JP2022096717A - 駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】パルス幅変調制御と矩形波制御との切り替えの際に生じ得る電圧変動を抑制する。【解決手段】変調度に応じてパルス幅変調制御モードと矩形波制御モードとにより電動機を駆動するインバータのスイッチング素子をスイッチング制御する。パルス幅変調制御モードと矩形波制御モードとを切り替えるときには、パルス幅変調制御モードにおける切り替え時のデッドタイム分電圧に基づく電圧補正値を用いて切り替え時に電圧変動が抑制されるように電圧指令値を補正する。これにより、パルス幅変調制御と矩形波制御との切り替えの際に生じ得る電圧変動を抑制することができる。【選択図】図5
Description
本発明は、駆動装置に関する。
従来、この種の駆動装置としては、変調率によりパルス幅変調制御と矩形波制御とを切り替えて電動機を駆動するインバータのスイッチング素子をスイッチング制御する場合において、矩形波制御によりスイッチング制御する際には、電動機の回転数が第1共振領域より小さい第1所定回転数以上のときには第1共振領域における共振を抑制するスイッチングパターンの第1スイッチングモードを用いてスイッチング制御を行ない、電動機の回転数が第1所定回転数未満のときには第1所定回転数より小さい第2共振領域における共振を抑制するスイッチングパターンの第2スイッチングモードを用いてスイッチング制御を行なうものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、第1スイッチングパターンは、1周期の前半周期または後半周期が矩形波パルスとなるパルスパターンを矩形波パルスパターンとしたときに、矩形波パルスが存在している領域に1つ以上のスリットを形成すると共に矩形波パルスが存在していない領域において上述のスリットと同一のタイミングにスリットと同一幅の短パルスを形成したパターンであって第1共振領域におけるLC共振を抑制するパターンである。第2スイッチングパターンは、第1スイッチングパターンよりスリット数および短パルス数が多いパターンであって第2共振領域におけるLC共振を抑制するパターンである。
また、こうした第1スイッチングパターンや第2スイッチングパターンを用いる駆動装置において、パルス幅変調制御と矩形波制御とを切り替える際には、相電流がゼロクロスするタイミングでパルスが存在しているときにはスリットを形成し、パルスが存在していないときにはスリットと同一幅の短パルスを形成したスイッチングパターンによる中間制御モードによりスイッチング制御するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この装置では、変調度に応じてゼロクロスするタイミングのスリットと短パルスの幅を変化させることにより電圧変動を抑制している。
ている(例えば、特許文献2参照)。
ている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、上述の駆動装置では、パルス幅変調制御の1周期におけるパルス数が矩形波制御に比して大きいため、そのスイッチング数も多くなり、パルス幅変調制御におけるデッドタイムによる影響も矩形波制御に比して大きくなる。このため、パルス幅変調制御と矩形波制御とを切り替える際に電圧変動が生じてしまう。
本発明の駆動装置は、パルス幅変調制御と矩形波制御との切り替えの際に生じ得る電圧変動を抑制することを主目的とする。
本発明の駆動装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の駆動装置は、
電動機と、前記電動機を駆動するインバータと、前記電動機と前記インバータを介して電力のやりとりを行なう蓄電装置と、変調度に応じてパルス幅変調制御モードと矩形波制御モードとにより前記インバータのスイッチング素子をスイッチング制御する制御装置と、を備える駆動装置であって、
前記制御装置は、前記パルス幅変調制御モードと前記矩形波制御モードとを切り替えるときには、前記パルス幅変調制御モードにおける切り替え時のデッドタイム分電圧に基づく電圧補正値を用いて切り替え時に電圧変動が抑制されるように電圧指令値を補正する、
ことを特徴とする。
