JP2022102122A - 医薬組成物及びピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法 - Google Patents

医薬組成物及びピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ピレンゼピン塩酸塩水和物と制酸剤とを組み合わせる配合剤において、ピレンゼピン塩酸塩水和物の安定性に優れる医薬組成物及びピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法の提供。【解決手段】(A)成分:ピレンゼピン塩酸塩と、(B)成分:制酸剤と、(C)成分:スクラルファート水和物とを含有する、医薬組成物。(A)成分:ピレンゼピン塩酸塩水和物と、(B)成分:制酸剤と、を含有する医薬組成物における前記ピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法であって、前記医薬組成物に、(C)成分:スクラルファート水和物を配合する、ピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法。【選択図】なし

Description

本発明は、医薬組成物及びピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法に関する。
胃酸分泌を抑制する薬物であるピレンゼピン塩酸塩水和物は、胃腸薬等の医薬組成物に含有される薬効成分である(例えば非特許文献1参照)。
胃炎・消化性潰瘍治療剤 ガストロゼピン(登録商標)錠25mg、医薬品インタビューフォーム、2011年4月(改訂第5版)
ピレンゼピン塩酸塩水和物は、単独では長期間安定な成分であるが、水酸化マグネシウム等の制酸剤と組み合わせる配合剤では安定性が低下しやすく、加水分解により医薬組成物中のピレンゼピン塩酸塩水和物の含有量が低下してしまう。
また、ピレンゼピン塩酸塩水和物を含有する医薬組成物は、例えばアルミガセット袋やビンに収容されるが、アルミガセット袋やビンの開封後は、吸湿によりピレンゼピン塩酸塩水和物が加水分解しやすい。
本発明は、ピレンゼピン塩酸塩水和物と制酸剤とを組み合わせる配合剤において、ピレンゼピン塩酸塩水和物の安定性に優れる医薬組成物及びピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を有する。
[1] (A)成分:ピレンゼピン塩酸塩水和物と、
(B)成分:制酸剤と、
(C)成分:スクラルファート水和物と、
を含有する、医薬組成物。
[2] 日本薬局方で規定される制酸力試験法によって求められる、前記医薬組成物中の前記(B)成分由来の制酸力が50~1000mLである、前記[1]の医薬組成物。
[3] 前記(B)成分が、水酸化マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウムから選ばれる1種以上を含む、前記[1]又は[2]の医薬組成物。
[4] (A)成分:ピレンゼピン塩酸塩水和物と、
(B)成分:制酸剤と、
を含有する医薬組成物における前記ピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法であって、
前記医薬組成物に、(C)成分:スクラルファート水和物を配合する、ピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法。
本発明によれば、ピレンゼピン塩酸塩水和物と制酸剤とを組み合わせる配合剤において、ピレンゼピン塩酸塩水和物の安定性に優れる医薬組成物及びピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法を提供できる。
[医薬組成物]
本発明の医薬組成物は、以下に示す(A)成分と(B)成分と(C)成分とを含有する。医薬組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外の成分(任意成分)をさらに含有してもよい。
<(A)成分>
(A)成分は、ピレンゼピン塩酸塩水和物である。
ピレンゼピン(11-[(4-methylpiperazin-1-yl)acetyl]-5,11-dihydro-6H-pyrido[2,3-b][1,4]benzodiazepin-6-one)塩酸塩水和物は、ムスカリン受容体のM1選択的遮断薬(M1ブロッカー)であり、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期や、びらん、出血、発赤、付着粘液並びに消化器症状の改善に有効である。
医薬組成物中の(A)成分の含有量は、ピレンゼピン塩酸塩水和物として通常治療で用いられる範囲となるように適宜選定され、例えば以下の通りである。
医薬組成物の1日当たりの服用量中の(A)成分の含有量は、10~100mgが好ましく、30~50mgがより好ましい。
医薬組成物の総質量に対する(A)成分の割合は、0.1~30質量%が好ましく、0.5~15質量%がより好ましい。
