JP2022098929A - 燃料電池、そのセパレータ、燃料電池用ゾルおよびそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた導電性と耐食性を有する新たな燃料電池用セパレータを提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、燃料電池の電極(21、22)に接する被覆層(112、122)を有する基板(111、121)からなる燃料電池用セパレータ(11、12)である。被覆層は、NbとTiを含む複合酸化物からなる。複合酸化物は、NbとTiの合計量に対するNbの原子比([Nb]/[Nb]+[Ti])が0.01~0.55であるとよい。また、電極(ガス拡散層)と被覆層との接触域近傍には、その原子比を満たす複合酸化物からなる連接部が形成されていると好ましい。被覆層や連接部は、例えば、複合酸化物を分散質とするゾルを付着または注入した後、比較的低温で加熱することにより形成される。【選択図】図2
Description
本発明は、燃料電池のセパレータ等に関する。
燃料電池は、発電効率が高く、環境負荷が小さいため、電力供給源として注目されている。燃料電池には複数のタイプあるが、電解質と、その両側に設けられる電極(燃料極と空気(酸素)極/アノードとカソード)と、各電極の外側(電解質の反対側)に設けられるセパレータとを備える点で共通している。
電解質や電極は、燃料電池のタイプに応じて選択されるが、セパレータは燃料電池のタイプには必ずしも拘束されず、成形性、強度、コスト等も考慮して選択される。但し、いずれのセパレータでも、優れた導電性と耐食性が要求される点で共通する。このようなセパレータに関する提案は多くなされており、例えば、下記の非特許文献1~4に関連する記載がある。
Y. Yang et al., Hydrogen Energy, 42, p6303-p6309(2017).
Y. Yangら、燃料電池、16(3), p67-p72(2017).
植田雅巳ら、日本金属学会誌, 71, p545-p552(2007).
T. Fukutsuka et al., J. Power Sources, 174, p199-p205(2007).
高田雅介ら、窯業協会誌、84(5)、p237-p241(1976).
長谷川「ナノ光磁気デバイスプロジェクト」研究概要 財団法人 神奈川科学技術アカデミー(平成26年2月21日)
藤吉国孝ら、福岡工業技術センター研究報告、22、p9-p12(2012).
H. Ichinose et al.,"Synthesis of Peroxo-Modified Anatase Sol from Peroxo Titanic Acid Solution", J. Ceramics Soc. Jpn., 104(8), p715-p718(1996).
H. Ichinose et al., "Photocatalytic Activities of Coating Films Prepared from Peroxotitanic Acid Solution-Derived Sols", J. Ceramics Soc. Jpn., 106(3), p344-p347 (1998).
STENGL Vaclav et al., "Niobium and tantalum doped titania particles", Journal of Materials Research, 25(10), p2015-p2024(2010).
非特許文献1、2には、セパレータ表面の窒化に関する記載がある。非特許文献3、4には、セパレータ表面のカーボンコートに関する記載がある。
