JP2022080193A - ピストンおよび舶用内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】シリンダの内周面とピストンリングとの間のシール性が低下する事態を抑制できるピストンおよび舶用内燃機関を提供すること。【解決手段】舶用内燃機関の燃焼室が形成されるシリンダの内部を往復動するピストン本体と、前記ピストン本体の往復動方向に並ぶように前記ピストン本体の外周部に設けられ、前記シリンダの内周面と摺接する複数のピストンリングと、を備える。前記複数のピストンリングのうち少なくとも一つは、前記シリンダの内周面と摺接して皮膜粒子を脱落し得る溶射皮膜が形成されている溶射皮膜型リングである。前記溶射皮膜型リングを除く残りのピストンリングは、前記シリンダの内周面と摺接するめっき皮膜が形成されているめっき皮膜型リングである。【選択図】図2

Description

本発明は、ピストンおよび舶用内燃機関に関するものである。
従来、船舶に搭載される舶用内燃機関では、ピストンを往復動自在に収容するシリンダが複数設けられ、これら複数のシリンダの各内部におけるピストンの往復動がクランクの回転動に変換されて、クランクシャフトが回転するようになっている。一般に、舶用内燃機関において、シリンダの内部には燃焼室が形成されている。ピストンは、その頂部が燃焼室に面するようにシリンダの内部に収容されている。また、シリンダの下部には、燃焼室に新たな燃焼用気体を導入するための掃気ポートが形成されている。ピストンは、燃焼室に供給された燃料と圧縮された燃焼用気体とによる燃焼エネルギーを利用して、シリンダ内の燃焼室と掃気ポート側のシリンダ端部(下端部)との間を往復動する。
また、ピストンの外周部には、ピストンの往復動方向に並ぶ複数の環状溝が形成されており、これら複数の環状溝の各々にはピストンリングが設けられている。例えば、ピストンリングは、合口と称される切断部分が形成されており、これにより、ピストンの径方向へ拡径および縮径可能な弾力性を有している。このようなピストンリングは、シリンダの内周面に適度な面圧を加えながら常時接触し、ピストンの往復動に伴ってシリンダの内周面を摺動する(特許文献1参照)。上記シリンダの内周面とピストンリングとの摺接により、これらシリンダの内周面とピストンリングとの間のシール性が保たれ、この結果、当該摺接部を介したガスや潤滑油等の流体の漏れが抑制される。
特開平4-157262号公報
ところで、ピストンの外周部に設けられる複数のピストンリングの各々には、上述した特許文献1に例示されるように、耐摩耗性の高いめっき皮膜がコーティングされている場合が多い。この場合、シリンダの内周面に対するピストンリングの耐摩耗性を高めることができるため、シリンダの内部をピストンが往復動しても、ピストンリングは摩耗し難くなる。また、シリンダの内部をピストンが往復動している際には、例えば、ピストンのスカート部がシリンダの内周面と擦れる事態、燃焼室での燃料の燃焼によって生じた残渣がシリンダの内周面とピストンリングとの間に挟まる事態、または、シリンダの内周面上の潤滑油が不足する事態等に起因して、シリンダの内周面に傷が入る可能性がある。しかしながら、シリンダの内周面に一度傷が入ると、耐摩耗性の高いピストンリングのめっき皮膜が当該傷に摺接して、当該傷が悪化(傷の範囲が拡大)してしまい、この結果、シリンダの内周面とピストンリングとの間のシール性が低下する恐れがある。さらには、当該傷がシリンダの内周面のスカッフに至る場合があり、これに起因して、シリンダおよびピストンの部品交換を余儀なくされる。
一方、ピストンの外周部に設けられる複数のピストンリングの各々には、上述しためっき皮膜ではなく、溶射した微粒子を噴き付けて形成される溶射皮膜がコーティングされている場合がある。この場合、シリンダの内周面に対するピストンリングの耐摩耗性は、耐摩耗性に優れためっき皮膜に比べて低いものの、上述した各種事態に起因してシリンダの内周面に傷が入っても、ピストンの往復動に伴い溶射皮膜が当該傷に摺接して皮膜粒子が脱落し摩耗することにより、当該傷の悪化を抑制することができる。しかしながら、シリンダの内部をピストンが往復動している際に、ピストンリングの溶射皮膜がシリンダの内周面に摺接すると、これらシリンダの内周面と溶射皮膜との摩耗量(所定の稼働時間当たりの摩耗量)が過度に多くなってしまい、この結果、シリンダの内周面とピストンリングとの間のシール性が低下する恐れがある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、シリンダの内周面とピストンリングとの間のシール性が低下する事態を抑制することができるピストンおよび舶用内燃機関を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るピストンは、舶用内燃機関の燃焼室が形成されるシリンダの内部を往復動するピストン本体と、前記ピストン本体の往復動方向に並ぶように前記ピストン本体の外周部に設けられ、前記シリンダの内周面と摺接する複数のピストンリングと、を備え、前記複数のピストンリングのうち少なくとも一つは、前記シリンダの内周面と摺接して皮膜粒子を脱落し得る溶射皮膜が形成されている溶射皮膜型リングであり、前記溶射皮膜型リングを除く残りのピストンリングは、前記シリンダの内周面と摺接するめっき皮膜が形成されているめっき皮膜型リングである、ことを特徴とする。
また、本発明に係るピストンは、上記の発明において、前記複数のピストンリングのうち、前記シリンダ内の前記燃焼室に最も近い側に設けられているピストンリングは、前記めっき皮膜型リングである、ことを特徴とする。
また、本発明に係るピストンは、上記の発明において、前記複数のピストンリングのうち、前記シリンダ内の前記燃焼室から最も離れた側に設けられているピストンリングは、前記溶射皮膜型リングである、ことを特徴とする。
また、本発明に係るピストンは、上記の発明において、前記複数のピストンリングのうち、前記シリンダ内の前記燃焼室に最も近い側に設けられているピストンリングは、前記溶射皮膜型リングである、ことを特徴とする。
