JP2022098792A - ポリエチレン系樹脂組成物、架橋ポリエチレン系樹脂および電線ケーブル - Google Patents

ポリエチレン系樹脂組成物、架橋ポリエチレン系樹脂および電線ケーブル Download PDF

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Akira Uchida
雄亮 坂田
Yusuke Sakata
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Abstract

【課題】難燃性および絶縁性の良好な架橋ポリエチレン系樹脂および組成物、ならびにこれを用いた電線ケーブルを提供する。【解決手段】ポリエチレン系樹脂組成物は、(A)ポリエチレン樹脂を100質量部、(B)有機系難燃剤を0.1~20質量部、および(C)1,6-ジメチル-3-(4-メチルフェニルインダン)等のインダン化合物を0.001~1質量部含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性に優れたポリエチレン系樹脂組成物、架橋ポリエチレン系樹脂および電線ケーブルに関するものである。
従来から、電線ケーブルの難燃性を高めるため、各種難燃剤を配合した難燃性電線ケーブルが開発されている。その多くは外装被覆材(シース)や絶縁層に難燃性を付与する手法がとられており、例えばポリオレフィン系樹脂に水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の難燃剤を多量に配合した難燃性電線ケーブルが開示されている(特許文献1)。
一方、高圧電線ケーブルにおいては電線ケーブル内の絶縁層に、有機過酸化物で架橋された架橋ポリエチレンが使用されている(特許文献2)。
特公平7-81039号公報 特開平4-212208号公報
ところが、一般的なケーブル等に難燃性を付与するために、難燃剤、特に水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤が使用されているが、その多くはエチレン-酢酸ビニル共重合体やエチレン-プロピレン共重合体ゴム等の樹脂を使用したシース部の難燃性を向上するものである。絶縁層に用いられる架橋ポリエチレンに対して同様の難燃剤を添加すると、その絶縁性が低下する問題を生じる。そのため、このような方法で得られた架橋ポリエチレンは、難燃性向上と絶縁性維持の両立が困難であり、特に高圧電線ケーブルの絶縁層への使用は好ましくないものであった。
本発明は、上記状況を鑑みてなされたものであり、難燃性および絶縁性の良好な架橋ポリエチレン系樹脂および組成物、およびこれを用いた電線ケーブルを提供することを課題とする。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) (A)ポリエチレン樹脂を100質量部、
(B)有機系難燃剤を0.1~20質量部、および
(C)下記式1で表される化合物を0.001~1質量部含有することを特徴とする、ポリエチレン系樹脂組成物。
Figure 2022098792000001
(式(1)中、
、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基またはエチル基である)
(2) 前記(B)有機系難燃剤が、有機ハロゲン系難燃剤および有機リン系難燃剤からなる群より選ばれる1種以上の有機系難燃剤を含むことを特徴とする、(1)のポリエチレン系樹脂組成物。
(3) 更に(D)有機過酸化物を含有することを特徴とする、(1)または(2)のポリエチレン系樹脂組成物。
(4) 更に(E)架橋助剤を含有することを特徴とする、(1)~(3)のいずれかのポリエチレン系樹脂組成物。
(5) (1)~(4)のいずれかのポリエチレン系樹脂組成物を架橋してなることを特徴とする、架橋ポリエチレン系樹脂。
(6) (5)の架橋ポリエチレン系樹脂を含むことを特徴とする、電線ケーブル。
本発明の架橋ポリエチレン系樹脂組成物によれば、絶縁性が低下することなく難燃性に優れた架橋ポリエチレン系樹脂組成物を得ることができる。この架橋ポリエチレン系樹脂組成物を絶縁層に用いることで、難燃性および絶縁性に優れた電線ケーブルを得ることができる。
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、(A)ポリエチレン樹脂、(B)有機系難燃剤、および(C)式1で示される化合物を含むものである。
