JP2022084533A - 絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
【課題】高電圧駆動やインバータ駆動がなされるモータのコイルに用いられた場合であっても、部分放電の発生を抑制するとともに、皮膜割れの発生を抑制する絶縁電線を提供する。【解決手段】長尺状に形成された導体と、導体の周囲を覆う絶縁層が1つ又は複数積層されて構成された絶縁皮膜と、を有する絶縁電線は、絶縁層は、空孔領域と、樹脂領域とを有する。空孔領域は、樹脂と複数の空孔とにより構成される。樹脂領域は、樹脂により構成される。絶縁層は、径方向内側の第1の界面と径方向外側の第2の界面との間に界面が設けられておらず、かつ、前記第1の界面から前記第2の界面に沿って、空孔領域と樹脂領域とがこの順序で配置されている。【選択図】図1
Description
本開示は、絶縁電線に関する。
長尺状に形成された導体の周面に絶縁皮膜を設けた絶縁電線が知られている(例えば、特許文献1参照)。
当該絶縁電線は、例えば、産業用のモータのコイルなどに用いられる。
当該絶縁電線は、例えば、産業用のモータのコイルなどに用いられる。
産業用のモータにおいて、高出力が要求される場合には高電圧駆動がなされる。また、インバータを用いた可変電圧又は可変周波数の交流電源によってモータの速度制御が行われるインバータ駆動がなされる。
インバータ駆動では、スイッチングによってインピーダンスの不連続点において反射が発生し、出力電圧の2倍程度の電圧が印加される現象であるインバータサージが発生する。
高電圧駆動のために産業用モータに印加される高電圧や、インバータ駆動で発生するインバータサージにより、モータのコイルに用いられる絶縁電線の絶縁皮膜に部分放電が発生する可能性がある。部分放電が発生すると、絶縁皮膜が浸食され、絶縁不良の原因となるという問題があった。
高電圧駆動のために産業用モータに印加される高電圧や、インバータ駆動で発生するインバータサージにより、モータのコイルに用いられる絶縁電線の絶縁皮膜に部分放電が発生する可能性がある。部分放電が発生すると、絶縁皮膜が浸食され、絶縁不良の原因となるという問題があった。
この問題を解決するために、比誘電率が小さい絶縁皮膜を用いることにより、部分放電開始電圧を高くし、部分放電の発生を抑制することが考えられる。ここで、絶縁皮膜の比誘電率を小さくするには、絶縁皮膜内に複数の空孔を設けることが考えられる。
しかしながら、絶縁皮膜内に複数の空孔を設けた場合には、例えば、絶縁皮膜内の複数の空孔同士が絶縁皮膜の厚さ方向に沿って連なって結合(以下、連通とも記載する)する可能性がある。このように連通した空孔部(以下、連通部とも記載する)を有する絶縁皮膜を有する絶縁電線を、モータのコイルに加工するためにらせん状になるよう屈曲や伸長を行うと、屈曲や伸長の際に引っ張り方向に加わる力により、絶縁皮膜において連通部を起点とする厚さ方向に沿った割れ(以下、皮膜割れとも記載する)が発生する可能性がある。そして、発生した皮膜割れにより絶縁皮膜の絶縁性が低下する可能性があった。
本開示は、高電圧駆動やインバータ駆動がなされるモータのコイルに用いられた場合であっても、部分放電の発生を抑制するとともに、皮膜割れの発生を抑制する絶縁電線を提供することを目的とする。
本開示の一態様は、長尺状に形成された導体と、導体の周囲を覆う絶縁層が1つ又は複数積層されて構成された絶縁皮膜と、を有する絶縁電線であって、絶縁層は、空孔領域と、樹脂領域とを有する。空孔領域は、樹脂と複数の空孔とにより構成される。樹脂領域は、樹脂により構成される。絶縁層は、径方向内側の第1の界面と径方向外側の第2の界面との間に界面が設けられておらず、かつ、前記第1の界面から前記第2の界面に沿って、空孔領域と樹脂領域とがこの順序で配置されている。
このような構成によれば、絶縁皮膜に含まれる絶縁層には、空孔を有する空孔領域が設けられる。これにより、空孔を有する絶縁層を有しない絶縁皮膜と比べて、比誘電率を低くすることができ、部分放電開始電圧を高くしやすくなる。
また、絶縁層内において、樹脂領域は空孔領域よりも径方向に沿って外側に位置するように配置される。このような構成によれば、絶縁層内において、屈曲や伸長により引っ張り方向に力が加わりやすい導体から遠い領域に樹脂領域が設けられ、屈曲や伸長により引っ張り方向に力が加わりにくい導体に近い領域に空孔領域が設けられる。これにより、屈曲や伸長により引っ張り方向に力が加わったとしても、連通部を起点とした皮膜割れが生じることを抑制することができる。
[1.構成]
本実施形態の絶縁電線1は、例えば、モータなどのコイルに用いられるエナメル線である例に適用して説明する。
本実施形態の絶縁電線1は、例えば、モータなどのコイルに用いられるエナメル線である例に適用して説明する。
絶縁電線1の長手方向に対して直交する断面の概略を表した断面図を図1に示す。
図1に示すように、絶縁電線1は、長尺状に延びた導体3と導体3の周面を覆う絶縁皮膜5により構成される。なお、本実施形態では、導体3の断面の形状が円形に形成されている例に適用して説明する。
図1に示すように、絶縁電線1は、長尺状に延びた導体3と導体3の周面を覆う絶縁皮膜5により構成される。なお、本実施形態では、導体3の断面の形状が円形に形成されている例に適用して説明する。
導体3は、一般的に用いられる金属製の導線として用いられるものである例に適用して説明する。なお、導体3に用いられる金属としては、例えば、銅、銅を含む合金、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金が用いられてもよい。また、導体3としては、例えば、酸素含有量が30ppm以下の低酸素銅、又は無酸素銅が用いられてもよい。
本実施形態の導体3としては、径が0.8mmの丸銅線を用いられる例に適用して説明する。
絶縁皮膜5は、導体3の周面を覆い、絶縁皮膜5の外側の物と絶縁皮膜5の内側に位置する導体3とが接触などにより導通することを抑制するものである。
絶縁皮膜5は、導体3の周面を覆い、絶縁皮膜5の外側の物と絶縁皮膜5の内側に位置する導体3とが接触などにより導通することを抑制するものである。
ここでいう外側とは、導体3の長尺方向に直交する断面において、導体3の径方向に沿って導体3に対して絶縁皮膜5が位置する側を表し、内側とは、外側とは反対に、導体3の長尺方向に直交する断面において、導体3の径方向に沿って絶縁皮膜5に対して導体3が位置する側を表す。
なお、絶縁皮膜5は、材料として、熱硬化性樹脂が用いられる例に適用して説明する。熱硬化性樹脂として、ポリイミド又はポリアミドイミドなどが用いられてもよい。
本実施形態では、絶縁皮膜5に用いられる熱硬化樹脂としてポリイミドが用いられる例に適用して説明する。
本実施形態では、絶縁皮膜5に用いられる熱硬化樹脂としてポリイミドが用いられる例に適用して説明する。
