以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るパニアを備えた乗物の一種である自動二輪車の前部を示す側面図である。本明細書において、「右」、「左」は、乗物に乗車した運転者から見た「右」、「左」をいう。また、「前」「後」とは、乗物の進行方向の「前」「後」をいう。さらに、車幅方向に関して、前後方向に延びる乗物の幅方向中心線に向かう側を乗物の幅方向内側といい、乗物の幅方向中心線から離れる側を乗物の幅方向外側という。また、特に言及しない場合は、パニアの前後方向、幅方向、上下方向は、パニアが乗物に搭載された状態での方向をいう。
本実施形態の自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を構成するメインフレーム1と、後半部を構成するリヤフレーム2とを有している。メインフレーム1は、前端のヘッドパイプ(図示せず)から後方斜め下方に延びたのち、下方に湾曲して上下方向に延びている。ヘッドパイプ(図示せず)に支持されたフロントフォーク(図示せず)の下端部に前輪(図示せず)が支持され、上端部にハンドル(図示せず)が取り付けられている。
メインフレーム1の後端部に、スイングアームブラケット4が設けられている。スイングアームブラケット4に、スイングアーム6が上下揺動自在に支持されている。スイングアーム6の後端部に、後輪8が取り付けられている。リヤフレーム2は、メインフレーム1の後部から後方に延びている。本実施形態では、リヤフレーム2は、左右一対設けられている。詳細には、図2に示すように、リヤフレーム2は、左右のリヤフレーム片2a,2aを有している。
図1に示すメインフレーム1の下方でスイングアームブラケット4の前方に、駆動源であるエンジンEが取り付けられている。エンジンEにより、チェーンのような動力伝達部材(図示せず)を介して後輪8が駆動される。メインフレーム1の上部に燃料タンク10が配置され、リヤフレーム2に操縦者が着座するシート12が装着されている。本実施形態のシート12は、操縦者用のライダーシート部と同乗者用のタンデムシート部が一体となったダブルシートである。ただし、ライダーシートとタンデムシートが別々に設けられていてもよい。
車体の後部の側方に物品収納用のパニア14が取り付けられている。図2に示すように、パニア14は、シート12の後部のタンデムシート部の左右両側方に設けられている。パニア14は、自動二輪車に搭載された状態で、車体の前後方向に延びる、略直方体形状である。パニア14は、パニアステー16を介してリヤフレーム2に支持されている。パニア14の支持構造は後述する。パニアステー16は、ボルトのような締結部材(図示せず)によりリヤフレーム2に着脱自在に取り付けられている。
パニアステー16は、例えば、鋼製のパイプ部材からなり、その前端部16aでリヤフレーム2に締結されている。詳細には、パニアステー16は、前端部16aから車幅方向外側に延びる第1の部分31と、第1の部分31の外端31aから後方に向かって上方に傾斜して延びる第2の部分32と、第2の部分32の上端32aから後方に延びる第3の部分33とを有している。第2の部分32の上部と、第3の部分33の後部に、車幅方向内側に延びるサポート部材34の一端部(車幅方向外側端部)が連結されている。サポート部材34の他端部(車幅方向内側端部)34aは、リヤフレーム2に締結されている。
シート12の後方にキャリッジプレート18が設けられ、リヤフレーム2に支持されている。キャリッジプレート18は、例えば、荷物を載置するのに用いられる。キャリッジプレート18は、物品収納用のトップケース20を取り付けることができるように構成されている。トップケース20は、左右のパニア14,14の間に配置されている。
図1に示すように、パニア14の上面14aは平坦で、車両に搭載された状態でシート12の上面12aよりも高い位置に設定されている。これにより、左右のパニア14,14の上面に車幅方向に長尺な荷物Bを積載することができる。
パニア14は、例えば、樹脂製のボックス形状であり、ケース本体22と、蓋部材24とを有している。ケース本体22の内部には、物品を収納する収容空間S1が形成されている。ケース本体22の上端に、物品を収容空間S1に出し入れする開口22aが形成されている。
ケース本体22における車幅方向の外側面に、保護部材26が着脱可能に取り付けられている。保護部材26は、例えば、ボルトのような締結部材(図示せず)によりケース本体22に着脱可能に取り付けられる。保護部材26の取付構造はこれに限定されない。ケース本体22の外側面に保護部材26を設けることで、ケース本体22における傷つきやすい部分を保護できる。これにより、パニア14に傷がついた場合でも、保護部材26の交換のみで済み、パニア14ごと交換する必要がなくなる。
図3に示すように、ケース本体22の底面に、自立用の脚28が設けられている。脚28は、ケース本体22の底面から下方に突出しており、本実施形態では、ケース本体22に一体に形成されている。脚28は、ケース本体22の底面における前端部、後端部、車幅方向の外側端部の3か所に形成されている。ただし、脚28の数、場所はこれに限定されない。ケース本体22の底面に脚28を設けることで、パニア14が地面上で自立できるので、取り扱いがよい。
ケース本体22の後面に、ケース側の持ち手30が設けられている。持ち手30は、ケース本体22の後面の上部に設けられ、下方に開放された開口30aが形成されている。言い換えると、持ち手30は、ケース本体22の後面上部に形成され、下方に開口するポケット形状に形成される。ポケットは、持ち手の開口30aを覆う筒状に形成される。また、パニア14が車両から取り外された状態で、持ち手30の開口30aに指を入れて、指を持ち手に引っ掛けて持ち上げることで、パニア14を持ち運ぶことができる。
