JP2022124461A - 電磁波シールドフィルム、及び電磁波シールドフィルム付きプリント配線板 - Google Patents

電磁波シールドフィルム、及び電磁波シールドフィルム付きプリント配線板 Download PDF

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Hirokazu Ono
一義 吉田
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Abstract

【課題】高温高湿環境下に置かれた後も、良好な密着性を示し低い接続抵抗値を維持できる、汎用性の高い実用的な電磁波シールドフィルムを提供する。【解決手段】絶縁樹脂層、シールド層及び導電性接着剤層をこの順で積層した電磁波シールドフィルムであって、導電性接着剤層は、接着剤成分と導電性粒子を含有する導電性接着剤組成物を用いて形成され、接着剤成分の吸水率は、2.0%未満、接着剤成分は、熱硬化性樹脂を含有し、熱硬化性樹脂は、一般式(1)で表される構造式を有し、かつ、170~400g/eqのエポキシ当量を示すエポキシ樹脂を含有する。TIFF2022124461000009.tif49163R1は炭素数1~35の炭化水素基、R2は水素又はメチル基。nは1~10。【選択図】なし

Description

本発明は、電磁波シールドフィルム、及び電磁波シールドフィルム付きプリント配線板に関する。
フレキシブルプリント配線板(以下、FPCともいう)から発生する電磁波ノイズや外部からの電磁波ノイズを遮蔽(シールド)するために、絶縁樹脂層と、金属薄膜層(以下、シールド層又は電磁波遮蔽層ともいう)と、導電性接着剤層とを有する電磁波シールドフィルムを、絶縁フィルム(以下、カバーレイフィルムともいう)を介してフレキシブルプリント配線板に貼合わせる方法が知られている。
このような方法において、プリント配線板は、電磁波シールドフィルムの導電性接着剤層と、プリント配線板のグランド回路とが、グランド回路を被覆する絶縁フィルムに設けられた開口部を通して接続されてシールドされる。
電磁波シールドフィルムの導電性接着剤層を構成する導電性接着剤組成物として、様々な種類の導電性接着剤組成物が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特開2019-196458号公報 特許第5854248号公報
ところで、電磁波シールドフィルムには、フレキシブルプリント配線板全体に要求される耐屈曲性や耐熱性が求められるほか、高温高湿環境下での高い密着性、低い接続抵抗値を維持できる耐久性が求められる。
しかし、電磁波シールドフィルムを高温高湿環境下におくと、接着剤層の経時劣化により密着性が低下し、金属製の導電性粒子やシールド層が酸化されることにより、高温高湿環境下に置かれた後は低い接続抵抗値を維持することはできないという問題があった。
上記特許文献1では、特定の配合の接着剤組成物を用いることにより、高温高湿環境下での密着性を改善することが報告されているが、高温高湿環境下に置かれた後の接続抵抗値については特に言及されていない。高温高湿環境下に置かれた後も良好な密着性を示し低い接続抵抗値を維持できる電磁波シールドフィルムを提供するという観点からは改善の余地があった。
また、上記特許文献2では、表面被覆された導電性微粒子を用いることにより、湿熱経時処理後でも高い接続信頼性を有する導電性接着剤が提供できることが報告されているが、上記特許文献2の技術では導電性微粒子の選定が煩雑となり、製造コストも上がるといった問題があり、汎用性に乏しい。
そこで、本発明は、高温高湿環境下に置かれた後も、良好な密着性を示し低い接続抵抗値を維持できる、汎用性の高い実用的な電磁波シールドフィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、電磁波シールドフィルムを構成する導電性接着剤層に用いる導電性接着剤組成物として、特定の吸水率を示す接着剤成分を用い、該接着剤成分に、特定のエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂を含有させることで、上記課題を解決できる電磁波シールドフィルムを提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1]絶縁樹脂層、シールド層、及び導電性接着剤層をこの順で積層してなる電磁波シールドフィルムであって、
前記導電性接着剤層は、接着剤成分と導電性粒子とを含有する導電性接着剤組成物を用いて形成されてなり、
前記接着剤成分の吸水率は、2.0%未満であり、
前記接着剤成分は、熱硬化性樹脂を含有し、
前記熱硬化性樹脂は、下記一般式(1)で表される構造式を有し、かつ170~400g/eqのエポキシ当量を示すエポキシ樹脂を含有する、電磁波シールドフィルム。
Figure 2022124461000001
(上記式(1)中、Rは炭素数1~35の炭化水素基を、Rは水素又はメチル基を、nは1~10の整数を表す)
[2]前記接着剤成分中に、前記エポキシ樹脂が30~70質量%含有される、[1]に記載の電磁波シールドフィルム。
[3]前記エポキシ当量が215~400g/eqである、[1]又は[2]に記載の電磁波シールドフィルム。
[4]前記一般式(1)中のRが脂環式炭化水素、又は、芳香族炭化水素を含む構造からなる炭化水素基である、[1]~[3]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
[5]前記エポキシ当量が250~400g/eqである、[3]又は[4]に記載の電磁波シールドフィルム。
[6]前記接着剤成分にゴム成分を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
[7]前記ゴム成分の酸価が20mgKOH/g以下である、[6]に記載の電磁波シールドフィルム。
[8]前記ゴム成分のエポキシ当量が0.05eq/kg以上である、[6]又は[7]に記載の電磁波シールドフィルム。
[9]前記ゴム成分のガラス転移温度が10℃以上である、[6]~[8]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
[10]基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、
前記プリント配線板の前記プリント回路が設けられた側の面に隣接する絶縁フィルムと、
前記導電性接着剤層が前記絶縁フィルムに隣接するように設けられた[1]~[9]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムと、
を有する、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板。
本発明によれば、高温高湿環境下に置かれた後も、良好な密着性を示し低い接続抵抗値を維持できる、汎用性の高い実用的な電磁波シールドフィルムを提供することができる。
図1は、電磁波シールドフィルムの一実施形態を示す断面図である。 図2は、電磁波シールドフィルムの他の実施形態を示す断面図である。 図3は、図1の電磁波シールドフィルムの製造工程の一実施形態として、工程(A1-1)~(A1-4)の製造工程を示す断面図である。 図4は、図1の電磁波シールドフィルムの製造工程の他の実施形態として、工程(A2-1)~(A2-2)の製造工程を示す断面図である。 図5は、図1の電磁波シールドフィルムの製造工程の他の実施形態として、工程(A2-3)の製造工程を示す断面図である。 図6は、図1の電磁波シールドフィルムの製造工程の他の実施形態として、工程(A2-4)の製造工程を示す断面図である。 図7は、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の一実施形態を示す断面図である。 図8は、図7の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造工程を示す断面図である。
以下、本発明の電磁波シールドフィルムについて詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「等方導電性接着剤層」とは、厚さ方向及び面方向に導電性を有する導電性接着剤層を意味する。
「異方導電性接着剤層」とは、厚さ方向に導電性を有し、面方向に導電性を有しない導電性接着剤層を意味する。
「面方向に導電性を有しない導電性接着剤層」とは、表面抵抗が1×10Ω以上である導電性接着剤層を意味する。
導電性粒子の平均粒子径は、導電性粒子の顕微鏡像から30個の導電性粒子を無作為に選び、それぞれの導電性粒子について、最小径及び最大径を測定し、最小径と最大径との中央値を一粒子の粒子径とし、測定した30個の導電性粒子の粒子径を算術平均して得た値である。
