JP2022090679A - 球状シリカ粉末の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 湿式法で製造される球状シリカは、最終製品とするために焼成を行うことが多いが、その焼成工程で焼結が生じやすく解砕を要する。しかし、従来の方法では十分な解砕状態が得られないことが多かった。【解決手段】 焼成した球状シリカ粒子の解砕に際して、旋回流型ジェットミルを用いると共に、当該ジェットミルへの焼成粒子の供給に際しての押込圧(P1)と、ジェットミル内の旋回圧と(P2)の圧力差を0.2MPa以下に維持した状態で解砕する[0≦(P1-P2)≦0.2MPa]。このような条件のもとで解砕を実施すれば、得られた球状シリカ粒子の表面に存在する実質的に全てのシラノール基が、ヘキサメチルジシラザンと反応可能な状態となる。【選択図】 図1

Description

本発明は球状シリカ粉末の製造方法に関する。詳しくは、湿式法で製造された球状シリカ粒子の解砕方法に関するものであって、焼成工程を経て凝集した球状シリカ粒子を一次粒子にまで解砕する方法、および、その解砕の程度を定量化する評価方法を提供する。
半導体封止材や液晶シール剤等の電子材料用、及びフィルム製造用等の各種樹脂組成物には、充填剤として球状シリカが配合される。
このうち半導体封止材では、デバイスの小型化、薄型化、高密度実装化の急速な進展に伴って、素子と基板間の狭ギャップ化が進み、更なる高熱伝導性、低熱膨張性、高い成形性が求められ、上記球状シリカには高充填化が求められている。その一方で、球状シリカを充填した樹脂組成物の低粘性も求められ、粗粒を含まず、単分散性に優れる予め表面処理された球状シリカへの要求も高まっている。
従来、単分散性の高い(粒子径の揃った)球状シリカ粒子を製造する方法としては、湿式法、例えば、後述するようなゾルゲル法や、珪酸アルカリを出発原料とするコロイダルシリカの製法等が知られている。湿式法の中でも、ゾルゲル法は単分散性のみならず、純度の高い球状シリカ粒子を得る方法として極めて有用である。ゾルゲル法による単分散性の高い球状シリカ粒子の製造方法は、原料となるテトラエトキシシランなどの珪素アルコキシドを、加水分解触媒、水及び有機溶媒を含む反応液中に供給して、加水分解、重縮合させる方法である。該方法においては、反応を行う際の反応条件を制御することにより粒子径や粒度分布を高度に制御できることが知られている。
特許文献1には、ゾルゲル法における反応条件を調整することによって、粒子径や粒度分布を制御し、さらに癒着粒子や凝集塊等の粗粒の発生を抑えた、単分散性の高い球状シリカ粒子の製造方法が記載されている。
前記ゾルゲル法により得られたシリカ粒子分散液中において、シリカ粒子は一次粒子として高度に分散しており、凝集塊は実質見られない。しかしながら、乾燥した粉末として取り出す場合、該分散液よりシリカを固液分離する工程、乾燥する工程、又は、必要に応じて焼成する工程等が必要となり、これらの工程後にシリカ粒子同士が強固に凝集した凝集塊が生成している場合がある。そして、一旦強固に凝集したものを、一次粒子にまで解砕することは困難であり、結果として粗粒が増加することが懸念されていた。
この様にシリカ中に粗粒が存在すると、これを配合した樹脂組成物では、その溶融時に該粗粒が樹脂の円滑な流れを阻害し流動性を低下させる。その結果、フィルム等の成形品の製造では、フィッシュアイや突起が発生する。そして、流動性が低い樹脂組成物を用いて前記半導体封止材や液晶シール剤として使用した場合には、溶融樹脂が流れた後の模様、いわゆる「フローマーク」の発生や、狭ギャップへの隙間浸透性が十分でなくなり、配線間での詰まりも生じ易くなる。
上記問題を解決するために、特許文献2では、ゾルゲル法により得られた球状シリカ粒子分散液に、特定の化合物からなる凝析剤を添加することにより、前記後工程では、強固な凝集塊を生じさせることなく、緩やかな凝集体として生成させることができ、これは樹脂に分散させる際の分散機のシェア等により一次粒子まで容易に解砕できることが記載されている。
即ち、この方法によれば、前記の如くにゾルゲル法を、球状シリカ粒子の単分散性に優れるよう制御して実施すれば、後工程で生成した凝集体は簡単な解砕処理で再び一次粒子に解せるため、シリカに粗粒は実質含まれなくなる。即ち、汎用レベルの粒度分布測定法、具体的には、レーザー回折散乱法で測定して、粒子径が5μmを超えるような粗粒は未検出になるシリカを得ることも可能である。
このような粗粒生成を低減したシリカ製造工程に続き、シリカにシランカップリング剤等の表面処理剤を添加し、粒子表面に処理を施すことによって、樹脂への分散性を向上させたり、樹脂組成物の粘度を低減させたり、樹脂組成物の強度を上げたり、様々な機能を付与することが行われている。一般に、表面処理シリカは、撹拌羽根を有する混合装置を用いて、シリカと表面処理剤とを撹拌混合し加熱処理することによって得られる。
特許文献3においては、レーザー回折散乱法による平均粒子径が0.05μm以上2.0μm以下であり、粒径分布の広がりを示す変動係数が40%以下であって、水の中に5質量%の量を、出力40W、照射時間10分という条件により超音波により分散させた分散液において、目開き5μmの電成篩を用いた湿式篩法により篩分けした際の篩上残量が10ppm以下であることを特徴とする、ゾルゲルシリカ粉末が開示されている。
また、特許文献4においては、球状シリカ粒子の表面を表面処理剤によって改質しており、レーザー回折散乱法による平均粒子径が0.05μm以上2.0μm以下であり、エタノールの中に5質量%の量を、出力40W、照射時間10分という条件により超音波により分散させた分散液において、コールターカウンター法により得られた粒度分布では、粒子径が5μm以上である粒子の含有量が個数基準で10ppm以下であることを特徴とする、表面処理シリカが開示されている。
上記2件の特許文献において、凝集粒子が極めて少ないシリカ粉末や表面処理シリカが開示されているが、その検証方法は、溶媒中にシリカ粉末を超音波分散させ、特定の粒度分布測定法を用いて粗粒量を測定するという方法であった。したがって、粉末の段階で粒子同士がどの程度解砕されていたかを判断することはできなかった。特に、乾式法によってシリカ粒子を表面処理する場合は、処理前の粉末において粒子が一次粒子にまで解砕された状態、いわゆる単分散状態であることが均一な表面処理を行う上で極めて重要となる。
特開2013-193950号公報 特開2012-6823号公報 WO2018/096876号 WO2019/044929号
しかしながら、ゾルゲル法などの湿式法で製造されたシリカは、原料由来の有機基を有していたり、製造時に用いた溶媒が粒子中に残存したりしている場合が少なくない。さらには、高温を経て製造される乾式法シリカと異なり、未反応のシラノール基を高密度で有していたり、あるいは多量の微細孔を有していたりする場合も多い。そのため、これら化学的、構造的因子に起因して、通常は吸湿性が高い。
シリカの用途によっては、上記のような特性がむしろ歓迎される場合もあるが、半導体封止材の充填材などの樹脂充填材として使用する場合には、緻密で、かつ吸湿性も低いものが望まれる。
そのため湿式法で製造されたシリカは500℃~1200℃程度の温度での焼成処理が施されることが一般的である。しかしながら湿式法で製造されたシリカをこのような高温で焼成すると、粒子間の結合が生じ、凝集塊が多量に生じてしまって、樹脂等への分散性が不良となる問題があった。
