JP2022100427A - ふかし壁構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】遮音性能を向上させると共に、空間部に設置する設備の制約を少なくすることができるふかし壁構造を提供する。【解決手段】間仕切り壁2と、この間仕切り壁2の外側に固定された下地材3と、間仕切り壁の両側に間隔をあけた状態で下地材3を介して設置されたふかし壁4とを備えるふかし壁構造1である。間仕切り壁2、下地材3及びふかし壁4に囲われた空間6に、固有の共鳴周波数を有し、かつ長手方向に沿って形成された多数の孔8を有する断面円形の複数の共鳴管5を下地材3に沿わせるように取り付け、空間6に対する共鳴管5の体積専有率を5~50%として、遮音性能の向上と共に、空間6に設置する設備の制約を少なくする。【選択図】図1
Description
本発明は、建築物における間仕切り壁の片側或いは両側に空間を設けた状態で更にふかし壁を設置した構造に関するものであり、特に特定音域における遮音性能の向上を図ることができるふかし壁構造に関するものである。
リノベーションや室内配線等を隠す目的で集合住宅やホテル等の間仕切り壁(戸境壁、界壁含む)に対して、空間を設けた状態でふかし壁を設置したふかし壁構造が用いられている。このようなふかし壁構造では、空間に存在する空気層がばねとなり、この空気ばね効果によって共鳴透過が生じ、低音域の周波数で遮音性能が低下してしまう。このため、間仕切り壁の外側に更に壁を増やした構造であるにも関わらず、図11のように、ふかし壁構造101は、ふかし壁の無い構造100よりも遮音性能が劣ってしまうことが知られている。
遮音性能の低下はふかし壁による空気層に起因するものであるため、この空気層に吸音材や断熱材を充填し、空気ばね効果を抑制することで、遮音性能の劣化を防ぐ方法が取られている。しかし空気層を吸音材や断熱材で充填してしまうと、吸音材や断熱材のコスト及び施工コストがかかってしまう。
空気ばね効果による遮音性能の劣化を防止する方法として、次のような技術が考えられている。特許文献1には、一対の壁面要素の間の中空部に、特定の共鳴周波数を有する所定数の中空状の吸音材が配置された中空二重遮音壁構造が記載されている。
特許文献2には、界壁の片側もしくは両側に、スタッド材を介して壁パネルを取り付ける二重壁構造において、界壁と壁パネルとの間の間隔を30mm以内とし、壁パネルの面密度を4kg/m2以下とした遮音二重壁構造が記載されている。
特許文献3に記載された 乾式工法の間仕切壁構造では、耐火構造の中央壁と、その両側に配置された外側壁とから構成され、中央壁の両側に中空部を形成する中空三重壁構造を有し、音響絶縁材の敷目板を介して中央面材部を支持する間柱を有し、外側壁が音響絶縁材の敷目板を介して外側面材部を支持している。
特許文献4には、床構造体から上階構造体まで連続する壁体として施工される乾式工法の隔壁と、この隔壁の側方に形成されたふかし壁とを有する間仕切壁構造が記載されている。 この構造は、室内側壁面を形成する内装ボード材と、隔壁と内装ボード材との間に形成された中空層と、中空層と室内空間、天井裏空間又は床下空間とを通気状態に常時連通させる開口とを有している。
特許文献5には、間柱とその両側に設置された面材とを備え、間柱における面材が設けられていない空間側の面に、100~2000mmピッチで口径10~60mmの複数の孔を設けることで、低音域の性能を改善した間仕切り壁構造が記載されている。
特許文献1の構造では、一対の壁面要素の間は吸音材及び共鳴管で埋められるため、空間部が狭くなっており、空間部に設置する設備や配管等に制約がでる。更に、周波数の応じた多様な長さの共鳴管が必要であり、これによっても空間部に制約が生じる。
特許文献2の構造では、壁パネルの面密度が4kg/m2以下となり壁パネルが脆弱となるため、下地材の間隔を狭くすることで壁面としての強度を得なければならない。下地材が多くなると利用できる空間が少なくなる上、施工負担も増大する。更に、界壁と壁パネルとの間の間隔を30mm以内としていることから、空間に設置する設備や配管等に制約が出る。
