JP2022101101A - 筆記具用水性インキ組成物およびそれを用いた筆記具 - Google Patents

筆記具用水性インキ組成物およびそれを用いた筆記具 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、低温安定性、および筆跡の耐擦性に優れた筆記具用水性インキ組成物とそれを用いた筆記具を提供する。【解決手段】着色剤、沸点が100℃以上の水溶性オキソラン化合物、水系樹脂、および水を含んでなることを特徴とする筆記具用水性インキ組成物と、それを用いた筆記具。【選択図】なし

Description

本発明は、筆記具用水性インキ組成物およびそれを用いた筆記具に関するものである。
従来より、筆記具用水性インキ組成物、例えばボールペン用インキ組成物には、耐ドライアップ性やインキ組成物の経時安定性を改良する目的で水溶性有機溶剤を用いることが知られている。このような目的に適した水溶性有機溶剤として、プロピレングリコールなどのグリコール系溶剤が知られている。これらのグリコール系溶剤は、比較的揮発性が低いことから、ペン先での水分蒸発が抑制されて耐ドライアップ性が向上する、インキ収容タンクからの経時蒸発が抑制されてインキの経時安定性が向上する、紙面へ筆記する際にインキの浸透性が向上して筆跡乾燥性が向上する、インキ組成物中に含まれる溶剤によって凝固点降下が起こり、低温での凍結を抑制される、などの効果が得られる。
しかしながら、そのようなグリコール系溶剤を含むインキ組成物であっても、例えば-10℃のような低温に置かれた場合には、その後に常温に戻した後でもインキの流動性が十分でない場合があり、さらなる改良が望まれていた。また、グリコール系溶剤を含むインキ組成物は、浸透性が乏しく、例えば樹脂フィルムなどに筆記した場合、その筆跡の乾燥性が不十分となり、筆記直後に筆跡を擦過すると、筆跡がかすれるなどの問題が起こることがあり、その点でも改良が望まれていた。
特開昭62-241977号公報
本発明は、低温安定性および筆跡乾燥性を両立した筆記具用水性インキ組成物を提供するものである。
本発明による筆記具用水性インキ組成物は、着色剤、沸点が100℃以上の水溶性オキソラン化合物、および水を含んでなることを特徴とするものである。
本発明による水性ボールペンは、上記したインキ組成物を収容してなるものである。
本発明によれば、特定の水溶性オキソラン化合物を溶剤として用いたことにより、低温条件に付した後でも性能の変動が小さく、また非浸透性の筆記面に筆記した場合であっても筆跡が迅速に乾燥し、筆跡が擦過されてもかすれにくく、低温安定性、筆跡乾燥性および筆跡耐擦性に優れた筆記具用水性インキ組成物が提供される。
<筆記具用水性インキ組成物>
本発明による筆記具用水性インキ組成物(以下、場合により「インキ組成物」と表す)は、着色剤、特定の水溶性オキソラン化合物、および水を含んでなる。
<着色剤>
本発明に用いられる着色剤としては、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。
本発明において用いることができる染料としては、水性媒体に溶解もしくは分散可能であれば特に制限されるものではない。例えば、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、直接染料、分散染料および食用色素など各種染料が挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。染料の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。
具体的には、酸性染料としては、C.I.アシッドレッド18、C.I.アシッドレッド51、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド87、C.I.アシッドレッド92、C.I.アシッドレッド289、C.I.アシッドオレンジ10、C.I.アシッドイエロー3、C.I.アシッドイエロー7、C.I.アシッドイエロー23、C.I.アシッドイエロー42、C.I.アシッドグリーン3、C.I.アシッドグリーン16、C.I.アシッドブルー1、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー22、C.I.アシッドブルー90、C.I.アシッドブルー239、C.I.アシッドブルー248、C.I.アシッドバオレット15、C.I.アシッドバイオレット49、C.I.アシッドブラック1、C.I.アシッドブラック2、塩基性染料としては、C.I.ベーシックオレンジ2、C.I.ベーシックオレンジ14、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックブルー9、C.I.ベーシックブルー26、C.I.ベーシックバイオレット1、C.I.ベーシックバイオレット3、C.I.ベーシックバイオレット10、直接染料としては、C.I.ダイレクトレッド28、C.I.ダイレクトイエロー44、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー87、C.I.ダイレクトバイオレット51、C.I.ダイレクトブラック19、食用色素としては、C.I.フードイエロー3、C.I.フードブラック2などが挙げられる。
本発明において用いることができる顔料としては、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、補色顔料等が挙げられる。その他、着色樹脂粒子体として顔料を媒体中に分散させてなる着色体を公知のマイクロカプセル化法などにより樹脂壁膜形成物質からなる殻体に内包または固溶化させたマイクロカプセル顔料、液晶類、可逆熱変色性組成物、フォトクロミック材料などの機能性材料を内包したマイクロカプセル顔料を用いてもよい。更に、顔料を透明、半透明の樹脂等で覆った着色樹脂粒子などや、また着色樹脂粒子や無色樹脂粒子を、顔料もしくは染料で着色したもの等も用いることもできる。これらの染料および顔料は、単独または2種以上組み合わせて使用してもよい。着色剤の含有率は、インキ組成物の全質量を基準として、1~30質量%が好ましい。
