JP2022096470A - エンジン制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】改質触媒の性能が不足する時にエンジンでの燃焼熱量が所望の燃焼熱量からずれてしまうのを抑制する。【解決手段】改質用インジェクタ41は、エンジン20よりも下流且つ改質器42よりも上流に燃料を噴射する。改質器42は、EGR通路40に設けられており、改質触媒43が格納されている。その改質器42により燃料改質が行われる。増熱値演算部77は、燃料改質により消費又は生成される所定ガスの濃度である成分濃度に基づいて、燃料改質により増加する燃焼熱量である増熱量に相関する値である増熱値を演算する。その増熱値に基づいて、噴射量演算部78が、供給用インジェクタ25の燃料噴射量を演算する。【選択図】 図1
Description
本発明は、排気再循環(EGR)を行うと共に燃料を改質するエンジンシステムを制御するエンジン制御装置に関する。
EGRを行うエンジンシステムの中には、エンジンと吸気通路と供給用インジェクタと排気通路とEGR通路とを有し、EGR通路に、改質用インジェクタと改質器とが設けられているものがある。吸気通路は、エンジン内に気体を吸入させる。供給用インジェクタは、吸気通路内又はエンジン内に燃料を噴射する。排気通路は、エンジン内の気体を排出させる。EGR通路は、排気通路内の気体の一部を吸気通路内に還流させる。改質用インジェクタは、改質器よりも上流に燃料を噴射する。その燃料は、改質器に格納されている改質触媒により、水素等の改質ガスに改質される。このような技術を示す文献としては、次の特許文献1がある。
以下では、供給用インジェクタの燃料噴射量を「供給用噴射量」といい、改質用インジェクタの燃料噴射量を「改質用噴射量」という。また、燃焼時に発生する熱量を「燃焼熱量」という。
上記のエンジンシステムによれば、排気通路内の気体の一部を吸気通路内に還流させることにより、NOx低減や燃費向上を図ることができる。しかも、水素等の改質ガスにより、エンジンでの燃焼性を向上させて、燃焼を安定化させることができる。そのため、燃焼が不安定にならない上限のEGR率としてのEGR限界を上昇させることができる。その結果、EGR率を高く設定できるようになり、燃費向上やNOx低減をより効率的に実現できるようになる。
しかしながら、改質用インジェクタから燃料を噴射すると、その分だけ、すなわち改質用噴射量だけエンジンに供給される燃料の量が増えてしまう。それにより、エンジンでの燃焼熱量が所望の燃焼熱量からずれてしまう。その対応としては、エンジンでの所望の燃焼熱量に相当する合計噴射量から改質用噴射量を減じたものを、供給用噴射量とする対応が考えられる。
しかしながら、この対応によっても、依然として次の問題は起こり得る。改質反応は吸熱反応であるため、その吸熱により増加する燃焼熱量である増熱量の分だけ、改質ガスの燃焼熱量が元の燃料の燃焼熱量に比べて増える。その増熱量の分だけエンジンでの燃焼熱量が所望の燃焼熱量からずれてしまう。その対応としては、さらに、改質用噴射量の燃料の燃焼熱量と、その燃料が全て改質された場合に発生する改質ガスの燃焼熱量との差を増熱量として計算して、その増熱量に相当する燃料量だけ、さらに供給用噴射量から減じる対応が考えられる。
しかしながら、この対応によっても、さらに次の問題は起こり得る。改質触媒の劣化時や高SV(高空間速度)時等には、改質触媒の性能が不足することにより、改質率が100%よりも明らかに低くなってしまう。その場合において、上記の計算に基づいて増熱量を計算すれば、計算される増熱量が実際の増熱量よりも大きくなってしまう。その増熱量に相当する燃料量だけ供給用噴射量から減じれば、供給用噴射量が適切な量よりも少なくなってしまう。それにより、エンジンでの燃焼熱量が所望の燃焼熱量からずれてしまう。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、改質触媒の性能が不足する時にエンジンでの燃焼熱量が所望の燃焼熱量からずれてしまうのを抑制すること主たる目的とする。
本発明のエンジン制御装置は、エンジンシステムを制御する。前記エンジンシステムは、エンジンと吸気通路と供給用インジェクタと排気通路とEGR通路と改質器と改質用インジェクタとを有する。
前記吸気通路は、前記エンジン内に気体を吸入させる。前記供給用インジェクタは、前記吸気通路内又は前記エンジン内に燃料を噴射する。前記排気通路は、前記エンジン内の気体を排出させる。前記EGR通路は、前記排気通路内の気体の一部を前記吸気通路内に還流させる。前記改質用インジェクタは、前記エンジンよりも下流且つ前記改質器よりも上流に燃料を噴射する。前記改質器は、前記EGR通路に設けられており、改質触媒が格納されている。前記改質器により燃料改質が行われる。
前記エンジン制御装置は、増熱値演算部と噴射量演算部とを有する。前記増熱値演算部は、前記燃料改質により消費又は生成される所定ガスの濃度である成分濃度に基づいて、前記燃料改質により増加する燃焼熱量である増熱量に相関する値である増熱値を演算する。前記噴射量演算部は、前記増熱値に基づいて、前記供給用インジェクタの燃料噴射量である供給用噴射量を演算する。
本発明によれば、次の効果が得られる。成分濃度は、燃料改質により消費又は生成される所定ガスの濃度であるため、改質率に相関する。その成分濃度に基づいて、増熱値演算部が増熱値を演算する。そのため、改質率に応じた増熱値を演算できる。
その改質率に応じた増熱値に基づいて、噴射量演算部が供給用噴射量を演算する。そのため、改質触媒の性能が不足して改質率が100%よりも明らかに低くなった場合等にも、改質率に応じた供給用噴射量を演算できる。そのため、改質触媒の性能が不足する時にエンジンでの燃焼熱量が所望の燃焼熱量からずれてしまうのを抑制できる。
次に本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
[第1実施形態]
図1は本実施形態のエンジンシステム50及びエンジン制御装置60aを示す概略図である。エンジンシステム50は、吸気通路10とエンジン20と排気通路30とEGR通路40とを有する。エンジン20は、ガソリンを燃料とするガソリンエンジンであって、吸気行程→圧縮行程→膨張行程→排気行程を1燃焼サイクルとする4ストロークエンジンである。