((A)ポリエチレン樹脂)
(A)ポリエチレン樹脂は、エチレンのホモポリマーが好ましい。(A)ポリエチレン樹脂は、電線ケーブルの絶縁層として使用され、絶縁性、耐熱性、防水性、機械的強度等が求められる。耐熱性の向上のため、ポリエチレン樹脂を有機過酸化物で架橋した、架橋ポリエチレンが使用される。
(A)ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等が挙げられる。
(A)ポリエチレン樹脂の質量平均分子量は、20,000~300,000が好ましい。また、ポリエチレン樹脂の密度は、0.900~0.970が好ましく、0.910~0.930が特に好ましい。LDPEを使用することが好ましい。
(A)ポリエチレン樹脂は市販品を使用することができ、日本ポリエチレン製ノバテックLL UE320、ノバテックLD
ZE4K、ノバテックLD ZF33、宇部丸善ポリエチレン製UBEポリエチレン L719、L518、L618、C410、住友化学製スミカセンC215、G201、G109、F236-0、F411-0等が挙げられる。
((B)有機系難燃剤)
(B)有機系難燃剤の種類は特に限定されず、ハロゲン系難燃剤、有機リン系難燃剤、窒素系難燃剤等が使用される。ハロゲン系難燃剤の例としては、2,4,6-トリブロモフェニルアリルエーテル、2,2-ビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2‘,6,6’-テトラブロモビスフェノ-ルS、臭素化エポキシ樹脂(TBBA)、臭素化トリメチルフェニルリンデン、臭素化ポリスチレン(BPs)、塩素化パラフィン、デクロランプラス、デカブロモジフェニルエ-テル、クロレンド酸、無水クロレンド酸が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、トリフェニルホスフェ-ト(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)、レゾルシノールビズ-ジフェニルホスフェート(RDP)、トリス(クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリス(クロロプロピル)ホスフェート(TCPP)、トリス-ジクロロプロピルホスフェート(TDCPP)、ジエチル N,N ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノメチルホスフォネートが挙げられる。窒素系難燃剤としては2,4,5-トリアミノ-1,3,5-トリアジン、メラミン-シアヌル酸塩類、メラム、メレム、メロンが挙げられる。その中でも、ハロゲン系難燃剤および有機リン系難燃剤が好ましく、ハロゲン系難燃剤がより好ましい。
(B)有機系難燃剤の添加量は、(A)ポリエチレン樹脂100質量部に対して、0.1~20質量部とする。これは、0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上が更に好ましい。また、これは10質量部以下が好ましく、5質量部以下が更に好ましい。
(B)有機系難燃剤の効果をさらに向上させるため、難燃助剤を併用してもよい。難燃助剤は、単一では難燃性の効果は殆どないが、難燃剤等と組み合わせることで、難燃性の効果を向上させる。難燃助剤の例としては、三酸化アンチモン、赤燐、シリコーン、ナノクレイ、アゾアルカン化合物、ヒンダートアミン化合物等が挙げられる。
((C)式1で示される化合物)
Figure 2022098792000002
式(1)中、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基またはエチル基である。
これらの化合物は、ポリエチレン樹脂中での(B)有機系難燃剤の分散性を向上させることにより、その効果をさらに高めるものである。水酸化マグネシウム等の無機微粒子を樹脂に分散する場合、分散剤として高級脂肪酸やその塩を用いることがある。しかしながら、ポリエチレンに有機系難燃剤を分散する場合、高級脂肪酸やその塩は分散剤効果が低いだけでなく、極性基を有するため絶縁性を低下させるため好ましくない。
