JP2022095157A - ボルト用鋼およびボルト - Google Patents

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琢哉 高知
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Abstract

【課題】調質後に、引張強度が1600MPa以上であっても十分な耐遅れ破壊特性を示すボルト用鋼を提供する。【解決手段】成分組成が、C:0.35~0.50質量%、Si:1.52~2.50質量%、Mn:0.10~0.40質量%、P:0質量%超0.015質量%以下、S:0質量%超0.010質量%以下、Cu:0.11~0.50質量%、Ni:0.11~1.0質量%、Cr:0.1~2.4質量%、Ti:0.05~0.19質量%、Al:0質量%超0.10質量%以下、B:0.0003~0.01質量%、N:0質量%超0.015質量%以下、および残部:鉄および不可避不純物からなり、調質後の引張強度が1600MPa以上であるボルト用鋼。【選択図】なし

Description

本開示はボルト用鋼およびボルトに関する。
遅れ破壊は、鉄鋼材料に応力が付与されてから所定時間を経過した後に発生する破壊である。遅れ破壊は、水素脆化現象が関与して発生することが共通認識となっているが、遅れ破壊の防止手段はいまだ確立されておらず、種々の方法が試行錯誤的に提案されている。
例えば、特許文献1~4には、調質(焼入れおよび焼戻し)後に所定値以上の引張強度であっても、優れた耐遅れ破壊特性を有するボルト用鋼等が開示されている。
特開2012-17484号公報 特開2015-14031号公報 特開2016-69705号公報 特開2019-123921号公報
特許文献1には、SiおよびCuを適量添加することで水素侵入を抑制し、更には合金化合物による水素トラップ効果を活用することで、引張強度が1400MPa以上でも耐遅れ破壊特性に優れたボルト用鋼が得られることが開示されている。しかし、本発明者らの検討の結果、水素侵入の抑制と水素トラップ効果だけでは、高応力負荷等の厳しい使用条件で耐遅れ破壊性を満足することが出来ないことがわかった。
特許文献2には、Moを適量添加することで脱炭および粒界酸化を起きにくくし、引張強度が1500MPa以上でも耐遅れ破壊特性に優れたボルト用鋼が得られることが開示されている。しかし、本発明者らの検討の結果、脱炭および粒界酸化を起きにくくするだけでは、高応力集中係数および酸への長時間浸漬等、厳しい使用環境、使用条件で耐遅れ破壊特性を満足することが出来ないことがわかった。
特許文献3には、Cを低減することで冷間鍛造性を向上させるとともに、Mnを適量添加することで焼入れ性を補完し、引張強度が1100MPa以上でも耐遅れ破壊特性に優れたボルト用鋼が得られることが開示されている。しかし、本発明者らの検討の結果、冷間鍛造性を優先してCを低減すると引張強度が低下してしまうことがわかった。また、焼入れ性を補完するためにMnを過剰に添加すると粒界へのMnSおよびPの偏析を助長し、特に高強度側の耐遅れ破壊特性が低下してしまうことがわかった。
特許文献4には、CおよびVを適量添加して高温で焼戻しを実施することで、引張強度が1400MPa以上でも耐遅れ破壊特性に優れたボルト用鋼が得られることが開示されている。しかし、本発明者らの検討の結果、引張強度を担保するためにCを過剰に添加すると、焼割れ等が発生して製造性が低下することがわかった。
さらに、特許文献1~4に開示されるような従来技術に共通する問題点として、調質(焼入れおよび焼戻し)後において引張強度が高く(特に引張強度が1600MPa以上に)なると耐遅れ破壊特性を十分に高くできないおそれがあることがわかった。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、調質後に、引張強度が1600MPa以上であっても十分な耐遅れ破壊特性を示すボルト用鋼およびそのボルト用鋼を加工して得られるボルトを提供することである。
本発明の態様1は、
成分組成が、
