JP2022118913A - 浸出水集水ピット、廃棄物処分施設、及び浸出水集水ピットの構築方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】品質を高め工期短縮が図られる浸出水集水ピット、廃棄物処分施設、及び浸出水集水ピットの構築方法を提供する。【解決手段】浸出水集水ピット10は、貯留槽3内で発生する浸出水を集めるものであり、貯留槽3の底面3cと法面3bとの交差部において貯留槽3に隣接して設けられ貯留槽からの浸出水が流入し一時的に貯留される水溜部21を有する貯水構造部11と、貯水構造部11から貯留槽3の外方に向け、斜め上方に向けて延在する通路部13と、通路部13に対して連結構造部15を介して接続され連結構造部15から地表まで上方に向けて延在する立坑部17と、を備え、通路部13及び立坑部17は、コンクリート二次製品を用いて構築されている。【選択図】図2
Description
本発明は、浸出水集水ピット、廃棄物処分施設、及び浸出水集水ピットの構築方法に関するものである。
従来、この分野の技術として、下記特許文献1に記載の廃棄物処分施設の浸出水集水ピットが知られている。この廃棄物処分施設では、遮水工が設けられた埋立領域に廃棄物が貯留され、この埋立領域に隣接する浸出水集水ピットが設けられている。この浸出水集水ピットの底部には、埋立領域で発生した浸出水が集水管を通じて集められる。
この種の集水ピットの施工時には、地盤が掘削され、足場が比較的不安定な場所で鉄筋・型枠・コンクリート打設を繰り返すのに多大な労力を要する場合が多く、工期が長くなる傾向にある。また、地下に構築されるこの種の浸出水集水ピットでは、止水性を含めて品質をさらに向上させることが望まれる。このような問題に鑑み、本発明は、品質を高め工期短縮が図られる浸出水集水ピット、廃棄物処分施設、及び浸出水集水ピットの構築方法を提供することを目的とする。
本発明の浸出水集水ピットは、地表から掘り下げられて構築され埋立て処分される廃棄物を貯留するすり鉢状の貯留槽を有する廃棄物処分施設において貯留槽内で発生する浸出水を集める浸出水集水ピットであって、貯留槽の底面と法面との交差部において貯留槽に隣接して設けられ貯留槽からの浸出水が流入し一時的に貯留される水溜部を有する貯水構造部と、貯水構造部から貯留槽の外方に向けて、斜め上方に向けて又は水平方向に向けて延在する通路部と、通路部に対して連結構造部を介して接続され連結構造部から地表まで上方に向けて延在する立坑部と、を備え、貯水構造部、通路部、連結構造部、及び立坑部のうちの少なくとも一部は、コンクリート二次製品を用いて構築されている。
通路部と立坑部とがコンクリート二次製品を用いて構築され、貯水構造部と連結構造部とが現場打ちコンクリートで構築されている、こととしてもよい。また、通路部は連続的に接続された複数のアーチカルバートを有し、立坑部は連続的に接続された複数のボックスカルバートを有する、こととしてもよい。
また、通路部は、貯水構造部から連結構造部まで複数のプレキャストカルバート部材が斜め上方に向けて連続的に接続されて構築され、プレキャストカルバート部材の少なくとも一部には、通路部の長手方向に交差する方向に延び出したアンカー部が形成されている、こととしてもよい。
本発明の廃棄物処分施設は、地表から掘り下げられて構築され埋立て処分される廃棄物を貯留するすり鉢状の貯留槽と、上記の何れかの浸出水集水ピットと、を備える。
本発明の浸出水集水ピットの構築方法は、地表から掘り下げられて構築され埋立て処分される廃棄物を貯留するすり鉢状の貯留槽を有する廃棄物処分施設において貯留槽内で発生する浸出水を集める浸出水集水ピットの構築方法であって、浸出水集水ピットは、貯留槽の底面と法面との交差部において貯留槽に隣接して設けられ貯留槽からの浸出水が流入し一時的に貯留される水溜部を有する貯水構造部と、貯水構造部から貯留槽の外方に向けて、斜め上方に向けて又は水平方向に向けて延在する通路部と、通路部に対して連結構造部を介して接続され連結構造部から地表まで上方に向けて延在する立坑部と、を備えており、貯水構造部、通路部、連結構造部、及び立坑部のうちの少なくとも一部を、コンクリート二次製品を用いて構築する。また、通路部と立坑部とがコンクリート二次製品を用いて構築され、貯水構造部と連結構造部とが現場打ちコンクリートで構築される、こととしてもよい。
