坂エンジニアリング製)を用いて、プレス圧力35kgf/cm、プレス温度150℃、プレス時間5秒の条件で、図2のようなトレー形状に成形した。成形品を200個作製し、以下の評価を行った。
評価基準は、以下の通りである。
(評価基準)
A:成形した紙トレーのうち、亀裂箇所が存在しない紙トレーの割合が99%以上
B:成形した紙トレーのうち、亀裂箇所が存在しない紙トレーの割合が98%以上99%未満
C:成形した紙トレーのうち、亀裂箇所が存在しない紙トレーの割合が97%以上98%未満
D:成形した紙トレーのうち、亀裂箇所が存在しない紙トレーの割合が95%以上97%未満
E:成形した紙トレーのうち、亀裂箇所が存在しない紙トレーの割合が90%以上95%未満
F:成形した紙トレーのうち、亀裂箇所が存在しない紙トレーの割合が90%未満
[パルプの調製]
<パルプ1の調製>
木材をパルプ化(蒸解)・漂白後、水分45%まで脱水した、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)のパルプシートを使用し、低濃度叩解(叩解時のスラリー濃度2質量%)にて、CSF(カナダ標準ろ水度)が550mLまで叩解を行った。
なお、晒クラフトパルプは、漂白処理における繰り返しの脱水処理により、微細繊維の本数割合が減少する傾向にある。
<パルプ2の調製>
木材をパルプ化した、未漂白のNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)を使用し、低濃度叩解(叩解時のスラリー濃度2質量%)にて、CSFが650mLまで叩解を行った。
なお、針葉樹パルプは、広葉樹パルプに比べて繊維長が長い傾向にある。また、未晒パルプは、晒パルプに比べて、漂白時の脱水処理による微細繊維の減少が抑制され、微細繊維の本数割合が多い傾向にある。
<パルプ3の調製>
パルプ1の調製において、1段目の叩解にてのスラリー濃度を4質量%に変更し、2段目の叩解にて低濃度叩解した以外は、パルプ1と同様にしてパルプ3を調製した。
なお、高濃度叩解を行うと、カール値が増加する傾向にある。
<パルプ4の調製>
パルプ2の調製において、1段目の叩解にてのスラリー濃度を4質量%に変更し、2段目の叩解にて低濃度叩解した以外は、パルプ2と同様にしてパルプ4を調製した。
<パルプ5の調製>
パルプ2の調製で使用した未漂白のNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)を90質量%に対して、粉末パルプ10質量%を添加して、低濃度叩解(叩解時のスラリー濃度2質量%)にて、CSF(カナダ標準ろ水度)が600mLまで叩解を行い、パルプ5を調製した。
また、粉末パルプは、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)のドライシートを、カッターミル(株式会社ホーライ製、HA8 2542 30E、スクリーン0.24mm)で機械粉砕して作製した。
<パルプ6の調製>
パルプ1の調製で使用したパルプ原料に対して、洗浄回数を2回分増やし、脱水後、乾燥パルプシートにして使用した後、高濃度叩解のみを行い、パルプ6を調製した。パルプ6のCSFは600mLであった。
乾燥パルプとすると、微細繊維が長繊維パルプと強固に結合する傾向にある。
<パルプ7の調製>
パルプ2の調製で使用したパルプ原料に対して、漂白処理を行った後、高濃度叩解のみを行い、パルプ7を調製した。パルプ7のフリーネスは700mLであった。
<パルプ8の調製>
パルプ1の調製で使用したLBKPを70質量%に対して、粉末パルプ30質量%を添加して、低濃度叩解(叩解時のスラリー濃度2質量%)にて、CSF(カナダ標準ろ水度)が450mLまで叩解を行った。
また、粉末パルプは、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)のドライシートを、カッターミル(株式会社ホーライ製、HA8 2542 30E、スクリーン0.24mm)で機械粉砕して作製した。
[実施例および比較例]
<紙基材の製造(実施例1~3、11、比較例1、3)>
表1に示すパルプを使用し、固形分換算でパルプ100質量部に対し、合成サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、SPS400)0.2質量部、硫酸バンド1.0質量部、紙力増強剤としてポリアクリルアミド(ミサワセラミック社製、CK-311)0.2質量部、および高分子凝集剤として非イオン性アクリルアミド(アライドコロイド製、パーコール47)0.025質量部を添加し、紙料を調整した。最外の紙層(表層および裏層)の坪量と中層の坪量の比が3:2:3(表層:中層:裏層)になるように3層をツインワイヤー式抄紙機で抄紙した。
<紙基材の製造(実施例4~9、比較例2)>