フィルム(離型フィルム、絶縁フィルム等)、塗膜(絶縁樹脂層、導電性接着剤層等)、シールド層(電磁波遮蔽層)等の膜厚は、顕微鏡を用いて測定対象の断面を観察し、5箇所の厚さを測定し、平均した値である。
表面抵抗は、10Ω/□未満の場合は、低抵抗抵抗率計(例えば、三菱ケミカル社製、ロレスタGP、ASPプローブ)を用い、四端子法(JIS K 7194:1994及びJIS R 1637:1998に準拠する方法)で測定される表面抵抗率であり、10Ω/□以上の場合は、高抵抗抵抗率計(例えば、三菱ケミカル社製、ハイレスタUP、URSプローブ)を用い、二重リング法(JIS K 6911:2006に準拠する方法)で測定される表面抵抗率である。
(電磁波シールドフィルム)
本発明の電磁波シールドフィルムは、絶縁樹脂層、シールド層、及び導電性接着剤層をこの順で積層してなる。
導電性接着剤層は、接着剤成分と導電性粒子とを含有する導電性接着剤組成物を用いて形成されてなる。
接着剤成分の吸水率は、2.0%未満である。
接着剤成分は、熱硬化性樹脂を含有する。
熱硬化性樹脂は、下記一般式(1)で表される構造式を有し、かつ170~400g/eqのエポキシ当量を示すエポキシ樹脂を含有する。
Figure 2022124461000002
(上記式(1)中、Rは炭素数1~35の炭化水素基を、Rは水素又はメチル基を、nは1~10の整数を表す)
図1は、本発明の電磁波シールドフィルムの一実施形態を示す断面図である。
図2は、本発明の電磁波シールドフィルムの他の一実施形態を示す断面図である。
電磁波シールドフィルム1は、絶縁樹脂層10と;絶縁樹脂層10に隣接するシールド層20と;シールド層20の絶縁樹脂層10とは反対側に隣接する導電性接着剤層22と;絶縁樹脂層10のシールド層20とは反対側に隣接する第1の離型フィルム30と;導電性接着剤層22のシールド層20とは反対側に隣接する第2の離型フィルム40とを有する。
第1の実施形態の電磁波シールドフィルム1は、接着剤層22が異方導電性接着剤層24である例である。
第2の実施形態の電磁波シールドフィルム1は、接着剤層22が等方導電性接着剤層26である例である。
<絶縁樹脂層>
絶縁樹脂層10は、電磁波シールドフィルム1をプリント配線板の表面に設けられた絶縁フィルムの表面に貼着し、第1の離型フィルム30を剥離した後には、シールド層20の保護層となる。
絶縁樹脂層10としては、熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む組成物を塗布し、半硬化または硬化させて形成された塗膜;熱硬化性樹脂と硬化剤と溶剤とを含む塗工液を塗布し、乾燥させ、半硬化または硬化させて形成された塗膜等が挙げられる。絶縁樹脂層10としては、絶縁樹脂層10とシールド層20との接着性がさらに良好となる点から、樹脂材料(熱硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせ)と溶剤とを含む塗工液を塗布し、乾燥させ、必要に応じて半硬化または硬化させて形成された塗膜が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、アミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、合成ゴム、紫外線硬化アクリレート樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、耐熱性に優れる点から、アミド樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
硬化剤としては、熱硬化性樹脂の種類に応じた公知の硬化剤が挙げられる。
絶縁樹脂層10は、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板のプリント回路を隠蔽したり、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板に意匠性を付与したりするために、着色剤(顔料、染料等)およびフィラーのいずれか一方または両方を含んでいてもよい。
着色剤及びフィラーのいずれか一方又は両方としては、耐候性、耐熱性、隠蔽性の点から、顔料又はフィラーが好ましく、プリント回路の隠蔽性、意匠性の点から、黒色顔料、又は黒色顔料と他の顔料もしくはフィラーとの組み合わせがより好ましい。
絶縁樹脂層10は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
絶縁樹脂層10の表面抵抗は、電気的絶縁性の点から、1×10Ω以上が好ましい。絶縁樹脂層10の表面抵抗は、実用上の点から、1×1019Ω以下が好ましい。
絶縁樹脂層10の厚さは、0.1μm以上30μm以下が好ましく、0.5μm以上20μm以下がより好ましく、3μm以上15μm以下がさらに好ましい。絶縁樹脂層10の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、絶縁樹脂層10が保護層としての機能を十分に発揮できる。絶縁樹脂層10の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1を薄くできる。
<シールド層(電磁波遮蔽層)>
シールド層20は、導電性を有する限り特に制限されず、金属膜、または導電性粒子からなる導電膜等であってよい。
シールド層20は、面方向に広がるように形成されていることから、面方向に導電性を有し、電磁波シールド層等として機能する。
金属膜を構成する金属としては、例えばニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタンおよび亜鉛からなる群から選択される1種またはこれらのいずれか1種以上を含む合金等が挙げられる。中でも、シールド性と経済性の観点から、銅、および銅を含む合金が好ましい。
金属膜を形成する方法としては、例えば物理蒸着(真空蒸着、スパッタリング、イオンビーム蒸着、電子ビーム蒸着等)又は化学蒸着によって形成された蒸着膜、メッキによって形成されたメッキ膜、金属箔等が挙げられる。中でも、真空成膜法(真空蒸着法やスパッタリング法等)で形成される真空蒸着膜又はスパッタリング膜、あるいは電解メッキ法で形成されるメッキ膜が、面方向の導電性に優れる点から好ましい。厚さを薄くでき、かつ厚さが薄くても面方向の導電性に優れ、ドライプロセスにて簡便に形成できる点から、真空蒸着法による蒸着膜がより好ましい。また、金属膜は、圧延加工により形成された金属箔、または電解による金属箔(例えば特殊電解銅箔等)等であってもよい。
シールド層が導電性粒子からなる導電膜である場合、導電性粒子は、例えばカーボン、銀、銅、ニッケル、ハンダなどの粒子であってよい。また、導電性粒子は、銅粉に銀めっきを施した銀コート銅粒子や、樹脂ボールまたはガラスビーズ等の絶縁性粒子に金属めっきを施した粒子等であってもよい。これらの導電性粒子は単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
導電性粒子の形状は、球状、針状、繊維状、フレーク状、または樹枝状のいずれであってもよく、層状とする観点からはフレーク状が好ましい。
シールド層20の厚さは、0.01μm以上3μm以下であり、0.05μm以上2μm以下が好ましく、0.1μm以上1.5μm以下がより好ましい。シールド層20の厚さが0.01μm以上であれば、電磁波ノイズの遮蔽効果がより良好になる。シールド層20の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1を薄くできる。また、電磁波シールドフィルム1の生産性、可とう性がよくなる。
シールド層20の表面抵抗は、0.001Ω以上1Ω以下が好ましく、0.001Ω以上0.1Ω以下がより好ましい。シールド層20の表面抵抗が上記範囲の下限値以上であれば、シールド層20を十分に薄くできる。シールド層20の表面抵抗が上記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールド層として十分に機能できる。
<導電性接着剤層>
導電性接着剤層22は、電磁波シールドフィルム1を絶縁フィルム付きプリント配線板に貼り付けるための層である。
導電性接着剤層22は、電磁波シールドフィルム1とプリント配線板とを電気的に接続するための導電性を有する導電性接着剤層である。
導電性接着剤層は、少なくとも厚さ方向に導電性を有し、かつ接着性を有する。
導電性接着剤層としては、厚さ方向に導電性を有し、面方向には導電性を有さない異方導電性接着剤層24、または厚さ方向および面方向に導電性を有する等方導電性接着剤層26が挙げられる。導電性接着剤層としては、面方向には導電性を有さないために伝送特性が良く、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる点からは、異方導電性接着剤層24が好ましい。導電性接着剤層としては、電磁波シールド層として十分に機能できる点からは、等方導電性接着剤層26が好ましい。
