JP2022092141A - 重合性組成物、硬化物、及び硬化物の製造方法 - Google Patents

重合性組成物、硬化物、及び硬化物の製造方法 Download PDF

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章世 矢野
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Abstract

【課題】低温かつ短時間で十分に硬化することができ、表面平滑性に優れる硬化物が得られる重合性組成物を提供すること。【解決手段】下記一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体と、コバルト系硬化促進剤と、ラジカル重合性化合物を含有することを特徴とする重合性組成物。TIFF2022092141000012.tif56139【選択図】なし

Description

本発明は、重合性組成物、硬化物、及び硬化物の製造方法に関する。
光照射により速やかに硬化することのできる感光性組成物は、コーティング剤やインキ、接着剤、各種フォトレジストに適用されている。
一般に感光性組成物は、光重合開始剤、ラジカル重合性化合物のほかに、用途に応じて着色剤等の添加剤が配合される。着色剤等の添加剤は、照射する光を吸収して光を減衰させたり、照射する光を遮蔽してしまうため、塗布された塗膜の深部にまで光が届かなくなり、硬化性が不足するという問題がある。
上記問題を解決するために、特許文献1には、分子内に過酸化結合(-O-O-)を有し、光または熱によりラジカルを発生するトリアジンペルオキシド誘導体を含有する組成物が記載されており、光硬化性と熱硬化性を併せ持つデュアル硬化タイプの重合性組成物は、光照射後に加熱することにより、硬化性の向上が可能であることが開示されている。
一方、液晶表示素子は、軽量化やフレキシブル化等のため、従来のガラス基板から樹脂基板に変更することが検討されている。樹脂基板はガラス基板と比較して耐熱性が劣るため、従来の材料のように液晶表示素子の製造に必要な高温処理ができない等の問題があった。特許文献2では、特定の熱重合架橋剤および特定のベンゾフェノン系化合物を含有する組成物が樹脂基板の使用に好適であると記載されている。
国際公開第2018/221177号 特開2003-113224号公報
しかしながら、特許文献2では、特定の熱重合架橋剤を必須としており、重合性組成物の構成に制限があることや、150℃以上で高温処理する必要があり、さらなる低温硬化が可能な重合性組成物が望まれている。
また、特許文献1では、トリアジンペルオキシド誘導体と硬化促進剤を含有した重合性組成物を熱硬化する場合、低温で硬化できることが示唆されているが、熱硬化は光硬化に比べて硬化に時間がかかるため、硬化時に不均一な収縮が生じることで、塗膜表面の平滑性が損なわれるという問題があることが分かった。
本発明の目的は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、低温かつ短時間で十分に硬化することができ、表面平滑性に優れる硬化物が得られる重合性組成物を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、一般式(1):
Figure 2022092141000001
(式(1)中、R及びRは独立してメチル基またはエチル基を表す。Rは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。Xは下記一般式(2):Ar、Ar、ArまたはArで表されるアリール基である。nは0から2の整数を表す。)
Figure 2022092141000002
(式(2)中、mは0から3の整数を表す。Rは、独立した置換基であって、炭素数1から6のアルキル基、一般式(3):R-Y-で表される置換基、ニトロ基、またはシアノ基を表す。前記Yは、酸素原子または硫黄原子を表す。前記Rは、炭素骨格中に、エーテル結合、チオエーテル結合、及び、末端に水酸基のいずれか1つ以上を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。あるいは、Rは隣接する2つの前記一般式(3):R-Y-により5~6員環を形成してもよい。)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体と、コバルト系硬化促進剤と、ラジカル重合性化合物とを含む重合性組成物に関する。
また、本発明は、前記重合性組成物から形成される硬化物に関する。
また、本発明は、前記重合性組成物を加熱する工程を含む硬化物の製造方法に関する。
本発明の重合性組成物は、前記トリアジンペルオキシド誘導体と、コバルト系硬化促進剤と、ラジカル重合性化合物とを含有するものである。一般的に、硬化促進剤としては、例えば、アミン化合物、チオ尿素化合物、バナジウム、コバルト、銅等の第4周期遷移金属化合物合物等が知られているが、本発明では、コバルト系硬化促進剤を用いることで、低温かつ短時間で十分に硬化することができ、かつ表面平滑性に優れる硬化物が得られる。
本発明の重合性組成物は、下記一般式(1)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体と、コバルト系硬化促進剤と、ラジカル重合性化合物とを含有する。
