JP2022091173A - オキシトシン増加剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】オキシトシン量を増加させるのに有用な製剤の提供。【解決手段】1,5-アンヒドロ-D-グルシトールを含む、オキシトシン増加剤。【選択図】図1
Description
本発明は、オキシトシン増加剤に関する。
脳は自己の体内統合性とその制御に必須の役割を果たしているが、他者との共存、すなわち調和のとれた社会的共同生活の遂行(社会的生存)にも大きな役割を果たしている。後者に関しては、脳の視床下部の室傍核及び視索上核の神経内分泌細胞で合成され、分泌されるオキシトシンが大きな役割を果たすことが近年明らかになっている(非特許文献1)。オキシトシンは、通称「幸せ・愛情ホルモン」と呼ばれ、例えば、犬と飼い主の関係性において、犬と飼い主が見つめ合うことで、犬、飼い主ともにオキシトシンが増加することが報告されている。これがオキシトシンが愛情ホルモンと呼ばれる所以であり、視線とオキシトシンとにより犬と飼い主の間で正のループが促進される(非特許文献2)。保健的適用、また自閉症、発達障害、統合失調症などの精神・神経疾患への治療的適用が期待されている。統合失調症や自閉症の治療における、オキシトシンの経鼻投与の有用性が報告されている(例えば、非特許文献3)。精神・神経疾患とオキシトシンとの関係についても様々な研究が行われており、統合失調症患者の脳脊髄液のオキシトシン濃度と陰性症状が反比例することが報告されている(非特許文献4)。さらに、オキシトシンの経鼻投与には陰性症状の改善効果を有することが報告されている(非特許文献5)。
またオキシトシンには多彩な生理活性機能があることも知られている。オキシトシンは、例えば、子宮収縮、射乳、摂食抑制、信頼・社交性維持、不安・ストレス緩和、アルコール摂取抑制、骨形成、精子輸送、疼痛閾値上昇等に寄与している。
オキシトシンの経鼻投与が肥満者の摂食抑制に有効であるという報告がある(非特許文献6)。また過食症の患者では脳脊髄内のオキシトシン濃度が低下しており、中枢性オキシトシン摂食抑制作用の減弱が過食の一因であると考えられる(非特許文献7)。
オキシトシンは9アミノ酸からなる分子量1007のペプチドホルモンであり、経口投与では消化酵素により分解されるため体内に吸収されない。血中のオキシトシン濃度を高めるには、オキシトシンを直接体内に投与する方法が考えられるが、静脈単回投与後の半減期は1~6分程度であり、オキシトシンの血中半減期が極めて短いため、その作用を持続させることが難しいという問題がある。また、経鼻投与されたオキシトシンは体内に吸収されるものの、脳内移行率は低いという指摘もある。したがって、経鼻投与よりも簡便な経口投与によって、オキシトシン量を効果的に増加させることができる薬剤の開発が望まれている。
アルロースは、自然界に希少に存在する分子量180の単糖であり、最近、酵素の発見により酵素的にグルコースやフルクトースから合成できるようになった食品成分である。このアルロースについても、経口摂取によってオキシトシンが増加することが報告されている(特許文献1)。しかし、還元糖であるため安定性が悪いという問題があった。
Rilling JK, and Young LJ., Science 345:771-776 (2014)
Nagasawa M, et al., Science, 348: 333-336 (2015)
Guastella AJ., et al., Schizophr Res., 168(3):628-633 (2015)
Sasayama D., et al., Schizophr Res., 139(1-3):201-206 (2012)
Ota M., et al., Postgrad Med., (2018)130(1):122-128. doi: 10.1080/00325481.2018.1398592.Epub(2017)Nov 6. PMID: 29105546
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Demitrack MA., et al., Am. J. Psychiatry. 147(7):882-886 (1990)