電動機と、前記電動機を駆動するインバータと、前記電動機と前記インバータを介して電力のやりとりを行なう蓄電装置と、変調度に応じてパルス幅変調制御モードと矩形波制御モードとにより前記インバータのスイッチング素子をスイッチング制御する制御装置と、を備える駆動装置であって、
前記制御装置は、前記パルス幅変調制御モードと前記矩形波制御モードとを切り替えるときには、前記パルス幅変調制御モードにおける切り替え時のデッドタイム分電圧に基づく電圧補正値を用いて切り替え時に電圧変動が抑制されるように電圧指令値を補正する、
ことを特徴とする。
本発明の駆動装置では、パルス幅変調制御モードと矩形波制御モードとを切り替えるときには、パルス幅変調制御モードにおける切り替え時のデッドタイム分電圧に基づく電圧補正値を用いて切り替え時に電圧変動が抑制されるように電圧指令値を補正する。これにより、パルス幅変調制御モードと矩形波制御モードとの切り替えの際に生じ得る電圧変動を抑制することができる。
本発明の駆動装置において、前記制御装置は、3相のデッドタイム分電圧から得られるデッドタイム分電圧のd軸成分およびq軸成分と前記電圧指令値とに基づいて電圧振幅補正値および電圧位相補正値を前記電圧補正値としてを求めるものとしてもよい。この場合、前記制御装置は、前記電圧指令値のd軸成分およびq軸成分にデッドタイム分電圧のd軸成分およびq軸成分を加算して得られるものを実電圧としたときに、前記電圧指令値の大きさと実電圧の大きさとの差として前記電圧振幅補正値を演算し、前記電圧指令値の位相と実電圧の位相との差として前記電圧位相補正値を演算するものとしてもよい。
また、本発明の駆動装置において、前記矩形波制御モードは、前記電動機の回転数が共振領域より大きい所定回転数以上のときには、1周期の前半周期または後半周期が矩形波パルスとなる矩形波パルスパターンを用い、前記電動機の回転数が前記所定回転数未満のときには、前記矩形波パルスパターンにおける矩形波パルスが存在している領域に1つ以上のスリットを形成すると共に矩形波パルスが存在していない領域において前記スリットと同一のタイミングに前記スリットと同一幅の短パルスを形成したパターンであって前記共振領域におけるLC共振を抑制する共振抑制パルスパターンを用いるモードであるものとしてもよい。こうすれば、LC共振を抑制することができる。
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例としての駆動装置を搭載する電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図示するように、モータ32と、インバータ34と、電源としてのバッテリ36と、昇圧コンバータ40と、電子制御ユニット50と、を備える。
モータ32は、同期発電電動機として構成されており、永久磁石が埋め込まれた回転子と、三相コイルが巻回された固定子と、を備える。このモータ32の回転子は、駆動輪22a,22bにデファレンシャルギヤ24を介して連結された駆動軸26に接続されている。
インバータ34は、モータ32の駆動に用いられる。このインバータ34は、高電圧側電力ライン42を介して昇圧コンバータ40に接続されており、6つのスイッチング素子としてのトランジスタT11~T16と、6つのトランジスタT11~T16のそれぞれに並列に接続された6つのダイオードD11~D16と、を有する。トランジスタT11~T16は、それぞれ、高電圧側電力ライン42の正極側ラインと負極側ラインとに対してソース側とシンク側になるように2個ずつペアで配置されている。また、トランジスタT11~T16の対となるトランジスタ同士の接続点の各々には、モータ32の三相コイル(U相,V相,W相のコイル)の各々が接続されている。したがって、インバータ34に電圧が作用しているときに、電子制御ユニット50によって、対となるトランジスタT11~T16のオン時間の割合が調節されることにより、三相コイルに回転磁界が形成され、モータ32が回転駆動される。高電圧側電力ライン42の正極側ラインと負極側ラインとには、平滑用のコンデンサ46が取り付けられている。
バッテリ36は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、低電圧側電力ライン44を介して昇圧コンバータ40に接続されている。低電圧側電力ライン44の正極側ラインと負極側ラインとには、平滑用のコンデンサ48が取り付けられている。
