JP2022124783A - タイヤの断面形状予測方法およびタイヤの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】グリーンタイヤの設計仕様データおよび使用するモールドの成形面の断面形状データを用いて、グリーンタイヤを加硫して製造されるタイヤの断面形状をより高精度で予測できる予測方法およびこの予測方法を利用したタイヤの製造方法を提供する。【解決手段】グリーンタイヤGの断面形状を含む設計仕様データD1と、モールド6の成形面7の断面形状データD2と、モールド6を用いて設計仕様データD1が異なる多数のグリーンタイヤGを加硫して製造したタイヤTの断面画像データD3と、を教師データとして機械学習させて生成した予測モデルPMを演算装置2に記憶し、予測対象のグリーンタイヤGaの設計仕様データD1と、成形面7の断面形状データD2とを予測モデルPMに代入し演算処理することで、グリーンタイヤGaをモールド6で加硫して製造される対象タイヤTaの断面形状を予測する。【選択図】図1
Description
本発明は、タイヤの断面形状予測方法およびタイヤの製造方法に関し、さらに詳しくは、グリーンタイヤの設計仕様データおよび使用するモールドの成形面の断面形状データを用いて、グリーンタイヤを加硫して製造されるタイヤの断面形状をより高精度で予測できる簡便な予測方法およびこの予測方法を利用したタイヤの製造方法に関するものである。
タイヤは、未加硫のグリーンタイヤが加硫用モールドの中で加硫されることで製造される。グリーンタイヤは予め設定された形状に成形され、加硫中に最終形状に変形されてタイヤが完成する。グリーンタイヤの成形工程で、ゴムボリュームの過不足などに起因してグリーンタイヤの形状が適切でない場合、目的とする形状のタイヤが得られないことがある。そのため、加硫したグリーンタイヤがどのような最終形状に変形するのかを精度よく予測できれば、目的とする形状のタイヤを確実に得るには有益である。
従来、任意の製造工程におけるタイヤの断面形状を予測する方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1で提案されている方法では、予測したカーカスの断面形状を基準にしてタイヤの断面形状が算出される。そして、カーカスの断面形状は、この断面形状を決定する所定の関数を用いて、予測対象工程での製造条件情報およびカーカスの構造仕様情報に基づいて予測される。
しかしながら、この提案されている方法では、短時間で予測することを目的の一つにしているため、カーカスの断面形状を決定する関数としては、膜理論や梁理論などの極めてシンプルな理論から導出される理論式が採用されている。そのため、グリーンタイヤを加硫して製造されるタイヤの断面形状を精度よく予測するには限界があり、簡便でありながらタイヤの断面形状をより高精度で予測するには改善の余地がある。
本発明の目的は、グリーンタイヤの設計仕様データおよび使用するモールドの成形面の断面形状データを用いて、グリーンタイヤを加硫して製造されるタイヤの断面形状をより高精度で予測できる簡便な予測方法およびこの予測方法を利用したタイヤの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明のタイヤの断面形状予測方法は、グリーンタイヤの断面形状を含む設計仕様データに基づいてグリーンタイヤを成形する際に、前記設計仕様データを異ならせた多数の前記グリーンタイヤを成形し、成形したそれぞれの前記グリーンタイヤを所定のモールドを用いて加硫して製造されたそれぞれのタイヤの断面画像データを取得し、それぞれの設計仕様データと、前記モールドの成形面の断面形状データと、前記断面画像データと、を教師データとして、前記教師データを用いて機械学習させることで、加硫して製造されるタイヤの断面形状を予測する予測モデルを生成し、この予測モデルが記憶された演算装置に、予測対象となるグリーンタイヤの設計仕様データを入力して、この入力した設計仕様データと前記成形面の断面形状データとに基づいて、前記予測モデルを用いた前記演算装置による演算処理により、前記モールドを用いて予測対象となる前記グリーンタイヤを加硫して製造される対象タイヤの断面形状を予測することを特徴とする。