また、絶縁皮膜5は、導体3の周囲に熱硬化樹脂を含む絶縁塗料を1回塗布して1つの塗膜層を形成し、当該塗膜層を1回焼き付けして(硬化させて)形成される1つの絶縁層51、又は上述した絶縁塗料の塗布と焼き付けとを複数回繰り返し行い、同種の絶縁塗料からなる複数の絶縁層51を積層させた構造からなる。1つの絶縁層51は、厚さが1μm以上10μm未満(例えば、3μm程度)に形成される。複数の絶縁層51の積層により、隣接する絶縁層51同士のそれぞれが互いに接触する部分の内側と外側とには界面が形成され、絶縁層51の内部(=導体3の外面と接触する絶縁層51の内面)には、絶縁層51の界面を有しない。ここでいう絶縁層51の界面とは、例えば、絶縁層51の層とそれ以外の境界となる面をいい、具体的には、径方向に隣接する絶縁層51と絶縁層51との間の層や、絶縁層51と空気などの気体の層との境界であってもよい。なお、以下では、複数の絶縁層51のそれぞれにおいて、径方向に沿って内側の界面を第1の界面とも記載し、径方向に沿って外側の界面を第2の界面とも記載する。
図2は、1つの絶縁層51の内部を模式的に表した断面図である。また、図2は、絶縁電線1の長尺方向に対して直交する断面視における断面図である。また、図2において、紙面上側を絶縁電線1の外側、紙面下側を絶縁電線1の内側として説明する。なお、図3から図5まで及び図7から図8までの図においても、紙面上側を絶縁電線1の外側、紙面下側を絶縁電線1の内側として説明する。また、図2、図3、図7及び図8では説明のために、絶縁層51の上面及び下面は平面であるように記載したが、絶縁層51は、導体3の周面の形状に沿って湾曲した形状であってもよい。
図2に示すように、絶縁層51は、内部に複数の空孔Vaを有する。以下では、絶縁層51において、空孔Vaが形成されておらず、樹脂により形成された領域を樹脂領域511と記載し、樹脂と複数の空孔Vaとを有する領域を空孔領域513と記載する。すなわち、本実施形態では、樹脂領域511は、空孔Vaを有しない無空孔領域である。また、本実施形態では、空孔領域513を構成する樹脂が樹脂領域511を構成する樹脂と同じ樹脂からなる。
本実施形態では、空孔領域513に含まれる空孔Vaの大きさは、0.1μm以上2μm以下である例に適用して説明する。また、空孔Vaの形状は、例えば、楕円形状又は円形状に形成される。
なお、絶縁層51において、樹脂領域511は、絶縁層51の外側寄り、空孔領域513は、絶縁層51の内側寄りに位置する。言い換えると、樹脂領域511は、絶縁層51の厚さ方向(すなわち、径方向)において、導体3から遠い領域に位置しており、空孔領域513は、絶縁層51の厚さ方向において、導体3に近い領域に位置している。空孔領域513の内側の表面は、絶縁層51において、第1の界面であり、樹脂領域511の外側の表面は、絶縁層51において、第2の界面である。
また、1つの絶縁層51に含まれる樹脂領域511の厚さは、その絶縁層51の厚さに対して、5%以上70%以下の厚さを有する。
絶縁皮膜5における絶縁層51の積層構造を模式的に表した断面図を図3に示す。
絶縁皮膜5における絶縁層51の積層構造を模式的に表した断面図を図3に示す。
図3に示すように、絶縁皮膜5を形成する複数の絶縁層51のそれぞれにおいて、絶縁層51の外側の領域が樹脂領域511、絶縁層51の領域が空孔領域513である。すなわち、積層した複数の絶縁層51において、樹脂領域511と空孔領域513とは、絶縁電線1の径方向に沿って交互に隣接するように配置される。具体的には、図3に示すように、絶縁皮膜5の内側から順に絶縁層51a、絶縁層51b、絶縁層51cの順に積層している例に適用して説明する。なお、以下では、絶縁層51a、絶縁層51b及び絶縁層51cの樹脂領域511をそれぞれ樹脂領域511a、樹脂領域511b及び樹脂領域511cとも記載し、絶縁層51a、絶縁層51b及び絶縁層51cの空孔領域513をそれぞれ、空孔領域513a、空孔領域513b及び空孔領域513cとも記載する。
内側の絶縁層51aと、その絶縁層51aと隣接する絶縁層51bとの間で、絶縁層51aの樹脂領域511aと絶縁層51bの空孔領域513bとが隣接する。同様に隣接する絶縁層51bと、その絶縁層51bと隣接する絶縁層51cとの間で、樹脂領域511bと空孔領域513cとが隣接する。
なお、絶縁皮膜5において最も外側に位置する絶縁層51の外側の表面は、樹脂領域511の表面(第2の界面)である。
図4に、SEMにより撮像した絶縁層51の断面の画像を示す。また、図5に絶縁層51を拡大した図を示す。なお、図4に示した拡大図は、SEMにおいて倍率を2000倍に設定し、撮像した画像である。ここでいうSEMとは、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)の略称である。
図4に、SEMにより撮像した絶縁層51の断面の画像を示す。また、図5に絶縁層51を拡大した図を示す。なお、図4に示した拡大図は、SEMにおいて倍率を2000倍に設定し、撮像した画像である。ここでいうSEMとは、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)の略称である。
図4及び図5に示すように、SEMにより撮像された絶縁層51において、樹脂領域511と空孔領域513との境目は観察されない。
<絶縁皮膜の材料>
絶縁皮膜5を形成するポリイミドは、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを重合し、得られたポリアミド酸をイミド化することにより製造される例に適用して説明する。
<絶縁皮膜の材料>
絶縁皮膜5を形成するポリイミドは、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを重合し、得られたポリアミド酸をイミド化することにより製造される例に適用して説明する。
ジアミンとしては、例えば、1,4―ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、1,3―ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3―ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'―ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(BODA)、4,4'―ジアミノジフェニルエーテル(ODA)が用いられてもよい。
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3',4,4'―ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3',4,4'―ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4'―オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4'―(2,2―ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)などが用いられてもよい。
