JP2022112826A - 農作物の栽培方法 - Google Patents

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Hiroshi Okada
良晴 木村
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Abstract

【課題】栽培室内にヒトが比較的速やかに出入り可能にして効率よく農作業が可能であり、しかも抗微生物性が栽培期間中に適時に作用し、農作業者が安全にかつ効率よく、しかも高い衛生環境が保たれる農作物の栽培方法とすることである。【解決手段】抗微生物剤を含むエアロゾルを農作物の栽培室内に充満させ、前記抗微生物剤が有効に作用する状態で農作物を栽培する方法であって、前記抗微生物剤が、ポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)を有効成分として含有し、キトサン溶液で希釈された液状の抗微生物剤とする。前記抗微生物剤を含むエアロゾルは、前記栽培室内の雰囲気中に分散させている状態、または前記農作物もしくは前記栽培室内に存在する物の表面に前記エアロゾルの液体粒子が付着している状態とし、農作業者が効率よく安全に栽培室内に立ち入って作業できる。【選択図】なし

Description

この発明は、農作物を閉鎖された環境で衛生的に栽培する方法に関し、例えば植物工場などのような栽培室内で行われる農作物の栽培方法に関する。
一般に、農作物の栽培を屋外の自然環境で行なう栽培方法に対し、植物工場やビニールハウスなどのように屋内の閉鎖された環境で、温度、湿度、雰囲気などが調整された雰囲気下で行なう農作物の栽培方法が周知である。
ただし、栽培環境が充分に閉鎖されていなければ、栽培される野菜、果物、穀物類には腐敗細菌等が付着する機会があり、細菌などの微生物は、殺菌未処理の土壌や肥料、水にも常在しており、偶発的に侵入する野鳥や昆虫等の動物からの汚染などもあり、通常、これらの微生物の汚染機会を完全に避けることは難しい。
例えば、密閉された稲作プラントとして、砂漠などの極限の環境でも栽培できるように、地中または地上に設けられた工場建物の本体と、密閉型の植物栽培装置とを備え、密閉された空間でLED光を照射し、かつ雰囲気ガス制御装置によって酸素濃度、二酸化炭素濃度、湿度及び温度を制御し、さらに葉の表面のガス交換のための送風装置と、淡水の紫外線殺菌装置やオゾン酸化浄水装置を備えた植物工場が知られている(特許文献1)。
このような植物工場では、植物栽培に有害な雑菌を同工場内に持ち込まないようにするために、細心の注意が払われる。例えば、栽培のために入場する作業者の衣服や靴に、病原体、カビの胞子、藻類の胞子体、害虫の卵等が付着しないようにすることも重要である。
また、栽培を終えた栽培ポットを繰り返して使用する場合には、消毒や滅菌を行うことが推奨される。例えば、次亜塩素酸水溶液にて加熱洗浄することは好ましい(特許文献1の段落[0078])。
ここで、殺菌や滅菌に用いられる公知の抗微生物性製剤の有効成分として、ポリヘキサメチレンビグアナイド(以下、PHMBと略記する。ポリアミノプロピルビグアニドとも別称される。)が知られている(特許文献2)。
PHMBの抗微生物性は、ほとんどの微生物において負に帯電している細胞膜に結合し、これを物理的に破壊して細胞膜の代謝を阻害し、細菌を殺滅するという殺菌作用があることに基づき、その殺菌力は、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムと同程度である。
ただし、PHMBは、アルコールなどに比べて低刺激性であり、また皮膚などに付着しても安全性が高いので、コンタクトレンズの洗浄液や入浴施設の除菌剤としても利用されてきた。
特開2017-023022号公報 特開2009-506128号公報
しかしながら、これまでにPHMBを含めた消毒剤の有効性と安全な空間噴霧方法について、科学的に確認が行なわれた例がなく、現状では空気中に微細な粒子が長時間滞留させるような使用方法は避けられている。
