JP2022091057A - シート状耐熱材の製造方法および積層体 - Google Patents

シート状耐熱材の製造方法および積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性に優れ、気体に対する遮蔽性が高いシート状耐熱材を製造し得るシート状耐熱材の製造方法、および、かかるシート状耐熱材の製造方法により製造されたシート状耐熱材を複数積層してなる積層体を提供する。【解決手段】本発明のシート状耐熱材の製造方法は、無機繊維を主成分とするシートと、前記シートの少なくとも一方の面側に設けられ、少なくとも前記シートと反対側の面に、細孔を有する被膜とを備えるシート状耐熱材を製造する方法であって、前記シートと、含水珪酸マグネシウムおよび樹脂粒子を含む水分散液とを用意し、前記シートの少なくとも一方の面側に前記水分散液を付与して乾燥することにより、乾燥膜を形成し、前記乾燥膜が形成された前記シートを300~650℃の焼成温度で焼成することにより、前記樹脂粒子の少なくとも一部を分解することにより除去して、前記被膜を得ることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、シート状耐熱材の製造方法および積層体に関する。
近年、リチウムイオン電池等の高出力、高容量の充電池がモバイル機器、工具、自動車、鉄道、航空機等に広く用いられるようになっている。これらの充電池は、損傷や内部の不純物によって短絡が生じると、内部エネルギーが熱として瞬間的に放出され、充電池の劣化の加速や発火を生じさせる場合がある。
自動車等の用途では、特に高出力、高容量の充電池が必要となるため、多数の単電池を積層した組電池の状態(バッテリーパックまたは集合体と呼ばれることもある。)で使用されることが多い。この場合、1つの単電池の不具合が、隣接する単電池に及ぶことが懸念される。
例えば、特許文献1の充電池では、温度を測定して、異常を検出することが提案されている。しかしながら、特許文献1の充電池では、異常を検知できるものの、1つの単電池に不具合が生じた場合、その不具合が隣接する単電池に及ぶことを防止できない。
1つの単電池の不具合が、隣接する単電池に及ぶことを防止するためには、単電池同士の間に不燃性のシート状耐熱材(耐熱断熱シート)を配置することが考えられる。
シート状耐熱材の候補としては、ガラス繊維からなるガラスウール(グラスウール)、ガラスペーパー、ガラスクロス等が挙げられる。これらは、室温近辺の耐熱材として優れた材料である。しかしながら、これらの材料は、通気性が高いため、換言すれば、気体に対する遮蔽性が低いため、高温の空気、燃焼ガス、火炎が通過してしまうという問題がある。
シート状耐熱材としては、ガラス繊維等の無機繊維からなる不織布と、無機繊維の表面を被覆するように付着したセピオライトとを有する無機繊維シートも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献2の無機繊維シートは、ハニカムフィルタに使用することを想定しており、気体に対する遮蔽性が未だ不十分であり、また、単電池が重い場合や、電池の組み付け時の圧力が大きい場合、シートの厚みが減少して断熱性が低下してしまう。
特開2010-212192号公報 特開2018-193663号公報
本発明の目的は、耐熱性に優れ、気体に対する遮蔽性が高いシート状耐熱材を製造し得るシート状耐熱材の製造方法、および、かかるシート状耐熱材の製造方法により製造されたシート状耐熱材を複数積層してなる積層体を提供することにある。
このような目的は、下記の(1)~(14)の本発明により達成される。
(1) 無機繊維を主成分とするシートと、前記シートの少なくとも一方の面側に設けられ、少なくとも前記シートと反対側の面に、細孔を有する被膜とを備えるシート状耐熱材を製造する方法であって、
前記シートと、含水珪酸マグネシウムおよび樹脂粒子を含む水分散液とを用意し、
前記シートの少なくとも一方の面側に前記水分散液を付与して乾燥することにより、乾燥膜を形成し、
前記乾燥膜が形成された前記シートを300~650℃の焼成温度で焼成することにより、前記樹脂粒子の少なくとも一部を分解することにより除去して、前記被膜を得ることを特徴とするシート状耐熱材の製造方法。
(2) 前記水分散液中に含まれる固形分全量に対して、前記含水珪酸マグネシウムが占める割合が10~50質量%であり、前記樹脂粒子が占める割合が50~90質量%である上記(1)に記載のシート状耐熱材の製造方法。
(3) 前記樹脂粒子の平均粒子径が、10~250nmである上記(1)または(2)に記載のシート状耐熱材の製造方法。
(4)前記細孔の径が、20~200nmである上記(1)~(3)のいずれかに記載のシート状耐熱材の製造方法。
(5) 前記焼成温度が、550~650℃である上記(1)~(4)のいずれかに記載のシート状耐熱材の製造方法。
(6) 前前記焼成の後に、さらに、前記被膜の前記シートと反対側の面に、シランカップリング剤を付与し、乾燥する上記(1)~(5)のいずれかに記載のシート状耐熱材の製造方法。
(7) 前記水分散液が、さらに、シランカップリング剤を含む上記(1)~(6)のいずれかに記載のシート状耐熱材の製造方法。
(8) 前記被膜の厚さが、30~500μmである上記(1)~(7)のいずれかに記載のシート状耐熱材の製造方法。
(9) 前記含水珪酸マグネシウムが、セピオライトおよびアタバルジャイトからなる群より選択される少なくとも1種を含む上記(1)~(8)のいずれかに記載のシート状耐熱材の製造方法。