本発明によれば、品質を高め工期短縮が図られる浸出水集水ピット、廃棄物処分施設、及び浸出水集水ピットの構築方法を提供することができる。
以下、図面を参照しつつ本実施形態の浸出水集水ピット及び廃棄物処分施設の一例について詳細に説明する。図1に示す廃棄物処分施設1は、廃棄物を埋立て処分する管理型の最終処分施設である。廃棄物処分施設1は、貯留槽3の上方に屋根4を備えた「閉鎖型の廃棄物処分施設」と呼ばれるタイプの廃棄物処分施設である。
廃棄物処分施設1による処分対象には業務用の廃棄物も含まれ、廃棄物処分施設1では、有機物、無機物(塩類、重金属)を含む種々の廃棄物が投棄され埋立て処分される。廃棄物としては、例えば、ごみ焼却施設で発生する焼却灰や飛灰固化物、有機汚泥、無機汚泥、木くず、鉱さい等がある。なお、埋め立てられる廃棄物に対しては、事前に廃棄物から有価物を取り出したり、廃棄物を混合したりといった操作が行われる。
閉鎖型の管理型処分施設である廃棄物処分施設1では、廃棄物を安定化させるために、散水が行われ廃棄物層Sに水が供給されるため、貯留槽3内では浸出水が比較的多く発生する。この浸出水は後述する浸出水集水ピット10で回収され最終的には別の浸出水処理施設(図示せず)に送られて浄化処理される。廃棄物処分施設1は、埋立ての終了後、廃棄物が安定化した後廃止される。
廃棄物処分施設1は、廃棄物を貯留するための貯留槽3を有している。貯留槽3は、すり鉢状をなし、地表から貯留槽3の底面3cに向けて傾斜して延びる法面3bを有する。貯留槽3は、例えば、地盤100が地表101から下方に掘削されて形成されたすり鉢状の凹部と、当該凹部の内側の面全体に施工された遮水層2とで形成されている。そして、遮水層2の内側の凹状の空間が、廃棄物が貯留される貯留空間3aとなる。
遮水層2は水を遮断する層であり、遮水層2は、例えば、遮水シートを敷設して形成されてもよく、ベントナイト層であってもよく、ベントナイト層の上に遮水シートが積層された層であってもよく、或いは水を遮断する層であれば他の構造であってもよい。貯留空間3aには、廃棄物からなる廃棄物層Sが形成されている。なお、貯留空間3a内には、廃棄物が層状に積み重ねられて埋立て処分されるので、廃棄物層Sは複数層で構成されている。遮水層2によって貯留空間3aが地盤100から仕切られているので、浸出水は遮水層2の遮水性によって貯留空間3a内に閉じ込められ、地盤100には漏出しないようになっている。
貯留槽3内には、所定の間隔をおいて竪管Tが複数設けられている。竪管Tは、廃棄物層Sに埋め込まれ鉛直方向に延びている。各竪管Tの上端は廃棄物層Sから上方に露出しており、各竪管Tの下流端は集水管6に接続されている。集水管6は、貯留空間3a内に設けられており、貯留空間3aの底面に沿って遮水層2よりも上方に設置されている。集水管6は、後述する浸出水集水ピット10の下端部に向かって下るように僅かに傾斜しており、集水管6の下流端は浸出水集水ピット10の下端部に接続されている。
廃棄物層S内の浸出水は、竪管Tに流入し竪管Tを通じて集水管6に流れ、集水管6に導かれて浸出水集水ピット10に集められる。また、廃棄物層S内の一部の浸出水は、直接集水管6に直接流入して浸出水集水ピット10に流入する。なお、竪管Tは、鉛直方向に延びる構造に限られず、廃棄物層S内で枝分かれして縦横に延びる構造であってもよい。
例えば、竪管Tは、多数の孔を有する高密度ポリエチレン管と、高密度ポリエチレン管の周りに砂利(例えば割栗石)が充填されてなる砂利層と、砂利層と廃棄物層Sとを仕切るコルゲート管と、で構成されている。例えば、集水管6は、多数の孔を有する高密度ポリエチレン管と、高密度ポリエチレン管の周りに形成された単粒度砕石層と、単粒度砕石層の周りに砂利(例えば割栗石)が充填されてなる砂利層と、砂利層を囲むポリエチレン製ネットと、で構成されている。
