JP2022079093A - 感光性樹脂印刷版原版およびそれを用いた印刷版の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】インキ転移性の良好な感光性樹脂印刷版原版を提供すること。【解決手段】少なくとも支持体と感光性樹脂層を有する感光性樹脂印刷版原版であって、該感光性樹脂層が(A)ケン化度が60~99モル% である部分ケン化ポリ酢酸ビニル、(B)エチレン性二重結合を有する化合物、(C)光重合開始剤、(D)極性基を有するシリコーン化合物を含有する感光性樹脂印刷版原版。【選択図】なし

Description

本発明は、感光性樹脂印刷版原版およびそれを用いた印刷版の製造方法に関するものである。
感光性樹脂印刷版原版からレリーフを形成する方法としては、画像マスクや原画フィルムを介して感光性樹脂層に紫外線を照射して画像部を選択的に硬化させ、硬化させなかった部分を現像液により除去する方法が一般的に用いられている。感光性樹脂印刷版原版としては、これまでに、少なくとも支持体と感光性樹脂層を有する感光性樹脂印刷版原版であって、該感光性樹脂層が(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニル化合物、(B)塩基性窒素を有するポリアミド、(C)エチレン性二重結合を有する化合物、および(D)光重合開始剤を含有し、該感光性樹脂層が少なくとも下層および印刷面層を含み、前記支持体、前記下層および前記印刷面層をこの順に有し、かつ、前記(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニル化合物として、平均重合度が1200~2600であるもの(A1)を印刷面層に、平均重合度が400~800であるもの(A2)を下層に含有する感光性樹脂印刷版原版(例えば、特許文献1参照)や、イオン性を有する官能基を含む樹脂(A)、光重合開始剤(B)、光重合性モノマー(C)、および樹脂(A)と対イオンを形成しうるイオン性官能基を有するフッ素含有化合物(D)を含む感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂版原版(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
そのように形成されたレリーフを有する印刷版を用いた印刷方式としては、インキ供給ロールを用いてレリーフ表面にインキを供給し、次にレリーフ表面のインキを被印刷体に転移させる、凸版印刷方式が一般的である。
国際公開第2017/38970号 国際公開第2018/088336号
近年、凸版印刷方式の高精細印刷への適用が進んでおり、色や濃度の階調を出すために、高線数の網点印刷が盛んに行われている。前記特許文献1~2に記載の感光性樹脂印刷版原版をかかる高精細印刷に適用する場合、インキ転移性が不十分である課題があった。インキ濃度の高い印刷物を得るためには、印刷版へのインキ供給量を多くすることや、インキを被印刷体に転写するための圧力を大きくすることが考えられるが、この場合、高線数の網点などの微細な画像がつぶれやすくなるため、印刷再現性に課題があった。
本発明は、上記課題に鑑み、インキ転移性および印刷再現性に優れた印刷版を製造することができる感光性樹脂印刷版原版を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は主として下記の構成を有する。
少なくとも支持体と感光性樹脂層を有する感光性樹脂印刷版原版であって、該感光性樹脂層が、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニル、(B)エチレン性二重結合を有する化合物、(C)光重合開始剤および(D)極性基を有するシリコーン化合物を含有し、前記(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルのケン化度が60~99モル%である感光性樹脂印刷版原版。
本発明の感光性樹脂印刷版原版により、インキ転移性および印刷再現性に優れた印刷版を製造することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の感光性樹脂印刷版原版は、少なくとも支持体と感光性樹脂層を有する。支持体は、感光性樹脂層を保持する作用を有する。感光性樹脂層とは、後述する(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニル、(B)エチレン性二重結合を有する化合物、(C)光重合開始剤、(D)極性基を有するシリコーン化合物を含有する層を指す。感光性樹脂層を2層以上有してもよい。
支持体としては、例えば、ポリエステルなどからなるプラスチックシート、スチレン-ブタジエンゴムなどからなる合成ゴムシート、スチール、ステンレス、アルミニウムなどからなる金属板などが挙げられる。支持体の厚さは、取扱性および柔軟性の観点から、100~350μmの範囲が好ましい。