(10) 前記無機繊維の繊維径が、3~13μmである上記(1)~(9)のいずれかに記載のシート状耐熱材の製造方法。
(11) 前記シートの密度が、0.1~0.4g/cmである上記(1)~(10)のいずれかに記載のシート状耐熱材の製造方法。
(12) 前記シートの坪量が、10~500g/mである上記(1)~(11)のいずれかに記載のシート状耐熱材の製造方法。
(13) 前記シート状耐熱材の通気度が、20cc/cm/sec以下である上記(1)~(12)のいずれかに記載のシート状耐熱材の製造方法。
(14) 上記(1)~(13)のいずれかに記載のシート状耐熱材の製造方法により製造されたシート状耐熱材を複数積層してなることを特徴とする積層体。
本発明によれば、含水珪酸マグネシウムを所定の量で含む被膜を設けたので、耐熱性に優れ、気体(火炎や高温ガス)に対する遮蔽性も高い。特に、被膜が微細な細孔を有するため、細孔内に空気を封じ込めることができ、被膜を介した熱伝導の防止効果にも優れる。
実施例2で得られたシート状耐熱材の表面の電子顕微鏡写真である。 比較例1で得られたシート状耐熱材の表面の電子顕微鏡写真である。 比較例2で得られたシート状耐熱材の表面の電子顕微鏡写真である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明のシート状耐熱材の製造方法を説明するのに先立って、かかる製造方法により製造されるシート状耐熱材について説明する。
本発明におけるシート状耐熱材は、無機繊維を主成分とするシートと、このシートの少なくとも一方の面側に設けられ、少なくとも最表面(シートと反対側の面)に、細孔を有する被膜とを備えている。
かかるシート状耐熱材は、基部となるシートが無機繊維を主成分として構成されるため、優れた耐熱性を有するとともに、十分な機械的強度を確保することができる。また、シート状耐熱材は、シートを金属、耐火セメント材等で構成する場合と比較して軽量化することもできる。
シートの主成分である無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、グラスウール、ロックウール、バサルト繊維のような溶融岩石繊維、アルミナ繊維のようなセラミック繊維、炭化ケイ素繊維等を用いることができる。かかる無機繊維は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、無機繊維としては、特にガラス繊維が好ましい。ガラス繊維は、安価であり、導電性を有さないためである。また、ガラス繊維を主成分とするシートは、カットするときのカット刃の損耗が少ないことからも好適である。
ガラス繊維には、一般的なEガラス繊維の他、高強度のSガラス繊維、耐酸性に優れるCガラス繊維等を使用することができる。コストを低減する観点からは、安価なEガラス繊維を使用することが好ましい。
なお、ガラス繊維の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、扁平形等であってもよい。
無機繊維としてガラス繊維を使用する場合、ガラス繊維は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機繊維の繊維径は、3~13μm程度であることが好ましく、5~10μm程度であることがより好ましい。
無機繊維の繊維径が上限値以下であることにより、無機繊維同士の接触点および交絡点を十分に確保して、シートの機械的強度の低下を好適に防止または抑制することができる。また、無機繊維同士間の空隙が狭くなることで、加熱された空気の通過、空隙内の対流が起こり難くなり、シート状耐熱材の断熱効果を高め易い。さらに、シート状耐熱材の引っ張り強度が高まり、ハンドリングし易くなる。
一方、無機繊維の繊維径が3μm未満では、世界保健機関(WHO)により定義された「WHO吸入性繊維(呼吸により体内に吸入され、肺まで到達する繊維状物質をいい、長さ5μm超、直径3μm未満、アスペクト比3超のもの)」に該当するため、健康への影響が懸念され、使用上の制限もある。したがって、無機繊維の繊維径は、3μm以上であることが望ましい。
また、無機繊維の繊維径が下限値以上であることにより、無機繊維同士の間の空隙を保持する力を確保し易い。そのため、シートが吸湿または吸水して、吸着水の毛細管力で上記空隙が閉塞されるのを回避し易い。
また、例えば、シート状耐熱材を単電池同士の間に配置して組電池を構成した場合でも、単電池間の圧縮力によって、シート状耐熱材全体としての厚さが減少することも防止し易い。
したがって、特に、シートの厚さ減少に伴う断熱性の低下を防止または抑制することができるとともに、無機繊維同士の間の接触点が増加して、シート状耐熱材の熱伝導率が上昇するのも回避することができる。
無機繊維は、繊維径の異なる複数種を組み合わせて使用してもよい。この場合、無機繊維同士の間の空隙のサイズが小さくなることによる断熱性向上効果および表面平滑化効果と、無機繊維同士の接触点おび交絡点の確保による引っ張り強度向上効果とが得られる。また、シートの厚さを確保して、上記空隙を維持することが可能となる。
無機繊維の繊維長は、1~25mm程度であることが好ましく、3~20mm程度であることがより好ましく、5~15mm程度であることがさらに好ましい。
無機繊維の繊維長が下限値以上であることにおり、シートを製造する工程において、無機繊維(シート)の機械的強度を確保することができる。
一方、無機繊維の繊維長が上限値以下であることにより、無機繊維の捩れによる結束が発生し難く、地合い(厚さおよび繊維密度の均一性)を良好に保持することができる。