続いて、浸出水集水ピット10について、図2~図5を参照しながら更に詳細に説明する。浸出水集水ピット10は、貯留槽3の側方における地盤100中に構築され、貯留槽3の底部近傍から地表101まで延びている。浸出水集水ピット10は、法面3bよりも貯留槽3の外方の位置で地中に構築されている。浸出水集水ピット10の躯体は、貯水構造部11と、通路部13と、連結構造部15と、立坑部17と、を備えている。貯水構造部11は、貯留槽3の底面3cと法面3bとの交差部に位置し、貯留槽3に隣接して空洞状に設けられている。貯水構造部11の一部の外壁11aは法面3bの一部を構成するように傾斜して延びており、この外壁11aと貯留空間3aとの間に遮水層2が存在している。
貯水構造部11は、貯留槽3の底面3cよりも低い位置に窪むように設けられた水溜部21を有している。一方、集水管6の下流端部が、遮水層2と外壁11aとを貫通して貯水構造部11の内部に挿入されており、集水管6の下流端の浸出水排出口6aが水溜部21の上方に位置している。貯留槽3内の浸出水は集水管6を通じて浸出水排出口6aから排出され、水溜部21に流入して一時的に貯留される。水溜部21の浸出水の液面下にはこの浸出水を汲み上げるためのポンプ23が沈設される。
なお、例えば浸出水集水ピット10内に設置された所定の装置によって当該浸出水集水ピット10内の圧力を高めれば、浸出水排出口6aを通じて集水管6に空気を逆流させることができる。そして、集水管6に空気を送り込むことにより、竪管T等を経由して、貯留空間3a内の廃棄物層Sに空気を供給することができる。そして、廃棄物に供給された空気によって、廃棄物中の好気性菌による好気性反応が促進され、廃棄物の安定化が促進される。
通路部13は、筒状をなし貯水構造部11から貯留槽3の外方の斜め上方に向けて直線状に延びている。すなわち、通路部13は水平面に対して傾斜するように設けられている。通路部13は、法面3bと同様に貯留槽3の外方に向かうほど高くなる方向に傾斜しているが、法面3bに比較して通路部13の傾斜は小さい。連結構造部15は、通路部13と立坑部17との接続に介在する。連結構造部15は例えば水平な底面を有する直方体形状に形成されており、直方体の一側面部に通路部13の一端が接続され、直方体の上面部に立坑部17の下端部が接続されている。立坑部17は、角筒状をなし連結構造部15の上面から地表101まで鉛直に延在している。また、立坑部17の地上開口を覆うように、建屋19が設けられている。
この浸出水集水ピット10には、水溜部21の浸出水を外部に移送するための移送配管29が設けられている。移送配管29は、ポンプ23を始点として、貯水構造部11、通路部13、連結構造部15及び立坑部17の内壁面上に延在している。水溜部21に一時的に貯留された浸出水は、ポンプ23で汲み上げられ、移送配管29を通じて建屋19の外まで移送され、その後、建屋19近傍から浸出水処理施設(図示せず)に搬送される。
また、浸出水集水ピット10には、外部から建屋19を通じて作業者が出入り可能であり、作業者は、立坑部17、連結構造部15、通路部13及び貯水構造部11の中を移動して水溜部21までアクセス可能である。そして、作業者は、水溜部21、ポンプ23、移送配管29等の点検を行うことができる。また、この作業者の移動のために、建屋19から連結構造部15までを繋ぐ階段27が設けられている。また、連結構造部15には、階段27の横に並行して、機器等を昇降させるための昇降用のスペースが鉛直に延びるように確保されている。また、通路部13内に形成される通路は階段ではなく単なるスロープであるので、通路部13を通じた機器の運搬も容易である。なお、通路部13内に形成される通路においては、階段と上記のようなスロープとが並行して設けられてもよい。
上述のような浸出水集水ピット10のうち、通路部13と立坑部17とは、直線的に延在する筒状をなす、といったように比較的単純な構造をなしている。従って、浸出水集水ピット10のうち通路部13と立坑部17とがコンクリート二次製品(例えばここではプレキャストカルバート部材)を用いて構築されている。詳細は後述するが、通路部13にはアーチカルバート31(図4参照)が用いられており、立坑部17にはボックスカルバート41(図5参照)が用いられている。
