JP2022122111A - 車両の前部車体構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両の静粛性と走行安定性を確保する。【解決手段】車両の前部車体構造12は、サスペンションアーム36を揺動可能に保持するサス保持部60,61およびボデーフロア48に締結される車体取付部40を有するサスペンションメンバ28と、ボールジョイント支持部64およびサスペンションメンバ28のサス保持部に保持される保持部66,67を有するサスペンションアーム36と、サスペンションメンバ28に連結される第1連結部42およびボデーフロントサイドメンバ22に連結される第2連結部43を有するブレース26とを備える。車両の平面視において、ボールジョイント支持部64と車体取付部40を結んだ線70上またはその近傍にサス保持部60が配設され、ブレース26は、第1連結部42と第2連結部43を結んだ線72が車両後方に向かうにつれて車幅方向外側に斜行するように配設される。【選択図】図13
Description
本発明は、車両の前部車体構造に関し、特に、サスペンションメンバの車体への取付構造に関する。
典型的な乗用車において、車両の乗員室より前方の部分は、エンジンなどの車両駆動用の原動機を含む動力装置を収容するエンジン室となっている。エンジン室と乗員室の境界部分の下方には、サスペンションアームを揺動可能に保持するサスペンションメンバが配置されている。
特許文献1には、車両の前部車体構造が開示されており、左右1対のロアアーム(サスペンションアーム)と、これら左右1対のロアアームを揺動可能に支持するサブフレーム(サスペンションメンバ)と、サブフレームの車両後方部分を左右1対のフロアフレーム(サイドメンバ)に連結する左右1対の連結メンバとを備える構造が示されている。
サスペンションメンバの車体への取付構造に応じて、車両の静粛性が変化すると共に、車両の走行安定性も変化する。車両の静粛性と走行安定性の両方を確保することができる、サスペンションメンバの取付構造が望まれている。
本発明の目的は、車両の静粛性と走行安定性の両方を確保できる、サスペンションメンバの取付構造を提供することにある。
本発明の車両の前部車体構造は、サスペンションアームを揺動可能に保持するサス保持部を有すると共に、車両後方側で車体のボデーフロアに締結される車体取付部を有するサスペンションメンバと、車幅方向外側でボールジョイントを支持するボールジョイント支持部、および、車幅方向内側で前記サスペンションメンバの前記サス保持部に保持される保持部を有するサスペンションアームと、前記サスペンションメンバに連結される第1連結部、および、前記ボデーフロアよりも高い剛性の部位であるボデーフロントサイドメンバに連結される第2連結部を有するブレースと、を備え、車両の平面視において、前記ボールジョイント支持部と前記車体取付部を結んだ線上またはその近傍に前記サス保持部が配設され、前記ブレースは、前記第1連結部と前記第2連結部を結んだ線が車両後方に向かうにつれて車幅方向外側に斜行するように配設される、ことを特徴とする。
この構造によれば、サスペンションアームを介してサスペンションメンバに入力される、路面からの振動を効率的に低剛性部位であるボデーフロアに伝達させて、その振動を減衰させることができる。また、サスペンションメンバがブレースを介して高剛性部位であるボデーフロントサイドメンバに連結しているため、走行安定性も確保することができる。また、サスペンションメンバに入力される荷重に対して、ブレースがサスペンションメンバの変形を抑制する補強部材として機能する。
本発明の車両の前部車体構造において、前記ブレースには、前記第1連結部と前記第2連結部の間に脆弱部が形成される、としてもよい。
この構造によれば、衝突荷重がブレースに伝達された際に、脆弱部を起点にブレースを座屈させることができる。
本発明によれば、車両の静粛性と走行安定性の両方を確保することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。以下の説明において、特段の断りがない限り、前後左右上下等の方向および向きを表す語句は、車両に関する方向および向きを表す。また、車両の左右方向(幅方向)において車両の前後方向に延びる中心線に近い側を車幅方向内側、遠い側を車幅方向外側と記す。各図において、矢印FRの向きが前方、矢印UPの向きが上方、矢印LHの向きが左方を表す。