特許文献3に記載された 乾式工法の間仕切壁構造では、空気層としての中空部が非常に大きくなっており、遮音性能が十分ではなく、更なる遮音性能の向上を図るためには断熱材等を要し、中空部の制約が大きくなる。
特許文献4の構造では、壁と天井、壁と床下との取り合いに調整が必要となり、施工の手間が大きくなる上、開口を形成し、更にこの開口周辺部の強度維持のための施工に多大な手間を要する。天井や床下に回り込んだ音が大きく反響する恐れがあり、遮音性能の低下が著しい。
特許文献5の構造では、間柱自体に孔加工を施しており、要求される性能によっては間柱のピッチを狭くする必要もあり、間柱間のスペースが狭くなる上、施工にも手間を要する。
本発明は従来技術の問題点に鑑み、遮音性能を向上させると共に、空間に設置する設備の制約を少なくすることができるふかし壁構造を提供することを目的とする。
本発明のふかし壁構造は、建築物に構築された間仕切り壁と、この間仕切り壁の外側に固定された下地材と、当該間仕切り壁の両側或いは片側に間隔をあけた状態で当該下地材を介して設置されたふかし壁と、を備えるふかし壁構造において、前記間仕切り壁、前記下地材及び前記ふかし壁に囲われた空間に、固有の共鳴周波数を有する管状の共鳴管が当該間仕切り壁の面内方向に沿って取り付けられていることを特徴とするものである。
本発明によれば、間仕切り壁、下地材及びふかし壁に囲われた空間に、固有の共鳴周波数を有する管状の共鳴管が当該間仕切り壁の面内方向に沿って取り付けられているため、ふかし壁の内部での空気ばね効果による共鳴透過を減少し、遮音性能の向上と共に、空間に設置する設備の制約を少なくすることができる。
前記共鳴管の周壁に、表裏を貫通する単一又は複数の孔が形成されていることが好ましい。これにより、遮音性能をより向上させることができる。
前記共鳴管に形成された孔を前記空間側に位置させることや、前記共鳴管の端部を閉塞することで遮音効果を向上させることができる。
前記共鳴管の断面形状は限定されないが、遮音性能を向上させ、かつ製造コストを抑えるためには、共鳴管を円筒状にすることが好ましい。
前記共鳴管を円筒状とした場合、当該共鳴管の内径は10~200mm、厚みは0.5~5mm、長さは50~5000mmとすることが好ましい。このようにすれば、低音域に対する遮音性能を効果的に得ることができる。
前記囲われた空間に複数の前記共鳴管が配設されていることが好ましい。複数の共鳴管を取り付けることで、共鳴効果が高まり遮音性能を格段に向上させることができる。
前記複数の共鳴管はどのように配設されていてもよく、例えば前記間仕切り壁の面内水平方向に互いに間隔をあけた状態で鉛直方向に向けて配設すればよい。この場合、大きい空間を確保でき、空間に設置する設備の制約を非常に少なくすることができる。
例えば前記共鳴管は、前記下地材に隣接させた状態で当該下地材に沿って取り付けられていればよい。この場合、湾曲し易い共鳴管であっても、下地材に沿って真っ直ぐに取り付けることができ、施工し易くなる。
前記空間に対する前記共鳴管の体積専有率は5~50%であることが好ましい。この場合、遮音性能の向上と共に、空間に設置する設備の制約を少なくすることができる。
前記共鳴管の周壁に形成された複数の孔を、当該共鳴管の長手方向に沿って形成し、当該複数の孔のピッチを50~1000mmとすることで、効果的に遮音性能の向上を図ることができる。
共鳴管に形成した孔の径を1~70mmとすることが好ましい。このようにすれば、低音域に対する遮音性能を効果的に得ることができる。
前記共鳴管を、前記囲われた空間の上端及び下端、上端のみ、下端のみに前記間仕切り壁の面内水平方向に向けて取り付けてもよい。
前記共鳴管を、加工を施さない手段によって取り付ければ、施工コストを抑制することができる。