また、本発明に係るピストンは、上記の発明において、前記複数のピストンリングのうち、前記シリンダ内の前記燃焼室から最も離れた側に設けられているピストンリングは、前記めっき皮膜型リングである、ことを特徴とする。
また、本発明に係るピストンは、上記の発明において、前記めっき皮膜は、前記溶射皮膜に比べて耐摩耗性が高い硬質材からなる、ことを特徴とする。
また、本発明に係る舶用内燃機関は、上記の発明のいずれか一つに記載のピストンと、前記ピストンを往復動自在に収容するシリンダと、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、シリンダの内周面とピストンリングとの間のシール性が低下する事態を抑制することができるという効果を奏する。
図1は、本発明の実施形態1に係るピストンが適用された舶用内燃機関の一構成例を示す模式図である。 図2は、本発明の実施形態1に係るピストンの一構成例を示す模式図である。 図3は、本発明の実施形態1に係るピストンの断面構造の一例を示す断面模式図である。 図4は、本発明の実施形態1に係るピストンの作用を説明する模式図である。 図5は、本発明の実施形態2に係るピストンの一構成例を示す模式図である。 図6は、本発明の実施形態2に係るピストンの断面構造の一例を示す断面模式図である。
以下に、添付図面を参照して、本発明に係るピストンおよび舶用内燃機関の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係るピストンが適用された舶用内燃機関の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態1に係るピストンが適用された舶用内燃機関の一構成例を示す模式図である。この舶用内燃機関10は、船舶に搭載されるクロスヘッド型内燃機関の一例であり、プロペラ軸を介して船舶の推進用プロペラ(いずれも図示せず)を回転駆動させる推進用の機関(主機関)である。例えば、舶用内燃機関10は、ユニフロー掃排気式のクロスヘッド型ディーゼルエンジン等の2ストロークディーゼルエンジンである。
詳細には、図1に示すように、舶用内燃機関10は、高さ方向D1の下側に位置する台板1と、台板1上に設けられる架構5と、架構5上に設けられるシリンダジャケット11とを備える。これらの台板1と架構5とシリンダジャケット11とは、舶用内燃機関10の高さ方向D1(すなわち上下方向)に延在する複数のタイボルト27等の連結部材により、一体に締結されて固定されている。また、舶用内燃機関10は、シリンダジャケット11に設けられるシリンダ12と、シリンダ12の内部に往復動自在に設けられるピストン15と、ピストン15の往復動に連動して回転するクランクシャフト2とを備える。
台板1は、舶用内燃機関10のクランクシャフト2を収容するクランクケースを構成するものである。図1に示すように、台板1の内部には、クランク4を有するクランクシャフト2と軸受部3とが設けられる。クランクシャフト2は、船舶の推進力を出力する出力軸の一例であり、軸受部3によって回転自在に支持されている。このクランクシャフト2には、クランク4を介して連接棒6の下端部が回動自在に連結されている。
架構5には、図1に示すように、連接棒6と、摺動板7と、クロスヘッド8とが設けられる。本実施形態1において、架構5は、ピストン軸方向に沿って設けられる摺動板7が舶用内燃機関10の幅方向D2に間隔を空けて一対をなすように配置されている。連接棒6は、その下端部がクランクシャフト2のクランク4に連接された態様で、一対の摺動板7の間に配置されている。クロスヘッド8には、ピストン棒16の下端部に接続されるクロスヘッドピン9と、連接棒6の上端部に接続されるクロスヘッド軸受(図示せず)とが、クロスヘッドピン9の下半部においてそれぞれ回動自在に連結される。このクロスヘッド8は、図1に示すように一対の摺動板7の間に配置され、この一対の摺動板7に沿って往復動自在に支持されている。
シリンダジャケット11は、図1に示すように、架構5の上部に設けられ、シリンダ12を支持する。本実施形態1において、シリンダ12は、シリンダライナ13とシリンダカバー14とによって構成される筒状の構造体(気筒)である。シリンダライナ13は、例えば円筒形状の構造体であり、シリンダジャケット11によって支持される。シリンダ12は、このシリンダライナ13の内部にピストン15を往復動自在に収容する。シリンダライナ13の上部には、シリンダカバー14が固定される。これらのシリンダライナ13とシリンダカバー14とピストン15とによって、舶用内燃機関10の燃焼室17がシリンダ12の内部に形成(区画)される。ピストン15は、燃焼室17に面する状態でシリンダライナ13の内部をピストン軸方向(図1では高さ方向D1)に往復動し得るように構成される。このピストン15の下端部には、図1に示すように、ピストン棒16の上端部が連結されている。
また、シリンダカバー14には、図1に示すように、排気弁20と動弁装置21とが設けられている。排気弁20は、シリンダ12内の燃焼室17に通じる排気管23の排気口(排気ポート)を開閉可能に閉止する弁である。動弁装置21は、排気弁20を開閉駆動させる装置である。また、舶用内燃機関10は、シリンダ12の近傍に、排気マニホールド22を備える。排気マニホールド22は、シリンダ12内の燃焼室17から排気管23を通じて排ガスを受け入れ、受け入れた排ガスを一時貯留して、この排ガスの動圧を静圧に変える。
また、舶用内燃機関10は、空気等の燃焼用気体を過給する過給機24と、圧縮後の燃焼用気体を冷却する冷却器25と、冷却後の燃焼用気体(圧縮ガス)を一時貯留する掃気トランク26とを備える。過給機24は、排ガスの圧力を利用してタービンとともに圧縮機(いずれも図示せず)を回転させ、これにより、燃焼用気体を圧縮する。冷却器25は、過給機24によって圧縮された燃焼用気体を冷却する。掃気トランク26は、過給機24によって圧縮され且つ冷却器25によって冷却された燃焼用気体を一時貯留する。また、図1に示すように、シリンダジャケット11には掃気室18が形成され、シリンダ12のシリンダライナ13には掃気ポート19が形成されている。掃気室18は、開口部(図示せず)等を介して掃気トランク26と連通する。掃気ポート19は、シリンダライナ13の内部を往復動するピストン15が下死点に位置した際に開状態となり、この掃気室18とシリンダライナ13内の燃焼室17とを連通する。上記の燃焼用気体は、掃気トランク26から掃気室18および掃気ポート19を通じてシリンダライナ13内の燃焼室17に送給される。