式(1)の化合物において、1,6-ジメチル-3-(4-メチルフェニルインダン)(R、R、R=メチル基、R、R、R、R=水素)、1-メチル-3-フェニルインダン(R=メチル基、R、R、R、R、R、R=水素)、1,1,3,-トリメチル-3-フェニルインダン(R、R、R=メチル基、R、R、R、R=水素)が添加されることが好ましい。中でも1,1,3,-トリメチル-3-フェニルインダンが好ましい。
(C)式(1)で示される化合物の添加量としては、(A)ポリエチレン樹脂100質量部に対して、0.001~1質量部とする。(C)式(1)で示される化合物の添加量は、0.005質量部以上が好ましく、また、0.5質量部以下が好ましい。
架橋ポリエチレン系樹脂は、(A)ポリエチレン樹脂を架橋して得られる。
(A)ポリエチレン樹脂の架橋方法は、ラジカル発生剤や電子線等により共有結合を形成する方法が挙げられ、中でもポリエチレン樹脂を溶融成形しながら架橋することができるため、(D)有機過酸化物を用いる方法が好ましい。
(D)有機過酸化物の例としては、ジクミルペルオキシド、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサンなどが挙げられる。中でもジクミルペルオキシドが好ましい。(D)有機過酸化物の添加量としては、(A)ポリエチレン樹脂100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、1~5質量部が特に好ましい。
(A)ポリエチレン樹脂を架橋する際に、(E)架橋助剤を使用することができる。(E)架橋助剤の例としては、トリアリルイソシアヌレートやα-メチルスチレンダイマー(MSD)等の多官能アリル化合物が挙げられる。中でもMSDは加工時の早期架橋(スコーチ)を防止しつつ架橋度を向上することができるため、好適に使用することができる。(E)架橋助剤の添加量としては、(A)ポリエチレン樹脂100質量部に対して0.1~10質量部が好ましい。
本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光性安定剤、顔料、帯電防止剤、結晶核剤等を添加することができる。
架橋ポリエチレン系樹脂の製造方法は、本発明のポリエチレン樹脂系組成物の各成分および必要に応じてその他添加剤を、100~250℃で溶融混錬することにより得られる。溶融混錬の方法は特に限定されず、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等の公知の混錬機を使用することができる。中でも単軸押出機、二軸押出機を使用することが好ましい。
各成分はそれぞれ別に押出機に加えてもよく、また予め混合したものを押出機に加えてもよい。成分(C)は少量かつ液体であるため、他の液体成分、例えば成分(E)と混合してから押出機に加えることが好ましい。
[電線ケーブルの製造方法]
電線ケーブルはその用途や求められる性能に応じて適宜その形状や構成を変更可能であり、公知の方法にて製造することができる。本発明の架橋ポリエチレン系樹脂組成物を電線ケーブルの絶縁層として成形する場合には、押出機のダイスから押出成形により直接銅線上、および内部半導電層上に被覆成形することが好ましい。
(実施例1)
<ドリップ性試験片>
1,1,3-トリメチル-3-フェニルインダン0.01質量部、およびα-メチルスチレンダイマ-2質量部を混合しておく。ラボプラストミル単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製)にLDPE100質量部、デカブロモジフェニルオキサイド2部、ジクミルペルオキシドを8質量部加え、予め混合した1,1,3-トリメチル-3-フェニルインダンおよびα-メチルスチレンダイマーの混合溶液を加え、シリンダー温度180℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混合し、厚さが2.3mmのシート状に押出し、さらに180℃の恒温槽で10分間架橋処理することにより実施例1のドリップ性試験用の架橋ポリエチレン系樹脂を得た。
<絶縁性評価用の試験ケーブル>
外形が12.0mmになるように19本の銅線を撚り合わせて導体部を形成し、この導体部の外周上に、エチレンプロピレンゴムにカーボンの粉末を分散させた樹脂を0.1mmの厚さで押出被覆し、内部半導電層を形成した。ドリップ性試験片製造時に用いたものと同じ配合および操作をして、溶解混錬を行い、厚さ2.0mmで共押出しを行い内部半導電層に被覆し、180℃恒温槽にて10分間架橋処理し、絶縁層を形成した。絶縁層の外周面上に内部導電層と同様の樹脂を0.1mmの厚さで押出被覆し、外部半導電層を形成する。外部半導電層の外周面上に銅テープを巻き付けて遮蔽層を形成した後、押さえつけテープを巻き付けて遮蔽層を固定することにより実施例1の絶縁性評価用の試験ケーブルを得た。