導電性接着剤層は、熱硬化性樹脂を含む接着剤成分と導電性粒子とを含有する導電性接着剤組成物を用いて形成されてなる。
<<接着剤成分>>
接着剤成分の吸水率は、2.0%未満である。
接着剤成分は、熱硬化性樹脂を含有する。
熱硬化性樹脂は、下記一般式(1)で表される構造式を有し、かつ170~400g/eqのエポキシ当量を示すエポキシ樹脂を含有する。
Figure 2022124461000003
(上記式(1)中、Rは炭素数1~35の炭化水素基を、Rは水素又はメチル基を、nは1~10の整数を表す)
上記式(1)中のR(炭素数1~35である炭化水素基)としては、特に制限はなく、例えば、脂肪族炭化水素基でも、脂環式炭化水素基でも、芳香族炭化水素基でも、またこれらの適宜組み合わせからなる炭化水素基であってもよい。
としては、例えば、下記の基が例示できる。
Figure 2022124461000004
上記式(1)中のRは、水素よりもメチル基の方が、疎水性であるため、接着剤成分の吸湿性を低下させることができ、より好ましい。
尚、上記一般式(1)で表される構造式を有し、かつ170~400g/eqのエポキシ当量を示すエポキシ樹脂(本明細書において、係るエポキシ樹脂を、「特定のエポキシ樹脂」ともいう)は、1種類あるいは2種類以上含有させてもよい。
エポキシ樹脂として、上記式(1)で示されるような多官能構造のエポキシ樹脂を用いることで、硬化した際の導電性接着剤層の架橋密度を上げることができ、導電性粒子が安定して固定化されるため、該導電性接着剤層は優れた接続性を担保することができる。
接着剤成分中に、特定のエポキシ樹脂は30~70質量%含有されていることが好ましい。
接着剤成分中における特定のエポキシ樹脂の含有量が30質量%以上であれば、硬化不良により接続性が担保できないという問題を有効に防止することができる。また、70質量%以下であれば、吸湿の影響により接続性が担保できないという問題を有効に防止することができる。
特定のエポキシ樹脂が示すエポキシ当量は、170~400g/eqである。
エポキシ当量を限定することで、硬化時に開環したエポキシのOH基(親水性)と、官能基R(疎水性)を最適化することができる。
エポキシ当量が小さすぎると、官能基Rの疎水性効果が不十分で、吸湿により導電性粒子が酸化し、接続性が悪化するおそれがある。一方、エポキシ当量が大きすぎると、OH基が少なく、密着性や架橋が悪くて接続性が悪化するおそれがある。
エポキシ当量としては、190g/eq以上が好ましく、215g/eq以上がより好ましく、245g/eq以上がさらに好ましく、250g/eq以上が特に好ましく、また、300g/eq以下が好ましい。
エポキシ当量の測定は、JIS K7236:2001に準拠して行うことができる。
本発明では、導電接着剤層のおける接着剤成分の吸水率を2.0%未満とし、特定のエポキシ樹脂を接着剤成分中に配合させたことで、導電接着剤層の劣化や、導電性粒子およびシールド層の吸湿による酸化を抑制することができ、高温高湿環境下でも低い接続抵抗値を維持できる電磁波シールドフィルムを形成することができる。
接着剤成分には、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲であれば、特定のエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂や、エポキシ樹脂以外の他の熱硬化性樹脂を含有することもできる。
他の熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、合成ゴム、紫外線硬化アクリレート樹脂等が挙げられる。
また、接着剤成分は、上述した熱硬化性樹脂の他に硬化剤を含有する。
硬化剤は、加熱により熱硬化性樹脂と反応して硬化する潜在硬化性接着剤が挙げられる。
硬化剤としては、熱硬化性樹脂と反応可能な官能基を複数有している重付加型硬化剤と、エポキシ基の歪エネルギーを開放するカチオンまたはアニオンといった触媒型硬化剤がある。接着剤成分の保存安定性が良好なため、触媒型硬化剤が好ましい。
接着剤成分における触媒型硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下が好ましく、0.5質量部以上30質量部以下がより好ましく、1質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。
また、接着剤成分に含有させることができる熱硬化性樹脂以外のその他の成分としては、上記硬化剤の他に、さらにゴム成分、粘着付与剤、硬化促進剤、低応力化剤(応力緩和剤)等の各種成分が挙げられる。
接着剤成分は、可とう性付与のためのゴム成分(カルボキシ変性ニトリルゴム、アクリルゴム等)、粘着付与剤等を含んでいてもよい。また、接着剤成分は、硬化促進剤、低応力化剤(応力緩和剤)等を含んでいてもよい。
接着剤成分に含有させるゴム成分の酸価としては、密着性と吸水性の観点から20mgKOH/g以下であることが好ましい。また、ゴム成分のエポキシ当量としては、エポキシ樹脂との反応性の観点から0.05eq/kg以上1eq/kg以下であることが好ましい。また、ゴム成分のガラス転移温度としては、10℃以上であることが好ましい。
上記要件を満足するゴム成分を接着剤成分に含有させることにより、高温高湿環境下に置かれた後も、良好な密着性を示し低い接続抵抗値をより長時間にわたって維持することができる電磁波シールドフィルムを提供することができる。
低応力化剤としては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
接着剤成分における低応力化剤の含有量は、硬化前の接着剤成分(固形分)100質量%のうち、10質量%以上80質量%以下が好ましく、30質量%以上70質量%以下がより好ましい。低応力化剤の含有量が上記範囲内であれば、導電性接着剤層の可とう性に優れる。
接着剤成分の吸水率は、2.0%未満である。
接着剤成分の吸水率を限定することにより、特定のエポキシ樹脂以外のその他の成分についても配合条件が限定される。
接着剤成分の吸水率が高すぎると、例えば導電性粒子の酸化が促進され接続性が悪化し、また水分の気化による膨れが発生し耐熱性も悪化する。一方、接着剤成分の吸水率が低すぎると、エポキシ樹脂との相溶性が悪化する。
接着剤成分の吸水率は、JIS K 7209に準じて、以下のようにして求めることができる。
[吸水率]
接着剤成分をPET基板上に塗布し、150℃に1時間加熱し、硬化層を作製する。
該硬化層からなる試験片を、85℃、48時間、相対湿度85%の条件下にさらす。そして、試験片の質量変化、つまり、初期質量と水にさらした後の質量の差を測定して求め、初期質量の百分率として表す。
<<導電性粒子>>
導電性接着剤層を形成する導電性接着剤組成物中には、上述した接着剤成分の他に、導電性粒子が含有されている。
異方導電性接着剤層24は、例えば、図1で示すように、上述した樹脂を含む接着剤24aと導電性粒子24bとを含む。
等方導電性接着剤層26は、例えば、図2で示すように、上述した樹脂を含む接着剤26aと導電性粒子26bを含む。
導電性粒子としては、金属(銀、白金、金、銅、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、ハンダ等)の粒子、黒鉛粉、焼成カーボン粒子、めっきされた焼成カーボン粒子、金属を被覆されたコアシェル型樹脂粒子等が挙げられる。導電性が高い点からは、金属粒子が好ましく、安価な点からは、銅粒子がより好ましい。
異方導電性接着剤層24における導電性粒子24bの平均粒子径は、2μm以上26μm以下が好ましく、4μm以上16μm以下がより好ましい。導電性粒子24bの平均粒子径が上記範囲の下限値以上であれば、電気的な接続の安定性が向上し、導電性粒子24bが異方導電性接着剤層24の樹脂の流動性を損ないにくくなるため、異方導電性接着剤層24の絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性を確保できる。導電性粒子24bの平均粒子径が上記範囲の上限値以下であれば、異方導電性接着剤層24の樹脂と被接着物表面との接触を導電性粒子24bが阻害することなく、十分な密着性が確保できる。
等方導電性接着剤層26における導電性粒子26bの平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.2μm以上1μm以下がより好ましい。導電性粒子26bの平均粒子径が上記範囲の下限値以上であれば、導電性粒子26bの接触頻度が増えることになり、3次元方向の導通性を安定的に高めることができる。導電性粒子26bの平均粒子径が上記範囲の上限値以下であれば、等方導電性接着剤層26の樹脂と被接着物表面との接触を導電性粒子26bが阻害することなく、十分な密着性が確保できる。