また、後述する第2係止部材による係止が解除されて、パニア14が車両に支持された状態で、指を持ち手30に引っ掛けて持ち上げることで、パニア14を車両から取り外すことができる。このように、持ち手30は、パニア14の持ち運びに用いられるとともに、パニア14の車体からの取り外しに利用することができる。このように、パニア14の持ち運びと取外しとを共通の部分とすることで、構造を簡単化することができる。
図4に示すように、ケース本体22の車幅方向内側面に、車体に支持される被支持体35が設けられている。本実施形態では、被支持体35は、3つの第1~3被支持体36,37,38を有している。第1被支持体36は、ケース本体22の内側面における前端部の下部に形成されている。第2および第3被支持体37,38は、ケース本体22の内側面における上端部に、第2被支持体37を前側として前後方向に並んで形成されている。このように被支持体36,37,38は、前後に離れた2つの位置および上下に離れた2つの位置に設けられる。なお、被支持体36~38の数、場所はこれに限定されない。
本実施形態の第1~3被支持体36,37,38は、型成形によりケース本体22と一体に形成されている。第1被支持体36は、ケース本体22の内側面から車幅方向内側に突出し、前方に開口した第1凹部36aを有している。第2および第3被支持体37,38は、ケース本体22の内側面から車幅方向内側に突出し、下方に開口した第2および第3凹部37a,38aをそれぞれ有している。第2凹部37aと第3凹部38aとは前後方向に間隔をあけて配置される。
パニアステー16は、前後方向に延びる前後部分と、その前後部分の前端部から下方に延びる屈曲部分とが形成される。パニア14は、パニアステー16に上方から近づいて、第2凹部37aと第2凹部38aとが、パニアステー16の前部分および後部分にそれぞれ嵌合する。これによってパニア14は、パニアステー16に下方から支持される。また、パニア14は、パニアステー16の屈曲部分の後方から前方に移動して、第1凹部36aがパニアステー16の屈曲部分に嵌合する。これによって、パニア14は、パニアステー16で規制されて前方への移動が阻止される。
図1に示す蓋部材24は、ケース本体22の開口22aを塞ぐ。以下、蓋部材24がケース本体22の開口を塞ぐ状態を、「蓋部材が閉じる」として表現する場合がある。また、蓋部材24がケース本体22の開口30を開く状態を、「蓋部材が開く」として表現する場合がある。
蓋部材24は、ケース本体22に対して開閉可能に取り付ける開閉機構が設けられる。開閉機構は、ヒンジ40と、開放阻止部42とを有する。ヒンジ40は、パニア14の前部に設けられる。具体的には、ヒンジは、ケース本体22の前上端部と、蓋部材24の前下端部とを連結するとともに、連結部位に設定されて左右方向に延びるヒンジ軸線が設定される。ヒンジ40は、ケース本体側の部位に対して、蓋部材側の部位が、ヒンジ軸線まわりに角変位可能に接続される。これによって、蓋部材24は、ヒンジ40を介してケース本体22に対して開閉自在に取り付けられる。
開放阻止部42は、パニア14の後部に設けられる。開放阻止部42は、ケース本体側に設けられるケース側部位と、蓋部材側に設けられる蓋側部位とを含んで構成される。蓋部材24がケース本体22を塞いだ状態で、開放阻止部42のケース側部位と蓋側部位とが係合することで、蓋部材24のケース本体22に対する角変位が阻止されて、ケース本体22の解放が阻止される。また、開放阻止部42のケース側部位と蓋側部位との係合が解除されることで、蓋部材24のケース本体22に対する角変位が許容されて、ケース本体22の解放が可能となる。このようにして、蓋部材24は、開放阻止部42により開閉不能状態と開閉可能状態の切り替えが可能である。開放阻止部42の詳細は、後述する。
ヒンジ40は、図3に示すように、ケース本体22に取り付けられた第1のヒンジ部材44と、蓋部材24に取り付けられた第2のヒンジ部材46と、両ヒンジ部材44,46を回動自在に連結するヒンジ軸45とを有している。ヒンジ軸45は、車幅方向に延びている。蓋部材24がケース本体22を塞いだ状態から、蓋部材24の後端部が前方に向かうようにヒンジ軸周りに角変位することでケース本体22が開かれる。このようにして、蓋部材24は後方から前方に開くように構成されている。これにより、走行風によって蓋部材24が開くのを防止できる。
図1に二点鎖線で示すように、ケース本体22側の第1のヒンジ部材44の上面44aは、前方に向かって上方に傾斜している。蓋部材24を開いた際に、第1のヒンジ部材44の上面44aに、蓋部材24の前面が当接する。これにより、蓋部材24を所定位置で固定することができ、蓋部材24が開き過ぎるのを防ぐごとができる。
蓋部材24は、後面につまみ部23(図3)が設けられる。つまみ部23は、蓋部材24の後面の下部に設けられ、下方に開放された開口が形成される。言い換えると、つまみ部23は、蓋部材24の後面下部に形成されて、下方に開口するポケット形状に形成される。ポケットは、つまみ部23の開口を覆う筒状に形成される。後述する第1係止部材による係止が解除された状態で、つまみ部23の開口に指を入れて、指をつまみ部23に引っ掛けて持ち上げることで、蓋部材24の角変位をし易くすることができる。本実施形態では、蓋部材24のつまみ部23は、ケース本体22の持ち手30の上方に形成されて、持ち手30に近接した位置に配置される。
図5に示すように、開放阻止部42の蓋側部位は、蓋部材24の後端部に設けられている。開放阻止部42のケース側部位は、蓋側部位と対向する位置であって、ケース本体22の後端上部に設けられる。開放阻止部42の蓋側部位が、開放阻止部のケース側部位に対して係止されることで、蓋部材24によるケースの解放が阻止される。