図1は本実施形態のエンジンシステム50及びエンジン制御装置60aを示す概略図である。エンジンシステム50は、吸気通路10とエンジン20と排気通路30とEGR通路40とを有する。エンジン20は、ガソリンを燃料とするガソリンエンジンであって、吸気行程→圧縮行程→膨張行程→排気行程を1燃焼サイクルとする4ストロークエンジンである。
吸気通路10には、上流側から順に、エアクリーナ11、コンプレッサ12、インタークーラ13、スロットル弁14、O2濃度センサ15、吸気マニホールド16が設けられている。以下では、吸気通路10を流れる気体を「吸気ガス」という。
エアクリーナ11は、自身を通過する吸気ガスから埃等を取り除く。コンプレッサ12は、ターボチャージャの一部を構成するホイールであり、後述するタービン32の回転に従い回転することにより、吸気ガスを自身よりも下流側に送り込んで、自身よりも下流側を加圧する。
インタークーラ13は、コンプレッサ12による加圧により温度上昇した吸気ガスを空冷等により冷却する。スロットル弁14は、自身を通過する吸気ガスの流量を調節する。O2濃度センサ15は、吸気ガスの酸素濃度を検出する。吸気マニホールド16は、吸気ガスをエンジン20の各気筒24に向けて分岐させる。
エンジン20は、ヘッド(図示略)と複数の気筒24とを有する。それら複数の各気筒24に、吸気行程に開弁する吸気弁を介して吸気通路10が連通すると共に、排気行程に開弁する排気弁を介して排気通路30が連通している。各気筒24には、蓄圧室29から供給される燃料を気筒24内に噴射する供給用インジェクタ25が設けられている。以下では、供給用インジェクタ25から1燃焼サイクルに噴射される燃料の量を「供給用噴射量」という。
排気通路30には、上流側から順に、排気マニホールド31、タービン32、三元触媒槽33が設けられている。以下では、排気通路30を流れる気体を「排気ガス」という。排気マニホールド31は、各気筒24からの排気ガスを合流させる。タービン32は、ターボチャージャの一部を構成するホイールであり、排気ガスの流れにより回転して前述のコンプレッサ12を回転させる。
三元触媒槽33には、多孔質構造の三元触媒が格納されている。三元触媒は、例えば、モノリス型の基材と、基材の表面にコーティングされている担体と、担体に担持されている白金等の触媒とからなる。三元触媒は、炭化水素(HC)を減少させる化学反応と、一酸化炭素(CO)を減少させる化学反応と、窒素酸化物(NOx)を減少させる化学反応とを促進させる。
EGR通路40の上流側の端は、排気通路30における排気マニホールド31とタービン32との間部分に接続されており、EGR通路40の下流側の端は、吸気通路10におけるコンプレッサ12とインタークーラ13との間部分に接続されている。EGR通路40には、上流側から順に、改質用インジェクタ41、改質器42、HC濃度センサ45a、EGRクーラ47、EGR弁48が設けられている。以下では、EGR通路40を流れる気体を「EGRガス」という。また、1燃焼サイクルにエンジン20に供給されるEGRガスの量を「EGR量」といい、1燃焼サイクルにエンジン20に供給される全ガス量に対するEGR量の割合を「EGR率」という。
改質用インジェクタ41は、蓄圧室29から減圧されて供給される燃料を、EGR通路40内に噴射する。改質用インジェクタ41は、例えば、直噴用のインジェクタやポート噴射用のインジェクタを転用したものであってもよいし、それ以外のインジェクタであってもよい。それ以外のインジェクタの具体例としては、燃料気化器により気化された燃料を噴射するガスインジェクタが挙げられる。以下では、改質用インジェクタ41から1燃焼サイクルに噴射される燃料の量を「改質用噴射量」という。
改質器42には、多孔質構造の改質触媒43が格納されている。改質触媒43は、例えば、モノリス型の基材と、基材の表面にコーティングされている担体と、担体に担持されている触媒とからなる。基材の具体例としては、アルミニウム、ステンレス、炭化ケイ素、コージェライト、酸化アルミニウム等が挙げられる。担体の具体例としては、アルミニウム、セレン、ジルコニウム、シリコン等の酸化物が挙げられ、これらにランタノイド等が添加されていてもよい。触媒の具体例としては、ロジウム、白金、鉛、ルテニウム等の貴金属や、ニッケル、銅、鉄、モリブデン、コバルト等の金属が挙げられる。
改質触媒43に、燃料(CnHm)と水蒸気(H2O)とを含んだEGRガスが供給されると、下記の式1に示す改質反応が進行して、水素(H2)と一酸化炭素(CO)とが生成される。
CnHm+nH2O→nCO+(n+m/2)H2…[式1]
以下では、改質器42に供給されるEGRガスに含まれている水蒸気(水分子)と、同EGRガスに含まれている炭化水素を構成する炭素(炭素原子)とのモル比を、「S/C比」という。また、改質触媒43の温度を「触媒温度」といい、改質触媒43の劣化を「触媒劣化」という。また、触媒劣化したと認められる状態を「劣化状態」といい、劣化状態か否かの判定を「劣化判定」という。また、1燃焼サイクルに改質される燃料の量を「改質量」といい、改質用噴射量に対する改質量の割合を「改質率」という。また、改質により発生する水素と一酸化炭素とを「改質ガス」といい、改質ガスに改質されることなく改質器42を通過した燃料を「未改質燃料」という。この改質反応は吸熱反応であるため、改質ガスの燃焼熱量(化学エネルギー)は、元の燃料(ガソリン)の燃焼熱量よりも大きい。
また以下では、改質反応がないとした場合における、エンジン20での燃焼熱量を所望の熱量にするのに必要な供給用噴射量と改質用噴射量との合計を「合計基本噴射量」といい、合計基本噴射量から改質用噴射量を減じたものを「供給用基本噴射量」という。また、1燃焼サイクルに改質反応により増加する燃焼熱量を「増熱量」という。つまり、増熱量は、改質ガス及び未改質燃料を含む、改質器42を通過した燃料の燃焼熱量から、改質器42を通過する前の元の燃料(ガソリン)の燃焼熱量を減じた熱量である。