本発明は、オキシトシン量を増加させるのに有用な製剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、1,5-アンヒドロ-D-グルシトール(1,5-AG)の投与によりオキシトシン量が顕著に増加することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1]1,5-アンヒドロ-D-グルシトールを含む、オキシトシン増加剤。
[2]上記[1]に記載のオキシトシン増加剤を含む、オキシトシン増加用食品。
[3]上記[1]に記載のオキシトシン増加剤を含む、オキシトシン増加用飼料。
[4]上記[1]に記載のオキシトシン増加剤を含む、オキシトシン増加用医薬。
[5]オキシトシン欠乏を伴う疾患又は状態を有する対象におけるオキシトシン増加用の、上記[4]に記載の医薬。
[6]前記疾患が精神・神経疾患である、上記[5]に記載の医薬。
[1]1,5-アンヒドロ-D-グルシトールを含む、オキシトシン増加剤。
[2]上記[1]に記載のオキシトシン増加剤を含む、オキシトシン増加用食品。
[3]上記[1]に記載のオキシトシン増加剤を含む、オキシトシン増加用飼料。
[4]上記[1]に記載のオキシトシン増加剤を含む、オキシトシン増加用医薬。
[5]オキシトシン欠乏を伴う疾患又は状態を有する対象におけるオキシトシン増加用の、上記[4]に記載の医薬。
[6]前記疾患が精神・神経疾患である、上記[5]に記載の医薬。
本発明によれば、オキシトシンの体内量を増加させる製剤を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、体内のオキシトシン増加作用を有する、1,5-アンヒドロ-D-グルシトールと、その用途に関する。
本発明は、体内のオキシトシン増加作用を有する、1,5-アンヒドロ-D-グルシトールと、その用途に関する。
1,5-アンヒドロ-D-グルシトール(1,5-AG)は、下記の化学構造を有する単糖であり、グリコーゲンの代謝産物であると考えられている。ヒトなど動物の血液中に存在し、ヒト母乳には牛乳や乳児用調整乳の10~20倍の1,5-AGが含まれている。
1,5-AGは、公知の1,5-AG製造法により製造することができる。例えば、まずデンプン又はグリコーゲンのような多糖類をα-1,4グルカンリアーゼで分解し、未反応物をエタノール等で沈殿させ、上清からクロマトグラフィー法等により1,5-アンヒドロ-D-フルクトース(1,5-AF)を分離する。この1,5-AFを原料として、酵母の発酵により1,5-AGを製造することができる(特許第5075376号公報、天然糖1,5-アンヒドログルシトールの調製と甘味特性及び物理化学的特性の評価、日本応用糖質科学会誌、9巻・ 3号、p.195-199(2019-08)の記載参照)。α-1,4グルカンリアーゼは、植物、動物、真菌、又は細菌に由来するものであってよく、以下に限定されるものではないが、例えば、紅藻ツルシラモ又はオゴノリ由来、又はアミガサタケ属(Morchella)等のキノコ由来であってもよい。α-1,4グルカンリアーゼは市販品を用いることもできる。1,5-AFの製造は、非特許文献7に記載の方法に従って行うこともできる。また、1,5-AFの大量生産方法が確立されており(Fujisue M. et al., J. Appl.,Glycosi., 46, 439-444 (1999))、株式会社サナス(日本、旧社名:日本澱粉工業株式会社)から食品素材として市販されているものを利用してもよい。あるいは市販の1,5-AF含有製品を1,5-AFの供給源として用いてもよい。
本発明では、1,5-AGを、オキシトシン増加のために用いることができる。本発明は、1,5-AGを含むオキシトシン増加剤を提供する。本発明のオキシトシン増加剤は1,5-AGを有効量で含むものであってよい。本発明のオキシトシン増加剤は、1,5-AGを有効成分として含み、かつ任意に他の成分を含む、組成物であってもよい。他の成分としては、例えば、担体、結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤、懸濁化剤、pH調整剤、安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、着色剤等の添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のオキシトシン増加剤は、1,5-AGに加えて、他の有効成分を含んでもよい。