非特許文献5~10および特許文献1、2には、ニオブを含む酸化チタンに関する記載はあるが、燃料電池のセパレータに関する記載はない。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、導電性と耐食性を両立できる新たな燃料電池のセパレータ等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、酸化チタンのTiの一部をNb(ドープ元素)で置換して原子価制御した複合酸化物からなる被覆層を基板表面に形成することにより、導電性と耐食性を高次元で両立する燃料電池のセパレータを得ることに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明が完成されるに至った。
《燃料電池のセパレータ》
本発明は、燃料電池の電極に接する被覆層を有する基板からなり、該被覆層は、NbとTiを含む複合酸化物からなり、該複合酸化物は、NbとTiの合計量に対するNbの原子比([Nb]/[Nb]+[Ti])が0.01~0.55である燃料電池のセパレータである。
本発明は、燃料電池の電極に接する被覆層を有する基板からなり、該被覆層は、NbとTiを含む複合酸化物からなり、該複合酸化物は、NbとTiの合計量に対するNbの原子比([Nb]/[Nb]+[Ti])が0.01~0.55である燃料電池のセパレータである。
本発明の燃料電池のセパレータ(単に「セパレータ」ともいう。)は、NbとTiの割合(原子比/モル比)が所定範囲内となる複合酸化物からなる被覆層により、高導電性と高耐食性を発揮し得る。
《燃料電池》
本発明は、そのセパレータを用いた燃料電池としても把握できる。例えば、本発明は、上述のセパレータと、そのセパレータに接する電極と、その電極に接する電解質とを備える燃料電池でもよい。
本発明は、そのセパレータを用いた燃料電池としても把握できる。例えば、本発明は、上述のセパレータと、そのセパレータに接する電極と、その電極に接する電解質とを備える燃料電池でもよい。
《燃料電池用ゾル》
本発明は、上述した被覆層等の形成に用いれる燃料電池用ゾル(単に「ゾル」ともいう。)としても把握できる。例えば、本発明は、NbとTiを含み、NbとTiの合計量に対するNbの原子比([Nb]/[Nb]+[Ti])が0.01~0.55である複合酸化物を分散質とする燃料電池用ゾルでもよい。
本発明は、上述した被覆層等の形成に用いれる燃料電池用ゾル(単に「ゾル」ともいう。)としても把握できる。例えば、本発明は、NbとTiを含み、NbとTiの合計量に対するNbの原子比([Nb]/[Nb]+[Ti])が0.01~0.55である複合酸化物を分散質とする燃料電池用ゾルでもよい。
《製造方法》
本発明は、燃料電池、セパレータまたはゾルの製造方法としても把握できる。
本発明は、燃料電池、セパレータまたはゾルの製造方法としても把握できる。
(1)本発明は、例えば、上述したゾルを基板表面の少なくとも一部に付着させる付着工程と、該付着工程後の基板表面を加熱して前記被覆層を形成する被覆工程と、を備えるセパレータの製造方法でもよい。
(2)本発明は、例えば、上述したセパレータと電極との間に上述した燃料電池用ゾルを導入する導入工程と、該導入工程後の該セパレータと該電極を加熱して、該セパレータの被覆層と該電極の少なくとも一部の表面とを前記複合酸化物で連接する連接工程と、を備える燃料電池の製造方法でもよい。
(3)本発明は、例えば、TiとNbを含む溶質原料と過酸化水素を含む溶媒とから溶液を調製する調製工程と、該溶液を加熱する加熱工程と、を備える燃料電池用ゾルの製造方法でもよい。
《その他》
本明細書でいう「X基材」は、X単体の他、Xを主成分とするX合金(金属間化合物を含む)、X化合物、X複合材等である。なお、主成分は、敢えていうと、基材全体に対してXを50原子%以上(さらに50原子%超)含むことを意味する。
本明細書でいう「X基材」は、X単体の他、Xを主成分とするX合金(金属間化合物を含む)、X化合物、X複合材等である。なお、主成分は、敢えていうと、基材全体に対してXを50原子%以上(さらに50原子%超)含むことを意味する。
本明細書でいう「x~y」は、特に断らない限り、下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a~b」のような範囲を新設し得る。また、本明細書でいう「x~yμm」はxμm~yμmを意味する。他の単位系(mΩ・cm2等)についても同様である。