図1は、車両10の前部車体構造12を模式的に示す斜視図である。前部車体構造12は、ダッシュボード14で乗員室16と隔てられたエンジン室18を規定する。エンジン室18には、エンジンや電動機などの車両駆動用の原動機、変速機および終減速機が一体となった動力装置20(図6参照)が収容されている。前部車体構造12は、左右を前後方向に延びて配置されるボデーフロントサイドメンバ22(以下、単にサイドメンバ22とも言う)を有する。左右のサイドメンバ22の前端には、それぞれクラッシュボックス24が結合されている。サイドメンバ22は、エンジン室18内では前部車体構造12の上下方向においてほぼ中央部に配置され、サイドメンバ22の後方部は、ダッシュボード14に沿って下方に向かった後、乗員室16の下で後方に延びている。
エンジン室18と乗員室16の境界部分の下方には、サスペンションアームを揺動可能に保持するサスペンションメンバ28が配置されている。サスペンションメンバ28は、左右のサイドメンバ22を橋渡すように配置され、これらのサイドメンバ22に結合されている。サスペンションメンバ28は、前方に向けて伸びる前方延伸部30を有する。前方延伸部30は、サイドメンバ22の下方に位置し、上下に位置するサイドメンバ22と前方延伸部30の前端同士は、上下に延びる連結材32により連結されている。また、前方延伸部30の前端には、ロワクラッシュボックス34が結合されている。
図2は、サスペンションメンバ28を示す斜視図であり、同図では、サスペンションメンバ28の上面の構造が一部省略して描かれている。サスペンションメンバ28は、前方延伸部30の後方に連結された基部29と、基部29の前縁の左右にそれぞれ配置された2本の吊り下げポスト38とを有する。サスペンションメンバ28は、板金製の複数の部材から形成されており、基部29の後方部は、上下に金属板を配置して閉空間とした構造を有している。吊り下げポスト38は、サスペンションメンバ28の基部29から上方かつ車幅方向外側に向けて延び、上端がサイドメンバ22に締結される前部締結点46となっている。
基部29の後方部には、左右1対のフロア締結点40(車体取付部40とも言う)と、フロア締結点40よりも前方かつ車幅方向外側に位置する左右1対のブレース締結点42(第1連結部42とも言う)とが形成されている。フロア締結点40は、上下の金属板を貫通するボルト挿入孔40aを有し、ブレース締結点42は、下側の金属板のみを貫通するボルト挿入孔42aを有している。
図3は、前部車体構造12を下方から見た状態を模式的に示す図であり、図4は、図3のA-A断面図である。サスペンションメンバ28は、サイドメンバ22及びフロアパネル48よりも下側に配置されている。前部車体構造12は、サスペンションメンバ28のブレース締結点42(第1連結部42)と、サイドメンバ22のブレース締結点43(第2連結部43とも言う)により車体に装着された左右1対のブレース26を備える。
サイドメンバ22は、上側が開口したU字状の断面を有して前後方向に延びており、図4に示すように、フロアパネル48が上側から被さることにより閉断面を形成している。サイドメンバ22は、高い剛性を有しており、車体の骨格を成している。フロアパネル48(ボデーフロア48とも言う)は、乗員室の下側に広がって設けられており、サイドメンバ22に比べて低い剛性を有している。フロアパネル48は、サスペンションメンバ28のフロア締結点40(図3参照)では下側に凹んでおり、フロア締結点40と、サイドメンバ22のブレース締結点43とは、上下方向の位置がほぼ同じとなっている。
2つのフロア締結点40のそれぞれには、下側からボルトが挿入され、ボルトは、サスペンションメンバ28のボルト挿入孔40a(図2参照)と、フロアパネル48に形成されたボルト挿入孔(不図示)を通って、フロアパネル48上のナット(不図示)に螺合している。これにより、サスペンションメンバ28の後方部とフロアパネル48とが結合している。
1対のブレース26は、左右対称となるように車体に締結されている。図5は、ブレース26を示す斜視図である。ブレース26は、長方形の金属板をプレス加工して形成されており、長手方向の中央部分にブレース26の他の部分に比べて脆弱な脆弱部50を有している。脆弱部50は、ブレース26の上面を凹み形状とした部分である。脆弱部50は、車両の前面衝突により、ブレース26の長手方向に一定以上の荷重が印加された際に、折れ起点として機能する(図8参照)。ブレース26の長手方向の両端部には、ボルト挿入孔42b、43bが形成されている。
図4に示すように、サスペンションメンバ28のブレース締結点42には、下側からボルトが挿入され、ボルトは、ブレース26のボルト挿入孔42bと、サスペンションメンバ28のボルト挿入孔42aを通って、サスペンションメンバ28内の下側金属板上のナットに螺合している。また、サイドメンバ22のブレース締結点43にも、下側からボルトが挿入され、ボルトは、ブレース26のボルト挿入孔43bと、サイドメンバ22に形成されたボルト挿入孔43aを通って、サイドメンバ22上のナットに螺合している。これにより、ブレース26は、サスペンションメンバ28の後方部と、それよりも車両後方にあるサイドメンバ22の部分との間に延びてそれらを連結している。