特に図示しないが、舶用内燃機関10は、燃料噴射弁および燃料噴射ポンプを備える。舶用内燃機関10において、燃料噴射ポンプは、配管等を通じて燃料噴射弁に燃料を圧送する。また、舶用内燃機関10は、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を低減する設備として、排ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)システムや選択式触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)システムを備えていてもよい。
上述したような構成を有する舶用内燃機関10において、シリンダ12内の燃焼室17には、燃料噴射弁から燃料が供給され、且つ、掃気トランク26から掃気室18および掃気ポート19を通じて燃焼用気体が供給される。これにより、燃焼室17では、供給された燃料が燃焼用気体によって着火して燃焼する。そして、燃焼室17での燃料の燃焼によって発生したエネルギーにより、ピストン15は、シリンダライナ13の内部をピストン軸方向に往復動する。このとき、動弁装置21によって排気弁20が作動してシリンダ12の排気ポートが開放されると、燃料の燃焼後にシリンダライナ13内に残留する残留ガスが排ガスとして排気管23に排出される。これとともに、シリンダライナ13内の燃焼室17には、掃気トランク26から掃気室18および掃気ポート19を通じて新たに燃焼用気体が導入される。
また、ピストン15が上述したようにピストン軸方向に往復動すると、ピストン15とともにピストン棒16がピストン軸方向に往復動する。これに連動して、クロスヘッド8は、摺動板7に沿ってピストン軸方向に往復動する。これにより、クロスヘッド8のクロスヘッドピン9は、クロスヘッド軸受を介して連接棒6に回転駆動力を加える。この回転駆動力により、連接棒6の下端部に接続されるクランク4がクランク運動(回転動)し、この結果、クランクシャフト2が回転する。クランクシャフト2は、このようにピストン15の往復動をクランク4によって回転動に変換して、プロペラ軸とともに船舶の推進用プロペラを回転させる。これにより、クランクシャフト2は、船舶の推進力を出力する。
なお、舶用内燃機関10の高さ方向D1は、上下方向であり、例えば、ピストン15の往復動の方向に対して平行である。舶用内燃機関10の幅方向D2は、高さ方向D1および軸方向D3に対して垂直な方向である。舶用内燃機関10の軸方向D3は、図1に示すクランクシャフト2の長手方向に対して平行である。すなわち、これらの高さ方向D1、幅方向D2および軸方向D3は、互いに垂直な方向である。なお、高さ方向D1、幅方向D2および軸方向D3は、舶用内燃機関10については勿論、舶用内燃機関10を構成する各構成部(例えばシリンダ12およびピストン15等)についても同様である。
つぎに、本発明の実施形態1に係るピストン15の構成について説明する。図2は、本発明の実施形態1に係るピストンの一構成例を示す模式図である。図2には、図1に示した舶用内燃機関10のシリンダ12およびピストン15が拡大して図示されている。図3は、本発明の実施形態1に係るピストンの断面構造の一例を示す断面模式図である。図3には、図2に示すピストン15のうち領域R1の断面構造が拡大して図示されている。
図2、3に示すように、このピストン15は、シリンダ12の内部を往復動するピストン本体151と、このピストン本体151の外周部に設けられている複数のピストンリングとを備える。本実施形態1において、ピストン15は、これら複数のピストンリングの一例として、最上段ピストンリング153、中間ピストンリング154および最下段ピストンリング155という3つのピストンリングを備えている。
ピストン本体151は、上述した舶用内燃機関10(図1参照)の燃焼室17が形成されるシリンダ12の内部を往復動するように構成される。詳細には、図2に示すように、ピストン本体151は、ピストン軸C1方向から見て円形をなす頂部151aと、ピストン軸C1周りの外周部151bとを有する。ピストン本体151は、頂部151aが燃焼室17に面するように、シリンダ12の内部、より具体的には、シリンダ12の円筒部を構成するシリンダライナ13の内部に、往復動自在に収容される。この燃焼室17は、図2に示すように、シリンダライナ13の内周面13aとシリンダカバー14の内壁面とピストン本体151の頂部151aとによって囲まれる空間である。ピストン本体151は、シリンダライナ13の内部において、頂部151aが燃焼室17に面した状態を維持しつつ、この燃焼室17とシリンダジャケット11内の掃気室18(図1参照)との間をピストン軸C1方向に往復動する。なお、ピストン軸C1は、円形状の頂部151aの中心を通り且つピストン本体151の径方向に対して垂直な軸(中心軸)である。シリンダ12の内周面は、当該シリンダ12の円筒部を構成するシリンダライナ13の内周面13aである。
また、図2に示すように、ピストン本体151は、外周部151bと一体をなして頂部151aとは反対側に延在するスカート部152を有する。スカート部152は、シリンダライナ13の内周面13aと接触することにより、シリンダライナ13の内部におけるピストン15の往復動の向きを規制する。上述したピストン棒16は、スカート部152から延出するようにピストン本体151に連結されている。