このような凝集塊は、従来はジェットミルやボールミルなどの各種解砕装置にかけることが行われてきていた。しかしながら、粒度分布測定装置で測定しても粗粒の存在が検出できないようなレベルまで解砕した場合でも、これを樹脂充填材として用いると前記したフローマークが現れてしまうという問題があった。これは、従来から実施されている解砕方法では、近年ますますその要求を高める用途に対しては不十分であるということである。
また、前記したような用途の樹脂組成物とする場合、シリカの表面を改質するために各種の表面処理剤で処理することが汎用されているが、解砕装置で解砕後にも分離していない凝集粒子の接触面は、表面処理剤で処理され難い。このような凝集粒子は、樹脂に練り込んだ後でも凝集したままであれば上記フローマーク等の問題を生じるし、練り込みの際の高いシェア等により分離した際には、当該分離面は処理がされていない面であるから、十分な物性を発現しない可能性がある。
そこで本発明は、湿式法で製造され、焼成工程を経たシリカにおいて、より良好な解砕状態を与える解砕方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねてきた。その結果、焼成シリカの解砕で用いられている各種解砕機のなかでも、旋回流型ジェットミルを用い、かつ特定の条件を採用すれば、極めて良好な解砕状態、即ち、高度に単分散されたシリカが得られることを見いだし本発明を完成した。
即ち、本発明は、湿式法によって球状シリカ粒子を形成させた後、当該球状シリカ粒子を焼成し、さらに焼成物を解砕する工程を有する球状シリカ粉末の製造方法において、前記解砕には旋回流型ジェットミルを用いると共に、当該ジェットミルへの焼成粒子の供給に際しての押込圧と、ジェットミル内の旋回圧との圧力差を0.2MPa以下に維持した状態で解砕することを特徴とする球状シリカ粉末の製造方法である。
本発明の製造方法により得られた球状シリカ粉末は、ほぼ全ての粒子が一次粒子にまで解砕された粉末状の球状シリカ粒子からなる。このようなシリカは樹脂等へ分散する(あるいは混練する)際に、分散(混練)時間が短縮できるのみならず、分散(混練)時のコンタミ等も効果的に防止することが可能となる。また、該シリカ粒子に表面処理を施した場合は、均一な表面処理が可能なため機能的に極めて優れた表面処理シリカが得られる。
本発明の製造方法で得られたシリカ、及び該シリカに表面処理を施した表面処理シリカは、これを配合して樹脂組成物とした際に、その溶融時の流動性が優れたものとなる。このためフィルム等の成形品の製造では、フィッシュアイや突起の発生が抑制される。そして、半導体封止材や液晶シール剤等の電子材料用樹脂組成物への充填用とした場合には、狭ギャップへの隙間浸透性に優れ、同じく狭小化する配線間での詰まり防止性にも高度に優れる。この結果、目的とする電子材料部材の生産性や歩留まりが改善され、極めて有用である。
ジェットミルの粉砕機構部の説明図である。 シリカ表面のシラノール基とHMDSとの反応機構の説明図である。
1.湿式法によるシリカの形成および回収
本発明の製造方法では、焼成に供するシリカ(以下、「原体シリカ」)は湿式法で製造される。ここで湿式法とは三次元に架橋したシリカ骨格の形成反応が溶媒中で行われる製造方法をいう。
当該湿式法としては、例えば、後述するようなゾルゲル法や、珪酸アルカリを出発原料とするコロイダルシリカの製法等が知られている。湿式法の中でも、ゾルゲル法により合成した球状シリカは高純度であるため、特に電子材料用途等で有用である。ゾルゲル法による球状シリカとは、反応媒体中で原料となる珪素アルコキシドを加水分解および重縮合して球状のシリカ粒子を合成し、生成した固形分を取り出し、乾燥して得られるシリカである。
当該ゾルゲル法で原体シリカを製造する方法としては、公知の方法を特に制限なく採用でき、例えば、前記した特許文献1~4に記載の方法で製造できるが、簡単に述べると以下のようになる。即ち、
(1)アルコールなどの溶媒中に、珪酸アルコキシド(又はその加水分解物)と、アンモニア水とを徐々に加え、平均粒子径が0.05~2μm程度(レーザー回折散乱法による)のシリカが分散するシリカ分散液を製造し(ゾルゲル工程)、
(2)フィルターなどで固液分離を行って、ウェット状態のシリカを得(固液分離工程)、さらに、
(3)加熱乾燥、真空乾燥などで乾燥粉末を得る(乾燥工程)、
という手順である。
通常は上記固液分離に先立ち凝析剤を添加し、シリカを凝析させて固液分離を容易にすることが行われる。なかでも凝析剤として二酸化炭素、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びカルバミン酸アンモニウムよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる凝析剤を採用すると、本発明の効果をいっそう得られやすい。
さらにゾルゲル工程と固液分離工程の間(行うならば凝析剤の添加前)には、本発明の効果をよりいっそう発揮しやすくできる点で、
(1b)シリカ分散液に表面処理剤を添加して、シリカ粒子表面を処理する工程(シリカ分散液表面処理工程)や、
(1c)シリカ分散液を、ろ材により湿式ろ過する工程(ろ過工程)
を含むことが好ましい。
表面処理剤はシリカ粒子表面のシラノールをキャッピングするため、乾燥や焼成初期(処理剤が分解尽くすまで)に、隣接する粒子間のシラノール基の縮合を予防でき、よって凝結粒子の生成を少なくできるため、本発明の製造工程を経て得られるシリカ粉末中の粗大粒子数をいっそう少なくする効果がある。用いる表面処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルクロロシラン、トリメチルアルコキシシランなどが使用できる。
ろ材による湿式ろ過は、それ以前の工程で生じた粗大粒子を除去する効果がある。そのため、ろ材のろ過孔径は5μm以下であることが好ましい。このろ過工程は、仮にシリカ分散液表面処理工程で粗大粒子が生じたとしても、その粗大粒子を除去できる点で該工程の後に行うことが好ましい。なお当然、このろ過工程では、フィルターを通過した側に目的物たるシリカ粒子が含まれる。
ウェット状態のシリカを得るための固液分離工程でもフィルター等を用いることができるが、前記凝析剤の添加を行っておけば、ろ過径が5μm程度でも通過してしまわずに固形分側として回収できる。
また乾燥は、室温~150℃程度で行うことができる。
2.シリカの焼成
焼成は、汎用的な電気炉等を用いて実施可能である。焼成条件としては特に限定されないが、一般的には、空気雰囲気中において500℃以上の温度で1時間以上焼成すればよい。なお、シリカの使用目的に応じて焼成温度と焼成時間は適宜調整すればよいが、焼成温度が1100℃を超えるとシリカ粒子同士の焼結(融着)が顕著となり、本発明を適用しても、最終的に得られるシリカ粉末中の粗大粒子が十分少なくならない(相対的には少なくなり、発明の効果が得られない訳ではない)。従って、上限温度は1100℃とすることが望ましい。球状シリカの球形度を保持しつつ、緻密なシリカ粒子とするためには、500~1100℃の範囲、好ましくは600~1050℃の範囲、さらに好ましくは700~1000℃の範囲が好ましい。
3.解砕
本発明の製造方法においては、上記のように焼成して得たシリカを旋回流型ジェットミルで解砕する。本発明の最大の特徴は、当該ジェットミルへの焼成粒子の供給に際しての押込圧と、ジェットミル内の旋回圧との圧力差を0.2MPa以下に維持した状態で解砕を実施することを最大の特徴としている。上記圧力差が大きすぎる場合には、該シリカ粉末の解砕が不十分となる場合がある。そのようなシリカ粉末は、粒子一つ一つが完全には解れておらず、これを樹脂充填材として用いると、粗粒により粘度が上昇したりフローマークを生じたりするし、また該シリカ粉末を表面処理しても、得られるシリカは表面処理剤の被覆率が比較的低いものとなり、様々な応用分野において物性的に不十分な結果を招くことが懸念される。
