JP2022096749A - エポキシ樹脂組成物、およびプリプレグ - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、およびプリプレグ Download PDF

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奈緒 河村
Nao Kawamura
康裕 福原
Yasuhiro Fukuhara
侑司 三角
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Abstract

【課題】成形品の燃焼時間を短くできるプリプレグを提供する。また、難燃性および機械物性に優れた成形品を提供する。【解決手段】(A)成分:ハロゲン含有エポキシ樹脂、(B)成分:ジシアンジアミドまたはジシアンジアミド誘導体および(C)成分:イミダゾール化合物またはイミダゾール化合物誘導体を含むエポキシ樹脂組成物と炭素繊維からなるプリプレグ。【選択図】なし

Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物、およびプリプレグに関する。
樹脂と強化繊維とを組み合わせた成形品(FRP)は、軽量性、剛性、耐衝撃性等に優れることから様々な用途に用いられている。特に炭素成形品は、軽量かつ高強度、高剛性であるため、釣り竿やゴルフシャフト等のスポーツ・レジャー用途、自動車用途や航空機用途等の幅広い分野で用いられている。また近年では、炭素成形品の機械的特性に加え、炭素繊維の電磁波遮蔽性といった特長を生かし、ノートパソコンなどの電子・電気機器の筐体としても使用されている。
成形品は、様々な用途の中で、難燃性能を求められることがある。例えば、成形品を電子・電気機器や航空機用の構造体などに用いる場合、発熱による発火が火災の原因となる可能性があるため、難燃性能が求められる。成形品に難燃性能を付与する方法としては、マトリックス樹脂組成物に臭素化エポキシ樹脂を添加する方法が広く用いられていた。(特許文献1および特許文献2参照)
特開2007-284561号公報 特開平9-143247号公報
従来の技術では、成形品の燃焼時間を短くしつつ硬化物の機械強度を両立させることには至っていなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、成形品の燃焼時間を短くできるプリプレグを提供することを目的とする。また、難燃性および機械物性に優れた成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、ジシアンジアミドまたはジシアンジアミド誘導体かつイミダゾール化合物またはイミダゾール化合物誘導体、およびハロゲン含有エポキシ樹脂を併用したプリプレグとすることにより、その硬化物が高い難燃性及び強度を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]~[13]の態様を有する。
[1]下記(A)成分、(B)成分および(C)成分を含むエポキシ樹脂組成物と炭素繊維とからなるプリプレグ。
(A)成分:ハロゲン含有エポキシ樹脂
(B)成分:ジシアンジアミドまたはジシアンジアミド誘導体
(C)成分:イミダゾール化合物またはイミダゾール化合物誘導体
[2]前記ハロゲン含有エポキシ樹脂の数平均分子量が200~800である、[1]に記載のプリプレグ。
[3]前記プリプレグを下記成形法で成形した成形品のUL-94Vが厚さ0.5mmにおいてV-0以上である、[1]または[2]に記載のプリプレグ。
<成形法>
プリプレグを300mm×300mmにカットし、繊維方向を揃えて4枚積み重ねて得た積層体をオートクレーブで圧力0.04MPa下で2℃/分で昇温し、圧力0.6MPa下で2℃/分で昇温し、130℃で60分間保持して加熱硬化させる。
[4]下記(D)成分をさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載のプリプレグ。
(D)成分:オキサゾリドン構造を有するエポキシ樹脂
[5]下記(E)成分をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載のプリプレグ。
(E)成分:ノボラック型エポキシ樹脂
[6]下記(F)成分をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載のプリプレグ。
(F)成分:金属酸化物
[7]前記(F)成分が三酸化アンチモンである、[6]に記載のプリプレグ。
[8]下記(G)成分をさらに含む、[1]~[6]のいずれかに記載のプリプレグ。
(G)成分:金属水酸化物
[9]前記(G)成分が水酸化アルミニウムである、[8]に記載のプリプレグ。
[10]前記エポキシ樹脂組成物100質量部に対し、前記(A)成分を5~40質量部以下含む、[1]~[9]のいずれかに記載のプリプレグ。
[11]前記エポキシ樹脂組成物100質量部に対し、前記(B)成分を1~30質量部含む、[1]~[10]のいずれかに記載のプリプレグ。
[12]前記エポキシ樹脂組成物100質量部に対し、前記(C)成分を1~15質量部含む、[1]~[11]のいずれかに記載のプリプレグ。
[13]前記成分(A)のエポキシ当量が200~600である、[1]~[12]のいずれかに記載のプリプレグ。
[14][1]~[13]のいずれかに記載のプリプレグを成形してなる、成形品。
本発明によれば、難燃性に優れるエポキシ樹脂組成物及びプリプレグと、該エポキシ樹脂組成物又はプリプレグを用いて得られる、難燃性に優れ、かつ良好な外観を有する成形品、および成形品を提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、「エポキシ樹脂」とは、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を意味する。また、「エポキシ樹脂組成物」とは、エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、場合により他の添加剤とを含む組成物を意味する。また、本発明において、エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物を「樹脂硬化物」と称し、その中でも特に板状の硬化物を「樹脂板」と称することがある。
[プリプレグ]
プリプレグの態様の1つは、下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含むエポキシ樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグである。
(A)成分:ハロゲン含有エポキシ樹脂
(B)成分:ジシアンジアミドまたはジシアンジアミド誘導体
(C)成分:イミダゾール化合物またはイミダゾール化合物誘導体
プリプレグは、例えば、エポキシ樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させることで得られる。エポキシ樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させる方法としては、例えばエポキシ樹脂組成物をメチルエチルケトン、メタノール等の溶媒に溶解して低粘度化してから、強化繊維の集合体に含浸させるウェット法;エポキシ樹脂組成物を加熱により低粘度化してから、強化繊維の集合体に含浸させるホットメルト法(ドライ法)などを用いることができる。