本発明のタイヤの製造方法は、上記のタイヤの断面形状予測方法によって予測された結果に基づいて、目標とする断面形状のタイヤを製造するためのグリーンタイヤの前記設計仕様データを把握し、この把握した設計仕様データに基づいてグリーンタイヤを成形して、この成形したグリーンタイヤを前記モールドと同じ仕様のモールドを用いて加硫することを特徴とする。
本発明のタイヤの断面形状予測方法によれば、前記設計仕様データと、前記成形面の断面形状データと、前記タイヤ断面画像データとを、前記教師データとして機械学習させて生成した予測モデルを使用する。そのため、予測対象となるグリーンタイヤの設計仕様データと前記成形面の断面形状データとを前記予測モデルに入力して前記演算装置によって演算処理することで、前記モールドを用いて予測対象となる前記グリーンタイヤを加硫して製造される対象タイヤの断面形状をより高精度で予測することが可能になる。そして、前記設計仕様データ、前記成形面の断面形状データはそれぞれ、グリーンタイヤ、モールドを実際に測定することなく、設計上のデータを使用できるので容易に取得でき、対象タイヤの断面形状の予測が簡便になる。
本発明のタイヤの製造方法によれば、上記のタイヤの断面形状予測方法によって予測された高い精度の結果に基づいて、目標とする断面形状のタイヤを製造するためのグリーンタイヤの設計仕様データを把握することができる。そして、この把握した設計仕様データに基づいてグリーンタイヤを成形して前記モールドと同じ仕様のモールドを用いて加硫するので、目標とする断面形状のタイヤを得るには有利になる。
以下、本発明のタイヤの断面形状予測方法およびタイヤの製造方法を、図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。
図1に例示する予測システム1を用いて、本発明のタイヤの断面形状予測方法が行われる。この予測システム1は、演算装置2と入力部3と表示部4とを有し、さらに設計システム5と断面画像撮影装置5aとを有している。演算装置2と入力部3、表示部4は有線または無線により通信可能に接続されている。設計システム5および断面画像撮影装置5aにより出力されたデータは直接、または入力部3を通じて演算装置2に入力される。
演算装置2は、種々のデータが入力、記憶され、これらデータを用いて演算処理を行う。演算装置2としては、種々のコンピュータを用いることができる。したがって、演算装置2は、種々のデータが記憶されるメモリと、演算処理を行うCPUを有している。
入力部3は、演算装置2に種々のデータを入力する入力手段である。入力部3としては、キーボード、マウス、各種端末機器を用いることができる。
表示部4は、演算装置2に入力された種々のデータ、これらデータを用いて演算処理された演算結果(数値、表、図面など)を表示する表示手段である。表示部4としては、各種のモニタを用いることができる。
設計システム5は、グリーンタイヤGを設計するためのプログラム(CADプログラムなど)が記憶されたコンピュータを有している。この設計システム5を用いてグリーンタイヤGを成形(製造)するための設計図データが作成される。この設計図データがグリーンタイヤGの断面形状を含む設計仕様データD1を構成する。このように設計仕様データD1は、グリーンタイヤGを製造(成形)するために使用される設計図データなので、本発明では、実物のグリーンタイヤGを測定装置などで測定して、その断面形状データなどの設計仕様データD1を取得する必要はない。
設計システム5に記憶されているグリーンタイヤGの断面形状を含む設計仕様データD1は、演算装置2に入力される。この発明では、設計仕様データD1として、少なくとも、グリーンタイヤGの断面形状データが演算装置2に入力される。尚、設計システム5のコンピュータとして、予測システム1の演算装置2を利用してもよい。即ち、予測システム1が設計システム5の機能を有する構成にすることもできる。
