[1]エレベータの全体構成
図1は、エレベータの全体構成を示した概念図である。図2は、特定階(ロビー階など、建物に入って初めてエレベータの利用が可能になる階)でのエレベータの乗場の構成を示した概念図である。尚、図2では、乗場が符号Hで示されている。これらの図に示されるように、エレベータは、乗りかご100と、規制装置101(入口規制装置101A及び出口規制装置101Bを含む)と、セキュリティサーバ102と、エレベータ制御装置103と、群管理制御装置104と、を備える。そして、群管理制御装置104が、本発明に係る制御装置の一実施形態である。以下、各部の構成について具体的に説明する。尚、特に限定されるものではないが、図1では、エレベータの一例として、乗りかご100が3つ、入口規制装置101A及び出口規制装置101Bがそれぞれ2つずつ設けられた構成が示されている。
<規制装置>
規制装置101は、利用者の通行を規制する装置(セキュリティゲートなど)であり、規制装置101には、入口規制装置101Aと出口規制装置101Bとが含まれている。ここで、入口規制装置101A及び出口規制装置101Bは、特定階にてエレベータの乗場への進入及び当該乗場からの退出をそれぞれ規制する装置である(図2参照)。従って、これらの規制装置101の通行を許可されている利用者だけが、入口規制装置101Aを通過して乗場に進入でき、入口規制装置101Aを通過することで、建物に入って初めてエレベータの利用が可能になる。また、規制装置101の通行を許可されている利用者は、出口規制装置101Bを通過して乗場から退出できる。
入口規制装置101A及び出口規制装置101Bには、それらを識別するための装置情報Pdが設定されている。また、これらの規制装置101には、利用者が所持する記録媒体Q(ICカードや磁気カードなど)から情報を読み取る読取装置1が設けられている。ここで、記録媒体Qには、それを所持する利用者の識別情報Pi(記録媒体Qを識別する固有の情報。固有IDなど)が記録されており、読取装置1は、記録媒体Qから識別情報Piを読み取る。
読取装置1による記録媒体Qの読取り方法は、接触式のものであってもよいし、NFC(Near Field Communication)等の近距離通信で情報を読み取る非接触式のものであってもよく、特に限定されるものではない。また、記録媒体Qは、カード状のものに限らず、スティック状やチップ状のものであってもよい。或いは、読取装置1との近距離通信(NFC等)が可能なスマートフォン等の携帯情報端末が、記録媒体Qとして用いられてもよい。
入口規制装置101Aには、更に、利用者が乗車すべき乗りかご100の情報などを表示する表示装置2が設けられており、当該表示装置2には、乗りかご100の情報として、当該乗りかご100を識別する情報(番号や記号など。以下、この情報を「乗りかご情報Pg」と称す)などが表示される。尚、表示装置2は、出口規制装置101Bにも設けられていてもよく、当該表示装置2には、退出時間やメッセージなどが表示されてもよい。
規制装置101(入口規制装置101A及び出口規制装置101B)の読取装置1で読み取られた識別情報Piは、セキュリティサーバ102で実行される建物内のセキュリティ管理(識別情報Piの認証など)に用いられる。そこで、規制装置101は、読取装置1が識別情報Piを読み取った場合、その識別情報Piをセキュリティサーバ102に送信する(図1参照)。このとき、規制装置101は、識別情報Piの送信元である自身の位置をセキュリティサーバ102に認識させるために、当該規制装置101の装置情報Pdを、識別情報Piと共にセキュリティサーバ102に送信する。尚、規制装置101は、装置情報Pdとして、自身に設けられている読取装置1(即ち、識別情報Piを読み取った読取装置1)を識別する情報をセキュリティサーバ102に送信してもよい。
そして、セキュリティサーバ102は、規制装置101から受信した情報に基づいて、識別情報Piの認証を行い、認証に成功した場合にのみ、規制装置101の通行を利用者に対して許可する。
このような構成によれば、入口規制装置101Aの通行が許可された利用者の人数をカウントすることにより、乗場へ進入した利用者の人数(以下、「進入者数Na」と称す)を取得することができる。また、出口規制装置101Bの通行が許可された利用者の人数をカウントすることにより、乗場から退出した利用者の人数(以下、「退出者数Nb」と称す)を取得することができる。そして、進入者数Naから退出者数Nbを差し引くことにより、建物内においてエレベータの利用が可能な利用者数Nc(以下、「建物内の利用者数Nc」と称す)を把握することができる。
尚、規制装置101は、入口規制装置101A及び出口規制装置101Bの両方の機能を備えたもの(即ち、入口規制装置101Aと出口規制装置101Bとを一体化させたもの)であってもよい。
<セキュリティサーバ>
セキュリティサーバ102は、規制装置101(入口規制装置101A及び出口規制装置101B)での通行の規制及び許可を利用者ごとに制御することにより、建物内のセキュリティ管理を行う(セキュリティ管理処理)。具体的には、セキュリティサーバ102は、規制装置101から送信されてくる識別情報Piの認証を行い(認証処理)、認証に成功した場合にのみ、規制装置101の通行を利用者に対して許可する。また、セキュリティサーバ102は、識別情報Piの認証に成功した場合には、エレベータの制御に必要な情報を群管理制御装置104に送信する(送信処理)。以下、セキュリティ管理処理の詳細について説明する。
図3は、セキュリティサーバ102で実行されるセキュリティ管理処理を示したフローチャートである。セキュリティ管理処理は、セキュリティサーバ102が規制装置101(入口規制装置101A又は出口規制装置101B)から情報(識別情報Pi及び装置情報Pd)を受信した場合に開始される。