なお当然のことながら、ジェットミル内に原料粉末を供給するためには、押込圧(P1)は旋回圧(P2)と同等以上(P1≧P2)であることが必要である。
ここで、旋回流型ジェットミル(気流粉砕機とも呼ばれる)とは、物体を粉末状に粉砕する装置の中でも、ノズルから噴射される高圧の空気・あるいは蒸気を超高速ジェットとして粒子に衝突させ、粒子同士の衝撃によって数ミクロンのレベルの微粒子にまで粉砕する装置のことである。旋回流型ジェットミルであれば、シリカ粒子が粉砕されて割れるようなことはなく、エネルギーは効率的に凝集粒子の解砕に使用される。
一般的なジェットミルの構成は、ジェットミル本体を構成するために水平円盤形状の内部空間を有する粉砕室を形成しているケーシングと、該粉砕室を形成しているケーシングの側面中心部分の円周上に複数個の高速気流を噴射する粉砕ノズルと、粉砕物を供給する原料供給ノズルが配置されており、前記粉砕ノズルから噴射する高速ジェット気流に前記原料供給ノズルから供給される粉砕物を巻き込んで粉砕する装置からなる。
さらに具体的に本発明に沿って説明すると、ジェットミルの粉砕機構部は、一般的には図1に示すような構成よりなる。ここで1は、原料供給ノズルであり、押込ガス6に被粉砕物である焼成後のシリカ5を同伴させて8の粉砕ゾーンに供給される。該押込ガスの圧力が本発明で言うところの押込圧に相当する。また、2a、2b、2c・・・等は、粉砕ノズルと呼ばれ、該ノズルには旋回ガス7が供給される。該旋回ガスの圧力が本発明で言うところの旋回圧に相当する。なお、原料供給ノズルの手前には原料粉末を供給するフィーダー(図示せず)があり、原料粉末の供給速度を制御している。粉砕ゾーンに供給された被粉砕物5は、高速の旋回ガスに同伴されて8の粉砕ゾーン内で解砕され、さらに9の分級ゾーンで分級されて、一次粒子にまでバラバラに解れたもののみが順次10の取出口から系外に取り出され、サイクロン等(図示せず)によって捕集される。
本発明では、押込圧と旋回圧の圧力差を0.2MPa以下に維持した状態で解砕することが重要である。一般的には、旋回圧よりも押込圧を上げて処理するのが普通であるが、このような一般的な条件では、後述する単分散度が高くならない。よって、本発明では、押込圧と旋回圧の圧力差を0.2MPa以下、好ましくは0.15MPa以下、さらに好ましくは0.1MPa以下に維持した状態で解砕することが重要である。このように圧力差を一定圧力以下に設定してシリカ粒子の解砕を行うことにより、シリカ粒子の解砕状態が極めて高度な球状シリカを得ることが可能となった。
旋回流型ジェットミルでの解砕における旋回圧は、該装置の大きさやシリカの平均粒径、処理量などに応じて一般的な条件のなかから適宜選択、設定できるが、一般的には0.4~0.8MPaでよい。前記押込圧は、設定された旋回圧に従って決定すればよい。
当該押込圧、旋回圧はいずれも、市販の装置であればこれら圧力の制御機構が取り付けられているから、該装置の使用方法に従って制御すればよい。
本発明の製造方法において単分散度が向上する理由については正確には不明であるが、押込圧を高くし過ぎると、被粉砕物の粉砕ゾーン内の滞留時間が短くなり、一部の粗粉砕物が解砕されずに未解砕のまま系外に排出されてしまうことが原因ではないかと推測している。即ち、押込圧と旋回圧の圧力差を極力小さくすることによって、粉砕ゾーン内の高速ジェット気流を乱すことなく解砕することが重要であると考えている。
本発明の製造方法において、上記のような旋回流型ジェットミルとしては、市販の装置が制限なく利用できる。なかでも製造したシリカを半導体用途などの高純度が必要な用途で利用することを考慮すると、当該ジェットミルにおけるシリカに接触する部位の材質、特に粉体の解砕に係る領域の材質はセラミックス製が望ましい。例えば、アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等である。配管等においても、セラミックコーティングや樹脂コーティングされたものを使用することが望ましい。
ところで、前記焼成を実施して得られる焼成物(シリカ)は、該焼成によって若干焼結している場合があり、その傾向は焼成温度が高いほど大きい。そこで旋回流型ジェットミルでの解砕をより効率的に行うために、該解砕の前に、粗粉砕を実施することが好ましい。粗粉砕により、比較的大きな凝集塊を崩しておけば、旋回流型ジェットミルではそのような大きな凝集塊の解砕にエネルギーが消費されることがなく、一次粒子への解砕に振り向けられるため、ジェットミルでの解砕後に得られるシリカが一次粒子にまで解砕されている割合がいっそう高くなる。
当該粗粉砕に用いる装置としては、摩砕機、ロールクラッシャー、カッターミル、スタンプミル、乳鉢、擂潰機、石臼型等が使用でき、特に石臼型の摩砕機が好ましい。
4.解砕後のシリカ
上記のようにして製造されたシリカ粉末は、その一次粒子が前記ゾルゲル工程等の湿式でのシリカ粒子形成時に形成された形状を実質的にそのまま保っている。一般にゾルゲル法により得られるシリカ粒子は、球形度が0.9以上、多くは0.95以上の独立球状粒子である。従って本発明においても、シリカ粉末を構成する球状シリカ粒子の球形度が0.90以上、特に0.95以上のものが容易に得られる。
なお当該球形度は、電子顕微鏡観察で個々のシリカ粒子について面積及び周囲長を求め、下記式に従って算出した個々の粒子の球形度を1000個以上のシリカ粒子について求め、その相加平均値である。
球形度=4π×(面積)/(周囲長)
本発明で製造するシリカ粉末を構成するシリカ粒子の粒径は特に限定されず、旋回流型ジェットミルを使用可能な粒径範囲であればよいが、一般的な用途に鑑み、レーザー回折散乱法によって測定した平均粒子径(体積基準累積50%径:D50)が0.05~2μmの範囲、さらに好ましくは0.1~1.5μmの範囲にあることが好ましい。特にこの範囲は、近年の半導体デバイスの小型化、薄型化、高密度実装化の進展に対して、電子材料用樹脂組成物への充填用として適す大きさである。
なお平均粒子径が2μmを超えるような大粒径の球状シリカ粒子の場合は、比較的一次粒子にまで解れ易い傾向があり、本発明を適用するメリットが少ない。
本発明で製造する球状シリカ粉末は、粒径分布の広がりを示す指標の1つである変動係数が40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下が特に好ましい。変動係数が前記範囲を超えて大きいと、粒度分布がブロードとなり、同じ平均粒子径を有する粉末で比較すると微細粒子が増加する。微細粒子の増加は、樹脂等に充填した際の粘度上昇に繋がる場合がある。なお一般にゾルゲル法によって得られる球状シリカ粒子の粒子径の変動係数は、10%以上である。前記変動係数は、レーザー回折散乱法により測定することができる。
上記平均粒子径および変動係数を持つものを得るには、湿式でのシリカ粒子の形成時に制御しておけばよい。焼成工程で焼結が生じることがあるため、前記レーザー回折散乱法によって測定する平均粒子径や変動係数は、焼成しただけの状態では(見かけ上)大きく変わっている場合があるが、旋回流型ジェットミルによる解砕後には、焼成前に比べてシリカの一次粒子の粒径が小さくなっている程度のものが得られる。よって、焼成による粒子径の減少を見越し、その分だけ平均粒子径が大きくなるように条件を調整しておけばよい。