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、方法的な構成要素であっても物(例えばゾル、セパレータ、燃料電池)に関する構成要素ともなり得る。
《セパレータ》
(1)基板
基板は、導電材からなり、被覆層の形成が可能であれば、その具体的な材質や形態を問わない。例えば、金属基材、樹脂基材、炭素基材、セラミック基材等により基板は構成される。金属基材は、導電性、成形性(加工性)、強度等に優れる。特に、ステンレス鋼、Ti基材、Al基材等は耐食性にも優れる。
(1)基板
基板は、導電材からなり、被覆層の形成が可能であれば、その具体的な材質や形態を問わない。例えば、金属基材、樹脂基材、炭素基材、セラミック基材等により基板は構成される。金属基材は、導電性、成形性(加工性)、強度等に優れる。特に、ステンレス鋼、Ti基材、Al基材等は耐食性にも優れる。
セパレータと電極の間には、通常、ガス(燃料ガス、空気等の酸化ガス)を電極内へ均一的に供給するために、ガス流路(溝等)が設けられる。ガス流路は、電極側にあっても、セパレータ側(基板)にあってもよい。セパレータ側のガス流路は、例えば、基板の電極面側を塑性加工(プレス成形等)、切削加工等して形成される。金属基板を用いると、ガス流路を有する薄いセパレータが得られる。
(2)被覆層
セパレータは、燃料電池の電極側の表面の少なくとも一部に、被覆層を有する基板からなる。被覆層は、NbとTiを含む複合酸化物からなる。複合酸化物に含まれるTiとNbは、それらの合計量に対するNbの原子比([Nb]/[Nb]+[Ti])が0.01~0.55、0.02~0.5、0.05~0.45さらには0.1~0.4であるとよい。その原子比(原子数の割合、モル濃度比)が過小でも過大でも、被覆層の(電気抵抗率)が増大して導電性が低下し得る。
セパレータは、燃料電池の電極側の表面の少なくとも一部に、被覆層を有する基板からなる。被覆層は、NbとTiを含む複合酸化物からなる。複合酸化物に含まれるTiとNbは、それらの合計量に対するNbの原子比([Nb]/[Nb]+[Ti])が0.01~0.55、0.02~0.5、0.05~0.45さらには0.1~0.4であるとよい。その原子比(原子数の割合、モル濃度比)が過小でも過大でも、被覆層の(電気抵抗率)が増大して導電性が低下し得る。
複合酸化物は、例えば、酸化チタン(TiO2等)のTi(4属元素)の一部がNb(5属元素)で置換された構造であると考えられる。このように原子価制御された複合酸化物はn型半導体と同様な機序により、優れた導電性を発揮し得る。なお、酸化チタンの結晶構造には、アナターゼ型(正方晶)、ルチル型(正方晶)、ブルッカイト型(斜方晶)があるが、導電性と耐食性を備える限り、いずれでもよい。
被覆層を構成する複合酸化物は、単結晶体でも多結晶体でもよい。多結晶体は、例えば、ナノレベルの大きさの結晶粒の集合体であるとよい。このような複合酸化物からなる被覆層は均質的であり、優れた導電性と耐食性を安定して発揮し得る。
(3)被覆層の形成
被覆層は、蒸着(PVD、CVD等)、めっき、焼成、焼結等により形成され得る。蒸着等に依れば、組成や膜厚の制御が可能となり、薄膜状(例えば、厚さが0.1~10μmさらには0.5~5μm)の被覆層を均一的に形成できる。また、基板表面に付着させた複合酸化物粒子やその原料粒子を焼成・焼結させれば、必ずしも大型設備やバッチ処理に依らずに、被覆層の形成やその厚膜化(例えば、厚さが10~200μmさらには25~75μm)を効率的に行える。
被覆層は、蒸着(PVD、CVD等)、めっき、焼成、焼結等により形成され得る。蒸着等に依れば、組成や膜厚の制御が可能となり、薄膜状(例えば、厚さが0.1~10μmさらには0.5~5μm)の被覆層を均一的に形成できる。また、基板表面に付着させた複合酸化物粒子やその原料粒子を焼成・焼結させれば、必ずしも大型設備やバッチ処理に依らずに、被覆層の形成やその厚膜化(例えば、厚さが10~200μmさらには25~75μm)を効率的に行える。