なお、絶縁皮膜5に用いられる高分子材料であるポリイミドは、高分子の末端部分がキャッピングされたものが用いられてもよい。
キャッピングに用いられる材料としては、無水酸を含む化合物、又はアミノ酸を含む化合物が用いられてもよい。
キャッピングに用いられる材料としては、無水酸を含む化合物、又はアミノ酸を含む化合物が用いられてもよい。
キャッピングに用いられる無水酸を含む化合物としては、例えば、フタル酸無水物、4-メチルフタル酸無水物、3―メチルフタル酸無水物、1,2―ナフタル酸無水物マレイン酸無水物、2,3―ナフタレンジカルボン酸無水物、各種フッ素化フタル酸無水物、各種ブロム化フタル酸無水物、各種クロル化フタル酸無水物、2,3―アントラセンジカルボン酸無水物、4―エチニルフタル酸無水物、4-フェニルエチニルフタル酸無水物などが用いられてもよい。
キャッピングに用いられるアミノ基を含む化合物としては、アミノ基を1つ含む化合物が用いられてもよい。
絶縁皮膜5に用いられるポリイミドの合成は、材料を溶剤に溶解させた状態で合成されるものである例に適用して説明する。また、ポリイミドの合成した後、溶剤に溶けた状態のポリイミドを絶縁塗料として用いる例に適用して説明する。
絶縁皮膜5に用いられるポリイミドの合成は、材料を溶剤に溶解させた状態で合成されるものである例に適用して説明する。また、ポリイミドの合成した後、溶剤に溶けた状態のポリイミドを絶縁塗料として用いる例に適用して説明する。
絶縁皮膜5に用いられるポリイミドの合成及び塗料の溶剤としては、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN,N-ジメチルスルホキシド(DMF)等の極性非プロトン性溶媒の溶剤、γ―ブチロラクトン、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、炭化水素系などの溶剤が用いられてもよい。なお、これらの溶剤のうち、複数の溶剤を併用してもよい。
本実施形態では絶縁皮膜5に用いられるポリイミドにおいて、酸無水物の成分とジアミン成分との配合モル比は、100:100の比率である例に適用して説明する。なお、酸無水物の成分とジアミン成分との配合モル比は、100:100の比率である場合に限定されるものではなく、絶縁皮膜5の可撓性などの損なわない程度で比率が異なっていてもよい。例えば、ジアミン成分が酸無水物の成分に対して過剰に配合されてもよい。
このようなモル比で配合されたポリイミドによれば、分子量を小さくすることができ、塗料の粘度を小さくすることができる。その結果、後述する絶縁皮膜5を形成するための絶縁塗料を塗布する作業の作業性を向上させることができる。例えば、酸無水物の成分とジアミン成分との配合モル比は、100:100.1以上100:100.7以下の範囲であってもよい。
また、反対に、酸無水物の成分がジアミン成分に対して過剰に配合されてもよい。
絶縁皮膜5を形成する絶縁塗料は、ポリアミック酸の特性を損ねない程度の温度で合成される。具体的な温度としては、例えば0℃から100℃までの温度であってもよい。また、絶縁皮膜5を形成する絶縁塗料を合成した後、例えば50℃から100℃までの温度に加温した状態で攪拌することにより、絶縁皮膜5を形成する絶縁塗料の粘度が調整されてもよい。
絶縁皮膜5を形成する絶縁塗料は、ポリアミック酸の特性を損ねない程度の温度で合成される。具体的な温度としては、例えば0℃から100℃までの温度であってもよい。また、絶縁皮膜5を形成する絶縁塗料を合成した後、例えば50℃から100℃までの温度に加温した状態で攪拌することにより、絶縁皮膜5を形成する絶縁塗料の粘度が調整されてもよい。
本実施形態における絶縁皮膜5の空孔領域513の空孔Vaは、発泡剤を用いることにより形成される。
[2.作用]
<絶縁電線の作製方法>
絶縁電線1の作製手順について説明する。
[2.作用]
<絶縁電線の作製方法>
絶縁電線1の作製手順について説明する。
本実施形態の導体3としては、直径が0.8mmの丸銅線を用いられる例に適用して説明する。導体3にギャップ25μm以上30μm以下のダイスを用いて絶縁塗料を塗布し、300℃から400℃までの温度勾配を設けた炉内で焼き付けを行い、絶縁層51を形成する。絶縁塗料の塗布と焼き付けを行うことにより生成される絶縁皮膜5の厚さが40μmとなるように、繰り返し絶縁層51を積層させる。なお、本実施形態では、1回の塗布及び焼き付けにより、3μm程度の厚さの絶縁層51が一層形成される例に適用して説明する。
<絶縁塗料の合成方法>
絶縁電線1が有する絶縁皮膜5に用いられる絶縁塗料の合成は以下の手順で行った。異なる条件で作成した絶縁電線1をそれぞれ実施例1~実施例3として説明し、実施例1~実施例3により作成した絶縁電線1と比較するために作成した絶縁電線の作成方法を比較例1~比較例6として説明する。
絶縁電線1が有する絶縁皮膜5に用いられる絶縁塗料の合成は以下の手順で行った。異なる条件で作成した絶縁電線1をそれぞれ実施例1~実施例3として説明し、実施例1~実施例3により作成した絶縁電線1と比較するために作成した絶縁電線の作成方法を比較例1~比較例6として説明する。
(実施例1)
ジアミンの原料(以下、ジアミン原料とも記載する)となる、それぞれ同じ物質量の4,4'-ジアミノジフェニルエーテルと1,3―ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンとをDMAcに溶解させる。なお、DMAcには、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル1.00molに対して1,3―ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン1.00molのモル比で溶解させる。
ジアミンの原料(以下、ジアミン原料とも記載する)となる、それぞれ同じ物質量の4,4'-ジアミノジフェニルエーテルと1,3―ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンとをDMAcに溶解させる。なお、DMAcには、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル1.00molに対して1,3―ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン1.00molのモル比で溶解させる。
次に、酸二無水物の原料(以下、酸二無水物原料とも記載する)となる、それぞれ同じ物質量のピロメリット酸二無水物とジフェニル-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)とをジアミン原料1.00molに対して、1.03mol溶解させる。
窒素中、室温にて12時間攪拌することによりポリイミド塗料が得られる。ポリイミド塗料とはジアミン原料と酸二無水物原料とからなるポリイミド前駆体(ポリアミック酸)が溶剤に溶解又は分散した絶縁塗料をいう。
当該方法で得られたポリイミド塗料を以下では絶縁塗料P1x(図6に示す塗料1)とも記載する。