異方導電性接着剤層24における導電性粒子24bの割合は、異方導電性接着剤層24の100体積%のうち、1体積%以上30体積%以下が好ましく、2体積%以上10体積%以下がより好ましい。導電性粒子24bの割合が上記範囲の下限値以上であれば、異方導電性接着剤層24の導電性が良好になる。導電性粒子24bの割合が上記範囲の上限値以下であれば、異方導電性接着剤層24の接着性、流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)が良好になる。また、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる。
等方導電性接着剤層26における導電性粒子26bの割合は、等方導電性接着剤層26の100体積%のうち、50体積%以上80体積%以下が好ましく、60体積%以上70体積%以下がより好ましい。導電性粒子26bの割合が上記範囲の下限値以上であれば、等方導電性接着剤層26の導電性が良好になる。導電性粒子26bの割合が上記範囲の上限値以下であれば、等方導電性接着剤層26の接着性、流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)が良好になる。また、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる。
異方導電性接着剤層24の表面抵抗は、1×10Ω以上1×1016Ω以下が好ましく、1×10Ω以上1×1014Ω以下がより好ましい。異方導電性接着剤層24の表面抵抗が上記範囲の下限値以上であれば、導電性粒子24bの含有量が低く抑えられる。異方導電性接着剤層24の表面抵抗が上記範囲の上限値以下であれば、実用上、異方性に問題がない。
等方導電性接着剤層26の表面抵抗は、0.05Ω以上2.0Ω以下が好ましく、0.1Ω以上1.0Ω以下がより好ましい。等方導電性接着剤層26の表面抵抗が上記範囲の下限値以上であれば、導電性粒子26bの含有量が低く抑えられ、導電性接着剤の粘度が高くなりすぎず、塗布性がさらに良好となる。また、等方導電性接着剤層26の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)をさらに確保できる。等方導電性接着剤層26の表面抵抗が上記範囲の上限値以下であれば、等方導電性接着剤層26の全面が均一な導電性を有するものとなる。
異方導電性接着剤層24の厚さは、2μm以上25μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下がより好ましい。異方導電性接着剤層24の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、異方導電性接着剤層24の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)を確保でき、絶縁フィルムの貫通孔内を導電性接着剤で十分に埋めることができる。また、電磁波遮蔽層20とプリント回路の距離を広げることができ、伝送特性が良くなる。異方導電性接着剤層24の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1を薄くできる。また、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる。
等方導電性接着剤層26の厚さは、2μm以上20μm以下が好ましく、3μm以上10μm以下がより好ましい。等方導電性接着剤層26の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、密着性が良くなる。また、等方導電性接着剤層26の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)を確保でき、絶縁フィルムの貫通孔内を導電性接着剤で十分に埋めることができ、耐折性も確保でき繰り返し折り曲げても等方導電性接着剤層26が断裂することはない。等方導電性接着剤層26の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1を薄くできる。また、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる。また、電磁波遮蔽層20より表面抵抗の高い等方導電性接着剤層26の膜厚が薄いことで伝送特性が良くなる。
<第1の離型フィルム>
第1の離型フィルム30は、絶縁樹脂層10の保護フィルムとなるものであり、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性を良好にする。第1の離型フィルム30は、電磁波シールドフィルム1を絶縁フィルム付きプリント配線板に貼り付けた後には、絶縁樹脂層10から剥離される。
第1の離型フィルム30は、例えば、基材層32と、基材層32の絶縁樹脂層10側の表面に設けられた粘着剤層又は離型剤層34とを有する。尚、本明細書においては、粘着剤層又は離型剤層34を粘着剤層/離型剤層34とも表す。
第1の離型フィルム30は、基材層32の表面に粘着剤層/離型剤層34を直接設けたものであってもよく;絶縁樹脂層10の表面に粘着剤層/離型剤層34を設けた後、粘着剤層/離型剤層34の表面に基材層32を貼り付けることによって、基材層32の表面に粘着剤層/離型剤層34を設けたものであってもよい。
基材層32の樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも記す。)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム、液晶ポリマー等が挙げられる。樹脂材料としては、電磁波シールドフィルム1を製造する際の耐熱性(寸法安定性)および価格の点から、PETが好ましい。
基材層32は、着色剤またはフィラーを含んでいてもよい。
基材層32の厚さは、5μm以上500μm以下が好ましく、10μm以上150μm以下がより好ましく、25μm以上100μm以下がさらに好ましい。基材層32の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性が良好となる。基材層32の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1を絶縁フィルム付きプリント配線板に熱プレスする際に導電性接着剤層22に熱が伝わりやすい。
基材層と絶縁樹脂層との間には、粘着剤層34又は離型剤層34が配される。
第1の離型フィルム30が粘着剤層又は離型剤層34を有することによって、第2の離型フィルム40を導電性接着剤層22から剥離する際や電磁波シールドフィルム1をプリント配線板等に熱プレスによって貼り付ける際に、第1の離型フィルム30が絶縁樹脂層10から剥離することが抑えられ、第1の離型フィルム30が保護フィルムとしての役割を十分に果たすことができる。
粘着剤としては、公知の粘着剤を用いればよい。
また、離型剤層34は、基材層32の表面に、離型剤による離型処理が施して形成されたものである。第1の離型フィルム30が離型剤層34を有することによって、第1の離型フィルム30を絶縁樹脂層10から剥離する際に、第1の離型フィルム30を剥離しやすく、絶縁樹脂層10が破断しにくくなる。
離型剤としては、公知の離型剤を用いればよい。
粘着剤層34の厚さは、0.05μm以上50.0μm以下が好ましく、0.1μm以上25.0μm以下がより好ましい。粘着剤層34の厚さが上記範囲内であれば、第1の離型フィルム30の表面が適度な粘着性を有する。
離型剤層34の厚さは、0.05μm以上2.0μm以下が好ましく、0.1μm以上1.5μm以下がより好ましい。離型剤層34の厚さが前記範囲内であれば、第1の離型フィルムをさらに剥離しやすくなる。
<第2の離型フィルム>
第2の離型フィルム40は、導電性接着剤層22を保護するものであり、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性を良好にする。第2の離型フィルム40は、電磁波シールドフィルム1を絶縁フィルム付きプリント配線板に貼り付ける前に、導電性接着剤層22から剥離される。
第2の離型フィルム40は、例えば、基材層42と、基材層42の導電性接着剤層側の表面に設けられた離型剤層又は粘着剤層44とを有する。
尚、本明細書においては、離型剤層又は粘着剤層44を、離型剤層/粘着剤層44とも表す。
基材層42の樹脂材料としては、第1の離型フィルム30の基材層32の樹脂材料と同様なものが挙げられる。