最上段ピストンリング153、中間ピストンリング154および最下段ピストンリング155は、各々、ピストン本体151の外周部151bに設けられてシリンダ12の内周面13aと摺接するように構成される。以下、本実施形態1では、「最上段ピストンリング153、中間ピストンリング154および最下段ピストンリング155」を総称して「複数のピストンリング」と称する場合がある。
詳細には、図2に示すように、ピストン本体151の外周部151bには、ピストン軸C1周りの周方向に延在する複数(本実施形態1では3つ)の環状溝部156~158が、ピストン軸C1方向に並ぶように形成されている。最上段ピストンリング153は、これらの環状溝部156~158のうち、ピストン本体151の頂部151aに最も近い最上段の環状溝部156に装着されている。中間ピストンリング154は、これらの環状溝部156~158のうち、最上段の環状溝部156と最下段の環状溝部158との間に位置する中間の環状溝部157に装着されている。最下段ピストンリング155は、これらの環状溝部156~158のうち、ピストン本体151の頂部151aから最も遠い最下段の環状溝部158に装着されている。このようにして、最上段ピストンリング153、中間ピストンリング154および最下段ピストンリング155は、ピストン本体151の往復動方向に並ぶようにピストン本体151の外周部151bに設けられる。
また、最上段ピストンリング153、中間ピストンリング154および最下段ピストンリング155は、各々、リングの切断部分である合口(図示せず)が形成されている。この構造により、これら複数のピストンリングは、各々、ピストン本体151の径方向へ拡径および縮径可能な弾力性を有するようになる。ピストン本体151がシリンダ12の内部に往復動自在に収容された際、これら複数のピストンリングは、各々、シリンダ12の内周面13aに適度な面圧を加えながら当該内周面13aと常時接触し、ピストン本体151の往復動に伴って当該内周面13aを摺動する。
上述したようにシリンダ12の内周面13aに摺接する複数のピストンリングのうち少なくとも一つは、溶射皮膜型リングであり、当該溶射皮膜型リングを除く残りのピストンリングは、めっき皮膜型リングである。溶射皮膜型リングは、シリンダ12の内周面13aと摺接して皮膜粒子を脱落し得る溶射皮膜が形成されているピストンリングである。溶射皮膜は、加熱等によって溶融または軟化させた材料粒子(微粒子)を基材表面に噴き付けて形成される皮膜である。溶射皮膜の材料粒子としては、例えば、モリブデン(Mo)、クロムカーバイド(Cr-C)、ニッケルクロム合金(NiCr)等が挙げられる。めっき皮膜型リングは、シリンダ12の内周面13aと摺接するめっき皮膜が形成されているピストンリングである。めっき皮膜は、溶射皮膜に比べて耐摩耗性の高い硬質材からなる皮膜であり、当該硬質材を基材表面にめっき処理することによって形成される。めっき皮膜の硬質材としては、例えば、クロム(Cr)、クロムセラミック、窒化クロム(CrN)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等が挙げられる。また、めっき処理としては、例えば、PVD等の物理蒸着、CVD等の化学蒸着が挙げられる。
本実施形態1においては、図2、3に示すように、ピストン本体151の外周部151bに設けられている複数のピストンリングのうち、シリンダ12内の燃焼室17に最も近い側に設けられている最上段ピストンリング153は、めっき皮膜型リングである。詳細には、図3に示すように、最上段ピストンリング153は、上述した合口を有するリング状の基材153aと、この基材153aの外周面に形成されためっき皮膜153bとによって構成されている。基材153aは、例えば、鉄や鋼等の金属製の鋳物によって構成される。最上段ピストンリング153は、ピストン本体151の外周部151bにおける最上段の環状溝部156に装着され、めっき皮膜153bを面圧P11でシリンダライナ13の内周面13aに常時押し当てる。このような最上段ピストンリング153は、シリンダ12の内部におけるピストン本体151の往復動に伴い、シリンダライナ13の内周面13aにめっき皮膜153bを摺接させながら当該内周面13aを摺動する。
上記シリンダライナ13の内周面13aに対する最上段ピストンリング153の面圧P11(図3参照)は、ピストン本体151の往復動方向(ピストン軸C1方向)の両側から最上段ピストンリング153に加えられる圧力P1、P2の差(P1-P2)に相当する。本実施形態1では、図3に示すように、一方の圧力P1は、シリンダライナ13の内周面13aとピストン本体151の外周部151bとの間の空間(以下、環状空間という)のうち、シリンダ12内の燃焼室17(図2参照)に通じる空間の圧力である。すなわち、当該圧力P1は、燃焼室17の圧力と同じである。他方の圧力P2は、上記環状空間のうち、最上段ピストンリング153と中間ピストンリング154とに挟まれる空間の圧力である。
また、図2、3に示すように、上述した複数のピストンリングのうち、シリンダ12内の燃焼室17から最も離れた側に設けられている最下段ピストンリング155は、溶射皮膜型リングである。詳細には、図3に示すように、最下段ピストンリング155は、上述した最上段ピストンリング153と同様の基材155aと、この基材155aの外周面に形成された溶射皮膜155bとによって構成されている。最下段ピストンリング155は、ピストン本体151の外周部151bにおける最下段の環状溝部158に装着され、溶射皮膜155bを面圧P13でシリンダライナ13の内周面13aに常時押し当てる。このような最下段ピストンリング155は、シリンダ12の内部におけるピストン本体151の往復動に伴い、シリンダライナ13の内周面13aに溶射皮膜155bを摺接させながら当該内周面13aを摺動する。この際、溶射皮膜155bは、シリンダライナ13の内周面13aとの摺接によって摩耗し、この結果、溶射皮膜155bから皮膜粒子が脱落する場合がある。当該皮膜粒子は、溶射皮膜155bとシリンダライナ13の内周面13aとの間に介在することにより、当該内周面13aを研磨する研磨剤として機能する。