オキシトシン増加効果は、1,5-AGを投与した動物の脳脊髄液、血液、乳、尿等の生体試料中のオキシトシン濃度を測定することによって評価することができる。あるいは、オキシトシン増加効果は、1,5-AGを投与した非ヒト動物由来の脳内のオキシトシン産生部位におけるオキシトシンの発現量をRNAレベル又はタンパク質レベルで測定することによって評価することもできる。好ましくは、1,5-AGの投与により、オキシトシン濃度又は発現量の測定値を、1,5-AGの投与前の測定値又は1,5-AGを投与していない対照動物の測定値と比較して、典型的には1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上に増加させることができる。1,5-AGは、安定であり体内での代謝を全く受けないため(Nakamura S, et al., Effects of 1,5-anhydroglucitol on postprandial blood glucose and insulin levels and hydrogen excretion in rats and healthy humans., British Journal of Nutrition, 118: 81-91, 2017)、本発明に係るオキシトシン増加剤によりオキシトシンを持続的に増加させることができる。
本発明はまた、1,5-AG、又は本発明に係るオキシトシン増加剤を含む、オキシトシン増加用の、食品、飼料、及び医薬を提供する。本発明に係る食品、飼料、及び医薬は、1,5-AG、又は本発明に係るオキシトシン増加剤を有効量で含むことができる。
オキシトシンは多彩な生理活性を有し、オキシトシンの補充は様々な疾患又は状態の改善に有用であることが知られている。したがって本発明に係る、オキシトシン増加用の、食品、飼料、及び医薬は、体内のオキシトシン量の増加が望まれる様々な疾患又は状態を有する対象に対し、オキシトシン増加させる目的で有効に用いることができる。本発明に係るオキシトシン増加用の医薬は、そのような疾患又は状態の治療薬として用いられ得る。本発明において「治療」は、疾患又は状態から完全に回復させることだけでなく、その症状や病状(好ましくはオキシトシン欠乏に起因する症状又は病状)を改善することや、疾患又は状態の進行を遅らせるか又は停止させることも包含する。
体内のオキシトシン量の増加が望まれる疾患又は状態は、オキシトシン活性と関連する疾患又は状態である。体内のオキシトシン量の増加が望まれる疾患又は状態は、オキシトシン欠乏を伴う疾患又は状態であってもよいし、オキシトシン欠乏に起因する疾患又は状態であってもよい。オキシトシン欠乏を伴う疾患は、例えば、精神・神経疾患であり得る。そのような精神・神経疾患では、通常、脳内のオキシトシンが欠乏しており、脳内のオキシトシン量の増加が望まれる。体内のオキシトシン量の増加が望まれる疾患又は状態は、脳内のオキシトシン量の増加が望まれる疾患又は状態であってもよい。あるいは、体内オキシトシン量の増加が望まれる疾患又は状態は、オキシトシンが欠乏しているか否かにかかわらず、オキシトシンの投与又は増加が症状の改善をもたらすことができる疾患又は状態であってもよい。「オキシトシン欠乏」とは、体内オキシトシンが完全に欠如(遺伝的又は後天的に欠如)していること、及び体内オキシトシン量が健常状態(健常対象)よりも有意に低下していることを指す。
本発明はまた、1,5-AG、又は本発明に係るオキシトシン増加剤を含む、オキシトシン欠乏リスク又はオキシトシン欠乏に起因する疾患又は状態の発症リスクを低減するための、食品、飼料、及び医薬も提供する。
なお、本発明において「疾患」は、疾病及び障害を包含する。本発明において「状態」とは、特定の疾患を有してはいないが、体内のオキシトシン量が健常状態にはない(異常に低い)ことを指す。