当該方法で得られたポリイミド塗料を以下では絶縁塗料P1x(図6に示す塗料1)とも記載する。
当該絶縁塗料P1xに発泡剤として、主溶剤であるDMAcに溶解し、210℃以上の沸点を有する化合物(高沸点溶剤)を添加する。絶縁塗料P1xに当該発泡剤を添加した塗料を絶縁塗料P1とも記載する。
(実施例2)
ジアミン原料の4,4'―ジアミノジフェニルエーテルをDMAcに溶解する。次に、酸二無水物原料であるピロメリット酸二無水物をジアミン原料1.00molに対して、1.05mol溶解させる。次に当該溶液を、窒素中、室温にて12時間攪拌することにより、ポリイミド塗料が得られる。
ジアミン原料の4,4'―ジアミノジフェニルエーテルをDMAcに溶解する。次に、酸二無水物原料であるピロメリット酸二無水物をジアミン原料1.00molに対して、1.05mol溶解させる。次に当該溶液を、窒素中、室温にて12時間攪拌することにより、ポリイミド塗料が得られる。
当該方法で得られたポリイミド塗料を以下では絶縁塗料P2xとも記載する。
当該絶縁塗料P2xに発泡剤として、主溶剤であるDMAcに溶解し、210℃以上の沸点を有する化合物(高沸点溶剤)を添加する。絶縁塗料P2x(図6に示す塗料2)に当該発泡剤を添加した塗料を絶縁塗料P2とも記載する。
当該絶縁塗料P2xに発泡剤として、主溶剤であるDMAcに溶解し、210℃以上の沸点を有する化合物(高沸点溶剤)を添加する。絶縁塗料P2x(図6に示す塗料2)に当該発泡剤を添加した塗料を絶縁塗料P2とも記載する。
(実施例3)
トリメリット酸無水物と4,4'-ジフェニルメタンジフェニルメタンジイソシアネートとを、NMPに溶解させる。なお、NMPには、トリメリット酸無水物1.00molに対して4,4'-ジフェニルメタンジフェニルメタンジイソシアネート1.02molのモル比で溶解させる。そして、次に当該溶液を、窒素中、160℃にて4時間攪拌することにより、ポリアミドイミド塗料が得られる。ポリアミドイミド塗料とはポリアミドイミドが溶剤に溶解又は分散した絶縁塗料をいう。
トリメリット酸無水物と4,4'-ジフェニルメタンジフェニルメタンジイソシアネートとを、NMPに溶解させる。なお、NMPには、トリメリット酸無水物1.00molに対して4,4'-ジフェニルメタンジフェニルメタンジイソシアネート1.02molのモル比で溶解させる。そして、次に当該溶液を、窒素中、160℃にて4時間攪拌することにより、ポリアミドイミド塗料が得られる。ポリアミドイミド塗料とはポリアミドイミドが溶剤に溶解又は分散した絶縁塗料をいう。
当該方法で得られたポリアミドイミド塗料を以下では絶縁塗料P3x(図6に示す塗料3)とも記載する。
当該絶縁塗料P3xに発泡剤として、主溶剤であるNMPに溶解し、210℃以上の沸点を有する化合物(高沸点溶剤)を添加する。絶縁塗料P3xに当該発泡剤を添加した塗料を絶縁塗料P3とも記載する。
当該絶縁塗料P3xに発泡剤として、主溶剤であるNMPに溶解し、210℃以上の沸点を有する化合物(高沸点溶剤)を添加する。絶縁塗料P3xに当該発泡剤を添加した塗料を絶縁塗料P3とも記載する。
(比較例1)
比較例1では、絶縁塗料P1xに対して、発泡剤を添加することなく、絶縁塗料P1xを絶縁塗料として用いた。
比較例1では、絶縁塗料P1xに対して、発泡剤を添加することなく、絶縁塗料P1xを絶縁塗料として用いた。
(比較例2)
比較例2では、絶縁塗料P1xに発泡剤として、粒径約1.0μmの分解性のポリマ微粒子を添加した絶縁塗料P1を絶縁塗料として用いた。
比較例2では、絶縁塗料P1xに発泡剤として、粒径約1.0μmの分解性のポリマ微粒子を添加した絶縁塗料P1を絶縁塗料として用いた。
(比較例3)
比較例3では、絶縁塗料P2xに対して、発泡剤を添加することなく、絶縁塗料P2xを絶縁塗料として用いた。
比較例3では、絶縁塗料P2xに対して、発泡剤を添加することなく、絶縁塗料P2xを絶縁塗料として用いた。
(比較例4)
比較例4では、絶縁塗料P2xに発泡剤として、粒径約1.0μmの分解性のポリマ微粒子を添加した絶縁塗料P2を絶縁塗料として用いた。
比較例4では、絶縁塗料P2xに発泡剤として、粒径約1.0μmの分解性のポリマ微粒子を添加した絶縁塗料P2を絶縁塗料として用いた。
(比較例5)
比較例5では、絶縁塗料P3xに対して、発泡剤を添加することなく、絶縁塗料P3xを絶縁塗料として用いた。
比較例5では、絶縁塗料P3xに対して、発泡剤を添加することなく、絶縁塗料P3xを絶縁塗料として用いた。
(比較例6)
比較例6では、絶縁塗料P3xに発泡剤として、粒径約1.0μmの分解性のポリマ微粒子を添加した絶縁塗料P3を絶縁塗料として用いた。
比較例6では、絶縁塗料P3xに発泡剤として、粒径約1.0μmの分解性のポリマ微粒子を添加した絶縁塗料P3を絶縁塗料として用いた。
<樹脂領域の厚さの割合の算出方法>
樹脂領域511及び空孔領域513のそれぞれの厚さ、及び絶縁層51の厚さに対する樹脂領域511及び空孔領域513のそれぞれの厚さの割合は、絶縁電線1の断面を、SEMで撮像された画像に基づいて算出する。
樹脂領域511及び空孔領域513のそれぞれの厚さ、及び絶縁層51の厚さに対する樹脂領域511及び空孔領域513のそれぞれの厚さの割合は、絶縁電線1の断面を、SEMで撮像された画像に基づいて算出する。
具体的には、まず、絶縁皮膜5をエナメル線の長手方向に直交する方向に切断し、当該切断面を研磨する。次に、研磨された切断面を、SEMによって撮像し、撮像されたSEMの画像を用いて算出する。
SEMにより撮像するときの倍率は、例えば、2000倍から5000倍までの範囲で適宜調整される。
本実施形態では、樹脂領域511及び空孔領域513の厚さの割合とは、絶縁層51の厚さに対する樹脂領域511及び空孔領域513の厚さの割合により算出される例に適用して説明する。
樹脂領域511の厚さとは、1つの絶縁層51において、絶縁層51の径方向外側の界面(第2の界面)から、当該絶縁層51の径方向の最も外側に位置する空孔Vaの外側の境界までの厚さ方向に沿った長さをいう。空孔領域513の厚さとは、1つの絶縁層51において、径方向の最も外側に位置する空孔Vaの外側の境界から、当該絶縁層51の径方向内側の界面(第1の界面)までの厚さ方向に沿った長さをいう。
このような方法により樹脂領域511及び空孔領域513の厚さを測定することにより、樹脂領域511及び空孔領域513の境目が観察されないSEM画像においても、厚さを測定しやすい。
なお、樹脂領域511及び空孔領域513の厚さの割合は、別々に樹脂領域511及び空孔領域513のそれぞれと絶縁層51とから算出されるものに限定されない。例えば、絶縁層51に対する樹脂領域511の厚さの割合が算出された場合に、残りの厚さの割合を空孔領域513の厚さの割合として算出してもよい。
樹脂領域511及び空孔領域513の厚さは、例えば、発泡剤の沸点、あるいは発泡剤の添加量を調整することにより変更される。