図3に示すように、サスペンションメンバ28の基部29の左右端側には、1対のサスペンションアーム36が揺動可能に保持されている。
図6は、前部車体構造12を側方から見た状態を模式的に示す図である。サスペンションメンバ28の吊り下げポスト38の上端は、サイドメンバ22の前方部の下面に締結されて、前部締結点46となっている。サスペンションメンバ28の前方延伸部30は、前方に延びた後、斜め上方に延び、その後再び前方に延びている。サスペンションメンバ28の基部29の上面には、ステアリングギアボックス21が強固に固定されている。ステアリングギアボックス21は、操舵輪の回転運動を左右方向の直線運動に変換する機構であり、これにより前輪が操舵される。ステアリングギアボックス21の前方には、動力装置20が配置されている。
次に、以上説明した前部車体構造12の作用効果について説明する。
図7は、前面衝突時の前部車体構造12を示す模式図である。前面衝突時、クラッシュボックス24およびロワクラッシュボックス34はつぶれ、さらにサイドメンバ22も変形する。サスペンションメンバ28の前方延伸部30は、その前端部がその後端部に比べて高い位置にあるため、前方からの衝突荷重Fにより曲げモーメントが作用して、下方へ折れ曲がる。前方延伸部30が下方へ折れ曲がることで、サスペンションメンバ28の基部29の前縁に下向きの力が作用し、この下向きの力により、前部締結点46において吊り下げポスト38がサイドメンバ22から外れ、基部29の前縁が下方に向かう。
さらに、衝突荷重Fが、サスペンションメンバ28に締結されたブレース26に印加されることで、ブレース26が、その脆弱部50で中折れする(図8参照)ため、サスペンションメンバ28を後方へ移動させることができる。なお、サスペンションメンバ28は、2つのフロア締結点40でフロアパネル48とも締結されているが、フロアパネル48は低剛性であるため衝突荷重Fで比較的容易に変形し、サスペンションメンバ28の後方移動を大きく阻害することはない。このように、サスペンションメンバ28を下方に向かって折れ変形させると共に後退させることで、ステアリングギアボックス21を下方及び後方に退避させることができる。これにより、衝突荷重Fにより後方へ移動してくる動力装置20が、ステアリングギアボックス21と干渉することを抑制することができる。動力装置20の後方移動が確保されるため、衝突エネルギを吸収することができる。
また、前部車体構造12によれば、サスペンションメンバ28の後方部が、フロア締結点40でフロアパネル48に締結されると共に、ブレース26を介して車体骨格であるサイドメンバ22に連結されている。これにより、車両の静粛性と走行安定性を両立することができる。図9に示すように、路面からの振動(太線黒矢印)は、サスペンションアーム36を介して、サスペンションメンバ28に伝達される。例えば、サスペンションメンバ28の後方部を、フロアパネル48のみに締結する構造とすれば、サスペンションメンバ28に伝達された振動を、剛性が比較的低いフロアパネル48のみに伝達させ、車体骨格には伝達させないため、車両の静粛性を向上させることができる。しかし、この構造の場合、フロアパネル48の剛性が低いことにより、サスペンションメンバ28とフロアパネル48の締結点の耐久強度が低いため、サスペンションアーム36からの振動入力により、その締結点が大きく変形して走行安定性が低下する問題がある。一方、サスペンションメンバ28の後方部を、車体骨格であるサイドメンバ22のみに締結する構造とすれば、走行安定性を向上することはできるが、サスペンションアーム36からの振動入力が車体骨格に伝わるため、車両の静粛性が悪化してしまう。このように、車両の静粛性と走行安定性とは相反する関係にある。以上説明した前部車体構造12によれば、サスペンションメンバ28の後方部が、フロアパネル48とサイドメンバ22の両方に締結されているため、これらが相補的に機能して、車両の静粛性と走行安定性をバランス良く両立させることできる。
さらに、以上説明した前部車体構造12では、サスペンションメンバ28が、ブレース26を介してサイドメンバ22に連結されている。サスペンションメンバ28には、サスペンションアーム36から上下方向の振動が伝わってくるが、上下方向の変形に対する剛性を低くしたブレース26を用いることで、サスペンションメンバ28からサイドメンバ22への振動の伝達率を抑制することができる。
