JP2022083307A - 卵巣がんの診断を補助する方法 - Google Patents

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佳代子 木戸脇
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明男 鈴木
Akio Suzuki
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Abstract

【課題】卵巣がんをより簡便に判定できる卵巣がんの診断を補助する方法を提供する。【解決手段】被検動物由来の被検試料における標的糖鎖を有するC4BP又はその断片を、特定の配列で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体1、特定の配列で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体2、及び式[1]又は特定式で表される糖鎖に親和性を有するが、式[1]又は特定式で表される糖鎖であってガラクトースの非還元末端にシアル酸が結合した糖鎖には親和性を有さないレクチンを用いて測定し、得られた測定結果に基づいて被検動物の卵巣がんを判定する、卵巣がんの診断を補助する方法。TIFF2022083307000019.tif38131【選択図】なし

Description

本発明は、新規な卵巣がんの診断を補助する方法、及び該方法に用いられるキットに関する。
卵巣がんは早期発見が困難な予後不良の疾患であり、分子標的薬などの開発応用が進んでいるものの予後改善はいまだ不十分である。CA125は、卵巣がんの診断に汎用されている腫瘍マーカーであるが、子宮内膜症、子宮筋腫などの良性疾患や、膵炎、などの炎症性疾患でも高値を示すことが知られており、その卵巣がん特異性に問題がある。
一方、補体因子4結合蛋白質(C4BP)に結合するガラクトース数とシアル酸数を同一数含むN結合型糖鎖を卵巣がんマーカーとして用いると、卵巣がんを特異的に検出できることが明らかになっている(特許文献1)。
特許第6145650号公報
特許文献1では、被検動物から採取された試料中の全蛋白質を抽出し、要すればレクチンを全糖蛋白質を濃縮した後、液体クロマトグラフィー・質量分析装置(LC-MS)を用いてN型結合糖鎖を検出する方法が行われている。しかしながら、該方法は操作が煩雑でまた特殊な機器が必要であり、更には測定に時間かかる等の問題があり、臨床診断の分野に応用するには問題があった。
本発明は、上記した状況に鑑みなされたもので、卵巣がんを簡便に判定できる、卵巣がんの診断を補助する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、C4BPのα鎖が有するN型糖鎖の結合部位よりN末端側のアミノ酸配列に結合する抗体、C4BPのα鎖が有するN型糖鎖の結合部位よりC末端側のアミノ酸配列に結合する抗体、及びN型糖鎖には親和性を有するが、その非還元末端ガラクトースにシアル酸が結合したN型糖鎖(シアリル化N型糖鎖)には親和性を有さないレクチンを用いたシアリル化N型糖鎖の測定系を確立し、該方法によれば簡便かつ迅速にシアリル化N型糖鎖を測定することが可能となり、その結果、より簡便かつ迅速に卵巣がんを判定することができることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下の構成よりなる。
[1]被検動物由来の被検試料における標的糖鎖を有する補体C4結合蛋白質であるC4BP又はその断片を、配列番号2で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体1、配列番号3で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体2、及び下記式[1]又は式[2]で表される糖鎖に親和性を有するが、下記式[1]又は式[2]で表される糖鎖であってガラクトースの非還元末端にシアル酸が結合した糖鎖には親和性を有さないレクチンを用いて測定し、得られた測定結果に基づいて被検動物の卵巣がんを判定する、卵巣がんの診断を補助する方法であり、前記標的糖鎖が、下記式[1]又は式[2]で表される少なくとも一つの糖鎖であって、ガラクトースの非還元末端にシアル酸が結合した糖鎖である、前記方法。

Figure 2022083307000001

Figure 2022083307000002

[2]前記測定が下記(A)又は(B)を含む、前記[1]に記載の卵巣がんの診断を補助する方法:
(A)被検試料を、前記レクチンの存在下で電気泳動に付すことにより、前記被検試料中の標的糖鎖を有するC4BP又はその断片を前記被検試料から分離し、前記標的糖鎖を有するC4BP又はその断片と前記抗体1と前記抗体2とを接触させ、得られた標的糖鎖を有するC4BP又はその断片と抗体1と抗体2との複合体を測定する、
(B)被検試料と前記抗体1と前記抗体2とを接触させ、得られた前記被検試料中の標的糖鎖を有するC4BP又はその断片と抗体1と抗体2との複合体を前記レクチンの存在下で電気泳動に付した後、前記複合体を測定する。
[3]レクチンがインゲンマメレクチン又はトウゴマレクチンである、前記[1]又は[2]に記載の卵巣がんの診断を補助する方法。
[4]被検試料が蛋白質分解酵素と接触させたものである、前記[1]~[3]の何れか一つに記載の卵巣がんの診断を補助する方法。
[5]蛋白質分解酵素がセリンプロテアーゼである、前記[4]に記載の卵巣がんの診断を補助する方法。
[6]セリンプロテアーゼがリシルエンドペプチダーゼ、トリプシン、キモトリプシン、リポ蛋白リパーゼ、及びアセチルコリンエステラーゼからなる群から選択される、前記[5]に記載の卵巣がんの診断を補助する方法。
[7]被検試料がリシルエンドペプチダーゼとトリプシンと接触させたものである、前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の卵巣がんの診断を補助する方法。
[8]複合体の測定が下記から選択される、前記[2]~[7]のいずれか一つに記載の卵巣がんの診断を補助する方法:
(1)複合体の泳動位置を検出し、泳動原点から当該複合体の泳動位置までの距離を求める、
(2)複合体の泳動位置を検出し、泳動原点から当該複合体の泳動位置までの距離及び泳動の原点から泳動の終点までの距離を測定する、
(3)複合体の量を測定する。
[9]複合体の量が、複合体の泳動画分のピーク高又はピーク面積である、前記[8]に記載の卵巣がんの診断を補助する方法:
[10]抗体1が配列番号4で表されるアミノ酸配列に結合する抗体であり、抗体2が配列番号6で表されるアミノ酸配列に結合する抗体である、前記[1]~[9]のいずれか一つに記載の卵巣がんの診断を補助する方法。
[11]被検試料が、全血、血清、又は血漿である、前記[1]~[10]のいずれか一つに記載の卵巣がんの診断を補助する方法。
[12]配列番号2で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体1、配列番号3で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体2、及び下記式[1]又は式[2]で表される糖鎖に親和性を有するが、下記式[1]又は式[2]で表される糖鎖であってガラクトースの非還元末端にシアル酸が結合した糖鎖には親和性を有さないレクチンを含む、卵巣がんの診断を補助するための試薬キット。

Figure 2022083307000003

Figure 2022083307000004

[13]レクチンがインゲンマメレクチン又はトウゴマレクチンである、前記[12]に記載の卵巣がんの診断を補助するための試薬キット。
[14]さらに蛋白質分解酵素を含む、前記[12]又は[13]に記載の卵巣がんの診断を補助するための試薬キット。
[15]さらに還元剤を含む、前記[12]~[14]のいずれか一つに記載の卵巣がんの診断を補助するための試薬キット。
[16]被検動物由来の被検試料における標的糖鎖を有する補体C4結合蛋白質であるC4BP又はその断片を、配列番号2で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体1、配列番号3で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体2、及び下記式[1]又は式[2]で表される糖鎖に親和性を有するが、下記式[1]又は式[2]で表される糖鎖であって、ガラクトースの非還元末端にシアル酸が結合した糖鎖には親和性を有さないレクチンを用いて測定する、前記標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定方法であり、
前記標的糖鎖が、下記式[1]又は式[2]で表される少なくとも一つの糖鎖であって、ガラクトースの非還元末端にシアル酸が結合した糖鎖である、前記方法。