セキュリティ管理処理が開始されると、セキュリティサーバ102は、情報(識別情報Pi及び装置情報Pd)の送信元である規制装置101に対する動作制御(通行の規制及び許可など)や当該規制装置101への情報送信などが可能となるように、その送信元がどの規制装置101であるのかを、受信した装置情報Pdに基づいて特定する(特定処理。ステップS101)。
具体的には、セキュリティサーバ102は、装置管理データD1を有している。図4(A)は、装置管理データD1の一例を示した概念図である。装置管理データD1では、装置情報Pdごとに、装置アドレスPa、属性情報Pb、及び設置階Fsが対応付けられている。ここで、装置アドレスPaは、装置情報Pdで識別される規制装置101(装置情報Pdで識別される読取装置1であってもよく、その場合には、当該読取装置1が設けられている規制装置101)に対する動作制御や当該規制装置101への情報送信などに使用されるアドレス(IPアドレスなど)である。属性情報Pbは、装置情報Pdで識別される規制装置101(装置情報Pdで識別される読取装置1であってもよい)が、乗場の入口側に設けられた入口用装置であるのか、それとも乗場の出口側に設けられた出口用装置であるのかを特定するための情報である。図4(A)では、属性情報Pbの値として、入口用装置と出口用装置とを区別するために、それぞれに対応させて「0」と「1」とが用いられている。設置階Fsは、装置情報Pdで識別される規制装置101(装置情報Pdで識別される読取装置1であってもよい)が設置されている階である。
そして特定処理(ステップS101)では、セキュリティサーバ102は、受信した装置情報Pdに対応する装置アドレスPa及び属性情報Pbを装置管理データD1から取得することにより、情報(識別情報Pi及び装置情報Pd)の送信元である規制装置101を特定する。
その後、セキュリティサーバ102は、受信した識別情報Piの認証を行い(認証処理。ステップS102)、そのときの認証の成否により、当該識別情報Piで識別される利用者が規制装置101の通行を許可されている者であるか否か、を判断する。
具体的には、セキュリティサーバ102は、ステップS102にて識別情報Piの認証に成功した場合、そのことを以て、当該識別情報Piで識別される利用者は規制装置101の通行が許可されている者であると判断する。一方、セキュリティサーバ102は、ステップS102にて識別情報Piの認証に失敗した場合には、そのことを以て、当該識別情報Piで識別される利用者は規制装置101の通行が許可されている者でないと判断する。このようにして、利用者ごとに、規制装置101の通行が許可されているか否かが、当該利用者の識別情報Piに対する認証の成否により判断される。
そして、セキュリティサーバ102は、ステップS102にて識別情報Piの認証に成功した場合には、以下に説明する送信処理(ステップS103)の実行後に、ステップS101で取得した装置アドレスPaで特定される規制装置101の動作を制御することによってゲートを開き、それによって当該規制装置101の通行を利用者に対して許可する(ステップS104A)。尚、以下に説明する送信処理(ステップS103)は、ステップS104Aの後に実行されてもよい。
送信処理(ステップS103)では、セキュリティサーバ102は、エレベータの制御に必要な情報を群管理制御装置104に送信する。ここで、当該必要な情報は、ステップS101でセキュリティサーバ102が取得した属性情報Pbの値が、「0」(入口用装置)であるのか、それとも「1」(出口用装置)であるのかによって異なる。以下、具体的に説明する。
本実施形態では、入口規制装置101Aで読み取られた識別情報Piに対するセキュリティサーバ102での認証が成功した場合に、その識別情報Piを対象とした呼び登録が群管理制御装置104にて行われる。即ち、群管理制御装置104は、入口規制装置101Aの通行が許可された場合(即ち、属性情報Pbの値が「0」である場合)に、入口規制装置101Aの設置階Fs(乗車階)と当該入口規制装置101Aの通行が許可された利用者の行先階Fdとを、1つの乗場呼びとして、何れか1つの乗りかご100に割り当てる(図7のステップS402~S404参照)。このとき、乗りかご100への乗場呼びの割当て(呼び登録)は、各乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rtを考慮して、各乗りかご100における乗場呼びの割当数が割当上限数Nt(=乗車定員数Ns×乗車率の上限値Rt)を超えることがないように行われる。ここで、乗車定員数Nsには、最大定員数が用いられてもよいし、その最大定員数に対してマージンを持たせたもの(例えば、最大定員数の80%)が用いられてもよい。
そして本実施形態では、群管理制御装置104は、乗車率の上限値Rtを、建物内の利用者数Nc(進入者数Na-退出者数Nb)に応じて更新する(図6参照)。そこで、群管理制御装置104は、建物内の利用者数Ncを算出するために、属性情報Pbのうちの値が「0」(入口用装置)であるものを用いて、入口規制装置101Aの通行が許可された利用者の人数(即ち、進入者数Na)をカウントし、属性情報Pbのうちの値が「1」(出口用装置)であるものを用いて、出口規制装置101Bの通行が許可された利用者の人数(即ち、退出者数Nb)をカウントする。
従ってステップS103では、セキュリティサーバ102は、ステップS101で取得した属性情報Pbの値が「0」(入口用装置)である場合には、エレベータの制御に必要な情報として、進入者数Naのカウントに必要な情報(少なくとも属性情報Pb)と、乗場呼びの割当てに必要な情報(少なくとも入口規制装置101Aの設置階Fs(乗車階)と利用者の行先階Fd)と、を群管理制御装置104に送信する。一方、セキュリティサーバ102は、ステップS101で取得した属性情報Pbの値が「1」(出口用装置)である場合には、エレベータの制御に必要な情報として、退出者数Nbのカウントに必要な情報(少なくとも属性情報Pb)を群管理制御装置104に送信する。
