JP2022077822A - 電気粘性流体ダンパ - Google Patents

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Abstract

【課題】電気粘性流体中の水分量を制御し、電圧印加時の電流抑制(低い電流密度)と高い耐久性能とを併せ持つ電気粘性流体、並びに該電気粘性流体を用いた電気粘性流体ダンパを提供すること。【解決手段】電気絶縁媒質中にポリウレタン粒子が分散された電気粘性流体であって、前記ポリウレタン粒子は、分子又はイオンの形態で、該粒子中に内包される、又は該粒子表面に付着した、少なくとも1種類の電解質を含有し、前記ポリウレタン粒子は、ポリオール類とイソシアネート類とアルコキシ基を有する乳化剤とを含有する混合物の反応生成物であることを特徴とする電気粘性流体及びそれを封入した電気粘性流体ダンパ。【選択図】なし

Description

本発明は電気粘性流体およびそれを用いた電気粘性流体ダンパに関する。
電気粘性流体は、印加した電場の存在下にて、その見かけの粘度が急速かつ可逆的に変わる流体である。電気粘性流体は大別すると均一系と粒子分散系に分類され、後者は一般に、疎水性で電気非導電性のオイル(分散媒)に、細かく分割された固体(粒子等)が分散された分散体の態様を有する。電気粘性流体は、電場に晒されると流動抵抗が変化して一般に高粘度化し、電場が取り除かれると通常の液体状態に戻る。電気粘性流体は、電圧印加の際に漏れ電流の電流密度が小さく消費電力も小さいという特徴があり、低電力レベルにより力の伝達を制御するのが望ましいダンパ等の用途において有利に使用され得る。
電気粘性流体に要求される特性としては、主に、減衰力及び応答性が挙げられ、これらに加え、耐熱性、電流密度、減衰力揺らぎ特性等を含む複数項目の特性を挙げることができる。電気粘性流体において、これら特性は、それぞれの許容範囲内でバランスが取れ、総合効果に優れることが望まれる。特に制動力(減衰力)や消費電力等を考慮し、高い最大せん断応力を有し、低い電流密度を併せ持つ電気粘性流体が望まれている。
特許文献1には、ポリフルオロアルキルシリコーンと電気活性物質を含む電気粘性流体が開示され、電気活性物質の一例として金属アルコキシドの加水分解および縮合から得られる球状粒子等が開示されている。ただし同文献には、アルコキシ基を有する乳化剤の使用については開示がない。
また特許文献2には、ポリウレタン粒子と、シリコーンオイル等の非水性分散媒を含む電気粘性液体が開示されている。同文献には、シリコーンオイル中の分散のために好ましく使用される分散剤の一例として、ヒドロキシ官能のポリシロキサンとアミノシランとの反応生成物の記載がある。
特開平11-189650号公報 特開平4-255795号公報
上述の非水溶媒系の電気粘性流体において、電気粘性流体中の残存水分は、電圧印加時に電流量が増える原因となる。電流量の増加はエネルギー消費の増大につながり、また電流量が電源供給の上限に達した場合、電圧がOFFとなるため、電気粘性効果が得られなくなる課題があった。
また特許文献2に例示されるポリウレタン粒子を含む電気粘性流体において、電気粘性流体の製造に用いる原材料中に不純物としてわずかに含まれ得る水分は、ウレタン硬化剤であるイソシアネートと副反応を起こし得、これはポリウレタン粒子の硬化度の低下につながることとなる。具体的課題としては、ポリウレタン粒子に硬化不足が生じると電気粘性流体の耐久性の低下につながる。上記特許文献2は、水を含まない非研磨性の沈降しない電気粘性液体の提供を課題として挙げるものの、不純物濃度レベルの少量の水についての議論はされていない。
本発明は、電気粘性流体中の水分量を制御し、電圧印加時の電流抑制(低い電流密度)
と高い耐久性能とを併せ持つ電気粘性流体、並びに該電気粘性流体を用いた電気粘性流体ダンパの提供を課題とする。
本発明の一態様は、電気絶縁媒質中にポリウレタン粒子が分散された電気粘性流体であって、前記ポリウレタン粒子は、分子又はイオンの形態で、該粒子中に内包される、又は該粒子表面に付着した、少なくとも1種類の電解質を含有し、前記ポリウレタン粒子は、ポリオール類とイソシアネート類とアルコキシ基を有する乳化剤とを含有する混合物の反応生成物であることを特徴とする。
本発明の電気粘性流体において、前記乳化剤のアルコキシ基は、メトキシ基又はエトキシ基とすることができ、また前記混合物中、前記電気絶縁媒質の質量に対して前記乳化剤は1~1.5質量%の割合で配合することができる。
本発明はまた、前記電気粘性流体が封入されていることを特徴とする電気粘性流体ダンパを対象とする。
本発明によれば、電気粘性流体中の水分量を制御し、電圧印加時の電流抑制(低い電流密度)と高い耐久性能とを併せ持つ電気粘性流体、並びに該電気粘性流体を用いた電気粘性流体ダンパを提供することができる。
図1は、本発明に係る電気粘性流体の製造フローチャート(概略)の一例を示す図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る電気粘性流体ダンパの構造を説明する模式図である。 図3は、実施例で調製した電気粘性流体の製造フローを示す図である。 図4は、実施例で製造した電気粘性流体の水分量とガラス転移点との関係を示した図である。 図5は、実施例で製造した電気粘性流体の水分量と電圧印加時の電流密度との関係を示した図である。 図6は、実施例で製造した電気粘性流体中のポリウレタン粒子径とアルコキシ基を有する乳化剤量との関係を示した図である。 図7は、電気粘性流体ダンパに5kVの電圧を印加した際の電流値と温度との関係を示す図である。