Figure 2022083307000005

Figure 2022083307000006

[17]レクチンがインゲンマメレクチン又はトウゴマレクチンである、前記[16]に記載のC4BP又はその断片を測定する方法。
[18]配列番号4で表されるアミノ酸配列に結合する抗体。
[19]配列番号6で表されるアミノ酸配列に結合する抗体。
本発明の卵巣がんの診断を補助する方法は、すべてin vitroで実施される。
本発明の卵巣がんの診断を補助する方法によれば、従来法より簡便かつ迅速に卵巣がんを判定(診断、検査)することができる。
実施例2で得られた、卵巣がん患者又は正常者由来血清を用い、PHA-E4を用いたレクチン親和ゲル電気泳動を行ってRf値を求めた結果を示すグラフである。 実施例2で得られた、卵巣がん患者又は正常者由来血清を用い、PHA-E4を用いたレクチン親和ゲル電気泳動を行ってピーク高を求めた結果を示すグラフである。 実施例2で得られた、卵巣がん患者又は正常者由来血清を用い、PHA-E4を用いたレクチン親和ゲル電気泳動を行ってピーク面積を求めた結果を示すグラフである。 実施例3で得られた、卵巣がん患者又は正常者由来血清を用い、RCA120を用いたレクチン親和ゲル電気泳動を行ってRf値を求めた結果を示すグラフである。 実施例3で得られた、卵巣がん患者又は正常者由来血清を用い、RCA120を用いたレクチン親和ゲル電気泳動を行ってピーク高を求めた結果を示すグラフである。 実施例3で得られた、卵巣がん患者又は正常者由来血清を用い、RCA120を用いたレクチン親和ゲル電気泳動を行ってピーク面積を求めた結果を示すグラフである。
本発明は、卵巣がんの診断を補助する方法、及びこれに用いられるキット、標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定方法に関する。
<1.卵巣がん>
本発明に係る「卵巣がん」とは、被検動物の卵巣に発生する任意の悪性新生物のことを指す。卵巣がんの例として、上皮性卵巣がん、性索間質性腫瘍、胚細胞腫瘍、転移性卵巣がんが挙げられるが、これに限定されない。
<2.補体因子4結合蛋白質又はその断片>
補体因子4結合蛋白質(Complement component 4-Binding protein、以下「C4BP」と略記する)は、補体系のC4bに結合することによってC4bを分解して失活させる反応に関与する、補体制御因子の一つである。C4BPは分子量約70000のα鎖と分子量約45000のβ鎖から構成され、通常α7βオリゴマーとして血液中に存在する。血液中には平常時でも約160μg/mL存在する。
本発明に係る「C4BPのα鎖のアミノ酸配列」は、例えばNCBIに登録されているような、当業者に公知の配列を含む。例えば配列番号1で表されるアミノ酸配列が挙げられる。また、本発明に係る配列番号1で表されるアミノ酸配列には、配列番号1で表されるアミノ酸配列の1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有するもの、又は上記した配列番号1で表されるアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上、さらにより好ましくは97%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を有するものが含まれる。但し、本発明に係る「C4BPのα鎖のアミノ酸配列」は、後記する本発明の標的糖鎖の結合部位であるN末端から506番目(506位)及び528番目(528位)のアスパラギン残基は保存されているものである。
尚、C4BPのα鎖のアミノ酸配列に上記変異(特に付加又は欠失)が起きている場合は、実際のα鎖における標的糖鎖の結合部位となるアスパラギン残基の位置は変異に応じて変動しうる。
本明細書で特に断らない限り、以下単に「C4BPのα鎖のアミノ酸配列」と記載した場合には、上記の配列番号1で表されるアミノ酸配列、及びその上記配列相同性を有するアミノ酸配列を意味する。
本発明に係るC4BPの断片とは、上記したC4BPの断片であって、後記する本発明の標的糖鎖の結合部位である配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から506番目(506位)及び528番目(528位)に相当する位置に存在するアスパラギン残基を有するものであって、後記する本発明の抗体1が結合する領域のアミノ酸配列及び本発明の抗体2が結合する領域のアミノ酸配列を有しているものである。例えば、本発明に係る被検試料を後記する「7.前処理方法」に記載の方法で蛋白質分解酵素で処理して得られたC4BPのペプチド断片であって、本発明に係る標的糖鎖の結合部位である506位及び528位に相当する位置に存在するアスパラギン残基、並びに本発明の抗体1及び抗体2が結合する領域のアミノ酸配列が保存されているものである。
<3.卵巣がんの診断を補助する方法>
本発明の卵巣がんの診断を補助する方法は、
「被検動物由来の被検試料における標的糖鎖を有するC4BP又はその断片を、配列番号2で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体1、配列番号3で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体2、及び下記式[1]又は式[2]で表される糖鎖に親和性を有するが、下記式[1]又は式[2]で表される糖鎖であってガラクトースの非還元末端にシアル酸が結合した糖鎖には親和性を有さないレクチンを用いて測定し、得られた測定結果に基づいて被検動物の卵巣がんを判定する方法であり、前記標的糖鎖が、下記式[1]又は式[2]で表される少なくとも一つの糖鎖であって、ガラクトースの非還元末端にシアル酸が結合した糖鎖である方法である。

Figure 2022083307000007

Figure 2022083307000008
1.被検動物
本発明に係る被検動物としては、ヒト、サル、ウシ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ハムスター、モルモット、マウス、ラット等の哺乳動物が挙げられる。好ましくはヒトである。被検動物がヒトの場合、特に「被検者」と記載する場合がある。
2.被検試料
本発明に係る被検試料としては、本発明に係る被検動物由来の、血清,血漿,全血等の血液試料、腹水,胸水,神経根周囲液,唾液,リンパ液,髄液,消化液等の体液、尿、便、膀胱洗浄液,子宮洗浄液,腹腔洗浄液等の組織の洗浄液、口腔スワブ、子宮頸部細胞診検体、外科的切除や生検によって取得された組織、該組織の抽出液、培養細胞、細胞上清、細胞溶解物、あるいはこれら試料から必要に応じて希釈若しくは濃縮等の調整を行ったもの等が挙げられる。血液試料が好ましく、血清又は血漿がより好ましい。
本発明に係る被検試料は、上記被検試料を後記「7.前処理方法」の項で説明する前処理を行ったものを含む。
3.標的糖鎖
本発明の卵巣がんの診断を補助する方法において検出及び測定の対象となる標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の標的糖鎖は、下記式[1]又は式[2]で表される少なくとも一つの糖鎖であって、ガラクトースの非還元末端にシアル酸が結合した糖鎖である。尚、式[1]及び式[2]に記載の糖鎖には、更に任意の位置にフコースが付加していてもよい。