断面画像撮影装置5aは、製造されたタイヤTの横断面の画像データを取得する手段である。断面画像撮影装置5aとしては、公知のデジタルカメラなどの画像撮影装置、公知のX線撮影装置(CTスキャナ)を例示できる。X線撮影装置(CTスキャナ)を用いると、グリーンタイヤGを横断面に切断することなく、断面形状データを測定、取得できる。デジタルカメラなどを用いる場合は、タイヤTを横断面に切断してその切断面を撮影する。
設計仕様データD1としては、図2に例示するような、グリーンタイヤGの断面形状データが用いられる。一般的なグリーンタイヤGでは、最内周にインナーライナ層m1が配置され、その外側面にカーカス層m2が配置され、カーカス層m2の外側面に未加硫ゴムRが配置される。トレッド部の未加硫ゴムRにはベルト層m4などが埋設される。グリーンタイヤGの断面形状は、一般的にタイヤ周方向で変化しないので、グリーンタイヤGの任意の周方向位置での断面形状データを用いることができる。尚、図面では、グリーンタイヤ、タイヤ、モールドの右半分を例示しているが左半分は右半分と同仕様である。
設計仕様データD1には、その他に、グリーンタイヤGのそれぞれの構成部材の各種特性データを例示できる。具体的には、グリーンタイヤGを形成している未加硫ゴムRのボリュームデータ(断面積データ)、この未加硫ゴムRの粘度データ、カーカス層m2の断面形状データ(および配置データ)と剛性データ、ビード部m3の断面形状データ(および配置データ)と剛性データなどを例示できる。採用する設計仕様データD1は、グリーンタイヤGの断面形状データの1種類だけでもよいが、その他の1種類以上の設計仕様データD1を加えることもできる。尚、図中の二点鎖線CLはタイヤ幅方向中心を示している。
未加硫ゴムRのボリュームデータ(断面積データ)、カーカス層m2の断面形状データ(および配置データ)、ビード部m3の断面形状データ(および配置データ)は、設計システム5に記憶されている設計仕様データD1から算出、取得される。未加硫ゴムRの粘度データは、ムーニー粘度計などの公知の粘度測定器を用いて取得される。この粘度データは、常温での測定値でもよいが、未加硫ゴムRが加硫工程で加熱されて流動性が向上することを考慮して、最も流動性が高くなる温度での測定値を採用することもできる。カーカス層m2およびビード部m3の剛性データは、公知の曲げ試験機などを用いて取得される。
モールド6の成形面7の断面形状データD2とは具体的には、図3に例示するような成形面7の断面形状データである。図3に例示するモールド6は、セクショナルタイプなので、サイドモールド6aとセクターモールド6bとで構成されている。サイドモールド6aはグリーンタイヤGの主にサイド部の外側およびビード部m3の外側を加硫成形し、セクターモールド6bは主にトレッド部を加硫成形する。
成形面7の断面形状は、タイヤ周方向で変化するのが一般的なので、予め設定されたタイヤ周方向位置での成形面7の断面形状データを用いる。例えば、最も特徴的な溝を含む代表的な成形面7の断面形状データD2、または、溝が省略された成形面7の断面形状データD2を用いることができる。
或いは、成形面7のタイヤ周方向で断面形状が変化する部分(部位)は予測の対象外として、タイヤ周方向で断面形状が実質的に変化しない部分(サイド部の外側とビード部の外側の少なくとも一方)のみを予測対象にすることもできる。即ち、サイド部の外側部分のみ、ビード部m3の外側部分のみ、または、サイド部の外側部分およびビード部m3の外側部分のみに限定して断面形状を予測してもよい。この場合は、予測対象に相当する部分の設計仕様データD1および成形面7の断面形状データD2を用いればよい。
成形面7の断面形状データD2は、モールド6の製造に用いた設計図データ(CADデータなど)が存在しているので、改めて測定して取得しなくてもよい。例えば、設計システム5に記憶されているモールド6の設計図データから成形面7の断面形状に相当するデータを抽出して、成形面7の断面形状データとして用いることができる。