C :0.35~0.50質量%、
Si:1.52~2.50質量%、
Mn:0.10~0.40質量%、
P :0質量%超0.015質量%以下、
S :0質量%超0.010質量%以下、
Cu:0.11~0.50質量%、
Ni:0.11~1.0質量%、
Cr:0.1~2.4質量%、
Ti:0.05~0.19質量%、
Al:0質量%超0.10質量%以下、
B :0.0003~0.01質量%、
N :0質量%超0.015質量%以下、および
残部:鉄および不可避不純物からなり、
調質後の引張強度が1600MPa以上であるボルト用鋼である。
本発明の態様2は、Mo:0質量%超0.7質量%以下を更に含有する態様1に記載のボルト用鋼である。
本発明の態様3は、V:0質量%超0.20質量%以下を更に含有する態様1または2に記載のボルト用鋼である。
本発明の態様4は、TiおよびVの合計含有量が0.06~0.30質量%である態様3に記載のボルト用鋼である。
本発明の態様5は、態様1~4のいずれか1つに記載の成分組成を有するボルトである。
本発明の実施形態によれば、調質後に、引張強度が1600MPa以上であっても十分な耐遅れ破壊特性を示すボルト用鋼およびそのボルト用鋼を加工して得られるボルトを提供することが可能である。
図1は、実施例の耐食性評価および耐遅れ破壊特性評価に用いる試験片の形状を示した概略図である。
本発明者らは、調質(焼入れおよび焼戻し)後に、引張強度が1600MPa以上であっても十分な耐遅れ破壊特性を示すボルト用鋼を実現するべく、様々な角度から検討した。その結果、引張強度が1600MPa以上の高強度鋼において、Mn含有量が過剰であると耐遅れ破壊特性が大きく低下することを新たに見出し、Mn含有量を低く抑えるとともに、Cu、Ni、TiおよびBを同時に必須成分として含み、さらにそれらの含有量を適切に調整することにより、調質後に、1600MPa以上の引張強度を達成できると共に、十分な耐遅れ破壊特性を示すボルト用鋼を実現できることを見出した。
以下に、本発明の実施形態が規定する各要件の詳細を示す。
本発明の実施形態に係るボルト用鋼は、成分組成が、C:0.35~0.50質量%、Si:1.52~2.50質量%、Mn:0.10~0.40質量%、P:0質量%超0.015質量%以下、S:0質量%超0.010質量%以下、Cu:0.11~0.50質量%、Ni:0.11~1.0質量%、Cr:0.1~2.4質量%、Ti:0.05~0.19質量%、Al:0質量%超0.10質量%以下、B:0.0003~0.01質量%、N:0質量%超0.015質量%以下であり、さらに、残部が鉄および不可避不純物であることが好ましい。
以下、各元素について詳述する。
(C:0.35~0.50質量%)
Cは、鋼の引張強度を確保するために添加される。高強度(特に、引張強度1600MPa以上)を確保するため、C含有量は0.35質量%以上とし、好ましくは0.37質量%以上であり、より好ましくは0.38質量%以上である。一方、C含有量が過剰になると、靱性の低下を招くとともに、オーステナイト結晶粒界に炭化物が生成し易くなり、粒界強度の低下が生じて、耐水素脆化特性が低下する。更には、ボルトの製造時に必要な冷間加工性(冷間鍛造性、特にはボルト圧造性)の低下も生じる。また、腐食環境ではC含有量が過剰になると耐食性が悪化する。そのため、C含有量は0.50質量%以下とし、好ましくは0.48質量%以下であり、より好ましくは0.45質量%以下である。
(Si:1.52~2.50質量%)
Siは、溶製時の脱酸剤として作用するとともに、鋼を強化する固溶元素として必要な元素である。またSiは、オーステナイト結晶粒界に析出する炭化物を抑制して該結晶粒界の強度を高くするとともに、遷移炭化物を安定化させ、鋼中の水素拡散係数を低下させる元素としても重要である。このような作用を発揮させるため、Si含有量は1.52質量%以上とし、好ましくは1.55質量%以上であり、より好ましくは1.60質量%以上である。一方、Si含有量が過剰になると、鋼材の冷間加工性が低下するとともに、焼入れ時における粒界酸化を助長して耐水素脆化特性が低下する。そこで、Si含有量は2.50質量%以下とし、好ましくは2.30質量%以下であり、より好ましくは2.00質量%以下である。