また、従来、顔料はインキ組成物中で分散しているため、染料を含むインキ組成物と比較して、筆記対象への浸透性が劣りやすい傾向にあり、筆跡乾燥性を向上させにくい。しかしながら、本発明においては、後述する水溶性オキソラン化合物、水系樹脂、または界面活性剤を組み合わせて用いることで、着色剤として顔料を用いた場合でもより筆跡乾燥性を向上することができる。さらに、顔料は、耐水性、耐光性に優れ、良好な発色が得られる。以上のことから、着色剤としては顔料を用いることが好ましい。
<水溶性オキソラン化合物>
本発明によるインキ組成物は、沸点が100℃以上の水溶性オキソラン化合物を含む。沸点が低いオキソラン化合物はインキ組成物から揮発しやすいので、インキ組成物の安定性を維持するために沸点が100℃以上であることが必要であり、110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。
また、水性インキ組成物中に均一かつ安定に存在するために、水溶性であることが好ましい。ここで、水溶性であるとは、水性インキ組成物中に必要量が均一に溶解し得ることを意味している。より具体的には、20℃の水に対する溶解度が5g/100ml以上であることが好ましく、10g/100ml以上であることがより好ましく、20g/100ml以上であることがさらに好ましい。
本発明に用いられるオキソラン化合物は、オキソランまたはジオキソランの誘導体である。オキソランまたはジオキソランは、沸点が低いために用いることができない。また、嵩高い置換基を有するほど沸点が高くなる傾向にあるが、疎水性基のみを有すると水溶性が低下する傾向にある。このような観点から、本発明に用いられるオキソラン化合物は、下記式(1)で表されるものが好ましい。
Figure 2022101101000001
ここで、
Xは、OまたはCRであり、
Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1~3のアルキル、炭素数1~3のヒドロキシアルキル、炭素数1~3のアミノアルキル、または炭素数1~3のアルコキシである。
なお、ひとつまたはふたつのRが炭素数1~3のアルキルであることが好ましく、また、ひとつまたはふたつのRが、炭素数1~3のヒドロキシアルキルまたは炭素数1~3のアミノアルキルであることが好ましい。
また、好ましい水溶性オキソラン化合物は下記のものである:
2,2-ジメチル-4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン(b.p.188~189℃)
2,2-ジメチル-4-ヒドロキシエチル-1,3-ジオキソラン
2,2-ジメチル-4,5-ジヒドロキシエチル-1,3-ジオキソラン
2-メチル2-エチル-1,3-ジオキソソラン(b.p.116~117℃)
2-メトキシ-1,3-ジオキソラン(b.p.129~130℃)
2-クロロメチル-1.3-ジオキソラン(b.p.157~158℃)
2,2-ジメチル-1,3-オキソラン-4-メタンアミン
テトラヒドロフルフリルアミン
テトラヒドロフルフリルアルコール
これらのうち、以下のものがより好ましい。
2,2-ジメチル-4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン
2,2-ジメチル-4-ヒドロキシエチル-1,3-ジオキソラン
2,2-ジメチル-4,5-ジヒドロキシエチル-1,3-ジオキソラン
このような水溶性オキソラン化合物は、従来用いられていたグリコール系溶剤と同様に、凝固点降下の作用によって凍結を防止できる上、低温条件下に保存した後、あるいは凍結された後などにおいても、性能の劣化が少なく、優れた低温安定性を実現することができる。
本発明によるインキ組成物の水溶性オキソラン化合物剤の含有率は、インキ組成物の全質量を基準として、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましく、10~20質量%がさらに好ましい。。
<水系樹脂>
本発明によるインキ組成物は、さらに水系樹脂を含むことが好ましい。本発明によるインキ組成物は、水系樹脂を組み合わせることで筆跡の定着性を改良することができ、その結果、耐擦性を改良できる。
本発明において、水系樹脂とは、水に対する親水性の高い樹脂をいう。このような水系樹脂としては、親水性基を有し、水中に均一に溶解し得る水溶性樹脂および微粒子の形態で水中に均一に分散し得る水分散性樹脂とが挙げられる。
水溶性樹脂は、水酸基やカルボキシル基などの親水性基を有する高分子である。水溶性樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどを挙げることができる。これらの水溶性樹脂は、インキ組成物に含まれる、顔料粒子、水に不溶性の水分散性樹脂や疎水性の有機樹脂粒子などを均一に分散させる機能も有している。
水溶性樹脂の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
水分散性樹脂は、水に難溶性の樹脂が微粒子の形態で水中に均一に分散し得るものである。このような樹脂の具体例として、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂などが挙げられる。このような水分散性樹脂は、一般的には分散物の形態でインキ組成物に配合される。
水分散性樹脂としては、平均粒子径が0.2μm以下、より具体的には0.01~0.2μmのものが用いられる。平均粒子径が0.2μm以下であると、インキ組成物中で樹脂粒子の沈降が少なく、インキ分散安定性が良好となる。
