JP2022100971A - 二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム - Google Patents

二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム Download PDF

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誠 石川
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【課題】植物由来の1,4-ブタンジオールを用いたPBTを含む樹脂組成物からなる二軸延伸PBTフィルムを提供すること、特に、カーボンニュートラルとなるフィルムでありながら、従来の化石燃料を原料とする二軸延伸PBTフィルムと機械的特性等の物性面で遜色のない、二軸延伸PBTフィルムを提供すること。【解決手段】樹脂成分がポリブチレンテレフタレート樹脂からなるフィルムであって、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ジオール成分として植物由来の1,4-ブタンジオールを含むポリブチレンテレフタレート樹脂(A)と、ジオール成分として化石燃料由来の1,4-ブタンジオールのみを含むポリブチレンテレフタレート樹脂(B)とを、質量比で(A):(B)=100~1質量部:0~99質量部の割合で含有する樹脂からなることを特徴とする、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム。【選択図】図1

Description

本発明は、植物由来の原料から得られたバイオマスポリブチレンテレフタレート樹脂を含むフィルムに関し、延伸加工の安定性および生産性が良好であり、かつ異方性が少なく、機械的性質や寸法安定性に優れた二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(以下、PBT)フィルムに関するものである。
PBT樹脂は、優れた機械的強度、耐熱性、耐薬品性、柔軟性、透明性、表面光沢性、耐候性、および低吸水性等の特性を有しており、従来から代表的なエンジニアリングプラスチックとして幅広い分野、用途で利用されてきた。特に、注目すべきPBT樹脂の特徴として、その他汎用プラスチックと比べて結晶化速度が著しく高い点が挙げられる。その特徴を活かして、PBT樹脂は、各種自動車部品や電気・電子部品等の射出成形分野において、ハイサイクル成形を実現する樹脂として近年広く用いられている。
またフィルム分野では、主に一般惣菜向け包装容器としてキャスト成形向けに未延伸PBTフィルム、飲料ボトルのシュリンクラベル向けに一軸延伸PBTフィルムが提案され、さらに強度や寸法安定性の改善を図った二軸延伸PBTフィルムが検討されている。二軸延伸PBTフィルムは上述の結晶化速度の速さからその製造が困難とされてきたが、近年、極めて高い冷却速度で急冷製膜した未延伸原反を縦横同時二軸延伸する製造方法が提案されている(例えば特許文献1等)。この方法により、延伸安定性、生産性が良好であるとともに、異方性が少なく、上記の条件を満たす機械的性質や寸法安定性に優れた二軸延伸PBTフィルムを得ることが出来るとされ、食品包装をはじめ、多くのパッケージ用途で使用されてきている。
特許6032780号公報
近年、地球環境への負荷低減策として、カーボンニュートラルな再生可能エネルギーであるバイオマス、すなわち生物由来の資源を原料としたバイオマスプラスチック(植物由来プラスチックなどとも称する)の実用化が求められている。植物由来のプラスチックとしてはポリ乳酸やポリヒドロキシアルカノエートなどがすでに実用化されている。しかし上記PBT樹脂やそのフィルム製品において、特にPBTフィルムの原料として植物由来成分の使用に関する言及はこれまでになされていない。
本発明の目的は、植物由来の1,4-ブタンジオールを用いたPBTを含む樹脂組成物からなる二軸延伸PBTフィルムを提供することであり、カーボンニュートラルとなるフィルムでありながら、従来の化石燃料を原料とする二軸延伸PBTフィルムと機械的特性等の物性面で遜色のない、二軸延伸PBTフィルムを提供することである。
本発明者らは、PBT樹脂の原料であるジオール成分、中でも1,4-ブタンジオールに着目した。そして従来の化石燃料(化石資源)から得られる1,4-ブタンジオールに代えて、植物由来の1,4-ブタンジオールをその原料としたポリブチレンテレフタレート樹脂を含有するPBT樹脂が、従来の化石燃料から得られる1,4-ブタンジオールの
みを用いて製造されたPBT樹脂を用いて製造した二軸延伸PBTフィルムと、同一の製造条件にて、二軸延伸PBTフィルムを製造することが出来ることを見出した。加えて、得られた二軸延伸PBTフィルムは、機械的特性等の物性面においても、化石燃料由来の原料のみを用いた従来の二軸延伸PBTフィルムと遜色ない性能を有するものが得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
すなわち、本発明は以下の物を提供する。