アーチカルバート31及びボックスカルバート41は、鉄筋コンクリート製のプレキャストコンクリート製品であり、工場で製作された後、浸出水集水ピット10の施工現場に搬入される。ここでは、工費低減を図るべく、アーチカルバート31として汎用のアーチカルバートが採用され、ボックスカルバート41として汎用のボックスカルバートが採用される。これに対して、通路部13や立坑部17よりも複雑な形状をなす貯水構造部11と連結構造部15とが場所打ちコンクリートで構築されている。
〔通路部〕
図3及び図4に示されるように、通路部13は、当該通路部13の長手方向に連続的に接続された複数のアーチカルバート31を有している。すなわち、通路部13は、貯水構造部11から連結構造部15まで、複数のアーチカルバート31が斜め上方に向けて連続的に接続されて構築されている。
図3及び図4に示されるように、通路部13は、当該通路部13の長手方向に連続的に接続された複数のアーチカルバート31を有している。すなわち、通路部13は、貯水構造部11から連結構造部15まで、複数のアーチカルバート31が斜め上方に向けて連続的に接続されて構築されている。
浸出水集水ピット10の施工時には、地盤100のうち浸出水集水ピット10よりも上方の地盤100A(図2参照)が少なくとも掘削されており、通路部13を支持するための支持面35が露出している。通路部13の施工時には、図4に示されるように、クレーンでアーチカルバート31を1つずつ上方から吊り降ろして支持面35上に設置して、隣接するアーチカルバート31に接続すればよい。また、アーチカルバート31同士の接続は、互いの間に例えば止水ゴム等の止水材33を挟み当該アーチカルバート31同士に挿通させたPC鋼棒で緊結するといった公知の汎用的な手法により実行される。アーチカルバート31の1個あたりの長さは、例えば、施工現場に設置可能なクレーンの設置位置や揚重能力等に基づいて適宜設定されればよい。
また、通路部13を構成する複数のアーチカルバート31の中には、他とは構成が異なるアーチカルバート31(以下、「アーチカルバート31A」と呼ぶ)が所定の間隔をあけて一部混在している。このアーチカルバート31Aは、通路部13の長手方向に直交する方向に張出したアンカー筋39(アンカー部)を有している。具体的には、アーチカルバート31Aは、当該アーチカルバート31Aの本体の下端部から両側方にそれぞれ略水平に張りだした2つの角柱部位37を有しており、アンカー筋39は、各々の角柱部位37の下面から下方に2本ずつ延出するように設けられている。
アーチカルバート31Aは、汎用のアーチカルバート31に角柱部位37及びアンカー筋39を例えば樹脂アンカーを用いて取付けることで製作されてもよい。アーチカルバート31Aは図4に例示されるように予め製作された状態で支持面35上に吊り降ろされてもよいし、或いは、支持面35上に設置された後のアーチカルバート31に角柱部位37及びアンカー筋39が取付けられてもよい。アーチカルバート31Aのアンカー筋39が支持面35の下の地盤100に挿入されてせん断力を生じさせるので、このようなアーチカルバート31Aが少なくとも一部混在することにより、施工中の通路部13が支持面35上で滑動することを抑制することができる。なお、通路部13を構成するアーチカルバート31のすべてがアンカー筋39を有するアーチカルバート31Aであってもよい。
図3に示されるように、アーチカルバート31のなかで通路部13の両端に配置されるアーチカルバート31Bは、それぞれ貯水構造部11及び連結構造部15の鉛直な接続口に接続するために、通路部13の延在方向に対して傾斜した一端面31tを有している。また、最終的に完成する通路部13の長さを微調整するために、アーチカルバート31の中には、通路部13の長手方向の長さが他とは異なるものが含まれてもよい。また、アーチカルバート31には、それぞれ必要に応じて、アーチカルバート31同士の継手のための段差、PC鋼棒用の穴や定着箱、止水材33を設置する溝、吊りボルト用のアンカーなどの細かい部位が存在するが、これらの図示及び詳細な説明は省略する。
〔立坑部〕
図5に示されるように、立坑部17は、当該立坑部17の長手方向(鉛直方向)に連続的に接続された複数の正方形をなすボックスカルバート41を有している。すなわち、立坑部17は、連結構造部15から地表101まで、複数のボックスカルバート41が鉛直上方に向けて連続的に接続されて構築されている。なお、汎用品であるボックスカルバート41は、本来の使用方法では主に水平方向に接続されるものであるが、本実施形態では、鉛直方向に接続される。