(Mn:0.10~0.40質量%)
Mnは、焼入れ性向上元素であり、高強度化を達成する上で重要な元素である。また、MnはSと化合物を形成しやすいため、一定以上添加することにより、結晶粒界に析出して粒界強度の低下を招くFeSの生成を抑制する効果も有する。このような作用を有効に発揮させるため、Mn含有量は0.10質量%以上とし、好ましくは0.13質量%以上であり、より好ましくは0.15質量%以上である。一方、Mn含有量が過剰になると、粒界へのMnS及び/又はPの偏析を助長して粒界強度が低下し、耐水素脆化特性が低下する。そのため、Mn含有量は0.40%質量以下とし、好ましくは0.35質量%以下であり、より好ましくは0.30質量%以下であり、更に好ましくは0.20質量%未満である。Mn含有量を0.20質量%未満とすることにより、特に後述するTi含有量が0.060質量%以上であって且つVを含む場合に、P含有量およびS含有量が比較的多くても(具体的には0.005質量%超であっても)、より高強度(例えば焼入れおよび焼戻し後の引張強度が1900MPa以上)且つ優れた耐遅れ破壊特性を示すボルト用鋼を提供することが可能となる。
(P:0質量%超0.015質量%以下)
Pは、粒界偏析を起こして粒界強度を低下させ、耐水素脆化特性を低下させる。そこで、P含有量は0.015質量%以下とし、好ましくは0.010質量%以下であり、より好ましくは0.008質量%以下であり、更に好ましくは0.005質量%以下である。P含有量は、少なければ少ないほど好ましいが、鋼材の製造コストの増加を招くため、0質量%超としてもよく、さらに0.001質量%程度の残存は許容される。
(S:0質量%超0.010質量%以下)
Sは、硫化物(MnS)を形成する元素である。S含有量が過剰になると、粗大なMnSが形成され、この粗大なMnSが応力集中箇所となって耐水素脆化特性の低下を招く。そのため、S含有量は0.010質量%以下とし、好ましくは0.007質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以下である。S含有量は、Pと同様に少なければ少ないほど好ましいが、鋼材の製造コストの増加を招くため、0質量%超としてもよく、さらに0.001質量%程度の残存は許容される。
(Cu:0.11~0.50質量%)
Cuは、遷移炭化物の析出が起きる低温焼戻し後の強度を確保するのに有効な元素である。また、腐食環境での鋼の耐食性を向上することもできる。このような効果を有効に発揮させるため、Cu含有量は0.11質量%以上とし、好ましくは0.15質量%以上であり、より好ましくは0.20質量%以上である。一方、Cu含有量が過剰になると、上記効果が飽和するとともに、熱間延性が低下して鋼の生産性が低下する。また、冷間加工性の低下及び/又は靱性の低下を招く。更に、ボルト加工時の鋼材硬さが増加して金型寿命の低下ももたらす。そこで、Cu含有量は0.50質量%以下とし、好ましくは0.40質量%以下であり、より好ましくは0.30質量%以下である。
(Ni:0.11~1.0質量%)
Niは、Cuと同様に、遷移炭化物の析出が起きる低温焼戻し後の強度を確保するのに有効な元素である。また、靱性を高める作用があり、Cu含有量増加に伴う熱間延性の低下を補う作用を有する。更に、腐食環境での鋼の耐食性を向上することもできる。これらの効果を有効に発揮させるため、Ni含有量は0.11質量%以上とし、好ましくは0.30質量%以上であり、より好ましくは0.35質量%以上である。一方、Ni含有量が過剰になると、上記効果が飽和するとともに、製造コストの増加を招くため、Ni含有量は1.0質量%以下とし、好ましくは0.6質量%以下であり、より好ましくは0.45質量%以下である。
(Cr:0.1~2.4質量%)