また、シートは、必要に応じて、有機繊維を含有してもよい。有機繊維としては、例えば、ポリオレフィン繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテルイミド繊維、ビニロン繊維、ポリカーボネート繊維、エチレン-ビニルアセテート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維のような化学繊維等が挙げられる。
その他、シートは、必要に応じて、架橋剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、着色剤、濡れ剤、粘剤、歩留向上剤、紙力向上剤、濾水剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、ピッチコントロール剤のような助剤、珪酸カルシウム、シリカエアロゾル、ヒュームドシリカ、プラスチックピグメント、中空ガラスビーズ、シラスバルーンのような充填剤等を含有してもよい。
シートは、無機繊維の他、無機繊維同士を結着する無機または有機のバインダーを含んでもよい。
バインダーとしては、結着性および耐熱性を有し、金属に対する腐食性が低い化合物が好適である。
無機バインダーとしては、各種無機セメント類、各種ガラス類等の他、含水珪酸マグネシウム、コロイダルシリカ、シリカゾル、アルミナゾル等が挙げられる。
一方、有機バインダーとしては、各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂等が挙げられる。有機バインダーの形態としては、例えば、パウダー、粒子、繊維、エマルション、溶液、ワニス等が挙げられる。
有機バインダーの具体例としては、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。
中でも、発熱量が少ないことから、有機バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)が好適であり、耐水性に優れることから、アクリル樹脂エマルションが好適である。
また、有機バインダーには、溶融接着性を有さないが、微細にフィブリル化して交絡する能力が高いアラミドパルプ、アラミドファイブリット、ポリエチレンパルプ、アクリルパルプ、木材由来パルプ、草由来パルプ等も使用することができる。
以上のような有機バインダーは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
有機バインダーの添加量を多くする程、シート(シート状耐熱材)の機械的強度が向上する。しかしながら、有機バインダーを多量に含むと、シートの熱収縮率が増大して、耐熱性が低下し易い。また、シート状耐熱材が加熱された場合、有機バインダーが酸化により発熱したり、分解ガスを発生したりするおそれがある。
したがって、シート中の有機バインダーの含有量は、できる限り少ない方がよく、20質量%未満であることが好ましく、15質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることがさらに好ましい。
なお、シート中に含まれる無機繊維の量は、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であってもよい。
シートの密度は、特に限定されないが、0.1~0.4g/cm程度であることが好ましく、0.1~0.3g/cm程度であることがより好ましく、0.1~0.2g/cm程度であることがさらに好ましい。
シートの密度が下限値以上であることにより、シート内の対流を抑制し易く、シート状耐熱材の機械的強度も確保し易い。
一方、シートの密度が上限値以下であることにより、シート状耐熱材の熱伝導を抑制し易い。
シートの坪量は、特に限定されないが、10~500g/m程度であることが好ましく、15~400g/m程度であることがより好ましく、20~300g/m程度であることがさらに好ましい。
シートの坪量が下限値以上であることにより、シートが断熱効果を発揮し易く、シート状耐熱材の機械的強度も確保し易い。
一方、シートの坪量が上限値以下であることにより、シート状耐熱材の厚さが不要に大きくなるのを防止することができる。
このようなシートの少なくとも一方の面側に、含水珪酸マグネシウムを所定の量で含む被膜が設けられている。
ここで、本発明における被膜は、無機繊維の外周を覆う形態の膜ではなく、シートの厚さ方向の端部に設けられる形態の膜(表面層)である。
本発明におけるシートは、無機繊維の集合体であるため、上述したように、無機繊維同士の間に多数の空隙が存在し、通気性が高い。これに対して、被膜を設けることにより、シート状耐熱材全体として、気体(火炎や高温ガス)に対する遮蔽性を高めることができる。
なお、この被膜は、無機繊維が存在しない領域(すなわち、上記空隙が存在する領域)では、シートの内側に向かって若干凹んでいてもよい。
ただし、かかる被膜を設けた場合、シート状耐熱材全体としての熱伝導率が上昇することが懸念される。そこで、本発明では、被膜の少なくとも最表面(シートと反対側の面)に、細孔を設けることとした。これにより、細孔内に空気を封じ込めることができ、被膜を介した熱伝導の防止効果も十分に得られる。なお、細孔は、被膜の内部にも存在していてもよい。
細孔の径は、20~200nm程度であることが好ましく、25~150nm程度であることがより好ましく、50~100nm程度であることがさらに好ましい。かかる径の細孔を被膜に設けることにより、シート状耐熱材の熱伝導率の上昇をより確実に防止することができる。