本発明の電気粘性流体は、電気絶縁媒質中にポリウレタン粒子が分散された態様を有する。
本発明者らは上述の課題、すなわち電気粘性流体において、水分量の抑制、電圧印加時の電流抑制(低い電流密度)、そして高い耐久性能の実現という課題を解決するために、ポリウレタン粒子を分散質として含む電気粘性流体の製造において、メトキシ基やエトキシ基などのアルコキシ基を含有する変性シリコーンを乳化剤として用いること、それにより、該アルコキシ基の加水分解反応時に、電気粘性流体の原材料中に不純物として含有してなる水分が消費されることで、反応系内からの水分の除去、すなわち含有水分量が抑制された電気粘性流体を得られること、そしてそれにより、得られた電気粘性流体において耐久性の向上に加え、電圧印加時の電流密度の低下が達成できることを見出した。
以下、本発明に係る電気粘性流体の各構成成分並びに該電気粘性流体を封入した電気粘性流体ダンパに関して詳述する。
〔電気絶縁媒質〕
本発明で使用する電気絶縁媒質としては、例えば、パラフィン類(例えばn-ノナン)、オレフィン類(例えばl-ノネン、(シス、トランス)-4-ノネン)及び芳香族炭化水素類(例えばキシレン)等の液状炭化水素;3mPa・s乃至300mPa・sの粘度をもつポリジメチルシロキサン及び液体メチルフェニルシロキサン等のシリコーン油などが挙げられる。好ましい電気絶縁媒質としてはシリコーン油が使用される。電気絶縁媒質はそれ単独でも又はその他の電気絶縁媒質と組み合わせても使用することができる。電気絶縁媒質の凝固点は好ましくは-30℃未満であり、沸点は好ましくは150℃以上である。
〔ポリウレタン粒子〕
本発明に係るポリウレタン粒子は、ポリオール類と、イソシアネート類と、アルコキシ基を有する乳化剤とを含有する混合物の反応生成物である。
また前記ポリウレタン粒子は、分子又はイオンの形態で、該粒子中に内包される、又は該粒子表面に付着した少なくとも1種類の電解質を含有する。
また電気粘性流体中に含まれるポリウレタン粒子の量は、電気粘性流体の総質量に基づき、例えば30質量%~70質量%とすることができる。
〈ポリオール類〉
上記ポリオール類としては、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリマーポリオール類等が挙げられる。
上記ポリエーテルポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジヒドロキシジフェニルプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、ジプロピレングリコール、ジヒドロキシジフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、アミノフェノール、アミノナフトール、フェノールホルムアルデヒド縮合物、フロログルシン、メチルジエタノールアミン、エチルジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ビス(p-アミノシクロヘキサン)、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、又はナフタレンジアミンなどに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドなどの1種又は2種以上を付加させて得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
上記ポリエステルポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-または1,4-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、p-キシリレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリット等の多価アルコール類と、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、シュウ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の多価カルボン酸類のうち1種または2種以上との縮合物であるポリエステルポリオール、または、プロピオラクトン、ブチロラクトン、カプロラクトンなどの環状エステルを開環重合したポリエステルポリオールが挙げられる。さらに上記ポリオールと環状エステルとより製造したポリエステルポリオール、及び上記ポリオール、2塩基酸、環状エステル3種より製造したポリエステルポリオールなども挙げることができる。
また上記ポリマーポリオール類としては、例えば、1,2-ポリブタジエンポリオール、1,4-ポリブタジエンポリオール、ポリクロロプレンポリオール、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体ポリオール、ポリジメチルシロキサンジカルビノール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及びヒマシ油などのリシノール酸エステル、あるいは前記ポ