図9A~9Cに示すように、本実施形態では、開放阻止部42の蓋側部位100は、第1係止片48と、連結片102と、第1操作片50と、第1のばね体52とを有している。本実施形態では、第1係止片48は、車幅方向に並んで2つ設けられる。連結片102は、各第1係止片48と第1操作片50とを連結して、車幅方向に延びる。したがって、第1係止片48、連結片102および第1操作片50は、単一となる第1係止部材104として実現される。よって、第1係止片48は、第1操作片50が変位操作されることで連動変位する。
第1係止部材104は、蓋部材24に形成された第1案内空間S2に収容されて、あらかじめ許容される範囲の車幅方向に変位可能に案内される。言い換えると、第1係止部材104は、蓋部材24の第1案内空間S2に収容されることで、車幅方向以外の方向への変位が阻止される。
操作者が第1操作片50を車幅方向に変位させることで、連結される第1係止片48が車幅方向に移動するように構成されている。第1操作片50は、蓋部材24の車幅方向後面に露出した位置に配置される。本実施形態では、第1操作片50は、後述するシリンダ69に隣接して、車体側の蓋部材24の後面および車体側側面に露出するように配置される。第1操作片50は、鉤状に形成されて、後方から近づけられた指を挿入可能な凹所106が形成される。後述するロック解除状態において、第1操作片50の凹所106に挿入された指が、凹所106の車体側内面に対して、車幅方向内側に力を加えることで、第1操作片50に連動して、第1係止片48を車幅方向内側に移動させることができる。
第1係止部材104は、第1のばね体52により、蓋部材24に対して付勢力が付与されて、車幅方向外側に向けて付勢されている。本実施形態では、第1のばね体52は、コイルバネで実現され、蓋部材24に形成される収容空間S1に配置および支持されて、蓋部材24と第1係止部材104とにそれぞれ両端部が連結される。第1のばね体52によって、第1係止部材104は、車幅方向外側に押し付けられて、あらかじめ定める蓋係止位置に位置決めされる。第1のばね体52に抗して操作片50が車幅方向内側に変位される力が加えられる間、第1係止部材104は、蓋係止位置から車幅方向内側に移動した蓋係止解除位置に変位される。第1操作片50に加えられる力が解除されると、第1のばね体52によって、第1係止部材104は、蓋係止位置に復帰移動する。
第1係止片48は、蓋部材24の下面から下方に突出した係止爪として形成される。第1係止片48は、L字状に形成され、連結片102から下方に延びる突出部分48aと、突出部分48aの下端部から車幅方向に延びる鉤部分48bとが形成される。開放阻止部42のケース側部位108は、開口110が形成される係止壁112が形成される。係止壁112の開口110の車幅方向寸法は、鉤部分48bの車幅方向寸法よりも大きく形成される。
蓋部材24がケース本体22を塞いだ状態では(図9A)、第1係止部材104は、第1係止片48の突出部分48aが、係止壁112の開口110を通過した状態に形成され、鉤部分48bが係止壁112よりも下側に位置する。蓋係止位置に第1係止部材104が位置する場合には、係止壁112の下面に鉤部分48bが対向するよう位置する。これによって蓋部材24の後端をケース本体22に対して上方に移動しようとしたとしても、係止壁112に鉤部分48bが引っかかることになり、蓋部材24の移動が阻止されて、ケース本体22が解放されることが阻止される。
また、上述したように、第1操作片50が操作されることで、第1係止部材104は、第1のばね体52の付勢力に抗して車幅方向内側に移動可能に形成される(図9B)。このように第1係止部材104は、蓋係止位置から蓋係止解除位置に移動可能に構成される。第1係止部材104が蓋係止解除位置に移動すると、鉤部分48bが係止壁112の下面から退避して開口領域に位置する。
この状態では、鉤部分48bと係止壁112との係止状態が解除されている。この状態では、鉤部分48bが係止壁112に係止されることなく、係止壁112の開口110を追加して上方に移動可能となる。したがって、一方の手で第1操作片50を操作したうえで、他方の手でつまみ部を操作して、蓋部材24の後端をケース本体22に対して上方に移動させることができる。このようにして蓋部材24が開閉可能状態となる。
蓋部材24とケース本体22との係止が解除されて、蓋部材24が開いた状態で、第1操作片50を操作していた一方の手を離すことで、第1係止部材104は、第1のばね体52の付勢力によって車幅方向外側に移動して、蓋係止位置に復帰する(図9C)。この状態では、蓋部材24を閉じようと蓋部材24の後端部を下方に移動させた場合には、第1係止部材104は、鉤部分48bが係止壁112の上面に鉤部分が対向する。この場合、鉤部分48bが係止壁112の上面に接触することで、蓋部材24の下方への移動が阻止されることで、蓋部材24でケース本体22を閉じられることが阻止される。
この場合、ケース本体22を閉じるためには、開く場合の操作と同様に、両方の手の操作が必要になる。具体的には、一方の手で第1操作片50が操作されることで、第1係止部材104は、第1のばね体52の付勢力に抗して車幅方向内側に移動可能に形成される。このように第1係止部材104は、蓋係止位置から蓋係止解除位置に移動可能に構成される。第1係止部材104が蓋係止解除位置に移動すると、鉤部分48bが係止壁112の下面から退避して開口領域に位置する。
この状態では、鉤部分48bと係止壁112との係止状態が解除されている。この状態では、鉤部分48bが係止壁112に係止されることなく、係止壁112の開口110を追加して下方に移動可能となる。したがって一方の手で第1操作片50を操作したうえで、他方の手でつまみ部を操作して蓋部材24の後端をケース本体22に対して下方に移動させることができる。