そのため、植物工場などにおいても栽培対象の植物の生育を阻害する病原菌やカビなどの微生物防除処理を行なう場合に、抗菌剤などを微粒子状に噴霧して使用することは、これまでに行われていなかった。
一般的には、閉鎖された環境内に人が立ち入っていない時に限って、殺菌消毒剤を噴霧して微生物防除処理する場合や、紫外線殺菌装置やオゾン発生装置を用いて壁面や装置の表面または前記環境の雰囲気を浄化できることが知られている。
但し、紫外線は、ヒトの皮膚に対して障害を及ぼしやすい光線であり、またオゾンガスも呼吸器等に対して刺激があり、生理作用に害を及ぼす場合もあるから、有人環境においては、これらの殺菌装置の機能は一時的に停止して環境内に立ち入る必要があった。
しかし、微生物防除機能を一時的に停止して作業等を行なうとき、作業者の衣服などに残存した微生物からの環境汚染は避けられない。例えば、塵埃の付着しにくい服を着用し、エアシャワーなどの防除装置などを利用しても、微生物を室外から室内に持ち込む可能性を全く無くすことは困難である。
そこで、この発明の課題は、上記した問題を解決し、農作物の栽培室内で抗微生物剤を栽培期間中に適時に有効に作用させることができ、前記栽培室内にヒトが安全にかつ効率よく比較的速やかに出入り可能にし、微生物の存在を極力排除した高い衛生環境の保たれる環境内での農作物の栽培方法とすることである。
また、前記特定の抗微生物剤の殺菌・消毒の用途を、農作物の栽培という分野にも拡大できるようにすることである。
上記の課題を解決するために、この発明では、抗微生物剤を含むエアロゾルを農作物の栽培室内に充満させ、前記抗微生物剤が有効に作用する状態で農作物を栽培する方法であって、前記抗微生物剤が、ポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)を有効成分として含有し、キトサン溶液で希釈された液状の抗微生物剤であることを特徴とする農作物の栽培方法としたのである。
PHMBは、エアロゾルの状態となって空中に分散している状態、または農作物やその他の物に付着した状態で、直接的にまたは間接的に、周囲の雰囲気のカビ等の雑菌や農作物の感染しやすい病原菌やウイルス、またはダニなどの害虫類を含めた微生物類に対し、その生育や繁殖を含めた生理的機能を抑制または停止させる機能があり、長期間有効に抗微生物性を発揮する。
また、PHMBは、カチオン性であることによる細菌細胞膜(負に帯電するリン脂質)への静電的結合性がある。
前記抗微生物剤は、PHMBを有効成分として含有すると共に、キトサン溶液で希釈された液状の抗菌剤であるので、キトサンの各種酸性物質への吸着性及びアミノ酸による高分子電解質としての生体親和性を有し、また生体との良好な付着性も作用して、微生物を極めて効率よく有効に防除することができる。
また、PHMBが噴霧されて空気中にエアロゾルとして存在するとき、キトサンとの併用によって高められたエアロゾル粒子の吸着性によって、ヒトの気管や肺に到達する前に周囲に付着しやすく、例えば鼻や喉の粘膜に付着して体外に容易に排出されやすいので、より安全である。またエアロゾルの粒径を、所要程度に大きくするように調整すれば、さらに安全性を高めることができる。
また、この発明に用いる抗微生物剤は、ヒトの皮膚や物に対する静電力によって付着性があり、また生体親和性によっても付着性が優れている。そのため、液状の抗菌剤を密閉された室内雰囲気中に噴霧すると、エアロゾルの状態で抗微生物性があり、さらに前記エアロゾルに触れた農作物もしくは前記室内に存在する農作物以外の物の表面に、前記エアロゾル粒子が付着した状態において、約1週間程度の長時間に亘って抗微生物性が認められる。
この発明に用いる抗微生物剤は、PHMBにキトサンを併用した場合に、キトサンを併用しない場合よりもPHMBを比較的低濃度で効率よく有効に作用させることができ、ヒトが抗微生物剤を吸入することによる危険性も大きく低減させ、より安全に抗微生物剤を使用することができる。