基板表面へ粒子を付着させる工程(付着工程)は、例えば、ゾルまたはスラリーを用いて行える。付着方法は、塗布、浸漬、噴霧等のいずれでもよい。付着させた粒子が微細(例えば、1次粒子径(最大長)が1μm以下さらには100nm以下)なら、その焼成または焼結(両者を併せて単に「焼成」という。)は、例えば、100~200℃さらには125~175℃程度の低温加熱により行える。
加熱雰囲気は、酸化防止雰囲気(不活性ガス雰囲気、真空雰囲気等)でなされると好ましい。このような加熱により、基板表面に被覆層が形成される(被覆工程)。なお、付着面は焼成前に予め乾燥されているとよい。乾燥工程は、自然乾燥でも加熱乾燥でもよい。加熱乾燥は、焼成温度より低温域(例えば80~120℃)の酸化防止雰囲気でなされるとよい。
なお、原料粒子(例えば、Ti源粒子、Nb源粒子、酸素源粒子等の混合粒子)をそのまま基材表面に付着させて焼結させることにより、複合酸化物からなる被覆層を形成することも考えられる。この際、基板の酸化を抑制するために、焼結温度の上昇を抑制できる原料粒子(粉末)を選択するとよい。
《ゾル》
被覆層の形成等に用いられるゾルは、例えば、分散質が上述した複合酸化物からなるとよい。このようなゾルは、複合酸化物の微細粒子(例えば、1次粒子径(最大長)が1~100nmさらには10~60nm)が均一的に分散してなり、均質的な被覆層等の形成に寄与する。
被覆層の形成等に用いられるゾルは、例えば、分散質が上述した複合酸化物からなるとよい。このようなゾルは、複合酸化物の微細粒子(例えば、1次粒子径(最大長)が1~100nmさらには10~60nm)が均一的に分散してなり、均質的な被覆層等の形成に寄与する。
複合酸化物を分散質とするゾルは、例えば、TiとNbを含む溶質原料を、過酸化水素を含む溶媒に溶解した溶液を調製する調製工程と、その溶液を加熱する加熱工程とを経て得られる。
溶質原料は、例えば、金属単体(Ti単体、Nb単体)、合金(Ti合金、Nb合金、Ti-Nb合金等)または化合物(Ti酸化物、Nb酸化物等)である。なお、Ti酸化物は、TiO、TiO2等である。
溶媒は、過酸化水素にアンモニアを加えた混合水溶液であるとよい。アンモニアは、TiとNbを含む溶質原料の、過酸化水素を含む溶媒への溶解を促進させる。
溶液は、通常、TiまたはNbからなる金属イオンとその周囲に過酸化水素(配位子)が配位した金属錯体(例えばペルオキソチタン酸錯体等)からなると考えられる。このような溶液を加熱すると、過酸化水素(さらにはアンモニア)は分解されて、TiとNbとOからなる微細な複合酸化物(分散質)が水(分散媒)に分散した均一的なゾルが得られる。
《燃料電池》
燃料電池には複数のタイプがある。例えば、固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)、リン酸型燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cel)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)等がある。本発明のセパレータは、いずれの燃料電池にも利用可能である。
燃料電池には複数のタイプがある。例えば、固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)、リン酸型燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cel)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)等がある。本発明のセパレータは、いずれの燃料電池にも利用可能である。
なかでも、PEFCは、小型軽量化が可能で、可搬性があり、低温で作動させ得るため、自動車等へ利用されている。PEFCは、電荷担体が水素イオン(H+) であり、反応ガスは水素ガスと酸化ガス(通常は空気)である。