本発明で製造される球状シリカ粉末は、乾式の粉体の段階で一次粒子1個ずつがほぼ完全に解された状態であるため、樹脂や溶媒等に分散させる場合に極めて分散性に優れるという特徴がある。また、本発明で製造された球状シリカ粉末に表面処理を行う場合は、乾式の粉体の段階で粒子1個ずつがほぼ完全に解された状態であるため、粒子1個の全表面に亘って非常に均一な表面処理を行うことが可能となる。
上記のような状態は、レーザー回折散乱法等の粒度分布測定では判別が極めて困難なレベルのものであるが、測定できるシラノール基のうち、どの程度の割合がヘキサメチルジシラザンによりトリメチルシリル基へと変換可能であるかにより把握できる。
ヘキサメチルジシラザン(以下、「HMDS」)は、シラノール基との反応性がよく、かつ図2に示すようにシラノール基ひとつに対してひとつのトリメチルシリル基しか生じないため、トリアルコキシシランなどに比べ、反応した量を測定する際の定量性を高くすることができる。さらにこのような物性を持つ化合物のなかでも、その物理的な大きさが小さい、即ち、反応空間が狭くてHMDSと反応できないような場合には、他の表面処理剤も反応できないとみなしてほぼ問題がない。
他方、シリカ表面のシラノール基の量は様々な方法で測定可能であるが、そのひとつに、加熱して発生する水分をカールフィッシャー法で電量滴定して定量し、その水分量からシラノール基量を算出する方法がある。即ち、下記のように2つのシラノール基から水分子1個が脱離してシロキサン結合を生じるので、発生した水1モルに対して、2モル相当のシラノール基が縮合していることが判る。
≡Si-OH + HO-Si≡ → ≡Si-O-Si≡ + H
既にシリカ上に存在するシラノール基の縮合であるため、空間的な問題でHMDSではトリメチルシリル化できないシラノール基も上記反応により検出できる。そしてこのようなHMDSが反応できない空間は、多くは一次粒子同士の結合部に存在しているものと推測できる。
従って、カールフィッシャー法で算出される水の量から算出されるシラノール基に対する、HMDSと反応できるシラノール基の割合が、一次粒子同士が分離/結合している程度を示す指標として利用できる。
本発明では、上記の割合を下記式(1)で示される「単分散度」と称するものとする。
単分散度=トリメチルシリル基結合量/シラノール基含有量 (1)
(なお上記式(1)において、トリメチルシリル基結合量は、球状シリカ粉末を飽和量の2倍以上のHMDSで処理した後に、球状シリカに結合している単位質量当たりのトリメチルシリル基の量(モル基準)であり、シラノール基含有量は、HMDS処理前に球状シリカ粉末が有している単位質量当たりのシラノール基の量(モル基準)である。)
上記式(1)の「トリメチルシリル基結合量」とは、球状シリカ粉末を飽和量の2倍以上のHMDSで処理した後に、結合している単位質量当たりのトリメチルシリル基の量(モル基準)を指し、この量がシリカ上に存在するシラノール基のうち、実際にHMDSと反応可能なシラノール基の量に一致する。なおトリメチルシリル基の量は実施例に記載のように、HMDS処理後のシリカの炭素含有量を分析した結果より算出することができる。
本発明の製造方法では、解砕前に焼成を行っているから、HMDS処理前の炭素含有量は0.002質量%以下、多くは実施例にも示すように0.001質量%以下(一般的な装置の測定限界以下)であり、炭素量からトリメチルシリル結合量を算出する際に無視可能なほど小さい。しかしながら、HMDS処理前にも炭素が存在しているシリカの場合には、必要に応じて処理前後の炭素量の差を用いてトリメチルシリル結合量を算出すればよい。
ここで飽和量のHMDS量とは、シリカ表面の全てのシラノール基をトリメチルシリル化するのに理論上必要なHMDSの量である。前述した図2に示すように、HMDSの1分子は2つのシラノール基をトリメチルシリル化でき、この関係から飽和量は容易に算出できる。当該シラノール基とは、前記したカールフィッシャー法を用いて測定、算出されるものであり、その詳細は後述する。
本発明においては、確実に反応させることを考慮し、HMDSは飽和量の2倍以上使用する。反応可能な全てのシラノール基を反応させるという観点から、2倍以上であれば良いが、反応に関与せず無駄になるHMDSが生じることや、処理後の未反応分や分解物の除去等を考慮すると使用量は5倍以下でよい。また、HMDSによるトリメチルシリル化反応は室温でも進行するが、さらに、密閉空間においてHMDSの沸点を超える150℃(±10℃)で1時間以上、3時間以下の範囲で加熱し、反応を完全に行わせる。
ここで、飽和量(シリカと反応する理論量)を超える量のHMDSを使用するため、その余剰分(あるいは分解物)がそのままシリカ上に残存していると炭素量の分析に際して上振れの要因となる。そこでHMDS処理後には、真空下、かつHMDSの(常圧での)沸点を超える150℃で1時間以上加熱して、上記したような成分を揮発除去する。
また、前記式(1)における「シラノール基含有量」とは、HMDS処理前に球状シリカ粉末が有している単位質量当たりのシラノール基の量(モル基準)を指し、前記したような加熱で脱離する水分量から算出する。当該水分量は実施例に記載のように、市販のカールフィッシャー水分計を用いて測定できる。一般に、市販のカールフィッシャー水分測定装置は滴定量をもとに水分量(HO量)として結果を示すから、該水分量からシリカの含水率(質量%)を算出し、さらにこの含水率に基づき、下記式によりシラノール基含有量(mol/g)が求められる。
シラノール基含有量=(含水率/100)/(18/2)
上記式における分母の18/2は、シラノール基2つから水分子(分子量18)が生じていることに基づく。
なお一般に、シリカ表面には物理吸着水が存在し、これはHMDS等と反応してもシリカ表面にトリメチルシリル基を導入しないから、事前に120℃で12時間乾燥させて取り除いておく。その後、直ちに乾燥させたシリカを加熱して130℃~1000℃の範囲で発生した水分量をカールフィッシャー法で測定し、そこから求める。
また、200℃前後から前記した2つのシラノール基の縮合による水の発生が始まるが、この温度域付近で縮合して生じたシロキサン結合は可逆性が高く、環境中の水などで容易にシラノール基に戻る。これは逆に、上記方法でシラノール基含有量を測定した際には存在していなかったシラノール基が、表面処理の際には、それまでの保管や各種工程のなかで生じてしまう可能性があることを示す。
そこで本発明で上記シラノール基含有量を求める際には、シリカを25℃、相対湿度80%の雰囲気中で45日間放置し、解裂性の高いシロキサン結合は事前に全てシラノール基にしておく。この操作では物理吸着水の吸着もおこるから、この操作の後に、前記120℃での乾燥を経てシラノール基量を測定する。
以上のような手順で算出される「単分散度」は、従来法で解砕した焼成シリカでは0.90程度であることが多いが、前記解砕条件で行えば0.95以上とすることができ、0.98以上とすることも可能である。そしてこのように単分散度の高いシリカは、樹脂組成物の充填材とした際に、フローマークの発生を抑えることが可能となる。
さらに前記式(1)で示される単分散度は、解砕工程を有するシリカ粉末の製造における該工程での解砕状態の評価方法として利用できる。
この単分散度を測定することにより、球状シリカ粒子の解れ具合を評価することが可能となるから、これによって、粒子の解砕条件等を精密に見積もることが可能となり、機器の選定や製造条件の確立に重要な役割を果たすことができる。