[1]
樹脂成分がポリブチレンテレフタレート樹脂からなるフィルムであって、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ジオール成分として植物由来の1,4-ブタンジオールを含むポリブチレンテレフタレート樹脂(A)と、ジオール成分として化石燃料由来の1,4-ブタンジオールのみを含むポリブチレンテレフタレート樹脂(B)とを、質量比で(A):(B)=100~1質量部:0~99質量部の割合で含有する樹脂からなることを特徴とする、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム。
[2]
前記二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムが、その4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)の引張破断強度のうち、最大値と最小値の比が1.5以下であることを特徴とする、[1]に記載の二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム。
[3]
印刷用フィルムである、[1]又は[2]に記載の二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム。
[4]
食品包装用の基材フィルム、又は、絞り成形用の基材フィルムである、[1]又は[2]に記載の二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム。
[5]
[1]乃至[4]のうち何れか一項に記載の少なくとも一層の二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムと、下記(a)より選ばれる少なくとも一種の積層要素とを含む、積層体。
(a)二軸延伸ナイロン6フィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸エチレン-ビニルアルコール系フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリスチレンフィルム、二軸延伸芳香族ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリ塩化ビニリデンフィルム、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム、各種コートフィルム、各種蒸着フィルム、未延伸ポリエチレン系フィルム、未延伸ポリプロピレン系フィルム、未延伸ポリ塩化ビニルフィルム、エチレン-酢酸ビニルフィルム、アイオノマーフィルム、その他エチレンコポリマー系フィルム、未延伸ポリビニルアルコールフィルム、未延伸ナイロン6フィルム、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、紙、不織布、発泡ポリスチレン。
本発明によれば、PBTを主たる樹脂成分として含んでなる樹脂組成物において、ジオール成分が植物由来の1,4-ブタンジオールであるPBTを、全PBTに対して1~100質量%の割合で含むことにより、カーボンニュートラルな二軸延伸PBTフィルムを実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
また、本発明の二軸延伸PBTフィルムは、従来の化石燃料から得られる原料のみから製造された二軸延伸PBTフィルムと比べても、機械的特性等の物性面で遜色がない性能を有し、従来の化石燃料由来の原料のみを用いた二軸延伸PBTフィルムを代替することができる。
チューブラー同時二軸延伸装置の概略図である。
本発明は、植物由来原料を用いたポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂からなる、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムを対象とする。以下本明細書において、ポリブチレンテレフタレート樹脂を「PBT樹脂」、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムを「二軸延伸PBTフィルム」とも称する。
以下に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
[二軸延伸PBTフィルムの原料]
本発明の二軸延伸PBTフィルムは、植物由来原料を用いたPBT樹脂を含む樹脂からなり、すなわち、植物由来原料を含むPBT樹脂と化石燃料由来の原料からなるPBT樹脂との混合樹脂からなる二軸延伸フィルム、もしくは植物由来原料を含むPBT樹脂のみからなる二軸延伸フィルムである。
なお本発明において、PBT樹脂は、ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルであれば特に限定されるものではなく、具体的にはジオール(グリコール成分)としての1,4-ブタンジオール、又はそのエステル形成性誘導体と、二塩基酸成分としてのテレフタル酸、又はそのエステル形成性誘導体を主成分とし、それらを縮合して得られるホモポリマータイプのポリエステル(ポリブチレンテレフタレート)、または前記ポリフチレンテレフタレートを主体とするコポリマータイプのポリエステルとすることができる。