Figure 2022083307000009

Figure 2022083307000010
本発明に係る標的糖鎖において、非還元末端ガラクトースに結合するシアル酸の数は限定されない。また、C4BPのα鎖の配列番号1で表されるアミノ酸配列及びその具体例は、上記「<2.補体因子4結合蛋白質>」の項で説明した通りである。
4.標的糖鎖を有するC4BP及びその断片
本発明に係る「標的糖鎖を有するC4BP」とは、上記<2.補体因子4結合蛋白質>の項に記載したC4BPであって、上記した本発明に係る標的糖鎖を有するC4BPを意味する。
本発明に係る「標的糖鎖を有するC4BP断片」としては、上記<2.補体因子4結合蛋白質>の項に記載したC4BPの断片であって、上記した標的糖鎖を有するものが挙げられる。例えば、本発明に係る被検試料を後記する「7.前処理方法」に記載の方法で蛋白質分解酵素で処理して得られたC4BPのペプチド断片であって、本発明に係る標的糖鎖の結合部位である506位及び528位に相当する位置に存在するアスパラギン残基に本発明に係る標的糖鎖が結合しているものであり、且つ後記する抗体1が結合する領域のアミノ酸配列及び抗体2が結合する領域のアミノ酸配列を有しているものである。
5.本発明の抗体(抗体1及び抗体2)
本発明の抗体1は、「配列番号2で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体」である。該抗体1としては、配列番号2で表されるアミノ酸配列の領域内の一次構造を認識するものであっても、配列番号2で表されるアミノ酸配列の領域内の立体構造を認識するものであってもよい。
本発明に係る配列番号2で表されるアミノ酸配列は、C4BPのα鎖の配列番号1で表されるアミノ酸配列のN型糖鎖結合部位となる506位のアスパラギンよりN末端側のアミノ酸配列、即ち配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から505番目までのアミノ酸配列であって、本発明の抗体1が結合する領域のアミノ酸配列を有するものである。また、本発明に係る配列番号2で表されるアミノ酸配列には、配列番号2で表されるアミノ酸配列の1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有するもの、又は配列番号2で表されるアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上、さらにより好ましくは97%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を有するものであって、本発明の抗体1が結合する領域のアミノ酸配列を有するものが含まれる。
本発明の抗体1としては、「配列番号4で表されるアミノ酸配列に結合する抗体」が好ましい。「配列番号4で表されるアミノ酸配列に特異的に結合する抗体」がより好ましい。配列番号4で表されるアミノ酸配列は、配列番号2で表されるアミノ酸配列の497位~505位のアミノ酸配列に相当する。また、C4BPのα鎖の配列番号1で表されるアミノ酸配列の497位-505位のアミノ酸配列に相当する。
本発明の抗体1を、以下単に「抗体1」と記載する場合がある。
本発明の抗体2は、「配列番号3で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体」である。該抗体2としては、配列番号3で表されるアミノ酸配列の領域内の一次構造を認識するものであっても、配列番号3で表されるアミノ酸配列の領域内の立体構造を認識するものであってもよい。
本発明に係る配列番号3で表されるアミノ酸配列は、C4BPのα鎖の配列番号1で表されるアミノ酸配列のN型糖鎖結合部位となる528位のアスパラギンよりC末端側のアミノ酸配列、即ち配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から529番目のアミノ酸からC末端までのアミノ酸配列であって、本発明の抗体2が結合する領域のアミノ酸配列を有するものである。。また、本発明に係る配列番号3で表されるアミノ酸配列には、配列番号3で表されるアミノ酸配列の1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有するもの、又は配列番号3で表されるアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上、さらにより好ましくは97%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を有するものであって、本発明の抗体2が結合する領域のアミノ酸配列を有するものが含まれる。
本発明の抗体2としては、「配列番号6で表されるアミノ酸配列に結合する抗体」が好ましい。「配列番号6で表されるアミノ酸配列に特異的に結合する抗体」がより好ましい。配列番号6で表されるアミノ酸配列は、配列番号3で表されるアミノ酸配列のN末端アミノ酸~9位のアミノ酸配列に相当する。また、C4BPのα鎖の配列番号1で表されるアミノ酸配列の529位~537位のアミノ酸配列に相当する。
本発明の抗体2を、以下単に「抗体2」と記載する場合がある。
本発明の抗体1及び抗体2は、それぞれ上記した性質を持っている抗体であればよく、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよい。モノクローナル抗体がより好ましい。また、市販品でも常法により適宜調製されたものでもよい。
本発明の抗体1及び抗体2は、該抗体の抗原結合断片であってもよい。抗原結合断片とは、抗体の断片であって、抗原結合部位を有するものを意味する。具体的には、例えば抗体1のFab、Fab’、F(ab')2、Fv、Fd、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合したFv(sdFv)、VL、VH、ダイアボディー((VL-VH)2もしくは(VH-VL)2)、トリアボディー(三価抗体)、テトラボディー(四価抗体)、ミニボディー((scFV-CH3)2)、IgG-delta-CH2、scFv-Fc、(scFv)2-Fcフラグメント等であって、上記した性質を有するものが挙げられる。
本発明の抗体1及び抗体2の由来は特に限定されないが、例えばラット、マウス、ウサギ、羊、山羊、馬等に由来する、上記した性質を有するものが挙げられる。市販品を用いても、例えば「免疫学実験入門、第2刷、松橋直ら、(株)学会出版センター、1981」等に記載の常法により取得されたものを用いてもよい。
本発明の抗体1及び抗体2は、常法の免疫原を動物に免疫してポリクローナル抗体の作製方法又はモノクローナル抗体の作製方法に従い、得ることができる。
本発明の抗体1を取得するために免疫原(抗原)として用いられるものとしては、(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列の部分配列(例えば配列番号4で表されるアミノ酸配列)を持つペプチド、(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列の部分配列に1~数個のアミノ酸が付加した配列(例えば配列番号5)を持つペプチド、又は(d)(a)~(c)のいずれかと、ヘモシアニンやBSA(Bovine serum albumin; ウシ血清アルブミン)等のキャリア蛋白質のコンジュゲートが挙げられる。配列番号5で表されるアミノ酸配列を持つペプチドとキャリア蛋白質のコンジュゲートを免疫原(抗原)として用いることが好ましい。
本発明の抗体2を取得するために免疫原(抗原)として用いられるものとしては、(a)配列番号3で表されるアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)配列番号3で表されるアミノ酸配列の部分配列(例えば配列番号6で表されるアミノ酸配列)を持つペプチド、(c)配列番号3で表されるアミノ酸配列の部分配列に1~数個のアミノ酸が付加した配列を持つペプチド、又は(d)(a)~(c)のいずれかと、ヘモシアニンやBSA(Bovine serum albumin; ウシ血清アルブミン)等のキャリア蛋白質のコンジュゲートが挙げられる。配列番号6で表されるアミノ酸配列を持つペプチドとキャリア蛋白質のコンジュゲートを免疫原(抗原)として用いることが好ましい。
本発明の抗体1及び抗体2を取得するために免疫原として用いられる上記ペプチドは、そのアミノ酸配列に従って、一般的な化学法製法により製造することができる。例えば、フルオレニルメチルオキシカルボニル法(Fmoc法)、t-ブチルオキシカルボニル法(tBoc法)等の通常の化学合成法により、該ポリペプチドを得ることができる。また、市販のペプチド合成機を用いて化学合成することもできる。また、ペプチド合成品を製造する業者に委託した製造品でもよい。
本発明のポリクローナル抗体1及びポリクローナル抗体2は、例えば、上記した免疫原を、常法[例えば免疫実験学入門、第2刷、松橋直ら、(株)学会出版センター、1981等に記載の方法等]に従って、例えばラット、マウス、ウサギ、羊、山羊、馬等の動物に免疫して抗体を作製し、配列番号2で表されるアミノ酸配列に結合する抗体、及び配列番号3で表されるアミノ酸配列に結合する抗体を選択すればよい。
また、本発明のモノクローナル抗体1及びモノクローナル抗体2は、例えば上記した免疫原を免疫した上記動物の、例えば脾細胞、リンパ球等の免疫感作された細胞と、例えば骨髄腫細胞等の永久的に増殖する性質を有する細胞とを、ケラーとミルシュタインらにより開発された自体公知の細胞融合技術(Nature, 256, 495, 1975)により融合させてハイブリドーマを作製し、上記した抗体1又は抗体2の性質を有するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを選択する。選択したハイブリドーマを培養し、得られた培養上清から、常法によりモノクローナル抗体又はモノクローナル抗体2を精製すればよい。
6.本発明に係るレクチン
本発明に係るレクチンは、「式[1]又は式[2]で表される糖鎖に親和性を有するが、式[1]又は式[2]で表される糖鎖であって還元末端にシアル酸が付加した糖鎖には親和性が低下するレクチン」である。
そのような性質を持つレクチンとしては、例えばPHA-E4等のインゲンマメレクチン(phytohaemagglutinin、PHA)、又はトウゴマレクチン(Ricinus communis agglutinin I、RCA120)が挙げられる。
PHA-E4はGlcNAc-Galに親和性を持つが、Galにシアル酸が結合していると、GlcNAc-Galとの親和性が低下する。RCA120はGalに親和性を持つが、Galにシアル酸が結合していると、Galとの親和性が低下する。
上記性質を持つレクチンを、以下「本発明に係るレクチン」と記載する場合がある。
本発明に係るレクチンとしては、インゲンマメレクチン、特にPHA-E4が好ましい。
7.前処理方法
本発明係る被検試料は、蛋白質分解酵素と接触させて、被検試料中のC4BPをペプチド断片化する処理(本発明に係る前処理)を施してから、要すればさらに還元処理、及びアルキル化処理を施してから、後記する標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定に用いることが好ましい。
本発明に係る前処理方法に付す被検試料の量としては、後記する標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定時に十分な量の標的糖鎖を有するC4BP又はその断片が存在している必要があることを考慮すると、ヒト由来血清の場合3~100μL、好ましくは3~20μLである。
前処理に用いられる蛋白質分解酵素としては、蛋白質をペプチド断片に分解する性質を有するものであればどのようなものでもよいが、トリプシン、リシルエンドペプチダーゼ、キモトリプシン、リポタンパクリパーゼ、アセチルコリンエステラーゼ等のセリンプロテアーゼが好ましい。これらを単独または複数用いることは任意である。被検試料をトリプシン単独、又はトリプシン及びリシルエンドペプチダーゼと接触させ反応させることが好ましく、トリプシン及びリシルエンドペプチダーゼと接触させ反応させることがより好ましい。