本発明のとおり、間仕切り壁、下地材及びふかし壁に囲われた空間に、固有の共鳴周波数を有する管状の共鳴管が当該間仕切り壁の面内方向に沿って取り付けられていることにより、ふかし壁の内部での空気ばね効果による共鳴透過を減少し、遮音性能の向上と共に、空間に設置する設備の制約を少なくすることができる。
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るふかし壁構造1の斜視図であり、図2はふかし壁構造1の横断面図であり、図3はふかし壁構造1の縦断面図である。本実施形態のふかし壁構造1は、建築物に構築された間仕切り壁2と、この間仕切り壁2の両外側に固定された複数の下地材3と、間仕切り壁2の両側に間隔をあけた状態で下地材3を介して設置されたふかし壁4と、固有の共鳴周波数を有する管状の共鳴管5とを備える。
本実施形態の間仕切り壁2は界壁ともよばれ、石膏ボード、スレートボード、吸音材等によって構成された乾式のものである。間仕切り壁2の構造は限定されず、例えば建築物の上下の躯体に渡って取り付けられたLGS等の軽量鉄骨下地材、この下地材の室内側に設けられた石膏ボード等の壁面材、及び空間に設けられるグラスウール等の吸音・断熱材等からなる。なお、本実施形態における間仕切り壁2の詳細な構造の説明は省略する。
下地材3は断面矩形状のLGS等の軽量鉄骨からなり、図示しない上下の躯体に固定されたL型ランナー等にビス等で鉛直方向に向けて固定されている。図2のように、鉛直方向に延びた複数の下地材3が、間仕切り壁2の両側で当該間仕切り壁2に僅かに間隔をあけて配設されている。複数の下地材3は、間仕切り壁2の両側で当該間仕切り壁2の面内水平方向に一定間隔をおいて並列状に固定されている。下地材3には、軽量鉄骨の他、木材、樹脂等の汎用品を用いることができる。
ふかし壁4は、石膏ボード、スレートボード等からなり、上下の躯体に固定された下地材3にビス等で固定されている。このふかし壁4は、下地材3の外面に接する状態でふかし壁構造1の壁面を構成している。
ふかし壁構造1では、間仕切り壁2、下地材3及びふかし壁4に囲われた広く平たい空間6が存在している。従って、間仕切り壁2の両側のそれぞれには、複数の下地材3に仕切られた複数の空間6が水平方向に並んでいる。この空間6は、コンセント等の多様な設備を設置するための十分な容量を有している。
それぞれの空間6に、間仕切り壁2の面内方向に沿って2つの共鳴管5が鉛直方向に向けて取り付けられている。同じ空間6に取り付けられた2つの共鳴管5、5はそれぞれ、両側の各下地材3、3に隣接させた状態で当該下地材3、3に沿って、互いに並行状に取り付けられている。即ちこれら2つの共鳴管5、5は、間仕切り壁2の面内水平方向に互いに大きく間隔をあけた状態で鉛直方向に向けて配設されている。空間6に対する複数の共鳴管5の体積専有率は5~50%となっている。
この場合、大きなスペースを確保でき、空間6に設置する設備の制約を非常に少なくすることができる。また、湾曲し易い共鳴管5であっても、下地材3に沿って真っ直ぐに取り付けることができ、施工し易くなる。本実施形態では共鳴管5を下地材3に取り付けているが、共鳴管5を、躯体に設けた下地やランナー或いは間仕切り壁2、ふかし壁4に取り付けてもよく、取り付け箇所は限定されない。
図4(a)は共鳴管5の一部斜視図である。共鳴管5は管状であれば、その材質、形状、寸法は限定されない。本実施形態の共鳴管5は、全長同径の円筒状の紙管製であり、上下に渡る下地材3とほぼ同じ長さを有している。共鳴管5を構成する素材として、紙管製の他、樹脂製、軽量鉄骨等の金属製、セラミックス製とすることができる。加工、施工のし易さから軽量である紙管製が最も好ましい。
共鳴管5の断面形状は、本実施形態では円形状を採用しているが、四角形状等の多角形状であってよく、限定されない。施工性、取り付けの観点からは断面円形状、断面四角形状が好ましい。断面に角張った箇所がなく、内部の大気圧が内面のどこをとっても平均的であり、コストが抑えられ、高い遮音性能が得られる点から、断面円形状が最も好適である。