また、本発明に用いられる水分散性樹脂は、最低造膜温度が40℃以下のものが好ましく、20℃以下のものがより好適に用いられる。最低造膜温度が40℃以下であると、常温域で被膜が形成されやすくなり、浸透面上だけでなく非浸透面上においても、筆跡の乾燥性および耐擦性が良好となり、またペン先からのインキの垂れ下がり防止性能も改良される傾向にある。
水分散性樹脂の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1~5.0質量%であることが好ましい。0.1質量%以上の水分散樹脂を含むことによって、筆跡の耐擦過性が改良されるなどの所望の効果が得られやすい。一方で、含有率が過度に高くてもペン先で過度に強固な皮膜を形成するなどして耐ドライアップ性が損なわれたり、改良効果が飽和してしまうので、5.0質量%以下の含有率とすることが好ましい。
前記アクリル樹脂エマルジョンとして具体的には、ネオクリルXK-190、ネオクリルA1127(商品名、DSMネオレジン社製)、ジョンクリル390、ジョンクリル74J、ジョンクリルPDX-7630A、ジョンクリル7600(いずれも商品名、BASFジャパン株式会社製)などが挙げられる。
本発明によるインキ組成物が水系樹脂を含む場合、水溶性樹脂と水分散性樹脂の両方を組み合わせて含むことが好ましい。これらの組み合わせをボールペン用インキ組成物に用いることで、耐擦性、耐水性、および耐ドライアップ性を同時に改良することができる。
<水>
本発明に用いられる水としては、特に制限はなく、例えば、イオン交換水、限外ろ過水または蒸留水などを用いることができる。本発明におけるインキ組成物は、主たる溶媒として水を含む。水の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、50~90質量%、好ましくは、60~80質量%である。
<その他の添加剤>
本発明によるインキ組成物は、上記の成分に加えて、必要に応じてその他の添加剤を含むことができる。
本発明によるインキ組成物は、さらにリン酸エステル系界面活性剤を含むことができる。リン酸エステル系界面活性剤は、インキ組成物の分散性などを改良する効果の他、インキ組成物をボールペンに用いる場合、潤滑剤としても作用する。潤滑剤は、ボールペンが有するボールとボールペンチップの間の潤滑性を向上して、ボールの回転をスムーズにすることで、ボール座の摩耗を抑制し、書き味を向上するものである。本発明において用いられる、リン酸基を有するリン酸エステル系界面活性剤は、リン酸基が金属に吸着しやすい性質にあることから、潤滑性を向上させ、ボール座の摩耗抑制や書き味を向上させやすい。このため、本発明によるインキ組成物をボールペンに適用する場合に、特に優れた書き味を実現できる。また、リン酸エステル系界面活性剤をさらに含むことで筆跡乾燥性も向上することができる。これはリン酸エステル系界面活性剤によってボールの回転がスムーズになり、チップ先端に発生する余剰インキを抑えることができるためと考えられる。なお、この界面活性剤は、潤滑性だけでは無く、分散性の改良にも寄与しているため、インキ組成物をボールペン以外の筆記具に利用する場合にも有効に作用する。
リン酸エステル系界面活性剤としては、直鎖アルコール系、スチレン化フェノール系、ノニルフェノール系、オクチルフェノール系等のリン酸エステル系界面活性剤が挙げられるが、中でも、直鎖アルコール系、スチレン化フェノール系のリン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい。
本発明においてリン酸エステル系界面活性剤は、HLB値が5~15であることが好ましく、6~13であることが好ましい。また、本発明においてリン酸エステル系界面活性剤が有するアルキル基またはアルキルアリル基の炭素数が6~30であることが好ましく、8~18であることがより好ましく、10~14であることが特に好ましい。これは、特定のHLB値および炭素数をもつ直鎖系のリン酸エステル系界面活性剤は、線とびやかすれなどが改善された良好な筆跡が安定して得られるなど優れた筆記安定性をもたらし、また、本発明に用いられる分散剤とともに分散効果を相乗的に改良し、同時に潤滑効果をもたらすことができるためである。
なお、本発明においてリン酸エステル系界面活性剤のHLB値とは、リン酸エステル系界面活性剤の原料非イオン性界面活性剤のHLB値を意味するものであり、川上法から算出される値であり、下記式によって算出される。
HLB=7+11.7log(Mw/Mo)、(Mw;親水基の分子量、Mo;親油基の分子量)
なお、リン酸エステル系界面活性剤の具体例としては、プライサーフシリーズ(第一工業製薬株式会社)などが挙げられ、直鎖アルコール系のリン酸エステル系界面活性剤としては、プライサーフA212C、同A208B、同A213B、同A208F、同A215C、同A219B、同A208Nが挙げられ、スチレン化フェノール系のリン酸エステル系界面活性剤としては、プライサーフALが挙げられ、ノニルフェノール系としては、プライサーフ207H、同A212E、同A217Eが挙げられ、オクチルフェノール系としては、プライサーフA210Gが挙げられる。
本発明によるインキ組成物がリン酸エステル系界面活性剤を含む場合、その含有率はインキ組成物の総質量を基準として0.1~2.0質量%が好ましく、0.5~1.5質量%であることがより好ましい。
なお、上記のリン酸エステル系界面活性剤はアミン類やアルカリ金属類などのアルカリ性物質にて適宜中和して使用することもできる。
また、本発明によるインキ組成物は、さらに剪断減粘性付与剤を含むことができる。剪断減粘性付与剤とは、インキ組成物に剪断応力を加えたときに粘度が低下する特性を与えるものである。
