JP2022116484A - 撹拌機 - Google Patents
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Abstract
【課題】凝集沈殿法において所定の凝集効果を得る場合に、撹拌翼を回転させるための動力の大きさを低減する。【解決手段】実施形態の撹拌機は、回転動力を出力するモータと、前記モータに接続され、前記モータから出力される回転動力によって回転する回転軸と、板状の撹拌翼であって、前記回転軸に対して前記撹拌翼の面が前記回転軸の軸方向と垂直になるように取り付けられ、前記回転軸とともに回転して、不要物の凝集用の薬剤を含む被処理水を撹拌する前記撹拌翼と、を備える。【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、撹拌機に関する。
従来から、上下水道、排水処理、用水供給などの分野において、さまざまな方法で水の浄化処理が行われている。水の浄化処理とは、具体的には処理対象の水(以下、「被処理水」という。)に含まれる固形物や溶解物などの不要物を除去する処理である。被処理水から不要物を除去する方法の代表的なものとして、重力によって沈殿した不要物を被処理水から分離する沈降分離法や、被処理水中の不要物を気泡によって分離する加圧分離法や、多孔質のセラミクスや樹脂を用いてろ過する膜分離法や、微生物に有機物などを捕食させる活性汚泥法などが挙げられる。
このような分離法のうち、沈降分離法や加圧分離法では、薬剤によって不要物を凝集させた後に分離する凝集法が用いられるのが一般的である。凝集法を組み合わせた沈降分離法は凝集沈殿法と呼ばれ、薬剤の投入、撹拌、沈殿物除去という比較的単純な操作で良好な浄化効果を得やすいことから広く普及している。
凝集沈殿法では、所定の凝集効果を得る場合に、撹拌翼を回転させるための動力の大きさを低減できれば望ましい。
そこで、本発明の実施形態の課題は、凝集沈殿法において所定の凝集効果を得る場合に、撹拌翼を回転させるための動力の大きさを低減することができる撹拌機を提供することである。
実施形態の撹拌機は、回転動力を出力するモータと、前記モータに接続され、前記モータから出力される回転動力によって回転する回転軸と、板状の撹拌翼であって、前記回転軸に対して前記撹拌翼の面が前記回転軸の軸方向と垂直になるように取り付けられ、前記回転軸とともに回転して、不要物の凝集用の薬剤を含む被処理水を撹拌する前記撹拌翼と、を備える。
以下、添付の図面を用いて、実施形態の撹拌機などについて説明する。
(概略)
凝集沈殿法では、アルミニウム塩や鉄塩などの無機化合物や、ポリアクリルアミドなどの有機高分子に正又は負の電荷をもつ官能基を導入した有機化合物などが凝集剤として用いられる。これらの凝集剤(薬剤)は、被処理水中の不要物をフロック(凝集物)に凝集させるとともに、フロックをより大きく形成する作用を持つ。
凝集沈殿法では、アルミニウム塩や鉄塩などの無機化合物や、ポリアクリルアミドなどの有機高分子に正又は負の電荷をもつ官能基を導入した有機化合物などが凝集剤として用いられる。これらの凝集剤(薬剤)は、被処理水中の不要物をフロック(凝集物)に凝集させるとともに、フロックをより大きく形成する作用を持つ。
このような凝集処理は、様々な水処理施設で行われている。例えば、浄水場においては、砂や粘土質の土壌成分、植物の破片、藻類などのプランクトン、着色原因となる高分子の溶解物などが除去対象となる。また、下水処理場においては、汚泥の脱水性を向上する為の凝集処理が行われている。また、工場排水処理においては、様々な工場から排出される多種多様な不要物が除去対象となる。
凝集沈殿法では、所定の凝集効果を得る場合に、撹拌翼を回転させるための動力の大きさを低減できれば望ましい。この点について、以下に詳述する。
凝集反応を進める場合には、凝集剤を被処理水(原水)に添加した後に撹拌することで反応を進行させる。反応の進行とは、具体的には、荷電中和と架橋である。荷電中和とは、被処理水に含まれる粒子表面の電荷を凝集剤の電荷により中和し、粒子同士の電気的反発を和らげるものである。また、架橋とは、凝集剤がゲル化する化学反応と粒子同士の衝突により粒子が粗粒化するものである。
そして、撹拌は、荷電中和と架橋の物理・化学反応を促進する効果を持つ。凝集反応に用いられる撹拌は、一般にG値を用いて決定されることが多い。しかし、スケールアップを行うなどすると、必ずしもG値で表現できないことが経験的に知られている。なお、G値は、撹拌翼の面積、水槽の体積、撹拌翼の周速度等から求められる指標である。