但し、得られたペプチド断片は、本発明に係る標的糖鎖の結合部位であるC4BPの配列番号1で表されるアミノ酸配列の506位及び528位に相当する位置に存在するアスパラギン残基は保存されており、且つ本発明の抗体1が結合する領域のアミノ酸配列及び本発明の抗体2が結合する領域のアミノ酸配列を有しているものでる。
蛋白質分解酵素は、被検試料中の蛋白質1 mg当り1~60 μg、添加すればよい。
複数種の蛋白質分解酵素を用いる場合、蛋白質分解酵素の使用時の総量が上記した量となるように調整して使用する。
被検試料を蛋白質分解酵素と接触させる際の条件としては、pHは7~10、温度は20℃~65℃、時間は1分~24時間が挙げられる。pHは8~9、温度は25℃~40℃、時間は10~40分間が好ましい。
蛋白質分解酵素と接触させた被検試料は、更に還元剤と接触させることが好ましい。そのために用いられる還元剤としては、ジチオトレイトール、2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロパジオール、2-アミノエタンチオール塩酸塩、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン等が挙げられる。
還元剤は、被検試料と混合して反応させる際の終濃度が5~200 mMになるように反応物に添加すればよい。
被検試料は、還元剤と接触させた後、アルキル化処理を行うことが更に好ましい。そのために用いられるアルキル化剤としてはヨードアセトアミド、ヨード酢酸、クロロ酢酸、クロロアセトフェノン等が挙げられる。
アルキル化剤は、還元後の反応物と混合して反応させる際の終濃度として5~200mMになるように添加すればよい。
本発明に係る被検試料の前処理方法は、従来の蛋白質を分析する際等に行われる試料の前処理方法と比較して下記のような利点がある。
例えば細胞から抽出した蛋白質をLC-MS/MSで測定する場合、一般には細胞等から蛋白質を抽出→還元→アルキル化→アセトン沈殿→蛋白質分解酵素処理、という一連の試料の前処理を行う。即ち、従来の前処理方法では、還元処理後に蛋白質分解酵素処理を行うため、蛋白質分解酵素処理の前に還元剤を除去する処理(例えばアセトン沈殿)を行う必要があった。しかし、本発明の前処理方法では、被検試料を蛋白質分解酵素処理後、要すれば還元処理を行い、好ましくは更にアルキル化を行う。すなわち、本発明の前処理方法において還元処理を行う場合には、蛋白質分解酵素処理を行ってから還元処理を行う。そのため、本発明に係る前処理方法では、試薬を被検試料に順次添加すればよく、還元剤を除去する処理(例えばアセトン沈殿及び遠心処理等)を行う必要がない。
被検試料としてヒト由来血清を用い、本発明に係る前処理方法を実施する場合を例に取ると、例えば以下の通りである。
ヒト由来血清3~100μL、好ましくは3~20μLに、例えばリシルエンドペプチダーゼ及びトリプシンをそれぞれ1~60μg添加し、pH7~10、25℃~65℃で3~1440分間反応させる。得られた反応液に、終濃度5~200mMになるようにジチオトレイトールを添加し、25℃~45℃で1~60分還元処理する。還元後、反応液に終濃度5~200mMになるようにヨードアセトアミドを添加し、25℃~45℃で1~60分、遮光下に反応させて、得られたペプチド断片をアルキル化する。
8.標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定方法
本発明に係る標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定方法としては、本発明の抗体1、本発明の抗体2、及び本発明に係るレクチンを用いる測定方法が挙げられる。
本発明の抗体1、抗体2、及びレクチンの具体例は、上記した通りである。
該測定方法で用いられる「被検試料」としては、上記「2.被検動物由来の被検試料」で説明した被検動物由来の被検試料、及び上記「7.前処理方法」の項に記載した方法で前処理を施した被検試料が挙げられる。
本発明に係る標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の具体的な測定方法としては、本発明に係る標的糖鎖を有するC4BP又はその断片を、レクチンとの親和性に基づいて分離し測定する方法(例えば、後記するレクチン親和電気泳動法)、本発明に係る標的糖鎖を有するC4BP又はその断片を、抗体を用いた免疫学的測定方法により測定する方法、抗体の代わりにレクチンを用いて免疫学的測定方法と同様の手法により本発明に係る標的糖鎖を有するC4BP又はその断片を測定する方法(以下、本明細書においては、両方法を合わせて免疫学的測定方法と記載する)等が挙げられる。
[A.レクチン親和電気泳動法による測定方法]
レクチン親和電気泳動法による測定方法としては、例えば下記[方法A-1]又は[方法A-2]を含む方法が挙げられる。
[方法A-1]被検試料を、本発明に係るレクチンの存在下で電気泳動に付すことにより、上記被検試料中の標的糖鎖を有する糖蛋白質を上記被検試料から分離し、次いで上記標的糖鎖を有するC4BP又はその断片と抗体1及び抗体2を接触させ、得られた標的糖鎖を有するC4BP又はその断片と抗体1と抗体2の複合体を測定する。
[方法A-2]被検試料と抗体1及び抗体2を接触させ、得られた上記被検試料中の標的糖鎖を有するC4BP又はその断片と抗体1と抗体2の複合体を、本発明に係るレクチンの存在下で電気泳動に付した後、当該複合体を測定する。
[方法A-1]及び[方法A-2]について、以下に詳説する。
[方法A-1]
[方法A-1]において実施される電気泳動法としては、担体を用いる電気泳動が挙げられる。担体としては、例えばアガロースゲル,ポリアクリルアミドゲル,寒天等のゲル、ろ紙,セルロース膜,セルロースアセテート膜、ポリフッ化ビニリデン膜(PVDF膜)等の膜が挙げられる。
本発明に係るレクチンの存在下で電気泳動を実施する方法としては、例えば本発明に係るレクチンを担体内に含有した状態で電気泳動する方法が挙げられる。
本発明に係るレクチンと親和性を有する糖鎖(式[1]又は式[2]で表される糖鎖)を有するC4BP又はその断片は、担体中の本発明に係るレクチンと相互作用するので泳動度が減衰する。一方、本発明に係る標的糖鎖(式[1]又は式[2]で表される糖鎖であってガラクトースの非還元末端にシアル酸が結合した糖鎖)を有するC4BP及びその断片は、本発明に係るレクチンとの相互作用が低下するので、泳動度の減衰の程度が小さくなる。すなわち、C4BP又はその断片は、C4BP又はその断片が有する標的糖鎖の量によって本発明に係るレクチンとの親和性が変動し、その結果、電気泳動によるC4BP又はその断片の泳動度が変動する。その泳動度の違いにより、標的糖鎖を有するC4BP又はその断片を測定することができる。具体的には、例えば本発明の抗体1及び抗体2を用いた抗体親和転写法を実施することにより、標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の泳動画分を特定し、測定することができる。
電気泳動―抗体親和転写法としては、例えば、被検試料(上記した前処理を行ったものでもよい)を本発明に係るレクチンを含有するゲルに塗布し、電気泳動を行う。電気泳動終了後、本発明の抗体1又は抗体2を固相化した抗体結合膜を、ゲル上に乗せ、常法の抗体親和転写法によるブロッティング操作を行う。転写した膜を洗浄後、HRP等の標識物質で標識した標識抗体2又は標識抗体1(抗体結合膜に結合した抗体とは別の抗体を用いる)を含有する溶液に浸漬させて反応させることにより、膜上に抗体結合膜固相化抗体と、標的糖鎖を有するC4BP又はその断片と、標識抗体との複合体を生成させる。標識抗体由来の標識を検出及び測定することにより、複合体泳動画分を検出し、測定する。
電気泳動及び抗体親和転写法によるブロッティングの条件および方法は、通常この分野で行われている常法に従えばよく、特に限定されない。
抗体親和転写法によりブロッティング処理した膜は、標識抗体を含有する溶液に浸漬させて、標識抗体と接触、反応させればよい。
標識物質を抗体1又は抗体2に結合させる(標識する)には、例えば自体公知のEIA、RIA、FIA等の免疫測定法等において一般に行われている自体公知の標識方法を適宜利用して行えばよい。
標識抗体1又は標識抗体2を用いた反応の結果生成する複合体中の標識量を測定する方法としては、標識物質の種類により異なるが、標識物質が有している何らかの方法により検出し得る性質に応じて、それぞれ所定の常法に従い実施すればよい。
例えば、標識物質が酵素である場合は、これを発色試薬と反応させて発色反応に導き、その結果生成する色素量をデンシトメーター等により測定する方法等の自体公知の方法が挙げられる。尚、発色反応を停止させるために、例えば反応液に1~6Nの硫酸等の酵素活性阻害剤や、キットに添付の反応停止剤を添加する等、通常この分野で行われている反応停止方法を利用してもよい。
抗体親和転写法を行った後、抗体結合膜固相化抗体と標的糖鎖を有するC4BP又はその断片と標識抗体との複合体の測定としては、以下の方法が挙げられる。
(1)泳動原点から当該複合体の泳動位置までの距離を求める、
(2)泳動原点から当該複合体の泳動位置までの距離及び泳動原点から泳動終点までの距離を測定し、その比率を求める、
(3)複合体の量を測定する。
上記において、泳動原点とは、試料の塗布位置である。泳動終点とは、例えば後記する先行色素の泳動位置又はプラス側ゲル末端である。
上記(1)において、泳動原点から当該複合体の泳動位置までの距離の測定は、常法に従って行えばよい。
例えば、被検試料と一緒に先行色素(ブロモフェノールブルー等)を電気泳動し、先行色素の移動がプラス極に接近したところで電気泳動を停止する。又は、被検試料と一緒に先行色素を電気泳動し、先行色素の移動がプラス極側のゲル末端まで到達したことを確認し、電気泳動を停止する。又は、被検試料を一定時間電気泳動し、電気泳動を停止する。
電気泳動終了後、複合体の標識抗体の標識物質に由来するシグナルを測定することにより該複合体の泳動位置(バンド)を検出し、泳動原点から該複合体の泳動位置(バンド)までの泳動距離を測定すればよい。
上記(2)において、泳動原点から当該複合体の泳動位置までの距離は上記(1)と同じ方法で求めればよい。
泳動原点から泳動終点までの距離は、常法に従って求めればよいが、例えば以下のようにして求められる。
被検試料と一緒に先行色素を電気泳動し、先行色素の移動がプラス極に接近したところで電気泳動を停止した場合は、先行色素の泳動位置(バンド)を検出し、先行色素の塗布位置(泳動原点)からその泳動位置(泳動終点)までの泳動距離を測定し、その値を泳動原点から泳動終点までの距離とする。
被検試料と一緒に先行色素を電気泳動し、先行色素の移動がプラス極側のゲル末端まで到達したことを確認し、電気泳動を停止した場合は、先行色素の塗布位置(泳動原点)からプラス側ゲル末端(泳動終点)までの距離を測定し、その値を泳動原点から泳動終点までの距離とする。
被検試料を一定時間電気泳動し、電気泳動を停止した場合は、まず先行色素の泳動位置(バンド)を検出する。
そして、先行色素バンドがプラス極に接近したところにあった場合は、先行色素の塗布位置(泳動原点)からその泳動位置(泳動終点)までの泳動距離を測定し、その値を泳動原点から泳動終点までの距離とすればよい。
先行色素のバンドがプラス極側のゲル末端まで到達していた場合には、先行色素の塗布位置(泳動原点)からプラス側ゲル末端(泳動終点)までの距離を測定し、その値を泳動原点から泳動終点までの距離とすればよい。
以上の測定で得られた値から、被検試料を用いた場合の相対移動度(Rf値:Relative to front値)を常法により求める。例えば、「泳動原点から当該複合体の泳動位置までの距離/泳動原点から泳動終点までの距離」の比率を算出し、被検試料画分のRf値とすればよい。