昇圧コンバータ40は、高電圧側電力ライン42と低電圧側電力ライン44とに接続されており、2つのトランジスタT31,T32と、2つのトランジスタT31,T32のそれぞれに並列に接続された2つのダイオードD31,D32と、リアクトルLと、を有する。トランジスタT31は、高電圧側電力ライン42の正極側ラインに接続されている。トランジスタT32は、トランジスタT31と、高電圧側電力ライン42および低電圧側電力ライン44の負極側ラインと、に接続されている。リアクトルLは、トランジスタT31,T32同士の接続点と、低電圧側電力ライン44の正極側ラインと、に接続されている。昇圧コンバータ40は、電子制御ユニット50によって、トランジスタT31,T32のオン時間の割合が調節されることにより、低電圧側電力ライン44の電力を昇圧して高電圧側電力ライン42に供給したり、高電圧側電力ライン42の電力を降圧して低電圧側電力ライン44に供給したりする。
電子制御ユニット50は、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU52に加えて、処理プログラムを記憶するROM54や、データを一時的に記憶するRAM56、入出力ポートを備える。電子制御ユニット50には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット50に入力される信号としては、例えば、モータ32の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ(例えばレゾルバ)32aからの回転位置θmや、モータ32の各相の相電流を検出する電流センサ32u,32vからの相電流Iu,Ivを挙げることができる。また、バッテリ36の端子間に取り付けられた電圧センサ36aからの電圧(バッテリ電圧)Vbや、バッテリ36の出力端子に取り付けられた電流センサ36bからの電流(バッテリ電流)Ibも挙げることができる。さらに、リアクトルLに直列に取り付けられた電流センサ40aからの電流ILや、コンデンサ46の端子間に取り付けられた電圧センサ46aからのコンデンサ46(高電圧側電力ライン42)の電圧(高電圧系電圧)VH、コンデンサ48の端子間に取り付けられた電圧センサ48aからのコンデンサ48(低電圧側電力ライン44)の電圧(低電圧系電圧)VLも挙げることができる。加えて、イグニッションスイッチ60からのイグニッション信号や、シフトレバー61の操作位置を検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSPも挙げることができる。また、アクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル65の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ68からの車速Vも挙げることができる。電子制御ユニット50は、回転位置検出センサ32aからの回転位置θmに基づいてモータ32の回転数Nmを演算したり、電流センサ36bからのバッテリ36の電流Ibの積算値に基づいてバッテリ36の蓄電割合SOCを演算したりしている。ここで、蓄電割合SOCは、バッテリ36の全容量に対するバッテリ36の蓄電量(放電可能な電力量)の割合である。
電子制御ユニット50からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。電子制御ユニット50から出力される信号としては、例えば、インバータ34のトランジスタT11~T16へのスイッチング制御信号や、昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32へのスイッチング制御信号を挙げることができる。
こうして構成された実施例の電気自動車20では、電子制御ユニット50は、以下の走行制御を行なう。走行制御では、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸26に要求される要求トルクTd*を設定し、設定した要求トルクTd*をモータ32のトルク指令Tm*に設定し、モータ32がトルク指令Tm*で駆動されるようにインバータ34のトランジスタT11~T16のスイッチング制御を行なう。また、走行制御では、モータ32をトルク指令Tm*で駆動できるように高電圧側電力ライン42の目標電圧VH*を設定し、高電圧側電力ライン42の電圧VHが目標電圧VH*となるように昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32のスイッチング制御を行なう。