図5に示されるように、立坑部17は、当該立坑部17の長手方向(鉛直方向)に連続的に接続された複数の正方形をなすボックスカルバート41を有している。すなわち、立坑部17は、連結構造部15から地表101まで、複数のボックスカルバート41が鉛直上方に向けて連続的に接続されて構築されている。なお、汎用品であるボックスカルバート41は、本来の使用方法では主に水平方向に接続されるものであるが、本実施形態では、鉛直方向に接続される。
立坑部17の施工は、連結構造部15の完成後に行われる。具体的には、図4に示されるように、クレーンでボックスカルバート41を1つずつ上方から吊り降ろして順次接続し連結構造部15の上面上に積層していけばよい。また、ボックスカルバート41同士の接続は、互いの間に止水材43を挟み込みながら当該ボックスカルバート41同士に挿通させたPC鋼棒で緊結するといった公知の汎用的な手法により実行される。
〔貯水構造部及び連結構造部〕
図2に示される貯水構造部11及び連結構造部15の施工は、浸出水集水ピット10よりも上方の地盤100A(図2参照)が掘削されている状態で実行される。前述のとおり、貯水構造部11は場所打ちコンクリートによって構築される。具体的には、貯水構造部11の施工位置に鉄筋を設置するとともにコンクリート型枠を組立て、型枠内にコンクリートを打設する、といった公知の場所打ちコンクリート打設の手法により、貯水構造部11が施工される。連結構造部15についても同様に施工される。また、貯水構造部11と通路部13との継ぎ目12j、通路部13と連結構造部15との継ぎ目14j、及び連結構造部15と立坑部17との継ぎ目16jには、それぞれ止水材と巻立てコンクリートとが施工され、各継ぎ目12j,14j,16jにおける止水性が確保される。また、上記各継ぎ目12j,14j,16jの止水構造には、ベントナイト系止水材や防水シールが使用されてもよい。
図2に示される貯水構造部11及び連結構造部15の施工は、浸出水集水ピット10よりも上方の地盤100A(図2参照)が掘削されている状態で実行される。前述のとおり、貯水構造部11は場所打ちコンクリートによって構築される。具体的には、貯水構造部11の施工位置に鉄筋を設置するとともにコンクリート型枠を組立て、型枠内にコンクリートを打設する、といった公知の場所打ちコンクリート打設の手法により、貯水構造部11が施工される。連結構造部15についても同様に施工される。また、貯水構造部11と通路部13との継ぎ目12j、通路部13と連結構造部15との継ぎ目14j、及び連結構造部15と立坑部17との継ぎ目16jには、それぞれ止水材と巻立てコンクリートとが施工され、各継ぎ目12j,14j,16jにおける止水性が確保される。また、上記各継ぎ目12j,14j,16jの止水構造には、ベントナイト系止水材や防水シールが使用されてもよい。
継ぎ目12j,14j,16jの止水構造の一例について説明する。図6は、連結構造部15と立坑部17との継ぎ目16jの止水構造を一部破断し拡大して示す斜視断面図である。図に示されるように、継ぎ目16jの巻立てコンクリート45の内側では、立坑部17を構成する最下段のボックスカルバート41の下端面が連結構造部15の上端面に突当てられている。ボックスカルバート41の外壁面と連結構造部15の上端面とが交差した角部47の周囲には、図中に破線で示されるような所定幅のプライマー塗布領域49が設定されている。そして、当該プライマー塗布領域49には、表面清掃が施された上で、プライマーが塗布されている。
更に、塗布された上記プライマーの上に、ブチル系の防水シール51,52,53が3層に重ねられ角部47に沿って設置されている。防水シール51~53は、互いに同じ幅の帯状をなすシール材であり、互いに幅方向に位置をずらした配置で重ねられ設置されている。防水シール51は、角部47におけるボックスカルバート41と連結構造部15との隙間を跨いで当該隙間を塞ぐようにプライマー上に貼着されている。防水シール52は、防水シール51から連結構造部15側にずれた配置で当該防水シール51上に一部重なるように貼着され、防水シール53は、防水シール51からボックスカルバート41側にずれた配置で防水シール51,52上に一部重なるように貼着されている。なお、図6では防水シール51~53がそれぞれ長手方向で一部破断して図示されているが、防水シール51~53は角部47におけるボックスカルバート41と連結構造部15との隙間の全長に亘って延在している。