上記(3)の複合体の量を測定する方法としては、電気泳動―抗体親和転写後の膜について、複合体の標識抗体の標識物質に由来するシグナルを、デンシトメーターを用いる等の常法により検出及び解析し、得られたデンシトグラムをもとに、シグナルのピーク高又はピーク面積を求める方法が挙げられる。
本発明の抗体1としてHRP標識したHRP標識15-5E抗体を用い、本発明の抗体2として30-9E抗体を用い、本発明に係るレクチンとしてPHA-E4を用い、[方法A-1]を実施する場合を例にとり、以下に説明する。
被検試料(上記した前処理を行ったものでもよい)をPHA-E4を0.2mg/ml含む1%アガロースゲル中で200V、100分、5~10℃で電気泳動を行う。次いで、30-9E抗体を固相化した抗体結合膜に、常法により抗体親和転写を行う。転写した膜を洗浄後、HRP標識15-5E抗体を含有する緩衝液等の溶液に浸漬させ、室温で1時間反応させる。次いで膜を洗浄後、β―NADH及び過酸化水素水を溶解したニトロTB溶液に30分浸漬させて発色させる。
発色後の膜を乾燥後、発色した泳動画分を確認し、試料をゲルに塗布した位置から泳動画分までの距離、Rf値(試料をゲルに塗布した位置から泳動画分までの距離/試料をアガロースゲルに塗布した位置から泳動終点までの距離)を得る。又は、デンシトメーターを用いて泳動画分の発色を検出及び解析して得られたデンシトグラムをもとに、泳動画分のピーク高、又はピーク面積を求める。
[方法A-2]
[方法A-2]において実施される電気移動法としては、無担体で行われる電気泳動法が挙げられる。無担体で行われる電気泳動としては、キャピラリー電気泳動、マイクロチップキャピラリー電気泳動、マイクロキャピラリー電気泳動等が挙げられる。
標識した本発明の抗体1を用いて[方法A-2]を実施する場合、まず被検動物由来の被検試料と、本発明の抗体1び本発明の抗体2とを接触・反応させる。被検動物由来の被検試料は、上記した前処理方法に付したものであってもよい。
次いで、得られた反応液中の標的糖鎖を有するC4BP又はその断片と抗体1と抗体2の複合体と、その他の物質とを、本発明に係るレクチンの存在下でキャピラリー電気泳動を実施することにより分離し、該複合体を測定する。
複合体の測定方法としては、予め標識物質で標識した抗体1又は抗体2を用いて、その標識物質を測定することにより行ってもよい、被検試料と本発明の抗体1と抗体2の接触時、あるいは、複合体精製後に標識物質により抗体1、抗体2又は複合体を標識して測定を行ってもよい。
[方法A-2]における電気泳動をキャピラリー電気泳動法、キャピラリーチップ電気泳動法で実施する場合、抗原抗体複合物と遊離の標識抗体とをより明確に分離するために、抗体1又は抗体2の一方は陰イオン性物質等の荷電キャリヤー分子で標識されていることが好ましい。そのような目的で用いられる陰イオン性物質としては、例えばDNA、RNA等の核酸鎖等が挙げられる。例えば検出に係る標識物質で標識された抗体1(又は抗体2)と荷電キャリヤー分子で標識された抗体2(又は抗体1)を用いてもよい。
抗体1及び抗体2を含有する溶液中の該抗体の濃度は、試料と抗体1又は抗体2を含有する溶液を混合したときに目的の濃度範囲内になるような濃度であればよい。例えば0.1~500nM、好ましくは1~200nMり好ましくは5~100nM、更に好ましくは10~50nMであればよい。すなわち、下限値は0.1nμM、好ましくは50μMである。またその上限値は500nM、好ましくは200nM、より好ましくは100nμM、更に好ましくは30nMである。
試料と抗体1又は抗体2とを反応させる際の溶媒としては、通常この分野で使用される緩衝液であれば特に限定されない。
キャピラリー電気泳動装置専用の市販のキットを用いる場合は、該キットに添付の緩衝液を用いてもよい。
試料と本発明に係る抗体1及び抗体2を接触させる際の条件(pH、温度、反応時間)は、抗原抗体反応を抑制しない範囲であれば特に限定されず、公知の方法に準じて適宜設定されればよい。
接触後、得られた反応液中の複合体を、本発明に係るレクチンの存在下でキャピラリー電気泳動を実施することにより分離し、複合体の量を測定する。
本発明においては、キャピラリー電気泳動の中でも、キャピラリーチップ又はマイクロキャピラリーチップで行われる電気泳動を実施することが好ましい。マイクロチップキャピラリー電気泳動とは、チップ基板上に断面の直径100μm以下のキャピラリーを形成させ、このキャピラリー中で電気泳動を行なう技術であり、キャピラリー内に電圧をかけることによってサンプル内に存在する物質の電荷の差をその移動度の差として分離する方法である。
キャピラリー電気泳動は、用いられる泳動溶液により、キャピラリーゾーン電気泳動やキャピラリーゲル電気泳動に分類されるが、本発明の方法は何れにも適用し得る。分離の精度を考慮すると、上記の中でもキャピラリーゲル電気泳動が好ましい。
キャピラリー電気泳動で用いられる泳動溶液としては、通常この分野で用いられているものであればよく、特に限定されない
本発明に係るレクチンは、泳動溶液に含有させればよい。例えば、本発明に係るレクチンの泳動溶液中の濃度は、0.1 mg/mL~20 mg/mL、好ましくは1.0mg/mL~10mg/mL、更に好ましくは2.0mg/mL~5.0mg/mLである。
本発明に係るレクチンのマイクロ流路内での濃度は、0.1 mg/mL~20 mg/mLであればよい。
キャピラリー電気泳動に供せられる試料や抗体等を溶解させる溶液、泳動溶液の種類、添加剤、キャピラリー電気泳動の具体的な条件は、自体公知の方法に準ずればよい。
キャピラリー電気泳動による標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定方法の具体例として、本発明に係るレクチンとしてPHA-E4を用い、本発明の抗体1を蛍光物質で標識した標識抗体1を用い、本発明の抗体2をDNAで標識したDNA標識抗体2を用いて、レクチン親和性を利用したマイクロチップキャピラリー電気泳動を行い、C4BP又はその断片の標的糖鎖に対するPHA-E4の親和性の程度に基づいてC4BP又はその断片を分離し、蛍光検出器で測定する方法を以下に示す。
まず、被検試料1~50μLと、通常0.001~10μM、好ましくは0.01~1μMの蛍光標識抗体1を含有する試液とを接触させ反応させ、被検試料中のC4BP又はその断片と蛍光標識抗体1との複合体を含有する反応液を得る。
得られた反応液と、通常0.001~10μM、好ましくは0.01~1μMのDNA標識抗体2を含有する試液2~50μLと、泳動用緩衝液と、内部標準物質(例えば蛍光物質:HiLyte647(AnaSpec社製)等)を、1~10psiで30~60秒の加圧法により、例えば、内径5~500μm、好ましくは50~200μm、より好ましくは50~100μm、長さ1~10cmのキャピラリーに導入する。20~40℃保温下に5秒~30分、好ましくは10秒~15分反応させる。得られた[蛍光標識抗体1-標的糖鎖を有するC4BP又はその断片-DNA標識抗体2]の複合体とその他の物質とを、PHA-E4(0.1 mg/mL~20 mg/mL)の存在下に1000~5000Vの電圧を10秒~60分印加することにより電気泳動を行って、分離する。そして、複合体の泳動状態を蛍光検出器やUV検出器等の検出器により測定してエレクトロフェログラムを得る。
キャピラリー電気泳動は、市販の全自動測定装置を用いて行ってもよい。例えばミュータスワコーi30(和光純薬工業(株)製)等が挙げられる。
第1複合体由来の標識物質の測定は、キャピラリー電気泳動で分離した該複合体由来の標識物質を検出し、常法により以下のいずれかの測定を行う。
(1)複合体由来の標識物質検出までの時間を測定する、
(2)複合体の量を測定する。
上記(1)において、複合体由来の標識物質検出までの時間を測定する方法としては、この分野の常法、あるいは装置の設定に従えばよい。
尚、検出時間は、この分野で通常なされる内部標準物質等により補正を行った時間であってもよい。
上記「(2)複合体の量を測定する」方法としては、得られたエレクトロフェログラムをもとにピークの位置を確認することにより、該複合体由来のピークのピーク高、又はピーク面積を求める方法が挙げられる。
[B.免疫学的測定方法]
免疫学的測定方法により被検動物由来の被検試料における標的糖鎖を有するC4BP又はその断片を測定する方法としては、例えば以下の[方法B-1]及び[方法B-2]が挙げられる。
[方法B-1]
方法B-1は、抗体1と本発明に係る標的糖鎖を有するC4BP又はその断片との複合体を固相上に形成させ、該複合体に対して標識抗体2と本発明に係るレクチンを競合させる、あるいは、抗体2と本発明に係る標的糖鎖を有するC4BP又はその断片との複合体を固相上に形成させ、該複合体に対して標識抗体1と本発明に係るレクチンを競合させる方法である。
具体的には、本発明の抗体1(又は抗体2)を不溶性担体に固相化する。被検動物由来の被検試料を上記固相と接触・反応させて、固相上に固相化抗体1(又は固相化抗体2)とC4BP又はその断片との複合体を形成させる。固相を洗浄処理した後、本発明に係るレクチンを、固相と接触・反応させる。本発明の抗体2(又は抗体1)を検出可能な標識物質で標識した標識抗体2(又は標識抗体1)を、固相と接触・反応させる。未反応のレクチン及び標識抗体2(又は標識抗体1)を洗浄等により除去する。
被検試料中に含まれるC4BP又はその断片が標的糖鎖を有さない場合には、本発明に係るレクチンがC4BP又はその断片の糖鎖に結合するため、その後に反応させる標識抗体は固相上の複合体に結合することができない。この場合には固相上に[固相化抗体1(又は固相化抗体2)―C4BP又はその断片―本発明に係るレクチン]の複合体(複合体2)が形成される。
一方、被検試料中に含まれるC4BP又はその断片が標的糖鎖を有する場合には、本発明に係るレクチンがC4BP又はその断片の糖鎖に対する親和性が低下するため、その後に反応させる標識抗体2(又は標識抗体1)は固相上の複合体に結合することができる。この場合には固相上に[固相化抗体1(又は固相化抗体2)―C4BP又はその断片―標識抗体2(又は標識抗体1)]の複合体(複合体1)が形成される。
次いで、標識抗体2(又は標識抗体1)の標識物質に応じた測定方法で、複合体1由来の標識物質の量を測定する。
[方法B-2]
[方法B-1]により得られた測定値を用いて、本発明に係る糖鎖のシアリル化率を算出してもよい。すなわち、ElISA法を用いて本発明に係るC4BP又はその断片を測定し、その測定値で[方法B-1]により得られた測定値を除することにより、シアリル化率を算出してもよい。
具体的には、まず被検動物由来の被検試料について、上記[方法B-1]に従い測定を行う(測定値1とする)。
別に、測定値1を測定した際に使用したものと同じ被検動物由来の被検試料を、本発明の抗体1(又は抗体2)を不溶性担体に固相化した固相と接触・反応させる。固相を洗浄処理した後、本発明の抗体2(又は抗体1)を検出可能な標識物質で標識した標識抗体2(又は標識抗体1)を、固相と接触・反応させて、固相上に[固相化抗体1(又は固相化抗体2)―C4BP又はその断片―標識抗体2(又は標識抗体1)]の複合体を形成させる。未反応の標識抗体2(又は標識抗体1)を洗浄等により除去した後、標識抗体2(又は標識抗体1)の標識物質に応じた測定方法で標識物質の量を測定する(測定値2とする)。
得られた測定値2に対する測定値1の比率(測定値1/測定値2)、即ち被検試料中のC4BP又はその断片が有する糖鎖のシアリル化率を算出する。
上記[方法B-1]及び[方法B-2]において、自体公知の免疫学的測定法等の分野で用いられている分離・測定装置、各種試薬類等は、全て該方法に使用できる。抗体を固相化する不溶性担体の種類は、使用する測定装置や、実施する測定方法に従って適宜選択される。測定に使用する本発明に係る抗体1、抗体2、及び試薬類の使用濃度は、免疫学的測定法等の分野で通常用いられる濃度範囲から適宜選択すればよい。本発明に係る抗体1又は抗体2を標識するために用いられる標識物質及び標識方法等は、該標識物質の測定方法や測定装置などに応じて適宜選択される。例えば上記[方法A-1]に記載された通りである。また、測定を実施するに際しての測定条件等(反応温度、反応時間、反応時のpH,測定波長、測定装置等)は、自体公知の方法に従い、適宜選択すればよい。