Crは、腐食環境での鋼の耐食性向上にも寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Cr含有量は0.1質量%以上とし、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは0.8質量%以上である。一方、Cr含有量が過剰になると、粗大な炭窒化物が形成して靱性が低下し、その結果、耐水素脆化特性が低下する。そこで、Cr含有量は2.4質量%以下とし、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは1.3質量%以下、更に好ましくは1.2質量%以下である。
(Ti:0.05~0.19質量%)
Tiは、微細な炭化物を生成し、結晶粒を微細化することで靱性を向上させる効果を有する元素である。また、TiNを形成することでBNの形成を抑制し、後述するようなBの効果を発現させる元素である。このような効果を有効に発揮させるため、Ti含有量は0.05質量%以上とし、好ましくは0.060質量%以上であり、より好ましくは0.065質量%以上である。一方、Tiは、過剰に含まれると粗大な炭窒化物を形成し、ボルトの製造時に必要な冷間鍛造性(特にはボルト圧造性)が低下する。また、Tiは、過剰に含まれると水素トラップサイトが増加して鋼中の水素量が増加し、温度変化や応力変動等によってトラップサイトから水素が解放された際に、水素脆化を起こしやすくなる。そのため、Ti含有量は0.19質量%以下とし、好ましくは0.15質量%以下であり、より好ましくは0.10質量%以下である。
(Al:0質量%超0.10質量%以下)
Alは、Siと同様に溶製時の脱酸剤として機能するとともに、鋼中のNと結合してAlNを生成することによって、結晶粒成長を抑制し、結果として、結晶粒の微細化により耐水素脆化特性を向上させることのできる元素である。そのため、Al含有量は0質量%超とし、好ましくは0.010質量%以上であり、より好ましくは0.015質量%以上である。一方、Al含有量が過剰になると、Alなどの酸化物系介在物を生成し、応力集中源となって耐水素脆化特性を低下させる。また、粗大なAlNが生成して、結晶粒の微細化が図れず、靱性が低下することによっても耐水素脆化特性が低下する。そこで、Al含有量は0.10質量%以下とし、好ましくは0.07質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下である。
(B:0.0003~0.01質量%)
Bは、鋼の焼入れ性を向上させるとともに、旧オーステナイト結晶粒界上に分散することでPおよびS等の粒界偏析元素の濃化を抑制し、結晶粒界を清浄化することで耐遅れ破壊特性を向上させるために有効な元素である。これらの効果を発揮させるため、B含有量は0.0003質量%以上とし、好ましくは0.0008質量%以上であり、より好ましくは0.001質量%以上である。一方、B含有量が過剰になると、粗大な化合物を生成して耐遅れ破壊特性が低下するため、B含有量は0.01質量%以下とし、好ましくは0.005質量%以下であり、より好ましくは0.003質量%以下である。
(N:0質量%超0.015質量%以下)
Nは、Al、TiおよびNbと窒化物を形成し、結晶粒を微細化させるために有効な元素である。このような効果を発揮させるため、N含有量は0質量%超とし、好ましくは、0.002質量%以上であり、より好ましくは0.0035質量%以上である。一方、N含有量が過剰になると、化合物を形成せずに固溶状態にあるN量が増加し、冷間鍛造性が低下するため、N含有量は0.015質量%以下とし、好ましくは0.010質量%以下であり、より好ましくは0.008質量%以下である。
本発明の実施形態に係るボルト用鋼は、上記の成分組成を含み、本発明の1つの実施形態では、残部は鉄および不可避不純物であることが好ましい。不可避不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素の混入が許容される。なお、例えば、P、Sのように、通常、含有量が少ないほど好ましく、従って不可避不純物であるが、その組成範囲について上記のように別途規定している元素がある。このため、本明細書において、「不可避不純物」という場合は、別途その組成範囲が規定されている元素を除いた概念である。