また以下では、増熱量を改質用噴射量の燃料の燃焼熱量で割ったものを「改質増熱率」といい、改質用噴射量の全てが改質した際の改質増熱率を「最大改質増熱率」という。また、増熱量を供給用基本噴射量の燃料の燃焼熱量で割ったものを「供給増熱率」という。
また以下では、改質器42を通過した気体を「通過ガス」といい、通過ガスの水素濃度を「生成H2濃度」といい、通過ガスの一酸化炭素濃度を「生成CO濃度」といい、通過ガスの炭化水素の濃度を「未改質HC濃度」という。また、生成H2濃度と生成CO濃度との比を「H2/CO比」という。
EGR通路40は改質器42の部分で排気通路30と立体交差するクロスフロー構造になっており、その立体交差した部分が、排気ガスの熱を改質器42に伝える熱交換器34を構成している。この熱交換器34により、改質触媒43が暖められる。具体的には、排気通路30及び改質器42は、それぞれ熱交換器34の部分で上下に複数層に分岐しており、排気通路30の層と改質器42の層とが上下に交互に重なり合うことにより、当該熱交換器34が構成されている。よって、改質触媒43は、改質器42の層毎に存在する。
改質器42内、又はEGR通路40内における改質器42の周辺には、触媒温度を検出するための触媒温度センサ44が設置されている。触媒温度センサ44は、触媒温度を直接検出するものであってもよいし、その周辺部の温度を検出するものであってもよい。触媒温度センサ44の具体例としては、熱電対、白金測温抵抗体、サーミスタ測温体、バイメタル式温度計等の接触式温度センサや、赤外線等を計測する非接触式温度センサが挙げられる。
EGR通路40における改質器42の直ぐ下流には、未改質HC濃度を検出するためのHC濃度センサ45aが設置されている。HC濃度センサ45aの具体例としては、接触燃焼式センサ、熱伝導式センサ、非分散型赤外線式センサ、光波干渉式センサ、差分吸収光法のセンサ、水素炎イオン化学式センサ、干渉増幅反射法のセンサ等が挙げられる。
EGRクーラ47は、水冷式等であり、自身を通過するEGRガスを冷却する。EGR弁48は、自身を通過するEGRガスの流量を調節する。
エンジンシステム50は、前述したO2濃度センサ15や触媒温度センサ44やHC濃度センサ45a以外にも、公知の各種センサを有する。具体的には、例えば、吸気通路10に対しては、吸気空燃比センサ、吸気温センサ、吸気湿度センサ、吸気圧センサ、エアフロセンサ等を有する。エンジン20に対して、例えば、筒内圧センサ、負荷センサ、クランク角センサ、カム角センサ、水温センサ、ノックセンサ等を有する。排気通路30に対して、例えば、排気空燃比センサ、排気温センサ等を有する。
エンジン制御装置60aは、以上に示したエンジンシステム50を制御する。エンジン制御装置60aは、CPU、RAM、ROM等を有する電子制御ユニット(ECU)であって、各種センサから情報が入力される。それらの情報に基づいて、スロットル弁14、蓄圧室29の燃圧、供給用インジェクタ25、改質用インジェクタ41、EGR弁48等を制御する。
以上の構成によれば、排気ガスの一部をEGR通路40により吸気通路10に還流させることにより、NOx低減や燃費向上等のEGRによる公知の効果を得ることができる。しかも、エンジンシステム50は、燃料を改質触媒43により水素等の改質ガスに改質している。その水素により、エンジン20での燃焼性を向上させて、燃焼を安定化させている。それにより、EGR限界を上昇させて、EGR率を高く設定できるようにしている。そのため、燃費向上やNOx低減等をより効率的に実現できる。
次に、本実施形態で解決すべき第1の課題について説明する。改質用インジェクタ41から燃料を噴射すると、改質用噴射量の分だけエンジン20に供給される燃料の量が増えてしまう。それにより、エンジン20での燃焼熱量が所望の燃焼熱量からずれてしまう。その対応としては、合計基本噴射量から改質用噴射量を減じたものである供給用基本噴射量を、供給用噴射量とする対応が考えられる。
しかしながら、この対応によっても、依然として次の問題は起こり得る。改質反応は吸熱反応であるため、その吸熱による増熱量の分だけ、改質ガスの燃焼熱量が元の燃料(ガソリン)の燃焼熱量に比べて増える。その増熱量の分だけエンジン20での燃焼熱量が所望の燃焼熱量からずれてしまう。その対応としては、さらに、改質用噴射量の燃料の燃焼熱量と、その燃料が全て改質された場合に発生する改質ガスの燃焼熱量との差を増熱量として計算して、その増熱量に相当する燃料量だけ供給用基本噴射量から減じたものを、供給用噴射量とする対応が考えられる。
しかしながら、この対応によっても、さらに次の問題は起こり得る。改質触媒43の劣化時や高SV(高空間速度)時等には、改質触媒43の性能が不足することにより、改質率が100%よりも明らかに低くなってしまう。その場合において、上記の計算に基づいて増熱量を計算すれば、計算される増熱量が実際の増熱量よりも大きくなってしまう。その増熱量に相当する燃料量だけ供給用基本噴射量から減じれば、供給用噴射量が適切な量よりも少なくなってしまう。それにより、エンジン20での燃焼熱量が所望の燃焼熱量からずれてしまう。
以上が第1の課題である。その第1の課題を解決するため、エンジン制御装置60aは、EGR率取得部71と、S/C比取得部74と、HC濃度取得部75aと、改質率演算部76と、増熱率演算部77と、噴射量演算部78とを有する。
図2は、エンジン制御装置60aを示すブロック図である。S/C比取得部74は、S/C比を取得する。そのS/C比は、具体的には、例えば、燃料の種類(炭素比率、水素比率等)、改質用噴射量等に基づいて演算できる。また例えば、エンジン20よりも下流かつ改質器42よりも上流に湿度センサが設けられている場合には、当該湿度センサにより検出される湿度、改質用噴射量等に基づいてS/C比を演算できる。
HC濃度取得部75aは、HC濃度センサ45aから入力される情報に基づいて、未改質HC濃度を取得する。
改質率演算部76は、S/C比取得部74からS/C比を、HC濃度取得部75aから未改質HC濃度をそれぞれ取得し、それらS/C比と未改質HC濃度とに基づいて、改質率を演算する。その演算について、以下に説明する。