<トリアジンペルオキシド誘導体>
本発明のトリアジンペルオキシド誘導体は、下記一般式(1)で表すことができる。前記トリアジンペルオキシド誘導体は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
Figure 2022092141000003
(式(1)中、R及びRは独立してメチル基またはエチル基を表す。Rは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。Xは下記一般式(2):Ar、Ar、ArまたはArで表されるアリール基である。nは0から2の整数を表す。)
Figure 2022092141000004
(式(2)中、mは0から3の整数を表す。Rは、独立した置換基であって、炭素数1から6のアルキル基、一般式(3):R-Y-で表される置換基、ニトロ基、またはシアノ基を表す。前記Yは、酸素原子または硫黄原子を表す。前記Rは、炭素骨格中に、エーテル結合、チオエーテル結合、及び、末端に水酸基のいずれか1つ以上を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。あるいは、Rは隣接する2つの前記一般式(3):R-Y-により5~6員環を形成してもよい。)
前記一般式(1)中、R及びRは独立してメチル基またはエチル基を表す。前記トリアジンペルオキシド誘導体に含まれる過酸化結合の開裂温度が高いほど重合性組成物の貯蔵安定性が向上する観点から、R及びRはメチル基が好ましい。
前記一般式(1)中、Rは、炭素数が1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基である。前記アルキル基は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、フェニル基、イソプロピルフェニル基が挙げられる。これらの中でも、前記トリアジンペルオキシド誘導体の合成が容易である観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、フェニル基であることが好ましい。前記トリアジンペルオキシド誘導体の分解温度が高いため重合性組成物の貯蔵安定性が高くなり、照射光に対する感度が高い点から、メチル基、エチル基であることがより好ましい。
前記一般式(1)中の、nは、0から2の整数で表される。トリアジンペルオキシド誘導体の合成が容易である観点から、nが0または1であることが好ましい。nが0の場合においては、XがAr、Ar、またはArであり、nが1の場合においては、XがArであることが、照射光を効率よく吸収し、硬化物の黄色度が低減できる観点から、より好ましい。
前記一般式(2)中の、mは、0から3の整数で表される。トリアジンペルオキシド誘導体の合成が容易である観点から、mが0から2であることが好ましく、照射光を効率よく吸収する観点から、mが1であることがより好ましい。
前記一般式(2)中の、Rは、独立した置換基であって、炭素数1から6のアルキル基、一般式(3):R-Y-で表される置換基、ニトロ基、またはシアノ基を表す。Yは、酸素原子または硫黄原子を表す。前記Rは、炭素骨格中に、エーテル結合、チオエーテル結合、および、末端に水酸基のいずれか1つ以上を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。あるいは、Rは隣接する2つの前記一般式(3):R-Y-により5~6員環を形成してもよい。
前記Rは、照射光を効率よく吸収する観点から、独立した置換基であって、炭素数1から6のアルキル基、または一般式(3):R-Y-で表される置換基を表し、Yは、酸素原子を表し、Rは、炭素骨格中に、エーテル結合、および、末端に水酸基のいずれか1つ以上を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基であることが好ましい。あるいは、Rは隣接する2つの前記一般式(3):R-X-により5~6員環を形成することが好ましい。
前記Rの具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ヘキシル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2-ヒドロキシエトキシ基、2-メトキシエトキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-ブトキシエトキシ基、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ基、2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ基、1,2-ジヒドロキシプロポキシ基、メチレンジオキシ基、ジメチルメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基等のアルコキシ基;フェニルオキシ基、4-イソプロピルフェニルオキシ基等のアリールオキシ基;メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、ヘキシルスルファニル基、2-メトキシエチルスルファニル基、2-(2-メトキシエトキシ)エチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基、2-メチルフェニルスルファニル基、4-メチルフェニルスルファニル基等のアリールスルファニル基等が挙げられる。これら官能基を有する一般式(1)で表される化合物は、365nmの吸光度が高く、照射光を効率よく吸収するため好ましい。