支持体は、易接着処理されていることが好ましく、レリーフやフロア層との接着性を向上させることができる。易接着処理方法としては、例えば、サンドブラストなどの機械的処理、コロナ放電などの物理的処理、コーティングなどによる化学的処理などが挙げられる。これらの中でも、接着性の観点から、コーティングにより易接着層を設けることが好ましい。
本発明の感光性樹脂印刷版原版において、感光性樹脂層は、少なくとも(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニル、(B)エチレン性二重結合を有する化合物、(C)光重合開始剤、(D)極性基を有するシリコーン化合物を含有する。感光性樹脂層に紫外線などの光を画像様に照射すると、露光部の感光性樹脂層中の(C)光重合開始剤からフリーラジカルが発生する。発生したフリーラジカルは、(B)エチレン性二重結合を有する化合物間のラジカル重合を誘発し、架橋構造により所望の印刷画像を得るためのレリーフを形成することができる。(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルがエチレン性二重結合を有する場合は、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルおよび(B)エチレン性二重結合を有する化合物の間でもラジカル重合する。これにより、より光硬化を進め、印刷版の画像再現性を向上させることができる。
本発明において、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルのケン化度は、60~99モル%である。ケン化度が60モル%未満であると、水に溶解しにくくなり、フォトリソ加工において、水現像により非画像部を除去することが困難となる。ケン化度は65モル%以上が好ましい。一方、ケン化度が99モル%を超えると、感光性樹脂層中の他の成分との相溶性が低下しやすく、他の成分がブリードアウトしやすい傾向にある。ケン化度は、90モル%以下が好ましい。なお、感光性樹脂層が(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルを2種以上含有する場合、2種以上の部分ケン化ポリ酢酸ビニル全体のケン化度が上記範囲にあることが好ましい。ここで、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルのケン化度は、JIS K6726(1994年)に準じた方法により測定することができる。
(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルは、側鎖にエチレン性二重結合を有することが好ましい。露光により(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルおよび/または(B)エチレン性二重結合を有する化合物の間でラジカル重合することにより、印刷版の画像再現性を向上させることができる。エチレン性二重結合を有する基としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。これらを2種以上有してもよい。
部分ケン化ポリ酢酸ビニルにエチレン性二重結合を導入する方法としては、例えば、(1)部分ケン化ポリ酢酸ビニルの水酸基と酸無水物とを反応させ、部分ケン化ポリ酢酸ビニルの水酸基を起点としてカルボキシル基などの反応性基をポリマー側鎖に導入し、その反応性基に不飽和エポキシ化合物を反応させる方法、(2)酢酸ビニルと、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸塩および/または不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を部分ケン化し、このポリマーのもつカルボキシル基と不飽和エポキシ化合物を反応させる方法などが挙げられる。
(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルのエチレン性二重結合当量は、1,000g/eq以上19,000g/eq以下が好ましい。1,000g/eq以上とすることにより、印刷版のレリーフ表面の硬度を適度に抑え、印刷再現性をより向上させることができる。一方、19,000g/eq以下とすることにより、印刷面の光硬化を十分に進め、画像再現性および耐刷性を向上させることができる。ここで、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルの構造が既知である場合、理論上の1モル当たり重量を、部分ケン化ポリ酢酸ビニル1分子に含まれるエチレン性二重結合の個数で除することにより、エチレン性二重結合当量を算出することができる。また、H-NMRにより部分ケン化ポリ酢酸ビニル中のエチレン性二重結合のモル数を分析し、分析に使用した試料重量を、検出されたエチレン性二重結合のモル数で除することにより、エチレン性二重結合当量を算出することができる。
感光性樹脂層中における(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルの含有量は、30~85重量%が好ましい。