次に、実施例の電気自動車20が搭載する駆動装置における制御、特にインバータ34のスイッチング素子のスイッチング制御について説明する。図2は、電子制御ユニット50により実行されるモード・パルスパターン設定処理の一例を示すフローチャートである。この処理は所定時間毎に繰り返し実行される。
モード・パルスパターン設定処理が実行されると、電子制御ユニット50は、まず、モータ32の回転数Nm,変調度Mなどを入力する処理を実行する(ステップS100)。モータ32の回転数Nmは、回転位置検出センサ32aからの回転位置θmに基づいて演算したものを入力することができる。変調度Mは、電圧ベクトルにおけるd軸成分Vdとq軸成分Vqの2乗和の平方根を高電圧側電力ライン42の電圧VHで除することにより得ることができる。
次に、変調度Mが閾値Mref以上であるか否かを判定する(ステップS110)。閾値Mrefは、パルス幅変調制御モード(以下、PWM制御モードと称する。)と矩形波制御モードとを切り替える変調度であり、例えば0.73などを用いることができる。変調度Mが閾値Mref未満であると判定したときには、PWM制御モードを設定し(ステップS120)、本処理を終了する。PWM制御モードは、擬似的な三相交流電圧がモータ32に印加(供給)されるようにインバータ34を制御する制御モードである。
ステップS110で変調度Mが閾値Mref以上であると判定したときには、矩形波制御モードを設定する(ステップS130)。矩形波制御モードでは、モータ32の回転数Nmを閾値Nref1および閾値Nref2と比較する(ステップS140)。閾値Nref2は、モータ32の電気6次変動周波数によってLC共振が生じる領域をモータ32の回転数に変換した第1共振領域の上限値より大きな回転数であり、閾値Nref1は、モータ32の電気12次変動周波数によってLC共振が生じる領域をモータ32の回転数に変換した第2共振領域の上限値より大きく第1共振領域の下限値より小さな回転数である。モータ32の回転数Nmが閾値Nref1未満のときには第2スイッチングパターンを設定し(ステップS150)、モータ32の回転数Nmが閾値Nref1以上で閾値Nref2未満のときには第1スイッチングパターンを設定し(ステップS160)、モータ32の回転数Nmが閾値Nref2以上のときには矩形波パルスパターンを設定し(ステップS170)、本処理を終了する。
図3は、矩形波パルスパターンと第1スイッチングパターンと第2スイッチングパターンの一例を示す説明図である。矩形波パルスパターンは、図示するように、時間T1~T2の1周期の前半周期全体が1つのパルス(矩形波パルス)となると共に後半周期にはパルスが形成されないパルスパターン(通常の矩形波制御におけるパルスパターン)である。第1スイッチングパターンは、時間T1~T2の1周期の前半周期の矩形波パルスパターンの矩形波パルスが存在する領域に1つのスリットが形成されると共に後半周期のスリットと同じタイミングに1つの短パルスが形成されたパルスパターンであり、電気6次変動周波数成分を高周波化するスイッチングパターンである。電気6次変動周波数成分を高周波化するスイッチングパターンとして、図示するように、1周期に3つのパルスを有するパルスパターンだけでなく、1周期に4つ以上のパルスを有するパルスパターンも有効であるが、実施例では、1周期のうち最もパルス数が少ないものを第1スイッチングパターンとして用いた。第2スイッチングパターンは、第1スイッチングパターンに加えて更に1つのスリット(合計2つのスリット)と1つの短パルス(合計2つの短パルス)が形成されたパルスパターンであり、電気6次変動周波数成分に加えて電気12次変動周波数成分を高周波化するスイッチングパターンである。電気6次変動周波数成分に加えて電気12次変動周波数成分を高周波化するスイッチングパターンは、図示するように、1周期に4つのパルスを有するパルスパターンだけでなく、1周期に5つ以上のパルスを有するパルスパターンも有効であるが、実施例では、1周期のうち最もパルス数が少ないものを第2スイッチングパターンとして用いた。