図3は、未改質HC濃度と改質率との関係を、S/C比毎に示すグラフである。S/C比が同じなら、未改質HC濃度(横軸)が低いほど、改質率(縦軸)が高い。改質率演算部76は、この関係、すなわち各未改質HC濃度(横軸)及び各S/C比に対応する改質率(縦軸)、を記憶したマップを有しており、そのマップと未改質HC濃度(横軸)とS/C比とに基づいて改質率(縦軸)を演算する。なお、このマップは、例えば予め実験室において試験をしておくことや、エンジン20の始動時において、試験を行うことにより取得することができる。このことは、以降に示す他のマップにおいても同様である。
再び図2を参照しつつ説明する。EGR率取得部71は、例えば、O2濃度センサ15により検出した酸素濃度に基づいてEGR率を取得する。
増熱率演算部77は、EGR率取得部71からEGR率を、S/C比取得部74からS/C比を、改質率演算部76から改質率をそれぞれ取得し、それらEGR率とS/C比と改質率とに基づいて、供給増熱率を演算する。その演算は、具体的には、例えば次の式2に基づいて行うことができる。
供給増熱率
=最大改質増熱率×改質率×(EGR率/(100%-EGR率))/(S/C比)
…[式2]
=最大改質増熱率×改質率×(EGR率/(100%-EGR率))/(S/C比)
…[式2]
この式2の右辺には「×改質率」が含まれるので、この式2によれば、改質率に応じた供給増熱率が演算される。
噴射量演算部78は、増熱率演算部77から供給増熱率を取得し、その供給増熱率に基づいて供給用噴射量を演算する。その演算は、具体的には、例えば次の式3に基づいて行うことができる。
供給用噴射量=供給用基本噴射量×(100%-供給増熱率) …[式3]
この式3の右辺には、供給増熱率が含まれるので、この式3によれば、供給増熱率をも考慮して供給用噴射量が演算される。しかも、その供給増熱率の演算には、式2の通り、「×改質率」が含まれるので、改質率に応じた供給増熱率に基づいて供給用噴射量が演算される。よって、改質率が100%よりも明らかに低くなった場合においても、改質率に応じた供給用噴射量を演算できる。そのため、エンジン20での燃焼熱量が、改質率の低下に伴い所望の燃焼熱量からずれてしまうのを抑制できる。よって、上記の第1の課題を解決できる。
しかしながら、この式3に従って供給用噴射量を演算したとしても、厳密には、次に示す第2の課題が残る。改質ガスを構成する水素は、元の燃料であるガソリンよりも燃焼性が良いため、燃焼熱量が同じなら、水素の方がガソリンよりも、エンジン20での燃焼性を向上させる。そのことから、水素への改質による燃焼性の改善分だけ、エンジン20での燃焼性が所望の燃焼性よりも高くなってしまうおそれがある。この第2の課題を解決すべく、エンジン制御装置60aは、さらに、次に示す触媒温度取得部84とH2濃度演算部87を有する。
触媒温度取得部84は、触媒温度センサ44からの情報に基づいて、触媒温度を取得する。具体的には、例えば、触媒温度センサ44が触媒温度を直接検出するものである場合、触媒温度取得部84は、その検出温度を触媒温度として取得する。他方、触媒温度センサ44が改質触媒43の周辺部の温度を検出するものである場合、触媒温度取得部84は、その検出温度に基づいて触媒温度を推定する。
H2濃度演算部87は、HC濃度取得部75aから未改質HC濃度を、触媒温度取得部84から触媒温度をそれぞれ取得し、それら未改質HC濃度と触媒温度とに基づいて、生成H2濃度を演算する。その演算について、以下に説明する。
図4は、触媒温度(縦軸)及び未改質HC濃度(横軸)と、生成H2濃度(実線)との関係を示すグラフである。図4(a)に示す破線は、化学平衡状態を示している。このように化学平衡状態なら、触媒温度(縦軸)が高くなるほど、未改質HC濃度(横軸)が低くなると共に生成H2濃度が高くなる。改質触媒43の性能が足りている場合には、概ねこの破線上における触媒温度と未改質HC濃度と生成H2濃度との関係になる。他方、触媒劣化が進行した場合や高SV時等には、触媒性能が不足することにより、この破線を右上にシフトさせた仮想線(図示略)上における触媒温度と未改質HC濃度と生成H2濃度との関係になる。H2濃度演算部87は、この関係、すなわち各触媒温度(縦軸)及び各未改質HC濃度(横軸)に対応する生成H2濃度(実線)、を記憶したマップを有している。濃度演算部87は、このマップと未改質HC濃度(横軸)と触媒温度(縦軸)とに基づいて、生成H2濃度を演算する。
再び図2を参照しつつ説明する。噴射量演算部78は、H2濃度演算部87から生成H2濃度を取得し、その生成H2濃度に基づいて、次に示す「改善分相当噴射量」を演算する。その「改善分相当噴射量」は、1燃焼サイクル当たりのガソリンの水素への改質により、当該改質を行わない場合に比べて、エンジン20で同じ燃焼性を得るに当たり減量できる燃料(ガソリン)の噴射量である。その改善分相当噴射量は、例えばマップに基づいて演算してもよいし、数式に基づいて演算してもよい。その改善分相当噴射量を、上記の式3の右辺からさらに減算することにより、より適切な燃料供給量を演算できる。その演算をまとめると、次の式4のとおりとなる。
供給用噴射量
=供給用基本噴射量×(100%-供給増熱率)-改善分相当噴射量 …[式4]
=供給用基本噴射量×(100%-供給増熱率)-改善分相当噴射量 …[式4]
この式4に従って、噴射量演算部78は、供給用噴射量を演算する。以上によれば、ガソリンの水素への改質による燃焼性の改善分をも考慮して、供給用噴射量を演算できる。よって、水素への改質による燃焼性の改善分だけ、エンジン20での燃焼性が所望の燃焼性よりも高くなってしまうのを抑制できる。よって、上記の第2の課題も解決できる。
次に本実施形態で解決すべき第3の課題について説明する。触媒劣化が進行した場合には、そのことを認識できることが好ましい。触媒劣化の進行を認識できれば、例えば、供給用噴射量や改質用噴射量をさらに適切に補正するといった対処を講じ易くなるからである。この第3の課題を解決すべく、エンジン制御装置60aは、さらに劣化判定部98を有する。
劣化判定部98は、HC濃度取得部75aから未改質HC濃度を、触媒温度取得部84から触媒温度をそれぞれ取得し、それら未改質HC濃度と触媒温度とに基づいて劣化状態か否か判定する。その劣化判定について、以下に説明する。