例えば、沸点が高い発泡剤のときは樹脂領域511の厚さの割合が小さくなる。具体的には、発泡剤の沸点が約290℃のときには、樹脂領域511の厚さの割合が10%以上20%以下程度となる。また、反対に沸点が低い発泡剤のときは樹脂領域511の厚さが大きくなる。用いられる発泡剤の好ましい沸点としては、例えば210℃以上350℃以下のものが用いられる。発泡剤の添加量を少なくすると、樹脂領域511の厚さが大きくなり、発泡剤の添加量を多くすると、樹脂領域511の厚さが小さくなる。
例えば、沸点が高い発泡剤のときは樹脂領域511の厚さの割合が小さくなる。具体的には、発泡剤の沸点が約290℃のときには、樹脂領域511の厚さの割合が10%以上20%以下程度となる。また、反対に沸点が低い発泡剤のときは樹脂領域511の厚さが大きくなる。用いられる発泡剤の好ましい沸点としては、例えば210℃以上350℃以下のものが用いられる。発泡剤の添加量を少なくすると、樹脂領域511の厚さが大きくなり、発泡剤の添加量を多くすると、樹脂領域511の厚さが小さくなる。
<空孔率の測定方法>
絶縁電線1が有する絶縁皮膜5の空孔領域513が有する空孔率は水中置換法により測定した。具体的には、例えば1mなどのあらかじめ決められた長さの絶縁電線1を水中に入れることにより、空孔Vaの内部の空気を水で置換する。空孔Vaの内部を水で置換した絶縁電線1に対して絶縁皮膜5の剥離前後での比重を測定する。同じ長さであって絶縁電線1と同じ材料で形成され、空孔Vaを有しない絶縁層51xを有する絶縁電線1xについて絶縁層51xの剥離前後の比重を測定する。これら、空孔Vaを有する絶縁皮膜5を有する絶縁電線1の剥離前後の比重と、空孔Vaを有しない絶縁層51xを有する絶縁電線1xの剥離前後の比重とを比較することにより空孔率を求める。
絶縁電線1が有する絶縁皮膜5の空孔領域513が有する空孔率は水中置換法により測定した。具体的には、例えば1mなどのあらかじめ決められた長さの絶縁電線1を水中に入れることにより、空孔Vaの内部の空気を水で置換する。空孔Vaの内部を水で置換した絶縁電線1に対して絶縁皮膜5の剥離前後での比重を測定する。同じ長さであって絶縁電線1と同じ材料で形成され、空孔Vaを有しない絶縁層51xを有する絶縁電線1xについて絶縁層51xの剥離前後の比重を測定する。これら、空孔Vaを有する絶縁皮膜5を有する絶縁電線1の剥離前後の比重と、空孔Vaを有しない絶縁層51xを有する絶縁電線1xの剥離前後の比重とを比較することにより空孔率を求める。
空孔率は、空孔率(%)=(ρ1-ρ2)/ρ1×100により算出される。ここでいうρ1とは空孔Vaが存在しない場合の絶縁皮膜5全体の比重であり、ρ2とは空孔Vaを含んだ絶縁皮膜5全体の比重である。
本実施形態における絶縁皮膜5全体に対する空孔率は、2%以上25%未満である例に適用して説明する。
<PDIV測定>
絶縁電線1により生成したツイストペアケーブルを用いて、23℃、湿度50%雰囲気下で、50Hzの電圧を10V/s以上30V/s以下の範囲で昇圧させる。50pCの放電が50回発生する電圧を部分放電開始電圧(PDIV)とした。
<PDIV測定>
絶縁電線1により生成したツイストペアケーブルを用いて、23℃、湿度50%雰囲気下で、50Hzの電圧を10V/s以上30V/s以下の範囲で昇圧させる。50pCの放電が50回発生する電圧を部分放電開始電圧(PDIV)とした。
なお、PDIVの目標値は、絶縁皮膜5の材料としてポリイミドを用いた場合には、950Vpであり、絶縁皮膜5の材料としてポリアミドイミドを用いた場合には、830Vpである。
<可撓性試験>
可撓性試験は、絶縁電線1をコイルに加工した後を模擬して絶縁電線1の可撓性を評価する。
可撓性試験は、絶縁電線1をコイルに加工した後を模擬して絶縁電線1の可撓性を評価する。
絶縁皮膜5として、ポリイミドを用いた実施例1、実施例2及び比較例1では、絶縁電線1を30%伸長後に自己径巻き付けを50ターン行う。その後、皮膜割れの発生の有無を確認した。皮膜割れの目標としては皮膜割れがないこととした。
絶縁皮膜5として、ポリアミドイミドを用いた実施例1、実施例2及び比較例1では、絶縁電線1を30%伸長後に自己径巻き付けを50ターン行う。その後、皮膜割れの発生の有無を確認した。皮膜割れの目標としては皮膜割れがないこととした。なお、図6では、可撓性試験によって皮膜割れがないものを「〇」とし、皮膜割れがあるものを「×」とした。
<絶縁破壊電圧(BDV)測定>
絶縁電線1により生成したツイストペアケーブルを用いて、空気中、50Hzにて電圧を0.0Vから20.0kVまで昇圧し、絶縁破壊した電圧を絶縁破壊電圧とした。
絶縁電線1により生成したツイストペアケーブルを用いて、空気中、50Hzにて電圧を0.0Vから20.0kVまで昇圧し、絶縁破壊した電圧を絶縁破壊電圧とした。
<実施例と比較例の測定結果について>
実施例1~実施例3までの絶縁電線1及び比較例1~6の絶縁電線の測定結果を図6の表に示す。
実施例1~実施例3までの絶縁電線1及び比較例1~6の絶縁電線の測定結果を図6の表に示す。
図6の表の実施例1,2に示すように、全体の空孔率が20%以上である場合、絶縁皮膜5の材料としてポリイミドを用いた場合の目標PDIVである950Vpを満たしている。
これは、空孔領域513の空孔Vaにより絶縁皮膜5全体の比誘電率を低減させることができ、その結果、絶縁皮膜5の部分放電開始電圧(PDIV)を高めやすいと考えられる。
PDIVが目標PDIVを満たしている一方で、実施例1及び実施例2はそれぞれ絶縁層51の厚さに対する樹脂領域511の厚さの割合が50%、20%であり、可撓性(可とう性)が良好である。絶縁皮膜5にポリイミドを用いた場合の目標である30%伸長後に自己径巻き付けが良好である。また、実施例1,実施例2は、空孔領域513を有する絶縁皮膜5を備えた絶縁電線1であるが、その絶縁破壊電圧(BDV)は、それぞれ16kV、15kVである。また、同じ塗料により形成され空孔Vaを有していない絶縁皮膜5を備えた絶縁電線である、比較例1及び比較例3の絶縁破壊電圧(BDV)はそれぞれ17kV、16kVである。すなわち、実施例1,2の空孔領域513を有する絶縁皮膜5を有する絶縁電線1では、空孔Vaを有しない絶縁皮膜5を有する絶縁電線と、同程度の絶縁破壊電圧(BDV)を有していると評価できる。
一方、樹脂領域511を有しない比較例2、比較例4では、可撓性試験において、皮膜割れが生じている。また、樹脂領域511を有しない比較例2、比較例4では、絶縁破壊電圧は、それぞれ6kV、7kVであり、樹脂領域511を有する構成と比べて、絶縁破壊電圧は、小さい。
実施例3の絶縁電線1は、ポリアミドイミドが絶縁皮膜5に用いられている。実施例3では、空孔率が20%である。実施例3のPDIVは、850Vpであり、ポリアミドイミドを絶縁皮膜5に用いた場合の目標値である830Vpを満たしている。
また、実施例3の絶縁電線1は、可撓性試験の結果、良好であると評価できる。すなわち、ポリアミドイミドを絶縁皮膜5に用いた場合の目標である20%伸長した後に自己径巻き付けの結果が良好であると評価できる。絶縁破壊電圧については、同じ材料を用いて空孔Vaを有していない比較例5の絶縁電線が17kVであるのに対して、実施例3の絶縁電線1は、絶縁破壊電圧は、15kVであった。すなわち、空孔Vaを有している実施例3の絶縁電線1において、空孔Vaを有していない比較例5の絶縁電線と同程度であると評価できる。