基材層42は、着色剤またはフィラーを含んでいてもよい。
基材層42の厚さは、5μm以上500μm以下が好ましく、10μm以上150μm以下がより好ましく、25μm以上100μm以下がさらに好ましい。
基材層42と導電性接着剤層22との間には、離型剤層44又は粘着剤層44が配される。
離型剤層44は、基材層42の表面に、離型剤による離型処理が施して形成されたものである。第2の離型フィルム40が離型剤層44を有することによって、第2の離型フィルム40を導電性接着剤層22から剥離する際に、第2の離型フィルム40を剥離しやすく、導電性接着剤層22が破断しにくくなる。
離型剤としては、公知の離型剤を用いればよい。
離型剤層44の厚さは、0.05μm以上2.0μm以下が好ましく、0.1μm以上1.5μm以下がより好ましい。離型剤層44の厚さが前記範囲内であれば、第2の離型フィルム40をさらに剥離しやすくなる。
粘着剤層44としては、上記<第1の離型フィルム>の欄で説明した粘着剤層34と同様なものが使用できる。
<電磁波シールドフィルムの構成>
本発明において、電磁波シールドフィルムは、少なくとも、絶縁樹脂層、シールド層、及び導電性接着剤層を有していればよい。電磁波シールドフィルムには、第1の離型フィルムや第2の離型フィルムが、含まれている場合もあれば、そうでない場合もある。
そこで、本明細書においては、絶縁樹脂層、シールド層、及び導電性接着剤層に、第1の離型フィルム及び/又は第2の離型フィルムも含めて電磁波シールドフィルムという場合と、これら離型フィルムは含めずに電磁波シールドフィルムという場合とがある。
<電磁波シールドフィルムの厚さ>
電磁波シールドフィルム1の厚さ(離型フィルムを除く)は、5μm以上45μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましい。電磁波シールドフィルム1の厚さ(離型フィルムを除く)が上記範囲の下限値以上であれば、第1の離型フィルム30を剥離する際に破断しにくい。電磁波シールドフィルム1の厚さ(離型フィルムを除く)が上記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板を薄くできる。
(電磁波シールドフィルムの製造方法)
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法の第1の実施形態としては、例えば、下記の方法(A1)による製造方法が挙げられる。尚、下記の方法(A1)では、電磁波シールドフィルムとして、図1で示される接着剤層が異方導電性接着剤層24である電磁波シールドフィルムを例に用いたが、この接着剤層に限定されるものではない。以下に記載する製造方法は、接着剤層が、等方導電性接着剤層27であっても、導電性粒子を含まない接着剤層22であっても、同様に適用される。
方法(A1)は、具体的には、下記の工程(A1-1)~(A1-4)を有する方法である。
以下、図3をもとに、方法(A1)について説明する。
工程(A1-1):第1の離型フィルム30の一方の面に絶縁樹脂層10を形成する工程。
工程(A1-2):絶縁樹脂層10の第1の離型フィルム30とは反対側の面にシールド層20を形成する工程。
工程(A1-3):シールド層20の絶縁樹脂層10とは反対側の面に異方導電性接着剤層24を形成する工程。
工程(A1-4):異方導電性接着剤層24のシールド層20とは反対側の面に第2の離型フィルム40を積層する工程。
以下、方法(A1)の各工程について詳細に説明する。
工程(A1-1)における絶縁樹脂層10の形成方法としては、例えば、ハンダ付け等の際の耐熱性の点から、第1の離型フィルム30の粘着剤層/離型剤層34側の面に、熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む塗料を塗布し、半硬化又は硬化させる方法が好ましい。
前記塗料の塗布方法としては、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等の各種コーターを用いた方法を適用することができる。
熱硬化性樹脂を半硬化又は硬化させる際には、ヒータ、赤外線ランプ等の加熱器を用いて加熱すればよい。
工程(A1-2)では、絶縁樹脂層10の第1の離型フィルム30とは反対側の面にシールド層20を形成する。
シールド層20の形成方法としては、真空成膜法(真空蒸着、スパッタリング)による方法、電界メッキ法による方法、金属箔(銅箔)を貼り付ける方法等が挙げられる。
シールド層20の膜厚が3μm未満の場合は、所望の膜厚、表面形状を有するシールド層20を形成できる点から、真空蒸着によって蒸着膜を形成する方法、又は電解メッキによってメッキ膜を形成する方法が好ましい。ガス透過性が高く、高温条件にて内部で発生したガスを外部へ放出しやすいシールド層20を形成でき、ドライプロセスにて簡便にシールド層20を形成できる点から、真空蒸着によって蒸着膜を形成する方法がさらに好ましい。
シールド層20の膜厚が3μm以上の場合は、真空蒸着の熱履歴による絶縁樹脂層10の劣化が起こらず、所望の膜厚を有するシールド層20を容易に形成できる点から、絶縁樹脂層10と金属箔(銅箔)とが接するように、加圧及び/又は加熱によるラミネート処理を施す方法が好ましい。
ここで、加圧処理における圧力としては、0.1kPa以上100kPa以下が好ましく、0.1kPa以上20kPa以下がより好ましく、1kPa以上10kPa以下がさらに好ましい。
加圧処理と同時に加熱してもよい。その際の加熱温度としては半硬化又は硬化させた絶縁樹脂層のガラス転移温度から-30℃以上+50℃以下が好ましく、50℃以上150℃以下が好ましい。
工程(A1-3)では、シールド層20の絶縁樹脂層10とは反対側の面に、接着剤24aと導電性粒子24bと溶剤とを含有する導電性接着剤塗料を塗布する。
塗布した導電性接着剤塗料より溶剤を揮発させることにより、異方導電性接着剤層24を形成する。
接着剤塗料に含まれる溶剤としては、例えば、エステル(酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリールモノメチルエーテル、プロピレングルコール等)等が挙げられる。
導電性接着剤の塗布方法は、工程(A1-1)における塗料の塗布方法と同様である。
工程(A1-4)では、第2の離型フィルム40を、異方導電性接着剤層24の電磁波遮蔽層20とは反対側の面に、離型剤層/粘着剤層44が異方導電性接着剤層24に接するように積層する。
第2の離型フィルム40を異方導電性接着剤層24に積層した後には、第1の離型フィルム30、絶縁樹脂層10、シールド層20、異方導電性接着剤層24、及び第2の離型フィルム40からなる積層体に、各層同士の密着性を高めるため、加圧及び/又は加熱によるラミネート処理を施してもよい。
加圧条件は、工程(A1-2)における加圧処理と同様である。また、工程(A1-4)においても、工程(A1-2)と同様に加熱処理をしてもよい。
尚、方法(A1)では、ラミネート処理は、工程(A1-2)、(A1―4)にて行う例を記載したが、ラミネート処理を行う段階はこれに限られない。
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法の第2の実施形態としては、例えば、下記の方法(A2)による製造方法が挙げられる。
方法(A2)は、具体的には、下記の工程(A2-1)~(A2-4)を有する方法である。
以下、図4~図6をもとに、方法(A2)について説明する。工程(A2-1)~(A2-2)を図4に、工程(A2-3)を図5に、工程(A2-4)を図6に示す。
工程(A2-1):第1の離型フィルム30の一方の面に絶縁樹脂層10を形成する工程。
工程(A2-2):絶縁樹脂層10の第1の離型フィルム30とは反対側の面にシールド層20を形成して積層体(p1)を形成する工程。
工程(A2-3):第2の離型フィルム40に異方導電性接着剤層24を形成して積層体(p2)を形成する工程。
工程(A2-4):積層体(p1)と積層体(p2)とを、積層体(p1)のシールド層20と積層体(p2)の異方導電性接着剤層24とが接するように貼り合せる工程。
工程(A2-1)、及び工程(A2-2)は、各々、前記の工程(A1-1)、及び工程(A1-2)と同様である。
工程(A2-3)は、シールド層20ではなく、第2の離型フィルム40の離型剤層/粘着剤層44が設けられている面に、熱硬化性接着剤24a及び導電性粒子24bを含む導電性接着剤塗料を塗布して異方導電性接着剤層24を形成すること以外は前記の工程(A1-3)と同様である。
工程(A2-4)における積層体(p1)と積層体(p2)との貼り合せでは、積層体(p1)と積層体(p2)との密着性を高めるための加圧によるラミネート処理を施してもよい。加圧条件は、工程(A1-4)における加圧処理と同様である。また、工程(A2-4)においても、工程(A1-4)と同様に加熱処理をしてもよい。