したがって、上記エアロゾルを農作物の栽培室内に導入する態様として、PHMBにキトサンを添加したエアロゾルを前記栽培室内に充満させるように導入すること、または前記エアロゾルの液体粒子を前記農作物もしくは前記栽培室内に存在する物の表面に付着させるように導入するという態様を採用することが好ましい。
このようにして所定の抗微生物剤を含む液状抗菌剤をエアロゾルの状態で栽培室内に噴霧し、前記抗菌剤の有効性が持続している状態で栽培室内にて農作物を栽培すると、農作物を収穫可能な状態まで長期間にわたって実質的に略無菌状態で栽培することができる。
また、上記エアロゾルを農作物の栽培のために好ましくは閉塞された空間、または密閉された栽培室内に導入することが、上記農作物を栽培する期間中に連続して行われてもよく、または前記農作物を栽培する期間中に間欠的に行なわれてもよい。
前述のように、PHMBを比較的低濃度でも効率よく有効に作用させるために、上記液状の抗菌剤が、ポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)を1~10000ppm(10-4質量%)含有する液状の抗菌剤の態様で使用することが好ましい。
抗菌剤の希釈に用いるキトサン溶液は、水溶性キトサン溶液であってもよく、またはキトサンを乳酸に溶解したキトサン溶液であってもよい。
この発明は、室内で農作物を栽培する場合に、抗菌剤としてポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)を有効成分とし、キトサン溶液で希釈された液状の抗菌剤を採用し、抗微生物剤を栽培室内にエアロゾルの状態で導入したので、抗微生物剤の作用を持続的に発揮させながら、農作物の栽培室内で抗微生物剤を安全に且つ有効に作用させることができる。そのため、前記栽培室内にはヒトが必要に応じて出入り可能になり、効率よく農作業ができる。
したがって、農作業者が安全にかつ効率よく、しかも高い衛生環境が保たれるように農作物を栽培できる利点がある。
また、前記特定の抗微生物剤の殺菌・消毒の用途を、農作物の栽培という従来よりも広い分野に拡大することができる利点もある。
実施形態の農作物栽培方法の栽培プラントの概略構成を模式的に示す斜視図 検体A、原体及び陽性コントロールに対するPCRサイクル数と蛍光量(RFU)との関係を示す図表 検体B、原体及び陽性コントロールに対するPCRサイクル数と蛍光量(RFU)との関係を示す図表
この発明の実施形態を以下に添付図面を参照して説明する。
図1に示されるように、実施形態の農作物の栽培方法は、水稲の栽培プラントを用いたものであり、水稲Aを播種から成熟までの育成が可能であるように、前記栽培プラントは、上方に空間を設けて複数段に配置される水耕栽培用の水槽2と、光合成有効波長域の光を照射可能なLED照明装置3と、育成に所要の養液を供給する送液装置4と、少なくとも二酸化炭素濃度を調整可能な送気装置5と、抗微生物剤を含むエアロゾルを農作物の栽培室6内に充満させる噴霧装置9とを備えている。
なお、図中の各装置に供給される電源等の駆動システムについては、図示を省略している。
容器1内には、水以外の育成媒体を保持する水槽2以外の栽培槽を配置してもよく、例えば育成媒体が、ゲル等の半固体状や粉粒体、スポンジ状や多層体状等の天然土壌または人工土壌である場合には、ポットやプランターまたは溝状の栽培槽を配置して土壌栽培を行なうこともできる。
土壌栽培を行なうには、水槽2に代えて前記栽培槽内に稲作に適した所要の保水性を有する土壌を、例えば3~20cm程度の厚さに適量収容して栽培することが好ましい。
LED照明装置3は、多数のボタン型の光源が板状の基台に1列以上固定された状態で等間隔に配置されているものを図示したが、他の周知形態の光源が適宜に配置されたLED照明装置であってもよい。LED照明装置3は、図外の制御装置において、照射光の強度や波長および照射時間などを制御用コンピュータの利用により電子制御することもできる。