<(B)成分>
(B)成分は、制酸剤である。
本発明において、制酸剤とは、日本薬局方(第17局)で規定される制酸力試験法によって求められる制酸力が50mL以上であるものをいう。
日本薬局方(第17局)で規定される制酸力試験法によって求められる制酸力とは、1g当たりの0.1mol/L塩酸の消費量(mL)で示される。
(B)成分としては、例えば水酸化マグネシウム(制酸力:320~360mL)、乾燥水酸化アルミニウムゲル(制酸力:約300~340mL)、ケイ酸アルミン酸マグネシウム(制酸力:250~290mL)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(制酸力:210~250mL)、酸化マグネシウム(制酸力:460~500mL)、水酸化アルミナマグネシウム(制酸力:280~320mL)、炭酸水素ナトリウム(制酸力:100~140mL)、合成ヒドロタルサイト(制酸力:270~310mL)、炭酸マグネシウム(制酸力:200~240mL)、炭酸カルシウム(制酸力:180~220mL)、沈降炭酸カルシウム(制酸力:180~220mL)、水酸化カルシウム(制酸力:250~290mL)などが挙げられる。これらの中でも、即効的・持続的な胃酸中和効果を発現させる観点から、水酸化マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウムが好ましい。
(B)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
医薬組成物中の(B)成分の含有量は、制酸剤として通常治療で用いられる範囲となるように適宜選定され、例えば日本薬局方(第17局)で規定される制酸力試験法によって求められる、医薬組成物中の(B)成分由来の制酸力が50~1000mLとなる量が好ましく、(B)成分由来の制酸力が160~800mLとなる量がより好ましい。(B)成分由来の制酸力が上記範囲内となるような組合せであれば、1種類又は複数の(B)成分を組合せて用いることができる。(B)成分由来の制酸力が上記下限値以上であれば、胃腸薬としての効果発現に必要な胃酸中和力を有する。制酸力が上記上限値以下であれば、(A)成分の配合時の安定性の低下を、(C)成分を配合することでより容易に抑制できる。
なお、医薬組成物中の(B)成分由来の制酸力は、1日当たりの服用量における値である。
医薬組成物中の(A)成分の含有量(mg)/医薬組成物中の(B)成分由来の制酸力(mL)で表される含有比(以下、「A質量/B制酸力の比」ともいう。)は、0.01~2が好ましく、0.05~1がより好ましい。A質量/B制酸力の比が上記下限値以上であれば、(A)成分の配合時の安定性の低下を、(C)成分を配合することでより容易に抑制できる。A質量/B制酸力の比が上記上限値以下であれば、胃腸薬としての効果発現に必要な胃酸中和力を有する。
医薬組成物中の(B)成分由来の制酸力は、医薬組成物中の(B)成分の含有量と(B)成分の制酸力とを掛け算することで求めることができる。
<(C)成分>
(C)成分は、スクラルファート水和物である。
スクラルファート(ショ糖オクタ硫酸エステルアルミニウム塩)水和物は、粘膜炎症部のタンパク質と結合して炎症部を被覆・保護しながら修復する作用を有し、「胃の絆創膏」とも呼ばれる薬物である。
(A)成分と(B)成分とを組み合わせる配合剤において、(C)成分をさらに配合することで、(A)成分の安定性が高まり、(A)成分の加水分解が抑制されるので、医薬組成物における(A)成分の含有量の低下を効果的に抑制できる。加えて、医薬組成物が(C)成分を含有することで、胃の炎症部への効果に加えて、胃・十二指腸での粘膜保護効果により、胃酸の透過を抑制し、持続的に炎症を鎮めることができる。
なお、日本薬局方(第17局)で規定される制酸力試験法によって求められるスクラルファート水和物の制酸力は50mL以上であるが、本発明においては、スクラルファート水和物を(B)成分に含めないものとする。
医薬組成物中の(C)成分の含有量は、スクラルファート水和物として通常治療で用いられる範囲となるように適宜選定され、例えば以下の通りである。
医薬組成物の1日当たりの服用量中の(C)成分の含有量は、100~3000mgが好ましく、250~2000mgがより好ましい。
医薬組成物の総質量に対する(C)成分の割合は、10~70質量%が好ましく、20~65質量%がより好ましい。
また、(C)成分の含有量(mg)/(A)成分の含有量(mg)で表される含有比(以下、「C質量/A質量の比」ともいう。)は、1~50が好ましく、5~35がより好ましい。C質量/A質量の比が上記下限値以上であれば、(A)成分の安定性がより高まる。C質量/A質量の比が上記上限値以下であれば、錠剤サイズを抑制することができ、服用性に優れた錠剤とすることができる。
<任意成分>
本発明の医薬組成物は、上記(A)~(C)成分に加え、任意成分を含有することができる。任意成分としては、例えば、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外の有効成分(その他の有効成分)、有機酸、高分子化合物、賦形剤、結合剤、崩壊剤、基剤、甘味剤、滑沢剤、防腐剤、香料、嬌味剤、色素などが挙げられる。