9.卵巣がんの診断を補助する方法
本発明の卵巣がんの診断を補助する方法は、本発明に係る標的糖鎖を有するC4BP又はその断片を、上記した「8.標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定方法」の項に記載された測定方法により測定し、得られた結果に基づいて卵巣がんを判定する方法を含む。
本発明の卵巣がんの診断を補助する方法は、医師等による卵巣がんの診断を補助する方法として用いることができる。
すなわち、本発明の抗体1及び本発明の抗体2を用い、上記した「8.標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定方法」の項に記載の方法により被検動物由来の被検試料中の標的糖鎖を有するC4BP又はその断片を測定し、得られた測定値(測定結果)を用いて、例えば下記の方法で、卵巣がんの判定(診断・検査)を行う。
該測定値としては、上記[方法A-1]で得られる当該複合体の泳動距離、当該複合体のRf値(泳動原点から当該複合体の泳動位置までの距離/泳動の原点から泳動の終点までの距離)、当該複合体の泳動画分のピーク高、又はピーク面積が挙げられる。
また、該測定値としては、上記[方法A-2]で得られる複合体由来の標識物質検出までの時間、該複合体由来のピークのピーク高、又はピーク面積が挙げられる。
また、該測定値としては、上記[方法B-1]で得られる複合体1由来の標識物質の量、又は[方法B-2]で得られるシアリル化率が挙げられる。
卵巣がんの診断を補助する方法の具体的な方法の例としては、例えば予め基準値(カットオフ値)を設定する。被検者由来の被検試料を用いた本発明に係る標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定結果(測定値)がその基準値と同値又はそれより高い場合には、試料を提供した被検者は卵巣がんを有する可能性がある、又はその可能性が高い等の判定が可能である。
本発明に係る卵巣がんの診断を補助する方法で用いられる基準値(カットオフ値)は、例えば以下の方法で求められる。すなわち、卵巣がんを有することが確認されている動物(卵巣がん患者)由来の被検試料と基準試料を用いて、それぞれ上記測定方法により試料中の標的糖鎖を有するC4BP又はその断片を測定する。そして、卵巣がん患者由来の被検試料を用いて得られた測定値と標準試料を用いて得られた測定値の境界値等を元に設定されればよい。標準試料を用いて得られたの測定値の平均値を基準値と設定してもよい。
基準試料としては、卵巣がんを有さないことが確認されている非がん動物(例えば、卵巣がんを有さない正常者)由来試料、特に正常者由来試料や、卵巣がんを有さないことが確認されている非がん動物(例えば、卵巣がんを有さない正常者)由来試料又はC4BPを酵素処理してシアル酸を切断する処理を行った試料が挙げられる。
また、標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定結果(測定値)又はその値の量的範囲(測定値又は測定値の範囲)に対応させて複数の判定区分を設定して判定する方法が挙げられる。例えば、[(1)卵巣がんのおそれはない、(2)卵巣がんのおそれは低い、(3)卵巣がんの兆候がある、(4)卵巣がんのおそれが高い、等]の判定区分を設定する。そして、被検者由来の被検試料の標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定結果(測定値)がどの判定区分に入るかを判定することにより卵巣がんの判定を行うことが可能である。
また、同一被検者において、ある時点で決定した被検者由来の被検試料中の標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定値と、異なる時点で決定した測定値とを比較し、当該測定値の増減の有無及び/又は増減の程度を評価することによって、卵巣がんの進行度や悪性度の診断、あるいは術後の予後診断が可能である。
すなわち、例えば同一被検者において、ある時点で測定された被検者由来の被検試料中の標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定結果(測定値)と、異なる時点で測定された被検者由来の被検試料中の標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定結果(測定値)とを比較し、測定結果(測定値)の増加が認められたという検査結果が得られた場合には、試料を提供した被検者が卵巣がんへ病態が進行した可能性がある、又は卵巣がんへの病態の進行の兆候が認められる等の判定が可能である。標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定値の変動が認められないという検査結果が得られた場合には、該被検者の卵巣がんの病態に変化はないとの判定が可能である。
標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定値として上記「7)標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定方法」の項の[方法A-1]で説明したRf値([泳動原点から複合体の泳動位置までの距離/泳動の原点から泳動の終点までの距離])を用いて本発明の卵巣がんの診断を補助する方法を実施する場合の具体例を以下に示す。
[例1]
(1)被検者由来の被検試料を用いてRf値を決定する。
(2)標準試料を用いてRf値(標準Rf値とする)を決定する。
(3)上記(1)で得られたRf値を上記(2)で得られた標準Rf値と比較し、該Rf値が該標準Rf値と同じ又はそれより高い場合に、試料を提供した被検者は卵巣がんを有している(卵巣がん陽性)、またはその可能性が高いと判定する。
[例2]
(1)標準試料を用いてRf値を測定し、卵巣がんを判定するための、該Rf値のカットオフ値を設定する。
(2)被検者由来の被検試料中を用いてRf値を決定する。
(3)該Rf値を上記(1)で設定したカットオフ値と比較し、該Rf値が該カットオフ値と同じかそれより高い場合に、試料を提供した被検者は卵巣がんを有している(卵巣がん陽性)、またはその可能性が高いと判定する。
なお、適切なカットオフ値を定めれば、被検者の判定の度に改めてカットオフ値を設定する必要はない。
本発明の卵巣がんの診断を補助する方法により被検者である患者が卵巣がんを有している、又はその可能性が高いと判定された場合には、病理組織検査等の侵襲的検査を行う又は当該被検者に対して卵巣がんの適切な治療を施す等を実施することができる。
<4.卵巣がんの診断を補助するための試薬キット>
本発明の卵巣がんの診断を補助するための試薬キットは、本発明の抗体1、本発明の抗体2、及び本発明に係るレクチンを含むものである。
本発明の試薬キットに含まれる本発明に係るレクチン及びその好ましい態様と具体例等の詳細は、上記「<3.卵巣がんの診断を補助する方法>」の「6.本発明に係るレクチン」の項に記載した通りである。
本発明に係るレクチンは、適当な緩衝液中に懸濁させた懸濁液等の溶液状態の試液での形態であってもよく、若しくは凍結品や凍結乾燥品であってもよい。
本発明の試薬キットに含まれる本発明の抗体1及び抗体2は、上記「<3.卵巣がんの診断を補助する方法>」の「5.本発明の抗体(抗体1及び抗体2)」の項で述べたものと同じであり、好ましいものも同じである。
本発明の抗体1及び抗体2は標識物質で標識されていてもよい。その好ましい態様と具体例等の詳細は、上記「<3.卵巣がんの診断を補助する方法>」の「5.本発明の抗体(抗体1及び抗体2)」の項に記載した通りである。
更に本発明の抗体1及び抗体2は、陰イオン性物質等の荷電キャリヤー分子で標識されていてもよい。その好ましい態様と具体例等の詳細は、上記「<3.卵巣がんの診断を補助する方法>」の「8.標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定方法」における[方法A-2]に関する説明に記載した通りである。
本発明の抗体1及び抗体2は、適当な緩衝液中に懸濁させた懸濁液等の溶液状態の試液での形態であってもよく、若しくは凍結品や凍結乾燥品であってもよい。
本発明に係るレクチンが試液の形態である場合、本発明の抗体1又は抗体2は、本発明に係るレクチンを含有する試液中に共存させてもよいし、本発明に係るレクチンとは別の試液、凍結品、又は凍結乾燥品として含んでいてもよい。
本発明の抗体1、本発明の抗体2、及び本発明に係るレクチンの該試液中の濃度、試液の溶媒等は、通常この分野で使用される範囲で適宜設定されればよい。
本発明のキットを構成する本発明の抗体1、本発明の抗体2、及び本発明に係るレクチンを含有する試液中には、通常この分野で用いられる添加剤、例えば試薬類、例えば緩衝剤、反応促進剤、糖類、蛋白質、塩類、界面活性剤等の安定化剤、防腐剤等であって、本発明の抗体1及び抗体2の反応を阻害しないものが含まれていてもよい。またこれら試薬の濃度等も、通常この分野で通常用いられる濃度範囲から適宜選択すればよい。
該キットは、更に蛋白質分解酵素や、更に還元剤を構成試薬として含んでいてもよい。その好ましい態様と具体例等の詳細は、上記の「<3.卵巣がんの診断を補助する方法>」の「7.前処理方法」の項に記載した通りである。
更に本発明の試薬キットは、上記[方法A-1]又は[方法A-2]に係る電気泳動法、及び電気泳動法による標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定に必要な試薬を必要量備えていてもよい。
本発明の試薬キットは、電気泳動を実施した際に標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の画分またはピークを決定するために用いられる標準品が組み合わされていてもよい。該標準品標準試料としては、卵巣がんを有さないことが確認されている非がん動物(例えば、卵巣がんを有さない正常者)由来試料、卵巣がんを有さないことが確認されている非がん動物(例えば、卵巣がんを有さない正常者)由来試料又はC4BPを酵素処理してシアル酸を切断する処理を行った試料、が挙げられる。
更にまた本発明のキットには、本発明に係る標的糖鎖を測定する手順、及びその値をもとに本発明の卵巣がんの診断を補助する方法を実施するための説明書等を含ませておいても良い。当該「説明書」とは、当該方法における特徴・原理・操作手順、判定手順等が文章又は図表等により実質的に記載されている当該キットの取扱説明書、添付文書、あるいはパンフレット(リーフレット)等を意味する。
<5.C4BP又はその断片の測定方法>
本発明のC4BP又はその断片の測定方法は、本発明の抗体1、本発明の抗体2、及び本発明に係るレクチンを用いて実施される。
その詳細は上記<3.卵巣がんの診断を補助する方法>の「8.標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定方法」に関する説明に記載された通りである。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1.本発明の抗体1及び抗体2の作製
(1)免疫原の作製
補体C4結合蛋白質(C4BP)のα鎖の配列番号1で表されるアミノ酸配列の497位~505位のアミノ酸配列DKDQYVEPE(配列番号4)のC末端にシステインを付加した配列(DKDQYVEPEC:配列番号5)、及び529位~538位のアミノ酸配列 RTWPEVPKC(配列番号6)を設計した。このアミノ酸配列からなるペプチドを(株)ベックスにて合成し、それぞれ免疫原1、及び免疫原2とした。
(2)モノクローナル抗体作製