水耕栽培に所要の成分を含有する養液は、水槽2内に配管4aを介して送液装置4から供給されており、水槽2内の要所には、養液を攪拌または循環もしくは還流させるための流量および流速が調整可能であるように、水中ポンプ等の攪拌・循環装置(図外)が設置されている。
前記養液は、栽培用容器内に保持される媒体が、主に水である水耕栽培の場合は液状であるが、前記媒体が土壌である場合には、液状の他に塊状、粉粒体状等の固形状、半固形状などであってもよい。
また、このような養液を供給するための装置は、養液を供給する溝又は管状の流路を備えた送液装置、またはベルトコンベア等による固形物等の搬送路及びその散布装置を備えた養液供給装置を用いることができる。
養液の組成については、例えば窒素成分としてアンモニア態窒素(NH4-N)と硝酸態窒素(NO3-N)の割合を施用時期に応じて変化させ、その他に比較的多量にP、K、Ca、Mgや、比較的少量のMn、B、Fe、Cu、Zn、Mo等を含む栄養成分を配合し、水稲の栽培に用いられる周知の処方を採用することが好ましい。
また、送気装置5は、栽培室6の外部に設置されたボンベ5bなどから供給される二酸化炭素ガスを、配管5aを介して個々の箱型の容器1内に分配し、その送気量は、電磁弁を利用した周知の制御機構により人為的に制御またはガス濃度センサー及び制御用コンピュータを用いた電子制御が可能である。
また、温度および湿度は、空調機(エアコンディショナー)8で調整される。空調機8から栽培室6内に給気されるガスや空気は、ヘパフィルター等でろ過されて除菌された状態である。
さらに、実施形態の水稲の栽培プラントを用いた栽培方法では、完全な無農薬米を育成するシステムに必要な栽培室6内の除菌された状態を作り出すために、殺菌や滅菌に用いる殺菌消毒剤として、ポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)を有効成分として含有する液状の抗微生物剤(FLC株式会社製:FLCリキッド)を適度に希釈し、噴霧装置9でエアロゾル(ミスト)化して栽培環境に導入している。
PHMBを有効成分として含有し、キトサン溶液等で希釈された上記液状の抗微生物剤は、PHMBを1~10000ppm含有することにより、この発明の抗微生物剤として有効な抗微生物性を発揮する。PHMBが上記数値範囲未満の低い濃度では、農作物の栽培を阻害する菌類等の微生物類の生育を阻止することが難しく、上記数値範囲を超える高濃度では、必要以上の抗微生物性によって実用性が低下するためである。
また、食品や農畜産物の腐敗や安全性に関係する菌類やウイルスの発育を阻止するために、より好ましいPHMB濃度は、4~8000ppm、さらには4~6000ppmであることが好ましく、主に食中毒等に関連する菌類及びウイルス類の防除に対応するには、4~200ppm、少なくとも4~40ppm、実用的には10~35ppmまたは10~30ppm程度の濃度であることが好ましい。
キトサンは、脱アセチル化されたキチンであり、種々の脱アセチル化度及び分子量のものを使用可能であるが、例えば脱アセチル化度が70%以上、好ましくは80%以上であり、分子量が5×105~5×106(g/mol)のものを用いて良好な結果を得ている。
溶液化されたキトサンとしては、カルボキシメチルキトサンを親水性成分に溶解した水溶性キトサン溶液を用いることが可能であり、またキトサンを乳酸に溶解したキトサン溶液などを用いることもできる。
キトサンを乳酸以外の酸に溶解するには、無機酸として、例えば塩酸、硫酸、リン酸などの希酸を用いることができ、有機酸としては、例えば低分子量カルボン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸などを用いることができる。
特にこの発明に好ましいキトサン(ユニット分子量;151)と乳酸(分子量;90)との混合比(モル比)は、0.7~0.9である。