より具体的には、セキュリティサーバ102は、上述した装置管理データD1に加えて、対応管理データD2を更に有している。図4(B)は、対応管理データD2の一例を示した概念図である。対応管理データD2では、記録媒体Qの識別情報Piごとに、その識別情報Piで識別される利用者の降車階として初期設定された行先階Fdが対応付けられている。また、対応管理データD2では、識別情報Piの漏洩を防止するべく、記録媒体Qの識別情報Piごとに、その識別情報Piに1対1で対応する管理情報Pj(例えば、ICカードに付される通し番号のようなもの)が対応付けられている。
そして、セキュリティサーバ102は、ステップS101で取得した属性情報Pbの値が「0」(入口用装置)である場合には、対応管理データD2を参照して、ステップS102での認証に成功した識別情報Piに対応付けられている管理情報Pj及び行先階Fdを取得し、また、装置管理データD1を参照して、ステップS101での規制装置101の特定に用いた装置情報Pdに対応付けられている設置階Fsを取得する。その後、セキュリティサーバ102は、これらの情報を、ステップS101で取得した装置アドレスPa及び属性情報Pb(=「0」)と共に、群管理制御装置104に送信する(図1参照)。
一方、セキュリティサーバ102は、ステップS101で取得した属性情報Pbの値が「1」(出口用装置)である場合には、ステップS101で取得した属性情報Pb(=「1」)を、群管理制御装置104に送信する。このとき、セキュリティサーバ102は、管理情報Pjや装置アドレスPaなどを、属性情報Pbと共に群管理制御装置104に送信してもよい。
尚、上述した装置管理データD1及び対応管理データD2内のデータは、それらの少なくとも一部が、セキュリティサーバ102に代えて群管理制御装置104で管理されてもよい。この場合、セキュリティサーバ102に代わって群管理制御装置104が、呼び登録に必要な情報の少なくとも一部を、自身が管理するデータから取得することになる。
セキュリティ管理処理(図3)において、ステップS102にてセキュリティサーバ102が識別情報Piの認証に失敗した場合には、セキュリティサーバ102は、ステップS101で取得した装置アドレスPaで特定される規制装置101の動作を制御することによってゲートを閉じ、それによって当該規制装置101における利用者の通行を規制(具体的には、禁止)する(ステップS104B)。
このようなセキュリティ管理処理は、セキュリティサーバ102内に構成される処理部によって実行される。一例として、この処理部は、セキュリティサーバ102が備える処理装置(CPUなど)にプログラムを実行させることによってソフトウェアで構成される。そして、当該プログラムは、携帯可能な記憶装置(例えば、フラッシュメモリなど)に読取可能な状態で記憶されてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能に保存され、ダウンロードされたものがセキュリティサーバ102の記憶部(不図示)に記憶されてもよい。他の例として、上記の処理部は、セキュリティサーバ102内に回路を構築することによってハードウェアで構成されてもよい。
<エレベータ制御装置>
エレベータ制御装置103は、乗りかご100に1つずつ対応させて設けられており、自身に対応する乗りかご100の動作を制御する。そして、エレベータ制御装置103は、群管理制御装置104によって一元的に管理及び制御される。
<群管理制御装置>
群管理制御装置104は、エレベータの制御に必要な情報をセキュリティサーバ102から受信するごとに、当該情報に含まれている属性情報Pbに基づいて、建物内の利用者数Ncを取得し(取得処理。図5参照)、取得した利用者数Ncに応じて、乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rtを更新する(更新処理。図6参照)。また、属性情報Pbの値が「0」(入口用装置)であった場合には、群管理制御装置104は、更新処理後の乗車率の上限値Rtを考慮して、呼び登録処理(図7参照)を実行する。以下、これらの処理の概要について説明する。尚、それらの詳細については後述する。
取得処理(図5参照)では、群管理制御装置104は、受信した属性情報Pbの値が「0」(入口用装置)であった場合には、進入者数Naのカウントを行い、カウント後の進入者数Naから退出者数Nbを差し引くことにより、建物内の利用者数Nc(=Na-Nb)を算出する。また、群管理制御装置104は、受信した属性情報Pbの値が「1」(出口用装置)であった場合には、退出者数Nbのカウントを行い、カウント後の退出者数Nbを進入者数Naから差し引くことにより、建物内の利用者数Nc(=Na-Nb)を算出する。このようにして、群管理制御装置104は、建物内の利用者数Ncを取得する。
更新処理(図6参照)では、群管理制御装置104は、各乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rtを、取得した建物内の利用者数Ncに応じて更新する。
呼び登録処理(図7参照)では、群管理制御装置104は、入口規制装置101Aの通行が許可された利用者の乗場呼び(入口規制装置101Aの設置階Fs(乗車階)と利用者の行先階Fd)を、何れか1つの乗りかご100に割り当てる(図7のステップS402~S404参照)。このとき、群管理制御装置104は、各乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rt(更新処理後の乗車率の上限値Rt)を考慮して、各乗りかご100における乗場呼びの割当数が割当上限数Nt(=乗車定員数Ns×乗車率の上限値Rt)を超えることがないように、何れか1つの乗りかご100に割り当てる。
また、群管理制御装置104は、乗りかご100に乗場呼びを割り当てた場合に、その乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rtに基づいて、当該乗りかご100が、混雑の緩和を重視した混雑緩和モードで運行されているのか、それとも輸送の効率を重視した輸送重視モードで運行されているのかを、当該乗場呼びを行った利用者に報知する(図7のステップS405~S407参照)。