(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルの重量平均分子量は、10,000以上200,000以下が好ましい。ここで、重量平均分子量は、GPC測定により求めることができる。より具体的には、Wyatt Technology製ゲル浸透クロマトグラフ-多角度光散乱光度計を用いて、カラム温度:40℃、流速:0.7mL/分の条件で、重量平均分子量を測定することができる。標準サンプルとして、ポリエチレンオキサイドおよびポリエチレングリコールを用いる。
(B)エチレン性二重結合を有する化合物とは、エチレン性二重結合を有する、分子量が10,000未満であるものを指す。(B)エチレン性二重結合を有する化合物の分子量は、2,000以下が好ましい。
(B)エチレン性二重結合を有する化合物としては、例えば、国際公開第2017/038970号に記載される(メタ)アクリレートや、グリセロールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの総称であり、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸の総称である。
感光性樹脂層中における(B)エチレン性二重結合を有する化合物の含有量は、10~60重量%が好ましい。
(C)光重合開始剤としては、光吸収によって、自己分解や水素引き抜きによってラジカルを生成する機能を有するものが好ましく用いられる。例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
感光性樹脂層中における(C)光重合開始剤の含有量は、0.1~10質量%が好ましい。
本発明の感光性樹脂層には、(D)極性基を有するシリコーン化合物を含有する。レリーフにシリコーン化合物を含有することにより、インキ反発性によりインキ転移性を向上させることができる。このため、インキ供給量を低減し、インキを被印刷体に転写するための圧力を低減することができることから、印刷再現性を向上させることができる。さらに本発明においては、シリコーン化合物として(D)極性基を有するシリコーン化合物を選択することにより、極性基と、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルの水酸基との水素結合および/または静電引力による相互作用によって、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルと(D)極性基を有するシリコーン化合物との相溶性が良好で、感光性樹脂層からの(D)極性基を有するシリコーン化合物のブリードアウトを抑制することができる。このため、シリコーン化合物によるインキ転移性向上効果を顕著に奏することができる。ここで、本発明における極性基とは、電気陰性度の高い、酸素原子および/または窒素原子を含む基を指し、例えば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、フェノール基などが挙げられる。これらの極性基は、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルとの親和性が高いことから、かかる極性基を有するシリコーン化合物は、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルとの相溶性に優れ、感光性樹脂層からのブリードアウトをより抑制することができる。これらの中でも、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルとの親和性の観点から、アミノ基、水酸基、カルボキシル基が好ましく、水酸基がより好ましい。
(D)極性基を有するシリコーン化合物としては、例えば、ジメチルシリコーンオイルの側鎖の一部や、両末端または片末端のメチル基を、前述の極性基を含む基により置換した化合物などが挙げられる。
(D)極性基を有するシリコーン化合物としては、例えば、市販品であれば、変性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製)、“サイラプレーン”(登録商標)(JNC(株)製)などが挙げられる。このうち、極性基として水酸基を有するものとしては、例えば、X-22-4039、X-22-4015、X-22-4952、X-22-4272、X-22-170BX、X-22-170DX、KF-6000、KF-6001、KF-6002、KF-6003、KF-6123、X-22-176F(信越化学工業(株)製)、“サイラプレーン”FM-4411、“サイラプレーン”FM-4421、“サイラプレーン”FM-4425、“サイラプレーン”FM-0411、“サイラプレーン”FM-0421、“サイラプレーン”FM-DA11、“サイラプレーン”FM-DA21、“サイラプレーン”FM-DA26(JNC(株)製)等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