ウェット法は、強化繊維の集合体をエポキシ樹脂組成物の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させる方法である。ホットメルト法には、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接、強化繊維の集合体に含浸させる方法と、一旦エポキシ樹脂組成物を離型紙等の基材の表面に塗布してフィルムを作製しておき、次いで強化繊維の集合体の両側または片側から前記フィルムを重ね、加熱加圧することにより強化繊維の集合体に樹脂を含浸させる方法がある。離型紙等の基材の表面に塗布して得られる塗布層は、未硬化のままでホットメルト法に用いてもよいし、塗布層を硬化させた後にホットメルト法に用いてもよい。ホットメルト法によれば、プリプレグ中に残留する溶媒が実質上存在しないため好ましい。
プリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含有量(以下、「樹脂含有量」という)は、プリプレグの総質量に対して、15~50質量%が好ましく、20~45質量%がより好ましく、30~45質量%がさらに好ましい。樹脂含有量が、上記下限値以上であれば強化繊維とエポキシ樹脂組成物との接着性を充分に確保することができ、上記上限値以下であれば繊維強化複合樹脂成形体の機械物性がより高まる。
電子・電気機器や航空機用の構造体などに用いるための安全性の観点から、プリプレグを下記成形法で成形した成形品のUL-94Vが厚さ0.5mmにおいてV-0以上であることが好ましい。
<成形法>
プリプレグを300mm×300mmにカットし、繊維方向を揃えて4枚積み重ねて得た積層体をオートクレーブで圧力0.04MPa下で2℃/分で昇温し、圧力0.6MPa下で2℃/分で昇温し、130℃で60分間保持して加熱硬化させる。
<強化繊維>
強化繊維は、プリプレグ中で強化繊維基材として存在し、強化繊維シートであることが好ましい。強化繊維は、強化繊維が単一方向に配列したものであってもよく、ランダム方向に配列したものであってもよい。強化繊維の形態としては強化繊維の織物、強化繊維の不織布、強化繊維の長繊維が一方向に引き揃えられたシートなどが挙げられる。強化繊維は、比強度や比弾性率が高い成形品を成形することができるという観点からは、長繊維が単一方向に引き揃えられた強化繊維の束からなるシートであることが好ましく、取り扱いが容易であるという観点からは、強化繊維の織物であることが好ましい。
強化繊維の材質としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維などが挙げられる。繊維強化複合樹脂成形体の機械物性および軽量化の観点から、強化繊維としては炭素繊維が好ましい。
炭素繊維の繊維径は、3~12μmが好ましい。炭素繊維の繊維径が上記下限値以上であれば、炭素繊維を加工するための、例えば、コーム、ロール等のプロセスにおいて、炭素繊維が横移動して炭素繊維同士が擦れたり、炭素繊維とロール表面等とが擦れたりするときに、炭素繊維が切断したり、毛羽だまりが生じたりしにくい。このため、安定した強度の成形品を好適に製造することができる。炭素繊維の繊維径が上記上限値以下であれば、通常の方法で炭素繊維を製造することができる。炭素繊維束における炭素繊維の本数は、1,000~70,000本が好ましい。
成形品の剛性の観点から、炭素繊維のストランド引張強度は1.5~9GPaが好ましく、炭素繊維のストランド引張弾性率は150~260GPaが好ましい。炭素繊維のストランド引張強度およびストランド引張弾性率は、JISR7601:1986に準拠して測定される値である。
<エポキシ樹脂組成物>
エポキシ樹脂組成物は、下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む。エポキシ樹脂組成物は、(D)成分、(E)成分、(F)成分、または(G)成分を含んでいてもよい。(A)成分を用いることでハロゲン原子をエポキシ基と(B)成分及び(C)成分の架橋構造に直接取り入れることができることから、硬化物の機械物性を低下させずに難燃性を付与することが可能である。
(A)成分:ハロゲン含有エポキシ樹脂
(B)成分:ジシアンジアミドまたはジシアンジアミド誘導体
(C)成分:イミダゾール化合物またはイミダゾール化合物誘導体
(D)成分:オキサゾリドン構造を有するエポキシ樹脂
(E)成分:ノボラック型エポキシ樹脂
(F)成分:金属酸化物
(G)成分:金属水酸化物
<(A)成分>
(A)成分は、ハロゲン含有エポキシ樹脂である。ハロゲン含有エポキシ樹脂とは、化学構造中にハロゲン原子を有するものであり、例えば、下記式(1)で表される構造を含むハロゲン含有エポキシ樹脂が挙げられる。ハロゲン含有エポキシ樹脂は熱分解で発生したハロゲン系の不燃性ガスが酸素濃度を希釈すること、また、難燃剤の分解によって生ずるHX(ハロゲン化水素)が燃焼時に生成する高いOHラジカルを低エネルギーのOXラジカルに変え、OHラジカルから生成するHXが新しいOHラジカルを消滅させることでラジカル反応を停止することから難燃効果を示す。また、(A)成分は、(B)成分および(C)成分と反応するため硬化物の架橋構造に組み込むことができるため架橋蜜度が高くなり、高い強度と難燃性を達成できる。
Figure 2022096749000001

…式(1)
(式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、またアルキル基、R及びRはそれぞれ独立にハロゲン原子、m及びnはそれぞれ独立に1~4の整数を表す。)
及びRのアルキル基としては、炭素数1~6であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。R~Rのハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。難燃性の観点から、R及びRはいずれもメチル基、R及びRはいずれも臭素、m及びnはいずれも2であることが好ましい。R及びRは3-または5-位であることが好ましい。
ハロゲン含有エポキシ樹脂の数平均分子量は、UL94の難燃性の観点から100以上が好ましく、200以上がより好ましい。硬化物の機械物性の観点から1000以下が好ましく、800以下がより好ましい。数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定できる。ハロゲン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は、硬化物の機械物性の観点から200以上が好ましく、300以上がより好ましい。UL94の難燃性の観点から600以下が好ましく、500以下がより好ましい。ハロゲン含有エポキシ樹脂のハロゲン含有率は、難燃性の観点から、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。強度の観点から、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
(A)成分としては市販品を用いてもよい。例えばEPICLON152またはEPICLON153(以上、DIC株式会社製);DER542、DER560またはDER538A80(以上、ダウ・ケミカル社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