本実施形態では、取得処理、更新処理、及び呼び登録はそれぞれ、群管理制御装置104内に構成される取得処理部104A、更新処理部104B、及び呼び登録処理部104Cによって実行される(図1参照)。一例として、これらの処理部は、群管理制御装置104が備える処理装置(CPUなど)にプログラムを実行させることによってソフトウェアで構成される。そして、当該プログラムは、携帯可能な記憶装置(例えば、フラッシュメモリなど)に読取可能な状態で記憶されてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能に保存され、ダウンロードされたものが群管理制御装置104の記憶部(不図示)に記憶されてもよい。他の例として、上記の処理部は、群管理制御装置104内に回路を構築することによってハードウェアで構成されてもよい。
以下、群管理制御装置104で実行される取得処理、更新処理、及び呼び登録処理の詳細について説明する。
[2]群管理制御装置で実行される制御処理
[2-1]取得処理
図5は、群管理制御装置104で実行される取得処理を示したフローチャートである。取得処理は、エレベータの制御に必要な情報(管理情報Pj、行先階Fd、設置階Fs、装置アドレスPa、及び属性情報Pb=「0」を含んだ情報、或いは、属性情報Pb=「1」を含んだ情報)を群管理制御装置104がセキュリティサーバ102から受信した場合に開始される。
取得処理が開始されると、群管理制御装置104は、そのときの利用者について、乗場に進入したのか、それとも乗場から退出したのかを判断するべく、セキュリティサーバ102から受信した上記情報(以下、「受信情報Pr」と称す)に含まれている属性情報Pbの値が、「0」(入口用装置)であるのか、それとも「1」(出口用装置)であるのかを判断する(ステップS201)。
そして、群管理制御装置104は、ステップS201にて「0」(入口用装置)であると判断した場合には、進入者数Naのカウントを行うことにより、進入者数Naに1人分を加算する(ステップS202A)。一方、群管理制御装置104は、ステップS201にて「1」(出口用装置)であると判断した場合には、退出者数Nbのカウントを行うことにより、退出者数Nbに1人分を加算する(ステップS202B)。
ステップS202A又はS202Bの実行後、群管理制御装置104は、進入者数Naから退出者数Nbを差し引くことにより、建物内の利用者数Nc(=Na-Nb)を算出する(ステップS203)。このようにして、群管理制御装置104は、建物内の利用者数Ncを取得する。そして、取得処理の完了後、群管理制御装置104は次の更新処理を開始する。
[2-2]更新処理
図6は、群管理制御装置104で実行される更新処理を示したフローチャートである。更新処理が開始されると、群管理制御装置104は、変数Rに初期値r0を代入する(ステップS301)。ここで、変数Rは、乗車率の上限値Rtについての更新候補値を決定するための変数である。また、その初期値r0は、一例としてゼロ(0%)に設定される。尚、初期値r0は、乗りかご100内の混雑を緩和できる値(例えば、0.1(10%))に設定されてもよい。
次に、群管理制御装置104は、利用者数Ncに対するエレベータ全体の輸送能力Wqを用いて、当該輸送能力Wqが、対象となるエレベータにおいて必要な輸送能力Wqnとなるように、変数Rの値(更新候補値)を決定する(ステップS302~S304)。
ここで、本実施形態で用いられる輸送能力Wqは、エレベータが備える全ての乗りかご100で輸送できる単位時間当たりの輸送人数Nqの、建物内の利用者数Ncに対する割合である。そして、この輸送能力Wqは、1つの乗りかご100についての所定時間(通常は、所定時間=5分間)あたりの周回数Ir、1つの乗りかご100あたりの乗車定員数Ns、及び乗りかご総数Ngを用いて、以下の数式(1)で算出される。
≪数式(1)≫
Wq=Nq/Nc=(Ir×Ns×R×Ng)/Nc。
具体的には、群管理制御装置104は先ず、そのときの変数Rの値を数式(1)に代入することにより、エレベータ全体の輸送能力Wqを算出する(ステップS302)。その後、群管理制御装置104は、ステップS302で算出した輸送能力Wqの値が所定値Wq0以上であるか否かを判断する(ステップS303)。ここで、所定値Wq0は、対象となるエレベータにおいて必要な輸送能力Wqnの下限値となるように設定される。一例として、そのような下限値は、乗場で利用者を長時間待たせることのないエレベータの運行を可能にするものであり、建物の用途などに応じて通常は0.12(12%)~0.20(20%)に設定される。
群管理制御装置104は、ステップS303にて「輸送能力Wqの値は所定値Wq0以上でない(No)」と判断した場合、その判断を以て、そのときの輸送能力Wqでは必要な輸送能力Wqnを発揮できないと判断できる。この場合、群管理制御装置104は、必要な輸送能力Wqnを発揮できる変数Rの値を導き出すべく、ステップS303にて「輸送能力Wqの値は所定値Wq0以上である(Yes)」と判断できるまで、変数Rの値を増加させていく。具体的には、群管理制御装置104は、そのときの変数Rの値に所定の変化量Δrを加算したものを変数Rの新たな値とし(ステップS304)、その新たな値を用いて、ステップS302からの処理を再び実行する。そして、群管理制御装置104は、ステップS303にて「輸送能力Wqの値は所定値Wq0以上である(Yes)」と判断できるまで、ステップS304からの一連の処理を繰り返し実行する。
群管理制御装置104は、ステップS303にて「輸送能力Wqの値は所定値Wq0以上である(Yes)」と判断した場合には、その判断を以て、そのときの輸送能力Wqで必要な輸送能力Wqnを発揮できると判断できる。この場合、群管理制御装置104は、そのときの変数Rの値を用いて、各乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rtを更新する(ステップS305)。即ち、本実施形態では、群管理制御装置104は、建物に設けられている全ての乗りかご100において、乗車率の上限値Rtを、同じ変数Rの値を用いて一律に更新する。