<作用効果>
本態様の電磁波シールドフィルム1は、電磁波シールドフィルムを構成する導電性接着剤層に用いる導電性接着剤組成物として、特定の吸水率を示す接着剤成分を用い、該接着剤成分に、特定のエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂を含有させたことにより、高温高湿環境下に置かれた後も、良好な密着性を示し低い接続抵抗値を維持できる。
<他の実施形態>
本発明における電磁波シールドフィルムは、絶縁樹脂層と、絶縁樹脂層に隣接するシールド層と、シールド層の絶縁樹脂層とは反対側に隣接する導電性接着剤層とを有するものであればよく、図示例の実施形態に限定はされない。
例えば、絶縁樹脂層は、2層以上であってもよい。
第1の離型フィルムは、粘着剤層の代わりに離型剤層を有していてもよい。
第2の離型フィルムは、離型剤層の代わりに粘着剤層を有していてもよい。
第1の離型フィルムまたは第2の離型フィルムは、粘着剤層または離型剤層を有さず、基材層のみからなるものであってもよい。
絶縁樹脂層が十分な柔軟性や強度を有する場合は、第1の離型フィルムを省略しても構わない。
導電性接着剤層の表面のタック性が少ない場合は、第2の離型フィルムを省略しても構わない。
(電磁波シールドフィルム付きプリント配線板)
本発明の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板は、基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、プリント配線板のプリント回路が設けられた側の面に隣接する絶縁フィルムと、導電性接着剤層が絶縁フィルムに隣接するように設けられた上記本発明の電磁波シールドフィルムとを有する。
図7は、本発明の製造方法で得られる電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の第1の実施形態を示す断面図である。
電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2は、フレキシブルプリント配線板50と、絶縁フィルム60と、第1の実施形態の電磁波シールドフィルム1とを備える。
フレキシブルプリント配線板50は、ベースフィルム52の少なくとも片面にプリント回路54が設けられたものである。
絶縁フィルム60は、フレキシブルプリント配線板50のプリント回路54が設けられた側の表面に設けられる。
電磁波シールドフィルム1の異方導電性接着剤層24は、絶縁フィルム60の表面に接着されている。また、異方導電性接着剤層24は、絶縁フィルム60に形成された貫通孔(図示略)を通ってプリント回路54に電気的に接続されている。
電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2においては、第2の離型フィルム40は、異方導電性接着剤層24から剥離されている。
電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2において第1の離型フィルム30が不要になった際には、第1の離型フィルム30は、絶縁樹脂層10から剥離される。
貫通孔のある部分を除くプリント回路54(信号回路、グランド回路、グランド層等)の近傍には、電磁波シールドフィルム1のシールド層20が、絶縁フィルム60および異方導電性接着剤層24を介して離間して対向配置される。
貫通孔のある部分を除くプリント回路54とシールド層20との離間距離は、絶縁フィルム60の厚さと異方導電性接着剤層24の厚さの総和とほぼ等しい。離間距離は、15μm以上200μm以下が好ましく、30μm以上200μm以下がより好ましい。離間距離が15μmより小さいと、信号回路の特性インピーダンスの調整のために、信号回路の線幅を小さくしなければならず、安定したプリント回路54の製造が技術的に困難になる。離間距離が200μmより大きいと、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2が厚くなり、可とう性も不足する。
<フレキシブルプリント配線板>
フレキシブルプリント配線板50は、銅張積層板の銅箔を公知のエッチング法により所望のパターンに加工してプリント回路(電源回路、グランド回路、グランド層等)としたものである。
銅張積層板としては、ベースフィルム52の片面または両面に接着剤層(図示略)を介して銅箔を貼り付けたもの;銅箔の表面にベースフィルム52を形成する樹脂溶液等をキャストしたもの等が挙げられる。
接着剤層の材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
接着剤層の厚さは、0.5μm以上30μm以下が好ましい。
<<ベースフィルム>>
ベースフィルム52としては、耐熱性を有するフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムがより好ましく、ポリイミドフィルムがさらに好ましい。
ベースフィルム52の表面抵抗は、電気的絶縁性の点から、1×10Ω以上が好ましい。ベースフィルム52の表面抵抗は、実用上の点から、1×1019Ω以下が好ましい。
ベースフィルム52の厚さは、5μm以上200μm以下が好ましく、屈曲性の点から、6μm以上25μm以下がより好ましく、10μm以上25μm以下がより好ましい。
<<プリント回路>>
プリント回路54(信号回路、グランド回路、グランド層等)を構成する銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられ、屈曲性の点から、圧延銅箔が好ましい。
銅箔の厚さは、1μm以上50μm以下が好ましく、7μm以上35μm以下がより好ましい。
プリント回路54の長さ方向の端部(端子)は、ハンダ接続、コネクター接続、部品搭載等のため、絶縁フィルム60や電磁波シールドフィルム1に覆われていない。
<絶縁フィルム>
絶縁フィルム60は、絶縁フィルム本体(図示略)の片面に、接着剤の塗布、接着剤シートの貼り付け等によって接着剤層(図示略)を形成したものである。
絶縁フィルム本体の表面抵抗は、電気的絶縁性の点から、1×10Ω以上が好ましい。絶縁フィルム本体の表面抵抗は、実用上の点から、1×1019Ω以下が好ましい。
絶縁フィルム本体としては、耐熱性を有するフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムがより好ましく、ポリイミドフィルムがさらに好ましい。
絶縁フィルム本体の厚さは、1μm以上100μm以下が好ましく、可とう性の点から、3μm以上25μm以下がより好ましい。
接着剤層の材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン等が挙げられる。エポキシ樹脂は、可とう性付与のためのゴム成分(カルボキシ変性ニトリルゴム等)を含んでいてもよい。
接着剤層の厚さは、1μm以上100μm以下が好ましく、1.5μm以上60μm以下がより好ましい。
貫通孔の開口部の形状は、特に限定されない。貫通孔62の開口部の形状としては、例えば、円形、楕円形、四角形等が挙げられる。
(電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法)
本発明の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法は、基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、上記本発明の電磁波シールドフィルムとを、絶縁フィルムを介して圧着する工程を有し、圧着する際には、絶縁フィルムを、プリント配線板のプリント回路が設けられた側の面に密着させると共に、電磁波シールドフィルムの接着剤層に密着させる、製造方法である。
本発明の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法は、上記の本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法によって、電磁波シールドフィルムを製造した後、下記の工程(a)及び工程(b)を実施する。
工程(a):プリント配線板のプリント回路が設けられた側の表面に絶縁フィルムを設け、絶縁フィルム付きプリント配線板を得る工程。
工程(b):電磁波シールドフィルムが第2の離型フィルムを有する場合は、電磁波シールドフィルムから第2の離型フィルムを剥離した後、絶縁フィルム付きプリント配線板と電磁波シールドフィルムとを、絶縁フィルムの表面に導電性接着剤層が接触するように重ね、これらをプレスすることによって、絶縁フィルムの表面に導電性接着剤層を接着し、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板を得る工程。
