以下、本発明の実施形態による管体結束具を、油圧ショベルに搭載された複数の油圧ホースを結束する場合を例に挙げ、図1ないし図15を参照しつつ詳細に説明する。
図1ないし図10は、本発明の第1の実施形態を示している。図1において、建設機械を代表する油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とを備えている。上部旋回体3の前側には作業装置4が設けられ、油圧ショベル1は、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を俯仰動させることにより、土砂の掘削作業等を行う。
下部走行体2には、クローラ(履帯)2Aを周回動作させる駆動輪2Bが設けられ、この駆動輪2Bは油圧モータからなる走行モータ(図示せず)によって駆動される。下部走行体2と上部旋回体3との間には、下部走行体2に対して上部旋回体3を旋回させる旋回装置(図示せず)が設けられ、この旋回装置は油圧モータからなる旋回モータによって駆動される。
作業装置4は、上部旋回体3の前側に回動可能に取付けられたブーム4Aと、ブーム4Aの先端に回動可能に取付けられたアーム4Bと、アーム4Bの先端に回動可能に取付けられたバケット4Cとを有している。ブーム4Aを回動させるブームシリンダ4D、アーム4Bを回動させるアームシリンダ4E、バケット4Cを回動させるバケットシリンダ4Fは、それぞれ油圧シリンダによって構成されている。
このように、油圧ショベル1には、走行モータ、旋回モータ、作業装置4を構成する各シリンダ4D,4E,4F等の各種の油圧アクチュエータが搭載されている。図2に示すように、上部旋回体3にはコントロールバルブ5、信号制御弁6等が設けられ、油圧ショベル1に搭載された油圧アクチュエータは、油圧ショベル1に搭載された油圧ポンプおよび作動油タンクからなる油圧源(図示せず)に、コントロールバルブ5を介して接続されている。
コントロールバルブ5は、複数の油圧パイロット部5Aを有し、これら複数の油圧パイロット部5Aは、それぞれ管体としての油圧ホース7を介して信号制御弁6に接続されている。信号制御弁6は、油圧ショベル1に設けられた走行用、および作業用の操作レバー装置(いずれも図示せず)に対する操作方向および操作量に応じて、コントロールバルブ5の油圧パイロット部5Aに信号(圧油)を出力する。これにより、コントロールバルブ5は、操作レバー装置に対する操作に応じて、各種の油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御する。
このため、油圧源とコントロールバルブ5との間、およびコントロールバルブ5と各種の油圧アクチュエータとの間は、それぞれ複数の管体を介して接続されている。この場合、管体は、取付け場所に応じて金属パイプ、またはゴム製の油圧ホースが選択して用いられる。また、図2に示すコントロールバルブ5と信号制御弁6との間は、可撓性を有する複数の油圧ホース7を介して接続されている。
管体結束具11は、コントロールバルブ5と信号制御弁6との間を接続する複数の油圧ホース7を結束している。これら油圧ホース7の一端は、コントロールバルブ5の油圧パイロット部5Aに接続され、油圧ホース7の他端は信号制御弁6に接続されている。管体結束具11は、複数の油圧ホース7の中間部位を結束した状態で、コントロールバルブ5のケーシングに固定されたブラケット5Bに後述のボルト23を用いて固定されている。これにより、複数の油圧ホース7内を圧油が流通したとしても、油圧ホース7が大きく振動してコントロールバルブ5等に接触するのを防止できるようになっている。
図2および図3に示すように、管体結束具11は、屈曲可能な板状に形成された板状部材12と、板状部材12を屈曲させて複数の油圧ホース7を結束する結束部材14とを含んで構成されている。
図3ないし図5に示すように、板状部材12は、例えばゴム等の弾性材料を用いて屈曲可能な長方形の板状に形成されている。板状部材12は、板厚方向の一側面12Aに、直線状に伸長する複数(例えば5本)の凹溝13が、等間隔で並列に形成されている。これら5本の凹溝13は、板状部材12の板厚方向の一側面12Aを、板厚方向の他側面12Bに向けて凹陥させることにより形成され、板厚方向の一側面12A側が開口端13Aとなり、板厚方向の他側面12B側が溝底部13Bとなっている。