比較例6では、実施例3と比べ、空孔率が低く樹脂領域511の厚さが絶縁皮膜5の厚さの2%であり、可撓性試験では皮膜割れが生じる。また、比較例6の絶縁電線1は、絶縁破壊電圧も低下している。
<絶縁皮膜が導体の周面に形成される推定メカニズム>
本開示の絶縁電線1において、樹脂領域511と空孔領域513とを有する絶縁皮膜5が導体3の周面に形成される推定メカニズムについて説明する。
本開示の絶縁電線1において、樹脂領域511と空孔領域513とを有する絶縁皮膜5が導体3の周面に形成される推定メカニズムについて説明する。
まず、導体3に絶縁皮膜5を形成するための絶縁塗料が塗装される。絶縁塗料が塗装されることにより形成される膜を塗装膜とも称する。絶縁塗料が塗装され、塗装膜が形成された導体3に対して焼き付けが始まると、絶縁塗料の主溶剤が揮散する。主溶剤の揮散に伴い、塗装膜を形成する塗料において、主溶剤の量が減少する。また、主溶剤の揮散に伴い、塗装膜と発泡剤との相分離が発生する。
ここで、塗装膜の内側では、主溶剤が減少したことにより、塗装膜と発泡剤との相分離が生じ、発泡剤が塗装膜中に分散した状態となる。そして、塗装膜中に分散した発泡剤がさらなる焼き付けにより揮散することで、空孔Vaが形成される。当該空孔Vaが形成された塗装膜の部分が絶縁皮膜5の空孔領域513となる。
一方、塗装膜の外側では、発泡剤は相分離前に塗装膜から放出されやすい。このため、塗装膜から相分離する発泡剤が塗装膜の外側にはほぼ存在しないため、塗装膜の外側には、空孔Vaが形成されない。当該空孔Vaを有していない塗装膜の外側部分が絶縁皮膜5の樹脂領域511となる。
なお、塗装膜の外側において、相分離前に揮散しやすいような沸点を有する発泡剤が選択されてもよい。また、相分離前に揮散しやすいように塗装膜の外側における相分離状態が調整されてもよい。
上述したように絶縁塗料の塗装と焼き付けを行うごとに、外側に樹脂領域511が形成され、内側に空孔領域513が形成された絶縁層51が形成される。
また、絶縁塗料の塗装方法として、一層の絶縁層51に樹脂領域511と空孔領域513とが形成されるものであれば、特に方法が限定されるものではなく、従来の塗装方法が適用されてもよい。具体的には、絶縁塗料を導体3に塗装し、例えば350℃以上500℃以下の炉で1~2分程度焼き付けをすることで一層の絶縁層51が形成される。この塗装と焼き付けを繰り返すことにより複数の絶縁層51を有する絶縁皮膜5が導体3の周面に形成される。また、塗装と焼き付けを繰り返す回数を調整することにより絶縁皮膜5の厚さの調整が可能である。
また、絶縁塗料の塗装方法として、一層の絶縁層51に樹脂領域511と空孔領域513とが形成されるものであれば、特に方法が限定されるものではなく、従来の塗装方法が適用されてもよい。具体的には、絶縁塗料を導体3に塗装し、例えば350℃以上500℃以下の炉で1~2分程度焼き付けをすることで一層の絶縁層51が形成される。この塗装と焼き付けを繰り返すことにより複数の絶縁層51を有する絶縁皮膜5が導体3の周面に形成される。また、塗装と焼き付けを繰り返す回数を調整することにより絶縁皮膜5の厚さの調整が可能である。
塗装条件は、発泡剤の種類、加熱炉の温度、塗装する速度に応じて調整されてもよい。
絶縁層51における樹脂領域511の厚さの割合は、発泡剤の種類や、塗装の条件によって調整されてもよい。
絶縁層51における樹脂領域511の厚さの割合は、発泡剤の種類や、塗装の条件によって調整されてもよい。
絶縁塗料の塗装と焼き付けを繰り返すことにより複数の絶縁層51が積層される。
このような構成によれば、複数の絶縁層51を有する絶縁皮膜5を形成するために必要となる絶縁塗料の種類は1つであってよいため、複数の絶縁塗料を用意する場合に比べて、簡便に絶縁皮膜5を形成することができる。また、複数の絶縁塗料を用意することに伴って、塗装装置や塗装条件を変更する必要がないため、塗装工程を簡便にすることができる。
このような構成によれば、複数の絶縁層51を有する絶縁皮膜5を形成するために必要となる絶縁塗料の種類は1つであってよいため、複数の絶縁塗料を用意する場合に比べて、簡便に絶縁皮膜5を形成することができる。また、複数の絶縁塗料を用意することに伴って、塗装装置や塗装条件を変更する必要がないため、塗装工程を簡便にすることができる。
発泡剤としては、例えば、エチルグリコール類、プロピルグリコール類、トリグライム、テトラグライム等を用いることができる。なお、トリグライムとは、トリエチレングリコールジメチルエーテルとも称され、テトラグライムとは、テトラエチレングリコールジメチルエーテルとも称される。
<皮膜割れの防止作用について>
本実施形態の絶縁電線1が有する絶縁皮膜5では、積層される複数の絶縁層51において、樹脂領域511は空孔領域513よりも外側の領域である。
本実施形態の絶縁電線1が有する絶縁皮膜5では、積層される複数の絶縁層51において、樹脂領域511は空孔領域513よりも外側の領域である。
比較として、絶縁層の全体に空孔を有する領域を有する絶縁皮膜9の模式図を図7及び図8に示す。
図7及び図8に示すように、絶縁層の内部の空孔Vaが増加するにしたがって、空孔Va同士が連通する。連通した空孔Vaを以下では、連通部Sとも記載する。ここで、空孔Vaの連通部は、複数の空孔Va同士が絶縁層内で繋がり、複数の空孔Vaで共通の内部空間を形成するものである。
図7及び図8に示すように、絶縁層の内部の空孔Vaが増加するにしたがって、空孔Va同士が連通する。連通した空孔Vaを以下では、連通部Sとも記載する。ここで、空孔Vaの連通部は、複数の空孔Va同士が絶縁層内で繋がり、複数の空孔Vaで共通の内部空間を形成するものである。
図8に示すような、連通部Sを有する絶縁層では、絶縁電線が屈曲や伸長により力を加えられた際に連通部Sを起点として、皮膜割れCrが生じやすい。
一方で、本実施形態の絶縁電線1における絶縁皮膜5では、屈曲や伸長により引っ張り方向の力が加わりやすい絶縁層51の外側の領域が、樹脂により形成された樹脂領域511である。そのため、樹脂により形成された樹脂領域511において、空孔Vaが連通した連通部は発生しにくい。これにより、連通部を起点とした皮膜割れが生じにくい。
一方で、本実施形態の絶縁電線1における絶縁皮膜5では、屈曲や伸長により引っ張り方向の力が加わりやすい絶縁層51の外側の領域が、樹脂により形成された樹脂領域511である。そのため、樹脂により形成された樹脂領域511において、空孔Vaが連通した連通部は発生しにくい。これにより、連通部を起点とした皮膜割れが生じにくい。
<他の実施例に関する測定結果について>
上述した実施例2及と同様の方法を用いて作成し、絶縁層51の厚さに対する樹脂領域511の厚さの割合を変更した実施例4~6の絶縁電線1に関する測定結果を表1に示す。
上述した実施例2及と同様の方法を用いて作成し、絶縁層51の厚さに対する樹脂領域511の厚さの割合を変更した実施例4~6の絶縁電線1に関する測定結果を表1に示す。