また、撹拌機は、一般に、モータと回転軸と撹拌翼から構成されている。ここで、図6は、従来技術の撹拌機を模式的に示す全体構成図である。図6に示したのは、一般的な撹拌翼であるラシュトンタービンを用いた撹拌機の構成である。水槽内の被処理水をラシュトンタービンによって撹拌する。なお、水槽の代わりに配管であってもよい。一般に、撹拌翼を回転方向に対して翼を立てて流体に対して抵抗を持たせる構成とすることで、流体を押し流して積極的に動かして流れを発生させて撹拌効果を得る。
しかし、従来技術の撹拌翼による撹拌方法は、液/液混合(液体と液体の混合)には良いが、凝集反応においては必ずしも効率的ではないという課題がある。一般に凝集反応に必要な攪拌の量はG値に時間を乗じたGt値で表現される。すなわち、凝集反応を高速(短時間)に行うには、G値を大きくすることが必要であり、撹拌機の回転数を大きくすることで達成される。しかしながら、凝集反応を高速に進行させるために、撹拌翼の回転数(回転速度)を速くすると、流体を激しく動かすこととなるので、流体を動かすための動力が過大となったり、また流体の動きが激しくなり水槽に水を収めるための仕組みが別途必要となったりする。
そこで、以下では、凝集沈殿法において所定の凝集効果を得る場合に、撹拌翼を回転させるための動力の大きさを低減することができる撹拌機について説明する。大まかな特徴としては、流体(被処理水)全体を積極的には動かさないことである。
図1を参照して、実施形態の第1の例の撹拌機1について説明する。図1は、実施形態の第1の例の撹拌機1を模式的に示す全体構成図である。水槽2には被処理水W1が入っている。なお、水槽2の代わりに配管を用いてもよい。
撹拌機1は、モータ3と、回転軸4と、撹拌翼5と、を備える。モータ3は、電力に基づいて回転動力を出力する。
回転軸4は、モータ3に接続され、モータ3から出力される回転動力によって回転する。
撹拌翼5は、円盤状(板状の一例。略円盤状を含む。)で、撹拌翼5の面が回転軸4の軸方向と垂直(誤差が5°以内の略垂直を含む。)になるように回転軸4に取り付けられている。つまり、撹拌翼5は、回転軸4に取り付けられた状態で、回転軸4の軸方向と垂直な面を基準に誤差が5°以上の面を有していなければよい。撹拌翼5は、回転軸4とともに回転して、不要物の凝集用の薬剤を含む被処理水を撹拌する。
図6のラシュトンタービン(撹拌翼)と比較するとわかるように、撹拌翼5が円盤状である点が大きく異なっている。円盤状の撹拌翼5が回転軸4に取り付けられていて、回転方向に対して撹拌翼5の面は平行に動くため、被処理水W1を押し流す効果は、ずりによるものに限られ、ラシュトンタービンに比べて極端に小さい。
また、図2は、実施形態の第2の例の撹拌機1aを模式的に示す全体構成図である。図1と同様の事項については、説明を適宜省略する。水槽2には被処理水W1が入っており、撹拌機1aによって処理された後、処理水W2として排出される。なお、水槽2の代わりに配管を用いてもよい。
撹拌機1aは、モータ3と、回転軸4と、複数の動翼6(撹拌翼)と、複数の固定翼7と、軸受8と、を備える。
複数の動翼6は、図1の撹拌翼5と同じ円盤状で、動翼6の面が回転軸4の軸方向と垂直(誤差が5°以内の略垂直を含む。)になるように回転軸4に取り付けられている。
また、複数の固定翼7は、円盤の中央の所定領域をくり抜いた形状(板状の一例)で、固定翼7の面が動翼6の面と平行(誤差が5°以内の略平行を含む。)になるように水槽2(収容器)に取り付けられている。また、動翼6と固定翼7は、交互に並ぶように配置されている。
このような撹拌機1aにより、被処理水W1は、動翼6の面の付近と固定翼7の面の付近を通過してフロックを大型化させながら進む。ただし、図1の場合と同様、被処理水W1を押し流す効果は、ずりによるものに限られ、ラシュトンタービンに比べて極端に小さい。
しかし、発明者らが鋭意検討した結果、同じ直径の撹拌翼を用いて同じ回転数(回転速度)で粒子同士が衝突することにより進行する凝集反応の凝集速度と比例するシェアレート(せん断力)を比較した場合、図1の撹拌機1は図6の一般的な撹拌機に比べて60%程度のシェアレートを得られた。この点について、図4A、図4Bを用いて説明する。
図4Aは、従来技術の撹拌機(図6)のシェアレートの実験結果を示すグラフである。図4Bは、実施形態の第1の例の撹拌機1(図1)のシェアレートの実験結果を示すグラフである。例えば、回転数が500rpmや1000rpmのときに、シェアレートは図4Aの場合と比べて図4Bの場合に60%程度となっている。