凹溝13の開口端13Aの溝幅Aと、溝底部13Bの溝幅Bとは等しい寸法を有している。開口端13Aの溝幅Aは、結束すべき油圧ホース7の直径よりも僅かに大きく設定されている。溝底部13Bは、油圧ホース7よりも僅かに大きな直径を有する半円形状に形成されている。板状部材12は、複数の凹溝13内に個別に油圧ホース7を嵌合させることにより、これら複数の油圧ホース7を、互いに非接触の状態で整列させて保持する。
ここで、複数の凹溝13が伸長する方向(伸長方向)を板状部材12の長さ方向とし、凹溝13の伸長方向と直交する方向を板状部材12の幅方向とすると、板状部材12の幅方向の寸法(幅寸法)Cは、板状部材12が、凹溝13の伸長方向と平行な軸線D-Dを中心として筒状に屈曲できる長さに設定されることが望ましい。このように、板状部材12の凹溝13内に油圧ホース7を嵌合させた状態で、結束部材14によって板状部材12を筒状に屈曲させることにより、複数の凹溝13の開口端13Aの溝幅Aが狭められる。これにより、複数の凹溝13内に個別に油圧ホース7を嵌合させ、これら複数の油圧ホース7を互いに非接触の状態で保持することができる構成となっている。
結束部材14は、板状部材12の板厚方向の他側面12Bに巻付けられている。結束部材14は、板状部材12の複数の凹溝13にそれぞれ油圧ホース7が保持された状態で、凹溝13の伸長方向と平行な軸線D-Dを中心として板状部材12を筒状に屈曲させることにより、複数の油圧ホース7を結束する。図6ないし図8に示すように、結束部材14は、板状部材12に巻付けられるバンド15と、板状部材12に巻付けられるバンド15の締付け力を調整する締付け力調整機構18とを含んで構成されている。
バンド15は、結束部材14のベースとなるもので、板状部材12の板厚方向の他側面12Bに巻付けられる。バンド15は、例えば金属材料からなる薄板を用いて狭幅な帯状に形成され、長尺バンド16と、長尺バンド16に固着された短尺バンド17とを有している。長尺バンド16は、板状部材12に環状に巻付けられた状態で外周側となる外側面16Aと、内周側となる内側面16Bとを有している。また、長尺バンド16は、長さ方向の一端16C側に設けられた第1フック16Dと、長さ方向の他端16E側に設けられた第2フック16Fとを有している。第1フック16Dは、締付け力調整機構18の後述する筒体側係止ピン19Aに掛止めされ、第2フック16Fは、締付け力調整機構18の後述するボルト側係止ピン20Aに掛止めされる。
長尺バンド16の第1フック16Dは、長尺バンド16の長さ方向の一端16Cを外側面16A側に折返し、その一端16Cを溶接等の手段を用いて外側面16Aに固着することにより形成されている。第1フック16Dは、長尺バンド16の長さ方向と直交する幅方向に延びる筒状をなす。第1フック16Dの幅方向の中間部には切欠部16D1が形成され、二又状になっている(図7参照)。これと同様に、長尺バンド16の第2フック16Fは、長尺バンド16の長さ方向の他端16Eを外側面16A側に折返し、その他端16Eを溶接等の手段を用いて外側面16Aに固着することにより形成されている。これにより、第2フック16Fは、長尺バンド16の長さ方向と直交する幅方向に延びる筒状をなし、かつ、幅方向の中間部が切欠部16F1となった二又状に形成されている(図7参照)。
短尺バンド17は、長尺バンド16の内側面16B側に設けられ、長尺バンド16と共にバンド15を構成している。短尺バンド17は、長尺バンド16と等しい幅寸法を有し、かつ長尺バンド16よりも小さい(短尺な)長さ寸法を有する帯状に形成されている。短尺バンド17の長さ方向の一端は、長尺バンド16の内側面16Bに溶接等の手段を用いて固着された固定端17Aとなっている。一方、短尺バンド17の長さ方向の他端は、長尺バンド16の第2フック16Fから長尺バンド16の長さ方向に突出した自由端17Bとなっている。
従って、図8に示すように、バンド15の長さ方向の一端は、長尺バンド16の第1フック16Dによって構成され、バンド15の長さ方向の他端は、短尺バンド17の自由端17Bによって構成されている。そして、バンド15は、板状部材12に巻付けられる前段階では、長さ方向の両端となる第1フック16Dと短尺バンド17の自由端17Bとが開いた開放状態(図8の状態)となる。一方、バンド15は、板状部材12に巻付けられるときには、短尺バンド17の自由端17Bが、長尺バンド16の内側面16Bに接触して環状に閉じた閉塞状態(図6の状態)となる。
締付け力調整機構18は、バンド15と共に結束部材14を構成し、板状部材12に巻付けられたバンド15の締付け力を増減させる。図6ないし図8に示すように、締付け力調整機構18は、円筒状の筒体19と、筒体19の内周側に挿通されるボルト軸20と、ボルト軸20に螺着されるナット21とを含んで構成されている。