(D)極性基を有するシリコーン化合物の水酸基価は、30mgKOH/g以上が好ましい。水酸基価を30mgKOH/gとすることにより、感光性樹脂層からのブリードアウトをより抑制することができる。なお、(D)極性基を有するシリコーン化合物の水酸基価は、JIS K0070(1992年)に準拠する方法により測定することができる。なお、(D)極性基を有するシリコーン化合物の構造が既知の場合は、その構造から水酸基価を算出してもよい。
感光性樹脂組成物中における(D)極性基を有するシリコーン化合物の含有量は、インキ転移性をより向上させる観点から、0.1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましい。一方、感光性樹脂組成物中における(D)極性基を有するシリコーン化合物の含有量は、感光性樹脂層からのブリードアウトを抑制する観点から、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、4重量%以下がさらに好ましい。
感光性樹脂層に、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニル成分と相溶性が良好な、親水性基を有するポリマーや、ポリマー主鎖自体が水膨潤性または水溶解性を有するポリマーを含有してもよい。親水性基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、リン酸基、スルホン酸基やそれらの塩等が挙げられる。親水性基を有するポリマーとしては、例えば、カルボキシル化スチレンブタジエンラテックス、カルボキシル基を有する脂肪族共役ジエンの重合体、リン酸基および/またはカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物の乳化重合体、スルホン酸基含有ポリウレタンなどが挙げられる。また、ポリマー主鎖自体が水膨潤性または水溶解性を有するポリマーとしては、例えば、ビニルアルコール-アクリル酸ナトリウム共重合体、ビニルアルコール-メタクリル酸ナトリウム共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル含有ポリアミド、ポリエーテル、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、でんぷん、でんぷん-ポリアクリル酸ナトリウムグラフト化物、でんぷん-ポリアクリロニトリルグラフト化物のケン化物、セルロースポリアクリル酸グラフト化物、部分架橋ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール誘導体等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
水性基を有するポリマーとして、(E)塩基性窒素を有するポリアミドを含有することが好ましい。塩基性窒素を有するポリアミドは、レリーフの靭性を向上させ、印刷時のレリーフクラックを抑制する、すなわち、耐刷性を向上させることができる。なお、塩基性窒素を主鎖または側鎖のいずれに有してもよいが、主鎖に有することが好ましい。塩基性窒素を有するポリアミドは、塩基性窒素を有する単量体を、必要に応じてそれ以外のジアミン、ジカルボン酸、ω-アミノ酸、ラクタムなどとともに、縮重合または重付加反応することにより得ることができる。塩基性窒素を有する単量体としては、ピペラジン基やN,N-ジアルキルアミノ基を有する単量体が好ましく、より好ましくはピペラジン基を有する単量体である。
単量体の好ましい例は、N,N’-ビス(アミノメチル)-ピペラジン、N,N’-ビス(β-アミノエチル)-ピペラジン、N,N’-ビス(γ-アミノベンジル)-ピペラジン、N-(β-アミノエチル)ピペラジン、N-(β-アミノプロピル)ピペラジン、N-(ω-アミノヘキシル)ピペラジン、N-(β-アミノエチル)-2,5-ジメチルピペラジン、N,N-ビス(β-アミノエチル)-ベンジルアミンN,N-ビス(γ-アミノプロピル)-アミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ビス(γ-アミノプロピル)-エチレンジアミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ビス(γ-アミノプロピル)-テトラメチレンジアミンなどのジアミン類;N,N’-ビス(カルボキシメチル)-ピペラジン、N,N’-ビス(カルボキシメチル)-メチルピペラジン、N,N’-ビス(カルボキシメチル)-2,6-ジメチルピペラジン、N,N’-ビス(β-カルボキシエチル)-ピペラジン、N,N-ビス(カルボキシメチル)-メチルアミン、N,N-ビス(β-カルボキシエチル)-エチルアミン、N,N-ビス(β-カルボキシエチル)-メチルアミン、N,N-ジ(β-カルボキシエチル)-イソプロピルアミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ビス-(カルボキシメチル)-エチレンジアミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ビス-(β-カルボキシエチル)-