体内のオキシトシン量の増加が望まれる疾患又は状態としては、以下に限定するものではないが、例えば、自閉症、発達障害、アスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラム障害、統合失調症、うつ病、不安障害、過食症、依存症(アルコール依存症など)等の精神・神経疾患;急性又は慢性疼痛、陣痛遅滞又は微弱陣痛、乳汁分泌不全、不妊症、骨粗鬆症、ストレス過多、乳幼児のスキンシップ不足等が挙げられる。
1,5-AGの投与は、オキシトシン増加を介して中枢性に満腹感の形成を早め、食欲を抑制し、それにより摂食を抑制することもできる。したがって本発明は、1,5-AG、又は本発明に係るオキシトシン増加剤を含む、食欲抑制(又は、摂食抑制若しくは摂食量低減)のための、食品、飼料、又は医薬も提供する。
本発明において「食品」は、ヒトの食物を指し、飲料であってもよいしその他の食品であってもよい。飲料以外の食品は、惣菜、菓子、乳製品、インスタント食品、調味料、食品添加物等の任意の食品であってよい。本発明に係る食品は、任意の食品素材を含んでよい。本発明に係る食品は、1,5-AG、又は本発明に係るオキシトシン増加剤に加えて、他の成分を含む食品組成物であってもよい。他の成分は、食品素材であってもよいし、食品添加剤などの食品製造において許容される添加剤であってもよい。他の成分は、例えば、担体、結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤、懸濁化剤、pH調整剤、安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、着色剤等の添加剤であり得るが、これらに限定されない。
本発明において食品は、機能性食品であってもよい。本発明において「機能性食品」は、生体に対して一定の機能性を有する食品を意味し、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、特別用途食品(病者用食品、妊産婦・授乳婦用粉乳、乳児用調製粉乳、高齢者用食品、介護用食品等)、栄養補助食品、美容食品、サプリメント(例えば、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル及び液剤などの各種剤形のもの)等を包含する。本発明の機能性食品はまた、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康食品を包含する。
本発明に係る機能性食品は、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤等の固形製剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤等の液体製剤、又はジェル剤やペースト剤等であってもよいし、通常の食品形状であってもよい。
また、食品に対し、1,5-AG、又は本発明に係るオキシトシン増加剤を直接配合する場合のみならず、1,5-AGの食肉用家畜への投与により、そのオキシトシン作用のうちストレス軽減・リラックス効果を利用して、ストレスホルモン(コルチゾールやカテコラミンなど)含有の少ない食肉(「ストレスフリー食肉」と命名)を生産することができる。食用家畜の種類としては、豚、牛、馬、羊、山羊、鳥類(鶏、鶉など)が挙げられる。
本発明において「飼料」は、非ヒト動物に与えるための餌を指す。本発明に係る飼料は、例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット等の愛玩動物用の飼料であってもよい。本発明に係る飼料は、任意の飼料素材を含んでよい。本発明に係る飼料は、1,5-AG、又は本発明に係るオキシトシン増加剤に加えて、他の成分を含む飼料組成物であってもよい。他の成分は、飼料素材であってもよいし、飼料添加剤などの飼料製造において許容される添加剤であってもよい。他の成分は、例えば、担体、結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤、懸濁化剤、pH調整剤、安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、着色剤等の添加剤であり得るが、これらに限定されない。本発明に係る飼料は、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤等の固形製剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤等の液体製剤、又はジェル剤やペースト剤等であってもよいし、通常の飼料形態であってもよい。