キトサンと乳酸との混合物は、配合されたPHMBを比較的低濃度で効率よく有効に作用させることができ、しかも静電力及び生体親和性によって生体や物への付着性を高めていて、ナノレベル(1nm~1μm未満)またはミクロンレベル(粒径1μm以上1000μm未満)の微細粒子を分散したエアロゾルの状態でもヒトに対する安全性が高い。
また、エアロゾルにおける液体粒子(ミスト)の粒径を調整するには、周知の超音波霧化技術を利用することができる。例えば200~3000KHz程度のような数百から数千kHzの超音波を液面下部から照射すると、気液界面から平均粒径10μm以下の微小な超音波ミストを発生させることができる。また、平均粒径10μmを超えるミストは、超音波霧化技術だけでなく、加熱蒸気式の霧化によっても生成できる。
前述のように、本願の発明に用いる液状の抗微生物剤は、有効成分のPHMBを、例えば30~50ppmまたはそれ以下に低濃度で有効に作用させることができるので、人が吸入した場合にも安全性の高いものであり、前記ミストの粒径を所要程度に大きくするように調整すれば、より安全性をより高めることができる。
またミストの粒径は、特に安全上の支障がない限り、できれば10μmより微小な粒径にすれば、農作物の表面を濡らすことがなくなり、葉や実等が互いに水濡れにより付着して剥がれにくくなることもなく、農作業の効率を高めることができる。このような理由から、より好ましいミストの平均粒径は、10μm以下(例えば1~10μm)であり、さらに好ましくは1~8μmである。
この発明に用いる抗微生物剤において、有効成分のPHMBとキトサン溶液との配合割合は、防除対象とする菌類やウイルス等の発育や増幅を阻止する濃度(以下、発育阻止濃度という)を目安にして調整する。例えば、代表的な菌類やウイルス類に対するPHMBによる発育阻止濃度は、以下の表1に示す通りである。
Figure 2022112826000001
図1中に示される噴霧装置9は、液状の抗微生物剤を収容するタンク9aを備えていると共に、液体を超音波で振動させる等の周知の機構によって、微細な液体粒子を空気中に発散させる噴霧機能を有する装置であり、電気駆動の市販の加湿装置を利用することができる。
具体的には、上記所定の抗微生物剤を噴霧装置9のタンク9aに水で希釈した状態で収容し、多ノズル式スプレーヘッド10から噴霧して発生するエアロゾルを栽培室6内の全体に充満させ、雰囲気に適度の湿度を保ちながら栽培室6内の空間に浮遊するウイルスや雑菌等の微生物等を駆除し、さらに栽培室内に存在するエアロゾルを物の表面に付着させる。
このようにすると、一時的に栽培室内にエアロゾルが存在しなくても物の表面で抗微生物剤が有効に作用するので、間欠的にエアロゾルを導入するという栽培方法を採用した場合でも効率よく長期的に抗微生物性の効果が持続する。
上記のエアロゾルが付着する対象物の例としては、容器1、水槽2、LED照明装置3、送液装置4、給排気装置7、空調機8等が挙げられ、これらの物の表面にエアロゾルは粒子形状を保って付着するか、または液膜となって付着する。
なお、植物育成に所要の二酸化炭素以外のガスや空気は、栽培室内が大気圧よりも若干高くなるように給排気装置7で正圧に制御する。これにより栽培室6内へ外部からの微生物の侵入をより確実に防止することができる。
また抗微生物剤を間欠的に噴霧することにより、PHMBの有効性を持続させながら、作業者はエアロゾルを吸入しないタイミングで作業できる。
上記のように構成される栽培室6は、微生物が栽培に従事する作業者に付着して植物工場内に持ち込まれたとしても、微生物は植物工場内の雰囲気に接触して死滅し、または植物工場内の装置や農作物などの表面に付着している抗微生物剤に接触した際にも死滅するから、作業者の出入りする時にエアシャワーなどの予備的な防除設備は必ずしも必要ではなくなる。
また、PHMBという特定の抗微生物剤の殺菌・消毒薬の有効成分としての用途を、閉鎖環境内でのエアロゾルの噴霧という態様で植物工場などに拡大できる。
植物工場で水稲などの穀物を生産し、さらに収穫される穀物だけでなく、副産物としての籾殻からバイオシリカを抽出する場合には、原材料のもみ殻を焼成する前に、栽培時に付着した有機成分や微生物等の除去の目的で洗浄処理することが必要である。