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶ないし分散性の物質が効果的である。具体的には、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100~800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、ダイユータンガム等の増粘多糖類や、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万~15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、ポリN-ビニルカルボン酸アミド、無機質微粒子、HLB値が8~12のノニオン系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示でき、さらには、インキ組成物中にN-アルキル-2-ピロリドンとアニオン系界面活性剤を併用して添加しても安定した剪断減粘性を付与できる。これらは、単独又は二種以上混合して使用してもよい。これらの剪断減粘性付与剤は、顔料等の分散安定性を改良する効果も有する。
中でも、インキ組成物の経時安定性の改良も期待できるために、増粘多糖類が好適に用いられる。特に、着色剤が顔料である場合、キサンタンガム、サクシノグリカン、アルカシーガム、ゼータシーガム、ダイユータンガム、ウェランガムは、水性媒体中で三次元網目構造となって顔料の分散性をより高いレベルで発現できる点からより好適である。
本発明によるインキ組成物が剪断減粘性付与剤を含む場合、その含有率はインキ組成物の総質量を基準として0.05~0.5質量%が好ましい。一般に剪断減粘性付与剤が多い方が顔料の分散性が改良される傾向にあり、少ない方が筆跡のカスレなどが低減する傾向にある。
本発明によるインキ組成物は、本発明の性能を損なわない範囲で、インキ物性や機能を向上させる目的で、上記以外のさらなる添加剤、例えば、水溶性有機溶剤、保湿剤、界面活性剤、潤滑剤、多糖類、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、有機樹脂粒子、水溶性樹脂などの各種添加剤を含んでもよい。
本発明によるインキ組成物は、溶解安定性、水分蒸発乾燥防止等を目的として、水溶性オキソラン化合物以外の水溶性有機溶剤を本願発明の効果を損なわない範囲で含むことができる。そのような水溶性有機溶剤としては、(i)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、またはグリセリンなどのグリコール類、(ii)メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t-ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、その他の高級アルコールなどのアルコール類等が挙げられる水溶性オキソラン化合物以外の水溶性有機溶剤の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1~30質量%であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましく、0.1~10質量%であることがさらに好ましい。
本発明によるインキ組成物は、水分蒸発防止を目的として、上記した水溶性有機溶剤の他に、尿素、ソルビット等の保湿剤を含むことができる。なお、本明細書において、上記した水溶性有機溶剤は保湿剤に含めないこととする。保湿剤の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。
本発明によるインキ組成物は、リン酸エステル系界面活性剤以外の、各種界面活性剤を含んでもいてもよく、ノニオン系、アニオン系、カチオン系界面活性剤などが挙げられる。また、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤、シリコーン系界面活性剤なども挙げられる。
アセチレン結合を構造中に有する界面活性剤、またはシリコーン系界面活性剤は、筆跡乾燥性をさらに向上させるために含むことができる。
本発明によるインキ組成物に用いられるアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤は、エチレンオキシドが付加したものであることが好ましい。そして、エチレンオキシドの付加モル数が10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。また、エチレンオキシドの付加モル数は4以上であることが好ましい。このような界面活性剤は、例えば、エチレンオキシド付加モル数が10以下である、アセチレングリコール系界面活性剤やアセチレンアルコール系界面活性剤などが挙げられる。これらのうち、アセチレングリコール系界面活性剤は、筆記対象への浸透性を向上し、筆跡乾燥性を向上しやすい傾向があるので好ましい。
このような界面活性剤は、筆記対象に対する浸透性を顕著に向上させることができるので、その界面活性剤を含んでなるインキ組成物は、紙に素早く浸透することができるようになり、よって、筆記対象の表面に形成された筆跡が完全に乾燥するまでの時間が短縮される。さらに、筆跡乾燥性に優れており、筆跡部分をこすった場合に、筆跡のなかった部分に組成物が付着したり、筆跡部分の組成物が除去されることを抑制できる。
この理由は定かではないが、このような界面活性剤は、浸透効果を発揮するための好適な疎水性と親水性のバランスを示すためであると考えられる。アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤による効果向上を考慮すると、エチレンオキシド付加モル数は、8以下であることが好ましい。また、インキ組成物の経時安定性を考慮すると、4以上であることが好ましい。