ケース本体22(図1)は、着脱機構54を介して車体に着脱自在に取り付けられている。つまり、ケース本体22は、着脱機構54により取外不能状態と取外可能状態の切り替えが可能である。着脱機構54は、パニア14の車幅方向内側部に設けられている。ケース本体22は、着脱機構54により取外不能状態と取外可能状態の切り替えが可能である。
着脱機構54の説明に先立って、パニア14の支持構造を説明する。図4に示すように、パニアステー16の第2の部分32にパニア14の第1被支持体36が支持され、パニアステー16の第3の部分33にパニア14の第2および第3被支持体37,38が支持されている。詳細には、パニア14の第1被支持体36の第1凹部36aにパニアステー16の第2の部分32が前方から嵌合され、パニア14の第2および第3被支持体37,38の第2および第3凹部37a,38aにパニアステー16の第3の部分33が下方から嵌合されている。
図6Aに示すように、パニアステー16には、ホルダ55が固定される。ホルダ55は、パニア14がパニアステー16から離脱することを防ぐための固定部分として機能する。ホルダ55は、パニアステー16の第3の部分33に隣接してパニアステー16に固定されている。本実施形態では、ホルダ55は、パニア14の第3被支持体38が嵌合される部分に近接して設けられている。詳細には、ホルダ55は、パニアステー16における第3の部分33とサポート部材34が連結される部分の間に設けられている。本実施形態では、ホルダ55は、パニアステー16に形成される固定部にボルト締結される。ホルダ55は、パニア14がステー16に支持された状態で、後述する第2係止部材に対して、前方から対向する位置に配置される。
図7に示すように、ホルダ55は、パニアステー16が挿通されるパイプ挿通部56と、パイプ挿通部56から下方に突出する支持部58と、パイプ挿通部56から上方に突出する係止部60とを有している。パイプ挿通部56に、パニアステー16が挿通される挿通孔56aが形成されている。また、係止部60には、後方に開口した係止孔60aが形成されている。係止孔60aには、後述の着脱機構54の第2係止片66が挿入可能に形成される。
ホルダ55は、第2係止片66が挿入されることで、パニア14の着脱を阻止する機能を有する。ホルダ55の係止部分は、パニアステー16よりも上方に位置する。言い換えると、パニア14が支持された状態で、ホルダ55の係止部分は、ケース本体22に形成される支持面よりも上方に位置する。ケース本体22には、パニアステー16に取り付けられた状態で、前述のホルダ55がはまり込む嵌合凹所が形成される。嵌合凹所は、下方に開放される凹所として形成される。
支持部58に、前後方向(第3の部分33の延在方向)を向くボルト挿通孔58aが形成されている。一方、図6Aに示すように、パニアステー16の第3の部分33に下方に突出する取付片62が設けられており、取付片62に、前後方向を向くボルト挿通孔62aが形成されている。パイプ挿通部56にパニアステー16の第3の部分33が挿通された状態で、ボルトのような締結部材64が、車体の後方から取付片62のボルト挿通孔62aおよび支持部58のボルト挿通孔58aの順に挿通され、ナット65で締め付けられている。これにより、ホルダ55が、パニアステー16の所定の位置に固定される。
着脱機構54は、前述のとおりケース本体22の車幅方向内側部に設けられている。詳細には、着脱機構54は、図2の平面視で、乗物の外郭部材、例えば、リヤフレーム2と収容空間S1との間の領域に配置されている。ケース本体22および蓋部材24は、収容空間S1を規定する規定壁と、規定壁よりも車幅方向内側に突出するつば部分がそれぞれ形成される。このつば部分に着脱機構54が設けられる。着脱機構54は、図6Aおよび図6Bに示すように、前記第2係止片(第2係止部材)66と、第2操作部材68と、第2のばね体70(図5)とを有している。
第2操作部材68は、蓋部材24の上面に部分的に露出した矩形のスライダである。第2操作部材68は、操作者がつまんでスライドさせることで前後方向に移動自在に構成されている。具体的には、第2操作部材68は、蓋部材24のうちで収容空間S1を形成する規定壁よりも車幅方向内側に突出する蓋側つば部分120(図4)に支持される。
第2操作部材68は、蓋側つば部分120に形成された第2案内空間S3に収容されて、あらかじめ許容される範囲の前後方向に変位可能に案内される。言い換えると第2操作部材68は、蓋部材24の第2案内空間S3に収容されることで、前後方向以外の方向への変位が阻止される。第2操作部材68は、蓋側つば部分120から上方に露出する操作片68aと、操作片68aに連結されて蓋側つば部分120よりも下方に突出する突起片68bとが形成される。
第2係止部材66は、第2操作部材68の下方に位置する。具体的には、第2係止部材66は、ケース本体22のうちで収容空間S1を形成する規定壁よりも車幅方向内側に突出する本体側つば部分63(図1)に支持される。第2係止部材66は、本体側つば部分63に形成された第3案内空間S4に収容されて、あらかじめ許容される範囲の前後方向に変位可能に案内される。言い換えると第2係止部材66は、ケース本体22の第3案内空間S4に収容されることで、前後方向以外の方向への変位が阻止される。ケース本体22がパニアステー16に取り付けられた状態で、第3案内空間S4は、ホルダ55に隣接する位置に形成される。すなわちケース本体22のうち、ホルダ55がはまり込む嵌合凹所(図示せず)は、ケース側つば部分63に形成される。