上記(1)で合成した免疫原1、及び免疫原2を用いて(株)アイティーエムに委託して抗体を作製した。委託先での抗体作製の概略は下記の通りである。
1)ハイブリドーマの作製
マレイミド法にて、免疫原1又は免疫源2とヘモシアニン(KLH)とのコンジュゲートを作成した。得られた免疫原1-KLHと免疫原2-KLHを混合し、アジュバンドと共にWKYラットに免疫した。2週間後腸骨リンパ節を採取し、マイクロタイタープレートを用いて常法によりミエローマ細胞と融合し培養した。
2)抗体の一次スクリーニング
(i)試薬の調製
i)精製ヒト由来C4BP
HiTrap NHS-activate Columns(GEヘルスケア製)を用い、このカラムに添付のプロトコールに従って抗C4BPポリクローナル抗体(羊)(アブカム(株)製)のアフィニティ-カラムを作製した。ヒト血清をこのアフィニティーカラムで処理して、C4BPを精製した。
ii)HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)標識抗C4BPポリクローナル抗体
Peroxidase Labeling Kit((株)同仁化学研究所製)を用い、キットに添付のプロトコールに従って、抗C4BPポリクローナル抗体(羊)(アブカム(株)製)をHRPで標識した。
iii)HRP標識免疫原1:マレイミド法により免疫原1をHRP標識して得た。
iv)HRP標識免疫原2:マレイミド法により免疫原2をHRP標識して得た。
(ii)抗体の一次スクリーニング
上記1)で得られた各ハイブリドーマを用い、以下のスクリーニング法A~Cを実施した。
i)スクリーニング法A
抗ラットIgG-Fc抗体(ウサギ)((株)アイティーエム製)をマイクロプレート1ウエルあたり0.125μg固相した後、牛血清アルブミン(BSA)でブロッキング処理した。次に上記1)で得られたハイブリドーマの培養液50μLを添加し60分間静置した。その後、リン酸緩衝食塩水(PBS)に0.1 % Tween20を添加した洗浄液(PBS-Tween)でウェルを3回洗浄した。
次に、上記2)(i)試薬の調製で調製した精製ヒトC4BP(0.25μg/mL、1%BSAを含むPBS)の50μLをウェルに加え、60分間静置した。その後、PBS-Tweenでウェルを3回洗浄した。
次に、上記2)(i)試薬の調製で調製したHRP標識抗C4BPポリクローナル抗体を1% BSAを含むPBSで1000倍希釈したもの50μLをウェルに加え、30分間静置した。その後、PBS-Tweenでウェルを3回洗浄した。
次に、基質溶液(o-フェニレンジアミン(OPD)(富士フイルム和光純薬(株)製))50μLを加えて、30分間発色させ、1M 硫酸溶液100μLを添加し、反応停止させた。
吸光度計を用いて得られた溶液の、492nmでの吸光度を測定した。
ii)スクリーニング法B
抗ラットIgG-Fc抗体(ウサギ)((株)アイティーエム製)をマイクロプレート1ウエルあたり0.125μg固相した後、BSAでブロッキング処理した。次に上記1)で得られたハイブリドーマ培養液50μLを添加し60分間静置した。その後、PBS-Tweenでウェルを3回洗浄した。
次に、上記2)(i)試薬の調製で調製したHRP標識免疫原1を1%BSAを含むPBS緩衝液で5000倍希釈したもの50μLをウェルに加え、60分間静置した。その後、PBS-Tweenでウェルを3回洗浄した。
次に、基質溶液(o-フェニレンジアミン(OPD)(富士フイルム和光純薬(株)製))50μLを加えて、30分間発色させ、1M 硫酸溶液100μLを添加し、反応停止させた。
吸光度計を用いて、得られた溶液の492nmでの吸光度を測定した。
iii)スクリーニング法C
抗ラットIgG-Fc抗体(ウサギ)((株)アイティーエム製)をマイクロプレート1ウエルあたり0.125μg固相した後、BSAでブロッキング処理した。次に上記1)で得られたハイブリドーマ培養液50μLを添加し60分間静置した。その後、PBS-Tweenでウェルを3回洗浄した。
次に、上記2)(i)試薬の調製で調製したHRP標識免疫原2を1%BSAを含むPBSで5000倍希釈したもの50μLをウェルに加え、60分間静置した。その後、PBS-Tweenでウェルを3回洗浄した。
次に、基質溶液(o-フェニレンジアミン(OPD)(富士フイルム和光純薬(株)製))50μLを加えて、30分間発色させ、1M 硫酸溶液100μLを添加し、反応停止させた。
吸光度計を用いて、得られた溶液の492nmでの吸光度を測定した。
上記スクリーニング法A、B、Cを実施した結果、スクリーニング法A、B、Cのすべてに反応する(吸光度が測定できた)ウエル、スクリーニング法AとBに反応する(吸光度が測定できた)ウエル、スクリーニング法AとCに反応する(吸光度が測定できた)ウエルをそれぞれ選択し、細胞をさらに分離して、マイクロタイタープレートで培養を実施した。
3)抗体の二次スクリーニング
上記2)で得られた各ウエルの細胞培養上清を用いて、更に上記スクリーニング法A、B、Cを実施した。
その結果、スクリーニング法AとBで反応した(免疫原1に対して反応した)ウエルを選択した。その後常法によりクローニングを行いハイブリドーマを樹立した。このハイブリドーマの培養上清から常法により抗体を分離・精製し、15-5Eと命名した。15-5Eは、免疫原1であるC4BPα鎖の配列番号1で表されるアミノ酸配列の497位-505位のアミノ酸配列DKDQYVEPE(配列番号1)を認識する抗体である。本発明の抗体1に該当する。
また、スクリーニング法AとCで反応した(免疫原2に対して反応した)ウエルを選択した。その後常法によりクローニングを行いハイブリドーマを樹立した。このハイブリドーマの培養上清から常法により抗体を分離・精製し、30-9Eと命名した。30-9Eは、免疫原2であるC4BPα鎖の配列番号1で表されるアミノ酸配列の529位-538位のアミノ酸配列 RTWPEVPKC(配列番号2)を認識する抗体である。本発明の抗体2に該当する。
実施例2.PHA-E4を用いた卵巣がんの判定
(1)試薬の調製
i)抗体結合膜
Amersham Protran 0.45μm ニトロセルロース膜(GEヘルスケア)を、実施例1で得られた30-9E抗体 20μg/mLを含有する10 mM リン酸緩衝液 pH 7.5に浸漬させて、30-9E抗体をニトロセルロース膜に結合させた。次いで0.5% Tween 20/10mM PBS液に浸漬させて処理した後、乾燥させて抗体結合膜とした。
ii)HRP標識15-5E抗体液
実施例1で得られた15-5E抗体を常法によりFab'断片とした後、常法(石川栄治著、「酵素標識法」、学会出版センター,1991年、p.62の方法)によりHRP標識した。
(2)試料の前処理
卵巣がん患者(n=5)及び正常者(n=5)の血清試料10μLにトリス緩衝液(100 mM Tris-HCl pH 9.0、(株)同仁化学研究所)20μLを加えた。次いで2 mg/mLリシルエンドペプチダーゼ(富士フイルム和光純薬(株)製)、2 mg/mLトリプシン(富士フイルム和光純薬(株)製)をそれぞれ2μLずつ添加し、37℃で30分インキュベートしてペプチド断片化した。ペプチド断片後、反応液に500 mMジチオトレイトール(富士フイルム和光純薬(株)製)を2μL添加し、37℃で30分インキュベートし、還元した。還元後、室温で5分静置した。次いで反応液に500 mMヨードアセトアミド(富士フイルム和光純薬)を2μL添加し、室温で20分遮光下に静置し、ペプチド断片をアルキル化した。
(3)レクチン親和電気泳動
上記(2)で得られた前処理後の試料2μLを、インゲンマンレクチン-E4(PHA-E4;J-ケミカル) 0.2 mg/mLを含む1%アガロースゲル(ロンザジャパン(株)製)で200V、100分、2-10℃に冷却して電気泳動を行った。得られた泳動ゲルを、上記(1)で調製した抗体結合膜(30-9E)に、抗体親和転写した。転写後の抗体結合膜を洗浄液(0.9% NaCl,0.05% Tween 20含有)液で2回洗浄した。
洗浄後、上記(1)で調製したHRP標識15-5E抗体液を0.8% 牛γ-グロブリン(Biocell)を含む10mM PBSで30nMに希釈した液に浸漬させ、室温で1時間反応させた。次いで抗体結合膜を洗浄液(0.9% NaCl,0.05% Tween 20含有)で2回洗浄した。洗浄後、抗体結合膜をβ-NADH(オリエンタル酵母工業(株)製)10 mg及び0.2%過酸化水素水(富士フイルム和光純薬(株)製)25 μLを溶解したニトロTB液((株)同仁化学研究所製)5 mLに1~30 分浸漬させて発色させた。
(4)測定
当該膜を乾燥させた後、GS-900TMDensit meter(BIO-RAD)でアプリケーション Coomassie Blue、スキャンモード Reflectiveで、各ピークのRf値、ピーク高、及びピーク面積を測定した。
尚、Rf値は、[試料をアガロースゲルに塗布した位置から試料の泳動画分までの距離/試料をアガロースゲルに塗布した位置からプラス極側のゲル末端までの距離]で求めた。
(5)結果
結果を表1、及び図1~図3に示す。図1は、正常者および卵巣がん患者由来試料を用いて得られたRf値を示す。図2は、正常者および卵巣がん患者由来試料を用いて得られたピーク高を示す。図3は、正常者および卵巣がん患者由来試料を用いて得られたピーク面積を示す。
Figure 2022083307000011
表1及び図1~図3から明らかなごとく、Rf値、ピーク高、ピーク面積のいずれの値も、卵巣がん患者は正常者に比較して有意に高かった。
以上の結果から、本発明に係る卵巣がんの診断を補助する方法によれば、卵巣がんを精度よく判定できることがわかった。
実施例3.RCA120を用いた卵巣がんの判定
(1)試料の前処理
実施例1(2)と同じ方法で、卵巣がん患者及び正常者の血清試料10μLを前処理した。
(2)レクチン親和電気泳動
上記(2)で得られた前処理後の試料2μLを、トウゴマレクチン120(RCA120; Vector Laboratories)0.2 mg/mLを含む1%アガロースゲル(ロンザジャパン(株)製)で200V、60分 2~10℃に冷却して電気泳動を行った。得られた泳動ゲルを、上記(1)で調製した抗体結合膜(30-9E)に抗体親和転写を行った。転写後の抗体結合膜を洗浄液(0.9% NaCl,0.05% Tween 20含有)で2回洗浄した。
洗浄後、上記(1)で調製したHRP標識15-5E抗体液を0.8%牛γ-グロブリン(Biocell)を含む10mM PBSで30nMに希釈した液に浸漬させ、室温で1時間反応させた。次いで抗体結合膜を洗浄液(0.9% NaCl,0.05% Tween 20含有)で2回洗浄した。洗浄後、抗体結合膜をβ-NADH(オリエンタル酵母工業(株)製)10 mg及び0.2%過酸化水素水(富士フイルム和光純薬(株)製)25 μLを溶解したニトロTB液((株)同仁化学研究所製)5 mLに30 分浸漬させて発色させた。
(3)測定
当該膜を乾燥させた後、GS-900TM Calibrated Densit meter(BIO-RAD)でアプリケーション Coomassie Blue、スキャンモード Reflectiveで、各ピークのRf値、ピーク高、及びピーク面積を測定した。
尚、Rf値は、[試料をアガロースゲルに塗布した位置から試料の泳動画分までの距離/試料をアガロースゲルに塗布した位置からプラス極側のゲル末端までの距離]で求めた。
(4)結果
結果を表2、及び図4~図6に示す。図4は、正常者および卵巣がん患者由来試料を用いて得られたRf値を示す。図5は、正常者および卵巣がん患者由来試料を用いて得られたピーク高を示す。図6は、正常者および卵巣がん患者由来試料を用いて得られたピーク面積を示す。
Figure 2022083307000012
表2及び図4~図6から明らかなごとく、Rf値、ピーク高、ピーク面積のいずれの値も、卵巣がん患者は正常者に比較して有意に高かった。
以上の結果から、RCA120レクチンを用いて本発明に係る糖鎖の測定を行って得られた値を用いた場合でも、卵巣がんを精度よく判定できることがわかった。