共鳴管5の両端部は、開口を塞ぐ蓋7によって閉塞されている。蓋7としては、共鳴管5の端部を塞ぐものであればよく、柔軟性を有するテープ、平板状の樹脂板、金属板、共鳴管5と同じ素材である紙板が挙げられる。共鳴管5の端部に硬化製樹脂を詰めてもよい。図4(b)は紙管自体の端部を折り曲げるようにして蓋7を形成した例である。なお、同図は紙管端部の形態が解りやすいように端部を手前にして描いている。紙管製の共鳴管5を採用した場合、同図のように紙管自体の端部を内側に向けて折り曲げるようにして蓋7を構成すれば、容易に共鳴管5の端部を閉塞できる。
共鳴管5の周壁5aに、表裏を貫通する複数の孔8が形成されている。周壁5aに形成された複数の孔8は、共鳴管5の長手方向に沿って一直線状に一定間隔をおいて形成されている。また、図1に示すように複数の孔8は、間仕切り壁2、下地材3及びふかし壁4に囲われた、当該ふかし壁4と平行する空間6側に向けて位置している。即ち空間6の両側に配設された2つの共鳴管5、5の複数の孔8、8は、それぞれ空間6側に向けられている。
本実施形態の図1の例では、2つの共鳴管5、5の複数の孔8、8は空間6を挟んだ状態で互いに対向している。複数の孔8の位置は限定されないが、空間6に生じた振動を効果的に吸音するために、本実施形態のように空間6側に向けて位置していることが好ましい。
管状の共鳴管5は、内部に空洞が存在し、周壁5aに複数の孔8が形成されていることで、固有の共鳴周波数を有するヘルムホルツの共鳴器として機能し、吸音性能を発揮する。この共鳴管5で発揮される吸音機構は、例えば室内からくる特定の周波数の音があたると、開口の小さい孔8の部分に存在する空気の運動量が激しくなって、そこの摩擦損失が増大し、その特定の周波数を中心にした山形の吸音特性を示す。
共鳴管5は、このようなヘルムホルツの共鳴の原理を用いて伝搬する音を小さくする。空間6に配設された複数の共鳴管5によって、ふかし壁構造1の内部での空気ばね効果による共鳴透過を減少し、伝搬する音を小さくして、遮音性能を向上させている。共鳴管5は1つでもよいが、空間に対する共鳴管5の体積専有率が5~35%となるよう、複数の共鳴管5を配設することで遮音性能を効果的に向上させることができると共に、ふかし壁内の空間容積の利用を効率的に行うことが出来る。
共鳴管5の取り付け方法として、施工コストを抑制するために、共鳴管自体に加工を施さない手段によって取り付けることが好ましい。具体的には、テープ、接着剤による粘着によるもの、取付金具による方法が挙げられる。共鳴管5の上下のランナー等に取付用の差し込み口を設けておき、共鳴管5の端部をその差し込み口に差し込むようにしてもよい。更に、共鳴管5の外径を、ランナー等における共鳴管5の固定部形状に合わせておき、共鳴管5の端部をその固定部に差し込んでもよい。
紙管製の共鳴管5を用いた場合、軽量であるため両面テープやガムテープ等のテープ類の粘着によるものや薄板で構成された取付金具で十分に取り付けできる。これらで取り付ければ、間仕切り壁2、下地材3及びふかし壁4に欠損を設けることなく容易に取り付け可能となる。この場合、ビスによる固定が不要であるため、施工手間が省け、遮音性能への影響もなくすことができる。また、ビスを取り付ける加工が生じないことから、共鳴管5又は、取り付ける相手材の加工部分による遮音性能への影響をなくすことができる。更に、紙管製の共鳴管5は加工がし易いことから、施工現場の状況に合わせて、施工者の手で一部を凹ませる等の変形を簡単に行うことができ、高い施工性を得ることができる。
必要となる吸音性能は、ふかし壁4の界壁からふかし壁部分までの厚み、素材、施工形態によって異なる。そのため共鳴管5の吸音性能を、ふかし壁4の厚みに合わせた音響透過損失の性能値に適合するように設定する。要求される共鳴管5の吸音性能は、共鳴管5の内径、厚み、孔8の数、孔径、孔ピッチを設定して得ることができる。共鳴管5のこれらの各寸法、数は、音響透過損失の性能値に適合するように、減衰しようとする周波数に応じてヘルムホルツの共鳴理論に基づいて決定される。