さらに、これらの中でも、前記トリアジン誘導体の重合性組成物への溶解性が高く、合成が容易であり、照射光に対する感度が高い観点から、前記Rは、メトキシ基、エトキシ基、2-ヒドロキシエトキシ基がより好ましい。
前記Rの置換位置は、特に限定されないが、XがArの場合、Rの少なくとも一つが、トリアジン基が置換されたベンゼン環の4位に置換されていることが好ましい。また、XがArの場合、Rの少なくとも一つが、トリアジン基が置換されたベンゼン環とは別のベンゼン環の4位に置換されていることが好ましい。また、XがArの場合、Rの少なくとも一つが、1位に置換されたトリアジン基の4位に置換されていることが好ましい。また、XがArの場合、Rの少なくとも一つが、トリアジン基が置換されたベンゼン環とは別のベンゼン環の4位に置換されていることが照射光を効率よく吸収するため好ましい。
以下に本発明のトリアジンペルオキシド誘導体の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2022092141000005
Figure 2022092141000006
Figure 2022092141000007
Figure 2022092141000008
本発明のトリアジンペルオキシド誘導体としては、好ましくは化合物19、化合物23、化合物25、化合物26、化合物27、化合物28、化合物31、化合物32、化合物33、化合物35、化合物37、化合物38、化合物39、化合物40、化合物41、化合物42、化合物43、化合物44、化合物46、化合物47、化合物48が挙げられ、より好ましくは化合物25、化合物26、化合物31、化合物32、化合物35、化合物37、化合物38、化合物41、化合物44、化合物47、化合物48が挙げられる。
<コバルト系硬化促進剤>
前記コバルト系硬化促進剤としては、例えば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ロダン酸コバルト等の脂肪酸コバルト塩が挙げられ、オクチル酸コバルトおよび/またはナフテン酸コバルトが好ましく、オクチル酸コバルトがより好ましい。前記コバルト系硬化促進剤は、単独でもよく2種類以上を併用してもよい。
<ラジカル重合性化合物>
前記ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和基を有する化合物を好ましく用いることができる。前記ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン類、マレイン酸エステル類、フマル酸エステル類、イタコン酸エステル類、桂皮酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、ビニルケトン類、アリルエーテル類、アリルエステル類、N-置換マレイミド類、N-ビニル化合物類、不飽和ニトリル類、オレフィン類等が挙げられる。これらの中でも、反応性が高い(メタ)アクリル酸エステル類を含むことが好ましい。前記ラジカル重合性化合物は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記(メタ)アクリル酸エステル類は、単官能化合物及び多官能化合物を使用することができる。前記単官能化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2―エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコールとのエステル化合物;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有するモノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等の鎖状または環状のエーテル結合を有するモノマー等;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等の窒素原子を有するモノマー;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有するモノマー;リン酸2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル等のリン原子を有するモノマー;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のケイ素原子を有するモノマー;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有するモノマー;(メタ)アクリル酸、コハク酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、マレイン酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有するモノマー等が挙げられる。