また、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤は、筆跡乾燥性を向上させると同時に、滑らかな書き味をもたらすなど、書き味を向上させる効果を併せもつ。これは、その界面活性剤をインキ組成物をボールペンに組み合わせた場合、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤を含んでなることで、ボールペンが有するボールとボールペンチップの間の潤滑性が向上し、かつ、ボール座の摩耗を抑制することができるためである。
なお、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤を含んでなる本発明によるインキ組成物は、その他の潤滑剤を含ませることが可能であるが、特には、潤滑剤の中でも、上記したリン酸エステル系界面活性剤と併用することが好ましい。
また、本発明に用いられるアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤は、エチレンオキシドに加えて、さらにプロピレンオキシドが付加されていてもよい。本発明においては、エチレンレンオキシドとさらにプロピレンオキシドが付加されたアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤を選択して用いることで、更なる筆跡乾燥性の向上やインキ組成物の経時安定性が得られる傾向にある。これは、そのような、エチレンレンオキシドとプロピレンオキシドの二つが付加された界面活性剤において、疎水性と親水性のバランスがさらに好適に保たれるためである。このような効果は、エチレンオキシド付加モル数:プロピレンオキシド付加モル数=1:1~5:1である場合に得られやすい。
また、気液界面における界面活性剤分子の配列性を考慮すれば、エチレンオキシド付加モル数とプロピレンオキシド付加モル数の合計が10以下であることが好ましい。付加モル数が多くなりすぎると、界面活性剤分子が長くなりすぎ、気液界面へ配列時に立体障害を生じやすくなる傾向がある。付加モル数の合計が10以下であると界面活性剤の疎水性と親水性のバランスを好適に保ち、かつ気液界面への配列時の立体障害の影響も考慮された効果を得られるため特に好ましい。
さらに、筆跡乾燥性の向上や、インキ組成物の経時安定性を考慮すると、エチレンオキシド付加モル数が5であり、プロピレンオキシド付加モル数が2であるアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤を用いることが、より好ましい。
また、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤のHLB値は、3~14であることが好ましく、6~12であることがより好ましく、7~9であることが特に好ましい。アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤のHLB値が3以上であると、溶媒である水に溶け残ることなく安定に存在することができ、初期および経時的に効果得ることができるため好ましく、14以下であると疎水性により気液界面付近に配列しやすい状態となりやすく、少量でかつ瞬時に、筆跡乾燥性の向上などの界面活性剤がもたらす効果を得ることができるため、好ましい。
アセチレン結合を構造中に有する界面活性剤の具体例としては、オルフィンシリーズ(日信化学工業株式会社製)、サーフィノールシリーズ、ダイノールシリーズ等(いずれもエアープロダクツジャパン株式会社製)が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤は、構造内のSi骨格、プロピレンオキシドなどの疎水基や、エチレンオキシドなどの親水基とのバランスをとり、好適とすることで、インキ組成物中で安定でありながら、活性剤分子が気液界面に速やかに配列し易くなるため、筆記時にインキ組成物の表面張力を速やかにコントロールして浸透性が向上し、筆跡乾燥性とインキ組成物の経時安定性を両立することができる。シリコーン系界面活性剤の中でも、質量平均分子量が500~3,000であることが好ましい。これは前述の界面活性剤が気液界面への配列性に関して、質量平均分子量が3,000を越えると、シリコーン系界面活性剤の分子が大きくなりすぎ、気液界面への配列が遅くなる傾向にあるため、筆跡乾燥性が十分でない場合がある。一方、質量平均分子量が3,000以下であると、シリコーン系界面活性剤の分子が比較的小さくなることで、活性剤分子の気液界面への配列が速やかに成される傾向があり、筆跡乾燥性を向上しやすい。また、質量平均分子量が500未満であると、所望の筆跡乾燥性が得られにくいためである。上記効果をより考慮すれば、質量平均分子量が500~3,000であることが好ましく、より好ましくは、質量平均分子量が500~2,000であり、さらに考慮すれば、質量平均分子量が1,000~2,000であることが好ましい。
また、シリコーン系界面活性剤は、筆跡乾燥性を向上させると同時に、滑らかな書き味をもたらすなど、書き味を向上させる効果を併せもつ。この効果は、本発明によるインキ組成物をボールペンに組み合わせた場合に効果的に発現する。その理由は、インキ組成物が、シリコーン系界面活性剤を含んでなることで、ボールペンが有するボールとボールペンチップの間の潤滑性が向上し、かつ、ボール座の摩耗を抑制することができるためであると考えられる。
なお、シリコーン系界面活性剤を含んでなる本発明によるインキ組成物は、その他の潤滑剤を含ませることが可能であるが、特には、潤滑剤の中でも、上記したリン酸エステル系界面活性剤と併用することが好ましい。
シリコーン系界面活性剤の溶解度パラメーター(以下SP値)については、筆跡乾燥性を考慮すれば、SP値が8~13であることが好ましく、より考慮すれば、SP値が9~12であることが好ましく、さらにSP値が10~11が特に好ましい。溶媒の主成分である水のSP値は23.4であり、シリコーン系界面活性剤のSP値がそれに近いと均一に溶解した状態で安定化しやすい。一方、SP値が上述の範囲にあると、水のSP値と差が大きく、気液界面において活性剤分子が速やかに配列しやすく、インキ組成物中での安定性も得られることから好ましい。