図5は、触媒温度(横軸)と未改質HC濃度(縦軸)との関係を示すグラフである。破線は、改質触媒43が全く劣化していない初期状態を示している。この破線に示すように、触媒温度(横軸)が高くなるほど、未改質HC濃度(縦軸)は低くなる。この破線に示す初期状態は、例えば、化学平衡状態まで改質反応が進んだ場合を示している。劣化判定部98は、この破線に示す関係、すなわち各触媒温度に対応する初期状態での未改質HC濃度、を記憶したマップを有している。
実線は劣化状態を示している。劣化状態では、初期状態に比べて改質反応が進み難くなることにより、同じ触媒温度(横軸)なら初期状態に比べて未改質HC濃度(縦軸)が高くなる。そこで、劣化判定部98は、現在(図5では劣化状態)の未改質HC濃度と、初期状態での未改質HC濃度との濃度差ΔCが、触媒温度に応じた閾濃度差ΔCthよりも高ければ、劣化状態と判定する。そのため、第3の課題を解決できる。
図6は、以上に示した劣化判定の流れを示すフローチャートである。まず、S101において、HC濃度取得部75aが未改質HC濃度を取得する。続くS102において、触媒温度取得部84が触媒温度を取得する。なお、S101及びS102の順序は、逆であっても良いし、同時であってもよい。
続くS103において、劣化判定部98が、マップと触媒温度とに基づいて、初期状態での未改質HC濃度を算出すると共に、現在の未改質HC濃度と初期状態での未改質HC濃度との濃度差ΔCが閾濃度差ΔCthよりも大きいか否かを判定する。閾濃度差ΔCthよりも小さいと判定した場合(S103:NO)、劣化状態ではないと判定してS101に戻る。他方、S103において、濃度差ΔCが閾濃度差ΔCthよりも大きいと判定した場合(S103:YES)、S104に進み、劣化状態と判定する。
以下に本実施形態の効果をまとめる。S/C比取得部74がS/C比を取得し、HC濃度取得部75aが未改質HC濃度を取得する。それらS/C比と未改質HC濃度とに基づいて、改質率演算部76が改質率を演算する。そのため、未改質HC濃度に基づいて、改質率を演算できる。
その未改質HC濃度は、生成H2濃度や生成CO濃度に比べて、温度の影響を受け難い。なぜなら、温度が低いほど、いわゆる水性ガスシフト反応(発熱反応)により、水(H2O)と一酸化炭素(CO)とから、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)とがより多く発生する。他方、温度が高いほど、水性ガスシフト反応の逆反応(吸熱反応)により、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)とから、水(H2O)と一酸化炭素(CO)とがより多く発生する。そのため、生成H2濃度や生成CO濃度は、改質率のみならず温度にも依存する。その点、未改質HCについては、このような水性ガスシフト反応はなく、温度に依存し難いからである。よって、未改質HC濃度に基づいて改質率を演算することにより、精度よく改質率を求めることができる。
その改質率とEGR率とS/C比とに基づいて、増熱率演算部77が供給増熱率を演算する。そのため、未改質HC濃度に基づいて、改質率に応じた供給増熱率を演算できる。その改質率に応じた供給増熱率に基づいて、噴射量演算部78が供給用噴射量を演算する。そのため、改質率が100%よりも明らかに低くなった場合にも、改質率に応じた供給用噴射量を演算できる。その結果、エンジン20での燃焼熱量が改質率の低下に伴い所望の燃焼熱量からずれてしまうのを抑制できる。
さらに、H2濃度演算部87は、触媒温度と未改質HC濃度とに基づいて、生成H2濃度を演算する。その生成H2濃度に基づいて、噴射量演算部78が改善分相当噴射量を演算すると共に、その改善分相当噴射量を式3の右辺から減算する(式4)。そのため、ガソリンから水素への改質による燃焼性の改善により、エンジン20での燃焼性が所望の燃焼性よりも高くなり過ぎるのを抑制できる。
また、劣化判定部98は、触媒温度に基づいて初期状態での未改質HC濃度を推定し、その初期状態での未改質HC濃度と現在の未改質HC濃度とに基づいて、劣化状態か否かを判定する。そのため、劣化状態か否か把握できる。また、劣化判定部98は、改質率演算部76やH2濃度演算部87に未改質HC濃度を提供するHC濃度取得部75aから、未改質HC濃度を取得して劣化判定をする。そのため、劣化判定部98は、独自で未改質HC濃度を取得する手間を省いて、効率的に劣化判定を行うことができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。以下の実施形態においては、それ以前の実施形態のものと同一の又は対応する部材等について同一の符号を付する。ただし、エンジン制御装置60a~60c自体については、実施形態毎に異なる符号を付する。本実施形態においては、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明する。
次に、第2実施形態について説明する。以下の実施形態においては、それ以前の実施形態のものと同一の又は対応する部材等について同一の符号を付する。ただし、エンジン制御装置60a~60c自体については、実施形態毎に異なる符号を付する。本実施形態においては、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明する。
図7は本実施形態のエンジンシステム50及びエンジン制御装置60bを示す概略図である。エンジンシステム50は、第1実施形態でいうHC濃度センサ45aの代わりに、H2濃度センサ45bを有している。また、エンジン制御装置60bは、第1実施形態でいうHC濃度取得部75aとH2濃度演算部87との代わりに、H2濃度取得部75bを有している。
H2濃度センサ45bは、生成H2濃度を検出するためのセンサであり、EGR通路40における改質器42の直ぐ下流に設けられている。H2濃度センサ45bの具体例としては、A/Fセンサ、熱伝導式センサ、非分散型赤外線式センサ、光波干渉式センサ、差分吸収光法のセンサ、干渉増幅反射法のセンサ等が挙げられる。