さらに、本発明の実施形態に係る厚鋼板は、必要に応じて以下の任意元素の1つ以上を選択的に含有してよく、含有される成分に応じて鋼の特性が更に改善される。
(Mo:0質量%超0.7質量%以下)
Moは、焼入れ性向上元素であり、高強度を達成するのに有効な元素である。また、粒界酸化抑制効果を有しているため、本発明のようにSiの添加量が多い鋼材には有効な元素である。このような効果を有効に発揮させるため、Mo含有量は0質量%超とすることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上であり、更に好ましくは0.03質量%以上である。一方、Mo含有量が過剰になると、製造コストの増加を招くため、Mo含有量は0.7質量%以下とし、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.4質量%以下である。
(V:0質量%超0.20質量%以下)
Vは、微細な炭化物を生成し、結晶粒を微細化することで靱性を向上させる効果を有する元素である。このような効果を有効に発揮させるため、V含有量は、0質量%超とすることが好ましく、より好ましくは0.10質量%以上であり、更に好ましくは0.14質量%以上である。一方、Vは、過剰に含まれると粗大な炭窒化物を形成し、ボルトの製造時に必要な冷間鍛造性(特にはボルト圧造性)が低下する。また、Vは、過剰に含まれると水素トラップサイトが増加して鋼中の水素量が増加し、温度変化及び/又は応力変動等によってトラップサイトから水素が解放された際に、水素脆化を起こしやすくなる。そのため、V含有量は0.20質量%以下とし、好ましくは0.18質量%以下であり、より好ましくは0.17質量%以下である。
(TiおよびVの合計含有量が0.06~0.30質量%)
更に、TiとVの結晶粒微細化の効果を有効に発揮させるため、TiおよびVの合計含有量が0.06質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.2質量%以上である。一方、TiとVによる水素トラップサイトの効果を低減するため、TiおよびVの合計含有量が0.30質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.26質量%以下であり、更に好ましくは0.24質量%以下である。
本発明の実施形態に係るボルト用鋼は上記のような化学成分組成を有していればよい。本発明の実施形態に係るボルト用鋼の金属組織は、本発明の目的を達成する上で特に制限されない。
本発明の実施形態に係るボルト用鋼の製造方法は本発明の目的を達成する上で特に制限されず、本発明の実施形態に係るボルト用鋼は公知の方法で製造することができる。
本発明の実施形態に係るボルト用鋼は、成分組成を上記のように調整するとともに、公知の方法で調質(焼入れおよび焼戻し)処理を行って金属組織を焼戻しマルテンサイトとすることによって、引張強度を1600MPa以上にすることができる。なお、当技術分野において、調質の条件(焼入れ焼戻しの温度及び時間、冷却条件等)を適宜調整することにより、引張強度を所定範囲に調整することは当業者にとって周知の方法である。本発明の実施形態においても当該周知の方法を用いることができる。
焼入れおよび焼戻し処理の好ましい条件について、以下に説明する。
安定的にオーステナイト化処理するために、焼入れ時の加熱温度(以下、この温度を「焼入れ温度」と呼ぶことがある)を850℃以上とすることが好ましく、より好ましくは870℃以上であり、更に好ましくは880℃以上である。一方で、焼入れ温度を950℃以下にすることにより、Tiの炭・窒化物の溶解が抑制され、ピンニング効果によって結晶粒の粗大化が抑制され、耐遅れ破壊特性の低下を抑制できるため好ましい。焼入れ温度は、より好ましくは930℃以下であり、更に好ましくは920℃以下である。焼入れの時間は特に制限されないが、例えば所定温度±5℃の温度域での保持時間を5分以上1時間以下とすることができる。なお、加熱炉内の材料温度は、材料に熱電対を設置することで測定可能である。冷却についても特に制限されないが、例えば水冷または油冷等により行うことができる。