なお、本明細書中において、細孔の径とは、平面視形状が円形の場合、その直径を意味し、平面視形状が不定形(楕円形)の場合、その最短の長さ(短径)を意味する。
含水珪酸マグネシウムは、塗膜形成能力が高い。このため、含水珪酸マグネシウムを多く含む被膜は、高密度の膜となる。その結果、シート状耐熱材は、気体に対する高い遮蔽性を発揮することができる。
含水珪酸マグネシウムとしては、例えば、セピオライト、アタバルジャイト、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、セリサイト、イライト、グローコナイト、クロライト、タルク等、またはこれらの混合物が挙げられる。
中でも、含水珪酸マグネシウムは、セピオライトおよびアタバルジャイトからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。かかる含水珪酸マグネシウムは、塗膜形成能力が特に高く、乾燥後の膜(被膜)のひび割れが生じ難い結果、その機械的強度が高くなり易い。
セピオライトは、天然に産出する粘土鉱物の1種であり、独特の鎖状粒子構造を有する。このセピオライトには、成因の違いにより、α型とβ型とが存在する。
α型セピオライト(従来、山皮とも呼ばれる。)は、高温高圧下における熱水作用を受けて生成され、結晶化度が高く、長繊維で明瞭な繊維状形態を示す。
一方、β型セピオライトは、浅海底や湖底での堆積作用により生成され、結晶化度が低く、短繊維で塊状または粘土状形態を示す。
β型セピオライトは、人体に対する安全上好ましくない石英等の結晶性シリカの含有量(不純物含有量)が比較的少ないことから好ましい。
β型セピオライトの中でも、結晶性シリカの含有量が少ない産地のセピオライトを選択して用いることが望ましい。結晶性シリカは、シート(シート状耐熱材)の切断時に刃物の損耗を早めるため、結晶性シリカの含有量は少ない方が好ましい。
結晶性シリカの含有量は、X線粉末回折法で、結晶性シリカのピーク強度を標準サンプルのピーク強度と比較して定量することができる。
シート状耐熱材における結晶性シリカの含有量は、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましい。
被膜は、その厚さ方向に貫通してシートの内部空間(無機繊維同士の間の空隙)に連通し、径が1μm以上の連通孔を有していてもよい。かかる連通孔を被膜が有すれば、例えば、単電池同士の間に結露が発生した場合、水滴を被膜から断熱材内部に誘導、拡散させ、系外に排出し易くなる効果が期待できる。
連通孔の径は、100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。この場合、被膜の機械的強度が低下するのを好適に防止することができる。
被膜の厚さは、特に限定されないが、30~500μm程度であることが好ましく、50~300μm程度であることがより好ましい。この場合、被膜の機械的強度を十分に確保しつつ、被膜による気体(火炎や高温ガス)の遮蔽性をより高め易い。
被膜中の含水珪酸マグネシウムの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。このように、多くの含水珪酸マグネシウムを含むことにより、被膜がより高密度の膜となる結果、シート状耐熱材の気体に対する遮蔽性がより向上する。
被膜は、含水珪酸マグネシウムの他、適宜、他の無機材料を含んでもよい。他の無機材料としては、例えば、シリカエアロゲル、ヒュームドシリカ、トバモライト、ゾノトライトのような多孔粒子や、マイカ、雲母のような遮蔽性材料、炭化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、アルミニウムのような輻射散乱または吸収材、色調整の顔料等が挙げられる。
被膜は、さらに、有機化合物を含んでもよい。具体的に、被膜は、例えば、耐水性付与を目的としてフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂や、シランカップリング剤を含むことが好ましい。中でも、シランカップリング剤は、含水珪酸マグネシウムの粒子同士を連結することができ、よって、被膜の機械的強度(膜強度)をより高めることができる。その結果、シート状耐熱材を切断する際の粉落ちを抑制し易い。また、含水珪酸マグネシウムの粒子同士がシランカップリング剤を介して連結されることで、被膜の耐水性が高まる効果も期待できる。
なお、シランカップリング剤は、被膜の最表面にのみ存在してもよく、被膜の内部にも存在してもよい。
かかるシランカップリング剤には、例えば、官能基としてビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基を有するシラン化合物等を使用することができる。これらのシランカップリング剤は、高い疎水性を有する。このため、被膜の耐水性をより向上させることができ、シートが吸湿または吸水して、無機繊維同士の間の空隙が閉塞されるのを回避し易くなる。
また、含水珪酸マグネシウムの質量のシート状耐熱材の全質量に対して占める割合(すなわち、シート状耐熱材中のシート状耐熱材の含有量)は、50質量%以下であることが好ましく、1~50質量%程度であることがより好ましい。この場合、シート状耐熱材の気体に対する高い遮蔽性を維持しつつ、熱伝導率が不要に上昇するのを防止することができる。
なお、被膜は、シートの一方の面側にのみ設けてもよいが、シートの双方の面側に設けることが好ましい。かかる構成により、上述した効果をより向上させることができる。