本発明では、機械学習により生成した予測モデルPMを利用する。この予測モデルPMは、グリーンタイヤGを加硫して製造したタイヤTの断面形状を予測するためのコンピュータプログラムである。この予測モデルPMを生成する手順の一例を説明する。
まず、グリーンタイヤGの断面形状を含む設計仕様データD1に基づいてグリーンタイヤGを成形する。この際に、設計仕様データD1を異ならせた多数のグリーンタイヤGを成形する。
設計仕様データD1に基づいて成形された実物のグリーンタイヤGの断面形状と、この設計仕様データD1の断面形状とは、現在の確立された公知のタイヤ成形方法では、一般的な(汎用的な)タイヤであれば両者の同一性を概ね担保できる。したがって、両者の断面形状は実質的に同一と見做すことができ、本発明では両者の断面形状は実質的に同一として取り扱う。尚、基本となるタイヤについては、設計仕様データD1に基づいて成形されたグリーンタイヤGを測定することにより、その断面形状を把握して、設計仕様データD1の断面形状との同一性を確認しておく。これにより、確認した基本タイヤのサイズ違いや類似種類のタイヤについても両者の同一性を担保できる。また、両者の同一性を確認した基本タイヤとは仕様が大きく異なるタイヤを予測対象にする場合は、設計仕様データD1に基づいて成形された実物のグリーンタイヤGを測定することにより、その断面形状を把握して、設計仕様データD1の断面形状との同一性を確認した上で、本発明による予測対象にする。
次いで、成形したそれぞれのグリーンタイヤGを所定のモールド6を用いて加硫する。図4に例示するように、加硫されるグリーンタイヤGはモールド6の中に配置された後、モールド6が閉型されて、モールド6の成形面7と膨張させた加硫用ブラダ9との間で加圧および加熱される。図4では、当初形状(モールド6の内部に配置される前)のグリーンタイヤGが記載されていて、成形面7の断面形状と加硫用ブラダ9は破線によって記載されている。
グリーンタイヤGを加硫することで図10に例示するタイヤTを製造する。次いで、製造されたタイヤTの断面画像データD3を、断面画像撮影装置5aを用いて取得する。尚、所定のモールド6は、特定の1つのモールド6に限らず、その所定のモールド6と同じ仕様のモールド6であればよい。
取得するタイヤTの断面画像データD3は、図10に例示するようにモールド6に嵌っている状態でよい。モールド6に実際に嵌っている状態でタイヤTの断面画像データD3を取得してもよいし、タイヤTをモールド6の外に取り出して、モールド6に嵌っていた状態と同様の状態(形状)にして断面画像データD3を取得してもよい。
取得した多数のタイヤTの断面画像データD3とともに、製造したそれぞれのタイヤTを加硫する前のグリーンタイヤGの断面形状を含む設計仕様データD1と、このグリーンタイヤGを加硫したモールド6の成形面7の断面形状データD2とを準備する。次いで、設計仕様データD1、成形面7の断面形状データD2およびタイヤ断面画像データD3を、タイヤTの断面形状の予測のための基礎データ(即ち、教師データ)として、機械学習させることで予測モデルPMを生成する。
具体的には、上記データD1、D2、D3を演算装置2に入力して、これらデータD1、D2、D3を用いて機械学習させる。即ち、タイヤTの断面画像と、グリーンタイヤGのタイヤ仕様および成形面7の断面形状との関係を紐付けして、製造されるタイヤTの断面形状に対するグリーンタイヤGのタイヤ仕様および成形面7の断面形状の影響具合が分析、評価される。
タイヤTの断面形状は、グリーンタイヤGの外表面とモールド6の成形面7との間隔(すき間)の大きさ、カーカス層m2と成形面7の間での未加硫ゴムRのボリュームが大きく影響する。未加硫ゴムRは加硫中に流動するので、カーカス層m2と成形面7との間の未加硫ゴムRの粘度(流動性)もタイヤTの断面形状に影響を及ぼす。