このような3層の防水シール51~53によって角部47におけるボックスカルバート41と連結構造部15との隙間が止水されている。更に、プライマー塗布領域49及び防水シール51~53を覆うように角部47の周囲に巻立てコンクリート45が施されることで、継ぎ目16jの止水構造が構築されている。なお、ここでは継ぎ目16jの止水構造の一例について説明したが、継ぎ目12j,14jにも同様の止水構造が構築されている。
以上のようにして貯水構造部11、通路部13、連結構造部15、及び立坑部17が完成した後、埋戻し及び盛土によって地盤100Aが形成されることで、地盤100中に浸出水集水ピット10の躯体が完成する。
続いて、上述した浸出水集水ピット10、その構築方法、及び廃棄物処分施設1による作用効果について説明する。一般的に、コンクリート二次製品を用いて構築された構造物は、現場打ちコンクリートで構築された構造物よりも止水性の信頼性が高い。すなわち、現場打ちコンクリートの内部にはセパレータが残留されるので、このセパレータが水の通り路になり得る。また、現場打ちコンクリートにおいては、コンクリート打継ぎ目の止水性にコンクリートの充填や締固めの質が影響する場合がある。
これに対して、コンクリート二次製品では、上記のようなセパレータや打継ぎ目に起因する止水性低下の可能性が回避されるので、コンクリート二次製品を用いて構築された構造物では比較的信頼性が高い止水性が得られる。廃棄物処分施設1の浸出水集水ピット10では、少なくとも一部(ここでは、通路部13及び立坑部17)がコンクリート二次製品で構築されている。従って、通路部13及び立坑部17においては現場打ちコンクリートよりも止水性が高く、その結果、浸出水集水ピット10の全部が現場打ちコンクリートで構築される場合に比較して、浸出水集水ピット10の全体としての止水性が向上する。
また、仮に、通路部13や立坑部17を現場打ちコンクリートで施工するとすれば、足場が不安定な傾斜地で鉄筋・型枠・コンクリート打設を繰り返すことがあり得るので、労働負荷が高くなる可能性がある。更に、コンクリート打設のロット割りに応じて止水板の構造や施工順序が複雑となり、またコンクリート打設後の養生も必要であるので、その結果、工期が長くなる可能性がある。また、狭隘な傾斜地での揚重作業や高所作業が発生すれば、作業の安全性を確保する措置にも負荷がかかる。
これに対して、浸出水集水ピット10では、コンクリート二次製品を用いることにより、浸出水集水ピット10の全部を現場打ちコンクリートで施工する場合に比較して、工期が短縮され、品質(均質性、強度、外観の美しさ)も向上する。また、コンクリート二次製品を用いた施工によれば、コンクリートの現場打ち作業に比較して、労働負荷を低減することができ、また少人数での作業が可能であり、作業時間も短縮され、その結果安全性も向上する。
また、一般的に、コンクリート二次製品は、例えば蒸気養生など現場打ちコンクリートにはない製造プロセスを経ることによって比較的大きい強度を有している。従って、コンクリート二次製品で構築された通路部13及び立坑部17では、現場打ちコンクリートで構築される場合に比較して、高い強度が得られる。
その一方で、貯水構造部11及び連結構造部15は、筒状の通路部13や立坑部17に比較して複雑な形状をなす。従って、貯水構造部11及び連結構造部15は、コンクリート二次製品で構築することは却って困難であるとともに、却ってコスト高になる可能性が大きく、従って、現場打ちコンクリートを用いて構築されている。貯水構造部11及び連結構造部15は平坦な支持面上に施工されるので、場所打ちコンクリートで施工したとしても労働負荷は比較的小さい。