燃料電池は、複数のセルが積層されたスタックからなる。一例として、PEFCのセルPの要部を図8に模式的に示した。セルPは、固体高分子電解質膜3と、その一方側の電極である燃料極(アノード)21と、その他方側の電極である空気極(カソード)22と、燃料極21の外側にあるセパレータ11と、空気極22の外側にあるセパレータ12とを備える。
固体高分子電解質膜(単に「電解質膜」ともいう。)3は、H+のみを移動させる。燃料極21は、供給されたガスg1(水素)を透過すると共に導電性を備えるガス拡散層(GDL)211と、金属触媒を担持した電極触媒層(CL)212とを有する。空気極22は、供給されたガスg2(空気、特に酸素)を透過すると共に導電性を備えるガス拡散層(GDL)221と、金属触媒を担持した電極触媒層(CL)222とを有する。ガス拡散層211はセパレータ11(被覆層112)に接しており、ガス拡散層221はセパレータ12(被覆層122)に接している。電極触媒層212はガス拡散層211と電解質膜3に接しており、電極触媒層222はガス拡散層221と電解質膜3に接している。セパレータ11、12は、さらに、ガス拡散層211、221に接触する被覆層112、122を備える。被覆層112、122は複合酸化物からなる。
ガス拡散層は、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を焼結させた多孔質状の炭素基材からなる。なお、ガス拡散層の一面(電解質の反対側にある面)が、被覆層と接触する電極面となる。電極触媒層は、例えば、触媒(Pt、Pt-Ru合金等)の微粒子をカーボンブラック等に担持させてなる。
ところで、電極(ガス拡散層)の表面(またはその一部)とセパレータの被覆層とは、圧接状態であるのみならず、複合酸化物により連接されていると好ましい。これにより両者間の接触面積の増大または接触抵抗の低減が図られる。
このような電極とセパレータ(被覆層)の連接は、例えば、上述したゾル等を両者の接触域近傍へ導入する導入工程と、その後のセパレータと電極を加熱して複合酸化物を生成する連接工程とによりなされる。被覆層に接する電極が炭素基材の繊維(単に「炭素繊維」ともいう。)からなる場合、導入(注入)されたゾルは表面張力により炭素繊維の外周囲付近に凝集する。このゾルを加熱して固化(焼成)させると、その繊維に被着した複合酸化物が形成される。その複合酸化物の少なくとも一部は被覆層に連なり、被覆層と炭素繊維は複合酸化物により接続された状態となる。
セパレータに用いられる金属基板の表面に被覆層を形成し、その特性(導電性と耐食性)を評価した。このような具体例に基づいて、本発明をより詳しく説明する。
[第1実施例]
《試料の製作》
(1)ゾル
被覆層の形成に用いるゾルを次のように調製した。溶質原料として、純チタン粉末と純ニオブ粉末を用意した。また溶媒として、過酸化水素水(30%)とアンモニア水(28%)を用意した。いずれも市販されている試薬等を用いた。なお、各液体の濃度(%)は、特に断らない限り、質量割合である。
《試料の製作》
(1)ゾル
被覆層の形成に用いるゾルを次のように調製した。溶質原料として、純チタン粉末と純ニオブ粉末を用意した。また溶媒として、過酸化水素水(30%)とアンモニア水(28%)を用意した。いずれも市販されている試薬等を用いた。なお、各液体の濃度(%)は、特に断らない限り、質量割合である。
TiとNbの合計量が0.004モルとなる溶質を、過酸化水素水(18g)とアンモニア水(3.6g)を混合した溶媒に加えた。その状態のまま数時間保持したところ、溶質は溶解して、均一的な錯体溶液が得られた(調製工程)。なお、TiとNbの割合(原子比:[Nb]/[Nb]+[Ti])は種々変化させた。
この錯体溶液を大気中で加熱(60℃×60分)して、過酸化水素を分解し、アンモニアを飛散させた(加熱工程)。こうして光散乱性を有する淡黄色の液体を得た。この液体が、水(分散媒)に、TiとNbとOからなる複合酸化物(分散質)が分散したゾルであることは、乾燥固化後に測定したEDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)スペクトルにより確認した。また、X線回折パターンがハローで、TiO2(アナターゼ型、ルチル型およびブルッカイト型)の回折線が認められないことから、その複合酸化物の粒子サイズ(最大長)は30nm以下であることも確認した。