(実施例4~6)
実施例4~6では、絶縁塗料P2xに発泡剤として、主溶剤であるDMAcに溶解し、210℃以上の沸点を有する化合物(高沸点溶剤)を添加した絶縁塗料を用いた。
実施例4~6では、絶縁塗料P2xに発泡剤として、主溶剤であるDMAcに溶解し、210℃以上の沸点を有する化合物(高沸点溶剤)を添加した絶縁塗料を用いた。
実施例4~6の絶縁電線1では、表1に示すように、絶縁層511における樹脂領域511の厚さの割合が6%~25%であり、絶縁皮膜5の材料としてポリイミドを用いた場合の目標PDIVである950Vpを満たしている。これは、実施例1~2と同様、空孔領域513の割合が空孔Vaにより絶縁皮膜5全体の比誘電率を低減させることができたため、絶縁皮膜5の部分放電開始電圧(PDIV)を高められたと考えられる。また、実施例4~6の絶縁電線1では、可撓性試験によって皮膜割れがなかった。
<耐ATF性試験>
耐ATF性試験は、実施例2の絶縁電線1を試料1として用い、以下の方法で評価した。その測定結果を表2に示す。
耐ATF性試験は、実施例2の絶縁電線1を試料1として用い、以下の方法で評価した。その測定結果を表2に示す。
耐ATF性試験は、まず、長さ25cmで横断面がほぼ円形の絶縁電線1で構成される試料1を含水量0.2wt%のATF(Automatic Transmission Fluid)に浸漬させる。このとき、試料1の全部分がATFに浸される。次に、この状態の試料1を150℃の恒温槽に1000時間投入する。1000時間が経過した後、試料1を恒温槽から取出し、試料1に付着したATFを拭き取る。ATFを拭き取った試料1に対して、倍率5倍程度の顕微鏡で観察を実施することで、絶縁皮膜の表面に割れが発生していないかを確認する。また、試料1の比誘電率の測定のため、恒温槽から取り出した試料1の表面に電極を形成する。電極の形成方法としては、主電極として長さ100mmで絶縁皮膜上に銀ペーストを塗布する。さらに、この主電極から試料1の端方向に10mm離してガード電極を2ヶ所、幅10mmで塗布する。なお、銀ペーストは、藤倉化成製のドータイトD-550を用い、塗布の際には幅10mmのテープでマスキングなど行うとよい。ATFに浸漬後の比誘電率の測定は、この銀ペーストと試料1の導体との間で容量法により測定することができる。吸水した水分の比誘電率への影響を小さくするため、測定前に150℃の恒温槽中で1時間加熱し水分を揮散させてから比誘電率を測定した。比誘電率を測定したときに用いた周波数は、1kHzとした。なお、表2では、耐ATF性試験後、絶縁皮膜の表面に割れが確認されず、かつ、比誘電率も耐ATF性試験前と比べて変化がない場合を「〇」とした。
<耐熱性試験>
耐熱性試験は、実施例5,6の絶縁電線1のそれぞれを試料2,3として用い、以下の方法で評価した。その測定結果を表2に示す。
耐熱性試験は、実施例5,6の絶縁電線1のそれぞれを試料2,3として用い、以下の方法で評価した。その測定結果を表2に示す。
耐熱性試験は、まず、長さ25cmで横断面がほぼ円形の絶縁電線1で構成される試料2,3をATFに浸漬させる。このとき、試料1の全部分がATFに浸される。次に、試料2,3をATFからすぐに取り出し、試料2,3に付着したATFを拭き取った後、試料2,3を200℃の恒温槽に1000時間投入する。1000時間が経過した後、試料2,3を恒温槽から取り出す。恒温槽から取り出した試料2,3に対して、倍率5倍程度の顕微鏡で観察を実施することで、絶縁皮膜の表面に割れが発生していないかを確認する。また、試料2,3の比誘電率を測定するため、恒温槽から取り出した試料2,3の表面に電極を形成する。電極の形成方法、および比誘電率の測定方法は、上述した耐ATF性試験と同様である。なお、表2では、耐熱性試験後、絶縁皮膜の表面に割れが確認されず、かつ、比誘電率も耐熱性試験前と比べて変化がない場合を「〇」とした。
実施例2の絶縁電線1を用いた試料1では、表2に示すように、耐ATF性試験後、絶縁皮膜の表面に割れなどは確認されず、比誘電率も耐ATF性試験前と比べて変化がなかった。また、実施例5,実施例6の絶縁電線1を用いた試料2,試料3では、表2に示すように、耐熱性試験後、絶縁皮膜の表面に割れなどは確認されず、比誘電率も耐熱性試験前と比べて変化がなかった。これは、本実施形態の絶縁電線1では、絶縁皮膜5の最表面が空孔Vaを含まない樹脂領域511であり、絶縁皮膜5の表面が空孔を有していないことにより、絶縁皮膜5の内部にATFが浸入することがなく、比誘電率の増加も防ぐことができていると考えられる。すなわち、本実施形態の絶縁電線1では、ATFに浸漬させたときの耐性も良好であるといえる。
[3.効果]
(1)上記実施形態の絶縁電線1は、長尺状に形成された導体3と、導体3の周囲を覆う絶縁層51が1つ又は複数積層されて構成された絶縁皮膜5と、を有する。絶縁層51は、空孔領域513と、樹脂領域511とを有する。空孔領域513は、樹脂と樹脂の内部に含まれる複数の空孔Vaとにより構成される。樹脂領域511は、樹脂により構成される。絶縁層51は、径方向内側の第1の界面と径方向外側の第2の界面との間に界面が設けられておらず、かつ、前記第1の界面から前記第2の界面に沿って、空孔領域513と樹脂領域511とがこの順序で配置されている。
(1)上記実施形態の絶縁電線1は、長尺状に形成された導体3と、導体3の周囲を覆う絶縁層51が1つ又は複数積層されて構成された絶縁皮膜5と、を有する。絶縁層51は、空孔領域513と、樹脂領域511とを有する。空孔領域513は、樹脂と樹脂の内部に含まれる複数の空孔Vaとにより構成される。樹脂領域511は、樹脂により構成される。絶縁層51は、径方向内側の第1の界面と径方向外側の第2の界面との間に界面が設けられておらず、かつ、前記第1の界面から前記第2の界面に沿って、空孔領域513と樹脂領域511とがこの順序で配置されている。
このような構成によれば、絶縁皮膜5に含まれる絶縁層51には、空孔Vaを有する空孔領域513が設けられる。これにより、空孔Vaを有する絶縁層51を有しない絶縁皮膜5と比べて、比誘電率を低くすることができ、部分放電開始電圧を高くしやすくなる。
(2)また、絶縁層51内において、樹脂領域511は空孔領域513よりも径方向に沿って外側に位置するように配置される。
このような構成によれば、絶縁層51内において、屈曲や伸長により引っ張り方向に力が加わりやすい導体3から遠い領域に樹脂領域511が設けられ、屈曲や伸長により引っ張り方向に力が加わりにくい導体3に近い領域に空孔領域513が設けられる。これにより、屈曲や伸長により引っ張り方向に力が加わったとしても、連通部Sを起点とした皮膜割れCrが生じることを抑制することができる。
このような構成によれば、絶縁層51内において、屈曲や伸長により引っ張り方向に力が加わりやすい導体3から遠い領域に樹脂領域511が設けられ、屈曲や伸長により引っ張り方向に力が加わりにくい導体3に近い領域に空孔領域513が設けられる。これにより、屈曲や伸長により引っ張り方向に力が加わったとしても、連通部Sを起点とした皮膜割れCrが生じることを抑制することができる。