焼戻し処理をすることにより、靭性及び延性を向上させることができる。少なくとも300℃以上の温度で焼戻し処理することが好ましい。焼戻し温度の上限は得に制限されないが、例えば700℃以下、強度確保のため好ましくは650℃以下とすることができる。焼戻しの時間は特に制限されないが、例えば所定温度±5℃の温度域での保持時間を15分以上2時間以下とすることができる。なお、加熱炉内の材料温度は、材料に熱電対を設置することで測定可能である。冷却についても特に制限されないが、例えば水冷または油冷等により行うことができる。
本発明の実施形態に係るボルト用鋼は、焼入れおよび焼戻し後の引張強度が1600MPa以上であり、好ましくは1750MPa以上であり、より好ましくは1900MPa以上である。これにより高強度のボルトが得られる。
本発明の実施形態に係るボルトは、上記成分組成を有し、本発明の実施形態に係るボルト用鋼をボルト形状に加工することによって得られる。加工のタイミングとしては、特に制限されないが、高強度化する前に(すなわち焼入れを行う前に)加工することが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態をより具体的に説明する。本発明の実施形態は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の実施形態の技術的範囲に包含される。
表1に示す成分組成の鋼種A~Kを、真空溶解法に従って溶製した後、1200℃で1時間加熱後に熱間鍛造および放冷を行ってφ12mmの棒材を得た。当該棒材を切断して得たサンプルを、表2に示す条件で焼入れおよび焼戻しを行った。なお、表2には記載していないが、焼入れの加熱時間は30分とし、焼入れの炉内雰囲気は大気とし、焼入れの冷却条件は油冷とし、焼戻し時間は1時間とし、焼戻しの冷却条件は水冷とした。
Figure 2022095157000001
Figure 2022095157000002
焼入れおよび焼戻し後のサンプルから、切削加工によって各種試験片を採取し、以下の評価を行った。
[(1)引張強度評価]
引張強度は、JIS Z 2241:2011に従って引張試験を行って求めた。判定としては、1900MPa以上を最も優れている(AA)とし、1750MPa以上1900MPa未満を優れている(A)とし、1600MPa以上1750MPa未満を十分である(B)とし、1600MPa未満を不十分(C)であるとした。
[(2)耐食性評価]
耐食性は、図1に示す切欠き試験片を15%HCl水溶液に浸漬した際の、浸漬前後の腐食減量(質量%)によって評価した。
腐食減量=[(酸浸漬前の質量-酸浸漬後の質量)/酸浸漬前の質量]×100
判定としては、0.015質量%以下を最も優れている(AA)とし、0.015質量%超0.018質量%以下を優れている(A)とし、0.018質量%超0.021質量%以下を十分である(B)とし、0.021質量%超を不十分(C)であるとした。
[(3)耐遅れ破壊特性評価]
図1に示す切欠き試験片を引張試験に供し、引張強度(以下、この引張強度を「切欠き引張強度」と称し、上記(1)の引張強度と区別する)を求めた。次に、図1に示す切欠き試験片を15%HCl水溶液に30分浸漬し、大気中で冶具に締付けた後、100時間経過後でも破断しない負荷応力(以下、この負荷応力を「100時間遅れ破壊強度」と称する)を求めた。そして切欠き引張強度と100時間遅れ破壊強度との比(以下、この強度比を「遅れ破壊強度比」と称する)を求めた。判定としては、0.85以上を最も優れている(AA)とし、0.75以上0.85未満を優れている(A)とし、0.70以上0.75未満を十分である(B)とし、0.70未満を不十分(C)であるとした。
さらに、上記(1)で求めた引張強度と、遅れ破壊強度比との積(以下、この積を「遅れ破壊強度」と称する)を求めた。判定としては、1650MPa以上を最も優れている(AA)とし、1550MPa以上1650MPa未満を優れている(A)とし、1500MPa以上1550MPa未満を十分である(B)とし、1500MPa未満を不十分(C)であるとした。