(2)基板
ステンレス鋼板(JIS SUS304)からなる金属基板(20mm×60mm×t0.2mm)を用意した。被覆層を形成する基板表面をアルカリ性脱脂液清浄後、水洗した。その基板を熱濃硫酸(80℃に加熱した15%の硫酸水溶液)に浸漬して、その表面にある酸化物層を除去した。その後、基板を水洗および自然乾燥させた。
ステンレス鋼板(JIS SUS304)からなる金属基板(20mm×60mm×t0.2mm)を用意した。被覆層を形成する基板表面をアルカリ性脱脂液清浄後、水洗した。その基板を熱濃硫酸(80℃に加熱した15%の硫酸水溶液)に浸漬して、その表面にある酸化物層を除去した。その後、基板を水洗および自然乾燥させた。
(3)被覆層の形成
このような下地処理した基板を上述したゾルに浸漬した後、一定速度(0.2mm/s)で引き上げた。こうして基板表面にゾル(膜)を付着させた(付着工程)。この基板を加熱炉に入れて窒素雰囲気中で加熱乾燥(100℃×10分)させた(乾燥工程)。このようなディップコートを20回繰り返して、基板表面に形成する膜厚を調整した。
このような下地処理した基板を上述したゾルに浸漬した後、一定速度(0.2mm/s)で引き上げた。こうして基板表面にゾル(膜)を付着させた(付着工程)。この基板を加熱炉に入れて窒素雰囲気中で加熱乾燥(100℃×10分)させた(乾燥工程)。このようなディップコートを20回繰り返して、基板表面に形成する膜厚を調整した。
ゾルの乾燥膜で被覆された基板を加熱炉に入れて窒素雰囲気中で加熱(150℃×30分)して、基板表面に被覆層(厚さ:約0.8μm)を形成した(焼成工程/被覆工程)。こうして、TiとNbの原子比が異なる被覆層を基板表面に有する複数の試料を製作した。
《測定》
(1)導電性
図1に示す4端子法により、各試料の被覆層(膜厚方向)の電気抵抗値(R=V/I)を測定した。具体的にいうと、塑性変形しやすい高純度(99.999%)なアルミニウム板を被覆層に押圧(44MPa)した状態で、定電流(I=±1A)を供給して、アルミニウム板と基板の間の電位差(V)を測定した。こうして得られた結果を図2にまとめて示した。
(1)導電性
図1に示す4端子法により、各試料の被覆層(膜厚方向)の電気抵抗値(R=V/I)を測定した。具体的にいうと、塑性変形しやすい高純度(99.999%)なアルミニウム板を被覆層に押圧(44MPa)した状態で、定電流(I=±1A)を供給して、アルミニウム板と基板の間の電位差(V)を測定した。こうして得られた結果を図2にまとめて示した。
(2)耐食性
各試料の被覆層について分極曲線を測定した。具体的にいうと、KCl水溶液(濃度:1mol/L)に、各試料を浸漬して、0~1V(vs.Ag/AgCl)を印加したときのアノード電流を測定した。なお、0~1V(vs.Ag/AgCl)は、0.523~1.523V(vs.H2極)に相当する。
各試料の被覆層について分極曲線を測定した。具体的にいうと、KCl水溶液(濃度:1mol/L)に、各試料を浸漬して、0~1V(vs.Ag/AgCl)を印加したときのアノード電流を測定した。なお、0~1V(vs.Ag/AgCl)は、0.523~1.523V(vs.H2極)に相当する。
一例として、被覆層(原子比:0.05)がある基板と被覆層がない基板との分極曲線を図3に示した。また、被覆層を有する各試料について、分極曲線から求めた所定電圧下(1.229Vvs.H2極)のアノード電流値(Ia)と被覆層を構成する複合酸化物の原子比との関係を図4にまとめて示した。
《評価》
(1)導電性
図2から明らかなように、TiとNbの原子比が所定範囲内にある複合酸化物からなる被覆層は、電気抵抗値が桁違いに小さくなることがわかった。
(1)導電性
図2から明らかなように、TiとNbの原子比が所定範囲内にある複合酸化物からなる被覆層は、電気抵抗値が桁違いに小さくなることがわかった。
(2)耐食性