その場合、PHMBを用いて無農薬栽培されたもみ殻を用いれば、安全性を高めて前記洗浄処理を省力化または高効率化することが可能になり、生産されるバイオシリカの衛生面での信頼性も格段に高められる。
また、上記抗微生物剤を用いて栽培中または収穫された後の穀物、野菜、果物類に対して、バチルス属細菌などの腐敗細菌根やその他の微生物やウイルスに汚染されないようにするには、前述したように植物工場内または付設される関連施設内などに散布する。その場合、壁や床等の室内全体、エアコンのフィルターに塗布または散布することが好ましく、また上記抗微生物剤の水溶液をエアロゾルの状態で加湿を兼ねて散布することが好ましい。
このような態様で使用することによって、例えば栽培する種子や、収穫物の洗浄機器、容器などの包装材、カット処理器具、加工や調理用の器具、施設内に侵入する昆虫その他の動物に付着している可能性がある腐敗細菌等の微生物やウイルスについても防除や不活化が可能になる。
前記液状の抗微生物剤(FLC株式会社製:FLCリキッド)は、ポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)を有効成分として含有し、効果的に細菌やウイルスの活動を抑制できるものであり、ポリマー状態の除菌剤であるため、ヒトの細胞には取り込まれにくく、安全性も高いという特長を有している。
この抗微生物剤の特定ウイルス種に対する不活化による施設内やその他の室内空間についての防除有効性を確かめるため、新型コロナウィルス(COVID-19)を評価対象として採用し、以下の試験条件でのPCR反応検査を行なった。
〔PCR反応検査〕
-80℃で保存されている新型コロナウイルス(COVID-19 サンプル)を解凍したものを原体とし、室温23℃、湿度35%の環境下でリアルタイム(RT)-PCR反応検査を行なった。
評価対象の液状の抗微生物剤(FLC株式会社製:FLCリキッド Undiluted)を精製水にて4%及び2%に希釈し、各希釈液と上記解凍された液状の原体とを質量比で1:1に混合し、その直後の混合物を抗微生物剤濃度に応じて検体A(前記抗微生物剤を2質量%含有する検体)及び検体B(前記抗微生物剤を1質量%含有する検体)とした。
この検体A、Bに対し、タカラバイオ社製のRT-qPCR Kitの試薬を用い、核酸抽出処理後に、バイオ・ラッド社製のリアルタイムPCR装置を用いて以下の反応条件で新型コロナウイルスに対するPCRによる通常の検査方法を行ない、蛍光色素Cy5による蛍光量(RFU)検出により測定された増幅曲線を評価した。
逆転写反応の反応条件は、52℃で5分、95℃で10秒とした。またPCRサイクルは、45サイクルまで検査し、各サイクルは、95℃で5秒、60℃で30秒とした。
判定基準として、検体の評価は、Cq値>40または不検出(N/A)で正常であるとし、Cq値≦40で陽性であると評価した。なお、陽性コントロールは、Cq値≦30で正常とした。
これらの検体A、B及び陽性コントロール(試薬)の初期ウイルス量からのPCRサイクル数に応じた増幅産物量を相対的に示す増幅曲線を図2及び図3に示した。
図2に示される結果からも明らかなように、検体A(前記抗微生物剤を2質量%含有する検体)は、PCRサイクルが40回を超えても増幅産物の相対量の増加が認められず、不検出であった。このことから、COVID-19サンプル中の新型コロナウイルスは、抗微生物剤(FLC株式会社製:FLCリキッド Undiluted)の実質2%希釈の溶液に接触した直後に不活化されていたことが確認された。
また、図3に示される結果からも明らかなように、検体B(前記抗微生物剤を1質量%含有する検体)は、PCRサイクルが40回未満(Cq=38.52)まで増幅産物の相対量の増加が認められなかった。このことから、COVID-19サンプル中の新型コロナウイルスは、抗微生物剤(FLC株式会社製:FLCリキッド Undiluted)の実質1%希釈の溶液に接触した直後に不活化されていたことが確認された。