図4は、モータ32の回転数NmとトルクTmと制御モードとの関係の一例を示す説明図である。M=Mrefより左下側の領域ではPWM制御モードが設定され、M=Mrefより右上側の領域では矩形波制御モードが設定される。矩形波制御モードでは、閾値Nref1、閾値Nref2により区分される領域により、左から順に第2スイッチングパターン、第1スイッチングパターン、矩形波パルスパターンがスイッチングパターンとして設定される。
以上の説明から、上述の矩形波制御モードでは、ステップS140において、モータ32の回転数Nmが閾値Nref1未満であると判定したときには、モータ32の電気12次変動周波数によるLC共振を抑制するために第2スイッチングパターンを設定し、モータ32の回転数Nmが閾値Nref1以上で閾値Nref2未満であるときには、電気6次変動周波数によるLC共振を抑制するために第1スイッチングパターンを設定し、モータ32の回転数Nmが閾値Nref2以上であるときには、LC共振は生じないことから矩形波パルスパターンを設定するものとなる。これにより、電気6次変動周波数や電気12次変動周波数によるLC共振によって生じ得る振動を抑制することができる。
次に、PWM制御モードと矩形波制御モードとの切り替えの際の動作について説明する。PWM制御モードと矩形波制御モードとの切り替え時にはモード切替時電圧補正処理が実行される。電子制御ユニット50により実行されるモード切替時電圧補正処理の一例を示すフローチャートを図5に示す。
モード切替時電圧補正処理が実行されると、電子制御ユニット50は、まず、電圧位相補正値Δθおよび電圧振幅補正値Δaを演算する(ステップS200)。実施例では、変調度Mと電流電圧位相差θと電圧位相補正値Δθおよび電圧振幅補正値Δaとの関係を予め定めて電圧位相補正値設定用マップおよび電圧振幅補正値設定用マップとして記憶しておき、変調度Mと電流電圧位相差θとが与えられるとマップから対応する電圧位相補正値Δθおよび電圧振幅補正値Δaを導出することにより演算する物とした。電圧位相補正値設定用マップの一例を図6に示し、電圧振幅補正値設定用マップの一例を図7に示す。
電圧位相補正値Δθおよび電圧振幅補正値Δaは以下のように得ることができる。デューティとスイッチングと相電流とデッドタイム分電圧の関係およびデットタイム分電圧のd軸成分とq軸成分の関係の一例を図8に示す。図中1段目がU相におけるデューティと三角波(キャリア)の関係を示し、2段目がU相におけるスイッチング状態を示し、3段目がU相における相電流を示し、4段目がU相におけるデッドタイム分電圧(DT分電圧)を示している。デューティが三角波(キャリア)を超えている区間では、スイッチング状態に変化はないから、デッドタイム分電圧は値0である。デューティが三角波(キャリア)を下回る区間において相電流が正の範囲では、デッドタイム分電圧は、マイナス1(-1)×高電圧系電圧VH[V]×キャリア周波数[Hz]×デッドタイム[sec]により計算される。デューティが三角波(キャリア)を下回る区間において相電流が負の範囲では、デッドタイム分電圧は、プラス1(+1)×高電圧系電圧VH[V]×キャリア周波数[Hz]×デッドタイム[sec]により計算される。こうして3相(U相、V相、W相)のデッドタイム分電圧を計算し、3相2相変換(次式(1)および式(2)参照)を行なって得られたものが図8の5段目および6段目である。そして、電気1周期を平均した値をデッドタイム分電圧DTV(d軸成分,q軸成分)とする。
Vd=[(2/3){Vucosθ+Vvcos(θ-2π/3)
+Vwcos(θ+2π/3)}](1/2) (1)
Vq=-[(2/3){Vusinθ+Vvsin(θ-2π/3)
+Vwsin(θ+2π/3)}](1/2) (2)
+Vwcos(θ+2π/3)}](1/2) (1)
Vq=-[(2/3){Vusinθ+Vvsin(θ-2π/3)
+Vwsin(θ+2π/3)}](1/2) (2)
PMW制御モードにおける電圧指令V*とデッドタイム分電圧DTVと実際の電圧(実電圧)Vとの関係を図9に示す。PWM制御モードでは電圧指令V*に対してデッドタイム分電圧DTVが生じることから、電圧指令V*とデッドタイム分電圧DTVとの和として実電圧Vが作用する。矩形波制御モードでは、スイッチング状態の変化が少ないからデッドタイム分電圧DTVは値0とみなすことができる。このため、PWM制御モードから矩形波制御モードに切り替えるときには、デッドタイム分電圧DTVだけ電圧変動が生じる。