また、本発明のシート状耐熱材は、その厚さ方向に配設された複数のシートを含んでいてもよい。この場合、隣り合うシート同士の間には、被膜に相当する中間膜(中間層)が設けられてもよい。なお、かかる構成のシート状耐熱材を本発明の積層体と言うこともできる。
以上のようなシート状耐熱材の通気度は、20cc/cm/sec以下であることが好ましく、0.1~10cc/cm/sec程度であることが好ましい。かかる通気度を有するシート状耐熱材であれば、気体に対する遮蔽性が十分に高いと判断することができる。
シート状耐熱材の坪量は、特に限定されないが、20~500g/m程度であることが好ましく、40~400/m程度であることがより好ましく、50~300g/m程度であることがさらに好ましい。
シート状耐熱材の坪量が下限値以上であることにより、シート状耐熱材が断熱効果を発揮し易く、その機械的強度も確保し易い。
一方、シート状耐熱材の坪量が上限値以下であることにより、その厚さが不要に大きくなるのを防止することができる。
シート状耐熱材の厚さも、特に限定されないが、0.05~5mm程度であることが好ましく、0.1~2.5mm程度であることがより好ましく、0.5~1.5mm程度であることがさらに好ましい。
シート状耐熱材の厚さが下限値以上であることにより、シート状耐熱材の十分な断熱効果を得易い。
一方、シート状耐熱材の厚さが上限値以下であることにより、シート状耐熱材を使用した構造物(例えば、組電池)の全体の厚さを小さくすることができる。
シート状耐熱材の空隙率も、特に限定されないが、90~95%程度であることが好ましく、91~93%程度であることがより好ましい。
シート状耐熱材の空隙率が上記範囲であることにより、シート状耐熱材が断熱効果を発揮し易く、その機械的強度も確保し易い。
以上のようなシート状耐熱材は、本発明のシート状耐熱材の製造方法により好適に製造することができる。
本発明のシート状耐熱材の製造方法は、上記シートと、上記含水珪酸マグネシウムおよび樹脂粒子を含む水分散液とを用意し、シートの少なくとも一方の面側に水分散液を付与して乾燥することにより、乾燥膜を形成し、乾燥膜が形成されたシートを300~650℃の焼成温度で焼成することにより、樹脂粒子の少なくとも一部を分解することにより除去して、被膜を得る方法である。
シートは、乾式法または湿式法により、無機繊維の不織布として作製することができる。中でも、シートの作製方法には、湿式法を使用することが好ましい。湿式法によれば、無機繊維を折損することが少なく、また地合いが良好なシートを作製し易い。
湿式法では、無機繊維、必要に応じて、バインダー等の任意成分を含むスラリーを、抄紙することにより、無機繊維の不織布が得られる。
バインダー以外の任意成分としては、例えば、分散剤、保液剤、粘度調整剤、pH調整剤、充填剤等が挙げられる。
得られた不織布が熱溶融タイプのバインダーを含む場合、無機繊維同士をサーマルボンド法により結合することにより、シートを得ることができる。
一方、不織布が熱溶融タイプのバインダーを含まない場合、無機繊維同士を交絡させることにより、シートを得ることができる。この無機繊維同士の交絡は、スラリーへのフィブリル化繊維の添加、微細繊維の添加、ニードルパンチ、ウォータジェットによる水流交絡等により行うことができる。
なお、抄紙には、公知の抄紙機を用いることができる。抄紙機としては、例えば、円網抄紙機、傾斜型抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機等が挙げられる。また、これらの抄紙機の同種または異種を組み合わせて使用することにより、多層抄紙を行ってもよい。
シートに水分散液を付与する方法としては、例えば、カーテン塗布、ロール塗布、バー塗布、ブレード塗布、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷のような各種塗布法が挙げられる。
水分散液は、シートの表面のみに留まることが好ましい。そのため、水分散液の粘度は、比較的高いことが好ましい。具体的には、水分散液の25℃における回転円錐-平板レオメーターによる粘度は、20~100000mPa・s程度であることが好ましく、100~10000mPa・s程度であることがより好ましい。
樹脂粒子としては、例えば、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂から選択される樹脂の粒子を用いることができる。なお、上記樹脂は、変性されていてもよい。
かかる樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
なお、樹脂粒子を形成する樹脂は、上記樹脂を構造する単位を2種以上含む共重合体であってもよく、2種以上の上記樹脂の混合物であってもよい。後者の場合、樹脂粒子は、2種以上の上記樹脂の混合物からなる単一粒子であってもよく、2種以上の上記樹脂によるコア/シェル構造を有する複合粒子であってもよい。コア/シェル構造を有する複合粒子の具体例としては、ポリスチレンのコアがスチレンブタジエン共重合体やメタクリル酸メチル等のシェルで被覆された粒子が挙げられる。
また、樹脂粒子は、バルク重合により合成された樹脂を粉砕して得られた樹脂粒子であってもよく、乳化重合により合成された樹脂粒子(樹脂エマルション)であってもよい。樹脂エマルションの具体例としては、アクリル樹脂エマルションが挙げられる。
目的の径を有する細孔を被膜に確実に形成する観点から、樹脂のガラス転移点(Tg)は、高い方が好ましい。
樹脂のガラス転移点の具体的な値は、-5℃以上であることが好ましく、0~150℃程度であることがより好ましく、10~120℃程度であることがさらに好ましい。かかるガラス転移点を有する樹脂粒子を使用することにより、樹脂粒子の加熱による熱変形を抑制しつつ分解を開始させることができる。