ケース側つば部分63は、第3案内空間S4と、嵌合凹所とを前後方向に連通する連通孔(図示せず)が形成される。嵌合凹所にホルダ55が嵌り込むことで、ホルダ55に対して、後方から望む壁がケース本体22に形成される。これによってホルダ55が嵌合凹所に嵌り込んだ状態では、ケース本体22が、パニアステー16に対して、前方に移動することが阻止される。
第2係止部材66は、本体側つば部分63から上方に露出する溝部67が形成される。溝部67は、第2操作部材68の突起片68bが係合可能な係合溝66aが形成されている。具体的には、溝部67は、係合溝66aに対して、前側から対向する前側面と、後側から対向する後側面とが形成され、前側面と後側面との前後方向寸法は、突起片68bの前後方向寸法よりやや大きく形成される。また、前側面および後側面の少なくとも一方は、上方に向かうにつれて係合溝66aから前後方向に離れるように傾斜する傾斜面が上部分に形成される。
蓋部材24が閉じられた状態では(図6A)、第2操作部材68の突起片68bは、第2係止部材66の係合溝66aに係合する位置に配置される。係合状態においては、第2係止部材66は、第2操作部材68と共に前後方向に移動する。第2係止片66と第2操作部材68は一体に形成されてもよい。また、第2操作部材68の下面に溝が形成され、第2係止片6の上面に係合突起が形成されてもよい。
第2係止部材66は、溝部に連結されて、溝部から前方に延びる前端部と、溝部から後方に延びる後端部とが形成される。第2係止部材66の前端部は、連通孔を貫通して、嵌合凹所に移動可能に形成される。パニア14がパニアステー16に取り付けられた状態では、第2係止部材66は、前端部がホルダ55の係止孔60aに嵌り込む。ホルダ55は、少なくとも第2係止部材66の前端部に対して上方から対向する。これによってケース本体22が、ホルダ55で係止されて、パニアステー16に対して上方に移動することが阻止される。
第2操作部材68または第2係止部材66のいずれか一方は、第2のばね体70によって、前方に向かう付勢力が与えられる。本実施形態では、第2操作部材68が第2のばね体70によって、前方に向かう付勢力が与えられる。具体的には、第2のばね体70は、コイルバネで実現され、蓋側つば部材120に形成される収容空間に配置および支持されて、その一端部が蓋部材24に連結され、その他端部が第2の操作部材68に連結される。第2操作部材68は、第2のばね体70によって、前方に押し付けられる。
上述したように蓋部材24が閉じた状態では、第2操作部材68は、第2係止部材66に対して係止状態に維持される。これによって、第2操作部材68と同様に第2係止部材66が前方に押し付けられる。このように第2のばね体70のばね力に抗する力が第2操作部材68に与えられていない状態では、第2係止部材68の前端部がホルダ55およびパニアステー16に協働して係止され、ケース本体22が車体に対して取外不能状態に維持される。具体的には、パニアステー16に対するケース本体22の上方への移動が係止片66によって阻止される。また、パニアステー16に対する後方への移動がホルダ55によって阻止される。また、パニアステー16に対する車幅方向および下方への移動がホルダ55およびパニアステー16によって阻止される。
蓋部材24が閉じた状態で、操作者が第2操作部材68を後方にスライド操作すると(図6B)、第2操作部材68に連動して第2係止部材66がケース本体22に対して後方に移動する。これによって、第2係止部材68の前端部がホルダ55の係止孔60aから離脱し、第2係止部材68とホルダ55との係止状態が解除される。この状態では、第2係止部材68の前端部が、ホルダ55の係止孔60aから後方に離脱していることから、ケース本体22の上方への移動をホルダ55が妨げられることが防がれる。これによってケース本体22が、パニアステー16に対して上方への移動が可能となる。ケース本体22がパニアステー16に対して上方に移動され、ホルダ55が嵌合凹所に嵌り込む状態を脱することで、パニアステー16に対してケース本体22を取り外すことが可能となる。
図5の開閉機構(開放阻止部)42および着脱機構54は、ロック可能に構成されている。つまり、開閉機構42は閉止状態(開閉不能状態)でロック可能であり、着脱機構54は係止位置(取外不能状態)でロック可能である。パニア14は、着脱機構54のロックと開閉機構42のロックを兼用するシリンダ69を有している。つまり、1つのシリンダ69で、パニア14の車体からの着脱と、パニア14の蓋部材24の開閉の両方をロックできる。本実施形態では、シリンダ69は、開閉不能状態および着脱不能状態となるロック位置と、開閉可能および着脱可能となるロック解除位置とに角変位可能に設けられる。
本実施形態のシリンダ69は、キーを差し込んで回すことで施錠(ロック)と解錠(ロック解除)が行えるキーシリンダである。シリンダ69は、その軸心AXが上下方向に延びて上面が露出しており、軸心方向(上下方向)から見てパニアステー16と部分的に重なっている。シリンダ69の上面に、図4に示すキーを差し込むキー孔69aが形成されている。
シリンダ69は、蓋部材24によって回転可能に支持される。すなわち、蓋部材24とともにケース本体22に対して相対移動可能に設けられる。シリンダ69におけるキー孔69a以外の部分は、蓋部材24に形成されるカバー76によりキー孔69a以外の部部である周面が、上方、後方および車幅方向内側から覆われている。本実施形態では、シリンダ69は、キーがキー孔69aに挿入された状態では、ロック位置でないと、キーを抜き差しできなくなるような内部構造に構成される。
シリンダ69は、パニア14がパニアステー16に取り付けられた状態で、車体フレームFRと収容空間S1との間の領域に配置されている。詳細には、蓋部材24の後部における車幅方向内側部分となる蓋側つば部分にシリンダ収容部分71が形成され、このシリンダ収容部分71にシリンダ69が収容されている。上述する第1係止部材および第2係止部材(図6A)も、蓋部材24に設けられる空間に収納されている。本実施形態では、シリンダ69は、ケース本体22の第3被支持体38に近接して配置されている。