前記多官能化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)フェニル)フルオレン等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-(メタ)アクリロイルチオフェニル)スルフィド、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸ジルコニウム、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。
なお、前記重合性組成物は、前記ラジカル重合性化合物から得られた共重合体を加えることができる。
前記トリアジンペルオキシド誘導体の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.1から40質量部であることが好ましく、0.5から20質量部であることがより好ましく、1から15質量部であることがさらに好ましい。トリアジンペルオキシド誘導体の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部未満では硬化反応が進行しないため好ましくない。また、トリアジンペルオキシド誘導体の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、40質量部より多い場合、ラジカル重合性化合物への溶解度が飽和に達し、重合性組成物の成膜時にトリアジンペルオキシド誘導体の結晶が析出し、皮膜表面の荒れが問題になる場合や、トリアジンペルオキシド誘導体の分解残渣の増加により、硬化物の塗膜の強度が低下する場合があるため、好ましくない。
前記コバルト系硬化促進剤の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.01から20質量部であることが好ましく、0.1から10質量部であることがより好ましく、0.1から5質量部であることがさらに好ましい。コバルト系硬化促進剤の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.01質量部未満では硬化促進作用が発現しないため好ましくない。また、コバルト系硬化促進剤の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、20質量部より多い場合、硬化物の塗膜の強度が低下する場合があるため、好ましくない。
<溶媒>
前記重合性組成物は、粘度や塗装性、硬化膜の平滑性の改良のため、さらに溶媒を加えることができる。本発明で使用できる溶媒は、前記トリアジンペルオキシド誘導体、前記コバルト系硬化促進剤、前記ラジカル重合性化合物を、溶解または分散することができるものであり、乾燥温度において揮発する溶媒であれば、特に制限されるものではない。
前記溶媒としては、炭化水素系溶媒や不飽和炭化水素系溶媒等の非プロトン性溶媒や、水、アルコール系溶媒、カルビトール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、ラクトン系溶媒、セロソルブアセテート系溶媒、カルビトールアセテート系溶媒やプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。溶媒は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記溶媒の使用量は、重合性組成物の固形分100質量部に対して、1から1000質量部であることが好ましく、2から500質量部であることがより好ましい。溶媒の使用量は、重合性組成物の固形分100質量部に対して1質量部未満では塗工性が悪化するため好ましくない。また、溶媒の使用量は、重合性組成物の固形分100質量部に対して1000質量部より多い場合、熱硬化性が悪化するため好ましくない。
<重合性組成物>
本発明の重合性組成物は、前記トリアジンペルオキシド誘導体、前記コバルト系硬化促進剤、前記ラジカル重合性化合物を含有する。また、重合性組成物は、その他の成分を適宜組み合わせて含有させることができる。
<その他の成分>
前記その他の成分として、重合性組成物には、コーティング剤や塗料、印刷インキ、感光性印刷版、接着剤、カラーレジストやブラックレジスト等の各種フォトレジスト等の用途で一般的に使用されている添加剤を配合できる。添加剤としては、例えば、増感剤(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、9,10-ジブトキシアントラセン、クマリン、ケトクマリン、アクリジンオレンジ、カンファーキノン等)、重合禁止剤(p-メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、フェノチアジン等)、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、表面調整剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、接着促進剤、可塑剤、エポキシ化合物、チオール化合物、エチレン性不飽和結合を有する樹脂、飽和樹脂、着色染料、蛍光染料、顔料(有機顔料、無機顔料)、炭素系材料(炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、黒鉛化カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、カーボンエアロゲル等)、金属酸化物(酸化チタン、酸化イリジウム、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ等)、金属(銀、銅等)、無機化合物(ガラス粉末、層状粘度鉱物、マイカ、タルク、炭酸カルシウム等)、分散剤、難燃剤等が挙げられる。