グリーンタイヤGの外表面とモールド6の成形面7との間隔が過大である場合、カーカス層m2と成形面7との間の未加硫ゴムRのボリュームが過小である場合は、ゴム不足によりタイヤTに変形が生じることがある。グリーンタイヤGの外表面とモールド6の成形面7との間隔が過小である場合、カーカス層m2と成形面7との間の未加硫ゴムRのボリュームが過大である場合は、ゴム過剰によりタイヤTに変形が生じることがある。
そして、カーカス層m2と成形面7との間の未加硫ゴムRの粘度が高いと流動性が低くなるのでグリーンタイヤGの形状変化が生じ難くなる。この粘度が低いと流動性が高くなるのでグリーンタイヤGの形状変形が生じ易くなる。
また、カーカス層m2の断面形状(および配置)と剛性は、カーカス層m2と成形面7との間の未加硫ゴムRの流動性に影響するのでタイヤTの断面形状に影響する。ビード部m3の断面形状(および配置)と剛性もカーカス層m2と成形面7との間の未加硫ゴムRの流動性に影響するのでタイヤTの断面形状に影響する。上述したそれぞれの要因が複雑に影響し合ってタイヤTの断面形状が変化する。
それ故、データD1、D2、D3を教師データとして用いて、データD1とD2との組み合わせによるデータD3(断面画像データ)おける相違点や相違程度、それぞれの場合における特徴を人工知能(AI)に機械学習させることで、予測モデルPMを生成することが可能になる。機械学習の手法としては、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングなど公知の種々の手法を例示できる。ディープラーニングでは、公知の手法で入力層と複数の中間層と出力層との多層構造にして、各層の間でノード間に重みを設定して結び付けたネットワークを使用する。そして、断面画像データD3に影響する設計仕様データD1、断面形状データD2を入力層から入力して、断面画像データD3の予測値を出力層に出力する。算出した予測値と断面画像データD3の実測値とを比較して両者の誤差を小さくするようにそれぞれの重みを変更する。これにより、予測精度を向上させた予測モデルPMを生成(構築)する。生成した予測モデルPMは、演算装置2に記憶される。
次いで、予測対象となるグリーンタイヤGaを所定のモールド6で加硫して製造された対象タイヤTaの断面形状を予測する手順の一例を説明する。
演算装置2には、入力部3を用いて予測対象となるグリーンタイヤGaの設計仕様データD1を入力する。演算装置2は、入力されたグリーンタイヤGaの設計仕様データD1とモールド6の成形面7の断面形状データD2とを予測モデルPMに代入して、予測モデルPMを実行させる演算処理を行う。この演算処理によって、モールド6を用いて予測対象となるグリーンタイヤGaを加硫して対象タイヤTaを製造した場合に、その対象タイヤTaの断面形状が予測されて、その予測結果が表示部4に表示される。
この予測は、グリーンタイヤGaの一対のビード部m2のビードコアがそれぞれ、成形面7の正規に位置に固定されて加硫されることを前提とする。したがって、タイヤTの断面画像データD3も、一対のビード部m2のビードコアがそれぞれ、成形面7の正規に位置に固定されて加硫されたタイヤTのデータを用いる。
予測モデルPMを用いた予測結果は、例えば図5、図6に示すように、対象タイヤTaの断面形状の外表面X(プロファイルX)が実線で表示される。図5ではこの断面形状の外表面Xが、破線で表示されている成形面7の断面形状とともに記載されている。図6では、この断面形状の外表面Xが、破線で表示されているグリーンタイヤGaの断面形状の外表面とともに記載されている。尚、予測結果(断面形状の外表面X)は図5、図6の表示に限定されず、対象タイヤTaの断面形状の外表面Xが把握できるものであればよい。
予測結果は、タイヤ横断面の平面座標系で表示されるので、グリーンタイヤGaのどの位置が対象タイヤTaではどのように変化するのかを一目して把握できる。そのため、目標とするタイヤの断面形状に対して、グリーンタイヤGaのどの位置が過大なのか、或いは、過小であるのかが容易に判明する。それ故、目標とする断面形状のタイヤTgを得るには、グリーンタイヤGaの断面形状をどの程度、変更すべきかを把握し易い。