本発明において「医薬」は、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤等の固形製剤、液剤、懸濁剤、注射剤、シロップ剤等の液体製剤、ジェル剤、エアロゾル剤、スプレー剤、坐剤、クリーム剤等の任意の剤形に製剤化されたものであってよい。本発明に係る医薬は、医薬組成物であってよい。
本発明に係る医薬は、1,5-AG、又は本発明に係るオキシトシン増加剤に加えて、他の成分、例えば、製薬上許容される添加剤を含んでもよい。製薬上許容される添加剤としては、例えば担体、結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤、懸濁化剤、pH調整剤、安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、着色剤等が挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、製剤の剤形に応じて、添加剤等を適宜選択することができる。
1,5-AG、又は本発明に係るオキシトシン増加剤、あるいはそれらを含む食品、飼料、又は医薬を投与する対象(典型的には、患者)として、ヒト、サル等の霊長類、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の家畜動物、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット、マウス、ラット等の任意の哺乳動物を挙げることができる。好ましい一実施形態では、投与対象は、上記のような体内のオキシトシン量の増加が望まれる疾患又は状態を有する対象、例えばオキシトシン欠乏を伴う疾患又は状態(精神・神経疾患等)を有する対象であり得る。別の実施形態では、投与対象は、例えば、ストレス過多の状態にある対象又はスキンシップ不足の状態にある乳幼児であり得る。別の実施形態では、投与対象は、例えば、過食症患者などの食欲亢進の症状を有する対象であり得る。食欲亢進の症状を有する対象は、肥満であるか又は肥満になることが懸念される状態の対象であってもよいが、痩せており肥満になることは直ちに懸念されない対象であってもよい。
1,5-AG、又は本発明に係るオキシトシン増加剤、あるいはそれらを含む食品、飼料、又は医薬は、それ自体公知の種々の方法で投与することが可能である。投与量、投与経路、投与間隔、投与期間等は、対象の年齢や体重、身体状態、他の薬剤や治療法との併用等を考慮して適宜決定することができる。
投与量は、剤形、投与経路、投与間隔、対象の症状や身体状態等により調節することができるが、例えば、1,5-AGの量で、体重1kg当たり0.1μg~10g、好ましくは10μg~1gであってよい。一実施形態では、1,5-AGの量で、10mg~1g/kg体重、例えば400mg~800mg/kg体重の投与量を用いることもできる。これらの投与量は、1回で投与してもよいし、一日数回に分けて投与してもよい。
投与経路は、特に制限されないが、例えば、経口、経鼻、胃内、筋肉内、舌下、経腸、経腟、経皮、経皮、経気管支、静脈投与、動脈投与、脳内(例えば側脳室内などの脳室内)、髄腔内、点眼、点耳、埋め込み等の経路で投与してもよい。本発明は、特に、低分子薬剤の経口投与又は脳内投与によりオキシトシン量を増加できる点で有利である。
本発明は、1,5-AG、又は本発明に係るオキシトシン増加剤、あるいはそれらを含む食品、飼料、又は医薬を、上述のようにして上記対象に投与することを含む、対象におけるオキシトシン増加方法も提供する。本発明はまた、1,5-AG、又は本発明に係るオキシトシン増加剤、あるいはそれらを含む食品、飼料、又は医薬を、上記対象に投与することを含む、オキシトシン欠乏を伴う疾患又は状態、例えば精神・神経疾患におけるオキシトシン増加方法も提供する。本発明はまた、1,5-AG、又は本発明に係るオキシトシン増加剤、あるいはそれらを含む食品、飼料、又は医薬を、上記対象に投与することを含む、オキシトシン欠乏を伴う疾患若しくは状態(例えば精神・神経疾患)の治療若しくは予防方法、又はオキシトシン欠乏の治療若しくは予防方法も提供する。さらに本発明は、1,5-AG、又は本発明に係るオキシトシン増加剤、あるいはそれらを含む食品、飼料、又は医薬を、上記対象に投与することを含む、食欲抑制方法、摂食抑制方法、又は摂食量低減方法も提供する。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)1,5-AGによるオキシトシン増加効果