筒体19は、締付け力調整機構18のベースとなるもので、パイプ材等を用いて円筒状に形成されている。筒体19の軸方向の一端側には、一対(2本)の筒体側係止ピン19Aが設けられている。筒体側係止ピン19Aは、筒体19を径方向から挟む2か所に設けられ、筒体19の軸方向と直交する方向に突出している。筒体19の軸方向の一端側は、バンド15(長尺バンド16)に設けられた第1フック16Dの切欠部16D1に挿通され、筒体19に突設された一対の筒体側係止ピン19Aは、二又状の第1フック16Dにそれぞれ回動可能に掛止めされている。筒体19の軸方向の他端側には、筒体19よりも大径な円錐台状をなすナット受け部19Bが設けられている。
ボルト軸20は、筒体19の内周側に軸方向に移動可能に挿通されている。ボルト軸20は、筒体19の内径よりも小さな外径寸法を有する軸体からなり、その外周面には雄ねじが螺設されている。ボルト軸20の軸方向の一端側には、一対(2本)のボルト側係止ピン20Aが設けられている。ボルト側係止ピン20Aは、ボルト軸20を径方向から挟む2か所に設けられ、ボルト軸20の軸方向と直交する方向に突出している。ボルト軸20の軸方向の一端側は、バンド15(長尺バンド16)に設けられた第2フック16Fの切欠部16F1内に配置され、ボルト軸20に突設された一対のボルト側係止ピン20Aは、二又状の第2フック16Fにそれぞれピン周りに回動可能に掛止めされている。
ボルト軸20の軸方向の他端20Bは、バンド15が開放状態(図8の状態)にあるときには筒体19から離脱した状態を保つ。ボルト軸20が筒体19の内周側に挿通され、ボルト軸20の他端20Bが筒体19のナット受け部19Bから外部に突出すると、バンド15が閉塞された状態(図6の状態)になる。この状態で、ボルト軸20の他端20Bにナット21を螺着し、このナット21をナット受け部19Bに当接させて締込む。これにより、筒体側係止ピン19Aに掛止めされた長尺バンド16の第1フック16Dと、ボルト側係止ピン20Aに掛止めされた第2フック16Fとの間隔が変化し、円環状に閉じたバンド15の直径が増減することにより、板状部材12に対する締付け力を調整することができる構成となっている。
固定部としての固定板22は、結束部材14を構成するバンド15の長尺バンド16に設けられている。固定板22は、長尺バンド16よりも大きな板厚を有し、長尺バンド16と等しい幅寸法を有する長方形の板体として形成されている。固定板22の長さ方向の一端22A側は、長尺バンド16の外側面16Aに溶接等の手段を用いて固着されている。固定板22の長さ方向の他端22Bは、バンド15から離間する方向に延び、この他端22B側にはボルト挿通孔22Cが形成されている。
図2に示すように、コントロールバルブ5の油圧パイロット部5Aに接続された複数の油圧ホース7の周囲には、コントロールバルブ5のケーシングに固定された構造物としてのブラケット5Bが設けられている。このブラケット5Bに、固定板22のボルト挿通孔22Cに挿通されたボルト23を螺着することにより、複数の油圧ホース7を結束した結束部材14を、ブラケット5Bに固定することができる構成となっている。
第1の実施形態による管体結束具11は、上述の如き構成を有するもので、次に、コントロールバルブ5の油圧パイロット部5Aと信号制御弁6との間を接続する複数(例えば5本)の油圧ホース7を、管体結束具11を用いて結束する作業について説明する。
まず、複数の油圧ホース7を、1本ずつ板状部材12の凹溝13内に個別に嵌合させる。凹溝13の開口端13Aの溝幅Aと溝底部13Bの溝幅Bとは等しく、結束対象である油圧ホース7の直径よりも僅かに大きく設定されている。このため、板状部材12の凹溝13内に、複数の油圧ホース7を容易に嵌合させて保持することができる。
次に、複数の凹溝13内にそれぞれ油圧ホース7を保持した状態で、板状部材12を屈曲させる。具体的には、図3に示すように、凹溝13の伸長方向と平行な軸線D-Dを中心として、板状部材12を筒状に屈曲させる。これにより、複数の凹溝13の開口端13Aの溝幅Aが狭められ、油圧ホース7を凹溝13内に確実に保持することができる。さらに、複数の油圧ホース7は、1本ずつ凹溝13内に保持されることにより、板状部材12を屈曲させたときに並行した状態で整列する。従って、複数の油圧ホース7が、板状部材12内で交差して捩じれたり、大きく曲げられるのを確実に防止することができる。