エポキシ樹脂組成物100質量部に対する(A)成分の含有量は、樹脂硬化物の難燃性がより向上し、難燃性により優れた成形品が得られやすくなることから、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。成形品の機械的特性や良好な外観が得られやすくなることから、エポキシ樹脂組成物100質量部に対して40質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましくい。
<(B)成分>
(B)成分は、ジシアンジアミドまたはジシアンジアミド誘導体である。ジシアンジアミドおよびその誘導体は融点が高く、低温領域におけるエポキシ樹脂との相溶性が低いため貯蔵安定性の観点で有利である。また、エポキシ樹脂組成物が(B)成分を含むことで、優れたポットライフを有するエポキシ樹脂組成物が得られるとともに、高い機械的特性を有する樹脂硬化物が得られる。
ジシアンジアミドの誘導体としては、例えばジシアンジアミドと、エポキシ樹脂やビニル化合物、アクリル化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナ ントレン-10-オキサイド等の各種化合物を結合させたものなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ジシアンジアミドと併用してもよい。
(B)成分としては、反応性の点からジシアンジアミドが好ましい。また、(B)成分としては市販品を用いてもよい。ジシアンジアミドの市販品としては、例えばDICY7、DICY15(以上、三菱ケミカル株式会社製);DICYANEX1400F(エボニックジャパン株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
エポキシ樹脂組成物100質量部に対する(B)成分の含有量は、硬化促進の観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。硬化物の靱性の観点から、エポキシ樹脂組成物100質量部に対して15質量部以下が好ましく、14質量部以下がより好ましい。
<(C)成分>
(C)成分は、イミダゾール化合物またはイミダゾール化合物誘導体である。保存安定性と成形における硬化速度を向上させる観点から、硬化開始温度が100℃以上のイミダゾール化合物またはイミダゾール化合物誘導体であることが好ましい。硬化開始温度は、以下の方法で測定された値である。まずエポキシ当量が180~220のビスフェノールA型エポキシ樹脂100質量部に、イミダゾール系硬化促進剤10質量部を加えて混合し試料樹脂組成物を調製する。該試料樹脂組成物につき、昇温速度10℃/分で示差走査熱量計(DSC)により発熱量を測定し、得られたDSC曲線の変曲点における接線とベースラインとの交点の温度を硬化開始温度とする。イミダゾール化合物またはイミダゾール化合物誘導体は、その構造の中に非共有電子対を有する窒素原子を有し、これがエポキシ基を活性化し、硬化を促進する。硬化開始温度は110℃以上であることがより好ましい。イミダゾール誘導体としては、イミダゾール化合物のイミダゾールアダクト、包接イミダゾール、マイクロカプセル型イミダゾール、及び安定化剤を配位させたイミダゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の誘導体であってもよい。
イミダゾール化合物としては、例えば2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。
アダクト処理、異分子による包接処理、マイクロカプセル処理、あるいは安定化剤を配位させる前のイミダゾールの具体例としては、上記の他に、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾ リウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト 、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-エチル-4-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物、1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(2-シアノエトキシ)メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
市販品としては、2MZ-A、2MZA-PW、2E4MZ-A、2MZ、2PZ、2E4MZ、2PHZ(いずれも商品名、四国化成株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。エポキシ樹脂のエポキシ基にイミダゾール化合物が開環付加した構造を有するイミダゾールアダクトの市販品としては、例えばPN-50、PN-50J、PN-40、PN-40J、PN-31、PN-23、PN-H(いずれも商品名、味の素ファインテクノ株式会社製 )などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。包接イミダゾールの市販品としては、例えばTIC-188、KM-188、HIPA-2P4MHZ、NIPA-2P4MHZ、TEP-2E4MZ、HIPA-2E4MZ、NIPA-2E4MZ(いずれも商品名、日本曹達株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。マイクロカプセル型イミダゾールの市販品としては、例えばノバキュアHX3721、 HX3722、HX3742、HX3748(商品名、旭化成イーマテリアルズ株式会社製 );LC-80(商品名、A&C Catalysts社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
エポキシ樹脂組成物100質量部に対する(C)成分の含有量は、硬化促進の観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。難燃性、耐熱性、機械的特性により優れた樹脂硬化物が得られることから、エポキシ樹脂組成物100質量部に対して30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましい。
<(D)成分>
(D)成分は、オキサゾリドン構造を有するエポキシ樹脂である。樹脂硬化物の耐熱性、破断歪、および強化繊維との接着性が高まり、耐熱性および破断歪に優れる硬化物が得られる。
オキサゾリドン型構造を有するエポキシ樹脂は下記式(2)で表される構造を有することが好ましい。
Figure 2022096749000002

…式(2)
(式(2)中、n、mはそれぞれ独立に0以上の整数であり、Yは置換基を有していてもよい2価の基を示す。Zは炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~10のアリール基及び炭素数6~10のアラルキル基から選ばれる置換基を少なくとも1個有する環員数5~8のシクロアルキリデン基を示す。Rはそれぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアラルキル基、炭素数6~10のアリールオキシ基、または炭素数6~10のアラルキルオキシ基を示す。)