すなわち、必ずしも積極的に被処理水W1を全体的に動かさなくても凝集反応を進めることができる。これは、凝集反応が単なる液/液混合ではなく造粒を伴うことに起因すると考えられる。造粒においては、粒子の両端(撹拌翼5に近い部分と遠い部分)の速度差により粒子にシェアがかかり、粒子を丸める効果がある。
従来の撹拌翼は、水の移動と乱流の発生に主眼を置いた構造である。一方、本実施形態の撹拌機1(1a)は、粒子と撹拌翼5(動翼6)の速度差を大きくとり、粒子の両端の速度差が大きくなることに主眼を置いた構造である。一般的な液/液混合という点では効率が良くない構造であるが、凝集反応という造粒を伴う反応系においては効率の良い適切な構造であると言える。
また、従来技術において、ホモジナイザーを用いることで沈降性の良い凝集物(フロック)が得られるものがある。ホモジナイザーとしては例えばプライミクス社製ホモミクサーを用いることができるが、ステータ・ロータ方式で高速回転により流体を激しく動かしつつ転流板により流れ方向を制御して容器内に流体を保持するものである。この従来技術は良好なフロックの形成を行うことができるが、動力が大きくなってしまうという短所がある。
そこで、本実施形態では、図1や図2の撹拌機1(1a)の構成を採用した。また、ホモジナイザーでコロイド液(希釈した墨汁)を凝集させた場合と、図2の撹拌機1aを用いて動翼6と固定翼7の合計数を10枚とした場合の撹拌翼の回転数を同じ撹拌時間で比較した。
ここで、図5は、実施形態の第2の例の撹拌機1aによって従来技術と同等の凝集効果を得るために必要な回転数の実験結果を示すグラフである。
従来技術のホモジナイザーの場合は、凝集反応を適切に進行させるために9000rpmの高速回転が必要であった。一方、図2の撹拌機1aの場合は、1000rpmの比較的緩やかな撹拌で同等の凝集効果を得た。なお、線Lは、撹拌機1aでの各回転数での結果にフィッティングさせた線である。
なお、評価には分光光度計を用い、凝集反応の進行に伴う吸光度の低下を指標とした。被処理水の吸光度A1と対照系(従来技術のホモジナイザー)の吸光度A2は図示の通りである。
このとき、凝集反応に要した単位水量あたりの撹拌機動力(動力)を比較すると、ホモジナイザーでは11kJ/Lであったのに対し、撹拌機1aでは1.4kJ/Lであり、大幅に撹拌機動力が削減されていた。
次に、図3は、実施形態の第3の例の撹拌機1bを模式的に示す全体構成図である。図1と同様の事項については、説明を適宜省略する。
撹拌機1bは、モータ3と、回転軸4と、複数の撹拌翼5aと、を備える。
撹拌翼5aは、図1の撹拌翼5に対して、被処理水W1が通過可能な複数の孔51を備えた構造となっている。これにより、被処理水W1は、上下方向(図中のD方向)に移動する場合に、撹拌翼5aの外側だけでなく、孔51を通過することができる。したがって、図2に示すような固定翼7を用いなくても図2の場合と同様の作用効果を得られるので、構造を簡素にすることができる。
このように、本実施形態の撹拌機1(1a、1b)によれば、板状の撹拌翼5(動翼6)を用いることで、凝集沈殿法において所定の凝集効果を得る場合に、撹拌翼5(動翼6)を回転させるための動力の大きさを低減することができる。
また、図2のように動翼6と固定翼7を用いた構造にすれば、被処理水W1が動翼6の面の付近と固定翼7の面の付近を通過して効率よくフロックを大型化させながら進むので、凝集効率がさらに高まる。
また、図3のように孔51を備える撹拌翼5aを用いることで、簡素な構造で図2の場合と同様の作用効果を得ることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…撹拌機、2…水槽、3…モータ、4…回転軸、5…撹拌翼、6…動翼、7…固定翼、W1…被処理水、W2…処理水
Claims (4)
- 回転動力を出力するモータと、
前記モータに接続され、前記モータから出力される回転動力によって回転する回転軸と、
板状の撹拌翼であって、前記撹拌翼の面が前記回転軸の軸方向と垂直になるように前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸とともに回転して、不要物の凝集用の薬剤を含む被処理水を撹拌する前記撹拌翼と、を備える撹拌機。 - 前記撹拌翼は、複数設けられている、請求項1に記載の撹拌機。
- 板状の固定翼であって、前記固定翼の面が前記撹拌翼の面と平行になるように前記被処理水の収容器に取り付けられている前記固定翼、をさらに備える、請求項1に記載の撹拌機。
- 前記撹拌翼は、前記被処理水が通過可能な孔を有している、請求項1に記載の撹拌機。
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