なお、樹脂粒子がコア/シェル構造を有する複合粒子である場合、コアを形成する樹脂のガラス転移点を上記範囲とすることが好ましい。
このガラス転移点は、樹脂の動的粘弾性測定(DMA)によって求められる値である。
樹脂粒子の平均粒子径は、焼成の際の樹脂粒子の収縮を考慮して設定される。
樹脂粒子の平均粒子径の具体的な値は、10~250nm程度であることが好ましく、50~200nm程度であることがより好ましい。かかる平均粒子径の樹脂粒子を使用することにより、被膜に形成される細孔の径を所定の範囲により確実に設定することができる。
なお、平均粒子径は、体積に基づいた粒子径分布において、全粒子量に対する積算粒子量が50%となる粒子径(いわゆる、メディアン径)を意味する。また、平均粒子径の測定は、レーザ回折式粒度分布測定装置を使用して行うことができる。
水分散液の粘度を高めるため、水分散液中の固形分の含有量は高い方が好ましい。
具体的には、水分散液中の固形分の含有量は、10~50質量%程度であることが好ましく、15~45質量%程度であることがより好ましい。
また、固形分全量に対して、含水珪酸マグネシウムが占める割合は、10~50質量%程度(特に、15~45質量%程度)であり、樹脂粒子が占める割合は、50~90質量%程度(特に、55~85質量%程度)であることが好ましい。この場合、目的とする径の細孔を十分な数で形成し易い。
なお、水分散液には、必要に応じて、例えば、分散剤、保液剤、粘度調整剤、pH調整剤、有機バインダー、無機バインダー、充填剤等を添加してもよい。
水分散液の乾燥には、接触または非接触の乾燥方法を使用することができる。
乾燥の具体的な方法としては、例えば、熱風乾燥、赤外線乾燥、誘導乾燥、多筒ドライヤー乾燥、シリンダードライヤー乾燥等が挙げられる。
乾燥温度は、70~200℃程度であることが好ましく、100~180℃程度であることがより好ましい。
水分散液が付与されたシートを複数作製し、これらを積層した後、乾燥してもよい。この場合、厚さ方向に併設された複数のシートを含むシート状耐熱材を製造することができる。
また、水分散液は、離型シート上を付与し、静置して流動性を低下させた後、シート上に転写してもよい。さらに、水分散液を半乾燥させ、粘度を高めた後、シート上に転写してもよい。シート上に転写された未乾燥状態または半乾燥状態の水分散液を乾燥した後、離型シートを剥離する。これにより、被膜が形成される。
離型シートには、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、フッ素樹脂フィルム、シリコーン樹脂フィルム、離型紙等を好適に使用することができる。
次に、乾燥膜が形成されたシートを300~650℃程度の焼成温度で焼成する。これにより、樹脂粒子の少なくとも一部を分解することにより除去し、細孔を形成して被膜を得る。なお、樹脂粒子は、その一部のみを除去しても、全部を除去してもよい。
焼成温度は、300~650℃程度であればよいが、疎水性を高める場合は、550~650℃程度でメタセピオライト化することが好ましい。
以上のような焼成条件で、乾燥膜を焼成すれば、所定の径を有する細孔を被膜により確実に形成することができる。
その後、必要に応じて、被膜の最表面(シートと反対側の面)に、シランカップリング剤を付与し、乾燥する。
また、シランカップリング剤は、被膜の形成に使用する水分散液に添加してもよい。この場合、被膜の機械的強度および耐水性をより向上させることができる。
以上のようなシート状耐熱材を複数積層することにより、本発明の積層体が得られる。
この場合、シート状耐熱材同士の接着剤に特に制限はないが、例えば、スチレンブタジエン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤、フッ素系接着剤、澱粉系接着剤、PVA等が好ましく、先に挙げた無機バインダーである含水珪酸マグネシウム、コロイダルシリカ、アルミナゾル、シリカゾル等も併用することができる。
本発明のシート状耐熱材または積層体は、高い耐熱性を必要とする構造物に使用することができる。かかる構造物としては、例えば、組電池、電気絶縁材、電子基板のような電気機器、不燃シート、不燃ボードのような建材、断熱材、パッキン材、クッション材、ガスケットのような機械部品等が挙げられる。
組電池は、例えば、本発明のシート状耐熱材または積層体(以下、「シート状耐熱材」で代表する。)が、複数の単電池同士の間に介挿されて構成される。また、好ましくは、最下層および最上層の単電池(最外層に積層された単電池)の外側にも、シート状耐熱材が配置される。
かかる組電池は、金属製の外装体等に収容され、バッテリーパックが形成される。
各単電池は、ラミネートフィルム内に電極群と電解液が収容されて構成され、正極タブと負極タブとがラミネートフィルム外に露出する。
シート状耐熱材は、各単電池の面方向全体にわたって遮断するように配置されるが、正極タブと負極タブとは、シート状耐熱材の外方に突出する。
組電池は、単電池同士の間にシート状耐熱材が介挿されているので、仮に、1つの単電池に発熱等の不具合が生じた場合でも、その不具合が火炎や高温ガスとして隣接する単電池に悪影響を及ぼすことを防止または遅延させることができる。
また、仮に、最下層または最上層の単電池に発熱等の不具合が生じても、その不具合が他のバッテリーパックに悪影響を及ぼすことを防止または遅延させることができる。