このような更新処理によれば、各乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rtを、対象となるエレベータにおいて必要な輸送能力Wqnを発揮できるように更新することが可能になる。
[2-3]呼び登録処理
図7は、群管理制御装置104で実行される呼び登録処理を示したフローチャートである。呼び登録処理は、エレベータの制御に必要な情報(管理情報Pj、行先階Fd、設置階Fs、装置アドレスPa、及び属性情報Pb=「0」を含んだ情報、或いは、属性情報Pb=「1」を含んだ情報)を群管理制御装置104がセキュリティサーバ102から受信した場合に開始される。
呼び登録処理が開始されると、群管理制御装置104は、上記情報(受信情報Pr)が乗場呼びの割当て(呼び登録)に必要な情報を含んだものであるか否かを判断するべく、その受信情報Prに含まれている属性情報Pbの値が、「0」(入口用装置)であるのか、それとも「1」(出口用装置)であるのかを判断する(ステップS401)。
そして、群管理制御装置104は、ステップS401にて「1」(出口用装置)であると判断した場合には、その判断を以て、受信情報Prは乗場呼びの割当て(呼び登録)に必要な情報を含んだものでないと判断できるため、乗場呼びの割当て(呼び登録)に関する一連の処理(ステップS402以降の処理)を実行せずに、呼び登録処理を終了させる。
一方、群管理制御装置104は、ステップS401にて「0」(入口用装置)であると判断した場合には、その判断を以て、受信情報Prは乗場呼びの割当て(呼び登録)に必要な情報を含んだものであると判断できるため、乗場呼びの割当て(呼び登録)に関する一連の処理(ステップS402以降の処理)を実行する。具体的には、以下のとおりである。
群管理制御装置104は、乗場呼びの割当対象になり得る乗りかご100を抽出する(ステップS402)。具体的には、群管理制御装置104は、乗りかご100のうちの、既に割り当てられている乗場呼びの割当数が割当上限数Nt(=乗車定員数Ns×乗車率の上限値Rt)に達していないものを抽出する。
ステップS402の実行後(割当対象になり得る乗りかご100の抽出後)、群管理制御装置104は、割当対象になり得る乗りかご100を抽出できたか否かを判断するべく、ステップS402での乗りかご100の抽出数Ndの値が1以上であるか否かを判断する(ステップS403)。
そして、群管理制御装置104は、ステップS403にて「1以上である(Yes)」と判断した場合には、その判断を以て、割当対象になり得る乗りかご100を抽出できたと判断できるため、抽出した乗りかご100から最適な乗りかご100を選択し、その乗りかご100に乗場呼びを割り当てる(ステップS404)。
一方、群管理制御装置104は、ステップS403にて「1以上でない(No)」と判断した場合には、その判断を以て、割当対象になり得る乗りかご100を抽出できなかったと判断でき、その時点では乗場呼びの割当てを実行することができない。この場合、その時点では割当対象になり得る乗りかご100を抽出できなくても、時間が経過することで、乗車率の上限値Rtが更新されて大きくなるといった事象や、エレベータの運行が進んで他の利用者の割当てがリセットされるといった事象などが生じることにより、割当対象として抽出可能な乗りかご100が現れる。
尚、割当対象になり得る乗りかご100を抽出できない場合としては、主に、乗車率の上限値Rtが小さくてエレベータ自体の輸送能力が比較的低い場合において、建物内の利用者数Ncが徐々に増えてきてエレベータ自体の輸送能力が不足しつつあるような場合が考えられる。本実施形態では、このような場合でも、建物内の利用者数Ncが増えることで乗車率の上限値Rtが更新されて大きくなるため、割当対象として抽出可能な乗りかご100が現れやすい。
そこで、群管理制御装置104は、ステップS403にて「1以上である(Yes)」と判断できるようになるまで、ステップS402からの処理を繰り返し実行する。
このような処理によれば、乗りかご100への乗場呼びの割当て(呼び登録)が、各乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rtを考慮して、各乗りかご100における乗場呼びの割当上限数Nt(=乗車定員数Ns×乗車率の上限値Rt)を超えることがないように行われる。
ステップS404での乗りかご100への乗場呼びの割当て後、群管理制御装置104は、その乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rtに基づいて、当該乗りかご100が、混雑の緩和を重視した混雑緩和モードで運行されているのか、それとも輸送の効率を重視した輸送重視モードで運行されているのかを、当該乗場呼びを行った利用者に報知する。
具体的には、群管理制御装置104は、乗りかご100の輸送モードPmが混雑緩和モード及び輸送重視モードのどちらであるのかを決定するべく、その乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rtが、モード決定用閾値r1以下であるか否かを判断する(ステップS405)。一例として、モード決定用閾値r1は、乗りかご100内の混雑を緩和できる値の上限値であり、例えば0.2(20%)に設定される。
そして、群管理制御装置104は、ステップS405にて「モード決定用閾値r1以下である(Yes)」と判断した場合には、その判断を以て、乗りかご100の輸送モードPmを「混雑緩和モード」に決定する(ステップS406A)。一方、群管理制御装置104は、ステップS405にて「モード決定用閾値r1以下でない(No)」と判断した場合には、その判断を以て、乗りかご100の輸送モードPmを「輸送重視モード」に決定する(ステップS406B)。