Claims (13)

  1. 被検動物由来の被検試料における標的糖鎖を有する補体C4結合蛋白質であるC4BP又はその断片を、配列番号2で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体1、配列番号3で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体2、及び下記式[1]又は式[2]で表される糖鎖に親和性を有するが、下記式[1]又は式[2]で表される糖鎖であってガラクトースの非還元末端にシアル酸が結合した糖鎖には親和性を有さないレクチンを用いて測定し、得られた測定結果に基づいて被検動物の卵巣がんを判定する、卵巣がんの診断を補助する方法であり、
    前記標的糖鎖が下記式[1]又は式[2]で表される少なくとも一つの糖鎖であって、ガラクトースの非還元末端にシアル酸が結合した糖鎖である、前記方法。
    Figure 2022083307000013

    Figure 2022083307000014
  2. 前記測定が下記(A)又は(B)を含む、請求項1に記載の卵巣がんの診断を補助する方法:
    (A)被検試料を、前記レクチンの存在下で電気泳動に付すことにより、前記被検試料中の標的糖鎖を有するC4BP又はその断片を前記被検試料から分離し、前記標的糖鎖を有するC4BP又はその断片と前記抗体1と前記抗体2とを接触させ、得られた標的糖鎖を有するC4BP又はその断片と抗体1と抗体2との複合体を測定する、
    (B)被検試料と前記抗体1と前記抗体2とを接触させ、得られた前記被検試料中の標的糖鎖を有するC4BP又はその断片と抗体1と抗体2との複合体を前記レクチンの存在下で電気泳動に付した後、前記複合体を測定する。
  3. レクチンがインゲンマメレクチン又はトウゴマレクチンである、請求項1に記載の卵巣がんの診断を補助する方法。
  4. 被検試料が蛋白質分解酵素により処理されたものである、請求項1に記載の卵巣がんの診断を補助する方法。
  5. 蛋白質分解酵素がセリンプロテアーゼである、請求項4に記載の卵巣がんの診断を補助する方法。
  6. 抗体1が配列番号4で表されるアミノ酸配列に結合する抗体であり、抗体2が配列番号6で表されるアミノ酸配列に結合する抗体である、請求項1に記載の卵巣がんの診断を補助する方法。
  7. 被検試料が、全血、血清、又は血漿である、請求項1に記載の卵巣がんの診断を補助する方法。
  8. 配列番号2で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体1、配列番号3で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体2、及び下記式[1]又は式[2]で表される糖鎖に親和性を有するが、下記式[1]又は式[2]で表される糖鎖であってガラクトースの非還元末端にシアル酸が結合した糖鎖には親和性を有さないレクチンを含む、卵巣がんの診断を補助するための試薬キット。

    Figure 2022083307000015

    Figure 2022083307000016
  9. レクチンがインゲンマメレクチン又はトウゴマレクチンである、請求項8に記載の卵巣がんの診断を補助するための試薬キット。
  10. さらに蛋白質分解酵素及び還元剤を含む、請求項8に記載の卵巣がんの診断を補助するための試薬キット。
  11. 被検動物由来の被検試料における標的糖鎖を有する補体C4結合蛋白質であるC4BP又はその断片を、配列番号2で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体1、配列番号3で表されるアミノ酸配列の領域に結合する抗体2、及び下記式[1]又は式[2]で表される糖鎖に親和性を有するが、下記式[1]又は式[2]で表される糖鎖であってガラクトースの非還元末端にシアル酸が結合した糖鎖には親和性を有さないレクチンを用いて測定する、前記標的糖鎖を有するC4BP又はその断片の測定方法であり、
    前記標的糖鎖が、下記式[1]又は式[2]で表される少なくとも一つの糖鎖であって、ガラクトースの非還元末端にシアル酸が結合した糖鎖である、前記方法。
    Figure 2022083307000017

    Figure 2022083307000018
  12. 配列番号4で表されるアミノ酸配列に結合する抗体。
  13. 配列番号6で表されるアミノ酸配列に結合する抗体。
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