式(2)において、炭素数1~8のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t-ブチル基等が挙げられ、メチル基またはエチル基が特に好ましい。炭素数1~8のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。炭素数6~10のアリール基としては、フェニル基、キシリル基、トリル基などが挙げられる。炭素数6~10のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。炭素数6~10のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。炭素数6~10のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基などが挙げられる。n、mは、耐熱性の観点から、0~5が好ましく、0~3がより好ましい。Yは、下記式(2a)~(2k)が挙げられ、中でも(2c)が好ましい。
Figure 2022096749000003

Zは、入手の容易性の観点から、シクロアルキリデン基を構成するシクロアルカン環は、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、またはシクロオクタン環が好ましく、いずれのZもシクロペンタン環またはシクロヘキサン環であることが好ましい。Zの置換基としては、接着性等の物性の観点から、メチル基やフェニル基が好ましい。Rは、入手の容易性及び耐熱性等の物性の観点から、水素原子、1-フェニルエチル基またはメチル基であることが好ましい。
オキサゾリドン環構造は、イソシアネート基とエポキシ基の付加反応により生成する。オキサゾリドン型エポキシ樹脂の製造方法としては特に限定されず、例えば、イソシアネート化合物とエポキシ樹脂とを、オキサゾリドン環形成に用いられる触媒の存在下で反応させることにより、ほぼ理論量で得ることができる。イソシアネート化合物とエポキシ樹脂は、当量比(イソシアネート化合物:エポキシ樹脂)1:2~1:10の範囲で反応させることが好ましい。イソシアネート化合物とエポキシ樹脂の当量比が上記範囲であれば、樹脂硬化物の耐熱性および耐水性がより良好となる傾向にある。
(D)成分の原料となるイソシアネート化合物としては特に限定されないが、オキサゾリドン環構造をエポキシ樹脂の骨格に組み込むためには、複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物が好ましい。また、樹脂硬化物が高い耐熱性を有するためには、剛直な構造を持つジイソシアネートが好ましい。イソシアネート化合物の具体例としては、メタンジイソシアネート、ブタン-1,1-ジイソシアネート、エタン-1,2-ジイソシアネート、ブタン-1,2-ジイソシアネート、トランスビニレンジイソシアネート、プロパン-1,3-ジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、2-ブテン-1,4-ジイソシアネート、2-メチルブテン-1,4-ジイソシアネート、2-メチルブタン-1,4-ジイソシアネート、ペンタン-1,5-ジイソシアネート、2,2-ジメチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、ヘキサン-1,6-ジイソシアネート、ヘプタン-1,7-ジイソシアネート、オクタン-1,8-ジイソシアネート、ノナン-1,9-ジイソシアネート、デカン-1,10-ジイソシアネート、ジメチルシランジイソシアネート、ジフェニルシランジイソシアネート、ω,ω’-1,3-ジメチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω’-1,4-ジメチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω’-1,3-ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω’-1,4-ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω’-1,4-ジメチルナフタレンジイソシアネート、ω,ω’-1,5-ジメチルナフタレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1-メチルベンゼン-2,5-ジイソシアネート、1-メチルベンゼン-2,6-ジイソシアネート、1-メチルベンゼン-3,5-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-2,4’-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,3’-ジメトキシビスフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジメトキシジフェニルメタン-3,3’-ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ジフェニルサルファイト-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルスルフォン-4,4’-ジイソシアネート等の2官能イソシアネート化合物;ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の3官能以上のイソシアネート化合物;前記イソシアネート化合物の2量体や3量体等の多量体、アルコールやフェノールによりマスクされたブロックイソシアネートおよびビスウレタン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのイソシアネート化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
上記イソシアネート化合物の中でも、樹脂硬化物の耐熱性がより向上する傾向にある観点から、2官能イソシアネート化合物または3官能イソシアネート化合物が好ましく、2官能イソシアネート化合物がより好ましく、イソホロン、ベンゼン、トルエン、ジフェニルメタン、ナフタレン、ノルボルネンポリメチレンポリフェニレンポリフェニル、ヘキサメチレンから選ばれる骨格を有する2官能イソシアネート化合物がさらに好ましい。イソシアネート化合物の官能基数が適度に多ければ、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性が低下しにくくなる。イソシアネート化合物の官能基数が適度に少なければ、樹脂硬化物の耐熱性が低下しにくくなる。
(D)成分の原料となるエポキシ樹脂としては、各種のエポキシ樹脂を用いることができるが、オキサゾリドン環構造を効率的にエポキシ樹脂の骨格に組み込むためには、分子の両末端にエポキシ基を持つエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、テトラメチルビスフェノールA型、テトラメチルビスフェノールF型、テトラメチルビスフェノールAD型、テトラメチルビスフェノールS型、テトラブロモビスフェノールA型、ビフェニル型等の2価フェノール類由来のエポキシ樹脂;1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-(4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4-〔1-〔4-〔1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール等のトリス(グリシジルオキシフェニル)アルカン類等に由来するエポキシ樹脂;フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールAノボラック型等のノボラック由来のエポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂としては、(D)成分の粘度が過度に上昇するのを抑制できる観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。