より好ましい実施形態として、本発明の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法は、下記の工程(a)~(d)を有する。
工程(a):プリント配線板のプリント回路が設けられた側の表面に絶縁フィルムを設け、絶縁フィルム付きプリント配線板を得る工程。
工程(b):電磁波シールドフィルムが第2の離型フィルムを有する場合は、電磁波シールドフィルムから第2の離型フィルムを剥離した後、絶縁フィルム付きプリント配線板と電磁波シールドフィルムとを、絶縁フィルムの表面に導電性接着剤層が接触するように重ね、これらをプレスすることによって、絶縁フィルムの表面に導電性接着剤層を圧着し、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板を得る工程。
工程(c):電磁波シールドフィルムが第1の離型フィルムを有する場合は、工程(b)の後、第1の離型フィルムが不要になった際に電磁波シールドフィルムから第1の離型フィルムを剥離する工程。
工程(d):導電性接着剤層に含まれる接着剤が熱硬化性接着剤である場合は、必要に応じて、工程(a)と工程(b)との間、または工程(c)の後に導電性接着剤層を本硬化させる工程。
以下、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板を製造する方法について、図8を参照しながら説明する。
<工程(a)>
図8に示すように、フレキシブルプリント配線板50に、プリント回路54に対応する位置に貫通孔62が形成された絶縁フィルム60を重ね、フレキシブルプリント配線板50の表面に絶縁フィルム60の接着剤層(図示略)を接着し、接着剤層を硬化させることによって、絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板3を得る。フレキシブルプリント配線板50の表面に絶縁フィルム60の接着剤層を仮接着し、工程(d)にて接着剤層を本硬化させてもよい。
接着剤層の接着および硬化は、例えば、プレス機(図示略)等による熱プレスによって行う。
<工程(b)>
図8に示すように、絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板3に、第2の離型フィルム40を剥離した電磁波シールドフィルム1を重ね、プレスする(好ましくは熱プレスする)ことによって、絶縁フィルム60の表面に異方導電性接着剤層24が圧着され、かつ異方導電性接着剤層24が、貫通孔62を通ってプリント回路54に電気的に接続された電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2を得る。
図8における工程(b)の図において、プリント回路54は、グランド回路54aと信号回路54bからなる(54aと54bについては図示略)。
異方導電性接着剤層24の接着は、例えば、プレス機(図示略)等による熱プレスによって行う。
熱プレスの時間は、20秒以上60分以下が好ましく、30秒以上30分以下がより好ましい。
熱プレスの温度(プレス機の熱盤の温度)は、140℃以上210℃以下が好ましく、150℃以上190℃以下がより好ましい。
熱プレスの圧力は、0.5MPa以上20MPa以下が好ましく、1MPa以上16MPa以下がより好ましい。
<工程(c)>
図8に示すように、第1の離型フィルム30が不要になった際に、絶縁樹脂層10から第1の離型フィルム30を剥離する。
<作用効果>
本態様の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板2は、上記本発明の電磁波シールドフィルムの特徴を有しており、シールド層がプリント配線板のグランド回路と良好にグランド接続する電磁波シールドフィルム付きプリント配線板となる。
<他の実施形態>
尚、本発明における電磁波シールドフィルム付きプリント配線板は、プリント配線板と、プリント配線板のプリント回路が設けられた側の表面に隣接する絶縁フィルムと、接着剤層が絶縁フィルムに隣接した電磁波シールドフィルムを有するものであればよく、図示例の実施形態に限定はされない。
例えば、フレキシブルプリント配線板は、裏面側にグランド層を有するものであってもよい。また、フレキシブルプリント配線板は、両面にプリント回路を有し、両面に絶縁フィルムおよび電磁波シールドフィルムが貼り付けられたものであってもよい。
フレキシブルプリント配線板の代わりに、柔軟性のないリジッドプリント基板を用いてもよい。
第1の実施形態の電磁波シールドフィルム1の代わりに、第2の実施形態の電磁波シールドフィルム1等を用いてもよい。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
各実施例で用いたエポキシ樹脂の構造式を以下に示す。
Figure 2022124461000005
(実施例1)
<絶縁樹脂層の接着剤塗料の配合>
絶縁樹脂層に含有させる接着剤塗料として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER(登録商標)828)の20.6質量部、可とう性エポキシ樹脂(エポキシ樹脂(DIC社製、EXA-4816))の60.7質量部、硬化剤(昭和電工社製、ショウアミンX(登録商標))の16.7質量部、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)の2質量部、カーボンブラックの4.9質量部を溶剤(メチルエチルケトン)の200質量部に溶解し、絶縁樹脂層用塗料を作製した。
<導電性接着剤層の接着剤塗料の配合>
導電性接着剤層に含有させる接着剤塗料として、上記式(1)で表される構造式を有するエポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON HP7200L(具体的な構造式は、上記式(a)参照))79質量部と、アクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス社製、テイサンレジン SG-P3(Tg12℃、酸価0mgKOH/g、エポキシ当量0.21eq./kg))20質量部と、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤(四国化成社製、キュアゾール 2P4MZ(2フェニル4メチルイミダゾール))1質量部と、銅粒子(平均粒子径5.02μm)20質量部とを混合して、導電性接着剤層の接着剤塗料を作製した。導電性接着剤層の接着剤塗料の配合割合を下記表1に示す。
<電磁波シールドフィルムの作製>
アクリル系粘着剤からなる粘着剤層がPETフィルム(東洋紡株式会社製、CN200、膜厚50μm)の片側に設けられた第1の離型フィルムを用意した。
第1の離型フィルムの粘着剤層表面に、上記絶縁樹脂層用塗料をダイコーダーを用いて塗布し、その後乾燥させて、絶縁樹脂層(10μm)を形成した。
次いで、上記絶縁樹脂層の第1の離型フィルムとは反対側の面に、電子ビーム蒸着法により銅を物理的に蒸着させて、銅蒸着膜からなるシールド層(膜厚300nm)を形成した。
次いで、上記導電性接着剤層の接着剤塗料を、上記シールド層の絶縁樹脂層とは反対側の面に、ダイコーダーを用いて塗布し、その後乾燥させて、導電性接着剤層(膜厚5μm)を形成した。
非シリコーン系離型剤にて離型層がPETフィルム(リンテック社製、T157、離型フィルム本体の厚さ:50μm、離型剤層の厚さ:0.1μm)の片側に設けられた第2の離型フィルムを用意した。
上記導電性接着剤層のシールド層とは反対側の面に上記第2の離型フィルムを、上記導電性接着剤層に上記離型剤層が接するように貼り付けて、実施例1の電磁波シールドフィルムを得た。
<電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の作製>
厚さ25μmのポリイミドフィルム(絶縁フィルム本体)の表面に絶縁性接着剤組成物を、乾燥膜厚が25μmになるように塗布し、接着剤層を形成し、絶縁フィルム(厚さ:50μm)を得た。プリント回路のグランド回路に対応する位置に貫通孔(孔径:800μm)を形成した。
厚さ12μmのポリイミドフィルム(ベースフィルム)の表面にプリント回路が形成されたプリント配線板を用意した。
プリント配線板に絶縁フィルムを熱プレスにより貼り付けて、絶縁フィルム付きプリント配線板を得た。
絶縁フィルム付きプリント配線板に、第2の離型フィルムを剥離した上記実施例1の電磁波シールドフィルムを重ね、ホットプレス装置を用い、熱盤温度:180℃、荷重:3MPaで30分間熱プレスし、絶縁フィルムの表面に導電性接着剤層を接着した。