上記のようにして、一次粒子まで解砕された度合いが極めて高い球状シリカからなる粉末を得ることができ、これはそのままで公知の様々な用途に使用可能であるが、さらに表面処理剤等で処理し表面物性を改質してもよい。
本発明の製造方法で得られたシリカ粉末を表面処理すると、表面処理後も単分散性の高いシリカを得られるのみならず、表面処理剤との反応が漏れなく進む(処理されがたい表面が少ない)ため、得られる表面処理シリカは、従来の解砕方法で得られたシリカよりも、保存安定性に優れ、また樹脂への添加剤として用いた場合に、分散性や樹脂とのなじみに優れるため、成形品の強度を向上することができる。
具体的な態様として、球状シリカ粒子表面が、少なくとも1種の表面処理剤で処理されているものの他、球状シリカ粒子表面の少なくとも一部が被覆樹脂によって被覆された樹脂被覆表面処理球状シリカ粒子であってもよく、さらには、前記粒子表面が表面処理剤で処理された上からさらに、粒子表面の少なくとも一部が被覆樹脂によって被覆された樹脂被覆表面処理球状シリカ粒子の形態をも取りうる。
このような表面処理剤による処理あるいは樹脂による被覆は、公知の方法を適宜選択して実施すればよい。
前記表面処理剤としては、シリカ表面に特定の機能を付与するため使用される公知のものであれば特に制限されないが、シリコーンオイル、シランカップリング剤、シロキサン類やシラザン類から選択される少なくとも1種の表面処理剤であることが好ましい。特には、シランカップリング剤及びシラザン類よりなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤であることが好ましい。また、表面処理剤は、シリカ表面を被覆する態様として、樹脂も使用できる。
これら表面処理剤は、得られる表面処理シリカに付与すべき改質性状に応じた官能基を有するものを選択するのが望ましい。半導体封止材や液晶シール剤等の電子材料用、及びフィルム製造用等の充填剤用途においては、エポキシ基又は(メタ)アクリル基等の重合性基を有するものが好ましい。即ち、これら用途において、表面処理シリカを配合させる樹脂は、エポキシ樹脂及び(メタ)アクリル樹脂が汎用的であるため、該表面処理シリカは、これら樹脂の重合性基に応じた、前記エポキシ基や(メタ)アクリル基等の重合性基を有するものを用いれば、これら配合樹脂を硬化させる際に樹脂と強固に結合させることができ、高強度なものとすることができ好ましい。
こうした表面処理剤により、シリカ表面に重合性基を導入する場合、その導入量は、該球状シリカ粒子表面の比表面積当り5~25μmol/mであるのが好ましい。
本実施形態において使用される表面処理剤の具体例を挙げれば、前記シリコーンオイルとして、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等を挙げることができる。
前記シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジメチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-スチリルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
前記シロキサン類としては、ジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン類が挙げられる。
前記シラザン類としては、通常用いられる公知のSi-N(珪素-窒素)結合を有する化合物を、特に制限なく使用することが可能であり、必要とする表面処理シリカの性能等に応じて適宜選択して、使用すればよい。具体的には、ヘキサメチルジシラザン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン、ヘキサ(t-ブチル)ジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサオクチルジシラザン、1,3-ジエチルテトラメチルジシラザン、1,3-ジ-n-オクチルテトラメチルジシラザン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジメチルテトラフェニルジシラザン、1,3-ジエチルテトラメチルジシラザン、1,1,3,3-テトラフェニル-1,3-ジメチルジシラザン、1,3-ジプロピルテトラメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシラザン等を挙げることができる。
このうちシリカ表面との反応性の高さ等からアルキルジシラザン類が好ましく、詳細には下記一般式
Figure 2022090679000002
(式中、R1~R3は、夫々に、水素原子、ハロゲン原子を有していても良い炭素数10以下(好ましくは炭素数1~3)のアルキル基、又はアリール基であり、R1~R3の少なくとも一つはハロゲン原子を有していても良い炭素数10以下のアルキル基であり、R6は水素原子又はメチル基であり、R7~R9は前記R1~R3と同じである。)で示される化合物であり、特に好ましくは、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘプタメチルジシラザンである。
また、表面処理がシリカ表面を被覆樹脂によって被覆する態様の場合、被覆用の樹脂(以下、被覆樹脂ともいう。)としては、特に限定されるものではなく、樹脂を直接に球状シリカ粒子表面の被覆に供するものであっても良い。好ましくは、重合性単量体を含有する重合性組成物を球状シリカ粒子表面に被覆させ、これを球状シリカ粒子表面上で重合させる形態のものが好ましい。また、高強度とするため樹脂は架橋重合体であるのが好ましい。架橋重合体の架橋は、安定性の観点から共有結合性であることが好適である。
これらの被覆樹脂は、得られる表面処理シリカに付与すべき改質性状に応じた官能基を有するものを選択するのが望ましく、半導体封止材や液晶シール剤等の電子材料用、及びフィルム製造用等の充填剤用途においては、前記した理由からエポキシ基又は(メタ)アクリル基等の重合性基を有するものが好ましい。
被覆樹脂として、エポキシ基を有する重合体を用いる場合、エポキシ基を有するラジカル重合性単量体(以下、「エポキシ基含有ラジカル重合性単量体」ともいう)を含有する重合性組成物を重合させたものが用いられる。このような単量体を用いることにより、重合体そのものがエポキシ基を有していることになる。ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基等が好ましい。
表面処理シリカの製造が容易であると言う理由から(メタ)アクリル系のラジカル重合性単量体であることが好ましい。具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらエポキシ基含有ラジカル重合性単量体は、目的とする被覆樹脂に応じて、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
エポキシ基含有ラジカル重合性単量体を含有する重合性組成物は、重合体を架橋体とするため、架橋剤を含有するのが好ましい。架橋剤としては、1分子内に2つ以上のラジカル重合性基を有する化合物であれば特に限定なく用いることができる。例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の多官能の芳香族ビニル化合物類等の芳香族ビニル系の単量体類や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ヘキサメチレンジ(メタ)アクリルアミド等の多官能の(メタ)アクリル系の単量体類、(メタ)アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