添加剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記添加剤の含有量は、使用目的に応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、通常、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、500質量部以下でありことが好ましく、100質量部以下であることより好ましい。
<重合性組成物の調製方法>
前記重合性組成物を調製する場合には、収納容器内に前記トリアジンペルオキシド誘導体、前記コバルト系硬化促進剤、前記ラジカル重合性化合物、必要に応じて、前記溶媒、その他の成分を投入し、ペイントシェーカー、ビーズミル、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、2本ロールミル、3本ロールミル等を用いて、常法に従って溶解または分散させればよい。また、必要に応じて、メッシュまたはメンブレンフィルター等を通してもろ過してもよい。
なお、前記重合性組成物の調製において、前記トリアジンペルオキシド誘導体および前記コバルト系硬化促進剤は、重合性組成物に最初から添加しておいてもよいが、重合性組成物を比較的長時間保存する場合には、前記トリアジンペルオキシド誘導体と前記コバルト系硬化促進剤は、使用直前にラジカル重合性化合物を含む組成物中に溶解または分散させることが好ましい。
<硬化物の製造方法>
本発明の硬化物は、前記重合性組成物から形成されるものである。硬化物の製造方法は、重合性組成物を基板上に塗布後、当該重合性組成物を加熱する工程を含む製造方法である。また、加熱する工程の前に活性エネルギー線で照射する工程を含んでもよい。とくに、光照射により素早く表面を硬化した後、加熱によりさらに硬化することで、表面平滑性に優れる硬化膜を得ることができる。
前記塗布方法としては、例えば、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法、スリットコート法、ドクターブレードコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法等の種々の方法が挙げられる。また、前記基板は、例えば、ガラス、シリコンウエハ、金属、プラスチック等のフィルムやシート、及び立体形状の成形品等が挙げられ、基板の形状が制限されることは無い。
前記重合性組成物を加熱する工程において、加熱する手法は、例えば、加熱、通風加熱等が挙げられる。加熱の方式としては、特に制限されることはないが、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線照射、電磁波照射等が挙げられる。また、通風加熱の方式としては、例えば、送風式乾燥オーブン等が挙げられる。
前記活性エネルギー線は、活性エネルギー線の波長が250から450nmの光であることが好ましい。前記光の照射の光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線無電極ランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、太陽光、YAGレーザー等の固体レーザー、半導体レーザー、アルゴンレーザー等のガスレーザー等を使用することができる。前記活性エネルギー線の露光量は、活性エネルギー線の波長や強度等に応じて適宜設定すべきである。
前記重合性組成物を加熱する工程において、加熱温度は、80から140℃であることが好ましく、100から130℃であることがより好ましい。この温度であれば、樹脂基材等を劣化させることなく硬化することができる。また、加熱時間は、1から180分であることが好ましく、5から120分であることがより好ましい。
前記重合性組成物の乾燥膜厚(硬化物の膜厚)は、用途に応じて適宜設定されるが、0.05μmから500mmであることが好ましく、0.1μmから10mmであることがより好ましい。