図8は、本実施形態のエンジン制御装置60bを示すブロック図である。H2濃度取得部75bは、H2濃度センサ45bからの情報に基づいて、生成H2濃度を取得する。
改質率演算部76は、S/C比取得部74からS/C比を、H2濃度取得部75bからH2濃度をそれぞれ取得し、それらS/C比と生成H2濃度とに基づいて改質率を演算する。その演算について、以下に説明する。
図9は、生成H2濃度と改質率との関係をS/C比毎に示すグラフである。S/C比が同じなら、生成H2濃度(横軸)が高いほど、改質率(縦軸)が高い。改質率演算部76は、この関係、すなわち各生成H2濃度(横軸)及び各S/C比に対応する改質率(縦軸)、を記憶したマップを有しており、そのマップと生成H2濃度(横軸)とS/C比とに基づいて、改質率(縦軸)を演算する。
再び図8を参照しつつ説明する。増熱率演算部77は、第1実施形態の場合と同様に、EGR率とS/C比と改質率とに基づいて、供給増熱率を演算する。
噴射量演算部78は、増熱率演算部77から供給増熱率を、H2濃度取得部75bから生成H2濃度をそれぞれ取得する。そして、第1実施形態の場合と同様に、供給増熱率と生成H2濃度とに基づいて、供給用噴射量を演算する。
次に劣化判定について説明する。劣化判定部98は、H2濃度取得部75bから生成H2濃度を、触媒温度取得部84から触媒温度をそれぞれ取得し、それら生成H2濃度と触媒温度とに基づいて、劣化状態か否か判定する。その判定について以下に説明する。
図10は、触媒温度(横軸)と生成H2濃度(縦軸)との関係を示すグラフである。破線は、改質触媒43が全く劣化していない初期状態を示している。この破線に示すように、触媒温度(横軸)が高くなるほど、生成H2濃度(縦軸)が高くなる。この破線に示す初期状態は、例えば、化学平衡状態まで改質反応が進んだ場合を示している。劣化判定部98は、この破線に示す関係、すなわち各触媒温度に対応する初期状態での生成H2濃度、を記憶したマップを有している。
実線は劣化状態を示している。劣化状態では、改質反応が進み難くなることにより、同じ触媒温度(横軸)なら初期状態に比べて生成H2濃度(縦軸)が低くなる。そこで、劣化判定部98は、現在(図では劣化状態)の生成H2濃度と、初期状態での生成H2濃度との濃度差ΔCが、触媒温度に応じた閾濃度差ΔCthよりも大きければ、劣化状態と判定する。
本実施形態によれば、S/C比取得部74がS/C比を取得し、H2濃度取得部75bが生成H2濃度を取得する。それらS/C比と生成H2濃度とに基づいて、改質率演算部76が改質率を演算する。そのため、生成H2濃度に基づいて、改質率を演算できる。
また、噴射量演算部78は、H2濃度取得部75bから直接、生成H2濃度を取得する。そのため、第1実施形態でいう未改質HC濃度から生成H2濃度を演算するH2濃度演算部87を省略できる。
また、劣化判定部98は、触媒温度に基づいて初期状態での生成H2濃度を推定し、その初期状態での生成H2濃度と現在の生成H2濃度とに基づいて、劣化状態か否かを判定する。そのため、生成H2濃度に基づいて、劣化状態か否か把握できる。また、劣化判定部98は、改質率演算部76や噴射量演算部78に生成H2濃度を提供するH2濃度取得部75bから、生成H2濃度を取得して劣化判定をする。そのため、劣化判定部98は、独自で生成H2濃度を取得する手間を省いて、効率的に劣化判定を行うことができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態においては、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明する。
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態においては、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明する。
図11は、本実施形態のエンジンシステム50及びエンジン制御装置60cを示す概略図である。エンジンシステム50は、第1実施形態でいうHC濃度センサ45aの代わりに、CO濃度センサ45cを有している。また、エンジン制御装置60cは、第1実施形態でいうHC濃度取得部75aの代わりに、CO濃度取得部75cを有している。
CO濃度センサ45cは、生成CO濃度を検出するためのセンサであり、EGR通路40における改質器42の直ぐ下流に設けられている。CO濃度センサ45cの具体例としては、熱伝導式センサ、非分散型赤外線式センサ、光波干渉式センサ、差分吸収光法のセンサ、干渉増幅反射法のセンサ等が挙げられる。
図12は、本実施形態のエンジン制御装置60cを示すブロック図である。CO濃度取得部75cは、CO濃度センサ45cからの情報に基づいて、生成CO濃度を取得する。改質率演算部76は、S/C比取得部74からS/C比を、CO濃度取得部75cからCO濃度をそれぞれ取得し、それらS/C比と生成CO濃度とに基づいて改質率を演算する。その詳細について、以下に説明する。
図13は、生成CO濃度と改質率との関係をS/C比毎に示すグラフである。S/C比が同じなら、生成CO濃度(横軸)が高いほど、改質率(縦軸)が高い。改質率演算部76は、この関係、すなわち各生成CO濃度(横軸)及びS/C比に対応する改質率(縦軸)、を記憶したマップを有しており、そのマップと生成CO濃度(横軸)とS/C比とに基づいて、改質率(縦軸)を演算する。
再び図12を参照しつつ説明する。増熱率演算部77は、第1実施形態の場合と同様に、EGR率とS/C比と改質率とに基づいて、供給増熱率を演算する。
H2濃度演算部87は、CO濃度取得部75cから生成CO濃度を、触媒温度取得部84から触媒温度をそれぞれ取得し、それら生成CO濃度と触媒温度とに基づいて、生成H2濃度を演算する。その演算について、以下に説明する。
図14は、触媒温度(縦軸)とH2/CO比との関係を示すグラフである。このように、S/C比が同じなら、触媒温度(横軸)が低くなるほど、いわゆる水性ガスシフト反応(発熱反応)により、H2/CO比(縦軸)が大きくなる。