図3および図4から明らかなように、複合酸化物からなる被覆層を設けることにより、優れた耐食性が確保されることがわかった。具体的にいうと、開回路状態にある燃料電池の酸素極の最高電位(1.229Vvs.H2極)に相当する電圧下でも、アノード電流値(Ia)は12μAcm-2以下となり極めて小さかった。
図3および図4から明らかなように、複合酸化物からなる被覆層を設けることにより、優れた耐食性が確保されることがわかった。具体的にいうと、開回路状態にある燃料電池の酸素極の最高電位(1.229Vvs.H2極)に相当する電圧下でも、アノード電流値(Ia)は12μAcm-2以下となり極めて小さかった。
また図4から明らかなように、複合酸化物の原子比(Nbの割合)が本発明でいう範囲内にあるとき、原子比の増加と共にアノード電流(腐食電流)が低下傾向(被覆層の耐食性が向上傾向)となることもわかった。
[第2実施例]
《試料の製作》
先ず、Nbの原子比([Nb]/[Nb]+[Ti]):0.05とした複合酸化物からなる被覆層を有する基板(セパレータ相当)と、カーボンペーパー(ガス拡散層相当)とを圧接(加圧力:1MPa)した状態とした。次に、被覆層とカーボンペーパーの接触域付近に、同原子比(0.05)のゾルを注入した(導入工程)。注入量は0.05ml/cm2とした。なお、カーボンペーパーには、交絡した炭素繊維が結合してなる東レ株式会社製TGP-H-060を用いた。その厚さは190μmであった。
《試料の製作》
先ず、Nbの原子比([Nb]/[Nb]+[Ti]):0.05とした複合酸化物からなる被覆層を有する基板(セパレータ相当)と、カーボンペーパー(ガス拡散層相当)とを圧接(加圧力:1MPa)した状態とした。次に、被覆層とカーボンペーパーの接触域付近に、同原子比(0.05)のゾルを注入した(導入工程)。注入量は0.05ml/cm2とした。なお、カーボンペーパーには、交絡した炭素繊維が結合してなる東レ株式会社製TGP-H-060を用いた。その厚さは190μmであった。
その後、圧接状態のままで基板とカーボンペーパーを加熱して、ゾルを乾燥(100℃)および焼成(150℃×10分間)させた(連接工程)。乾燥および焼成(固化)は、既述した窒素(N2)雰囲気下の加熱炉内で行った。こうして基板の被覆層とカーボンペーパーの炭素繊維を複合酸化物で連接した試料Aを得た。
《測定》
図5に示す4端子法により、基板(被覆層)とカーボンペーパーの接触抵抗値(r=V/I)を測定した。なお、測定は、基板とカーボンペーパーを、炭素繊維が割れない程度(加圧力:1MPa)で加圧しつつ行った。その他は図1に示した4端子法と同様に測定した。また、比較のため、被覆層とカーボンペーパーの接触域付近へゾルを注入しない試料Bも製作し、その接触抵抗値も同様に測定した。
図5に示す4端子法により、基板(被覆層)とカーボンペーパーの接触抵抗値(r=V/I)を測定した。なお、測定は、基板とカーボンペーパーを、炭素繊維が割れない程度(加圧力:1MPa)で加圧しつつ行った。その他は図1に示した4端子法と同様に測定した。また、比較のため、被覆層とカーボンペーパーの接触域付近へゾルを注入しない試料Bも製作し、その接触抵抗値も同様に測定した。
試料Aの接触抵抗値は46.3mΩcm2であり、試料Bの接触抵抗値は73.3mΩcm2であった。
《観察》
接触抵抗測定後の試料Aを樹脂に埋め込み、研磨後の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その反射電子像を図6に示した。反射電子像では、炭素繊維や樹脂の構成元素(C、H、O)よりも原子量の大きな元素(Ti、Nb)が白く現れる。
接触抵抗測定後の試料Aを樹脂に埋め込み、研磨後の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その反射電子像を図6に示した。反射電子像では、炭素繊維や樹脂の構成元素(C、H、O)よりも原子量の大きな元素(Ti、Nb)が白く現れる。
《評価》