絶縁樹脂層から第1の離型フィルムを剥離して、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板を得た。
<接着剤成分の吸水率(%)の測定>
接着剤成分をPET基板上に塗布し、150℃に1時間加熱し、硬化層を作製する。
該硬化層からなる試験片を、85℃、48時間、相対湿度85%の条件下にさらす。そして、試験片の質量変化、つまり、初期質量と水にさらした後の質量の差を測定して求め、初期質量の百分率として表す。
実施例1で用いた接着剤成分の吸水率の測定結果を下記表1に示す。
<電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の評価>
上記のようにして得た実施例1の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板について、高温高湿環境下に保存する前と後における接続抵抗を測定し、接続性を評価した。保存条件は、85℃、湿度85%の環境下で、500時間と1000時間の2パターンである。下記方法により、接続性を評価した。
[接続性評価]
電磁波シールドフィルム付きプリント配線板において、貫通孔(接続孔ともいう)に存在する電磁波シールドフィルムを経由して、配線-シールド層-配線間の電気的接続を測定した。
電磁波シールドフィルム付きプリント配線板に対して、テスターを当てて、配線-シールド層-配線間の抵抗値を測定した。
接続抵抗値を下記基準に従い評価した。
〇 300mΩ未満
△ 300mΩ以上1000mΩ未満
× 1000mΩ以上
実施例1の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板に対する、接続性の評価結果を下記表1に示す。
(実施例2~実施例11)
実施例1において、導電性接着剤層の各条件を表1、及び表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~実施例11の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板を作製した。
実施例2では、エポキシ樹脂として、DIC社製、EPICLON HP7200HHH(具体的な構造式は、上記式(a)参照))を用いた。
実施例3では、エポキシ樹脂として、日本化薬社製、NC3000(具体的な構造式は、上記式(b)参照))を用いた。
実施例4では、エポキシ樹脂として、日本化薬社製、NC2000-L(具体的な構造式は、上記式(c)参照))を用いた。
実施例5では、エポキシ樹脂として、日本化薬社製、EPPN-201(具体的な構造式は、上記式(d)参照))を用いた。
実施例10では、アクリル酸エステル系ポリマーとして、ナガセケムテックス社製、テイサンレジン SG-70L(Tg-13℃、酸価5mgKOH/g、エポキシ当量なし)を用いた。
実施例2~実施例11で用いた接着剤成分の吸水率を、実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1及び、表2に示す。
また、実施例2~実施例11で作製した電磁波シールドフィルム付きプリント配線板に対して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1、及び表2に示す。
(比較例1~比較例3)
実施例1において、導電性接着剤層の各条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1~比較例3の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板を作製した。
比較例1では、エポキシ樹脂として、三菱ケミカル社製、jER1001(具体的な構造式は、上記式(e)参照))を用いた。
比較例2では、エポキシ樹脂として、三菱ケミカル社製、jER157S70(具体的な構造式は、上記式(f)参照))を用いた。
比較例3では、アクリル酸エステル系ポリマーとして、ナガセケムテックス社製、テイサンレジン SG-280(Tg-29℃、酸価30mgKOH/g、エポキシ当量なし)を用いた。
比較例1~比較例3で用いた接着剤成分の吸水率を、実施例1と同様の方法で測定した。結果を表2に示す。
また、比較例1~比較例3で作製した電磁波シールドフィルム付きプリント配線板に対して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2022124461000006
Figure 2022124461000007
上記実施例から明らかなように、本発明の電磁波シールドフィルムは、高温高湿環境下に置かれた後も、500時間経過しても、確実に良好な密着性を示し低い接続抵抗値を維持できることがわかった。
また、接着剤成分に特定のゴム成分を含有させると、経過時間が1000時間であっても、良好な密着性を示し低い接続抵抗値を維持できる場合があることもわかった。
本発明の電磁波シールドフィルムは、スマートフォン、携帯電話、光モジュール、デジタルカメラ、ゲーム機、ノートパソコン、医療器具等の電子機器用のフレキシブルプリント配線板における、電磁波シールド用部材として有用である。
1 電磁波シールドフィルム
2 電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板
3 絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板
10 絶縁樹脂層
20 シールド層
22 導電性接着剤層
24 異方導電性接着剤層
24a 接着剤
24b 導電性粒子
26 等方導電性接着剤層
26a 接着剤
26b 導電性粒子
30 第1の離型フィルム
32 基材層
34 粘着剤層/離型剤層
40 第2の離型フィルム
42 基材層
44 離型剤層/粘着剤層
50 フレキシブルプリント配線板
52 ベースフィルム
54 プリント回路
60 絶縁フィルム
62 貫通孔

Claims (10)

  1. 絶縁樹脂層、シールド層、及び導電性接着剤層をこの順で積層してなる電磁波シールドフィルムであって、
    前記導電性接着剤層は、接着剤成分と導電性粒子とを含有する導電性接着剤組成物を用いて形成されてなり、
    前記接着剤成分の吸水率は、2.0%未満であり、
    前記接着剤成分は、熱硬化性樹脂を含有し、
    前記熱硬化性樹脂は、下記一般式(1)で表される構造式を有し、かつ170~400g/eqのエポキシ当量を示すエポキシ樹脂を含有する、電磁波シールドフィルム。
    Figure 2022124461000008
    (上記式(1)中、Rは炭素数1~35の炭化水素基を、Rは水素又はメチル基を、nは1~10の整数を表す)
  2. 前記接着剤成分中に、前記エポキシ樹脂が30~70質量%含有される、請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
  3. 前記エポキシ当量が215~400g/eqである、請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
  4. 前記一般式(1)中のRが脂環式炭化水素、又は、芳香族炭化水素を含む構造からなる炭化水素基である、請求項1~3のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
  5. 前記エポキシ当量が250~400g/eqである、請求項3又は4に記載の電磁波シールドフィルム。
  6. 前記接着剤成分にゴム成分を含有する、請求項1~5のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
  7. 前記ゴム成分の酸価が20mgKOH/g以下である、請求項6に記載の電磁波シールドフィルム。
  8. 前記ゴム成分のエポキシ当量が0.05eq/kg以上である、請求項6又は7に記載の電磁波シールドフィルム。
  9. 前記ゴム成分のガラス転移温度が10℃以上である、請求項6~8のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
  10. 基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、
    前記プリント配線板の前記プリント回路が設けられた側の面に隣接する絶縁フィルムと、
    前記導電性接着剤層が前記絶縁フィルムに隣接するように設けられた請求項1~9のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムと、
    を有する、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板。

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