上記シリンダライナ13の内周面13aに対する最下段ピストンリング155の面圧P13(図3参照)は、ピストン本体151の往復動方向の両側から最下段ピストンリング155に加えられる圧力P3、P4の差(P3-P4)に相当する。本実施形態1では、図3に示すように、一方の圧力P3は、シリンダライナ13とピストン本体151との間の環状空間のうち、中間ピストンリング154と最下段ピストンリング155とに挟まれる空間の圧力である。他方の圧力P4は、シリンダライナ13とピストン本体151との間の環状空間のうち、図1に示したシリンダ12の掃気ポート19を介して掃気室18に通じる空間の圧力である。すなわち、当該圧力P4は、掃気室18の圧力と同じである。
また、図2、3に示すように、上述した複数のピストンリングのうち、最上段ピストンリング153と最下段ピストンリング155との間に設けられている中間ピストンリング154は、めっき皮膜型リングである。詳細には、図3に示すように、中間ピストンリング154は、上述した最上段ピストンリング153と同様のリング状の基材154aとめっき皮膜154bとによって構成されている。中間ピストンリング154は、上述した最上段の環状溝部156と最下段の環状溝部158との間に位置する環状溝部157に装着され、めっき皮膜154bを面圧P12でシリンダライナ13の内周面13aに常時押し当てる。このような中間ピストンリング154は、シリンダ12の内部におけるピストン本体151の往復動に伴い、上述した最上段ピストンリング153と同様に、シリンダライナ13の内周面13aにめっき皮膜154bを摺接させながら当該内周面13aを摺動する。
上記シリンダライナ13の内周面13aに対する中間ピストンリング154の面圧P12(図3参照)は、ピストン本体151の往復動方向の両側から中間ピストンリング154に加えられる圧力P2、P3の差(P2-P3)に相当する。本実施形態1では、図3に示すように、一方の圧力P2は、上述したように、最上段ピストンリング153と中間ピストンリング154とに挟まれる環状空間の圧力である。他方の圧力P3は、上述したように、中間ピストンリング154と最下段ピストンリング155とに挟まれる環状空間の圧力である。
ここで、シリンダライナ13の内周面13aとピストン本体151の外周部151bとの間の環状空間における圧力P1~P4において、燃焼室17側の圧力P1と複数のピストンリング間の圧力P2との圧力差は、他の圧力P2、P3の圧力差や圧力P3、P4の圧力差に比べて大きい。したがって、上述した最上段ピストンリング153、中間ピストンリング154および最下段ピストンリング155の各面圧P11~P13のうち、最上段ピストンリング153の面圧P11が最も高い。本実施形態1では、このように最も高い面圧P11の最上段ピストンリング153が、耐摩耗性の高いめっき皮膜型リングとなっている。
また、これらの圧力P1~P4において、複数のピストンリング間の圧力P3と掃気室18側の圧力P4との圧力差は、上記圧力P1、P2の圧力差に比べて小さいが、複数のピストンリング間の圧力P2、P3の圧力差に比べて大きい。したがって、上述した面圧P11~P13のうち、最下段ピストンリング155の面圧P13は、最上段ピストンリング153の面圧P11に次いで2番目に高い。本実施形態1では、このように2番目に高い面圧P13の最下段ピストンリング155が、研磨剤として機能する皮膜粒子を脱落し得る溶射皮膜型リングとなっている。
また、これらの圧力P1~P4において、複数のピストンリング間の圧力P2と圧力P3との圧力差は、上述した他の圧力P1、P2の圧力差や圧力P3、P4の圧力差に比べて小さい。したがって、上述した面圧P11~P13のうち、中間ピストンリング154の面圧P12が最も低い。本実施形態1では、このように最も低い面圧P12の中間ピストンリング154は、最上段ピストンリング153と同じめっき皮膜型リングとなっている。
つぎに、本発明の実施形態1に係るピストン15の作用について説明する。図4は、本発明の実施形態1に係るピストンの作用を説明する模式図である。本実施形態1に係るピストン15は、上述したように、めっき皮膜型リングである最上段ピストンリング153および中間ピストンリング154と、溶射皮膜型リングである最下段ピストンリング155とをピストン本体151の外周部151bに備えている。このようなピストン15は、シリンダライナ13の内周面13aに対するめっき皮膜型リングの高い耐摩耗性と、シリンダライナ13の内周面13aと溶射皮膜型リングとの摺接によって当該内周面13aの傷を修復する傷修復機能とを兼ね備える。以下では、このピストン15の作用として、溶射皮膜型リングによる傷修復機能を説明する。
詳細には、図4に示すように、最下段ピストンリング155は、基材155aの外周面上に溶射皮膜155bを有する溶射皮膜型リングであり、シリンダ12内でのピストン15の往復動(図1参照)に伴い、シリンダライナ13の内周面13aを摺動する。この際、最下段ピストンリング155は、溶射皮膜155bを面圧P13でシリンダライナ13の内周面13aに摺接させている。例えば、図4に示すように、シリンダライナ13の内周面13aに傷160が発生した場合、当該内周面13aのうち傷160の部分が粗くなり、更には、潤滑油による当該内周面13aの潤滑状態も悪化する。最下段ピストンリング155は、このような傷160による粗面に溶射皮膜155bを擦り付けながら、シリンダライナ13の内周面13aを摺動する。この結果、図4に示すように、溶射皮膜155bが摩耗して、少なくとも一つ(図4では3つ)の皮膜粒子155cが溶射皮膜155bから脱落する。最下段ピストンリング155は、このような皮膜粒子155cをシリンダライナ13の内周面13aと溶射皮膜155bとの間に挟み込んだ状態となる(状態A1)。
なお、シリンダライナ13の内周面13aに傷160が発生する原因として、例えば、ピストン15のスカート部152(図2参照)がシリンダライナ13の内周面13aと擦れる事態、燃焼室17での燃料の燃焼によって生じた残渣がシリンダライナ13の内周面13aと複数のピストンリングの少なくとも一つとの間に挟まる事態、シリンダライナ13の内周面13a上の潤滑油が不足する事態等が挙げられる。