なお、単電池は、ラミネート形単電池に限定されず、例えば、金属ケースに電極群と電解液とが収容された電池であってもよい。ただし、ラミネート形単電池は、熱の影響を受け易いため、本発明の効果をより好適に発揮させる観点から、ラミネート形単電池であることが好ましい。
以上、本発明のシート状耐熱材の製造方法および積層体について説明したが、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではない。
例えば、本発明のシート状耐熱材の製造方法および積層体は、それぞれ、上述した実施形態の構成において、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.測定方法および評価方法
1-1.坪量、厚さおよび密度
シートおよびシート状耐熱材のそれぞれの坪量をJIS P 8124:2011に規定の方法に従って測定し、それぞれの厚さをJIS P 8118:1998に準拠し、加圧面同士の間の圧力を50kPaに設定して測定した。また、密度は、坪量を厚さで除した値とした。
1-2.通気度
通気度は、JIS L 1096:2010に規定のA法(フラジール形法)に従って測定した。
1-3.厚さ保持率
各例で得られたシート状耐熱材から作製した試験片(100×100mm、厚さ1mm)を同サイズのアルミ板2枚で挟み、その上に1kgの荷重を載せて、400℃に保持したホットプレートで10分間加熱した後、試験片の厚さを測定した。厚さ保持率を下記式から算出した。
厚さ保持率(%)=[加熱後の厚さ]/[加熱前の厚さ]×100
1-4.空隙率
空隙率を下記式から算出した。
空隙率(%)=[1-(見掛け密度/真密度)]×100
見掛け密度は、一定面積のシート状耐熱材の厚さを厚さ計で計測して体積を計算するとともに、その重さを計測することによって得られる。また、真密度は、構成材料特有の比重を用いることができる。
1-5.遮炎性
各例で得られたシート状耐熱材を試験片として、ISO 9151:1995,JIS T 8021:2005に規定された「熱伝達性(火炎ばく露)試験」を行った。
すなわち、試験片の表面を、一定の熱流束(80kW/m)の火炎に、ばく露した状態で、試験片裏面に設置したセンサーで温度上昇を計測した。計測した温度上昇のデータを基に、試験片の裏面の温度が32℃から56℃に上昇するまでの時間(秒)を求め、熱伝達指数(HTI24)を算出した。
その後、HTI24を試験片の厚さで除して、火炎に対する熱遮蔽性である遮炎性(HTI24/厚さ、単位:秒/mm)を求めた。
そして、遮炎性について、以下の評価基準に従って評価した。
[評価基準]
○:HTI24/厚さが10.0秒/mm以上である。
△:HTI24/厚さが7.0秒/mm以上10.0秒/mm未満である。
×:HTI24/厚さが7.0秒/mm未満である。
1-6.形状安定性
1-3のホットプレートでの加熱を3回繰り返し、試験片の折れや割れを目視で確認するとともに、厚さの変化を測定した。なお、加熱毎に試験片を一旦取り出し、その都度試験片の外観およびハンドリング性を確認し、厚さを測定した。
そして、形状安定性について、以下の評価基準に従って評価した。
[評価基準]
〇:試験片に折れや割れが生じず、ハンドリング性に問題がない。また、初回加熱後の 厚さから、最終3回目加熱後の厚さの変化が2%未満である。
△:試験片に折れや割れが殆ど生じず、ハンドリング性に問題がない。また、初回加熱 後の厚さから、最終3回目加熱後の厚さの変化が2~5%未満である。
×:試験片に折れ、割れ、あるいは剥がれが見られる、またはハンドリング性に問題が あるか、あるいは初回加熱後の厚さから、最終3回目加熱後の厚さの変化が5%以 上である。
1-7.粉または無機繊維の脱落状況
1-3で加熱したアルミ板に付着した粉や繊維と、取り出した試験片から脱落する粉や繊維の状況を目視にて確認し、以下の評価基準に従って評価した。
[評価基準]
〇:粉または無機繊維の付着・脱落が殆ど認められない。
△:粉または無機繊維の付着・脱落がやや認められるが許容範囲である。
×:粉または無機繊維の付着・脱落が明らかに認められる。
1-8.熱伝導率
熱伝導率は、JIS A 1412-2:1999に従って定常法にて測定した。
2.シート状耐熱材の製造
(実施例1)
[シートの作製]
まず、100質量部のEガラス繊維(繊維径:10μm、繊維長:6mm)と、6質量部のポリビニルアルコール繊維(クラレ製、「VPB105」)とを混合して、混合物を得た。
次いで、混合物を0.2質量%となるように水に分散して、スラリーを得た。
その後、スラリーを湿式抄紙法により抄紙して、Eガラス繊維がランダムに配列した状態の不織布を得た。
次いで、この不織布を乾燥して、坪量200g/m、厚さ1.1mm、密度0.182g/cmのシートを作製した。
[被膜の形成]
まず、β型セピオライトおよび樹脂粒子(コア/シェル=ポリスチレン/スチレンブタジエン共重合体、平均粒子径:200nm、Tg:100℃)を含む水分散液を調製した。なお、水分散液中の固形分の含有量を30質量%とした。また、水分散液中に含まれる固形分全量に対して、β型セピオライトが占める割合を30質量%とし、樹脂粒子が占める割合を70質量%とした。
次に、この水分散液をアプリケーター(表1中、「AP」と記載する。)にて、シートの表面および裏面にそれぞれ40g/mとなるように塗布した。
次に、水分散液が塗布されたシートを、110℃で温風乾燥して、乾燥膜を形成した。
その後、乾燥膜が形成されたシートを、500℃で1時間焼成した。これにより、樹脂粒子を分解により除去して、多孔化された被膜を形成し、シート状耐熱材を得た。