このように、凹溝13内に複数の油圧ホース7を保持した板状部材12を筒状に屈曲させた状態で、板状部材12の他側面12Bに結束部材14のバンド15を巻付ける。図8に示すように、結束部材14のバンド15は、板状部材12に巻付けられる前段階では、長さ方向の両端、即ち、長尺バンド16の第1フック16Dと、短尺バンド17の自由端17Bとが開いた開放状態となっている。従って、筒状に屈曲した板状部材12の他側面12Bに、その外周側から長尺バンド16と短尺バンド17を当接させ、短尺バンド17の自由端17Bを長尺バンド16の内側面16Bに巻込む。そして、締付け力調整機構18のボルト軸20を、長尺バンド16の第2フック16Fに掛止めされたボルト側係止ピン20Aを中心として回転させ、ボルト軸20の他端20Bを筒体19の内周側に挿通する。これにより、バンド15は環状に閉じた閉塞状態となる。このようにして、筒状に屈曲した板状部材12の他側面12Bに、締付け力調整機構18のバンド15を容易に巻付けることができる。
この状態で、筒体19のナット受け部19Bから突出したボルト軸20の他端20B側に、ナット21を螺合させて締付ける。これにより、筒体側係止ピン19Aに掛止めされた長尺バンド16の第1フック16Dと、ボルト側係止ピン20Aに掛止めされた第2フック16Fとの間隔が小さくなる。従って、円環状に閉じたバンド15の直径が減少し、図9および図10に示すように、適度な締付け力をもってバンド15を板状部材12の他側面12Bに巻付けることができる。
このようにして、凹溝13内に油圧ホース7を保持した板状部材12を筒状に屈曲させ、この板状部材12の他側面12Bに結束部材14を巻付けることにより、図9に示すように、凹溝13の開口端13Aは狭められる。これにより、結束部材14によって結束された複数の油圧ホース7は、互いに非接触の状態を保ちつつ板状部材12の複数の凹溝13内に個別に保持される。
結束部材14によって複数の油圧ホース7を結束した後には、バンド15(長尺バンド16)に設けられた固定板22のボルト挿通孔22Cにボルト23を挿通し、このボルト23を、コントロールバルブ5に設けられたブラケット5Bに螺着する。これにより、図2に示すように、複数の油圧ホース7を結束した結束部材14を、油圧ホース7の周囲に存在するブラケット5Bに固定することができ、油圧ホース7内を圧油が流通したとしても、油圧ホース7が大きく振動してコントロールバルブ5、信号制御弁6等に接触するのを抑えることができる。
このようにして、複数の油圧ホース7を管体結束具11を用いて結束した後には、これら複数の油圧ホース7がそれぞれ適度な弛みを保つように、複数の油圧ホースのそれぞれに対し、管体結束具11に対する固定位置の位置調整が行われる。この油圧ホース7の位置調整を行う場合には、締付け力調整機構18のボルト軸20に対してナット21を緩めてバンド15の締付け力を緩めた状態で、油圧ホース7を、凹溝13の伸長方向に沿って移動させる。このように、締付け力調整機構18によってバンド15の締付け力を増減させることにより、板状部材12による油圧ホース7の保持力を適宜に調整することができ、管体結束具11に対する油圧ホース7の位置調整を円滑に行うことができる。
この場合、複数の油圧ホース7は、板状部材12の凹溝13内に個別に保持されることにより、互いに非接触の状態を保っている。従って、位置調整すべき1本の油圧ホース7を移動させるときに、他の油圧ホース7に接触することがなく、他の油圧ホース7との間に生じる摩擦力によって円滑な移動が妨げられるのを防止できる。また、位置調整すべき1本の油圧ホース7の移動に伴って他の油圧ホース7が移動してしまうのを防止できる。この結果、複数の油圧ホース7を、管体結束具11に対して個別に迅速かつ容易に移動させることができ、管体結束具11に対する油圧ホース7の位置調整を行うときの作業性を向上させることができる。
しかも、複数の油圧ホース7は、板状部材12の凹溝13内に個別に保持されることにより、互いに並行した状態で整列している。この結果、複数の油圧ホース7が、板状部材12内で交差して捩じれたり、大きく曲げられた状態で結束されることがなく、管体結束具11に対する油圧ホース7の位置調整を行うときの作業性を一層向上させることができる上に、油圧ホース7内を流れる圧油の圧力損失を抑えることができる。
かくして、実施形態では、屈曲可能な板状に形成され、板厚方向の一側面12Aに直線状に伸長する複数の凹溝13が並列に設けられた板状部材12と、板状部材12の板厚方向の他側面12Bに巻き付けられ、複数の凹溝13に複数の油圧ホース7を保持した状態で板状部材12を屈曲させて複数の油圧ホース7を結束する結束部材14とを備え、板状部材12は、一側面12Aに複数の凹溝13の開口端13Aを配置し、結束部材14は、複数の凹溝13の伸長方向と平行な軸線を中心として板状部材12を屈曲させることにより、複数の凹溝13の開口端13Aを狭める構成としている。