シリコーン系界面活性剤については、具体的には、シルフェイスシリーズ(日信化学工業株式会社製)、BYKシリーズ(ビックケミー株式会社製)、Silsoft Spreadシリーズ、Coatosilシリーズ(いずれもモメンティブパフォマンスマテリアルズ社製)などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
また、アセチレン結合を構造中に有する界面活性剤、またはシリコーン系界面活性剤の総含有率について、インキ組成物の総質量を基準として、0.01~3.0質量%がより好ましい。これは、アセチレン結合を構造中に有する界面活性剤、またはシリコーン系界面活性剤の総含有率が、0.01質量%未満だと、所望の筆跡乾燥性が得られづらく、3.0質量%を越えると、インキ組成物の経時安定性に影響が出やすいためである。さらに、より考慮すれば、0.05~2.0質量%が好ましく、0.1~1.5質量%が特に好ましい。
上記した界面活性剤以外に、潤滑剤として用いることができるものとして、アルキルベンゼンスルホン酸、アミノ酸、N-アシルアミノ酸、脂肪族アミドアルキレンオキサイド付加物、テルペノイド酸誘導体、およびそれらの塩などが挙げられる。より具体的には、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アラニン、グリシン、リジン、スレオニン、セリン、プロリン、サルコシン、N-アシルサルコシン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドおよびそれらの塩などが挙げられる。
本発明によるインキ組成物は、多糖類を含むことができる。多糖類のうち、いくつかのものは、上記した剪断減粘性付与剤として機能するが、そのような機能を有さない多糖類も、目的に応じて使用することができる。具体的には、インキ粘度の調整、耐ドライアップ性能向上などの効果をもたらすものとして、デキストリン、λ-カラギーナン等が挙げられる。さらには、分散安定性の改良効果をもたらすものとして、メチルセルロースやヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体等が挙げられる。
インキ組成物が顔料などの主溶媒である水に不溶な状態で存在し得る成分を含む場合、そのインキを収容する筆記具のペン先などで水が蒸発し、インキが乾燥固化してインキ流路などが詰まってしまうことがある。このような現象が起きると、インキ吐出性に影響が出て、その筆記具はインキの残量はあるものの、再び筆記できなくなることがある。このため、耐ドライアップ性能を向上させることが好ましい。よって、例えばボールペンのチップ先端における耐ドライアップ性能の向上も考慮する必要がある。デキストリンは、ペン先に被膜を形成してその被膜によってインキ中の溶媒の蒸発を防ぐ効果を持つ。このため、デキストリンを用いることは、耐ドライアップ性能に優れたインキ組成物を得ることができるため効果的である。
デキストリンの質量平均分子量については、5,000~120,000であることが好ましい。120,000以上であると、ペン先に形成される被膜が硬く、ドライアップ時の書き出しにおいて、筆跡がカスレやすくなる傾向がある。一方、5,000未満だと、経時的な分散安定性を向上させる程度の粘度変化を与えにくく、さらにデキストリンの吸湿性が高くなりやすく、ペン先に生ずる被膜が柔らかく、ペン先で安定して維持しにくく、インキ中の溶媒の蒸発が抑制しにくい傾向にある。上記効果の向上をさらに考慮すると、質量平均分子量が、20,000~100,000であるデキストリンを用いることが好ましい。
デキストリンの含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1~5質量%が好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、耐ドライアップ性能の向上効果が十分得られない傾向にあり、5質量%を越えると、インキ中で溶解しづらい傾向があるためである。よりインキ中の溶解安定性を考慮すれば、0.1~3質量%が好ましく、より耐ドライアップ性能の向上を考慮すれば、1~3質量%が最も好ましい。
本発明によるインキ組成物は、2種類以上の多糖類を含んでいてもよい。
pH調整剤としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの無機塩類、トリエタノールアミンやジエタノールアミンなどの水溶性のアミン化合物などの有機塩基性化合物、乳酸およびクエン酸などが挙げられる。pH調整剤の含有率は、インキ組成物に対して、0.1~25質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましい。
防錆剤としては、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、サポニン、またはジアルキルチオ尿素などが挙げられる。
防腐剤としては、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(以下、MITということがある)、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(以下、OITということがある)、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3オン、N-(n-ブチル)-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバマート安息香酸ナトリウム、ベンゾトリアゾール及びフェノールなどが挙げられる。これらの防腐剤の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として20~200ppmであることが好ましい。また、これらのうちMITとOITとのを組み合わせて用いると抗菌性が向上するので好ましい。この場合、OITの含有率は、インキ組成物の総質量を基準として1~50ppmであることが好ましく、OITとMITとの配合比が、質量基準で1:1~10:1であることが好ましい。