エチレンジアミンなどのジカルボン酸類あるいはこれらの低級アルキルエステル;酸ハロゲン化物、N-(アミノメチル)-N’-(カルボキシメチル)-ピペラジン、N-(アミノメチル)-N’-(β-カルボキシエチル)-ピペラジン、N-(β-アミノエチル)-N’-(β-カルボキシエチル)-ピペラジン、N-カルボキシメチルピペラジン、N-(β-カルボキシエチル)ピペラジン、N-(γ-カルボキシヘキシル)ピペラジン、N-(ω-カルボキシヘキシル)ピペラジン、N-(アミノメチル)-N-(カルボキシメチル)-メチルアミン、N-(β-アミノエチル)-N-(β-カルボキシエチル)-メチルアミン、N-(アミノメチル)-N-(β-カルボキシエチル)-イソプロピルアミン、N,N’-ジメチル-N-(アミノメチル)-N’-(カルボキシメチル)-エチレンジアミンなどのω-アミノ酸などが挙げられる。
ポリアミドを構成する全成分、すなわち、アミノカルボン酸単位(原料としてラクタムの場合を含む)、ジカルボン酸単位およびジアミン構造単位の総和中、塩基性窒素を有する単量体を10~80モル%用いることが好ましい。塩基性窒素を有する単量体を10モル%以上用いることにより、水溶性を向上させ、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルとの相溶性をより向上させることができる。一方、塩基性窒素を有する単量体を80モル%以下用いることにより、印刷版の保管中の吸水を抑制し、印刷版の厚み精度を高いレベルで維持することができる。
(E)塩基性窒素を有するポリアミドの重量平均分子量は、10,000以上200,000以下が好ましい。ここで、重量平均分子量は、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルの重量平均分子量と同様に求めることができる。
感光性樹脂層には、前記各成分とともに、必要に応じて、相溶助剤、重合禁止剤、染料、顔料、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤、香料などを含有してもよい。
感光性樹脂層に相溶助剤を含有することにより、感光性樹脂層を構成する成分の相溶性を高め、低分子量成分のブリードアウトを抑制し、感光性樹脂層の柔軟性を向上させることができる。相溶助剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールやこれらの誘導体などの多価アルコール類が挙げられる。感光性樹脂層中における相溶助剤の含有量は、30質量%以下が好ましい。
感光性樹脂層に重合禁止剤を含有することにより、熱安定性を向上させることができる。重合禁止剤としては、例えば、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒドロキシアミン誘導体などが挙げられる。これらを1種以上含有してもよい。感光性樹脂層中における重合禁止剤の含有量は、0.001~5質量%が好ましい。
本発明の感光性樹脂印刷版原版は、前述の支持体と感光性樹脂層に加え、必要に応じて、感光性樹脂層上にカバーフィルムや感熱マスク層を有してもよい。
感光性樹脂層上にカバーフィルムを有することにより、感光性樹脂層表面を保護し、異物等の付着を抑制することができる。感光性樹脂層とカバーフィルムは直接接していてもよいし、感光性樹脂層とカバーフィルムの間に粘着防止層などを1層以上有してもよい。
カバーフィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなるプラスチックシートが挙げられる。カバーフィルムの厚さは、取扱性および柔軟性の観点から、10~150μm好ましい。また、カバーフィルム表面は粗面化されていてもよく、原画フィルムとの密着性を向上させることができる。粗面化の方法としては、例えば、サンドブラスト、ケミカルエッチング、マット化粒子含有塗工剤のコーティングなどが挙げられる。
また、本発明の感光性樹脂印刷版原版が、デジタルデバイスで制御された画像データに基づいてレーザー照射を行い、マスク層要素から画像マスクをその場で形成し、露光・現像するいわゆるCTP製版方式に用いられる場合、感光性樹脂印刷版原版は、さらに感熱マスク層を有していてもよい。感熱マスク層は、紫外光を事実上遮断し、描画時には赤外レーザー光を吸収し、その熱により瞬間的に一部または全部が昇華または融除するものが好ましい。これによりレーザーの照射部分と未照射部分の光学濃度に差が生じ、従来の原画フィルムと同様の機能を果たすことができる。感光性樹脂印刷版原版が感熱マスク層を有する場合、感光性樹脂層と感熱マスク層との間に接着力調整層を有してもよく、感熱マスク層とカバーフィルムの間に剥離補助層を有してもよい。
感熱マスク層、接着力調整層、剥離補助層としては、例えば、国際公開第2017/038970号に記載されたものが挙げられる。
次に、本発明の感光性樹脂印刷版原版の製造方法について、支持体上に、感光性樹脂層およびカバーフィルムを有する場合を例に説明する。
例えば、(A)~(D)成分及び必要に応じて(E)成分およびその他添加剤を溶媒に加熱溶解し、感光性樹脂組成物溶液を得る。溶媒としては、水/アルコール混合溶媒などが挙げられる。