上記植物由来原料を含むPBT樹脂とは、該樹脂を構成するジオール成分(グリコール成分)及び二塩基酸成分のうち、少なくとも一方の成分が植物由来原料を含むPBT樹脂をいう。このとき、前記少なくとも一方の成分は、すべてが植物由来原料からなる成分であってもよいし、また植物由来原料と、植物由来以外の原料、すなわち化石燃料由来の原料の双方を含む成分であってもよい。
本発明では、特にジオール成分として植物由来の1,4-ブタンジオールを含むPBT樹脂(以下、樹脂(A)と称する)を少なくとも含み、さらに、ジオール成分として化石燃料由来の1,4-ブタンジオールのみを含むPBT樹脂(以下、樹脂(B)と称する)を含み得る、PBT樹脂からなる二軸延伸PBTフィルムの態様を対象とすることができる。
上記樹脂(A)としては、ジオール成分(ジオール単位ともいう)の全体量に対して、植物由来の1,4-ブタンジオールの割合が100%であるジオール成分を用いたPBT樹脂であってもよいし、該ジオール成分として、植物由来の1,4-ブタンジオールに加えて化石燃料由来の1,4-ブタンジオールを用いたPBT樹脂であってもよい。特に好ましい樹脂(A)としては、植物由来の1,4-ブタンジオールの割合が100%であるジオール成分を用いたPBT樹脂を挙げることができる。
また化石燃料由来の原料からなるPBT樹脂として、特に本発明にあっては、上述のジオール成分として化石燃料由来の1,4-ブタンジオールのみを含むPBT樹脂(以下、樹脂(B)と称する)を挙げることができる。
本発明の二軸延伸PBTフィルムにおいて、樹脂成分であるPBT樹脂における樹脂(A)と樹脂(B)の割合は、質量比で(A):(B)=100~1質量部:0~99質量部の割合とすることができる。
また本発明において、最適な機械的強度特性を付与するためには、上記樹脂(A)及び樹脂(B)ともに、融点200~250℃、IV値0.90~1.35dl/gの範囲の
ものが好ましく、さらには融点215~225℃、IV値1.15~1.30dl/gの範囲のものが特に好ましい。
なお上記に挙げたポリブチレンテレフタレートを主体とするコポリマータイプのポリエステル(コポリエステル)とは、二塩基酸成分としてのテレフタル酸成分の一部を、例えばイソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の他の二塩基酸成分に置き換えたもの、及び/または、ジオール(グリコール)成分としての1,4-ブタンジオール成分の一部を、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等の他のジオール(グリコール)成分に置き換えたものを縮合させたポリエステルである。上記コポリエステルとしては、ブチレンテレフタレート単位が70%以上のものを好ましく挙げることができる。
また本発明に使用されるPBT樹脂(例えば樹脂(A)、又は樹脂(A)と樹脂(B)の混合物(混合樹脂))には、物性に支障をきたさない範囲で、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリ(エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレート)などの他のポリエステル類や、ポリカーボネート、ポリアミド等の他の樹脂を混合した後、後述する延伸加工を行ってもよい。また前記PBT樹脂と前記他の樹脂とを積層して延伸加工を行ってもよい。
さらに本発明に使用される上記PBT樹脂(また場合により上記他の樹脂)には、必要に応じて滑剤、アンチブロッキング剤、無機増量剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、結晶化抑制剤、結晶化促進剤等の添加剤を加えても差し支えない。
また、フィルム製造に使用されるPBT樹脂ペレットは加熱溶融時の加水分解による粘度低下を避けるため、加熱溶融前に水分率が0.05wt%以下、好ましくは0.02wt%以下になるように十分予備乾燥を行った上で使用するのが好ましい。
[二軸延伸PBTフィルムの製造]
(未延伸原反の製造方法)
二軸延伸PBTフィルムを安定的に製造するには、延伸前未延伸原反の結晶化を極力抑制する必要があり、押出されたPBT溶融体を冷却して製膜する際、該PBTの結晶化温度領域をある速度以上で冷却する、すなわち原反冷却速度が重要な因子となる。その原反冷却速度は200℃/秒以上、好ましくは250℃/秒以上、特に好ましくは350℃/秒以上であり、高い冷却速度で製膜された未延伸原反は極めて低い結晶状態を保っているため、延伸時のバブルの安定性が飛躍的に向上する。さらに高速での製膜も可能になることから、生産性も向上する。冷却速度が200℃/秒未満では、得られた未延伸原反の結晶性が高くなり延伸性が低下するばかりでなく、極端な場合には延伸バブルが破裂し、延伸が継続しない場合がある。