図10は、ブレース26の剛性に応じた車両の静粛性と走行安定性の特性を模式的に示す図である。以上説明した前部車体構造12によれば、図10に示すように、ブレース26の剛性を変更することで、車両の静粛性と走行安定性のバランスを変更することができる。ブレース26の剛性の変更は、例えば、ブレース26の板厚を増減させたり、ブレース26の短手方向の両端部に長手方向に延びて形成したフランジ52(図11参照)の高さを変更することで実現することができる。例えば、高い剛性のブレース26(例えば図10の星印の位置の剛性を有するブレース)を用いることで、走行安定性が比較的高いスポーティな性格の車両を、車両構造を大きく変更せずに実現することができる。
なお、以上説明したブレース26の脆弱部50は、ブレース26の上面を凹み形状としたものであったが、脆弱部50は、様々な形態のものを採用することができる。例えば、図11に示すように、ブレース26Aの脆弱部50Aとして、孔を設けてもよい。また、図12に示すように、ブレース26Bの脆弱部50Bとして、フランジ52を切り欠いた部分を設けてもよい。
次に、サスペンションアーム36とサスペンションメンバ28の取付構造について補足する。図13に示すように、サスペンションメンバ28は、サスペンションアーム36を揺動可能に保持する、車両後方側のサス保持部60と車両前方側のサス保持部61を有する。サスペンションアーム36は、車幅方向外側でボールジョイントを支持するボールジョイント支持部64と、車幅方向内側でサスペンションメンバ28のサス保持部60、61のそれぞれに保持される保持部66、67を有する。車両の平面視において、車両後方側のサス保持部60は、ボールジョイント支持部64と車体取付部40を結んだ線70の近傍に配置されている。なお、サス保持部60は、ボールジョイント支持部64と車体取付部40を結んだ線70上に配置されていてもよい。この構造により、サスペンションアーム36を介してサスペンションメンバ28に入力される、路面からの振動を効率的に低剛性部位であるボデーフロア48に伝達させて、その振動を減衰させることができる。
また、ブレース26は、第1連結部42と第2連結部43を結んだ線72が車両後方に向かうにつれて車幅方向外側に斜行するように配設されている。なお、本実施形態においては、第1連結部42が線70上に配設されているが、第1連結部42は線70の近傍に配設されていてもよい。この構造により、サスペンションメンバ28は、ブレース26を介して高剛性部位であるボデーフロントサイドメンバ22に連結しているため、走行安定性を確保することができる。また、サスペンションメンバ28に入力される荷重に対して、ブレース26がサスペンションメンバ28の変形を抑制する補強部材として機能する。
10 車両、12 前部車体構造、14 ダッシュボード、16 乗員室、18 エンジン室、20 動力装置、21 ステアリングギアボックス、22 ボデーフロントサイドメンバ(サイドメンバ)、24 クラッシュボックス、26,26A,26B ブレース、28 サスペンションメンバ、29 基部、30 前方延伸部、32 連結材、34 ロワクラッシュボックス、36 サスペンションアーム、38 吊り下げポスト、40 フロア締結点(車体取付部)、40a ボルト挿入孔、42 ブレース締結点(第1連結部)、42a,42b ボルト挿入孔、43 ブレース締結点(第2連結部)、43a,43b ボルト挿入孔、46 前部締結点、48 フロアパネル(ボデーフロア)、50,50A,50B 脆弱部、52 フランジ、60,61 サス保持部、64 ボールジョイント支持部、66,67 保持部、70,72 線。
Claims (2)
- サスペンションアームを揺動可能に保持するサス保持部を有すると共に、車両後方側で車体のボデーフロアに締結される車体取付部を有するサスペンションメンバと、
車幅方向外側でボールジョイントを支持するボールジョイント支持部、および、車幅方向内側で前記サスペンションメンバの前記サス保持部に保持される保持部を有するサスペンションアームと、
前記サスペンションメンバに連結される第1連結部、および、前記ボデーフロアよりも高い剛性の部位であるボデーフロントサイドメンバに連結される第2連結部を有するブレースと、を備え、
車両の平面視において、前記ボールジョイント支持部と前記車体取付部を結んだ線上またはその近傍に前記サス保持部が配設され、
前記ブレースは、前記第1連結部と前記第2連結部を結んだ線が車両後方に向かうにつれて車幅方向外側に斜行するように配設される、
車両の前部車体構造。 - 請求項1に記載の車両の前部車体構造において、
前記ブレースには、前記第1連結部と前記第2連結部の間に脆弱部が形成される、
車両の前部車体構造。
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