イソシアネート化合物として、トリレンジイソシアネートのようなトルエン骨格を有する2官能イソシアネート(例えば、1-メチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1-メチルベンゼン-2,5-ジイソシアネート、1-メチルベンゼン-2,6-ジイソシアネート、1-メチルベンゼン-3,5-ジイソシアネート)1分子と、エポキシ樹脂としてビスフェノールAジグリシジルエーテル2分子とを、混合反応させて得られる付加反応物は、プリプレグの常温での作業性と樹脂硬化物の耐熱性を良好なものとするために特に好ましい。
市販品としては、例えば、AER4152、AER4151、LSA3301、LSA2102(いずれも商品名、旭化成イーマテリアルズ株式会社製);ACR1348(商品名、株式会社ADEKA製);DER(登録商標。以下同様。)の852、858(いずれも商品名、ダウ・ケミカル日本株式会社製);TSR-400(商品名、DIC株式会社製);YD-952(商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等が挙げられる。いずれも本発明に好ましく用いられるが、YD-952が特に好ましい。(D)成分は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
エポキシ樹脂組成物100質量部に対する(D)成分の含有量は、樹脂硬化物の機械物性、オキサゾリドン環により炭素繊維への接着性や難燃性が向上する傾向にあり、難燃性と機械物性を両立した繊維強化プラスチックが得られることから、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。タックやドレープ性に優れたプリプレグを得ることができるとともに、破断歪が高くボイドの無い樹脂硬化物を得ることができることから、エポキシ樹脂組成物100質量部に対して50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましい。
<(E)成分>
(E)成分は、ノボラック型エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂組成物が成分(E)を含むことで、樹脂硬化物の耐熱性を良好に維持することが可能となる。加えて、エポキシ樹脂組成物の速硬化性が向上し、低温でも短時間に硬化が完了するプリプレグが得られる。
成分(E)としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jER(登録商標)の152、154(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);エピクロン(登録商標)のN-740、N-775(いずれも商品名、DIC株式会社製)などが挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピクロン(登録商標)のN-660、N-665(いずれも商品名、DIC株式会社製);EOCN-1020、EOCN-102S(いずれも商品名、日本化薬株式会社製);YDCN-700、YDCN-701(いずれも商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)などが挙げられる。成分(F)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
エポキシ樹脂組成物100質量部に対する(E)成分の含有量は、樹脂硬化物の耐熱性が向上する傾向にあり、耐熱性に優れた繊維強化複合樹脂成形体が得られることから、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。破断歪が高くボイドの無い樹脂硬化物を得ることができることから、エポキシ樹脂組成物100質量部に対して40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
<(F)成分>
(F)成分は、金属酸化物である。成分(A)の難燃効果を高めるために、難燃助剤として配合できる。金属酸化物は高分子中のハロゲン化合物と反応し、ハロゲン化金属となり気相に出て、分解し、発生したハロゲンが燃焼を阻害することで難燃性を示す。金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化クロム、酸化アンチモン等が挙げられ、中でも、難燃性の観点から酸化アンチモンが好ましい。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物等が挙げられ、これらは複数種を組み合わせて使用してもよい。中でも、難燃助剤としての効果が高いことから、三酸化アンチモンが好ましい。
金属酸化物の平均一次粒子径は、難燃性や分散性の観点から、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。作業性の観点から金属水酸化物の平均1次粒子径は0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。平均一次粒子径はレーザー回折法や顕微鏡を用いることにより測定できる。
エポキシ樹脂組成物100質量部に対する(F)成分の含有量は、UL94難燃性の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましい。外観の観点から、エポキシ樹脂組成物100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
<(G)成分>
(G)成分は、金属水酸化物である。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、中でも、熱分解温度および分解時の吸熱量の点から、水酸化アルミニウムが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
金属水酸化物粒子の平均一次粒子径は、難燃性や分散性の観点から、15μm以下が好ましく、2.5μm以下がより好ましい。作業性の観点から金属水酸化物の平均一次粒子径は0.01 μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。平均一次粒子径はレーザー回折法や顕微鏡を用いることにより測定できる。