この予測方法では、上述した設計仕様データD1と、成形面7の断面形状データD2と、タイヤTの断面画像データD3とを、教師データとして機械学習させて生成した予測モデルPMを使用する。そのため、様々な要因が複雑に影響し合って形成されるタイヤTaの断面形状を、予測対象となるグリーンタイヤGaの設計仕様データD1と成形面7の断面形状データD2とを予測モデルPMに入力して演算処理することで、一段と高精度で予測することができる。
また、設計仕様データD1として採用するグリーンタイヤG、Gaの断面形状データは、測定装置を用いて実物のグリーンタイヤG、Gaを測定して得る必要はなく、グリーンタイヤG、Gaの成形に用いる設計データなので、取得が容易である。また、成形面7は精密な機械加工によって製造されているので、成形面7の断面形状データD2として、モールド6の製造に用いた設計データ(CADデータなど)を採用していても、測定装置を用いて実物の成形面7を測定した測定データと実質的に一致する。そのため、簡便でありながら、高い精度で予測することができる。
設計仕様データD1には、グリーンタイヤG、Gaのカーカス層m2よりも外側の未加硫ゴムRのボリュームを含めるとよい。これにより、予測精度を向上させるには有利になる。
また、設計仕様データD1には、グリーンタイヤG、Gaの成形面7に接触する未加硫ゴムRの粘度データを含めるとよい。即ち、カーカス層m2よりも外側の未加硫ゴムRの粘度データを含めると、予測精度を向上させるには有利になる。
また、設計仕様データD1として、既述した様々なデータを含めると、予測精度を向上させるには有利になる。ただし、設計仕様データD1の種類を増やす程、演算処理の負担が大きくなり、この負担増加に見合う予測精度の向上が得られないこともある。そこで、効率的に精度よく予測をするには、影響度が最も高いグリーンタイヤGの断面形状データの1種類を少なくとも含めて、必要に応じて、その他の1種類以上の設計仕様データD1を加えるとよい。
教師データとして、グリーンタイヤGを加硫する際の少なくとも加硫温度を含む加硫条件データD4を追加することもできる。加硫温度は未加硫ゴムRの流動性に影響し、これに伴い、タイヤTの断面形状に影響する。そのため、加硫温度を教師データに含めると、タイヤTaの断面形状の予測精度を向上させるには有利になる。その他の加硫条件データD4としては、加硫用ブラダ9によってグリーンタイヤGに付与される加硫圧力を例示できる。加硫圧力も未加硫ゴムRの流動性に影響し、これに伴い、タイヤTの断面形状に影響する。
加硫条件データD4を教師データに含める場合は、予測対象となるグリーンタイヤGaの加硫条件データD4を演算装置2に入力し、この入力した加硫条件データD4も対象タイヤTaの断面形状の予測に用いる。教師データに加硫条件データD4を含めると、演算処理の負担が大きくなり、この負担増加に見合う予測精度の向上が得られないこともある。そこで、必要に応じて、加硫条件データD4を教師データに加えるとよい。
このモールド6を用いる場合の加硫条件があまり変わらず、実質的に同等の加硫条件で加硫を行うことを前提にしているならば、加硫条件データD4を考慮する必要はない。このような場合は、前提としている所与の加硫条件下での断面画像データD3を用いる。
本発明のタイヤの製造方法は、本発明の断面形状予測方法を利用する。そのタイヤの製造方法の手順の一例を説明する。
このタイヤの製造方法では、予測モデルPMを用いて予測された結果に基づいて、目標とする断面形状のタイヤTgを製造するためのグリーンタイヤGaNの設計仕様データD1を把握する。即ち、図5、図6を参照してグリーンタイヤGaに対して修正が必要な位置および修正程度を把握する。そして、この把握した設計仕様データD1に基づいて修正したグリーンタイヤGaNを公知の方法で成形する。例えば、図7に示すように、修正前のグリーンタイヤGaの断面形状の外表面を、予測結果に基づいて変化させる。