以上の結果から、前記液状の抗微生物剤(FLC株式会社製:FLCリキッド)を1/100程度に水で希釈した1%程度またはそれ以上の濃度の希釈液は、新型コロナウィルス(COVID-19)を不活化することを確認した。
太陽光が遮蔽され大気圧より若干高い正圧に制御された栽培プラントの室内に、3段の栽培用棚を設置すると共に各段に水耕栽培用の栽培用容器を配置し、別途設けた水タンクに栄養成分を配合した養液を適宜に供給し、水耕栽培用の水槽へポンプで前記養液を送ると共に、送液の流路にナノレベル(粒径1μm以下のナノメートル単位のもの)の気泡が混入可能な気液混合装置を接続し、水素及び空気がナノレベルの気泡として混入されている養液を収容した水槽中に、水稲を播種し、太陽光スペクトル再現性白色LED照明装置(東芝マテリアル社製:TRI-R)から光合成有効波長域(波長400~700nm)の光を照射し、成熟期まで栽培した。
栽培室内の気温及び養液の水温は、25~32℃を目安にして至適温度に調整し、湿度及び二酸化炭素濃度を殺菌浄化機能付きの送気装置で調整し、さらにPHMBを有効成分として30ppm(10-4質量%)含有するように原液の殺菌消毒剤(水溶性キトサンとPHMBが0.3質量%配合され、中性域にpH調整されて残部に水を加えて100質量%に調製されたもの)を水で希釈し、これを空気中に液状のエアロゾル(平均粒子径5.0~8.0μm)として超音波式噴霧装置で3時間毎に30分間噴霧することにより栽培室内に間欠的に充満させ、この状態を持続させて前記栽培を行なった。
上記のように栽培された前記矮性品種は、栽培槽内で播種から生長した主茎から分枝した分蘖が2週間以内で開始された。また有効分蘖開始期から無効分蘖期までを4週間で終えることができ、さらに幼穂を形成し、開花、登塾、成熟期となって収穫までを8週間で終了させることができた。
上記実施例の栽培結果から、得られた水稲の表面には、ほぼ無菌状態であることが、微生物培養検査によって確かめられ、全く有機農薬などを用いることなく、ほぼ無菌状態で水稲を栽培することが可能であった。
1 容器
2 水槽
3 LED照明装置
4 送液装置
4a 配管
5 送気装置
5a 配管
5b ボンベ
6 栽培室
7 給排気装置
8 空調機
9 噴霧装置
9a タンク
10 多ノズル式スプレーヘッド
A 水稲

Claims (5)

  1. 抗微生物剤を含むエアロゾルを農作物の栽培室内に導入し、前記農作物を衛生上有害な微生物から防除した状態で栽培する方法であって、前記抗微生物剤が、ポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)を有効成分として含有し、キトサン溶液で希釈された液状の抗微生物剤であることを特徴とする農作物の栽培方法。
  2. 前記エアロゾルを農作物の栽培室内に導入することが、前記エアロゾルを前記栽培室内に充満させるように導入することである請求項1に記載の農作物の栽培方法。
  3. 前記エアロゾルを農作物の栽培室内に導入することが、前記エアロゾルの液体粒子を前記農作物もしくは前記栽培室内に存在する物の表面に付着させるように導入することである請求項1に記載の農作物の栽培方法。
  4. 前記エアロゾルを農作物の栽培室内に導入することが、前記農作物を栽培する期間中に連続して導入すること、または前記農作物を栽培する期間中に間欠的に導入することである請求項1~3のいずれかに記載の農作物の栽培方法。
  5. 前記液状の抗微生物剤が、ポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)を1~10000ppm含有する液状の抗微生物剤である請求項4に記載の農作物の栽培方法。
JP2021008793A 2021-01-22 2021-01-22 農作物の栽培方法 Pending JP2022112826A (ja)

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