H2濃度演算部87は、この関係、すなわち各触媒温度(横軸)及び各S/C比に対応するH2/CO比(縦軸)、を記憶したマップを有している。濃度演算部87は、このマップと触媒温度(縦軸)とS/C比とに基づいてH2/CO比(縦軸)を演算し、そのH2/CO比と生成CO濃度とに基づいて、生成H2濃度を演算する。
再び図12を参照しつつ説明する。噴射量演算部78は、第1実施形態の場合と同様に、増熱率演算部77から供給増熱率を、H2濃度演算部87から生成H2濃度をそれぞれ取得し、それら供給増熱率と生成H2濃度とに基づいて、供給用噴射量を演算する。
次に劣化判定について、説明する。劣化判定部98は、CO濃度取得部75cから生成CO濃度を、触媒温度取得部84から触媒温度をそれぞれ取得し、それら生成CO濃度と触媒温度とに基づいて、劣化状態であるか否か判定する。その判定について以下に説明する。
図15は、触媒温度(横軸)と生成CO濃度(縦軸)との関係を示すグラフである。破線は、改質触媒43が全く劣化していない初期状態を示している。この破線に示すように、触媒温度(横軸)が高くなるほど、生成CO濃度(縦軸)は高くなる。この破線に示す初期状態は、例えば、化学平衡状態まで改質反応が進んだ場合を示している。劣化判定部98は、この破線に示す関係、すなわち各触媒温度に対応する初期状態での生成CO濃度、を記憶したマップを有している。
実線は、劣化状態を示している。劣化状態では、改質反応が進み難くなることにより、同じ触媒温度(横軸)なら初期状態に比べて生成CO濃度(縦軸)が低くなる。そこで、劣化判定部98は、現在(図では劣化状態)の生成CO濃度と初期状態での生成CO濃度との濃度差ΔCが、触媒温度に応じた閾濃度差ΔCthよりも高ければ、劣化状態であると判定する。
本実施形態によれば、S/C比取得部74がS/C比を取得し、CO濃度取得部75cが生成CO濃度を取得する。それらS/C比と生成CO濃度とに基づいて、改質率演算部76が改質率を演算する。そのため、生成CO濃度に基づいて、改質率を演算できる。
また、H2濃度演算部87は、触媒温度と生成CO濃度とに基づいて、生成H2濃度を演算する。その生成H2濃度に基づいて、噴射量演算部78が改善分相当噴射量を演算する。そのため、生成CO濃度に基づいて、改善分相当噴射量を演算できる。
また、劣化判定部98は、触媒温度に基づいて初期状態での生成CO濃度を推定し、その初期状態での生成CO濃度と現在の生成CO濃度とに基づいて、劣化状態か否かを判定する。そのため、生成CO濃度に基づいて、劣化状態か否か把握できる。また、劣化判定部98は、改質率演算部76やH2濃度演算部87に生成CO濃度を提供するCO濃度取得部75cから、生成CO濃度を取得して劣化判定をする。そのため、劣化判定部98は、独自で生成CO濃度を取得する手間を省いて、効率的に劣化判定を行うことができる。
[他の実施形態]
以上に示した実施形態は、例えば次のように変更して実施できる。
以上に示した実施形態は、例えば次のように変更して実施できる。
各実施形態では、エンジン20はガソリンエンジンであるが、これに代えて、軽油を燃料とするディーゼルエンジンにしてもよい。
各実施形態では、エンジンシステム50は、気筒24内に燃料を噴射する供給用インジェクタ25を有しているが、これに代えて又は加えて、吸気通路10内に燃料を噴射する供給用インジェクタを設けてもよい。なお、エンジンシステム50が、供給用インジェクタを複数有する場合には、それら複数の供給用インジェクタの燃料噴射量の合計が供給用噴射量となる。
各実施形態では、エンジンシステム50は、コンプレッサ12、インタークーラ13、タービン32等を有するターボ仕様であるが、これらをなくして、自然吸気仕様にしてもよい。
各実施形態では、EGR通路40の下流側の端は、インタークーラ13よりも上流に接続されているが、これに代えて、吸気通路10におけるインタークーラ13よりも下流に接続してもよい。
各実施形態では、EGR通路40は、排気通路30におけるタービン32よりも上流(高圧部)と、吸気通路10におけるコンプレッサ12よりも下流(高圧部)とを接続している。これに代えて、排気通路30におけるタービン32よりも下流(低圧部)と、吸気通路10におけるコンプレッサ12よりも上流(低圧部)とをEGR通路40により接続するようにしてもよい。また、排気通路30におけるタービン32よりも下流(低圧部)と、吸気通路10におけるコンプレッサ12よりも下流(高圧部)とをEGR通路40により接続すると共に、EGRガスを還流方向に加圧するためのEGRポンプやエジェクタ等を設けてもよい。
各実施形態では、EGR通路40と排気通路30とが立体交差するクロスフロー構造になっているが、これに代えて、EGR通路40と排気通路30とが立体交差しないストレートフロー構造にしてもよい。
各実施形態では、EGR弁48はEGRクーラ47よりも下流に設けられているが、これに代えて、EGR通路40におけるEGRクーラ47よりも上流にEGR弁48を設けてもよい。
各実施形態では、HC濃度センサ45aやH2濃度センサ45bやCO濃度センサ45cは、それぞれ改質器42の直ぐ下流に設けられているが、これに代えて、改質器42よりも下流且つエンジン20よりも上流のどこかに、設けられていてもよい。
各実施形態では、HC濃度センサ45aやH2濃度センサ45bやCO濃度センサ45cに基づいて、未改質HC濃度や生成H2濃度や生成CO濃度を取得している。このようなセンサによる直接取得に代えて、例えばエンジン20の運転状態や改質用噴射量などのパラメータに基づいて、未改質HC濃度や生成H2濃度や生成CO濃度を推定してもよい。
各実施形態では、増熱率演算部77は、前述の式2に基づいて、供給増熱率を演算しているが、これに代えて、マップに基づいて供給増熱率を演算してもよい。
各実施形態では、噴射量演算部78は、前述の式4に基づいて、供給用噴射量を演算しているが、これに代えて、改善分相当噴射量がさほど大きくならない場合等には、前述の式3に基づいて、供給用噴射量を演算してもよい。また、式4,式3等の数式に代えて、マップに基づいて供給用噴射量を演算してもよい。
また、増熱率演算部77は、供給増熱率を改質率に基づいて演算している。この増熱率演算部77に代えて、増熱量を改質率に基づいて演算する増熱量演算部を設けてもよい。そして、噴射量演算部78は、供給増熱率に代えて、増熱量に基づいて供給用噴射量を演算するようにしてもよい。