その後、図4に示すように、最下段ピストンリング155は、皮膜粒子155cをシリンダライナ13の内周面13aと溶射皮膜155bとの間に挟み込んだ状態(噛み込んだ状態)を維持しつつ、当該内周面13aを摺動し続ける(状態A2)。この状態A2において、最下段ピストンリング155は、ピストン15の往復動方向に複数回往復するようにシリンダライナ13の内周面13aを摺動するとともに、傷160の粗面を含む当該内周面13aの摺動領域に皮膜粒子155cを繰り返し擦り付ける。皮膜粒子155cは、シリンダライナ13の内周面13aと溶射皮膜155bとの間に挟み込まれることによって研磨剤となり、当該内周面13aと溶射皮膜155bとの摩耗を促進する。最下段ピストンリング155は、このような皮膜粒子155cにより、傷160の粗面とともに当該内周面13aを研磨し続ける。
上述したようにシリンダライナ13の内周面13aを研磨し続けた結果、最下段ピストンリング155は、傷160の粗面を滑らかな面に修復するとともに、当該内周面13aの摺動領域全体を滑らかな状態にする。これに伴い、最下段ピストンリング155の溶射皮膜155bは、皮膜粒子155cの脱落によって粗くなっていた摺接面を元の滑らかな面に回復する(状態A3)。その後、最下段ピストンリング155は、シリンダライナ13の内周面13aに傷160が発生する都度、上述した状態A1~A3に例示されるように、溶射皮膜155bから脱落した皮膜粒子155cを研磨剤として利用し、傷160の粗面を含む当該内周面13aの摺動領域全体を滑らかな面に修復する。
以上、説明したように、本発明の実施形態1では、舶用内燃機関の燃焼室が形成されるシリンダの内部を往復動するピストン本体の外周部に、シリンダの内周面と摺接する複数のピストンリングを、ピストン本体の往復動方向に並ぶように設け、これら複数のピストンリングのうち少なくとも一つを溶射皮膜型リングとし、溶射皮膜型リングを除く残りのピストンリングをめっき皮膜型リングとしている。
このため、シリンダの内周面に対する高い耐摩耗性を有するめっき皮膜が形成されているめっき皮膜型リングにより、ピストンリングの耐摩耗性を確保するとともに、シリンダの内周面と摺接して皮膜粒子を脱落し得る溶射皮膜が形成されている溶射皮膜型リングにより、ピストンリングの傷修復機能を確保することができる。上記のようにピストンリングの耐摩耗性と傷修復機能とを両立させることにより、ピストンの往復動に伴う、シリンダの内周面と複数のピストンリングとの摩耗をめっき皮膜型リングによって抑制しながら、溶射皮膜型リングの溶射皮膜から脱落した皮膜粒子を研磨剤として利用することにより、当該内周面に発生した傷を修復することができる。この結果、シリンダの内周面および複数のピストンリングの摩耗量(舶用内燃機関の稼働時間当たりの摩耗量)を所定の基準値以下(例えば0.05mm/1000h以下)に低減でき、シリンダの内周面とピストンリングとの間のシール性の低下を抑制することができる。
また、本発明の実施形態1では、上述したピストンと、当該ピストンを往復動自在に収容するシリンダとを備える舶用内燃機関を構成している。このため、上述したピストンの作用効果を享受することができる。さらには、シリンダの内周面の傷の悪化(拡大)を抑制できることから、当該内周面の傷がスカッフに至る事態を抑制することができ、この結果、シリンダおよびピストンを長寿命化して、これらの交換頻度を低減することができる。
また、本発明の実施形態1では、複数のピストンリングのうち、シリンダ内の燃焼室に最も近い側に設けられているピストンリングをめっき皮膜型リングにしている。このため、これら複数のピストンリングの中で、シリンダの内周面に摺接する際の面圧が最も高くなるピストンリングを、耐摩耗性の高いめっき皮膜型リングにすることができる。これにより、当該面圧が最も高くなるピストンリングの摩耗を抑制できることから、複数のピストンリングの耐摩耗性を向上させることができる。
さらに、上記複数のピストンリングのうち、シリンダ内の燃焼室から最も離れた側に設けられているピストンリングを溶射皮膜型リングにしている。このため、上記複数のピストンリングの中で、シリンダの内周面に摺接する際の面圧が2番目に高くなるピストンリングを、当該内周面との摺接によって皮膜粒子を脱落し得る溶射皮膜型リングにすることができる。これにより、ピストンリングの溶射皮膜の過度な摩耗を抑制しつつ、シリンダの内周面を研磨する研磨剤として利用可能な皮膜粒子を当該溶射皮膜から生成することができる。この結果、上記複数のピストンリングの高い耐摩耗性とシリンダの内周面の傷を修復する傷修復機能とを容易に両立させることができる。
(実施形態2)
つぎに、本発明の実施形態2に係るピストンおよび舶用内燃機関について説明する。図5は、本発明の実施形態2に係るピストンの一構成例を示す模式図である。図6は、本発明の実施形態2に係るピストンの断面構造の一例を示す断面模式図である。図6には、図5に示すピストン15Aのうち領域R2の断面構造が拡大して図示されている。
図5、6に示すように、本発明の実施形態2に係るピストン15Aは、上述した実施形態1に係るピストン15の最上段ピストンリング153に代えて最上段ピストンリング253を備え、最下段ピストンリング155に代えて最下段ピストンリング255を備える。最上段ピストンリング253は、上述した実施形態1における最上段ピストンリング153のめっき皮膜153bに代えて溶射皮膜253bを備える。最下段ピストンリング255は、上述した実施形態1における最下段ピストンリング155の溶射皮膜155bに代えてめっき皮膜255bを備える。また、特に図示しないが、本発明の実施形態2に係る舶用内燃機関は、上述した実施形態1に係る舶用内燃機関10のピストン15に代えてピストン15Aを備えている。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