原反製膜方式は、前記原反冷却速度を満たす方法であれば特に限定されるものでは無いが、急冷製膜の点では内外直接水冷式がもっとも適している。その内外直接水冷式による原反製膜法の概要を以下に説明する。
まず、PBT樹脂は210~280℃の温度に設定された押出機によって溶融混練され、Tダイ製膜の場合は、シート状の溶融樹脂を水槽に浸漬することにより内外とも直接水冷する。一方、環状製膜の場合は、押出機に下向きに取り付けられた環状ダイより下方に押し出され、溶融管状薄膜が成形される。
次に環状ダイに連結されている冷却マンドレルに導かれ、冷却マンドレル各ノズルから導入された冷却水が溶融管状薄膜の内側に直接接触して冷却される。同時に、冷却マンドレルと組み合わせて使用される外部冷却槽からも冷却水が流され、溶融管状薄膜の外側にも冷却水が直接接触して、溶融管状薄膜が冷却される。内部水、および外部水の温度は30℃以下が好ましく、急冷製膜の観点では20℃以下が特に好ましい。30℃より高くな
ると、原反の白化や冷却水の沸騰による原反外観不良等を招き、延伸も徐々に困難になる場合がある。
(二軸延伸PBTフィルムの製造方法)
PBT未延伸原反は、25℃以下、好ましくは20℃以下の雰囲気温度に保ちつつ延伸ゾーンまで搬送する必要があり、当該温度管理下では滞留時間に関係無く、製膜直後の未延伸原反の結晶性を維持することが出来る。この延伸開始点までの結晶化制御は、前記未延伸原反の製膜技術とともに、PBT樹脂の二軸延伸を安定して行う上で重要なポイントと言える。
二軸延伸法は、特に限定されず、例えばチューブラー方式、あるいはテンター方式で縦横同時、または逐次二軸延伸する方式等から適宜選択される。得られる二軸延伸PBTフィルムの縦横の強度バランスの点で、チューブラー法による同時二軸延伸法が特に好ましい。
図1はチューブラー法同時二軸延伸装置の概略図である。延伸ゾーンに導かれた未延伸原反1は、一対のニップロール2間に挿通された後、中に空気を圧入しながらヒーター3で加熱するとともに、延伸終了点に冷却リング4よりエアーを吹き付けることにより、チューブラー法によるMD(流れ方向)、及びTD(垂直方向)同時二軸延伸フィルム7が得られる。
延伸倍率は、延伸安定性や得られた二軸延伸PBTフィルムの強度物性、透明性、及び厚み均一性を考慮すると、MD及びTDそれぞれ2.7倍乃至4.0倍の範囲であることが好ましい。延伸倍率が2.7倍未満である場合、得られる二軸延伸PBTフィルムの引張強度や衝撃強度が不十分となる虞があり、好ましくない。また4.0倍超の場合、延伸により過度な分子鎖のひずみが発生するため、延伸加工時に破断やパンクが頻繁に発生し、安定的に生産出来ない虞がある。
延伸温度は、40℃乃至80℃の範囲が好ましく、特に好ましくは45℃乃至65℃である。前述した高い冷却速度で製造した未延伸原反は、結晶性が低いため、比較的低温域の延伸温度で安定して延伸可能である。80℃を超える高温延伸では、延伸バブルの揺れが激しくなり、大きな延伸ムラが発生して厚み精度の良好なフィルムは得られない虞がある。一方、40℃未満の延伸温度では、低温延伸による過度な延伸配向結晶化が発生し、フィルムの白化等を招き、場合によって延伸バブルが破裂し延伸継続困難となる虞がある。
このように二軸延伸加工を施すことにより、特に強度物性が飛躍的に向上し、かつ異方性が少ない二軸延伸PBTフィルムを得ることできる。
得られた二軸延伸PBTフィルムは、これを熱ロール方式またはテンター方式、あるいはそれらを組み合わせた熱処理設備に任意の時間投入し、180~240℃、特に好ましくは190~210℃で熱処理を行うことにより、熱寸法安定性に優れた二軸延伸PBTフィルムを得ることができる。熱処理温度が240℃よりも高い場合は、ボーイング現象が大きくなり過ぎて幅方向での異方性が増加する、または結晶化度が高くなり過ぎるため強度物性が低下してしまう。一方、熱処理温度が180℃よりも低い場合は、フィルムの熱寸法安定性が大きく低下するため、ラミネートや印刷加工時にフィルムが縮み易くなり、実用上問題が生じる。
本発明の二軸延伸PBTフィルムの厚みは、特に制限されるものでは無いが、一般コンバーティングフィルムとして、すなわち積層体の一積層要素として用いる場合は5~50μm、好ましくは10~30μmである。
本発明の二軸延伸PBTフィルムは、その4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)における引張破断強度のうち、最大値と最小値の比が1.5以下に調整
することが好ましく、特に好ましくは1.3以下である。これによりさらに優れたラミネート加工適正を付与することが可能となる。
また本発明の二軸延伸PBTフィルムの一態様において、その4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)における引張破断強度を、いずれも160MPa以上とすることができる。また上記4方向の引張破断強度は、例えばいずれも170MPa以上、180MPa以上、190MPa以上、あるいは200MPa以上とすることができる。これにより、耐ピンホール性や耐衝撃性、耐突刺性、およびラミネート加工適性等が格段に向上することが期待できる。なお引張破断強度が160MPaより小さい場合、十分な強度が得られず、破袋等の原因にもなる虞がある。