本発明によるインキ組成物は、上記した水分散性樹脂以外の、比較的水に対する親和性に劣る有機樹脂粒子を用いることができる。このような有機樹脂粒子を用いるとインキの垂れさがりを抑制することができる。本発明で用いることができる有機樹脂粒子としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのオレフィン系樹脂粒子や、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ナイロン樹脂などの化学構造中に窒素原子を含む含窒素樹脂粒子が挙げられる。これらの有機樹脂粒子は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
オレフィン系樹脂粒子の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン、ならびにそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、インキ漏れ抑制や書き味を向上することを考慮すれば、ポリエチレンを用いることが好ましく、具体的には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低分子ポリエチレン、変性ポリエチレン、変性高密度ポリエチレンなどが挙げられる。その中でもインキ漏れ抑制効果を考慮すれば、低密度ポリエチレン、低分子ポリエチレン、変性ポリエチレンが好ましく、特に低密度ポリエチレンは、他種のポリエチレンよりも融点が低く、柔らかい性質があるため、ポリエチレン粒子が密着しやすく、粒子間の隙間を生じづらく、インキ漏れしづらいため、低密度ポリエチレンが好ましく、さらに、低密度ポリエチレンは、柔らかいため、書き味を向上するなど、好適に用いることが可能である。オレフィン系樹脂粒子は、必要に応じてポリオレフィン以外の材料を含んでいてもよい。
有機樹脂粒子の形状については、球状、もしくは異形の形状のものなどが使用できるが、摩擦抵抗を低減することを考慮すれば、球状樹脂粒子が好ましい。ここでいう球状樹脂粒子とは、真球状に限定されるものではなく、略球状の樹脂粒子や、略楕円球状の樹脂粒子などでも良い。
また、有機樹脂粒子の含有率について、インキ組成物全量に対し、0.01~10.0質量%がより好ましい。これは、有機樹脂粒子の含有率が、0.01質量%未満だとインキ漏れを抑制しづらく、10.0質量%を越えると、凝集構造が強くなりやすく、書き味やドライアップ性能に影響が出やすいためである。さらに、より考慮すれば、0.02~5.0質量%が好ましく、0.03~1.0が特に好ましく、最も好ましくは、0.05~0.5質量%が好ましい。
本発明におけるインキ組成物は、適度な粘度を有することによって、インキ垂れ下がり、インキ漏れ、あるいは筆跡の滲みなどが良好に維持される。具体的には、本発明によるインキ組成物の粘度は、20℃環境下、剪断速度1.92sec-1で、100~5000mPa・sであることが好ましく、1000~3500mPa・sであることがより好ましく、1500~3000mPa・sであることがさらに好ましい。インキ組成物の粘度が上記数値範囲内であれば、分散安定性に優れ、良好なインキ吐出性有し、にじみなどない良好な筆跡を得ることができる。
<筆記具>
本発明の筆記具用水性インキ組成物を充填する筆記具の構造、形状は特に限定されるものではなく、従来より汎用なものが適用でき、ボールペンチップをペン先とするボールペン、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップなどをペン先としたマーキングペンやサインペン、金属製のペン先を用いた万年筆などの各種筆記具に用いることができる。本発明によるインキ組成物は、これらのうちボールペンに用いることが好ましく、さらには加圧式ボールペンにも適用可能である。
また、本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具としては、インキ組成物を直に充填する構成のものであってもよく、インキ組成物を充填することのできる、インキ収容体またはインキ吸蔵体を備えるものであってもよい。また、前記インキ収容体またはインキ吸蔵体が、筆記具本体に着脱自在に交換可能な構造をもつインキカートリッジ式筆記具であってもよい。
また、本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具は、ペン先を覆うキャップを備えたキャップ式筆記具や、ノック式、回転式およびスライド式などの軸筒内にペン先を収容可能な出没式ボールペンが挙げられる。
また、本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具の供給機構についても特に限定されるものではなく、例えば、(機構1)繊維束などからなるインキ誘導芯をインキ流量調節部材として備え、インキ組成物をペン先に供給する機構、(機構2)くし溝状のインキ流量調節部材を備え、これを介在させ、インキ組成物をペン先に供給する機構、(機構3)弁機構によるインキ流量調節部材を備え、インキ組成物をペン先に供給する機構、および(機構4)インキ流量調節部材なしに直接、インキ組成物をペン先に供給する機構などを挙げることができる。