その後、群管理制御装置104は、割り当てた乗りかご100を識別する情報(乗りかご情報Pg)と、当該乗りかご100の輸送モードPmとを、受信情報Pr内の装置アドレスPaで特定される規制装置101の表示装置2に表示する(ステップS407)。図8(A)及び(B)は、輸送モードPmに応じて入口規制装置101Aの表示装置2に表示される画面を例示した概念図である。尚、これらの図では、乗りかご情報Pg及び輸送モードPmに加えて、利用者の管理情報Pj及び行先階Fdも表示された場合が示されている。
これにより、利用者は、入口規制装置101Aの通過時に、表示装置2に表示された情報を確認することにより、自身が乗車すべき乗りかご100を認識すると共に、その乗りかご100がどのような輸送モードPmで運行されているのかを認識することができる。尚、乗りかご情報Pgや輸送モードPmなどの情報は、表示装置2への表示に限らず、スピーカからの音声出力など、別の手段で利用者に報知されてもよい。
このような本実施形態の制御処理によれば、各乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rtが、利用者数Ncが少ない場合には小さくなるように、建物内の利用者数Ncに応じて更新される。従って、利用者数Ncが少ない場合には、乗車率の上限値Rtが小さくなることで乗りかご100内の混雑が確実に緩和される。また本実施形態では、乗車率の上限値Rtは、対象となるエレベータにおいて必要な輸送能力Wqnを発揮できるように更新される。よって、本実施形態の制御処理によれば、エレベータにおいて、必要な輸送能力Wqnを発揮しつつ、乗りかご100内の混雑を緩和することが可能になる。
更に、本実施形態の制御処理によれば、各乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rtが、建物内の利用者数Ncが増えた場合に大きくなるように、建物内の利用者数Ncに応じて更新される。従って、利用者数Ncが増えた場合には、乗車率の上限値Rtが大きくなることでエレベータ自体の輸送能力が向上し(1回の輸送で運ぶことができる輸送人数が増加し)、その結果として、多くの利用者を効率良く輸送することが可能になる。
[3]変形例
[3-1]第1変形例
上述した更新処理において、群管理制御装置104は、全ての乗りかご100において乗車率の上限値Rtを一律に更新することに代えて、当該乗りかご100の少なくとも一部において、乗車率の上限値Rtを、建物内の利用者数Ncに応じて更新してもよい。
一例として、群管理制御装置104は、エレベータが備える乗りかご100のうちの何れか1つの乗りかご100において、当該乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rtを建物内の利用者数Ncに応じて更新し、その乗車率の上限値Rtが所定値r2に達した場合には、更に別の1つの乗りかご100において、当該乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rtを建物内の利用者数Ncに応じて更新することができる。そして、群管理制御装置104は、このような乗車率の上限値Rtの更新を、当該乗車率の上限値Rtが所定値r2に達するごとに更新対象の乗りかご100を代えて順次行うことができる。以下、この例について具体的に説明する。
<更新処理>
図9は、第1変形例で実行される更新処理の一例を示したフローチャートである。更新処理が開始されると、群管理制御装置104は、変数R(x)(xは、1≦x≦Neの整数。Neは、乗りかご100の総数)の何れにも初期値r0を代入する(ステップS311)。ここで、乗りかご100は、それらを識別するために1番目からNe番目までナンバリングされており、変数R(x)は、x番目の乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rt(x)についての更新候補値を決定するための変数である。また、その初期値r0は、乗りかご100内の混雑を緩和できる値(例えば、0.1(10%))に設定されている。ステップS311では更に、変数nに、その初期値として1が代入される。ここで、変数nは、後述するステップS314Aでの判断対象にすべき乗りかご100の番号を特定するための変数である。
次に、群管理制御装置104は、利用者数Ncに対するエレベータ全体の輸送能力Wqを用いて、当該輸送能力Wqが、対象となるエレベータにおいて必要な輸送能力Wqnとなるように、変数R(x)の値(更新候補値)を決定する(ステップS312~S314)。
ここで、本変形例で用いられる輸送能力Wqは、乗りかご100ごとの輸送能力Wr(x)を用いて、1番目の乗りかご100からNe番目の乗りかご100までのそれぞれの輸送能力Wr(x)を足し合わせたもの(輸送能力Wr(x)の総和)である。また、輸送能力Wr(x)は、x番目の乗りかご100で輸送できる単位時間当たりの輸送人数Nr(x)の、建物内の利用者数Ncに対する割合である。そして、この輸送能力Wr(x)は、x番目の乗りかご100についての所定時間(通常は、所定時間=5分間)あたりの周回数Ir(x)、及びx番目の乗りかご100の乗車定員数Ns(x)を用いて、以下の数式(2)で算出される。
≪数式(2)≫
Wr(x)=Nr(x)/Nc=(Ir(x)×Ns(x)×R(x))/Nc。
具体的には、群管理制御装置104は先ず、そのときの変数R(x)の値を数式(2)に代入して各乗りかご100の輸送能力Wr(x)を求めると共に、当該輸送能力Wr(x)の総和を求めることにより、エレベータ全体の輸送能力Wqを算出する(ステップS312)。その後、群管理制御装置104は、ステップS312で算出した輸送能力Wqの値が所定値Wq0以上であるか否かを判断する(ステップS313)。ここで、所定値Wq0は、対象となるエレベータにおいて必要な輸送能力Wqnの下限値となるように設定される。一例として、そのような下限値は、乗場で利用者を長時間待たせることのないエレベータの運行を可能にするものであり、建物の用途などに応じて通常は0.12(12%)~0.20(20%)に設定される。