任意成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
その他の有効成分としては、例えばアルジオキサ、銅クロロフィリンナトリウム、メチルメチオニンスルフォニウムクロライド、テプレノン、スルピリド、プラウノトール、ゲファルナート、塩酸セトラキサート、L-グルタミン、アズレンスルホン酸ナトリウム等の粘膜修復成分;ラニチジン又はラニチジン塩酸塩、ファモチジン、シメチジン、塩酸ロキサチジンアセタート、ニザチジン、ラフチジン、ランソプラゾール、ラベプラゾール、オメプラゾール、ボノプラザン等の胃酸分泌抑制剤;ロートエキス、アトロピン、スコポラミン等のムスカリン受容体拮抗薬;コウボク、ソウジュツ、ウコン、カンゾウ、ニンジン、オウレン、チョウジ、ゲンチアナ、ケイヒ等の健胃生薬成分及びその加工物などが挙げられる。これらの中でも、胃痛、もたれ、灼熱感等の種々の不快症状の原因となる粘膜の傷害修復に直接アプローチできる観点から、粘膜修復成分を含有することが好ましい。粘膜修復成分の中でも、抗炎症効果や肉芽形成作用などの複合的な薬理作用を有する観点から、アズレンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
その他の有効成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
医薬組成物がアズレンスルホン酸ナトリウムを含有する場合、医薬組成物中のアズレンスルホン酸ナトリウムの含有量は、アズレンスルホン酸ナトリウムとして通常治療で用いられる範囲となるように適宜選定され、例えば以下の通りである。
医薬組成物の1日当たりの服用量中のアズレンスルホン酸ナトリウムの含有量は、0.1~20mgが好ましく、1~10mgがより好ましい。
医薬組成物の総質量に対するアズレンスルホン酸ナトリウムの割合は、0.01~3質量%が好ましく、0.01~1.5質量%がより好ましい。
(A)成分や(C)成分、及びその他の有効成分は、有機酸と組み合わせて用いることができる。
有機酸としては特に限定されないが、風味、分散安定性に優れる観点から、アルギン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、グルコン酸、グルクロン酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸、酪酸、マレイン酸、フマル酸が好ましく、これらの中でも、クエン酸、リンゴ酸、乳酸がより好ましい。
有機酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
(A)成分や(C)成分、及びその他の有効成分は、高分子化合物と組み合わせて用いることができる。高分子化合物を含有することで、(A)成分や(C)成分、及びその他の有効成分が患部で滞留しやすくなり、薬理効果が向上する。また、本発明の医薬組成物を、後述する液剤、乳剤、懸濁剤に適用する場合、特に(C)成分が炎症部位に最も効果的に結合するため、医薬組成物の粘度が1000~5000mPa・sの範囲となるように、高分子化合物を選択して用いることが好ましい。
高分子化合物としては、水不溶性高分子でも、水溶性高分子でもよい。
水不溶性高分子としては、例えば結晶セルロース、トラガントゴム、カゼイン、アルギン酸、デンプン、カルボキシメチルセルコース、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどが挙げられる。水不溶性高分子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
水溶性高分子としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の半合成又は合成高分子物質や、HMペクチン、アラビアゴム、デキストリン、デキストラン、プルテン、ゼラチン、キサンタンガム、カラゲタン、グアーガム、ローカストビーンガム、アルブミン、コラーゲン等の天然高分子物質などが挙げられる。水溶性高分子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、より優れた効果を発揮できる観点から、高分子化合物としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。
また、高分子化合物としては、分子中にアニオン基を有し、濃度が1質量%以下となるように水で希釈した水溶液にカルシウムイオンや鉄(II)イオンといった2価の金属イオンを添加した際、部分的あるいは全体的なゲル化が起こらない水溶性アニオン性高分子化合物が好ましい。このような水溶性アニオン性高分子化合物としては、具体的にはキサンタンガム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、HMペクチンなどが挙げられる。これらの中でも特にキサンタンガム、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びHMペクチンより選ばれる2種以上を組み合わせることにより、より高い滞留性が得られる。