本発明の筆記具用水性インキ組成物をボールペンに充填した場合のボールペンの仕様について検討したところ、水性ボールペンの100mあたりのインキ消費量をA(mg)、前記ボール径をB(mm)とした場合、110≦A/B≦600の関係とすることが好ましく、120≦A/B≦500の関係とすることが好ましく、150≦A/B≦450とすることがより好ましい。これは、上記範囲とすることで、ボール径に対して、適正なインキ消費量とすることで、インキ流動性を良好とし、筆跡カスレなどを抑制することで、良好な筆跡が得られやすいためである。
なお、インキ消費量については、20℃、筆記用紙JIS P3201筆記用紙上に筆記角度65°、筆記荷重100gの条件にて、筆記速度4m/分の速度で、試験サンプル5本を用いて、らせん筆記試験を行い、その100mあたりのインキ消費量の平均値を、100mあたりのインキ消費量と定義する。また、ボール径については、特に限定されないが、一般に0.1~2.0(mm)程度のボールを用いる。
また、ボールペンチップの仕様については、ボールペンチップ中のボールの縦軸方向の移動可能量(クリアランス)を、20~50μmとするのが好ましく、30~45μmとするのが好ましい。これは、上記範囲であれば、インキ吐出量を適切に調整し、筆跡のカスレなどを抑制することで、良好な筆跡が得られやすいためであり、さらにクリアランスが上記範囲内であれば、前記の比A/Bも調整しやすい。
ボールペンチップのボールの縦軸方向への移動可能量(クリアランス)とは、ボールがボールペンチップ本体の縦軸方向への移動可能な距離を示す。
<インキ組成物の製造方法>
本発明によるインキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1~2および比較例1~5>
表1に記載された組成のインキ組成物を調製した。調製したインキ組成物について、それぞれ下記の条件で低温安定性および筆跡乾燥性(筆跡の耐擦性)を評価した。
低温安定性
直径0.5mmの超硬合金製ボールを回転自在に抱持したボールペンチップ(ボールの縦軸方向の移動量(クリアランス)30μm)を先端に有するインキ収容体を準備した。このインキ収容体の内部に調製したインキ組成物を充填させたレフィルを作製し、このレフィルを株式会社パイロットコーポレーション製のゲルインキボールペン(商品名:ジュース)に装着し、ボールペンを得た。得られたボールペンを試験用ボールペンとした。この試験用ボールペンを、-10℃または-20℃で3日間貯蔵し、貯蔵の前後でインキフローを測定し、その変化率に応じて評価した。
(基準)
S: ±10%以内
A: ±20%以内
B: ±40%以内
C: ±60%以内
D: ±70%以内
インキフローの測定方法
インキフローは、試験用ボールペンを、25℃環境下で、筆記用紙JIS P3201筆記用紙上に筆記角度65°、筆記荷重100gの条件にて、筆記速度4m/minの速度で、試験サンプル5本用いて、らせん筆記筆記試験を行い、その10mあたりのインキ消費量の平均値とした。
筆跡乾燥性(筆跡の耐擦性)
調製したインキ組成物を用いて、上記と同様にして、試験用ボールペンを準備した。試験用ボールペンを用いて、非浸透性の樹脂フィルム表面に筆記後、120sec後にティッシュペーパーで筆跡を擦過し、下記基準により評価した。
(基準)
A: 十分乾燥していて、筆跡はこすり取られない。
B: 概ね乾燥しており、筆跡はほとんど削り取られない。
C: 乾燥しておらず、筆跡がこすり取られる。
得られた結果は表1に示すとおりであった。
Figure 2022101101000002
表中の含有率は、各成分の固形分のインキ組成物の総質量に対する含有率であり、溶媒や分散媒は含まない。
*1: JoncrylHPD196(商品名、BASF社製、濃度36%)
*2: Neocryl XK-190(商品名、ネオレジン社製、濃度45%、MFT0℃)
*3: プライサーフA215C(商品名、第一工業製薬株式会社、HLB値11.5)
*4: サーフィノール2502(商品名、エアープロダクツジャパン株式会社製)
*5: キサンタンガム(濃度2.4%)
*6: 質量平均分子量30,000、サンデックシリーズ(商品名、三和デンプン工業株式会社)
*7: メトローズSM-15(商品名、信越化学工業株式会社製)
*8: プロキセルXL2(商品名、ロンザジャパン株式会社製、濃度10%)
*9: ケミパールM200(商品名、三井化学株式会社製、濃度40%)

Claims (8)

  1. 着色剤、沸点が100℃以上の水溶性オキソラン化合物、水系樹脂、および水を含んでなることを特徴とする筆記具用水性インキ組成物。
  2. 前記水溶性オキソラン化合物が、下記式(1):
    Figure 2022101101000003
    (ここで、
    Xは、OまたはCRであり、
    Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1~3のアルキル、炭素数1~3のヒドロキシアルキル、炭素数1~3のアミノアルキル、または炭素数1~3のアルコキシである)
    で表される、請求項1に記載のインキ組成物。
  3. 水系樹脂が、水溶性樹脂、水分散性樹脂、またはそれらの混合物である、請求項1または2に記載のインキ組成物。
  4. リン酸エステル系界面活性剤をさらに含んでなる、請求項1~3のいずれか1項に記載のインキ組成物。
  5. 剪断減粘性付与剤をさらに含んでなる、請求項1~4のいずれか1項に記載のインキ組成物。
  6. 20℃、剪断速度1.92sec-1で測定された粘度が、100~5000mPaである、請求項1~5のいずれか1項に記載のインキ組成物。
  7. ボールペン用水性インキ組成物である、請求項1~6のいずれか1項に記載のインキ組成物。
  8. 請求項1~7に記載のインキ組成物を収容してなる筆記具。
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