表1に示すパルプを使用し、固形分換算でパルプ100質量部に対し、合成サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、SPS400)0.2質量部、硫酸バンド1.0質量部、紙力増強剤としてポリアクリルアミド(ミサワセラミック社製、CK-311)0.2質量部、および高分子凝集剤として非イオン性アクリルアミド(アライドコロイド製、パーコール47)0.025質量部添加し、紙料を調整した。上記の紙料を用いて伸縮装置(クルパック製)を備えた湿式抄紙機(ベルフォームIII型、三菱重工業株式会社製)にて、抄紙速度600m/分で抄紙し、紙の表面にクレープが付与された紙基材を得た。
<ポリサンド紙の製造(実施例10)>
実施例4で使用した紙基材の片面にLDPE(LC-522、日本ポリエチレン株式会社製)を厚み20μmで溶融押出コーティングし、そのコーティング面に同じ紙基材を貼合させて、2層の紙基材層を有するポリサンド紙を得た。
[実施例1]
パルプ1から製造した紙基材そのものを深絞り加工成形用原紙として使用した。
[実施例2~11]
紙基材へ熱乾燥後の塗工量が10g/mとなるように、水性アクリル粘着剤(EA-G34、東洋モートン株式会社製)100質量部に対して、硬化剤(CAT-EP8、東洋モートン株式会社製)3質量部を混合した塗工液を、リバースロールコーターを用いて塗工した。次に粘着剤を塗工した面に、熱可塑性樹脂フィルムをウェットラミネートした。
なお、熱可塑性樹脂フィルムL1~L3は、以下の通りである。
L1およびL2では、PAが紙基材側になるように積層した。また、L3では、PPが紙基材側になるように積層した。
・L1:ダイアミロンMFC673(三菱ケミカル株式会社製、PP(ポリプロピレン)/EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)/PA(ポリアミド)の積層フィルム)、厚み=60μm
・L2:CEL-4264D(住友ベークライト株式会社製、PE(ポリエチレン)/PA/EVOH/PAの積層フィルム)、厚み=60μm
・L3:ダイアミロンF001(三菱ケミカル株式会社製、PE/PA/PPの積層フィルム)、厚み=40μm
また、実施例6~11では、反対面にも熱可塑性樹脂層を設けた。具体的には、実施例6、8~11では、反対面にLDPE(LC-522、日本ポリエチレン株式会社製)を厚さ20μmで溶融押出コーティングした(表中、BL1)。また、実施例7では、ポリプロピレン(PHA03A、サンアロマー社製)を厚さ20μmで溶融押出コーティングした(表中、BL2)。
得られた深絞り成形加工用原紙について、上述した評価を行った。
結果を以下の表に示す。
Figure 2022124813000001
実施例および比較例の結果から、本発明の深絞り成形加工用原紙は、深絞り成形加工時の亀裂の発生が抑制されており、深絞り成形加工性に優れることがわかる。
本発明の深絞り成形加工用原紙は、深絞り成形加工時の亀裂の発生が抑制されており、深絞り成形品に好適に使用される。

Claims (7)

  1. 深絞り成形加工用原紙であり、
    該原紙は、紙基材からなる紙基材層を備え、
    該紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.60mm以上2.40mm以下であり、
    該紙基材を構成するパルプ中、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合が8%以上35%以下であり、
    該原紙の縦方向および横方向の破断伸びが、それぞれ3.0%以上であり、かつ、縦方向および横方向の破断伸びの相乗平均が4.0%以上である、
    深絞り成形加工用原紙。
  2. 前記原紙の縦方向および横方向の破断伸びが、それぞれ9.0%以上であり、かつ、縦方向および横方向の破断伸びの相乗平均が10.0%以上である、請求項1に記載の深絞り成形加工用原紙。
  3. 前記紙基材を構成するパルプのカール値が5%以上12%以下である、請求項1または2に記載の深絞り成形加工用原紙。
  4. 前記原紙の地合指数が20以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の深絞り成形加工用原紙。
  5. 前記原紙の坪量が100g/m以上400g/m以下であり、紙厚が0.1mm以上0.5mm以下であり、かつ、密度が0.80g/cm以上1.0g/cm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の深絞り成形加工用原紙。
  6. 前記紙基材層の少なくとも一方の面に、さらに熱可塑性樹脂層を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の深絞り成形加工用原紙。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の深絞り成形加工用原紙を用いてなる、深絞り成形品。
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