<実験方法>
1.1,5-アンヒドロ-D-グルシトールの調製
1,5-アンヒドロ-D-グルシトール(1,5-AG)は、既報(天然糖1,5-アンヒドログルシトールの調製と甘味特性及び物理化学的特性の評価、日本応用糖質科学会誌、9巻・3号、p.195-199(2019-08))に従い、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースを原料としてパン酵母の発酵により調製した結晶1,5-AGを用いた。
2.1,5-AGの投与液の調製
結晶1,5-AGを、純水に溶解し20%w/wとしたものを投与液とした。
3.1,5-AGのミニ豚への投与実験(血中動態試験)
1)動物:成獣雌雄マイクロミニピッグ9頭
2)カテーテル留置
試験開始前に鎮静麻酔、アトロピン前処置後、イソフルラン吸入麻酔下で、頚部皮膚切開部位に局所麻酔を施し、片側頚静脈にカテーテルを留置した。術後は3日間、鎮痛剤、抗生剤投与による獣医学的ケアを施しながら、約1週間の休閑(回復)期間を設け、試験に供与した。カテーテルは毎日、ヘパリン生理食塩水でフラッシュ及びロック管理した。
3)投与方法
投与量は40mg/kgとした。投与は無保定・無麻酔下のストレスのない状況下で実施した。静脈投与は、上記頚静脈カテーテルよりワンショット(ボーラス)で投与した。経口投与は、専用チューブを用いて直接ワンショット(ボーラス)で飲ませた。
4)採血
無保定・無麻酔下のストレスのない状況下で、頚静脈カテーテルより経時的に採血した。採血ポイントは、0、0.5、1、2、4、6、8、12、24、48時間後とした。採血後の血液は、EDTA入り採血管に分注し、氷冷保管後(5~20分)、3000rpm、15分間遠心分離し、上澄み・血漿を回収し、オキシトシン及び1,5-AG測定まで-80℃で保管した。
5)血中オキシトシン濃度の測定
解凍した血漿3mlを、C18(ODS)結合シリカゲルを封入したカートリッジに供し、その後、そのカートリッジを10mlの0.1%トリフルオロ酢酸で洗浄し、アセトニトリルと0.1%トリフルオロ酢酸の比率が95:5の混合液を3ml通液して溶出画分を回収し、遠心エバポレータで乾固した後に150μLのアッセイバッファーに溶解させ、オキシトシンの測定に供した。測定はEnzo Life Sciences社製Oxytocin ELISA kitを用いた。
6)血中1,5-AG濃度の測定
上記の分注血漿(未濃縮)中の1,5-AG濃度を、日本化薬(株)製ラナ1,5-AGオートリキッドを用いて測定した。血漿5μLに前処理液150μLを添加し、37℃で1時間インキュベーションし、75μLの発色液を添加し37℃で5分間インキュベーションした後、光路長1cmのセルを用いて546nmの吸収を測定した。
7)実験終了後
実験終了後は、上記同様の麻酔下で頚静脈カテーテルを抜去し、上記同様に術後獣医学的ケアを施し、さらに1~2週間の休閑(回復)期間を設けたあと、予備飼育動物とした。
8)動物倫理・法令等の遵守への対応
本動物実験は、鹿児島大学内の動物実験委員会による承認を得た上で、鹿児島大学動物実験指針に準拠して行った。
<実験方法>
1.1,5-アンヒドロ-D-グルシトールの調製
1,5-アンヒドロ-D-グルシトール(1,5-AG)は、既報(天然糖1,5-アンヒドログルシトールの調製と甘味特性及び物理化学的特性の評価、日本応用糖質科学会誌、9巻・3号、p.195-199(2019-08))に従い、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースを原料としてパン酵母の発酵により調製した結晶1,5-AGを用いた。
2.1,5-AGの投与液の調製
結晶1,5-AGを、純水に溶解し20%w/wとしたものを投与液とした。
3.1,5-AGのミニ豚への投与実験(血中動態試験)
1)動物:成獣雌雄マイクロミニピッグ9頭