次いで、図8、図9に例示するように、予測モデルPMを用いた予測結果を反映させて修正したグリーンタイヤGaNを公知の加硫装置8に設置された所定のモールド6と同じ仕様のモールド6の中に配置する。そして、閉型したモールド6の中でグリーンタイヤGaNを公知の方法で加硫することにより、図10に例示する目標とする断面形状のタイヤTaが製造される。
このタイヤの製造方法では、上述した予測方法を利用することで、目標とする断面形状のタイヤTgを製造するためのグリーンタイヤGaNの設計仕様データD1を把握することができる。利用する予測方法の予測精度が高いので、この把握した設計仕様データD1に基づいてグリーンタイヤGaを成形して、所定のモールド6と同じ仕様のモールド6を用いて加硫することで、目標とする断面形状を有するタイヤTgを得るには有利になる。
1 予測システム
2 演算装置
3 入力部
4 表示部
5 設計システム
5a 断面画像撮影装置
6 モールド
6a サイドモールド
6b セクターモール
7 成形面
8 加硫装置
9 加硫用ブラダ
PM 予測モデル
G、Ga、GaNグリーンタイヤ
m1 インナーライナ層
m2 カーカス層
m3 ビード部
m4 ベルト層
R 未加硫ゴム
Rc 加硫ゴム
T、Ta、Tg タイヤ(加硫済みタイヤ)
2 演算装置
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5 設計システム
5a 断面画像撮影装置
6 モールド
6a サイドモールド
6b セクターモール
7 成形面
8 加硫装置
9 加硫用ブラダ
PM 予測モデル
G、Ga、GaNグリーンタイヤ
m1 インナーライナ層
m2 カーカス層
m3 ビード部
m4 ベルト層
R 未加硫ゴム
Rc 加硫ゴム
T、Ta、Tg タイヤ(加硫済みタイヤ)
Claims (5)
- グリーンタイヤの断面形状を含む設計仕様データに基づいてグリーンタイヤを成形する際に、前記設計仕様データを異ならせた多数の前記グリーンタイヤを成形し、成形したそれぞれの前記グリーンタイヤを所定のモールドを用いて加硫して製造されたそれぞれのタイヤの断面画像データを取得し、それぞれの設計仕様データと、前記モールドの成形面の断面形状データと、前記断面画像データと、を教師データとして、前記教師データを用いて機械学習させることで、加硫して製造されるタイヤの断面形状を予測する予測モデルを生成し、この予測モデルが記憶された演算装置に、予測対象となるグリーンタイヤの設計仕様データを入力して、この入力した設計仕様データと前記成形面の断面形状データとに基づいて、前記予測モデルを用いた前記演算装置による演算処理により、前記モールドを用いて予測対象となる前記グリーンタイヤを加硫して製造される対象タイヤの断面形状を予測することを特徴とするタイヤの断面形状予測方法。
- 前記設計仕様データに、前記グリーンタイヤのカーカス層よりも外側の未加硫ゴムのボリュームを含める請求項1に記載のタイヤの断面形状予測方法。
- 前記設計仕様データに、前記グリーンタイヤの前記成形面に接触する未加硫ゴムの粘度データを含める請求項1または2に記載のタイヤの断面形状予測方法。
- 前記教師データとして、前記グリーンタイヤを加硫する際の少なくとも加硫温度を含む加硫条件データを追加し、予測対象となる前記グリーンタイヤの前記加硫条件データを前記演算装置に入力して、この入力した前記加硫条件データも前記対象タイヤの断面形状の予測に用いる請求項1~3のいずれかに記載のタイヤの断面形状予測方法。
- 請求項1~4のいずれかに記載のタイヤの断面形状予測方法によって予測された結果に基づいて、目標とする断面形状のタイヤを製造するためのグリーンタイヤの前記設計仕様データを把握し、この把握した設計仕様データに基づいてグリーンタイヤを成形して、この成形したグリーンタイヤを前記モールドと同じ仕様のモールドを用いて加硫するタイヤの製造方法。
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