さらに本発明の二軸延伸PBTフィルムの一態様において、その引張破断伸度は、例えば50%以上180%以下、80%以上180%以下とすることができる。引張破断伸度を上記範囲とすることにより、ラミネート工程中のフィルムの破断や伸び等の発生を抑制できることが期待できる。
本発明の二軸延伸PBTフィルムは、単独で用いることも可能だが、一種または二種以上の他基材(積層要素)と共に積層体を構成する積層フィルムとして、例えば、他基材と貼り合わせるコンバーティングフィルムとして用いることが出来る。なお積層方法はラミネーティング(貼合)、コーティング(塗布)、共押出など特に限定されない。
上記他基材(積層要素)のうち、代表的なものとして、二軸延伸ナイロン6フィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸エチレン-ビニルアルコール系フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリスチレンフィルム、二軸延伸芳香族ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリ塩化ビニリデンフィルム、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム、各種コートフィルム、各種蒸着フィルム、未延伸ポリエチレン系フィルム、未延伸ポリプロピレン系フィルム、未延伸ポリ塩化ビニルフィルム、エチレン-酢酸ビニルフィルム、アイオノマーフィルム、その他エチレンコポリマー系フィルム、未延伸ポリビニルアルコールフィルム、未延伸ナイロン6フィルム、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、紙、不織布、発泡ポリスチレン等が挙げられる。
また、本発明の二軸延伸PBTフィルムは印刷用フィルムとして、すなわち、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷といった既知の印刷方法により印刷を施して用いることも出来る。
本発明の二軸延伸PBTフィルムは、特に食品包装用の基材フィルムや絞り成形用の基材フィルムとして、例えば、リチウムイオン2次電池用や医薬PTP用等の冷間(常温)成形用フィルム、および食品等の容器成形貼り合わせ用フィルムとして、好適に用いることが出来る。
以下に実施例および比較例を用いて、本発明を具体的に説明する。
<実施例1>
全二塩基酸成分(ジカルボン酸単位)としてテレフタル酸、全ジオール成分(ジオール単位)として植物由来の1,4-ブタンジオールを使用して合成されたポリブチレンテレフタレート樹脂ペレット(樹脂A、融点=224℃、IV値=1.15dl/g)と、全二塩基酸成分(ジカルボン酸単位)としてテレフタル酸、全ジオール成分(ジオール単位)として化石燃料由来の1,4-ブタンジオールを使用して合成されたポリブチレンテレフタレート樹脂ペレット(樹脂B-1、融点=224℃、IV値=1.26dl/g)を、樹脂A:樹脂B-1=1:99の質量比で混合し、140℃で5時間熱風乾燥機にて乾燥した。
これら混合・乾燥した樹脂ペレットを押出機中、シリンダーおよびダイ温度210~2
60℃の条件で溶融混練して溶融管状薄膜を環状ダイより下方に押し出した。引き続き、冷却マンドレルの外径を通しガイドロールで折り畳んだ後、引取ニップロールにより1.2m/分の速度で製膜引取りを行った。未延伸原反の厚みは130μm、折径は143mmであり、PBT樹脂中にはあらかじめ滑剤としてステアリン酸マグネシウムを1000ppm添加した。図1に示す構造のチューブラー同時二軸延伸装置にて、上記の条件で製膜した未延伸原反1を20℃の雰囲気中で低速ニップロール2まで搬送し、縦横同時二軸延伸を行った。延伸倍率はMDが3.0倍、TDが2.8倍であり、延伸温度は60℃であった。次に、この二軸延伸フィルム7を熱ロール式熱処理装置、次いでテンター式熱処理設備に投入し、210℃で熱処理を施すことにより本発明の二軸延伸PBTフィルムを得た。なお、二軸延伸PBTフィルムの厚みは15μmであった。
(二軸延伸PBTフィルムの引張破断強伸度の評価方法)
得られた二軸延伸PBTフィルムの引張破断強伸度は、(株)オリエンテック製-テンシロン万能試験機(型式:RTC-1210-A)を使用し、試料幅15mm、チャック間100mm、引張速度200mm/分の条件で、0℃(MD)方向/45°方向/90°(TD)方向/135°方向の4方向についてそれぞれ測定を行った。得られた応力-ひずみ曲線に基づいて求めた、各方向での引張破断強度及び引張破断伸度、ならびに4方向の引張破断強度のうち最大値と最小値の比を表1に示す。
<実施例2~6、比較例1~7>
表1に示す樹脂Aと樹脂B-1の混合比を変更した以外、あるいは、樹脂Aに代えて樹脂B-2[全二塩基酸成分(ジカルボン酸単位)としてテレフタル酸、全ジオール成分(ジオール単位)として化石燃料由来の1,4-ブタンジオールを使用して合成されたポリブチレンテレフタレート樹脂ペレット:融点=224℃、IV値=1.15dl/g]を用い、樹脂B-1と樹脂B-2を種々の混合比とした以外は、実施例1と同様に二軸延伸PBTフィルムを製造し、その引張破断強伸度を測定した。得られた結果を併せて表1に示す。