250Hz以下の低音域に対する遮音効果を得るための範囲例としては、共鳴管5の内径は10~200mm、厚みは0.5~5mm、孔径は1~70mm、孔ピッチは50~1000mmである。例えば吸音性能として(性能値:125Hz)が必要となる場合には、紙管製の共鳴管5の内径は29~200mm、穴の厚みは0.5~5mm、孔径は1~65mm、孔ピッチは100mm以上となる。共鳴管5の長さについては、所定の性能を得ることができるのであれば、長尺である必要はなく、50~1000mm程度の長さの共鳴管5を、空間に対する共鳴管5の体積専有率が5~50%となるよう、複数組み合わせて設置しても良い。
共鳴効果が高まり遮音性能を向上させる構成として次の点が挙げられる。第1に、空間6に複数又は1つの共鳴管5を配設する点、第2に、共鳴管5の周壁5aに単一又は複数の孔8が形成されている点、第3に、複数の孔8を共鳴管5の長手方向に沿って形成する点、第4に、孔8を広い空間6側に位置させる点、第5に、共鳴管5の端部を閉塞する点、第6に、共鳴管5の断面形状を円形状とした点である。
以上のように構成されたふかし壁構造1では、図1にも示すように間仕切り壁2、下地材3、及びふかし壁4に囲われた空間6において、非常に広いスペースが確保されている。これにより、空間6に設置する設備の制約を少なくすることができる。具体的には、確保された広い空間6を、当該空間6の容量に対する共鳴管5の体積占有率で数値化できる。
上記の占有率に関して本発明者らが試験を行ったところ、体積占有率が10~30%で改善効果は1.5~5.5dB程度となったが、5%未満では1.0dB以下となった。
体積専有率が30%を超えても程遮音性能の改善に効果を発揮したが、体積専有率が大きくなるとふかし壁1の空間6が狭くなり、ふかし壁1の空間6への設置物の寸法が限定されてしまう。このため空間6に対する共鳴管5の体積専有率は5~50%の範囲であることが望ましい。
体積専有率が30%を超えても程遮音性能の改善に効果を発揮したが、体積専有率が大きくなるとふかし壁1の空間6が狭くなり、ふかし壁1の空間6への設置物の寸法が限定されてしまう。このため空間6に対する共鳴管5の体積専有率は5~50%の範囲であることが望ましい。
図5はふかし壁構造1にコンセントボッス10を設置した例を示す図である。ふかし壁4の壁面にコンセント11が設けられている。ふかし壁構造1は、十分な大きさ空間6を有するため、このような設備を容易に設けることができる。コンセントボックス10の他、例えば電気配線、コンセント、マルチコンセント玄関モニター、給湯コントローラー、キーボックス、郵便ポスト、宅配ボックス等が設置される。
図6はふかし壁構造1にコンセントボッス10を設置した他の例を示す図である。共鳴管5は連続している必要はなく、この例のように、共鳴管5を設備との干渉を避けるようにして、途中で途切れるように複数に分けてもよい。共鳴管5を適宜、途切れるように構成すれば、空間6を有効に活用することができる。共鳴管5が短くなるのに合わせて、共鳴管5の体積占有率が5~50%となるように複数組み合わせて配置するようにすれば良い。
なお、音響透過損失において、例えば1/1オクターブバンドの125Hzの遮音性能は、1/3オクターブバンドの100Hz、125Hz、及び160Hzの音響透過損失の測定値を平均したデータとなる。このため、この3つの周波数帯のうち、音響透過損失の性能値が基準に達していない周波数帯に合わせた共鳴管5を用いることにより、性能が不足した部分の周波数帯の性能を効果的に改善することができる。
本発明では、ふかし壁構造1にすることによって、性能が低下した周波数帯に共鳴管5の性能を合わせることによって、遮音性能の向上を図ることが可能となっている。尚、ふかし壁構造1にすることによって、性能が低下した周波数帯が複数ある場合には、それぞれの周波数帯に合わせた共鳴管を組み合わせて用いることでより効果的に遮音性能の向上を図ることが可能となる。