金属水酸化物には、必要に応じて表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、ステアリン酸による表面処理、シランカップリング剤等のカップリング剤による表面処理などが挙げられる。市販品を用いてもよく、公知の製造方法により合成したものを用いてもよい。水酸化アルミニウムの市販品としては、例えばC-303、C-301N、C-300 GT(以上、住友化学株式会社製);ハイジライトH-42、H-43(以上、昭和電工 株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水酸化マグネシウムの市販品としては、例えばマグスター#5、#4、#2、エコーマグPZ-1、Z-10(タテホ化学工業株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
エポキシ樹脂組成物100質量部に対する(G)成分の含有量は、難燃性の観点から、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。外観の関連から、エポキシ樹脂組成物100質量部に対して80質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。
(任意成分)
任意成分としては、(D)成分および(E)成分以外のエポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、添加剤などが挙げられる。
他のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、これらを変性したエポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂を変性したエポキシ樹脂等の3官能以上のエポキシ樹脂が挙げられる。また、これらエポキシ樹脂を2種類以上組み合わせて使用しても構わない。3官能以上のエポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定はされない。これら他のエポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
2官能エポキシ樹脂の市販品としては、以下に示すものが挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jER(登録商標)の825、826、827、828、834、1001(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);エピクロン(登録商標)850(商品名、DIC株式会社製);エポトート(登録商標)YD-128(商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製);DER(登録商標)の331、332(いずれも商品名、ダウ・ケミカル日本株式会社製);Bakelite(登録商標)のEPR154、EPR162、EPR172、EPR173、EPR174(いずれも商品名、Bakelite AG社製)などが挙げられる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jER(登録商標)の806、807、1750(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);エピクロン(登録商標)830(商品名、DIC株式会社製);エポトート(登録商標)のYD-170、YD-175(いずれも商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製);Bakelite(登録商標)EPR169(商品名、Bakelite AG社製);GY281、GY282、GY285(いずれも商品名、ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)などが挙げられる。
3官能以上のエポキシ樹脂の市販品としては、以下に示すものが挙げられる。ナフタレン型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、HP-4032、HP-4700(いずれも商品名、DIC株式会社製);NC-7300(商品名、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。グリシジルアミン型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jER(登録商標)630(商品名、三菱ケミカル株式会社製);アラルダイト(登録商標)のMY0500、MY0510、MY0600(いずれも商品名、ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテル、ポリオレフィン、液晶ポリマー、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリルスチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体(ASA樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリビニルホルマール、フェノキシ樹脂、ブロックポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。これら熱可塑性樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
上記熱可塑性樹脂の中でも、樹脂フロー制御性等に優れる観点から、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリビニルホルマール、ブロックポリマーが好ましい。特に、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドを用いれば、樹脂硬化物の耐熱性や難燃性がより高まる。ポリビニルホルマールを用いれば、樹脂硬化物の耐熱性を損なうことなく、得られるプリプレグのタックを適切な範囲に容易に制御できる。加えて、強化繊維と樹脂硬化物の接着性がより高まる。ブロックポリマーを用いれば、樹脂硬化物の靱性や耐衝撃性が向上する。
フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、YP-50、YP-50S、YP70、ZX-1356-2、FX-316(いずれも商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。ポリビニルホルマールの市販品としては、例えば、ビニレック(登録商標)のK(数平均分子量:59,000)、L(数平均分子量:66,000)、H(数平均分子量:73,000)、E(数平均分子量:126,000)(いずれも商品名、JNC株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
樹脂硬化物に180℃を超える耐熱性が必要とされる場合、熱可塑性樹脂としてはポリエーテルスルホンやポリエーテルイミドが好ましく用いられる。ポリエーテルスルホンの市販品としては、例えば、スミカエクセル(登録商標)の3600P(数平均分子量:16,400)、5003P(数平均分子量:30,000)、5200P(数平均分子量:35,000)、7600P(数平均分子量:45,300)(いずれも商品名、住友化学株式会社製)などが挙げられる。ポリエーテルイミドの市販品としては、例えば、ULTEM(登録商標)の1000(数平均分子量:32,000)、1010(数平均分子量:32,000)、1040(数平均分子量:20,000)(いずれも商品名、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