2)カテーテル留置
試験開始前に鎮静麻酔、アトロピン前処置後、イソフルラン吸入麻酔下で、頚部皮膚切開部位に局所麻酔を施し、片側頚静脈にカテーテルを留置した。術後は3日間、鎮痛剤、抗生剤投与による獣医学的ケアを施しながら、約1週間の休閑(回復)期間を設け、試験に供与した。カテーテルは毎日、ヘパリン生理食塩水でフラッシュ及びロック管理した。
3)投与方法
投与量は40mg/kgとした。投与は無保定・無麻酔下のストレスのない状況下で実施した。静脈投与は、上記頚静脈カテーテルよりワンショット(ボーラス)で投与した。経口投与は、専用チューブを用いて直接ワンショット(ボーラス)で飲ませた。
4)採血
無保定・無麻酔下のストレスのない状況下で、頚静脈カテーテルより経時的に採血した。採血ポイントは、0、0.5、1、2、4、6、8、12、24、48時間後とした。採血後の血液は、EDTA入り採血管に分注し、氷冷保管後(5~20分)、3000rpm、15分間遠心分離し、上澄み・血漿を回収し、オキシトシン及び1,5-AG測定まで-80℃で保管した。
5)血中オキシトシン濃度の測定
解凍した血漿3mlを、C18(ODS)結合シリカゲルを封入したカートリッジに供し、その後、そのカートリッジを10mlの0.1%トリフルオロ酢酸で洗浄し、アセトニトリルと0.1%トリフルオロ酢酸の比率が95:5の混合液を3ml通液して溶出画分を回収し、遠心エバポレータで乾固した後に150μLのアッセイバッファーに溶解させ、オキシトシンの測定に供した。測定はEnzo Life Sciences社製Oxytocin ELISA kitを用いた。
6)血中1,5-AG濃度の測定
上記の分注血漿(未濃縮)中の1,5-AG濃度を、日本化薬(株)製ラナ1,5-AGオートリキッドを用いて測定した。血漿5μLに前処理液150μLを添加し、37℃で1時間インキュベーションし、75μLの発色液を添加し37℃で5分間インキュベーションした後、光路長1cmのセルを用いて546nmの吸収を測定した。
7)実験終了後
実験終了後は、上記同様の麻酔下で頚静脈カテーテルを抜去し、上記同様に術後獣医学的ケアを施し、さらに1~2週間の休閑(回復)期間を設けたあと、予備飼育動物とした。
8)動物倫理・法令等の遵守への対応
本動物実験は、鹿児島大学内の動物実験委員会による承認を得た上で、鹿児島大学動物実験指針に準拠して行った。
<実験結果>
1,5-AGを静脈から投与したところ、投与後に血中オキシトシン濃度が上昇し、2時間後にピークに達した(図1)。また、血液中の1,5-AG濃度は、投与前は約20μg/mlであったが、投与1時間後には140μg/mlに達し、その後減少した(図2)。さらに、1,5-AGを経口投与したところ、静脈投与と同様に血中オキシトシンの増加を認めた(図3)。これらの結果から、1,5-AGの静脈投与、及び経口投与によりオキシトシンが増加することが示された。
1,5-AGを静脈から投与したところ、投与後に血中オキシトシン濃度が上昇し、2時間後にピークに達した(図1)。また、血液中の1,5-AG濃度は、投与前は約20μg/mlであったが、投与1時間後には140μg/mlに達し、その後減少した(図2)。さらに、1,5-AGを経口投与したところ、静脈投与と同様に血中オキシトシンの増加を認めた(図3)。これらの結果から、1,5-AGの静脈投与、及び経口投与によりオキシトシンが増加することが示された。
本発明は、オキシトシン量の増加が望まれる対象(患者等)の治療に用いることができる。本発明によれば、オキシトシンと関連する精神・神経疾患の症状を改善するための薬剤を提供することができる。
Claims (6)
- 1,5-アンヒドロ-D-グルシトールを含む、オキシトシン増加剤。
- 請求項1に記載のオキシトシン増加剤を含む、オキシトシン増加用食品。
- 請求項1に記載のオキシトシン増加剤を含む、オキシトシン増加用飼料。
- 請求項1に記載のオキシトシン増加剤を含む、オキシトシン増加用医薬。
- オキシトシン欠乏を伴う疾患又は状態を有する対象におけるオキシトシン増加用の、請求項4に記載の医薬。
- 前記疾患が精神・神経疾患である、請求項5に記載の医薬。
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