賦形剤としては、例えば、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、パラチニット、ラクチトール等の糖アルコール;単糖、乳糖等オリゴ糖、多糖類等の糖類、コーンスターチ、結晶セルロース、バレイショデンプンなどが挙げられる。
結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、アルファー化デンプン、カルボキシビニルポリマー、寒天、ハチミツなどが挙げられる。
崩壊剤としては、例えばクロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
基剤としては、エタノール等の低級アルコール;ポリエチレングリコール(PEG)、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールなどが挙げられる。
甘味剤としては、例えばショ糖、果糖、アスパルテーム、スクラロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ソルビトール、ステビア、精製白糖、サッカリン、グリチルリチンなどが挙げられる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、タルクなどが挙げられる。
防腐剤としては、例えばアルキルパラベン等のパラベン類や、安息香酸、安息香酸ナトリウムなどが挙げられる。
香料としては、公知の精油類、例えばリモネン、オレンジフレーバー、ライチフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー、ストロベリーフレーバー、パイナップルフレーバー、ミントフレーバー、グレープフルーツフレーバーなどが挙げられる。
嬌味剤としては、例えばメントールなどが挙げられる。
色素としては、例えばカラメル、カルミン、カロチン液、β-カロテン、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウムなどが挙げられる。
これら賦形剤、結合剤、崩壊剤、基剤、甘味剤、滑沢剤、防腐剤、香料、嬌味剤、色素はそれぞれ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
<水分量>
医薬組成物の水分量は、医薬組成物の総質量に対して20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。水分量が上記上限値以下であれば、医薬組成物中での(A)成分の加水分解がより抑制される。
医薬組成物の水分量は少ないほど好ましいが、各成分から持ち込まれる水分を考慮すると、医薬組成物の水分量は、医薬組成物の総質量に対して0.01質量%以上程度であり、0.1質量%以上が好ましい。
医薬組成物の水分量は、電子水分計(例えば島津製作所製のMOISTURE BALANCE MOC-120H)で、医薬組成物を120℃10分間熱したときの乾燥減量から算出できる。医薬組成物が錠剤等である場合は、錠剤等を粉砕して水分量を測定する。
<剤形>
医薬組成物の剤形としては特に限定されず、例えば錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、散剤、粉末剤、トローチ剤、丸剤、チュアブル剤、液剤、乳剤、懸濁剤、ゼリー剤等の剤形で使用することができる。錠剤としては、例えば素錠、コーティング錠(フィルムコーティング錠、糖衣錠等)などが挙げられる。カプセル剤としては、例えば軟質カプセル剤、軟質カプセル剤などが挙げられる。カプセル剤は、マイクロカプセル剤であってもよい。
本発明の医薬組成物は、使用性の観点から経口製剤が好ましく、安定性の観点から固形製剤がより好ましく、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤、細粒剤がさらに好ましく、味を含めた服用性がより優れる観点で、錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、散剤が特に好ましい。
これらの剤形に製剤化するには、薬学上許容しうる液体状又は固体状の適当な有機酸、高分子化合物、賦形剤、結合剤、崩壊剤、基剤、甘味剤、滑沢剤、防腐剤、香料、嬌味剤、色素等の医薬品添加物を加えて行うことができる。
錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、散剤、粉末剤、トローチ剤、丸剤、チュアブル剤等の固形製剤を調製するには、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、デンプン、ショ糖、マンニトール、カルボキシメチルセルロース等の賦形剤や、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、グリセリン等を加えて常法により行うことができる。このような製剤は経口で投与するのに好ましく、効果的に胃・十二指腸に作用させることができる。またセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアルコールフタレート、スチレン-無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体等の腸溶性被膜を施して、小腸で崩壊させる腸溶性製剤として製剤化することもできる。
なお、上記の有機酸、高分子化合物、賦形剤、結合剤、崩壊剤、基剤、甘味剤、滑沢剤、防腐剤、香料、嬌味剤、色素は、上記の任意成分に記載した成分を使用することができる。
本発明の医薬組成物は、本発明の医薬組成物のみからなるものであってもよく、本発明の医薬組成物と他の部材(担体、被覆等)とを組み合わせたものであってもよい。
担体としては、例えば、医薬組成物を収容する容器(カプセル等)、医薬組成物からなる層をその表面に保持する基材(貼付基材等)などが挙げられる。
<投与量>
医薬組成物は経口的に服用することができ、その服用量は投与剤型、患者の性別、体型、体質及び年齢等により適宜選択できるが、通常、服用回数は1日当たり1~4回が好ましく、1回当たりの服用量は体重1kg当たり0.1~200mgが好ましく、0.5~100 mgがより好ましい。
<製造方法>
医薬組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分と、必要に応じて任意成分とを混合することで得られる。
各成分は、そのまま用いてもよいし、造粒したものを用いてよい。造粒は、個々に行ってもよいし、2つ以上の成分をまとめて造粒してもよい。
例えば(A)成分、(B)成分、(C)成分及び任意成分の1つ以上を、それぞれ単独で、又は混合して、適当な賦形剤等を加えて造粒等の加工を行った後、粉末状態で混合し、粉末のまま、あるいはカプセルや錠剤等に成型して製剤とすることができる。
造粒方法としては、流動層造粒、転動造粒又は混練造粒等の公知の造粒方法であれば特に限定されない。例えば造粒する成分と、ポリエチレングリコール等のバインダーとをスラリー化して噴霧乾燥したものを用いることができる。
(C)成分の造粒物としては市販品を用いることができ、例えば富士化学工業株式会社製の商品名「ストマクシン」などが挙げられる。
このようにして得られた医薬組成物は、包装体に収容される。包装体としては、ビン(プラスチックボトル、ガラスビン等)、スティック包装材、SP包装、三方シール包装材、アルミパウチ、チャック付き袋などが挙げられる。また、医薬組成物が、例えば錠剤、カプセル剤、トローチ剤、丸剤、チュアブル剤等である場合、包装体としてPTP(プレススルーパック)を用いてもよい。PTPに収容された医薬組成物をアルミガセット袋にさらに収容してもよい。
容器の形成部材としては特に限定されるものではなく、例えば紙、ガラス、樹脂若しくは樹脂フィルム、又は金属若しくは金属フィルム等の部材を挙げることができ、これら部材を適宜組み合わせた複合構造や多層構造としたものでもよい。また、紙などの透湿性を有する部材については透湿防止処理が施されていることが好ましい。
<作用効果>
以上説明した本発明の医薬組成物は、(A)成分と(B)成分との組み合わせにおいて(C)成分をさらに併用するので、(A)成分の安定性が高まり、(A)成分の加水分解が抑制されるので、医薬組成物における(A)成分の含有量の低下を効果的に抑制できる。
また、例えばアルミガセット袋やビンに医薬組成物が収容されている場合、これらアルミガセット袋やビンを開封して医薬組成物が吸湿したとしても、(A)成分の加水分解を抑制できる。
<他の実施形態>
本発明の医薬組成物は上述した実施形態に限定されない。
例えば、医薬組成物に含まれる(C)成分以外の薬物(例えば(A)成分、(B)成分、その他の有効成分)は、水難溶性担体粒子に担持されていてもよい。(C)成分以外の薬物が水難溶性担体粒子に担持されていれば、(C)成分以外の薬物の薬理効果が充分に発現しやすくなる。
なお、本明細書において、「水難溶性」とは、25℃の水1000mL中の溶解量が1g未満であることを意味する。
水難溶性担体粒子としては、例えばデンプン(水不溶性)、ヒドロキシプロピルスターチ、結晶セルロース、微結晶セルロース、粉末セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の有機担体粒子;軽質無水ケイ酸、タルク、酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアセテート、水酸化アルミニウム、水酸化アルミナマグネシウム、二酸化ケイ素(合成シリカ)、無水リン酸水素カルシウム等の無機化合物からなる担体粒子などが挙げられる。これらの中でも、薬物を多く含浸できるため使用量が少量で済む観点では、結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、二酸化ケイ素(合成シリカ)等の多孔質粒子が好ましく、無水リン酸水素カルシウム、二酸化ケイ素(合成シリカ)等の無機多孔質粒子がより好ましい。また、薬物の変色を抑制する観点では、マグネシウム及びカルシウムの少なくとも一方を含有する水難溶性担体粒子が好ましい。