ブロックポリマーの市販品としては、例えば、Nanostrength(登録商標)のM52、M52N、M22、M22N、123、250、012、E20、E40(いずれも商品名、ARKEMA社製);TPAE-8、TPAE-10、TPAE-12、TPAE-23、TPAE-31、TPAE-38、TPAE-63、TPAE-100、PA-260(いずれも商品名、株式会社T&K TOKA製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
添加剤としては、例えば、エポキシ樹脂の硬化促進剤、無機質充填材、内部離型剤、有機顔料、無機顔料などが挙げられる。エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の様々な添加剤を含有してもよい。添加剤としては、(A)成分以外のリン系難燃剤(例えばリン含有エポキシ樹脂や赤燐、ホスファゼン化合物、リン酸塩類、リン酸エステル類等)、無機酸化物その他助剤系(アンチモン化合物、硼酸亜鉛,錫酸亜鉛,Mo化合物,ZrO,硫化亜鉛,ゼオライト,酸化チタンナノフィラー系等)、シリコーンオイル、湿潤分散剤、消泡剤、脱泡剤、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド、エステル類、パラフィン類等の離型剤、結晶質シリカ、溶融シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム等の粉体やガラス繊維、炭素繊維等の無機充填剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シランカップリング剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<エポキシ樹脂組成物の製造方法>
エポキシ樹脂組成物は、例えば、上述した各成分を混合することにより得られる。各成分の混合方法としては、三本ロールミル、プラネタリミキサー、ニーダー、ホモジナイザー、ホモディスパー等の混合機を用いる方法が挙げられる。エポキシ樹脂組成物は、例えば、後述するように、強化繊維の集合体に含浸させてプリプレグの製造に用いることができる。他にも、エポキシ樹脂組成物を離型紙等に塗布して硬化することで、エポキシ樹脂組成物のフィルムを得ることができる。また、30℃におけるエポキシ樹脂組成物の粘度は、100~1,000,000Pa・sであると、プリプレグ表面のタックの調整や作業性に優れる。
<成形品>
成形品は、プリプレグの硬化物であり、2枚以上のプリプレグが積層された積層体の硬化物であることが好ましい。すなわち、成形品は、プリプレグに含まれるエポキシ樹脂組成物の硬化物と、強化繊維とを含む。成形品は、例えば、前述のプリプレグを2枚以上積層した後、得られた積層体に圧力を付与しながら、エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させる方法等により成形して得られる。難燃性の観点から、成形品はUL-94Vが厚さ0.5mmにおいてV-0以上であることが好ましい。
成形方法としては、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法、シートラップ成形法や、強化繊維のフィラメントやプリフォームにエポキシ樹脂組成物を含浸させて硬化し成形品を得るRTM(Resin Transfer Molding)、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding:真空樹脂含浸製造法)、フィラメントワインディング、RFI(Resin Film Infusion)などが挙げられるが、これらの成形方法に限られるものではない。これらの中でも、エポキシ樹脂組成物の特徴を十分に生かすことができ、しかも生産性が高く、良質な成形品が得られやすいという観点から、プレス成形法が好ましい。
プレス成形法で成形品を製造する場合、プリプレグ、またはプリプレグを積層して作製したプリフォームを、予め硬化温度に調製した金型に挟んで 加熱加圧して、プリプレグまたはプリフォームを硬化することが好ましい。プレス成形時の金型内の温度は、100~160℃が好ましい。また、1~15MPaの条件下で1~20分間、プリプレグまたはプリフォームを硬化させることが好ましい。
<用途>
成形品は、マトリックス樹脂が前記本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物であることから、ハロゲン系難燃剤、赤リン、及びリン酸エステルを含有しなくても優れた難燃性を有する。したがって、成形品は、高度な難燃性能が要求される用途、たとえば電気電子筐体材料や航空機内装用材料等において有用である。ノートパソコンなどの電気・電子機器用筐体、航空機や自動車の内装部材などに適用できる。その他にも、スポーツ用途、一般産業用途および航空宇宙用途に好適に用いられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例および比較例で使用した原料を以下に示す。
[原料]
<(A)成分>
・EPICLON153:ハロゲン含有エポキシ樹脂、エポキシ当量390~410、臭素含有量46~50質量%、数平均分子量380、DIC株式会社製の「EPICLON153」。
<(B)成分>
・DICYANEX1400F:ジシアンジアミド、エボニックジャパン株式会社製の「DICYANEX1400F」。
<(C)成分>
・2MZA-PW:2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、四国化成工業株式会社製の「2MZA-PW」。
<(D)成分>
・YD-952:オキサゾリドン型エポキシ樹脂、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の「YD-952」。
<(E)成分>
・YDPN―638:フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量180g/eq、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の「YDPN―638」
<(F)成分>
・CP707:三酸化アンチモン、アイカ工業株式会社製の「CP707」
<(G)成分>
・C-301N:水酸化アルミニウム、住友化学株式会社製の「C-301N」
<その他>
・FireBrake500:ホウ酸亜鉛、ボラックス社製の「FireBrake」
・YD―128:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量189g/eq、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の「YD―128」。
・jER828:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量189g/eq、 三菱ケミカル株式会社製の「jER828」。
・5003P:ポリエーテルスルホン、住友化学株式会社製の「スミカエクセル5003P」。
<炭素繊維>
・炭素繊維:三菱レイヨン株式会社製の「パイロフィルTR50S15L」。
[実施例1]