Figure 2022100971000002
表1に示すように1,4-ブタンジオールが植物由来であるPBT樹脂を使用したフィ
ルムにおいても、従来の化石燃料由来の原料のみを使用したPBT樹脂を用いたフィルムと遜色ない物性を有する二軸延伸PBTフィルムを実現できることが確認された。
また、植物由来原料のPBT樹脂である樹脂A、又は該樹脂Aと同一のIV値を有する化石燃料由来の原料を用いたPBT樹脂である樹脂B-2を、これらとは異なるIV値を有する化石燃料由来の原料を用いたPBT樹脂である樹脂B-1と混合比を変えて二軸延伸PBTフィルムを得たところ、混合比の変更による引張強伸度の変化の挙動は、原料によらず、同様の傾向を示した。
使用樹脂のIV値によって引張強度はコントロールできることから、上記の結果は、植物由来の1,4-ブタンジオールを使用し、高いIV値を有するPBT樹脂を用いて二軸延伸フィルムを得ることにより、表1に示す実施例のフィルムと比べて、より高い引張強度を有する二軸延伸PBTフィルムを実現させることが可能となることが示唆される。
本発明の植物由来原料を含む二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムによって、従来よりも環境負が少なく、且つ、従来の化石燃料由来の原料を用いた二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムと性能面において遜色のないフィルムを提供できる。
1 未延伸原反
2 ニップロール
3 ヒーター
4 冷却リング
5 ガイドロール
6 ニップロール
7 二軸延伸フィルム

Claims (5)

  1. 樹脂成分がポリブチレンテレフタレート樹脂からなるフィルムであって、
    前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ジオール成分として植物由来の1,4-ブタンジオールを含むポリブチレンテレフタレート樹脂(A)と、ジオール成分として化石燃料由来の1,4-ブタンジオールのみを含むポリブチレンテレフタレート樹脂(B)とを、質量比で(A):(B)=100~1質量部:0~99質量部の割合で含有する樹脂からなることを特徴とする、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム。
  2. 前記二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムが、その4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)の引張破断強度のうち、最大値と最小値の比が1.5以下であることを特徴とする、請求項1に記載の二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム。
  3. 印刷用フィルムである、請求項1又は請求項2に記載の二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム。
  4. 食品包装用の基材フィルム、又は、絞り成形用の基材フィルムである、請求項1又は請求項2に記載の二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム。
  5. 請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の少なくとも一層の二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムと、下記(a)より選ばれる少なくとも一種の積層要素とを含む、積層体。
    (a)二軸延伸ナイロン6フィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸エチレン-ビニルアルコール系フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリスチレンフィルム、二軸延伸芳香族ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリ塩化ビニリデンフィルム、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム、各種コートフィルム、各種蒸着フィルム、未延伸ポリエチレン系フィルム、未延伸ポリプロピレン系フィルム、未延伸ポリ塩化ビニルフィルム、エチレン-酢酸ビニルフィルム、アイオノマーフィルム、その他エチレンコポリマー系フィルム、未延伸ポリビニルアルコールフィルム、未延伸ナイロン6フィルム、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、紙、不織布、発泡ポリスチレン。

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