群管理制御装置104は、ステップS313にて「輸送能力Wqの値は所定値Wq0以上でない(No)」と判断した場合、その判断を以て、そのときの輸送能力Wqでは必要な輸送能力Wqnを発揮できないと判断できる。この場合、群管理制御装置104は、必要な輸送能力Wqnを発揮できる変数R(x)の値を導き出すべく、ステップS313にて「輸送能力Wqの値は所定値Wq0以上である(Yes)」と判断できるまで、1番目の乗りかご100から順に変数R(x)の値を増加させていく。具体的には、以下のとおりである。
群管理制御装置104は、ステップS313にて「輸送能力Wqの値は所定値Wq0以上でない(No)」と判断した場合、変数R(n)の値が所定値r2より小さい値であるか否かを判断する(ステップS314A)。ここで、所定値r2は、乗りかご100自体が高い輸送能力を発揮できる値(例えば、0.8(80%))に設定される。
そして、群管理制御装置104は、ステップS314Aにて「所定値r2より小さい値である(Yes)」と判断した場合には、その判断を以て、n番目の乗りかご100についての変数R(n)は未だ所定値r2に到達しておらず、当該変数R(n)には値を増加させる余地がある、と判断できる。この場合、群管理制御装置104は、変数R(n)の値に所定の変化量Δrを加算したものを変数R(n)の新たな値とし(ステップS314B)、その新たな値を用いて、ステップS312からの処理を再び実行する。
一方、群管理制御装置104は、ステップS314Aにて「所定値r2より小さい値でない(No)」と判断した場合には、その判断を以て、n番目の乗りかご100についての変数R(n)は既に所定値r2に到達しており、当該変数R(n)には値を増加させる余地がない、と判断できる。この場合、群管理制御装置104は、変数nの値に1を換算したものを変数nの新たな値とし(ステップS314C)、その新たな値を用いて、ステップS314Aの処理を再び実行する。そして、群管理制御装置104は、ステップS314Aにて「所定値r2より小さい値である(Yes)」と判断できるまで、ステップS314Cからの一連の処理を繰り返し実行する。即ち、群管理制御装置104は、値を増加させる余地のある変数R(n)を見付けることができるまで、変数nの値を順次増加させていく。
このような処理によれば、変数R(n)を増加させる処理(ステップS314B)が、1番目(n=1)の乗りかご100から始まり、変数R(n)が所定値r2に到達するごとに、対象となる乗りかご100を次の番号のものに代えて順次行われる。
そして、群管理制御装置104は、ステップS313にて「輸送能力Wqの値は所定値Wq0以上である(Yes)」と判断した場合には、その判断を以て、そのときの輸送能力Wqで必要な輸送能力Wqnを発揮できると判断できる。この場合、群管理制御装置104は、そのときの変数R(x)の値を用いて、各乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rt(x)を更新する(ステップS315)。
このように本変形例では、群管理制御装置104は、乗車率の上限値Rt(x)を一律に更新するのではなく、建物に設けられている乗りかご100のうちの、建物内の利用者数Ncに応じた少なくとも一部の乗りかご100に限定して、乗車率の上限値Rt(x)を更新する。
このような更新処理によれば、建物内の利用者数Ncが増加した場合でも、対象となるエレベータにおいて必要な輸送能力Wqnを発揮しつつ、混雑が緩和された乗りかご100をできるだけ残すことが可能になる。
<呼び登録処理>
本変形例の更新処理によれば、乗りかご100には、乗車率の上限値Rt(x)がモード決定用閾値r1以下の値に設定されて混雑緩和モードで運行されるものと、乗車率の上限値Rt(x)がモード決定用閾値r1より大きい値に設定されて輸送重視モードで運行されるものと、が混在することになる。そこで本変形例では、群管理制御装置104は、呼び登録処理を以下のように実行する。尚、以下では、図7を参照しつつ、実施形態で説明した呼び登録処理と異なる点について具体的に説明する。
ステップS402(割当対象となり得る乗りかご100を抽出するステップ)では、群管理制御装置104は、乗りかご100(1番目~Ne番目の乗りかご100)のうちの、既に割り当てられている乗場呼びの割当数が割当上限数Nt(x)(=乗車定員数Ns(x)×乗車率の上限値Rt(x))に達していないものを抽出する。そして、ステップS404(乗場呼びを割り当てるステップ)では、群管理制御装置104は、ステップS402で抽出した乗りかご100から最適な乗りかご100(x=xc)を選択し、その乗りかご100に乗場呼びを割り当てる。
ステップS404での乗りかご100(x=xc)への乗場呼びの割当て後、群管理制御装置104は、その乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rt(xc)に基づいて、当該乗りかご100が、混雑の緩和を重視した混雑緩和モードで運行されているのか、それとも輸送の効率を重視した輸送重視モードで運行されているのかを、当該乗場呼びを行った利用者に報知する。
具体的には、群管理制御装置104は、乗りかご100(x=xc)の輸送モードPm(xc)が混雑緩和モード及び輸送重視モードのどちらであるのかを決定するべく、その乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rt(xc)が、モード決定用閾値r1以下であるか否かを判断する(ステップS405)。一例として、モード決定用閾値r1は、乗りかご100内の混雑を緩和できる値の上限値であり、例えば0.2(20%)に設定される。