また、図4に示されるように、通路部13のコンクリート二次製品としては、アーチカルバート31が採用されることにより、ボックスカルバートが採用された場合に比較して、地盤100A及び廃棄物層S等による土圧に強い通路部13が得られる。ここで比較のために、例えばプレキャストカルバートでコンクリート製の堤体内に構築されるダムの監査廊を考える。この場合、ダムの堤体の重量は堤体自体の強度によって負担されるので、プレキャストカルバートが堤体から受ける圧力は比較的小さい。
これに対し、浸出水集水ピット10においては、地盤100A等による比較的大きい土圧が通路部13に作用するので、上記のダムの監査廊等に比較して、通路部13を強化する必要性が高い。従って、例えば、アーチカルバートの汎用品の中でも壁が厚いものがアーチカルバート31として採用されることが好ましい。なお、アーチカルバート31の壁厚等は、地盤100A及び廃棄物層S等による土圧に応じて適宜選択されればよい。
また、通路部13を構成するアーチカルバート31には、アンカー筋39を有するアーチカルバート31Aが一部混在している。前述のように、通路部13は傾斜して設けられるので、支持面35上の施工中の通路部13には自重によって支持面35上を長手方向に斜め下方に滑動しようとする力が発生する。これに対して、アーチカルバート31Aのアンカー筋39は、支持面35の下の地盤100に埋込まれることにより、当該地盤100に対するせん断力を発生させる。従って、上記のように施工中の通路部13における支持面35上での滑動を抑制することができる。
また、通路部13が傾斜していることにより、自重に起因する軸方向の力が施工中の通路部13自体に作用する。このような軸方向の力は汎用品のアーチカルバート31ではもともと想定されていないので、品質低下の原因になる虞があるところ、アンカー筋39の存在により、上記のような軸方向の力も低減される。また、浸出水集水ピット10の完成後においても、アンカー筋39の存在により、地盤100中における通路部13の軸方向の変位が抑制される。
浸出水集水ピット10では、連結構造部15側が貯水構造部11側よりも高くなるように通路部13が傾斜した構造が採用されている。この構造によれば、幾何学的に理解されるように、連結構造部15を浅い位置に配置するとともに立坑部17を短くすることが可能であり、地盤100Aの掘削土量も小さくなるので、工期及び工費を節減することができる。
その一方で、通路部13の勾配が大きくなるほど前述したような通路部13が滑動しようとする力が大きくなる。また、支持面35の傾斜が大きくなると、施工時に支持面35上に設置されたアーチカルバート31が安定し難く、施工性が悪くなる。また、通路部13の勾配が大きいと、前述のような、通路部13の自重に起因して通路部13自体に作用する軸方向の力も大きくなるので、好ましくない。このような観点から、通路部13の勾配を抑える必要があり、通路部13の勾配は20%以下にすることが好ましい。すなわち、結局のところ、通路部13の勾配は0~20%にすることが好ましい。
また、通路部13が直線状であることから、汎用のアーチカルバート31同士を汎用的な手法を用いて接続していけばよく、特殊な部材や手法を用いる必要がない。そして、アーチカルバート31を単純に直線的に連続させる構造はシンプルであるので、止水性低下等の可能性を低減することができる。
また、浸出水集水ピット10は、法面3bよりも貯留槽3の外方の位置で地中に構築されている。従って、貯留槽3の法面3bに沿って構築される浸出水集水ピットに比較すれば、浸出水集水ピット10の全体の構造を自由に設計することができる。その結果、浸出水集水ピット10の内部に設けられる設備(例えば、ポンプ、通路、配管)の設計の自由度も大きくなり、このような設備が使用し易くなる。なお、浸出水集水ピット10は、上記のように内部に設けられる設備として、水溜部21等の点検のための点検路、重量物(例えば水中ポンプ23等)を運搬するための運搬設備、浸出水を外に移送するための移送配管29、換気のため及び集水管6等を通じて貯留空間3a内の廃棄物層Sに大気中の空気を送るために使用されるダクト、等の設備を同時に備えている。
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