また、シリンダ69は、第1係止部材104の車幅方向内側端部および第2係止部材68の後端部に近接して配置される。シリンダ69がロック位置に移動することで、隣接する第1係止部材104および第2係止部材68の移動が阻止するよう、シリンダ69に形成されたロック片72,74が位置する。また、シリンダ69がロック解除位置に移動することで、各係止部材104,68に対してロック片72,74が退避する位置に移動する。これにより、ロック片72,74による移動阻止が解除されて、各係止部材104,68の移動が許容される。
図5に示すように、シリンダ69の外周面に第1ロック片72および第2ロック片74が形成されている。第1ロック片72は、ロック位置で、第1操作部材50の車幅方向内側への移動を阻止する。本実施形態では、第1ロック片72は、例えば、第1操作部材(第1操作片)50に形成された凹部(図示せず)に係止することで、第1操作片50の車幅方向の移動を阻止する。
具体的には、ロック機構は、図10Aおよび図10Bに示すシリンダ69と連動して動作するカム部材114を含む。シリンダ69は、回転中心に対して半径方向外側部分に第1ロック片72となる突起116が形成される。カム部材114は、シリンダ69に形成された突起116に嵌合する長孔114aが形成される。カム部材114は、蓋部材24に収容されることで移動方向が前後方向に案内される。
カム部材114は、シリンダ69の突起116に連結されることで、突起116の角変位移動に応じて前後方向に移動する。シリンダ69がロック位置に移動することで(図10B)、突起116によってカム部材114が後方に押し出されて、蓋係止位置に位置する第1係止部材104を係止する。具体的には、カム部材114の先端部が第1係止部材104に形成される溝(凹所)106に嵌り込むことで、第1係止部材104の車幅方向移動が阻止される。このように、ロック位置では、第1操作片50を車幅方向に移動しようとしても、第1ロック片72により第1操作片50の車幅方向の移動が阻止されるので、キーを持っていない第三者は蓋部材24を開けることができなくなる。
また、キーを用いてシリンダ69をロック解除位置に移動させることで(図10A)、カム部材114は、突起116の角変位移動に応じて前方に押し戻されて、第1係止部材104とカム部材114との係止状態が解除される。この状態で、操作者が第1のばね部材52による付勢力に抗して第1操作片50に力を加えることで、第1係止部材104を車幅方向内側に移動させることができる。
また、第2ロック片74は、ロック位置で、第2係止部材66の前後方向の移動を阻止する(図10B)。具体的には、第2ロック片74は、シリンダ69の下端部に形成される。第2ロック片74は、蓋部材24を閉じた状態において、第2係止部材66の後端面と同じ高さ位置に配置される。また、第2ロック片74は、残余の部分に対して、径方向外側に突出して形成される。
シリンダ69がロック位置に移動することで、第2ロック片74が第2係止部材66の後端面に後方から対向して、第2係止部材66の後方への移動を阻止する。これによって第2係止部材66のケース固定位置からの移動を防ぐことができ、パニア14の着脱を防ぐことができる。蓋部材24を閉じた状態では、第2操作部材68と第2係止部材66とは係止されていることから、ロック位置では、第2操作部材68を後方に移動しようとしても、第2ロック片74により第2係止片66の後方の移動が阻止されるので、キーを持っていない第三者はパニア14を車体から取り外すことができなくなる。
また、キーを用いてシリンダ69をロック解除位置に移動させることで(図10A)、第2ロック片74は、角変位されて、第2係止部材66との対向状態が防がれる。言い換えると、第2係止部材66とシリンダ69との間に隙間が形成されて、第2係止部材66の後方への移動が可能となる。この状態で、操作者が第2のばね体70による付勢力に抗して、第2操作部材66に力を加えることで、第2係止部材66を後方に移動させることができる。
このように、シリンダ69をロック位置からロック解除位置に回動させると、カム部材である第1ロック片72と第1係止部材50の係合が解除されて閉止状態の第1操作部材50の車幅方向の移動が可能となる。したがって、パニア開放位置では、第1操作部材50を車幅方向外側に移動することで第1係止片48が車幅方向(二点鎖線の位置)に移動する。これにより、蓋部材24を開けることができる。
また、シリンダ69をロック位置からロック解除位置に回動させると、第2ロック片74と第2係止片66の係合が解除されて取外不能状態の第2係止片66の後方の移動が可能となる。したがって、パニア取外位置では、第2操作部材68を後方に移動することで第2係止片66が後方に移動する。これにより、パニア14を車体から取り外すことができる。
本実施形態では、シリンダ69のパニア取外位置とパニア開放位置は同じ回動方向位置に設定されているが、異なる位置に設定されてもよい。例えば、ロック位置から所定角度角変位した位置にパニア開放位置が設定され、パニア開放位置からシリンダが角変位位置に着脱位置が設定されてもよい。また、本実施形態では、シリンダ69の軸心方向は車両の上下方向に設定されているが、これに限定されず、例えば、車幅方向、車両の前後方向等であってもよい。
以上のように、ロック位置では、車体に対してケース本体22が取外し不可能で、且つ、ケース本体22に対して蓋部材24が開放不可能な位置に、第2係止片66および第1係止片48が固定される。また、パニア取外位置では、車体に対してケース本体22を取り外し可能な位置に第2係止片66が移動可能である。さらに、パニア開放位置では、ケース本体22に対して蓋部材24が開放可能な位置に第1係止片48が移動可能である。