結果を表3に示す。なお表3の「引張強度」は、上記(1)で求めた引張強度であり、「切欠き引張強度」ではない。また表3の「総合判定」には、「引張強度」、「遅れ破壊強度比」および「遅れ破壊強度」の「判定」のうち、最も低い判定を記載した。また、試験No.14においては、引張強度が1600MPa未満と不十分であったため、耐食性評価および耐遅れ破壊特性評価は行わなかった。
Figure 2022095157000003
表3の結果より、次のように考察できる。表3の試験No.1~6は、いずれも本発明の実施形態で規定する成分組成を満足する鋼種を用いており、総合判定がB以上であり、調質後に、引張強度が1600MPa以上であっても十分な耐遅れ破壊特性(遅れ破壊強度比0.70以上および遅れ破壊強度1500MPa以上)を示した。特に、試験No.2および3は、Mn:0.10質量%以上0.20質量%未満、Ti:0.060~0.190質量%且つV:0質量%超0.20質量%以下である鋼種Bを用いたため、P含有量およびS含有量が0.005質量%超であるにもかかわらず、総合判定においてAAであった。試験No.4は、鋼種Bに対してMn含有量が多い鋼種Cを用いたが、P含有量およびS含有量が0.005質量%以下であったため、総合判定においてAAであった。
一方、表3の試験No.7~14は、いずれも本発明の実施形態で規定する成分組成を満たしていない鋼種を用いており、総合判定がCであり、引張強度、遅れ破壊強度比および遅れ破壊強度のいずれか1つ以上が不十分であった。
試験No.7~9は、Bを含有しない鋼種EまたはFを用いた例であり、遅れ破壊強度比および遅れ破壊強度が不十分であった。これは、Bを含有しなかったことにより、粒界強度を向上させることができなかったためと考えられる。
試験No.10は、Mn含有量が過剰である鋼種Gを用いた例であり、遅れ破壊強度比および遅れ破壊強度が不十分であった。これは、Mn含有量が過剰であったことにより、粒界へのMnS及び/又はPの偏析を助長したためであると考えられる。
試験No.11~13は、Ti含有量が不十分である鋼種H、I又はJを用いた例であり、遅れ破壊強度比および遅れ破壊強度が不十分であった。これは、Ti含有量が不十分であることによりBNの形成を抑制できず、その結果Bの効果が発揮されなかったためであると考えられる。
また、試験No.13は、Cu含有量およびNi含有量が不十分である例でもあり、耐食性も低下した。
試験No.14は、C含有量が不十分である鋼種Kを用いた例であり、引張強度が不十分であった。

Claims (5)

  1. 成分組成が、
    C :0.35~0.50質量%、
    Si:1.52~2.50質量%、
    Mn:0.10~0.40質量%、
    P :0質量%超0.015質量%以下、
    S :0質量%超0.010質量%以下、
    Cu:0.11~0.50質量%、
    Ni:0.11~1.0質量%、
    Cr:0.1~2.4質量%、
    Ti:0.05~0.19質量%、
    Al:0質量%超0.10質量%以下、
    B :0.0003~0.01質量%、
    N :0質量%超0.015質量%以下、および
    残部:鉄および不可避不純物からなり、
    調質後の引張強度が1600MPa以上であるボルト用鋼。
  2. Mo:0質量%超0.7質量%以下を更に含有する請求項1に記載のボルト用鋼。
  3. V:0質量%超0.20質量%以下を更に含有する請求項1または2に記載のボルト用鋼。
  4. TiおよびVの合計含有量が0.06~0.30質量%である請求項3に記載のボルト用鋼。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の成分組成を有するボルト。
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