被覆層とカーボンペーパーの接触域にゾルを注入、乾燥および固化させて、両者を複合酸化物で連接すると、接触抵抗が大幅に低減することがわかった。複合酸化物からなる連接部が接触抵抗を低減させる理由は、図6に示すSEM像からもわかるように、次のように推察される。
被覆層とカーボンペーパーの接触域にゾルを注入、乾燥および固化させて、両者を複合酸化物で連接すると、接触抵抗が大幅に低減することがわかった。複合酸化物からなる連接部が接触抵抗を低減させる理由は、図6に示すSEM像からもわかるように、次のように推察される。
連接部がない場合、カーボンペーパー(ガス拡散層)と基板(セパレータ)の接触は、実質的に、炭素繊維と被覆層が点状または線状に接触した状態となる。この状態の両者間の実質的な接触面積は、両者が対面する見掛面積の1~2%程度に留まる。しかし、連接部を設けると、被覆層と一体化(連成)した複合酸化物が炭素繊維の外周面を囲むように(さらには周り込むように)被着するようになる。これにより、被覆層と炭素繊維の実質的な接触面積が急増し、電流の導電パスが多く形成されるようになった結果、接触抵抗の低減が図られたと考えられる。この様子を図7に模式的に示した。
以上のことから、本発明の複合酸化物からなる被覆層や連接部により、耐食性に優れると共に、高導電性(または低接触抵抗)を実現できるセパレータや燃料電池が得られることが確認された。
P 固体高分子型燃料電池のセル
11、12 セパレータ
111、121 金属基板
112、122 被覆層
21 燃料極
22 空気極
3 固体高分子電解質膜
11、12 セパレータ
111、121 金属基板
112、122 被覆層
21 燃料極
22 空気極
3 固体高分子電解質膜
Claims (11)
- 燃料電池の電極に接する被覆層を有する基板からなり、
該被覆層は、NbとTiを含む複合酸化物からなり、
該複合酸化物は、NbとTiの合計量に対するNbの原子比([Nb]/[Nb]+[Ti])が0.01~0.55である燃料電池のセパレータ。 - 前記基板は、ステンレス鋼、Ti基材またはAl基材からなる請求項1に記載のセパレータ。
- 請求項1または2に記載のセパレータと、
該セパレータに接する電極と、
該電極に接する電解質と、
を備える燃料電池。 - 前記電極の少なくとも一部の表面と前記被覆層とは、前記複合酸化物により連接されている請求項3に記載の燃料電池。
- 前記電極は、炭素基材の繊維からなり、
該繊維の少なくとも一部に前記複合酸化物が被着している請求項4に記載の燃料電池。 - NbとTiを含み、NbとTiの合計量に対するNbの原子比([Nb]/[Nb]+[Ti])が0.01~0.55である複合酸化物を分散質とする燃料電池用ゾル。
- 請求項1または2に記載のセパレータの製造方法であって、
請求項6に記載のゾルを前記基板表面の少なくとも一部に付着させる付着工程と、
該付着工程後の基板表面を加熱して前記被覆層を形成する被覆工程と、
を備えるセパレータの製造方法。 - 請求項4または5に記載の燃料電池の製造方法であって、
請求項1または2に記載のセパレータと前記電極との間に、請求項6に記載の燃料電池用ゾルを導入する導入工程と、
該導入工程後の該セパレータと該電極を加熱して、該セパレータの被覆層と該電極の少なくとも一部の表面とを前記複合酸化物で連接する連接工程と、
を備える燃料電池の製造方法。 - TiとNbを含む溶質原料と過酸化水素を含む溶媒とから溶液を調製する調製工程と、
該溶液を加熱する加熱工程と、
を備える請求項6に記載の燃料電池用ゾルの製造方法。 - 前記溶媒は、過酸化水素とアンモニアの混合水溶液である請求項9に記載の燃料電池用ゾルの製造方法。
- 前記溶質原料は、金属単体、合金または化合物からなる請求項9または10に記載の燃料電池用ゾルの製造方法。
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- 2020-12-22 JP JP2020212610A patent/JP2022098929A/ja active Pending
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