水難溶性担体粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
なお、(A)成分及びその他の有効成分の少なくとも一方を水難溶性担体粒子に担持させる場合、水難溶性担体粒子としては上述した化合物に加えて、(B)成分を用いてもよい。すなわち、(A)成分及びその他の有効成分の少なくとも一方を(B)成分に担持させて用いてもよい。
(C)成分は、有機酸と併用してもよい。すなわち、医薬組成物は有機酸を含有していてもよい。
通常、(C)成分は酸性下において粘膜保護効果が発揮されるが、(C)成分と有機酸とを併用すれば、非酸性下においても粘膜潰瘍部分への(C)成分の付着性を高めることができる。
有機酸としては、任意成分の説明において先に例示した有機酸が挙げられる。
(C)成分と有機酸とを併用する場合、水に分散させた(C)成分に有機酸を加えて反応させ、これを乾燥して粉末とした後、残りの成分と混合したり、残りの成分と共にカプセル、錠剤等に成型したりして、製剤化することもできる。
有機酸/(C)成分で表される質量比(以下、「有機酸/C比」ともいう。)は、0.05~1が好ましく、0.1~0.3がより好ましい。
本発明の医薬組成物は、健胃生薬を含有してもよい。
(C)成分は、服用時に苦味、酸味、収斂味などの不快感を口腔内に生じさせることがあるが、医薬組成物が健胃生薬を含有していれば服用時の不快感を緩和できる。
健胃生薬としては、任意成分の説明において先に例示した健胃生薬成分が挙げられる。
健胃生薬は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
健胃生薬/(C)成分で表される質量比(以下、「健胃生薬/C比」ともいう。)は、0.2~2が好ましく、0.2~1がより好ましい。
(B)成分は、表面が油性成分で被覆されていてもよい。
(B)成分が油性成分で被覆されていれば、制酸効果を遅延させ、(C)成分による炎症部の付着を妨げずに崩壊性を高めることができる。
油性成分としては、例えば高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル、植物油及びその水素添加油、動物油及びその水素添加油、高級脂肪酸、及び高級アルコールなどが挙げられる。
油性成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
油性成分の融点は、40℃以上が好ましい。
油性成分/(B)成分で表される質量比(以下、「油性成分/B比」ともいう。)は、0.005~0.08が好ましく、0.007~0.07がより好ましい。
[ピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法]
本発明のピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法は、上述した(A)成分と及び(B)成分と、必要に応じて他の成分とを含有する医薬組成物に、上述した(C)成分を配合することで、医薬組成物における(A)成分、すなわちピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法である。
本発明のピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法において、医薬組成物に含有される(A)成分、(B)成分及び(C)成分の種類や含有量、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外に配合可能な成分(任意成分)の種類や含有量、医薬組成物の剤形については、上述した本発明の医薬組成物の場合と同様である。
本発明のピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法においては、ピレンゼピン塩酸塩水和物と制酸剤とを組み合わせる配合剤において、ピレンゼピン塩酸塩水和物の安定性を高め、ピレンゼピン塩酸塩水和物の加水分解を抑制して、ピレンゼピン塩酸塩水和物の含有量の低下を効果的に抑制できる。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。なお、各例で用いた成分の配合量は、特に断りのない限り純分換算値である。
「使用原料」
使用原料として、以下に示す化合物を用いた。
・ピレンゼピン塩酸塩水和物:大和薬品工業株式会社製、商品名「ピレンゼピン塩酸塩水和物」。
・水酸化マグネシウム:協和化学工業株式会社製、商品名「キョーワスイマグ」、制酸力:340mL。
・乾燥水酸化アルミニウムゲル:協和化学工業株式会社製、商品名「乾燥水酸化アルミニウムゲル S-100」、制酸力:313mL。
・ケイ酸アルミン酸マグネシウム:富士化学工業株式会社製、商品名「ノイシリンA AS」、制酸力:278mL。