本実施形態のふかし壁構造1によれば、間仕切り壁2、下地材3及びふかし壁4に囲われた空間6に、固有の共鳴周波数を有する共鳴管5が当該間仕切り壁2の面内方向に沿って取り付けられ、当該空間6に対する共鳴管5の体積専有率が5~50%であるため、遮音性能の向上と共に、空間6に設置する設備の制約を少なくすることができる。また、遮音性能として不足する周波数帯の遮音性能が改善し、遮音性能を格段に向上させることができる。
図7は本発明の第2実施形態に係るふかし壁構造15の斜視図である。本実施形態が第1実施形態と異なる点は、共鳴管5が空間6の左右両端だけでなく、空間6の下端に間仕切り壁2の面内水平方向に向けて取り付けられている点である。この場合においても、遮音性能の向上と共に、空間6に設備を設置できる広いスペースが確保され、空間6を有効に活用することができる。なお別の実施形態として共鳴管5を、空間6の左右両端だけでなく、空間6の上端のみに取り付けてもよい。
図8は本発明の第3実施形態に係るふかし壁構造16の斜視図である。本実施形態が第1実施形態と異なる点は、共鳴管5が空間6の左右両端だけでなく、空間6の下端及び上端に面内水平方向に向けて取り付けられている点である。この場合においても、遮音性能の向上と共に、空間6に設備を設置できる広いスペースが確保され、空間6を有効に活用することができる。
図9は本発明の第4実施形態に係るふかし壁構造17の斜視図である。本実施形態が第1実施形態と異なる点は、共鳴管5が空間6の左右両端に加えて、空間6の左右方向中央に鉛直方向に向けて取り付けられている点である。この場合においても、遮音性能の向上と共に、空間6に設備を設置できるスペースが確保され、空間6を有効に活用することができる。
本発明の範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内の全ての変更が含まれる。間仕切り壁として石膏ボードで構成した乾式間仕切り壁を例に説明したが、これに限らず石膏ボードとスレートボードを組み合わせて構成した乾式間仕切り壁、RC造、軽量気泡コンクリート、押出成形セメント板、PC板の間仕切等、従来から知られている構造に適用できる。
共鳴管に関して多様な形態を実施可能である。例えば次の共鳴管が実施できる。図10(a)は複数の孔8を2列に配設した例であり、同図(b)は孔8を直線状に延びる長孔とした例であり、(c)は複数の長孔8を形成した例であり、同図(d)は共鳴管5を断面矩形状とした例である。共鳴管の周壁に複数の孔を不規則に形成することや、全長が同経でなく径が中途部で変更された共鳴管、湾曲状した共鳴管、屈曲した共鳴管とすることもできる。
尚、複数の孔8は、効果的に振動を吸収できるのであれば、空間側に向けて必ずしも一直線状に配置する必要はない。図11(a)、(b)は共鳴管の他の例を示す一部斜視図である。図11(a)は共鳴管5の複数の孔8を千鳥状に形成した例であり、同図(b)は孔8を千鳥状に周方向広範囲に形成した例である。図12は図11(b)に示す共鳴管5をふかし壁構造1に設けた例を示す横断面図である。図12の矢印は孔8が空いている方向を示している。尚、矢印が付されていない他の共鳴管5にも同様の方向に孔8が形成されている。
図12のふかし壁構造1では、複数の孔8が中央部からふかし壁4側及び間仕切り壁2側にずらされて形成されている。このように、共鳴管5とふかし壁4、共鳴管5と間仕切り壁2の間に空間6がある場合、その空間側に複数の孔8を配設してもよい。効果を得られる位置であれば、複数の孔8が空いている箇所に空間が存在していればよく、また複数の孔8の配列は任意である。