そして、群管理制御装置104は、ステップS405にて「モード決定用閾値r1以下である(Yes)」と判断した場合には、その判断を以て、乗りかご100(x=xc)の輸送モードPm(xc)を「混雑緩和モード」に決定する(ステップS406A)。一方、群管理制御装置104は、ステップS405にて「モード決定用閾値r1以下でない(No)」と判断した場合には、その判断を以て、乗りかご100(x=xc)の輸送モードPm(xc)を「輸送重視モード」に決定する(ステップS406B)。
このような呼び登録処理によれば、混雑緩和モードで運行される乗りかご100と輸送重視モードで運行される乗りかご100とが混在する場合でも、割当対象として選択された乗りかご100(x=xc)の輸送モードPm(xc)が、その乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rt(xc)に基づいて決定されて、利用者に報知される。従って、利用者に対して、その利用者が乗車すべき乗りかご100がどのような輸送モードPm(x)で運行されているのかを正確に知らせることができる。
<他の例>
本変形例の更新処理において、群管理制御装置104は、乗車率の上限値Rtの更新対象となる乗りかご100を建物内の利用者数Ncに応じて1つずつ順に増やしていく場合に限らず、乗りかご100を幾つかずつのグループに纏め、グループごとに、乗車率の上限値Rtを所定値r2に達するまで一律に更新するものとして、更新対象となるグループを建物内の利用者数Ncに応じて1つずつ順に増やしていってもよい。
即ち、群管理制御装置104は、エレベータが備える乗りかご100のうちの幾つかの乗りかご100(グループ)において、当該乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rtを建物内の利用者数Ncに応じて更新し、その乗車率の上限値Rtが所定値r2に達した場合には、更に別の幾つかの乗りかご100(別のグループ)において、当該乗りかご100に設定されている乗車率の上限値Rtを建物内の利用者数Ncに応じて更新することができる。そして、群管理制御装置104は、このような乗車率の上限値Rtの更新を、当該乗車率の上限値Rtが所定値r2に達するごとに更新対象の乗りかご100(グループ)を代えて順次行うことができる。
[3-2]第2変形例
上述した更新処理において、乗りかご100のうちの何れか1つ又は幾つかの乗りかご100については、乗車率の上限値Rtが、更新されずに初期値r0のまま維持されてもよい。このような更新処理によれば、建物内の利用者数Ncが増加した場合でも、混雑が緩和された乗りかご100を必ず残すことが可能になる。
[3-3]第3変形例
上述した更新処理は、建物内の利用者数Ncが変化するごと(即ち、取得処理(図5参照)を実行するごと)に実行される場合に限らず、建物内の利用者数Ncに所定数の変化があった場合にのみ実行されてもよい。
[3-4]第4変形例
上述した更新処理において、乗車率の上限値Rtについての更新候補値の決定には、変数Rの値を変化させてWq≧Wq0を満たす値を探し出す方法(図6のステップS302~S304)に限らず、以下のような別の方法が適宜用いられてもよい。
一例として、変数Rについての方程式Wq=Wq0(Wqを表す数式については、数式(1)参照)を解くことによって更新候補値を直接的に導き出す方法が用いられもよい。
他の例として、建物内の利用者数Ncとして取得し得る幾つかの値のそれぞれに、乗車率の上限値Rtとして必要な輸送能力Wqnを発揮できる値(更新候補値)を対応付けた更新管理データ(テーブル)を予め用意しておき、建物内の利用者数Ncを取得した場合に、その利用者数Ncに対応する値(更新候補値)を更新管理データから取得する方法が用いられてもよい。
[3-5]第5変形例
上述した取得処理において、進入者数Na及び退出者数Nbのカウントには、認証が成功するごとにセキュリティサーバ102から送信されてくる情報(属性情報Pb)を用いてカウントする方法(図5のステップS201~S202B)に限らず、例えば監視カメラの画像に基づいてカウントする方法など、別の方法が適宜用いられもよい。
[3-6]第6変形例
上述した制御処理において、割当上限数Nt(又はNt(x))と乗車率の上限値Rt(又はRt(x))との間にNt=Ns×Rt(又はNt(x)=Ns(x)×Rt(x))という関係があることに鑑みれば、群管理制御装置104は、乗車率の上限値Rtを更新することに代えて、割当上限数Nt(又はNt(x))を建物内の利用者数Ncに応じて更新してもよい。即ち、群管理制御装置104は、乗車率の上限値Rtを更新することによって割当上限数Ntを間接的に更新することに代えて、割当上限数Ntを直接的に更新してもよい。
[3-7]他の変形例
上述したエレベータの制御処理(取得処理、更新処理、及び呼び登録処理)は、乗りかご100を複数備えたエレベータに限らず、乗りかご100を1つだけ備えたエレベータにも適用できる。この場合、エレベータ制御装置103が、本発明に係る制御装置の一実施形態として、上述したエレベータの制御処理(取得処理、更新処理、及び呼び登録処理)を実行することになる。
上述したエレベータの全体構成は、セキュリティサーバ102を設けずに、規制装置101で識別情報Piの認証を行うものや、群管理制御装置104で識別情報Piの認証を行うものに変形されてもよい。この場合、エレベータの制御処理は、管理情報Pjを用いずに識別情報Piだけを用いて行われてもよい。
上述の実施形態及び変形例の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態又は変形例ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
尚、上述の実施形態及び変形例からは、発明の対象として、エレベータの制御処理を実行する制御装置(群管理制御装置104など)に限らず、制御装置の構成の一部や制御処理の一部などが部分的に抽出されてもよい。