・炭酸水素ナトリウム:AGC株式会社製、商品名「重炭酸ナトリウムKP」、制酸力:121mL。
・合成ヒドロタルサイト:協和化学工業株式会社製、商品名「アルカマックSN」、制酸力:285mL。
・沈降炭酸カルシウム:備北粉化工業株式会社製、商品名「沈降炭酸カルシウム」、制酸力:198mL。
・スクラルファート水和物:富士化学工業株式会社製、商品名「スクラルファート水和物」。
・アズレンスルホン酸ナトリウム:アルプス薬品工業株式会社製、商品名「アズレンスルホン酸ナトリウム」。
「実施例1-1、1-2、2~6、比較例1~6」
表1、2に示す組成に従い、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び任意成分を混合し、医薬組成物を調製した。
なお、各例は1日当たりの服用量であり、各例において、医薬組成物中の(B)成分由来の制酸力が同程度となるように(B)成分の配合量を設定した。
得られた医薬組成物について、以下のようにしてピレンゼピン塩酸塩水和物の安定性を評価し、安定性改善率を求めた。結果を表1、2に示す。
<評価>
(ピレンゼピン塩酸塩水和物の安定性の評価)
医薬組成物を60℃で1週間放置した。高速液体クロマトグラフィーを用い、放置前の医薬組成物及び放置後の医薬組成物中のピレンゼピン塩酸塩水和物の含有量を以下の測定条件でそれぞれ測定した。測定には、ピレンゼピン塩酸塩として1.0μg/mLとなるように適宜、移動相に溶解させたものをサンプルとして用いた。
<<測定条件>>
・測定装置:株式会社島津製作所製、製品名「一体型HPLC Prominence-i」。
・分離カラム:株式会社島津ジーエルシー製、商品名「Shim-pack Scepter(5.0μm、150mm×4.6mm)」。
・移動相:メタノール/0.02Mリン酸二水素カリウム/1-ペンタンスルホン酸ナトリウム=350/650/1(質量比)、pH=8。
・移動相の流量:1.0mL/分。
・サンプルの注入量:20μL。
・測定温度:35℃。
60℃で1週間放置する前の医薬組成物中のピレンゼピン塩酸塩水和物の含有量を「初期含量」とし、初期含量に対する、放置後の医薬組成物中のピレンゼピン塩酸塩水和物の含有量を「対初期含量」として、下記式(1)より対初期含量を求めた。対初期含量が高いほど、ピレンゼピン塩酸塩水和物の安定性に優れることを意味する。
対初期含量(%)=(60℃で1週間放置した後の医薬組成物中のピレンゼピン塩酸塩水和物の含有量/初期含量)×100 ・・・(1)
<評価>
(安定性改善率の算出)
下記式(2)より、安定性改善率を求めた。
安定性改善率(%)=(実施例の対初期含量/対応する比較例の対初期含量)×100 ・・・(2)
なお、実施例1-1及び実施例1-2に対応する比較例は比較例1である。同様に、実施例2に対応する比較例は比較例2である。実施例3に対応する比較例は比較例3である。実施例4に対応する比較例は比較例4である。実施例5に対応する比較例は比較例5である。実施例6に対応する比較例は比較例6である。
Figure 2022102122000001
Figure 2022102122000002
表1、2中、「C質量/A質量の比」は、(C)成分の含有量(mg)/(A)成分の含有量(mg)で表される含有比である。「A質量/B制酸力の比」は、(A)成分の含有量(mg)/医薬組成物中の(B)成分由来の制酸力(mL)で表される含有比である。「医薬組成物中の(B)成分由来の制酸力」は、1日当たりの服用量における値である。また、表中に配合量が記載されていない成分は、配合されていない。
表1、2から明らかなように、各実施例で得られた医薬組成物は、各比較例で得られた医薬組成物に比べて対初期含量が高く、ピレンゼピン塩酸塩水和物の安定性が改善されており、ピレンゼピン塩酸塩水和物の安定性に優れていた。

Claims (4)

  1. (A)成分:ピレンゼピン塩酸塩水和物と、
    (B)成分:制酸剤と、
    (C)成分:スクラルファート水和物と、
    を含有する、医薬組成物。
  2. 日本薬局方で規定される制酸力試験法によって求められる、前記医薬組成物中の前記(B)成分由来の制酸力が50~1000mLである、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記(B)成分が、水酸化マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウムから選ばれる1種以上を含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
  4. (A)成分:ピレンゼピン塩酸塩水和物と、
    (B)成分:制酸剤と、
    を含有する医薬組成物における前記ピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法であって、
    前記医薬組成物に、(C)成分:スクラルファート水和物を配合する、ピレンゼピン塩酸塩水和物の安定化方法。
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