被覆樹脂として、(メタ)アクリル基を有する重合体を用いる場合、通常は、(メタ)アクリル基を有する非ラジカル重合性単量体を含有する重合性組成物を重合させたものが用いられる。このような(メタ)アクリル基を有する非ラジカル重合性単量体としては、(メタ)アクリル基と、非ラジカル重合性の重合性基としてエポキシ基を有する重合性単量体(以下、「(メタ)アクリル基・エポキシ基含有単量体」ともいう)が好ましく用いられる。このような単量体を用いることにより、重合体そのものが(メタ)アクリル基を有していることになる。エポキシ基は、開環カチオン重合により重合させても良く、エポキシ硬化剤の共存下で重付加反応により重合させても良い。
(メタ)アクリル基・エポキシ基含有単量体は、具体的には、具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β-メチルグリシジルアクリレート、β-メチルグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA-モノグリシジルエーテル-メタクリレート、4-グリシジルオキシブチルメタクリレート、3-(グリシジル-2-オキシエトキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-(グリシジルオキシ-1-イソプロピルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-(グリシジルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルアクリレート等が挙げられる。なかでもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましく使用できる。これら(メタ)アクリル基・エポキシ基含有重合性単量体は、目的とする被覆樹脂に応じて、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル基を有する非ラジカル重合性単量体を含有する重合性組成物は、重合体を架橋体とするため、架橋剤を含有させても良い。架橋剤としては、1分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物を用いることができる。
なお解砕後に表面を処理した焼成シリカ粒子は、表面処理工程で生じた粗大粒子を除去する目的で、該粒子を溶媒に分散させて分散液とし、該分散液をろ過孔径5μm以下のろ材により湿式ろ過した後、ろ液から表面が処理された焼成シリカ粒子を固液分離して回収し、さらに乾燥する工程を実施してもよい。また、表面処理を湿式で行う場合には、該表面処理を行った分散液をそのままろ過にかけてもよい。
以上のような本発明の製造方法により得られたシリカや表面処理シリカを半導体封止材や液晶シール剤等の電子材料用、及びフィルム製造用等の各種樹脂組成物等の充填剤用途に使用した場合には、目的製品の生産性や歩留まりを低下させずに樹脂中に微分散できる。
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
1.物性測定、評価方法
実施例、比較例で評価に用いる各物性の評価方法は以下の通りである。
1-1.シリカ物性
(1)平均粒子径、変動係数及びレーザー回折散乱法での5μm以上の粗粒量の測定
50mLのガラス瓶にシリカ粉末又は表面処理シリカ粉末約0.1gを電子天秤ではかりとり、蒸留水あるいはエタノールを約40ml加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON製、Sonifier250)を用いて、40W・10分の条件で分散させた後、シリカ粉末又は表面処理シリカ粉末の体積基準累積50%径(D50)及び変動係数をレーザー回折散乱法粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、LS-230)により測定した。
また、同測定に際しては5μm以上のシグナルの有無を合わせて確認した。
(2)コールターカウンター法での5μm及び3μm以上の粗粒量の測定
50mLのガラス瓶を5個準備し、それぞれにシリカ粉末又は表面処理シリカ粉末を1gずつ電子天秤ではかりとり、エタノールを19gずつ加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON製、Sonifier250)を用いて、40W・10分の条件で分散させて、測定試料とした。コールターカウンター(ベックマンコールター社製、Multisizer3)によりアパチャー径30μmを用いて、シリカ粉末又は表面処理シリカ粉末の個々の粒子径を測定した。このとき、1試料あたりの測定粒子数を約5万個とし、5試料合わせて約25万個について測定した。そのうち、粒径が5μm以上の粒子数、及び粒径が3μm以上の粒子数をそれぞれ算出し、総測定個数に対するそれぞれの粗粒量(ppm)とした。
(3)球形度の測定
シリカ粉末の粒子の形状をSEM(日本電子データム社製、JSM-6060)で観察し、球形度を求めた。具体的には、1000個以上のシリカ粒子について観察し、画像処理プログラム(SoftImagingSystemGmbH製、AnalySIS)を用いて各々の粒子について球形度を計測し、その平均を求めた。なお、球形度は次式により算出した。
球形度=4π×(面積)/(周囲長)
(4)α線量の測定
低レベルα線測定装置(住化分析センター製、LACS-4000M)を用いて表面処理シリカ粉末のα線量(c/(cm・h))を測定した。測定は試料面積1000cmで実施した。
(5)不純物量の測定
表面処理シリカ粉末の不純物量を以下の通り測定した。
U及びTh:表面処理シリカ粉末をフッ硝酸(フッ酸:硝酸が5:1の混合液)で加熱溶解させ、ICP質量分析法(アジレント・テクノロジー製、Agilent4500)で測定した。
Fe、Al、Na、K、Ca、Cr、Ni、Ti:表面処理シリカ粉末をフッ硝酸で加熱溶解させ、ICP発光分析法(サーモサイエンティフィック製、iCAP6500DUO)で測定した。
Cl:表面処理シリカ粉末を超純水と混合し、加圧下100℃で熱処理し、処理後の溶液中のCl濃度(ppm)をイオンクロマトグラフ法(日本ダイオネクス製、ICS-2100)で測定した。
(6)比表面積の測定
柴田科学器械工業製比表面積測定装置SA-1000を用い、窒素吸着量によるBET一点法により、表面処理前の焼成球状シリカ粉末の比表面積(m/g)を測定した。
(7)シラノール基含有量の測定
シリカ粉末を25℃、相対湿度80%の雰囲気中に45日間放置した後、該試料を120℃で12時間乾燥した(これを「乾燥シリカ粉末」と称す)。乾燥シリカ粉末を加熱炉で1000℃まで加熱処理し、130℃~1000℃で発生する水分量を、京都電子工業社製カールフィッシャー水分計MKS-210を使用して水分量測定した。使用した乾燥シリカ粉末の量と得られた水分量とから、乾燥シリカ粉末を100質量%とした場合の含水率を算出した。なお滴定試薬には、「HYDRANALCOMPOSITE5K」(Riedel-deHaen社製)を使用した。
上記の方法で測定された含水率と前記比表面積から、下記の式により単位質量当たりのシラノール基含有量(mol/g)を算出した。
シラノール基含有量=(含水率/100)/(18/2)
分母の18/2は、シラノール基2つから水分子(分子量18)が生じていることに基づく。
(8)炭素含有量の測定