(3)本実施形態では、絶縁皮膜5の材料として用いられる熱硬化性樹脂として、ポリイミドが用いられる。
このような構成によれば、絶縁皮膜5は、ポリイミドの機械的特性、比誘電率の低さ、耐熱性を有する。
このような構成によれば、絶縁皮膜5は、ポリイミドの機械的特性、比誘電率の低さ、耐熱性を有する。
(4)本実施形態では、絶縁皮膜5の最表層が複数の空孔が含まれていない樹脂領域511で構成され、絶縁皮膜5の表面が空孔を有していない。
このような構成によれば、空孔を有する絶縁皮膜5がATF(Automatic Transmission Fluid)に触れても絶縁皮膜5の内部にATFが侵入することを防ぐことができる。そのため、本実施形態に係る絶縁電線1では、絶縁皮膜5がATFに触れても絶縁皮膜5の比誘電率が上昇しにくい。また、ATFによる絶縁皮膜5に割れ(皮膜割れ)も発生しにくくすることができる。
このような構成によれば、空孔を有する絶縁皮膜5がATF(Automatic Transmission Fluid)に触れても絶縁皮膜5の内部にATFが侵入することを防ぐことができる。そのため、本実施形態に係る絶縁電線1では、絶縁皮膜5がATFに触れても絶縁皮膜5の比誘電率が上昇しにくい。また、ATFによる絶縁皮膜5に割れ(皮膜割れ)も発生しにくくすることができる。
[4.他の実施形態]
(1)上記実施形態の絶縁電線1では、樹脂領域511の厚さの割合は絶縁皮膜5全体の厚さの5%以上70%以下である。
(1)上記実施形態の絶縁電線1では、樹脂領域511の厚さの割合は絶縁皮膜5全体の厚さの5%以上70%以下である。
ここで、樹脂領域511の厚さの割合は絶縁皮膜5全体の厚さの20%以上であってもよい。
このような厚さの割合であれば、樹脂領域511の割合が空孔Vaを有する空孔領域513の割合に対してより大きくなるため、皮膜割れの抑制に好適である。
このような厚さの割合であれば、樹脂領域511の割合が空孔Vaを有する空孔領域513の割合に対してより大きくなるため、皮膜割れの抑制に好適である。
(2)また、樹脂領域511の厚さの割合は絶縁皮膜5全体の厚さの50%以下であってもよい。
このような厚さの割合であれば、絶縁皮膜5全体において空孔領域513が有する複数の空孔Vaの割合を大きくしやすく、絶縁皮膜5の比誘電率を低くしやすい。このため、絶縁皮膜5の部分放電開始電圧(PDIV)を向上させやすい。よって、絶縁電線1において部分放電の発生を抑制しやすくなる。
このような厚さの割合であれば、絶縁皮膜5全体において空孔領域513が有する複数の空孔Vaの割合を大きくしやすく、絶縁皮膜5の比誘電率を低くしやすい。このため、絶縁皮膜5の部分放電開始電圧(PDIV)を向上させやすい。よって、絶縁電線1において部分放電の発生を抑制しやすくなる。
(3)上記実施形態では、絶縁層51に対する樹脂領域511の厚さの割合が5%以上70%以下である。また、絶縁層51に対する空孔領域513の厚さの割合が30%以上95%以下である。
しかしながら、樹脂領域511の厚さの割合及び空孔領域513の厚さの割合は、絶縁層51を基準とするものに限定されるものではない。例えば絶縁皮膜5全体の厚さを基準として算出されてもよい。具体的には、絶縁皮膜5を基準として、絶縁皮膜5に含まれる複数の絶縁層51のそれぞれに含まれる樹脂領域511の合計の厚さが5%以上70%以下であってもよく、絶縁皮膜5に含まれる複数の絶縁層51のそれぞれに含まれる空孔領域513の合計の厚さが30%以上95%以下であってもよい。
(4)なお、絶縁皮膜5は、同一の材料を元に形成された複数の絶縁層51が積層されて形成されるものに限定されない。例えば、絶縁皮膜5において、他の絶縁塗料により形成される絶縁皮膜5を含むものであってもよい。この場合、絶縁塗料ごとに異なる塗装装置や塗装条件により絶縁皮膜5が形成されてもよい。
(5)また、導体3と絶縁皮膜5の間に密着層が設けられてもよい。密着層は、導体3と絶縁皮膜5との密着性を向上させることができる材料が用いられてもよい。密着層の膜厚は特に限定されるものではないが、絶縁電線1の可撓性を損なわないものであることが好ましい。また、密着層の膜厚は、部分放電開始電圧を低下させないものであることが好ましい。例えば密着層の膜厚は、1~10μmであることが好ましい。
(6)上述した絶縁皮膜5及び絶縁皮膜5を形成するための絶縁塗料には、更に添加剤が添加されてもよい。添加剤の種類は特に限定されないが、例えば、絶縁皮膜5の強度の向上、絶縁皮膜5の表面の滑り性の向上、絶縁皮膜5の耐摩耗性の向上、伸び特性の向上、比誘電率の低減又は半導電化を目的として添加されるものが用いられてもよい。また、添加物としては、酸化防止剤が用いられてもよい。
(7)上記実施形態では、導体3及び絶縁皮膜5を含む絶縁電線1の断面の外形形状は円形形状であるとしたが、それぞれの外形形状は円形形状に限定されるものではなく、矩形形状や多角形状に形成されてもよい。
1,1x…絶縁電線、3…導体、5,9…絶縁皮膜、51,51a,51b,51c,51x…絶縁層、511,511a,511b,511c…樹脂領域、513,513a,513b,513c…空孔領域、P1,P2,P3,P1x,P2x,P3x…絶縁塗料、S…連通部、Va…空孔。
Claims (5)
- 長尺状に形成された導体と、
前記導体の周囲を覆う絶縁層が1つ又は複数積層されて構成された絶縁皮膜と、
を有する絶縁電線であって、
前記絶縁層は、
樹脂と複数の空孔とにより構成された空孔領域と、
前記樹脂により構成された樹脂領域と、
を有し、
前記絶縁層は、径方向内側の第1の界面と径方向外側の第2の界面との間に界面が設けられておらず、かつ、前記第1の界面から前記第2の界面に沿って、前記空孔領域と前記樹脂領域とがこの順序で配置されている、絶縁電線。 - 請求項1に記載の絶縁電線であって、
前記絶縁層は、前記第1の界面に前記空孔領域の表面が配置されており、前記第2の界面に前記樹脂領域の表面が配置されている、絶縁電線。 - 請求項1又は2に記載の絶縁電線であって、
前記絶縁層の厚さに対して、前記絶縁層に含まれる前記樹脂領域の厚さの割合が5%以上70%以下である、絶縁電線。 - 請求項3に記載の絶縁電線であって、
前記絶縁層の厚さに対して、前記絶縁層に含まれる前記樹脂領域の厚さの割合が20%以上である、絶縁電線。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の絶縁電線であって、
前記絶縁皮膜の厚さに対して、前記絶縁層に含まれる前記樹脂領域の厚さの割合が50%以下である、絶縁電線。
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2021
- 2021-10-28 JP JP2021176057A patent/JP2022084533A/ja active Pending
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