図13(a)、(b)は上記実施形態よりも径の小さい共鳴管5を設けたふかし壁構造1を示す横断面図である。図13(a)、(b)の矢印は孔8が形成されている箇所を示している。尚、矢印が付されていない他の共鳴管5にも同様の位置に孔8が形成されている。共鳴管5をふかし壁4に近接するように設けた場合には、例えば同図(a)のように複数の孔8を周方向3方向に向けて形成することや、共鳴管5をふかし壁4から離して設けた場合には、例えば同図(b)のように複数の孔8を周方向5方向に向けて形成することが可能である。
共鳴管の配置として、ふかし壁構造の空間を確保し、所定の性能を得ることができるのであれば、上下方向中央に面内水平方向に向けて取り付けることや、躯体に固定されたスタッドに上記実施形態のように平行、或いは垂直方向だけでなく、斜め方向に取り付けることもできる。空間に複数本の共鳴管をランダムな位置に配置しても良い。ふかし壁構造に必要に応じて設けられる他の部材は、本発明の効果を損なわない限りにおいてどのような形態のものであってもよい。
1、15、16、17 ふかし壁構造
2 間仕切り壁
3 下地材
4 ふかし壁
5 共鳴管
5a 共鳴管の周壁
6 空間
7 蓋
8 孔
10 コンセントボックス
11 コンセント
2 間仕切り壁
3 下地材
4 ふかし壁
5 共鳴管
5a 共鳴管の周壁
6 空間
7 蓋
8 孔
10 コンセントボックス
11 コンセント
Claims (14)
- 建築物に構築された間仕切り壁と、この間仕切り壁の外側に固定された下地材と、当該間仕切り壁の両側或いは片側に間隔をあけた状態で当該下地材を介して設置されたふかし壁と、を備えるふかし壁構造において、
前記間仕切り壁、前記下地材及び前記ふかし壁に囲われた空間に、固有の共鳴周波数を有する管状の共鳴管が当該間仕切り壁の面内方向に沿って取り付けられていることを特徴とするふかし壁構造。 - 前記共鳴管の周壁に、表裏を貫通する単一又は複数の孔が形成されている請求項1に記載のふかし壁構造。
- 前記孔が、前記空間側に位置している請求項2に記載のふかし壁構造。
- 前記共鳴管の端部が閉塞されている請求項2又は3に記載のふかし壁構造。
- 前記共鳴管は、円筒状である請求項2~4のいずれかに記載のふかし壁構造。
- 前記共鳴管の内径は10~200mm、厚みは0.5~5mm、長さは50~5000mmである請求項5に記載のふかし壁構造。
- 前記空間に複数の前記共鳴管が配設されている請求項2~6のいずれかに記載のふかし壁構造。
- 前記複数の共鳴管は、前記間仕切り壁の面内水平方向に互いに間隔をあけた状態で鉛直方向に向けて配設されている請求項7に記載のふかし壁構造。
- 前記複数の共鳴管は、前記下地材に隣接させた状態で当該下地材に沿って取り付けられている請求項7に記載のふかし壁構造。
- 前記空間に対する前記共鳴管の体積専有率が5~50%である請求項2~9のいずれかに記載のふかし壁構造。
- 前記共鳴管の周壁に形成された複数の孔は、当該共鳴管の長手方向に沿って形成されており、当該複数の孔のピッチは50~1000mmである請求項2~10のいずれかに記載のふかし壁構造。
- 前記孔の径は1~70mmである請求項2~11のいずれかに記載のふかし壁構造。
- 前記共鳴管が、前記空間の上端及び/又は下端に前記間仕切り壁の面内水平方向に向けて取り付けられている請求項1~12のいずれかに記載のふかし壁構造。
- 前記共鳴管は、加工を施さない手段によって取り付けられている請求項1~13のいずれかに記載のふかし壁構造。
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JP2020214385A JP2022100427A (ja) | 2020-12-24 | 2020-12-24 | ふかし壁構造 |
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- 2020-12-24 JP JP2020214385A patent/JP2022100427A/ja active Pending
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