この構成によれば、結束部材14によって結束された複数の油圧ホース7を、互いに非接触の状態を保ちつつ板状部材12の複数の凹溝13内に個別に保持することができる。従って、これら複数の油圧ホース7がそれぞれ適度な弛みを保つように、結束部材14に対する油圧ホース7の位置調整を行う場合に、この油圧ホース7が他の油圧ホース7に接触することがなく、他の油圧ホース7との間に生じる摩擦力によって円滑な移動が妨げられるのを防止できる。この結果、管体結束具11によって結束された複数の油圧ホース7を個別に円滑に移動させることができ、管体結束具11に対する油圧ホース7の位置調整を行うときの作業性を向上させることができる。
実施形態では、結束部材14は、板状部材12の他側面12Bに巻き付けられるバンド15と、板状部材12に巻付けられたバンド15の締付け力を増減させる締付け力調整機構18とを含んで構成されている。この構成によれば、締付け力調整機構18によってバンド15の締付け力を増減させることにより、板状部材12による油圧ホース7の保持力を適宜に調整することができ、管体結束具11に対する油圧ホース7の位置調整を円滑に行うことができる。
実施形態では、結束部材14のバンド15は、板状部材12に巻付けられる前段階では長さ方向の両端が開いた開放状態となり、板状部材12に巻付けられるときには環状に閉じた閉塞状態となる。この構成によれば、凹溝13内に油圧ホース7を保持した板状部材12を筒状に屈曲させた状態で、この板状部材12の外周側からバンド15を迅速かつ容易に巻き付けることができる。
結束部材14には、複数の油圧ホース7の周囲に存在するコントロールバルブ5のブラケット5B(構造物)に、結束部材14を固定する固定板22が設けられている。この構成によれば、板状部材12に巻き付けられた結束部材14を、固定板22を介してブラケット5Bに固定することができる。従って、油圧ホース7内を圧油が流通することにより油圧ホース7が大きく振動するのを抑え、油圧ホース7が周囲のコントロールバルブ5や信号制御弁6等に干渉するのを防止することができる。
次に、図11および図12は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、結束部材に固定部が設けられておらず、板状部材の凹溝に保持された複数の管体を、結束部材によって構造物に巻付けて固定することにある。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
図11に示す管体結束具24は、第1の実施形態による管体結束具11と同様に、板状部材12と、バンド15および締付け力調整機構18を有する結束部材14とを含んで構成されている。しかし、本実施形態による管体結束具24は、締付け力調整機構18を構成する長尺バンド16に固定板22が設けられていない点で、第1の実施形態による管体結束具11とは相違している。
管体結束具24は、複数の凹溝13が形成された板状部材12と、バンド15および締付け力調整機構18を有する結束部材14とにより構成され、油圧ホース7の周囲に配置された構造物である円筒体25を利用して、複数の油圧ホース7を結束している。管体結束具24の板状部材12は、凹溝13内に油圧ホース7を保持した状態で、これら凹溝13の開口端13Aが配置された一側面12Aを、円筒体25の外周面に当接させることにより、円弧状に屈曲している(図12参照)。
結束部材14のバンド15は、長尺バンド16の内側面16Bを板状部材12の他側面12Bに当接させた状態で、板状部材12と円筒体25とに外周側から巻付けられる。そして、長尺バンド16の第1フック16Dが掛止めされた筒体19の内周側に、長尺バンド16の第2フック16Fが掛止めされたボルト軸20を挿通し、筒体19のナット受け部19Bから突出したボルト軸20の他端20B側にナット21を螺合させて締め込む。この場合、バンド15は、板状部材12に巻付けられる前段階では、長さ方向の両端となる第1フック16Dと短尺バンド17の自由端17Bとが開いた開放状態となる。従って、凹溝13内に油圧ホース7を保持した板状部材12を円筒体25の外周面に当接させた状態で、これら板状部材12と円筒体25の外周側から迅速かつ容易にバンド15を巻き付けることができる。