(A)成分としてEPICLON153、(B)成分としてDICYANEX1400F、(C)成分として2MZA-PW、(D)成分としてYD-952、(E)成分としてYDPN―638、(F)成分としてCP707、(G)成分としてC-301Nを用い、以下のようにしてエポキシ樹脂組成物を調製した。まず、表1に記載の組成に従い、jER828(液状)と、(B)成分(固形)および(C)成分(固形)を、固形成分と液状成分の質量比が1:1となるよう容器に計量し、攪拌し、混合した。これを三本ロールミルにてさらに細かく混合し、硬化剤マスターバッチを得た。続けて、表1に記載の組成の内、(A)成分と(F)成分と(G)成分および硬化剤マスターバッチ以外の成分をフラスコに計量し、オイルバスを用いて120℃に加熱し溶解混合した。その後65℃程度まで冷却しつつ、(A)成分と(F)成分と(G)成分を加えて撹拌混合し、65℃程度まで冷却したところで、前記 硬化剤マスターバッチを加えて攪拌混合することによりエポキシ樹脂組成物を得た 得られたエポキシ樹脂組成物を用い、後述するエポキシ樹脂板作製方法に従って、樹脂板を作製した。また後述の評価方法に従って、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2および3、比較例1~4]
表1に示す配合組成に変更した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、樹脂板、プリプレグおよび成形品板を作製し、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
[エポキシ樹脂板作製方法]
未硬化のエポキシ樹脂組成物をオーブン雰囲気温度70℃×10分で硬化後、140℃×40分(昇温速度は10℃/分)で硬化させて、厚さ2mmの樹脂板を作製した。
[プリプレグの作成]
エポキシ樹脂組成物を、コンマコーター(株式会社ヒラノテクシード製、「M-500」)でフィルム状にし、樹脂目付け33.7g/mのレジンフィルムを作製した。このレジンフィルムを、炭素繊維を引き揃えて得られた炭素繊維シートの両面に張り合わせ、加熱ロールで含浸させて、繊維目付125g/m、樹脂含有量35質量%のプリプレグを得た。
[繊維強化複合樹脂成形体の作製]
上記で得られた樹脂含有量25質量%の未硬化のプリプレグを300mm×300mmにカットし、繊維方向を揃えて4枚積み重ねて積層体を得た。この積層体をオートクレーブで圧力0.04MPa下で2℃/分で昇温し、圧力0.6MPa下で2℃/分で昇温し、130℃で60分間保持して加熱硬化させて、厚さ0.5mmの繊維強化複合樹脂成形体を得た。得られた繊維強化複合樹脂成形体について、下記の測定および評価を行った。
[硬化樹脂板の曲げ特性の測定方法]
以下の条件で、硬化樹脂板の試験片の三点曲げ強度、曲げ弾性率、及び破断歪を測定した
・測定機器:INSTRON社製、製品名:INSTRON 5565
・治具:圧子R=3.2mm、サポートR=1.6mm
・サポート間距離(L)と試験片の厚み(d)の比L/d=16の条件
・クロスヘッドスピード2mm/分
・測定環境下:温度23℃、湿度50%RH
・試験片:厚み2mm×長さ60mm×幅8mmの硬化樹脂板
[評価方法]
樹脂板のUL-94V燃焼試験
エポキシ樹脂板作製方法で得られた厚さ2mmの樹脂板、または繊維強化複合樹脂成形体の作製で得られた厚さ0.5mmの繊維強化複合樹脂成形体を、長さ127mm×幅12.7mmに加工して試験片とした。該試験片について、燃焼試験機(スガ試験機株式会社製)を用いて、UL-94V規格に従って燃焼試験を実施した。具体的には、試験片をクランプに垂直に取付け、20mm炎による接炎を10秒間行い、燃焼時間を測定した。5個の試験片について燃焼試験を行い、クランプまで燃焼したサンプルの数、各燃焼時間のうちの最大値(max)、および5個の燃焼時間の合計(総燃焼時間:total)を記録した。また、その結果に基づいて判定[V-0、V-1、V-2、fail]を行った。難燃性はV-0が最も優れており、V-1、V-2、failの順に劣っていく。
Figure 2022096749000004

Claims (14)

  1. 下記(A)成分、(B)成分および(C)成分を含むエポキシ樹脂組成物と炭素繊維とからなるプリプレグ。
    (A)成分:ハロゲン含有エポキシ樹脂
    (B)成分:ジシアンジアミドまたはジシアンジアミド誘導体
    (C)成分:イミダゾール化合物またはイミダゾール化合物誘導体
  2. 前記ハロゲン含有エポキシ樹脂の数平均分子量が200~800である、請求項1に記載のプリプレグ。
  3. 前記プリプレグを下記成形法で成形した成形品のUL-94Vが厚さ0.5mmにおいてV-0以上である、請求項1または請求項2に記載のプリプレグ。
    <成形法>
    プリプレグを300mm×300mmにカットし、繊維方向を揃えて4枚積み重ねて得た積層体をオートクレーブで圧力0.04MPa下で2℃/分で昇温し、圧力0.6MPa下で2℃/分で昇温し、130℃で60分間保持して加熱硬化させる。
  4. 下記(D)成分をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のプリプレグ。
    (D)成分:オキサゾリドン構造を有するエポキシ樹脂
  5. 下記(E)成分をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のプリプレグ。
    (E)成分:ノボラック型エポキシ樹脂
  6. 下記(F)成分をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のプリプレグ。
    (F)成分:金属酸化物
  7. 前記(F)成分が三酸化アンチモンである、請求項6に記載のプリプレグ。
  8. 下記(G)成分をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のプリプレグ。
    (G)成分:金属水酸化物
  9. 前記(G)成分が水酸化アルミニウムである、請求項8に記載のプリプレグ。
  10. 前記エポキシ樹脂組成物100質量部に対し、前記(A)成分を5~40質量部以下含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のプリプレグ。
  11. 前記エポキシ樹脂組成物100質量部に対し、前記(B)成分を1~30質量部含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のプリプレグ。
  12. 前記エポキシ樹脂組成物100質量部に対し、前記(C)成分を1~15質量部含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のプリプレグ。
  13. 前記成分(A)のエポキシ当量が200~600である、請求項1~12のいずれか1項に記載のプリプレグ。
  14. 請求項1~12のいずれか1項に記載のプリプレグを成形してなる、成形品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2024029233A1 (ja) * 2022-08-02 2024-02-08 東レ株式会社 プリプレグ、繊維強化複合材料、繊維強化複合材料製管状体、ゴルフクラブシャフトおよび釣り竿

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