燃焼酸化法(堀場製作所社製、EMIA-511)によりシリカ粉末の炭素含有量(質量%)を測定した。なお、試料は120℃で1時間乾燥させたものを使用した。
(9)トリメチルシリル基結合量
前記の炭素含有量を用い、次式から単位質量当たりのトリメチルシリル基結合量(mol/g)を算出した。
トリメチルシリル基結合量=(炭素含有量/100)/(12×3)
分母の12×3は、トリメチルシリル基一つ当たり3個の炭素原子(原子量12)を有することに基づく。
(10)単分散度
単分散度は、前記のシラノール基含有量とトリメチルシリル基結合量より、次式により計算した。
単分散度=トリメチルシリル基結合量/シラノール基含有量
1-2.樹脂組成物物性
(11)粘度及び経時変化率測定
表面処理シリカ粉末10gをビスフェノールA+F型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学製、ZX-1059)40gに加え、手練りした。手練りした樹脂組成物を自転公転式ミキサー(THINKY製、あわとり練太郎AR-500)により予備混練した(混練:1000rpm、8分、脱泡:2000rpm、2分)。予備混練後の樹脂組成物を三本ロール(アイメックス社製、BR-150HCVロール径φ63.5)を用いて混練した。混練条件は、混練温度を室温、ロール間距離を20μm、混練回数を5回として行って粘度測定用樹脂組成物を得た。
上記方法で得た粘度測定用樹脂組成物をレオメータ(HAAKE社製、ReoStress)により、測定温度25℃、回転速度2s-1における初期粘度(η1)及び1週間後の粘度(η2)を測定した。なお、初期粘度は、5回目の混練完了後、25℃の恒温水槽内に30分以上保管した後、測定した値を指す。また測定までの1週間の保存は、粘度測定用樹脂組成物を気密性容器にいれ、25℃恒温水槽内で保管することにより行った。
さらに得られた(η1)及び(η2)を用い、次式から粘度経時変化率を算出した。
粘度経時変化率[%]=((η2/η1)-1)×100
(12)フローマーク試験
表面処理シリカ粉末25gをビスフェノールA+F型混合エポキシ樹脂(新日鉄住金化学製、ZX-1059)25gに加え、手練りした。手練りした樹脂組成物を自転公転式ミキサー(THINKY製、あわとり練太郎AR-500)により予備混練した(混練:1000rpm、8分、脱泡:2000rpm、2分)。予備混練後の樹脂組成物を三本ロール(アイメックス社製、BR-150HCVロール径φ63.5)を用いて混練した。混練条件は、混練温度を室温、ロール間距離を20μm、混練回数を5回として行ってフローマーク測定用樹脂組成物を得た。
予め30μmのギャップになるように2枚のガラスを重ねて、100℃に加熱し、作製したフローマーク測定用樹脂組成物の高温侵入性試験を行った。該樹脂組成物の侵入距離が20mmに到達するまで、もしくは侵入が止まるまで観察し、外観目視によるフローマークの有無を評価した。
2.湿式法による原料シリカの製造方法
各実施例、比較例で解砕に供した焼成シリカは、以下の手順で製造した。
2-1.原料シリカA
(1)シリカ分散液製造工程
内容積1000Lのジャケット付きガラスライニング製反応器(内径1200mm)に、マックスブレンド翼(翼径345mm)を有した反応器を使用し、反応媒体としてメタノール75kg、イソプロパノール30kgおよびアンモニア水(25質量%)25kgを仕込み(反応媒体量:150L)、反応温度を40℃に設定し、52rpmで攪拌した。
その後、原料としてテトラエトキシシラン3.0kgとメタノール7.0kg、イソプロパノール2.0kgの混合物を反応媒体に投入し、シリカの種粒子を作製した。
次に滴下原料として、テトラメトキシシラン350kgとメタノール100kgの原料を51mm/sの吐出線速度で反応媒体中に供給し、同時に150kgのアンモニア水(25質量%)を0.8kg/minの速度で供給し、シリカ粒子を成長、合成させた。このときの無次元混合時間nθmは78であった。
(2)分散液シリカ粒子表面処理工程
供給終了後1時間攪拌を続けた後、表面処理剤としてHMDS(信越シリコーン製、SZ-31)をシリカ粒子分散液中に4450g(理論合成シリカ量に対して200μmol/g)投入し、投入終了後2時間攪拌を続け、表面処理を施した。
(3)表面処理シリカ分散液湿式ろ過工程
2時間経過後、目開き3μmのポリプロピレン製ろ過フィルターを通過させ、粗大粒子が除去された分散液を得た。
(4)凝析工程
分散液にドライアイス3kgを投入後、20時間放置した。20時間経過した段階で粒子は沈降しており、定量ろ紙(保留粒径5μm)を使用して固液分離した後、190kg(シリカ濃度74質量%)の濃縮物を得た。濾液は透明であり、ろ液漏れは確認されなかった。
(5)固液分離・乾燥工程
得られたシリカ濃縮物を100℃で15時間減圧乾燥を行い、132kgの粉末を得た。
(6)焼成工程
上記乾燥工程で得た粉末を空気雰囲気下、焼成炉により800℃で10時間焼成を行い、焼成シリカ粉末を得た。焼成後のシリカ粒子は焼結している様子はなく、124kgの焼成シリカ粉末を得た。
(7)粗粉砕工程
上記焼成工程を経て得た焼成シリカ粉末を石臼式粉砕機である摩砕機(増幸産業社製、セレンディピター、MKCA6-3、)を用いて粗粉砕した。粗粉砕の条件としては、砥石の直径が120mm、砥石の間隙が3mm、砥石の回転数が3000rpmで実施した。なお、砥石にはSiC製の砥石を使用した。粗粉砕後の粉末は、1mm程度の粉末状であった。
上記工程を経て得たシリカ粉末を、原料シリカAとする。
2-2.原料シリカB
シリカAの製造における(1)シリカ分散液製造工程において、滴下原料の使用量を、テトラメトキシシラン90kg、メタノール25kg及びアンモニア水(25質量%)40kgと変え、同じ操作を3回繰り返して3バッチ分を合算した以外は、以後は粗粉砕まで同じ操作を行って1mm程度の粉末を得た。
上記工程を経て得たシリカ粉末を、原料シリカBとする。
2-3.原料シリカC
シリカAの製造における(1)シリカ分散液製造工程において、反応器を10000Lと変え、滴下原料の使用量を、テトラメトキシシラン4200kg、メタノール1200kg及びアンモニア水(25質量%)1800kgと変えた以外は、以後は粗粉砕まで同じ操作を行って1mm程度の粉末を得た。
上記工程を経て得たシリカ粉末を、原料シリカCとする。
これら原料シリカにおけるシリカ分散液製造工程完了後の粒径(D50)は、原料シリカAが0.77μm、原料シリカBが0.42μm、原料シリカCが1.67μmであった。
3.解砕して得たシリカの表面処理方法
各実施例、比較例で得た解砕シリカを、以下の手順で表面処理し、表面処理シリカを得た。
表面処理混合器として、端部の内壁面に各々回転軸を1本ずつ設置し、該軸の壁面から2cmの位置に、軸が羽根の重心を通る、ステンレススチール製の解砕羽根(200mm×20mm×2mm)が各1枚付いた、内容積340Lのダブルコーン型装置(徳寿工作所製、W-150)に、解砕したシリカ粉末を80kg仕込み、雰囲気を窒素で置換した。次に表面処理剤として所定量のヘキサメチルジシラザン(HMDS)を、ペリスタポンプを用いて滴下した。表面処理剤を全量滴下後、ステンレススチール製の解砕羽根(質量63g)の回転数を157rad/s(1500rpm)(解砕エネルギー=2.6J)とし、混合器の回転数を0.3rpsで運転し常温で3時間混合を行った。