これにより、複数の油圧ホース7を、板状部材12の凹溝13内に個別に保持した状態で、円筒体25を利用して結束することができる。この場合、板状部材12は円筒体25の外周面に沿って屈曲し、複数の凹溝13の開口端13Aは、円筒体25の外周面に押付けられて狭められるので、複数の油圧ホース7を、それぞれ凹溝13内に確実に保持することができる。
第2の実施形態による管体結束具24は上述の如き構成を有するもので、その基本的作用については、第1の実施形態と格別差異はない。然るに、第2の実施形態によれば、油圧ホース7の周囲に配置された構造物である円筒体25を利用して、複数の油圧ホース7を結束することができる。このため、第1の実施形態による管体結束具11に設けられた固定板22を不要にすることができ、管体結束具24のコスト低減に寄与することができる。
次に、図13は本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、板状部材を結束部材に固着することにより、板状部材と結束部材とが一体物として形成されていることにある。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
図13に示す管体結束具26は、第1の実施形態による管体結束具11と同様に、板状部材12と、バンド15および締付け力調整機構18を有する結束部材14とを含んで構成されている。しかし、本実施形態による管体結束具26は、板状部材12と結束部材14とが一体物として形成されている点で、第1の実施形態による管体結束具11とは相違している。
管体結束具26は、複数の凹溝13が形成された板状部材12と、バンド15および締付け力調整機構18を有する結束部材14とにより構成されている。板状部材12の他側面12Bは、結束部材14を構成する長尺バンド16の内側面16Bに接着、焼付け等の手段を用いて固着され、複数の凹溝13の伸長方向は、バンド15の長さ方向に対して直交している。このように、管体結束具26は、板状部材12と結束部材14との一体物として形成されている。
第3の実施形態による管体結束具26は上述の如き構成を有するもので、その基本的作用については、第1の実施形態と格別差異はない。然るに、第3の実施形態によれば、管体結束具26は、板状部材12と結束部材14との一体物として形成されている。このため、凹溝13内に油圧ホース7を保持した板状部材12を屈曲させる作業と、屈曲させた板状部材12の他側面12Bに結束部材14のバンド15を巻付ける作業を同時に行うことができ、複数の油圧ホース7を管体結束具26を用いて結束するときの作業性を高めることができる。
なお、実施形態では、板状部材12に形成された複数の凹溝13の開口端13Aの溝幅Aと、溝底部13Bの溝幅Bとを等しく設定した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図14に示す第1の変形例による凹溝13′、または図15に示す第2の変形例による凹溝13″のように構成してもよい。
即ち、第1の変形例による凹溝13′は、開口端13A′の溝幅A′が、溝底部13B′の溝幅B′よりも広幅(A′>B′)に設定されている。この凹溝13′は、例えば板状部材12の屈曲の度合いが大きい場合に好適に用いられる。一方、第2の変形例による凹溝13″は、開口端13A″の溝幅A″が、溝底部13B″の溝幅B″よりも狭幅(A″<B″)に設定されている。この凹溝13″は、例えば板状部材12の屈曲の度合いが小さい場合に好適に用いられる。
また、実施形態では、管体結束具11によって結束される管体として、油圧ホース7を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばそれぞれの内部に電線群が収容された複数のコルゲートチューブを管体結束具を用いて結束する構成としてもよい。
また、実施形態では、管体結束具11によって結束される対象物として、油圧ショベル1に搭載されたコントロールバルブ5と信号制御弁6との間を接続する複数の油圧ホース7を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧源とコントロールバルブ5との間、あるいはコントロールバルブ5と各種の油圧アクチュエータとの間を接続する複数の油圧ホースを、管体結束具を用いて結束する構成としてもよい。
さらに、本発明は、油圧ショベル1に搭載された油圧機器間を接続する油圧ホースに限らず、例えば一般車両、工作機械等に搭載された油圧機器間を接続する複数の油圧ホースを結束する場合にも広く適用することができる。