必要により易接着層を有する支持体上に、感光性樹脂組成物溶液を流延し、乾燥して感光性樹脂層を形成する。次に、必要により粘着防止層を塗布したカバーフィルムを感光性樹脂層上に密着させることにより、感光性樹脂印刷版原版を得ることができる。
本発明の感光性樹脂印刷版原版を用いた印刷版の製造方法について説明する。感光性樹脂印刷版原版の感光性樹脂層を部分的に光硬化させる露光工程、感光性樹脂層の未硬化部分を、水を含む液体により除去する現像工程を有することが好ましい。
露光工程においては、カバーフィルムを有する場合にはこれを剥離した感光性樹脂層上に、ネガティブまたはポジティブの原画フィルムを密着させ、波長300~400nmの紫外線を照射し、感光性樹脂層の露光部を光硬化させることが好ましい。感熱マスク層を有する場合は、感熱マスク層にネガティブまたはポジティブの画像を形成し、これを介して紫外線を照射することが好ましい。露光光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯、UV-LEDランプなどが挙げられる。
現像工程においては、水を含む液体により未露光部の感光性樹脂層を除去することが好ましい。現像装置としては、スプレー式現像装置やブラシ式洗い出し機などが挙げられる。
さらに、必要に応じて、現像後に紫外線を照射する後露光工程を設けてもよい。後露光工程により、未反応の(B)エチレン性二重結合を有する化合物の反応によって、レリーフをより強固にすることができる。
本発明の感光性樹脂印刷版原版および印刷版は、ラベル印刷用輪転印刷機や間欠式輪転印刷機などを用いた凸版印刷用途、ドライオフセット印刷用途、フレキソ印刷用途などに用いることできる。これらの中でも、凸版印刷用途、ドライオフセット印刷用途により好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法を以下に示す。
(1)ブリードアウト
“GATSBY”(登録商標)あぶらとり紙フィルムタイプ(マンダム製)を2cm×2cmに切り取り、重量を測定した。各実施例および比較例により得られた印刷版の表面に、重量を測定した“GATSBY”あぶらとり紙フィルムタイプ(マンダム製)を付着させ、ブリードアウト成分を吸収させた後、同様に重量を測定した。ブリードアウト成分吸収前後の重量変化(吸収後の重量-吸収前の重量)から、ブリードアウト量を算出した。下記基準によりブリードアウトを評価した。
A:0.02g未満
B:0.02g以上0.1g未満
C:0.1g以上。
(2)インキ転移性
各実施例および比較例により得られた
直径30mmの円形ベタ部を有する印刷版について、間欠式輪転印刷機LR3(岩崎鉄工(株)製)を用いて、インキは“BEST CURE”(登録商標)UV161藍S((株)T&K TOKA製)、紙は厚さ90μmの両面コート紙(マルウ接着(株)製)を用いて印刷した。この時、印刷版の紙への押し込み量は100μmになるように、調整し、印刷スピードは30m/分とした。得られた印刷物のインキ濃度を、SpectroEye(X-rite社製)を用いて各4点測定し、その算術平均値をインキ濃度とした。インキ濃度が高いほど、インキ転移性に優れる。
(3)印刷再現性
各実施例および比較例により得られた印刷版について、前記(2)インキ転移性に記載の条件で印刷を行った。線幅50μmのレリーフに対応する印刷物の線幅を、デジタルマイクロスコープVHX-2000(Keyence製)を用いて、200倍の倍率で各5点測定し、その算術平均値から印刷再現性を評価した。印刷物の線幅が65μm以下であれば○、65μmより大きければ×とした。
(4)レリーフのクラック発生評価(耐刷性)
各実施例および比較例により得られた直径12mmの円形ベタ部を有する印刷版について、印刷版の紙への押し込みを200μmとなるようにスキミゲージで調整したこと以外は前記(2)インキ転移性に記載の条件で印刷を行った。3,000刷、5,000刷、8,000刷、10,000刷後の印刷版のレリーフ表面を、25倍のルーペを用いて拡大観察して、クラックの有無を評価した。クラックが認められない最大の刷数を耐刷性とした。
次に、各実施例および比較例に用いた材料の作製方法について説明する。
<易接着層を有する支持体の作製>
“バイロン”(登録商標)31SS(不飽和ポリエステル樹脂のトルエン溶液、東洋紡(株)製)260質量部およびPS-8A(ベンゾインエチルエーテル、和光純薬工業(株)製)2質量部の混合物を70℃で2時間加熱後、30℃に冷却し、エチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート7質量部を加えて2時間混合した。さらに、“コロネート”(登録商標)3015E(多価イソシアネート樹脂の酢酸エチル溶液、東ソー(株)製)25質量部およびEC-1368(工業用接着剤、住友スリーエム(株)製)14質量部を添加して混合し、易接着層用塗工液1を得た。