最上段ピストンリング253、中間ピストンリング154および最下段ピストンリング255は、各々、ピストン本体151の外周部151bに設けられてシリンダ12の内周面13aと摺接するように構成される。以下、本実施形態2では、「最上段ピストンリング253、中間ピストンリング154および最下段ピストンリング255」を総称して「複数のピストンリング」と称する場合がある。
詳細には、図5に示すように、最上段ピストンリング253は、環状溝部156~158のうち、ピストン本体151の頂部151aに最も近い最上段の環状溝部156に装着されている。最下段ピストンリング255は、環状溝部156~158のうち、ピストン本体151の頂部151aから最も遠い最下段の環状溝部158に装着されている。中間ピストンリング154は、上述した実施形態1と同様に、中間の環状溝部157に装着されている。このようにして、最上段ピストンリング253、中間ピストンリング154および最下段ピストンリング255は、ピストン本体151の往復動方向に並ぶようにピストン本体151の外周部151bに設けられる。
上述したようにシリンダ12の内周面13aに摺接する複数のピストンリングのうち少なくとも一つは、溶射皮膜型リングであり、当該溶射皮膜型リングを除く残りのピストンリングは、めっき皮膜型リングである。本実施形態2においては、図5、6に示すように、ピストン本体151の外周部151bに設けられている複数のピストンリングのうち、シリンダ12内の燃焼室17に最も近い側に設けられている最上段ピストンリング253は、溶射皮膜型リングである。
詳細には、図6に示すように、最上段ピストンリング253は、上述した実施形態1と同様の基材153aと、この基材153aの外周面に形成された溶射皮膜253bとによって構成されている。この溶射皮膜253bは、上述した実施形態1における溶射皮膜型リングの溶射皮膜(例えば図3に示す溶射皮膜155b)と同じである。最上段ピストンリング253は、ピストン本体151の外周部151bにおける最上段の環状溝部156に装着され、溶射皮膜253bを面圧P11でシリンダライナ13の内周面13aに常時押し当てる。このような最上段ピストンリング253は、シリンダ12の内部におけるピストン本体151の往復動に伴い、シリンダライナ13の内周面13aに溶射皮膜253bを摺接させながら当該内周面13aを摺動する。この際、溶射皮膜253bは、実施形態1における溶射皮膜155bの面圧P13よりも高い面圧P11で当該内周面13aに摺接しながら摩耗する。この結果、実施形態1に比べて容易に、皮膜粒子が溶射皮膜253bから脱落することが可能になる。当該皮膜粒子は、溶射皮膜253bとシリンダライナ13の内周面13aとの間に介在することにより、当該内周面13aを研磨する研磨剤として機能する。
また、図5、6に示すように、上述した複数のピストンリングのうち、シリンダ12内の燃焼室17から最も離れた側に設けられている最下段ピストンリング255は、めっき皮膜型リングである。
詳細には、図6に示すように、最下段ピストンリング255は、上述した実施形態1と同様の基材155aと、この基材155aの外周面に形成されためっき皮膜255bとによって構成されている。このめっき皮膜255bは、上述した実施形態1におけるめっき皮膜型リングのめっき皮膜(例えば図3に示すめっき皮膜153b、154b)と同じである。最下段ピストンリング255は、ピストン本体151の外周部151bにおける最下段の環状溝部158に装着され、めっき皮膜255bを面圧P13でシリンダライナ13の内周面13aに常時押し当てる。このような最下段ピストンリング255は、シリンダ12の内部におけるピストン本体151の往復動に伴い、シリンダライナ13の内周面13aにめっき皮膜255bを摺接させながら当該内周面13aを摺動する。この際、めっき皮膜255bは、上述した溶射皮膜253bの面圧P11の次に高い面圧P13で当該内周面13aに摺接する。
上述したような構成を有するピストン15Aにおいて、最上段ピストンリング253の溶射皮膜253bは、研磨剤として利用可能な皮膜粒子を、実施形態1における溶射皮膜155bよりも出し易い。このため、最上段ピストンリング253は、実施形態1における最下段ピストンリング155に比べて効率よく、当該皮膜粒子を利用してシリンダライナ13の内周面13aの傷を研磨し、修復する。なお、最上段ピストンリング253による傷修復機能は、それ自体、上述した実施形態1における傷修復機能(図4参照)と同じである。
以上、説明したように、本発明の実施形態2では、複数のピストンリングのうち、シリンダ内の燃焼室に最も近い側に設けられているピストンリングを溶射皮膜型リングにし、且つ、当該燃焼室から最も離れた側に設けられているピストンリングをめっき皮膜型リングにし、その他を実施形態1と同様にしている。このため、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受するとともに、これら複数のピストンリングの中で、シリンダの内周面に摺接する際の面圧が最も高くなるピストンリングを、当該内周面との摺接によって皮膜粒子を脱落し得る溶射皮膜型リングにし、シリンダの内周面に摺接する際の面圧が2番目に高くなるピストンリングを、耐摩耗性の高いめっき皮膜型リングにすることができる。これにより、当該溶射皮膜型リングの溶射皮膜から皮膜粒子をより容易に生成できることから、当該皮膜粒子を研磨剤に利用してシリンダの内周面の傷を修復する傷修復機能を容易に発揮できるとともに、上記面圧が2番目に高くなるピストンリングの摩耗を抑制して複数のピストンリングの耐摩耗性を確保することができる。
なお、上述した実施形態1、2では、ピストン本体の外周部に設けられる複数のピストンリングの一例として3つのピストンリングを例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、ピストン本体の外周部には、当該ピストン本体の往復動方向に並ぶように2つのピストンリングが設けられていてもよいし、3つ以上のピストンリングが設けられていてもよい。