いま、PWM制御モードから矩形波制御モードに切り替えるときには、図9における実電圧Vの位相はそのままで振幅(大きさ)を電圧指令V*と同じものとし、この振幅調整した実電圧Vからデッドタイム分電圧DTVを減じることにより新たな電圧指令V*を調整する。こうして調整した電圧指令V*によりPWM制御を行なった直後に矩形波制御モードに切り替えれば、実電圧Vの大きさは変化しないから、モード切り替え際の電圧変動を解消することができる。実電圧Vの振幅調整したものとデッドタイム分電圧DTVと新たな電圧指令V*との関係を図10に示す。実施例では、図9における電圧指令V*に対する図10における電圧指令V*の位相の差をPWM制御モードから矩形波制御モードに切り替える際の電圧位相補正値Δθとし、図9における電圧指令V*に対する図10における電圧指令V*の大きさの差をPWM制御モードから矩形波制御モードに切り替える際の電圧振幅補正値Δaとしている。
矩形波制御モードからPWM制御モードに切り替えるときを考える。図10における実電圧Vが矩形波制御モードにおける実電圧となるから、PWM制御モードにおけるデッドタイムDTVを実電圧Vから減じて得られる電圧指令V*(図10)を矩形波制御モードからPWM制御モードに切り替えた直後の電圧指令V*とすれば、モードの切替の前後で実電圧Vの大きさは変化しないから、モード切り替えの際の電圧変動を解消することができる。実施例では、図10における電圧指令V*に対する図9における電圧指令V*の位相の差を矩形波制御モードからPWM制御モードに切り替える際の電圧位相補正値Δθとし、図10における電圧指令V*に対する図9における電圧指令V*の大きさの差を矩形波制御モードからPWM波制御モードに切り替える際の電圧振幅補正値Δaとしている。したがって、図6の電圧位相補正値設定用マップおよび図7の電圧振幅補正値設定用マップは図9の電圧指令V*と図10の電圧指令V*の位相の差および大きさの差を電流電圧位相差θに応じて作成したものとなる。
図5のモード切替時電圧補正処理に戻る。ステップS200で電圧位相補正値Δθおよび電圧振幅補正値Δaを演算すると、PWM制御モードから矩形波制御モードへの切り替えか或いは矩形波制御モードからPWM制御モードへの切り替えかを判定する(ステップS210)。PWM制御モードから矩形波制御モードへの切り替えであると判定したときには、電圧指令V*の大きさに電圧振幅補正値Δaを加えたものを補正後の実電圧Vの大きさとなるように補正すると共に(ステップS220)、電圧指令V*の電流に対する位相θ(V*)に電圧位相補正値Δθを減じたものを新たな電圧指令V*の位相θとするように補正し(ステップS230)、即ち図9の電圧指令V*から図10の電圧指令V*となるように補正し、その後に制御モードをPWM制御モードから矩形波制御モードに切り替えて(ステップS260)、本処理を終了する。この場合の制御モードの切り替えは、補正処理を行なった電圧指令V*を用いたPWM制御モードを行なった直後に矩形波制御モードに切り替えるものとなる。これにより、PWM制御モードから矩形波制御モードに切り替える際に生じ得る電圧変動を抑制することができる。一方、矩形波制御モードからPWM制御モードへの切り替えであると判定したときには、電圧指令V*の大きさに電圧振幅補正値Δaを減じたものを補正後の実電圧Vの大きさとなるように補正すると共に(ステップS240)、電圧指令V*の電流に対する位相θ(V*)に電圧位相補正値Δθを加えたものを新たな電圧指令V*の位相θとするように補正し(ステップS250)、その後に制御モードを矩形波制御モードからPWM制御モードに切り替えて(ステップS260)、本処理を終了する。即ち、図10の実電圧Vから図10の電圧指令V*となるように補正して、本処理を終了する。この場合の制御モードの切り替えは、矩形波制御モードから補正処理を行なった電圧指令V*を用いたPWM制御モードへの切り替えとなる。これにより、矩形波制御モードからPWM制御モードに切り替える際に生じ得る電圧変動を抑制することができる。
以上説明した実施例の電気自動車20に搭載した駆動装置では、PWM制御モードと矩形波制御モードとを切り替える際には、PWM制御モードにおける切り替え時のデッドタイム分電圧DTVに基づいてモードの切り替えの前後で実電圧Vが変化しないように電圧位相補正値Δθと電圧振幅補正値Δaを用いて電圧指令V*を調整し、この電圧指令V*を切り替え直前のPWM制御モードまたは切り替え直後のPWM制御モードで用いることにより、制御モードの切り替えの際の電圧変動を抑制することができる。