次に“ゴーセノール”(登録商標)KH-17(ケン化度78.5~81.5モル%のポリビニルアルコール、三菱ケミカル(株)製)50質量部を、“ソルミックス”(登録商標)H-11(アルコール混合物、日本アルコール(株)製)200質量部および水200質量部の混合溶媒中、70℃で2時間混合した後、“ブレンマー”(登録商標)G(グリシジルメタクリレート、日本油脂(株)製)1.5質量部を添加して1時間混合した。ここに、さらに(ジメチルアミノエチルメタクリレート)/(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)重量比2/1の共重合体(共栄社化学(株)製)3質量部、“イルガキュア”(登録商標)651(ベンジルメチルケタール、チバ・ガイギー(株)製)5質量部、エポキシエステル70PA(プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、共栄社化学(株)製)21質量部およびエチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート20質量部を添加して90分間混合し、50℃に冷却後、“メガファック”(登録商標)F-556(DIC(株)製)を0.1質量部添加して30分間混合して易接着層用塗工液2を得た。
クロムメッキを施した、厚さ250μmのスチール鈑上に、前記易接着層用塗工液1を、バーコーターを用いて、乾燥後膜厚が40μmになるように塗布し、180℃のオーブンを用いて3分間加熱して溶媒を除去した。その上に、前記易接着層用塗工液2を、バーコーターを用いて、乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、160℃のオーブンを用いて3分間加熱して、易接着層を有する支持体を得た。
<カバーフィルムの作製>
表面粗さRaが0.1~0.6μmとなるように粗面化された厚さ100μmの“ルミラー”(登録商標)S10(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)に、“ゴーセノール”(登録商標)AL-06(ケン化度91~94モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール、三菱ケミカル(株)製)を、乾燥膜厚が1μmとなるように塗布し、100℃で25秒間乾燥し、カバーフィルムを得た。
<感光性樹脂層用ポリマーの合成>
合成例1:
三菱ケミカル(株)製の部分ケン化ポリビニルアルコール“ゴーセノール”KL-05(平均重合度500、ケン化度80モル%、Mw=38,000)をアセトン中で膨潤させ、“ゴーセノール”KL-05 100質量部に対して、無水コハク酸を4.2質量部添加し、60℃で6時間撹拌して分子鎖にカルボキシル基を付加させた。このポリマーをアセトンで洗浄して未反応の無水コハク酸を除去した後、乾燥した。このポリマー100質量部をエタノール/水=30/70(重量比)の混合溶媒200質量部に80℃で溶解した。ここにグリシジルメタクリレートを6質量部添加して、部分ケン化ポリビニルアルコール中にエチレン性二重結合を導入し、ポリマーAを得た。得られたポリマーAのエチレン性二重結合当量は5,611g/eq、重量平均分子量は40,000であった。なお、重量平均分子量は、Wyatt Technology製ゲル浸透クロマトグラフ-多角度光散乱光度計を用いて、カラム温度:40℃、流速:0.7mL/分の条件で、標準サンプルとして、ポリエチレンオキサイドおよびポリエチレングリコールを用いて測定した。また、エチレン性二重結合当量は、部分ケン化ポリ酢酸ビニルを、内標として3-(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム-2,2,3,3dを添加した重水/重メタノール混合溶媒1mlに、30mg溶解し、H-NMR測定を行い、エチレン性二重結合のモル数を測定した。分析に使用した試料中の部分ケン化ポリ酢酸ビニルを、検出されたエチレン性二重結合のモル数で除することにより、エチレン性二重結合当量を算出した。
合成例2:
ε-カプロラクタム20質量部、N-(2-アミノエチル)ピペラジンとアジピン酸のナイロン塩80質量部および水100質量部をステンレス製オートクレーブに入れ、内部の空気を窒素ガスで置換した後に180℃で1時間加熱し、ついで水分を除去して、水溶性ポリアミド樹脂である3級アミノ基を有するポリアミドのポリマーBを得た。得られたポリマーBの重量平均分子量は72,000であった。なお、重量平均分子量は、合成例1と同様に測定した。
シリコーン化合物として、以下の製品を用いた。
X-22-4039:信越化学工業(株)製、水酸基含有、水酸基価58mgKOH/g
X-22-4015:信越化学工業(株)製、水酸基含有、水酸基価30mgKOH/g
KF6000:信越化学工業(株)製、水酸基含有、水酸基価120mgKOH/g
KF6001:信越化学工業(株)製、水酸基含有、水酸基価62mgKOH/g
KF6003:信越化学工業(株)製、水酸基含有、水酸基価22mgKOH/g
KF-96L-1cs:信越化学工業(株)製、極性基なし
その他の成分として、表1~4記載の化合物を用いた。