シリンダ69は、ロック位置にある場合には、第1係止片48がケース側の係止壁112に接触することで、蓋部材24が閉じられることが阻止される。これによってロック位置にある状態で、蓋部材24が閉じられていないことを操作者が判断することができる。この場合、蓋部材24の閉じた状態でのロック操作を図るよう促すことができる。これにより、不所望に蓋部材24が開いたり、パニア14が車体から外れたりすることを防ぐことができる。
本実施形態のパニア14は、第2係止片66がロック位置にないことを示す標識(警告標識)75A,75Bを備えている。標識75Aは第2操作部材68の上面(図8B)に設けられ、標識75Bは蓋部材24における第2操作部材68の移動領域の上面(図8C)に設けられている。詳細には、標識75Aは第2操作部材68の上面における後半部に設けられ、標識75Bは蓋部材24の上面における第2操作部材68の移動領域の後部に設けられている。本実施形態では、標識75A,75Bは、第2操作部材68の上面および蓋部材24の上面に付された赤塗のマークである。ただし、標識75A,75Bは赤塗のマークに限定されない。
第2操作部材68は、前後方向に移動させることで、その後半部がカバー76内に出し入れされる。つまり、図6Aに二点鎖線300で示すように第2係止片66がロック位置にないときは、第2のばね体70の付勢力により第2係止片66は前方に移動し、図8Bに示すように、第2操作部材68の上面の標識75Aが露出して視認可能となる。また、図6Aに二点鎖線200で示すように第2係止片66がホルダ55に引っかかって係止孔60aに係止できないとき、第2係止片66は後方に移動し、図8Cに示すように、シリンダ収容部分71の上面の標識75Bが露出して視認可能となる。
一方、図6Aに実線で示すように第2係止片66がロック位置にあるときは、第2係止片66がホルダ55の係止孔60aに係止されて保持されるので、図8Aに示すように、標識75A,75Bは露出しない。これにより、パニア14が車体に取り付けられていることを目視で容易に確認できる。ただし、第2操作部材68の上面の標識75Aおよび蓋部材24の上面の標識75Bの一方のみが設けられてもよい。また、標識75A,75Bはなくてもよい。
つぎに、本実施形態のパニア14の作用を説明する。図2に示すパニア14を車体から取り外す際、またはパニア14の蓋部材24を開ける際、シリンダ69のキー孔69aにキーを差して、回転方向R1に回す。ここで、左右のパニア14において、キーの回動方向R1が同じとなるように設定されている。シリンダ69はパニア14の後端部に設けられているので、キー操作は車体の後方から行われるが、左右のパニア14で同じ方向にキー操作できるので、操作性がよい。ただし、キーの回動方向は、左右のパニア14で異なるように設定されてもよい。
シリンダ69を回転方向R1に回すことで、ロック位置からパニア取外位置およびパニア開放位置になる。これにより、パニア14の車体からの取り外し、蓋部材24の開放が可能となる。パニア開放位置では、第1操作部材50を車幅方向内側に移動可能となる。第1操作部材50がパニア14の後面に設けられており、且つ、蓋部材24が後方から前方に向かって開くので、車体の後方から蓋部材24の開閉操作が行い易い。したがって、キー操作から蓋部材24の開閉操作までの操作性がよい。
パニア取外位置では、第2操作部材68が後方に移動可能となる。第2操作部材68がパニア14の後部に設けられ、且つ、持ち手30がパニア14の後面に設けられているので、パニア14の取り外し操作を後方から行い易い。このように、本実施形態では、キー操作、蓋部材24に開閉操作、パニア14の取り外し操作の全てを後方から容易に行うことができるので、操作性がよい。
また、トップケース20が設けられる場合、トップケース20の蓋部材も後方から前方に開くようにすることで、パニア14とトップケース20の両方を後方から操作できるようになり、一層操作性がよくなる。
上記構成によれば、図2のシリンダ69の回動操作で、パニア14の車体からの着脱と蓋部材24の開閉の両方をロックできる。したがって、個別にロック構造が設けられる場合に比べて、部品点数が低減するうえに、操作性も向上する。
また、図8Bおよび図8Cに示すように、シリンダ69がロック位置にないことを示す標識75A,75Bが設けられているので、着脱機構54のロック状態を視認できる。これにより、ロックしていない状態で、車両を走行させるのを回避できる。
開放阻止部42が、ケース本体22に対して蓋部材24が開いた状態で、シリンダ69がロック位置にあるとき、シリンダ69と当接することで、蓋部材24が閉まることを防ぐ。これにより、蓋部材24が閉じることができなければ、蓋部材24が開いた状態でのロック位置であることを認識しやすく、蓋部材24を閉じた状態でのロック操作を利用者に促すことができる。
図6Aに示すシリンダ69およびホルダ55は、第3の被支持体38に近接して配置されている。これにより、第2係止片66と第3の被支持体38の距離が短くなるので、係止片66が大形化するのを防ぐことができる。
第2係止片66およびシリンダ69は、図2に示すリヤフレーム2と収容空間S1との間の領域に配置されている。これにより、第2係止片66およびシリンダ69がケース本体22よりも車幅方向内側に配置されるので、車体横転時に第2係止片66およびシリンダ69が損傷するのを防ぐことができる。
また、図6Aに示すように、第2係止片66およびシリンダ69は、蓋部材24に形成されたシリンダ収容部分71に設けられている。このように、第2係止片66およびシリンダ69を蓋部材24に設けることで、ケース本体22に設けるのに比べてパニア14の外方に露出した位置に配置しやすい。これにより、シリンダ69にアクセスしやすく、操作性がよい。