例えば、本発明の廃棄物処分施設は、屋根4を有する閉鎖型の廃棄物処分施設1には限られず、屋根4が省略された廃棄物処分施設であってもよい。また、通路部13が傾斜して設けられることは必須ではなく、通路部13は水平方向に延びるようにしてもよい。また、通路部13を構成するプレキャストカルバートは、アーチカルバート31に代えてボックスカルバートであってもよい。また、貯水構造部11、通路部13、連結構造部15、及び立坑部17のすべてがコンクリート二次製品を用いて構築されてもよい。
1…廃棄物処分施設、3…貯留槽、3c…底面、3b…法面、100…地盤、101…地表、11…貯水構造部、13…通路部、15…連結構造部、17…立坑部、21…水溜部、31…アーチカルバート(コンクリート二次製品)、41…ボックスカルバート(コンクリート二次製品)、39…アンカー筋(アンカー部)。
Claims (7)
- 地表から掘り下げられて構築され埋立て処分される廃棄物を貯留するすり鉢状の貯留槽を有する廃棄物処分施設において前記貯留槽内で発生する浸出水を集める浸出水集水ピットであって、
前記貯留槽の底面と法面との交差部において前記貯留槽に隣接して設けられ前記貯留槽からの前記浸出水が流入し一時的に貯留される水溜部を有する貯水構造部と、
前記貯水構造部から前記貯留槽の外方に向けて、斜め上方に向けて又は水平方向に向けて延在する通路部と、
前記通路部に対して連結構造部を介して接続され前記連結構造部から地表まで上方に向けて延在する立坑部と、を備え、
前記貯水構造部、前記通路部、前記連結構造部、及び前記立坑部のうちの少なくとも一部は、コンクリート二次製品を用いて構築されている、浸出水集水ピット。 - 前記通路部と前記立坑部とが前記コンクリート二次製品を用いて構築され、前記貯水構造部と前記連結構造部とが現場打ちコンクリートで構築されている、請求項1に記載の浸出水集水ピット。
- 前記通路部は連続的に接続された複数のアーチカルバートを有し、前記立坑部は連続的に接続された複数のボックスカルバートを有する、請求項1~2の何れか1項に記載の浸出水集水ピット。
- 前記通路部は、
前記貯水構造部から前記連結構造部まで複数のプレキャストカルバート部材が斜め上方に向けて連続的に接続されて構築され、
前記プレキャストカルバート部材の少なくとも一部には、前記通路部の長手方向に交差する方向に延び出したアンカー部が形成されている、請求項1~3の何れか1項に記載の浸出水集水ピット。 - 地表から掘り下げられて構築され埋立て処分される廃棄物を貯留するすり鉢状の貯留槽と、
請求項1~4の何れか1項に記載の浸出水集水ピットと、を備える廃棄物処分施設。 - 地表から掘り下げられて構築され埋立て処分される廃棄物を貯留するすり鉢状の貯留槽を有する廃棄物処分施設において前記貯留槽内で発生する浸出水を集める浸出水集水ピットの構築方法であって、
前記浸出水集水ピットは、
前記貯留槽の底面と法面との交差部において前記貯留槽に隣接して設けられ前記貯留槽からの前記浸出水が流入し一時的に貯留される水溜部を有する貯水構造部と、
前記貯水構造部から前記貯留槽の外方に向けて、斜め上方に向けて又は水平方向に向けて延在する通路部と、
前記通路部に対して連結構造部を介して接続され前記連結構造部から地表まで上方に向けて延在する立坑部と、を備えており、
前記貯水構造部、前記通路部、前記連結構造部、及び前記立坑部のうちの少なくとも一部を、コンクリート二次製品を用いて構築する、浸出水集水ピットの構築方法。 - 前記通路部と前記立坑部とが前記コンクリート二次製品を用いて構築され、前記貯水構造部と前記連結構造部とが現場打ちコンクリートで構築される、請求項6に記載の浸出水集水ピットの構築方法。
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JP7444810B2 (ja) | 2021-03-23 | 2024-03-06 | クボタ環境エンジニアリング株式会社 | 廃棄物処分場の浸出水集水設備 |
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2021
- 2021-02-03 JP JP2021015740A patent/JP2022118913A/ja active Pending
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