本発明の重合性組成物は、カラーレジスト、ブラックレジスト、カラーフィルター用保護膜、フォトスペーサー、ブラックカラムスペーサー、額縁レジスト、TFT配線用フォトレジスト、層間絶縁膜等のFPD用レジスト;液状ソルダーレジスト、ドライフィルムレジスト等のプリント基板用レジスト;半導体レジスト、バッファーコート膜等の半導体用材料;オフセット印刷インキ、グラビア印刷インキ、スクリーン印刷インキ、インクジェット印刷インキ、導電性インキ、絶縁性インキ、導光板用インキ等の印刷インキ;感光性印刷版;ナノインプリント材料;3Dプリンター用樹脂;ハードコート剤、光ディスク用コート剤、光ファイバー用コート剤、モバイル端末用塗料、家電用塗料、化粧品容器用塗料、木工用塗料、光学素子用内面反射防止塗料、高・低屈折率コート剤、遮熱コート剤、放熱コート剤、防曇剤等の塗料・コーティング剤;ホログラフィー記録材料;歯科用材料;導波路用材料;レンズシート用ブラックストライプ;コンデンサ用グリーンシート及び電極材料;FPD用接着剤、HDD用接着剤、光ピックアップ用接着剤、イメージセンサー用接着剤、有機EL用シール剤、タッチパネル用OCA、タッチパネル用OCR等の接着剤・シール剤等の各種用途に使用でき、その用途に特に制限は無い。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(1)重合性組成物の調製
表1に示す量のラジカル重合性化合物、トリアジンペルオキシド誘導体、熱重合開始剤、硬化促進剤、溶媒を混合撹拌し、実施例1~5及び比較例1~4の重合性組成物を調製した。
(2)硬化性の評価
上記で調製した重合性組成物を、ガラス基板上にバーコーターを用いて厚さ100μmに塗布した。塗布後90℃のオーブンで2.5分間乾燥させた後、高圧水銀ランプが設置されたコンベア式UV照射装置を使用して30mJ/cmの照射を行った。次いで、100℃のオーブン中で30分間加熱し、硬化膜を得た。得られた硬化膜の重合転化率を測定し、硬化性を以下の基準で評価した。なお、重合転化率は、減衰全反射赤外分光法(ATR-IR)にて測定し、その際、二重結合基由来の吸収スペクトル(810cm-1)のピーク面積Aおよび露光前後で変化のないカルボニル基由来の吸収スペクトル(1740cm-1)のピーク面積Bを用いて、以下の式に基づいて重合転化率を算出した。結果を表1に示す。
重合転化率=(1-(硬化後のA/B)/(硬化前のA/B))×100
◎:重合転化率が80%以上
〇:重合転化率が60%以上80%未満
×:重合転化率が60%未満
(3)表面平滑性の評価
上記で得られた硬化膜の表面におけるしわの有無を、光学顕微鏡にて70μm×70μmの視野で観察し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
〇:表面にマイクロメートルオーダーのシワが観察されない
×:表面にマイクロメートルオーダーのシワが目立つ
Figure 2022092141000009
上記表1中、TMPTAはトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業製);
PE4Aは、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(富士フイルム和光純薬試薬);
パーブチルOは、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油製);
PGMEAは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(シグマ アルドリッチ ジャパン試薬);
ミネラルピリットは、石油系炭化水素の混合溶剤;を示す。
表1の結果から、トリアジンペルオキシド誘導体とコバルト系硬化促進剤とラジカル重合性化合物を含む重合性組成物では、表面平滑性に優れ、低温でも十分に硬化することが可能であることが明らかである。

Claims (5)

  1. 一般式(1):
    Figure 2022092141000010
    (式(1)中、R及びRは独立してメチル基またはエチル基を表す。Rは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。Xは下記一般式(2):Ar、Ar、ArまたはArで表されるアリール基である。nは0から2の整数を表す。)
    Figure 2022092141000011
    (式(2)中、mは0から3の整数を表す。Rは、独立した置換基であって、炭素数1から6のアルキル基、一般式(3):R-Y-で表される置換基、ニトロ基、またはシアノ基を表す。前記Yは、酸素原子または硫黄原子を表す。前記Rは、炭素骨格中に、エーテル結合、チオエーテル結合、及び、末端に水酸基のいずれか1つ以上を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6~9の芳香族炭化水素基を表す。あるいは、Rは隣接する2つの前記一般式(3):R-Y-により5~6員環を形成してもよい。)で表されるトリアジンペルオキシド誘導体と、コバルト系硬化促進剤と、ラジカル重合性化合物を含有することを特徴とする重合性組成物。
  2. 前記コバルト系硬化促進剤が、オクチル酸コバルトおよび/またはナフテン酸コバルトであることを特徴とする請求項1記載の重合性組成物。
  3. 請求項1または2記載の重合性組成物から形成されることを特徴とする硬化物。
  4. 請求項1または2記載の重合性組成物を加熱する工程を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
  5. 前記加熱する工程は、加熱温度が80~140℃であることを特徴とする請求項4に記載の硬化物の製造方法。
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