(実施例2~8、比較例1~4)
各成分の配合量を表1、および表2に示す量にした以外は実施例1と同様の操作で実施例2~6、比較例1~4のドリップ性試験用の架橋ポリエチレン系樹脂組成物および絶縁性評価用の試験ケーブルを得た。
(ドリップ性(難燃性)の測定)
長さ127mm、幅13mmおよび厚さ2.3mmの試料を作成し、クランプに垂直に取付け、試験片の下6mmの所が脱脂綿の上300mmになるように設置した。脱脂綿は0.07g使用し50mm四方に広げた。ブンゼンバーナーの内炎部に5秒間接炎させた後、サンプルがドリップしない場合を〇、ドリップした場合を△、ドリップし、さらに綿に火炎が拡散した場合を×とする。
(絶縁抵抗の測定)
ケーブルの試料を作成し、JIS C 3005に準拠した試験における、20℃、電界強度60kV/mmの条件にて、絶縁抵抗が1.0MΩKm以上だった場合を合格とした。絶縁抵抗が1.0MΩKmを下回った場合を不合格とした。
Figure 2022098792000003
Figure 2022098792000004
表1、表2に示した各成分の一覧を記載する。
(A)ポリエチレン: LDPE(日本ポリエチレン製:ノバテックLL
UE320)
(B)有機系難燃剤(1): デカブロモジフェニルオキサイド(ICL JAPAN製)
(B)有機系難燃剤(2): トリフェニルホスフェート(大八化学工業製:TPP)
(B’)無機系難燃剤: 水酸化マグネシウム:(協和化学社製:キスマ5
P)
(C)化合物(1): 1,1,3-トリメチル-3-フェニルインダン
(C)化合物(2): 1,6-ジメチル-3-(4-メチルフェニル)インダン
(C)化合物(3): 1-メチル-3フェニルインダン
(C’)分散剤: ステアリン酸カルシウム(大八化学工業製:M)
(D)有機過酸化物: ジクミルぺルオキシド(日油製:パークミルD)
(E)架橋助剤: α-メチルスチレンダイマー(日油製:ノフマーMSD)
実施例1~8では難燃性は向上し、絶縁抵抗試験も合格であった。
(C)式(1)の化合物を添加しない比較例1では、ドリップ性(難燃性)が悪化した。
(B)有機系難燃剤を添加せず、その代わりに(B’)無機系難燃剤(フィラー)を添加した比較例2では、絶縁抵抗が不合格となった。
また、(C)式(1)の化合物を添加せず、その代わりに一般的な(C’)分散剤を添加し、(B’)無機系難燃剤(フィラー)を添加した比較例3では、難燃性は悪化し、絶縁抵抗は不合格であった。
さらに、(C’)分散剤を添加し、有機系難燃剤(B)を添加した比較例4では、難燃性が悪化し、絶縁性も不合格であった。

Claims (6)

  1. (A)ポリエチレン樹脂を100質量部、
    (B)有機系難燃剤を0.1~20質量部、および
    (C)下記式1で表される化合物を0.001~1質量部含有することを特徴とする、ポリエチレン系樹脂組成物。

    Figure 2022098792000005
    (式(1)中、
    、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基またはエチル基である)
  2. 前記(B)有機系難燃剤が、有機ハロゲン系難燃剤および有機リン系難燃剤からなる群より選ばれる1種以上の有機系難燃剤を含むことを特徴とする、請求項1記載のポリエチレン系樹脂組成物。
  3. 更に(D)有機過酸化物を含有することを特徴とする、請求項1または2記載のポリエチレン系樹脂組成物。
  4. 更に(E)架橋助剤を含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つの請求項に記載のポリエチレン系樹脂組成物。
  5. 請求項1~4のいずれか一つの請求項に記載のポリエチレン系樹脂組成物を架橋してなることを特徴とする、架橋ポリエチレン系樹脂。
  6. 請求項5記載の架橋ポリエチレン系樹脂を含むことを特徴とする、電線ケーブル。
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