なお、シート状耐熱材の坪量は213g/mであり、厚さは1mmであった。また、被膜の厚さは150μmであり、被膜の最表面と断面には短径50~100nmの不定形(楕円形)の細孔が多数存在した。
(実施例2)
水分散液中に含まれる固形分全量に対して、β型セピオライトが占める割合を50質量%とし、樹脂粒子が占める割合を50質量%とし、シートの表面および裏面への水分散液の塗布量をそれぞれ30g/mとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして、シート状耐熱材を製造した。
なお、シート状耐熱材の坪量は219g/mであり、厚さは1mmであった。また、被膜の最表面と断面には短径50~100nmの不定形(楕円形)の細孔が多数存在した。図1にシート状耐熱材の表面の電子顕微鏡写真を示す。
(実施例3)
コア/シェル樹脂粒子に代えて、乳化重合により合成されたアクリル樹脂粒子(アクリル樹脂エマルション、平均粒子径:70nm、Tg:32℃)を使用した以外は、実施例2と同様にして、シート状耐熱材を製造した。
なお、シート状耐熱材の坪量は219g/mであり、厚さは1mmであった。また、被膜の最表面と断面には短径50~80nmの不定形(楕円形)の細孔が多数存在した。
(比較例1)
水分散液中へのアクリル樹脂粒子の添加を省略した以外、すなわち、水分散液中に含まれる固形分全量に対して、β型セピオライトが占める割合を100質量%とした以外は、実施例2と同様にして、シート状耐熱材を製造した。
なお、シート状耐熱材の坪量は249g/mであり、厚さは1mmであった。また、被膜の最表面と断面には短径20~50nmの不定形(楕円形)の細孔が散見された。図2にシート状耐熱材の表面の電子顕微鏡写真を示す。
(比較例2)
乾燥膜が形成されたシートの焼成を省略した以外は、比較例1と同様にして、シート状耐熱材を製造した。
なお、シート状耐熱材の坪量は260g/mであり、厚さは1mmであった。また、被膜の最表面には細孔が確認できなかった。図3にシート状耐熱材の表面の電子顕微鏡写真を示す。
(比較例3)
シートに水分散液を含浸させた以外は、比較例1と同様にして、シート状耐熱材を製造した。
なお、シート状耐熱材の坪量は260g/mであり、厚さは1.05mmであった。また、被膜の最表面には細孔が確認できなかった。
測定および評価の結果を、以下の表1に示す。
Figure 2022091057000001
表1に示すように、各実施例で得られたシート状断熱材は、遮炎性、形状保持性、粉または無機繊維の脱落状況、熱伝導率の総ての評価結果が良好であった。これに対して、各比較例で得られたシート状断熱材は、遮炎性、形状保持性、粉または無機繊維の脱落状況、熱伝導率のうちのいずれか1以上の評価結果で劣っていた。

Claims (14)

  1. 無機繊維を主成分とするシートと、前記シートの少なくとも一方の面側に設けられ、少なくとも前記シートと反対側の面に、細孔を有する被膜とを備えるシート状耐熱材を製造する方法であって、
    前記シートと、含水珪酸マグネシウムおよび樹脂粒子を含む水分散液とを用意し、
    前記シートの少なくとも一方の面側に前記水分散液を付与して乾燥することにより、乾燥膜を形成し、
    前記乾燥膜が形成された前記シートを300~650℃の焼成温度で焼成することにより、前記樹脂粒子の少なくとも一部を分解することにより除去して、前記被膜を得ることを特徴とするシート状耐熱材の製造方法。
  2. 前記水分散液中に含まれる固形分全量に対して、前記含水珪酸マグネシウムが占める割合が10~50質量%であり、前記樹脂粒子が占める割合が50~90質量%である請求項1に記載のシート状耐熱材の製造方法。
  3. 前記樹脂粒子の平均粒子径が、10~250nmである請求項1または2に記載のシート状耐熱材の製造方法。
  4. 前記細孔の径が、20~200nmである請求項1~3のいずれか1項に記載のシート状耐熱材の製造方法。
  5. 前記焼成温度が、550~650℃である請求項1~4のいずれか1項に記載のシート状耐熱材の製造方法。
  6. 前記焼成の後に、さらに、前記被膜の前記シートと反対側の面に、シランカップリング剤を付与し、乾燥する請求項1~5のいずれか1項に記載のシート状耐熱材の製造方法。
  7. 前記水分散液が、さらに、シランカップリング剤を含む請求項1~6のいずれか1項に記載のシート状耐熱材の製造方法。
  8. 前記被膜の厚さが、30~500μmである請求項1~7のいずれか1項に記載のシート状耐熱材の製造方法。
  9. 前記含水珪酸マグネシウムが、セピオライトおよびアタバルジャイトからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1~8のいずれか1項に記載のシート状耐熱材の製造方法。
  10. 前記無機繊維の繊維径が、3~13μmである請求項1~9のいずれか1項に記載のシート状耐熱材。
  11. 前記シートの密度が、0.1~0.4g/cmである請求項1~10のいずれか1項に記載のシート状耐熱材の製造方法。
  12. 前記シートの坪量が、10~500g/mである請求項1~11のいずれか1項に記載のシート状耐熱材の製造方法。
  13. 前記シート状耐熱材の通気度が、20cc/cm/sec以下である請求項1~12のいずれか1項に記載のシート状耐熱材の製造方法。
  14. 請求項1~13のいずれか1項に記載のシート状耐熱材の製造方法により製造されたシート状耐熱材を複数積層してなることを特徴とする積層体。
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