[実施例1]
<感光性樹脂層の作製>
ポリマーA、Bと、エタノール/水=30/70(重量比)の混合溶媒を、撹拌用ヘラおよび冷却管を取り付けた3つ口フラスコ中に表1に記載の量添加し、90℃で2時間加熱して溶解させた。得られた混合物を70℃に冷却した後、表1に記載のその他の成分を添加して30分間撹拌し、感光性樹脂層用溶液を得た。上記のようにして得られた感光性樹脂層用溶液を、前記易接着層を有する支持体の易接着層側に流延し、60℃で2.5時間乾燥して印刷版原版の感光性樹脂層を形成した。このとき、乾燥後の版厚(クロムメッキを施したスチール鈑+感光性樹脂層)が0.95mmとなるよう調節した。
このようにして得られた感光性樹脂層上に、水/エタノール=50/50(重量比)の混合溶媒を塗布し、表面に前記アナログ版用のカバーフィルムを圧着し、感光性樹脂印刷版原版を得た。
バッチ式露光現像機“トミフレックス”(富博産業(株)製)を用いて、以下のように露光および現像を行った。まず、得られた感光性樹脂版原版のカバーフィルムを剥離し、露出した感光性樹脂層に、所定の画像が形成されたネガフィルムを塩化ビニルフィルムによって真空密着させた後、積算光量が8,000mJ/cm程度になるように露光した。その後、25℃に温度調整した水道水により、120秒間現像した。その後、60℃のオーブン中、10分間乾燥し、大気下で、積算光量が8,000mJ/cm程度になるように露光し、印刷版を得た。得られた印刷版について前述の方法により評価した結果を表1に示す。
[実施例2~12]
感光性樹脂層の組成を表1~3に記載のとおり変更したこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版を得た。評価結果を表1~3に示す。
[比較例1]
感光性樹脂層の組成を表4に記載のとおり変更したこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版を得た。評価結果を表4に示す。また、前記(4)インキ転移性および(5)印刷再現性の評価において、印刷版のブランケットへの押し込み量を200μmとなるように変更してインキ転移性および印刷再現性を評価したところ、インキ濃度は2.2、線幅は78μmとなった。
[比較例2]
感光性樹脂層の組成を表4に記載のとおり変更したこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版を得た。ブリードアウト量が多く、印刷評価には適さなかった。評価結果を表4に示す。
各実施例および比較例の感光性樹脂層組成と評価結果を表1~4に示す。
Figure 2022079093000001
Figure 2022079093000002
Figure 2022079093000003
Figure 2022079093000004

Claims (8)

  1. 少なくとも支持体と感光性樹脂層を有する感光性樹脂印刷版原版であって、該感光性樹脂層が、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニル、(B)エチレン性二重結合を有する化合物、(C)光重合開始剤および(D)極性基を有するシリコーン化合物を含有し、前記(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルのケン化度が60~99モル%である
    感光性樹脂印刷版原版。
  2. 前記(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルがエチレン性二重結合を有する請求項1に記載の感光性樹脂印刷版原版。
  3. 前記(D)極性基を有するシリコーン化合物の極性基としてアミノ基、水酸基および/またはカルボキシル基を有する請求項1または2に記載の感光性樹脂印刷版原版。
  4. 前記(D)極性基を有するシリコーン化合物の極性基として水酸基を有する請求項1~3のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
  5. 前記(D)極性基を有するシリコーン化合物の水酸基価が30mgKOH/g以上である請求項1~4のいずれかに記載の感光性樹印刷版原版。
  6. 前記(D)極性基を有するシリコーン化合物を感光性樹脂層中、0.1~5重量%含有する請求項1~5のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
  7. 前記感光性樹脂層がさらに(E)塩基性窒素を有するポリアミドを含有する請求項1~6のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
  8. 請求項1~7のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版の感光性樹脂層を部分的に光硬化させる露光工程、感光性樹脂層の未硬化部分を水を含む液体により除去する現像工程を有する、印刷版の製造方法。
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