各実施形態では、エンジン制御装置60a~60cは、触媒温度取得部84を有している。そして、H2濃度演算部87や劣化判定部98は、触媒温度毎の各パラメータ値を格納したマップを有している。これに代えて、エンジン制御装置60a~60cは、改質器42の出口温度を取得する出口温度取得部を有していてもよい。そして、H2濃度演算部87や劣化判定部98は、出口温度毎の各パラメータ値を格納したマップを有していてもよい。
10…吸気通路、20…エンジン、25…供給用インジェクタ、30…排気通路、40…EGR通路、41…改質用インジェクタ、42…改質器、43…改質触媒、50…エンジンシステム、60a~60c…エンジン制御装置、77…増熱率演算部、78…噴射量演算部。
Claims (10)
- エンジン(20)と、前記エンジン内に気体を吸入させる吸気通路(10)と、前記吸気通路内又は前記エンジン内に燃料を噴射する供給用インジェクタ(25)と、前記エンジン内の気体を排出させる排気通路(30)と、前記排気通路内の気体の一部を前記吸気通路内に還流させるEGR通路(40)と、前記EGR通路に設けられており改質触媒(43)が格納されている改質器(42)と、前記エンジンよりも下流且つ前記改質器よりも上流に燃料を噴射する改質用インジェクタ(41)と、を有し、前記改質器により燃料改質を行うエンジンシステム(50)を、
制御するエンジン制御装置(60a~60c)において、
前記燃料改質により消費又は生成される所定ガスの濃度である成分濃度に基づいて、前記燃料改質により増加する燃焼熱量である増熱量に相関する値である増熱値を演算する増熱値演算部(77)と、
前記増熱値に基づいて前記供給用インジェクタの燃料噴射量を演算する噴射量演算部(78)と、
を有するエンジン制御装置。 - 前記改質器よりも下流且つ前記エンジンよりも上流での水素の濃度である生成H2濃度を入手するH2濃度入手部(87,75b)を有し、
前記噴射量演算部は、さらに前記生成H2濃度に基づいて前記供給用インジェクタの燃料噴射量を演算する、請求項1に記載のエンジン制御装置。 - 前記改質用インジェクタよりも下流且つ前記改質器よりも上流での、水分子数と、炭化水素を構成する炭素原子数との比であるS/C比を取得するS/C比取得部(74)と、
前記改質器よりも下流且つ前記エンジンよりも上流での燃料の濃度である未改質HC濃度を取得するHC濃度取得部(75a)と、
前記S/C比と前記未改質HC濃度とに基づいて、前記燃料改質における改質率を演算する改質率演算部(76)と、
前記EGR通路に流れる気体の量に相関する値であるEGR値を取得するEGR値取得部(71)と、を有し、
前記増熱値演算部は、前記EGR値と前記S/C比と前記改質率とに基づいて前記増熱値を演算する、請求項1又は2に記載のエンジン制御装置(60a)。 - 前記EGR通路の温度であるEGR温度を取得するEGR温度取得部(84)と、
前記未改質HC濃度と前記EGR温度とに基づいて、前記改質器よりも下流且つ前記エンジンよりも上流での水素の濃度である生成H2濃度を演算するH2濃度演算部(87)と、を有し、
前記噴射量演算部は、さらに前記生成H2濃度に基づいて前記供給用インジェクタの燃料噴射量を演算する、請求項3に記載のエンジン制御装置。 - 前記未改質HC濃度と前記EGR温度とに基づいて、前記改質触媒が劣化したと認められる劣化状態であるか否かを判定する劣化判定部(98)を有する、請求項4に記載のエンジン制御装置。
- 前記改質用インジェクタよりも下流且つ前記改質器よりも上流での、水分子数と、炭化水素を構成する炭素原子数との比であるS/C比を取得するS/C比取得部(74)と、
前記改質器よりも下流且つ前記エンジンよりも上流での水素の濃度である生成H2濃度を取得するH2濃度取得部(75b)と、
前記S/C比と前記生成H2濃度とに基づいて、前記燃料改質における改質率を演算する改質率演算部(76)と、
前記EGR通路に流れる気体の量に相関する値であるEGR値を取得するEGR値取得部(71)と、を有し、
前記増熱値演算部は、前記EGR値と前記S/C比と前記改質率とに基づいて前記増熱値を演算し、
前記噴射量演算部は、前記増熱値と前記生成H2濃度とに基づいて前記供給用インジェクタの燃料噴射量を演算する、請求項1又は2に記載のエンジン制御装置(60b)。 - 前記EGR通路の温度であるEGR温度を取得するEGR温度取得部(84)と、
前記生成H2濃度と前記EGR温度とに基づいて、前記改質触媒が劣化したと認められる劣化状態であるか否かを判定する劣化判定部(98)と、
を有する、請求項6に記載のエンジン制御装置。 - 前記改質用インジェクタよりも下流且つ前記改質器よりも上流での、水分子数と、炭化水素を構成する炭素原子数との比であるS/C比を取得するS/C比取得部(74)と、
前記改質器よりも下流且つ前記エンジンよりも上流での一酸化炭素の濃度である生成CO濃度を取得するCO濃度取得部(75c)と、
前記S/C比と前記生成CO濃度とに基づいて、前記燃料改質における改質率を演算する改質率演算部(76)と、
前記EGR通路に流れる気体の量に相関する値であるEGR値を取得するEGR値取得部(71)と、を有し、
前記増熱値演算部は、前記EGR値と前記S/C比と前記改質率とに基づいて前記増熱値を演算する、請求項1又は2に記載のエンジン制御装置(60c)。 - 前記EGR通路の温度であるEGR温度を取得するEGR温度取得部(84)と、
前記生成CO濃度と前記EGR温度とに基づいて、前記改質器よりも下流且つ前記エンジンよりも上流での水素の濃度である生成H2濃度を取得するH2濃度演算部(87)と、を有し、
前記噴射量演算部は、さらに前記生成H2濃度に基づいて前記供給用インジェクタの燃料噴射量を演算する、請求項8に記載のエンジン制御装置。 - 前記生成CO濃度と前記EGR温度とに基づいて、前記改質触媒が劣化したと認められる劣化状態であるか否かを判定する劣化判定部(98)を有する、請求項9に記載のエンジン制御装置。
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