また、上述した実施形態1、2では、3つのピストンリングのうち、2つをめっき皮膜型リングにし、残り1つのピストンリングを溶射皮膜型リングにしていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、ピストン本体の外周部に設けるピストンリングの数を2つにし、これら2つのピストンリングのうち、一方をめっき皮膜型リングにし、他方を溶射皮膜型リングにしてもよい。或いは、ピストン本体の外周部に設けるピストンリングの数を3つ以上にし、これら3つ以上のピストンリングのうち、少なくとも一つをめっき皮膜型リングにし、残りを溶射皮膜型リングにしてもよい。この際、めっき皮膜型リングの数は、溶射皮膜型リングの数より多くてもよいし、少なくてもよいし、溶射皮膜型リングと同数でもよい。
また、上述した実施形態1、2では、ピストン本体の外周部に設けられる複数のピストンリングのうち、中間ピストンリングをめっき皮膜型リングにしていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、当該中間ピストンリングは、めっき皮膜型リングであってもよいし、溶射皮膜型リングであってもよい。また、最上段ピストンリングと最下段ピストンリングとの間に複数の中間ピストンリングが配置されている場合、これら複数の中間ピストンリングは、全てめっき皮膜型リングであってもよいし、全て溶射皮膜型リングであってもよいし、めっき皮膜型リングと溶射皮膜型リングとの組み合わせであってもよい。
また、上述した実施形態1では、ピストン本体の外周部に設けられる複数のピストンリングのうち、最上段ピストンリングをめっき皮膜型リングにし、最下段ピストンリングを溶射皮膜型リングにしていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、これら複数のピストンリングのうち、最上段ピストンリングおよび最下段ピストンリングの両方をめっき皮膜型リングにし、これら最上段ピストンリングと最下段ピストンリングとの間に設けられる1つまたは複数の中間ピストンリングのうち少なくとも一つを溶射皮膜型リングにしてもよい。
また、上述した実施形態2では、ピストン本体の外周部に設けられる複数のピストンリングのうち、最上段ピストンリングを溶射皮膜型リングにし、最下段ピストンリングをめっき皮膜型リングにしていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、これら複数のピストンリングのうち、最上段ピストンリングおよび最下段ピストンリングの両方を溶射皮膜型リングにし、これら最上段ピストンリングと最下段ピストンリングとの間に設けられる1つまたは複数の中間ピストンリングのうち少なくとも一つをめっき皮膜型リングにしてもよい。
また、上述した実施形態1、2により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態1、2に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
1 台板
2 クランクシャフト
3 軸受部
4 クランク
5 架構
6 連接棒
7 摺動板
8 クロスヘッド
9 クロスヘッドピン
10 舶用内燃機関
11 シリンダジャケット
12 シリンダ
13 シリンダライナ
13a 内周面
14 シリンダカバー
15、15A ピストン
16 ピストン棒
17 燃焼室
18 掃気室
19 掃気ポート
20 排気弁
21 動弁装置
22 排気マニホールド
23 排気管
24 過給機
25 冷却器
26 掃気トランク
27 タイボルト
151 ピストン本体
151a 頂部
151b 外周部
152 スカート部
153、253 最上段ピストンリング
153a、154a、155a 基材
153b、154b、255b めっき皮膜
154 中間ピストンリング
155、255 最下段ピストンリング
155b、253b 溶射皮膜
155c 皮膜粒子
156、157、158 環状溝部
160 傷
C1 ピストン軸
D1 高さ方向
D2 幅方向
D3 軸方向
R1、R2 領域

Claims (7)

  1. 舶用内燃機関の燃焼室が形成されるシリンダの内部を往復動するピストン本体と、
    前記ピストン本体の往復動方向に並ぶように前記ピストン本体の外周部に設けられ、前記シリンダの内周面と摺接する複数のピストンリングと、
    を備え、
    前記複数のピストンリングのうち少なくとも一つは、前記シリンダの内周面と摺接して皮膜粒子を脱落し得る溶射皮膜が形成されている溶射皮膜型リングであり、
    前記溶射皮膜型リングを除く残りのピストンリングは、前記シリンダの内周面と摺接するめっき皮膜が形成されているめっき皮膜型リングである、
    ことを特徴とするピストン。
  2. 前記複数のピストンリングのうち、前記シリンダ内の前記燃焼室に最も近い側に設けられているピストンリングは、前記めっき皮膜型リングである、
    ことを特徴とする請求項1に記載のピストン。
  3. 前記複数のピストンリングのうち、前記シリンダ内の前記燃焼室から最も離れた側に設けられているピストンリングは、前記溶射皮膜型リングである、
    ことを特徴とする請求項2に記載のピストン。
  4. 前記複数のピストンリングのうち、前記シリンダ内の前記燃焼室に最も近い側に設けられているピストンリングは、前記溶射皮膜型リングである、
    ことを特徴とする請求項1に記載のピストン。
  5. 前記複数のピストンリングのうち、前記シリンダ内の前記燃焼室から最も離れた側に設けられているピストンリングは、前記めっき皮膜型リングである、
    ことを特徴とする請求項4に記載のピストン。
  6. 前記めっき皮膜は、前記溶射皮膜に比べて耐摩耗性が高い硬質材からなる、
    ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のピストン。
  7. 請求項1~6のいずれか一つに記載のピストンと、
    前記ピストンを往復動自在に収容するシリンダと、
    を備えることを特徴とする舶用内燃機関。
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