さらに、第2係止片66を移動させる第2操作部材68が設けられている。これにより、運転者が第2操作部材68を用いて第2係止片66を移動させことができるので、パニア14を車体に対して着脱する際の操作性がよい。
図2に示す蓋部材24が、車体搭載状態で後方から前方に開くように構成されているので、走行中に蓋部材が開き難い。しかも、ケース本体22の後面に持ち手30が設けられているので、蓋部材24の開閉操作、パニア14の取り外し操作を車体の後方から行い易く、操作性がよい。また、運転者が走行中に蓋部材24の開閉操作を行うのを抑制できる。
図6Aに示すシリンダ69は、軸心AXが上下方向に延びて上面が露出しており、軸心方向から見てパニアステー16と部分的に重なっている。このように、パニアステー16の上方にシリンダ69を配置することで、シリンダ69を設けたことにより収容空間S1が小さくなるのを防ぐことができるとともに、車幅方向寸法が大きくなるのを抑制できる。
シリンダ69および第2操作部材(第2操作片)68に隣接した位置に、持ち手30が形成されることで、パニア14のロック解除動作と、持ち手30を利用したパニアの移動動作とを行い易くすることができ、利便性を向上させることができる。持ち手30が、パニア14の持ち運びとともに、パニア14のパニアステー16に対する着脱動作の際のパニア移動のために用いることができ、それぞれ個別に持ち手30を形成する場合に比べて、構造を簡単化することができる。
シリンダ69および第1操作片50に隣接した位置に、つまみ部が形成されることで、蓋部材24のロック解除動作と、つまみ部を利用した蓋部材24の開閉動作とを行い易くすることができる。また、ケース本体22の持ち手30と、蓋部材24のつまみ部とが上下方向に並ぶことで、パニア14の移動動作と、蓋部材24の開閉動作とを行い易くすることができる。
各操作片50,68およびシリンダ69が、パニア14のうちで車幅方向内側寄りに配置される。これによって、乗物が障害物に近接・接触したとしても、各操作片50,68が障害物に接触することを防いで、各操作片50,68などの損傷を防ぎやすくすることができる。
ロック位置でないと、キーを抜き差しできないように構成されているので、キーが抜かれた状態で、ロック解除位置に維持されることが阻止される。これによってシリンダ69からキーが外された状態では、必ずロック状態となることから、盗難防止性を向上させることができる。ホルダ55とシリンダ69とが近接した位置に配置されることで、第2係止部材66の大形化を防ぐことができる。
蓋側つば部分がパニアステー16の上方にラップ配置されることで、パニアステー16と、シリンダ69等が車幅方向に並ぶ場合に比べて、パニア14の車幅方向の大形化を防ぐことができる。
第1操作片50、第2操作片68およびシリンダ69が蓋側に設けられることで、ケース本体側に設けられる場合に比べて、上方寄りに配置でき、操作者による操作をし易くすることができる。蓋側にシリンダ69が設けられることで、蓋が開いた状態でロック//ロック解除操作が行われることを防ぐことができる。
収容空間S1の外側に、各種機構が設けられるので、収容空間S1内の凹凸を減らし、物品の取り出しを円滑に行い易くすることができる。第1係止部材104、第2係止部材66が、収容空間S1の外側に配置され、収容空間S1と仕切られた空間に配置されることで、物品と各係止部材104、66の接触を防いで、物品が係止部材104、66の移動を阻害することを防ぐことができる。
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。第1係止部材104と第2係止部材66とが単一部材で形成されてもよい。例えば、パニア14の車幅方向内側であって、第2操作部材68と一体に第1係止部材104が形成されてもよい。着脱解除状態と開閉可能状態との操作を1つの操作片で行うような構造であってもよい。これによって、さらに部品点数を削減することができる。
ロック位置にないことを警告表示するほか、ロック位置にあることを標識75で表してもよい。キー孔69aは、シリンダ69から離れた位置に配置されてもよい。この場合、キー孔69aが設けられるシリンダと、そのシリンダからの回転力を係止片のロックに利用するシリンダに伝達する回転力伝達機構(例えば、ケーブル)が設けられる。パニア14の前端で車幅方向内側寄りにシリンダ69が配置されてもよい。この場合、第1係止部材104および第2係止部材66も同様にパニア14の前側に位置する。
ヒンジ40と反対側に第1係止部材が設けられることで、蓋部材25の開きを防ぎ易くすることができる。第2操作部材68が蓋側、第2係止部材66がケース側にそれぞれ設けられることで、操作性と取付時の強度とを両立し易くすることができる。また、第1係止部材のうち、操作部分以外が蓋部材24に収容されることで、係止部材の移動にあたって、物品や障害物による干渉を防ぐことができる。
パニア14は、乗物の外方に露出する部分に搭載されることが想定される。これによって乗物の周囲からパニア14内の物品を取り出したり、パニア14を乗物から取り外してパニア14ごと物品を移動させたりすることができる。本実施形態の乗物は、一例であって、本発明が適用される乗物は、自動二輪者以外であってもよい。例えば、乗物は、自転車、三輪車等の鞍型車両のほか、車内空間を覆うボディが除かれたオープンカーや作業車などであってもよい。
本実施形態のパニア14は、乗物の左右両側に設けられるとしたが、いずれか一方のみに設けられる場合も本発明に含まれる。また左右両側以外の位置、例えば乗物上方位置に設けられる場合も、本発明に含まれる。