続いて、シリカ粉末を装置から取り出し、薄型のステンレス製バットに敷き詰めて加熱装置にセットした。常圧の密閉状態として系内の温度を室温から150℃まで1時間かけて昇温し、150℃で2時間保持した。その後、加熱装置の内部温度を150℃に保ちながら系内を1時間真空排気し、HMDSの未反応分や分解物を除去した。真空加熱完了後の同サンプルの一部(以下、トリメチルシリル化シリカとも呼ぶ)は、炭素含有量の測定に使用した。
次に、流通式の超音波分散装置を接続した、内容積40リットルのSUS製容器を準備しメタノール15kgを入れ、プロペラ式撹拌機にて撹拌速度100rpmで掻き混ぜながら上記方法で乾燥させた表面処理シリカ粉末を5kg加え、60分間撹拌を継続し、スラリー濃度25質量%の分散液を調製した。次いで、該分散液をダイヤフラムポンプにて1L/minの速さで送液し、目開き3μmのポリプロピレン製ろ過フィルターを通過させ、粗大粒子を除去した。ろ過後の分散液は通気率0.6cm/(cm・s)のろ布により加圧ろ過し、表面処理シリカ6kgがウェットケークとして回収された。
次いで、回収されたケークを温度120℃で24時間減圧乾燥し、4.8kgの乾燥表面処理シリカ粉末を得た。
実施例1
原料シリカAの粉末を、旋回流型ジェットミル(セイシン企業製、STJ-200)を用いて解砕処理を施した。解砕の条件は、旋回圧0.5MPa、旋回エアー量2.4m/min、押込圧0.6MPa、供給速度10kg/hであった。上記解砕工程は、押込圧と旋回圧の圧力差を0.1MPaに維持した状態で実施した。
得られた解砕シリカ粉末の物性は、D50が0.72μmであり、変動係数24%、球形度0.96であった。レーザー回折散乱法において5μm以上の粗粒は検出されなかった。コールターカウンター法による5μm及び3μm以上の粗粒量は5ppm及び8ppmであった。比表面積は3.7m/g、シラノール基含有量は18.1μmol/gであった。また、炭素含有量は0.001重量%未満であった。また比表面積とシラノール基含有量からシラノール基密度は約3個/nmと計算される。
得られた解砕シリカ粉末を前記の方法で表面処理し、乾燥表面処理シリカ粉末を得た。表面処理に際してのHMDS使用量は258gとした。なお、シラノール基含有量から算出されるHMDSの飽和量は117gであるため、上記HMDS使用量は飽和量の約2.2倍である。
この表面処理工程で得られたトリメチルシリル化シリカ(表面処理シリカ)粉末の物性を測定した。その結果、炭素含有量は0.064重量%であった。該値から計算されるトリメチルシリル基結合量は17.8μmol/gであり、表面処理前の解砕シリカの単分散度は0.98と算出される。
また、当該表面処理シリカ粉末のD50と変動係数は、それぞれ0.72μmと23%であった。レーザー回折散乱法において5μm以上の粗粒は検出されなかった。コールターカウンター法における5μm及び3μm以上の粗粒量は、各々4ppm未満及び8ppmであった。
この表面処理シリカを用いて樹脂組成物を作成し、各種粘度及びフローマーク試験を行ったところ、(η1)は3.2Pa・s、(η2)は3.3Pa・s、よって粘度経時変化は3%であった。フローマークは観測されなかった。
また、該表面処理シリカ粉末のα線量は0.002c/(cm・h)、不純物量は、Uが0.02ppb、Thが0.02ppb、Feが1.5ppm、Alが3.0ppm、Naが0.2ppm、Kが0.1ppm、Caが0.1ppm、Crが0.2ppm、Niが0.2ppm、Tiが0.0ppm、Clが0.1ppmであった。
実施例2、3および比較例1、2
ジェットミルによる解砕時の条件を表1に示すように変化させて原料シリカAの解砕処理を行った。得られた解砕シリカ粉末の各種物性評価結果を表2に、表面処理シリカ粉末の各種物性評価結果を表3に示す。
Figure 2022090679000003
Figure 2022090679000004
Figure 2022090679000005
実施例4
シリカ粉末として、原料シリカAに換えて、原料シリカBを用いた以外は、実施例1と同じ条件で解砕まで行い解砕シリカ粉末を得た。またHMDSの使用量を450gとした以外は実施例1と同様にして表面処理を行った。得られた解砕シリカ粉末の物性評価結果を表2に、表面処理シリカ粉末の物性評価結果を表3に示す。
実施例4で得られた表面処理シリカ粉末のα線量は0.002c/(cm・h)、不純物量は、Uが0.01ppb、Thが0.02ppb、Feが0.8ppm、Alが2.2ppm、Naが0.2ppm、Kが0.1ppm、Caが0.1ppm、Crが0.2ppm、Niが0.1ppm、Tiが0.0ppm、Clが0.1ppmであった。
実施例5
シリカ粉末として、原料シリカAに換えて原料シリカCを用いた以外は、実施例1と同じ条件で解砕および表面処理を行った(HMDS使用量は、質量基準で同一とした)。得られた解砕シリカ粉末の物性評価結果を表2に、表面処理シリカ粉末の物性評価結果を表3に示す。
実施例5で得られた表面処理シリカ粉末のα線量は0.002c/(cm・h)、不純物量は、Uが0.02ppb、Thが0.02ppb、Feが1.7ppm、Alが6.4ppm、Naが0.2ppm、Kが0.1ppm、Caが0.1ppm、Crが0.4ppm、Niが0.3ppm、Tiが0.1ppm、Clが0.1ppmであった。
以上の結果からわかるように、ジェットミルの押込圧と旋回圧の圧力差を0.2MPa以下に維持した状態で解砕することによって、単分散度が0.95以上の解砕された球状シリカ粒子を得ることができる。また、比較例に示すように、上記圧力差が0.2MPaを超えると単分散度は低下し、シリカの解砕が不十分なために樹脂粘度の変化やフローマークの発生などの問題が生じることが明らかとなった。
1 原料供給ノズル
2a、2b、2c・・・ 粉砕ノズル
3 円周壁
4 同心円渦流
5 粉砕物
6 押込ガス(圧)
7 旋回ガス(圧)
8 粉砕ゾーン
9 分級ゾーン
10 取出口

Claims (6)

  1. 湿式法によって球状シリカ粒子を形成させた後、当該球状シリカ粒子を焼成し、さらに焼成物を解砕する工程を有する球状シリカ粉末の製造方法において、
    前記解砕には旋回流型ジェットミルを用いると共に、当該ジェットミルへの焼成粒子の供給に際しての押込圧と、ジェットミル内の旋回圧との圧力差を0.2MPa以下に維持した状態で解砕することを特徴とする球状シリカ粉末の製造方法。
  2. 製造される球状シリカ粉末が、下記式(1)で示される単分散度が0.95以上のものである請求項1記載の球状シリカ粉末の製造方法。
    単分散度=トリメチルシリル基結合量/シラノール基含有量 (1)
    (なお上記式(1)において、
    トリメチルシリル基結合量は、球状シリカ粉末を飽和量の2倍以上のヘキサメチルジシラザンで処理した後に、球状シリカに結合している単位質量当たりのトリメチルシリル基の量(モル基準)であり、
    シラノール基含有量は、ヘキサメチルジシラザン処理前に球状シリカ粉末が有している単位質量当たりのシラノール基の量(モル基準)である。)
  3. 解砕工程を有するシリカ粉末の製造における該工程での解砕状態の評価方法であって、解砕後のシリカ粉末について、前記式(1)で示される単分散度を測定することを特徴とする前記評価方法。
  4. 炭素含有量が0.002質量%以下であり、球形度が0.90以上であり、かつ前記式(1)で定義される単分散度が0.95以上であることを特徴とする球状シリカ。
  5. 粒子径の変動係数が40%以下である、請求項4記載の球状シリカ。
  6. 請求項4又は5記載の球状シリカを表面処理する、表面処理球状シリカの製造方法。
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