実施例の電気自動車20が搭載する駆動装置では、高電圧側電力ライン42と低電圧側電力ライン44とに接続されて低電圧側電力ライン44の電力を昇圧して高電圧側電力ライン42に供給したり、高電圧側電力ライン42の電力を降圧して低電圧側電力ライン44に供給したりする昇圧コンバータ40を備えるものとしたが、こうした昇圧コンバータ40を備えないものとしても構わない。
実施例の電気自動車20が搭載する駆動装置では、矩形波制御モードでは第1スイッチングパターンと第2スイッチングパターンとを用いるものとしたが、第1スイッチングパターンだけを用いるものや第2スイッチングパターンだけを用いるものとしてもよい。
実施例では、電気自動車20が搭載する駆動装置として説明したが、駆動装置は、ハイブリッド自動車に搭載されるものとしたり、自動車以外の移動体に搭載されるものとしてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータ32が「電動機」に相当し、インバータ34が「インバータ」に相当し、バッテリ36が「蓄電装置」に相当し、電子制御ユニット50が「制御装置」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、駆動装置の製造産業などに利用可能である。
20 電気自動車、22a,22b 駆動輪、24 デファレンシャルギヤ、26 駆動軸、32 モータ、32a 回転位置検出センサ、32u,32v 電流センサ、34 インバータ、36 バッテリ、36a 電圧センサ、36b 電流センサ、40 昇圧コンバータ、40a 電流センサ、42 高電圧側電力ライン、44 低電圧側電力ライン、46,48 コンデンサ、46a,48a 電圧センサ、50 電子制御ユニット、52 CPU、54 ROM、56 RAM、60 イグニッションスイッチ、61 シフトレバー、62 シフトポジションセンサ、63 アクセルペダル、64 アクセルペダルポジションセンサ、65 ブレーキペダル、66 ブレーキペダルポジションセンサ、68 車速センサ、D11~D16,D31,D32 ダイオード、L リアクトル、T11~T16,T31,T32 トランジスタ。
Claims (1)
- 電動機と、前記電動機を駆動するインバータと、前記電動機と前記インバータを介して電力のやりとりを行なう蓄電装置と、変調度に応じてパルス幅変調制御モードと矩形波制御モードとにより前記インバータのスイッチング素子をスイッチング制御する制御装置と、を備える駆動装置であって、
前記制御装置は、前記パルス幅変調制御モードと前記矩形波制御モードとを切り替えるときには、前記パルス幅変調制御モードにおける切り替え時のデッドタイム分電圧に基づく電圧補正値を用いて切り替え時に電圧変動が抑制されるように電圧指令値を補正する、
ことを特徴とする駆動装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020209833A JP2022096717A (ja) | 2020-12-18 | 2020-12-18 | 駆動装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020209833A JP2022096717A (ja) | 2020-12-18 | 2020-12-18 | 駆動装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2022096717A true JP2022096717A (ja) | 2022-06-30 |
Family
ID=82165359
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2020209833A Pending JP2022096717A (ja) | 2020-12-18 | 2020-12-18 | 駆動装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2022096717A (ja) |
-
2020
- 2020-12-18 JP JP2020209833A patent/JP2022096717A/ja active Pending
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