リエーテルポリオール又は前記ポリエステルポリオールに対して、アクリロニトリル、スチレン、メチルメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させて得たポリマーポリオール等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエーテルポリオール類が好ましい。
〈イソシアネート類〉
上記イソシアネート類としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(p-MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、イソシアン酸メチル等が挙げられる。
上記ポリオール類とイソシアネート類は、ポリオール類のヒドロキシ基(OH基)とイソシアネート類のイソシアネート基(NCO基)のモル比[(NCO基)/(OH基)]が1~1.5となるように使用することが望ましい。
ポリオール類に比べて、硬化剤であるイソシアネート類を等量よりやや過剰に使用することにより、硬化剤のイソシアネート基と水との反応によって反応系内の水分が消費され、後述するアルコキシ基を有する乳化剤の水分除去効果に加えて、電気粘性流体からの水分除去効果を高めることができる。
〈アルコキシ基を有する乳化剤〉
上記アルコキシ基を有する乳化剤(界面活性剤)としては特に限定されないが、上記電気絶縁媒質としてのシリコーンオイルとの親和性などから、例えば側鎖及び/又は末端にアルコキシ基を有するポリシロキサンを挙げることができる。
一例として、下記式で表されるポリシロキサンを挙げることができる。
Figure 2022077822000001
上記式中、Aはアミノアルキル基を表し、例えばアミノエチル基(-(CHNH)、アミノプロピル基(-(CHNH)、アミノエチルアミノプロピル基(-(CHNH(CHNH)等を表す。
Bはアルコキシ基を表し、例えばメトキシ基(CHO-)、エトキシ基(CO-)等を表す。
上記アルコキシ基を有する乳化剤(界面活性剤)の市販品の一例としては、信越シリコーン(株)製反応性シリコーンオイル(商品名:KF-857、KF-8001、KF-862、KF-858)等を挙げることができるがこれらに限定されない。
アルコキシ基を有する乳化剤は一種又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、アルコキシ基を有する乳化剤は、前述の電気絶縁媒質の質量に対して、1~1.5質量%の割合で配合されることが好ましい。アルコキシ基を有する乳化剤の配合量を電気絶縁媒質の質量に対して1質量%以上とすることにより十分な分散状態を確保し、また1.5質量%以下とすることでポリウレタン粒子の粒子径を好適範囲にコントロールでき、電気粘性流体の特性を好適なものとすることができる。
〈その他乳化剤〉
また本発明にあっては、本発明の効果を損なわない範囲において、上記アルコキシ基を
有する乳化剤以外の、その他乳化剤を併用してもよい。
その他乳化剤としては上記電気絶縁媒質中に可溶性であり、そして例えばアミン、イミダゾリン、オキサゾリン、アルコール、グリコール又はソルビトールから誘導される界面活性剤が挙げられる。
また、上記電気絶縁媒質に可溶性のポリマーも使用することができ、例えば、0.1乃至10質量%のN(窒素原子)及び/又はOH(ヒドロキシ基)含量を有し、並びに25乃至83質量%のC4-24アルキル基を含有し、重量平均分子量が5,000乃至1,000,000であるポリマーなどを挙げることができる。これらのポリマー中のN及びOH官能化合物は、例えば、アミン、アミド、イミド、ニトリロ、5乃至6員のN含有複素環あるいはアルコール、及び、アクリル酸若しくはメタクリル酸のC4-24アルキルエステルを挙げることができる。前記N及びOH官能化合物の例は、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、tert-ブチルアクリルアミド、マレイン酸イミド、アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン及び2-ヒドロキシエチルメタクリレート等である。前記のポリマー乳化剤は、一般に低分子量の界面活性剤に比較して、それらを使用して調製された系が沈降動態に関してより安定であるという利点を有する。
またアミノ変性シリコーンあるいはフッ素変性シリコーンなどの変性シリコーンオイルも使用可能である。
〈電解質〉
本発明に係るポリウレタン粒子は、該粒子中に電解質を含有する。該電解質を含有するとは、該電解質が粒子中に、分子またはイオンの形態で内包される態様、すなわち該粒子中に溶解、分散、あるいは非分散〈偏在〉の状態にあるか、あるいは粒子表面に該電解質が付着した態様であってもよい。なお本発明の電気粘性流体において、前記電気絶縁媒質中に、分子またはイオンの形態にて溶解や分散した、あるいは非分散(偏在)の状態にある電解質が存在していてもよい。
上記電解質としては、リチウム、亜鉛、クロム、銅、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、タングステン等の金属の塩、例えばハロゲン化物が挙げられ、好ましくは、上記金属の塩化物が挙げられる。
特に上記電解質としては、塩化リチウム、塩化亜鉛及びこれらの混合物が好ましい。
〈ポリウレタン粒子の粒子径〉
本発明に係るポリウレタン粒子は、例えば2μm~5μm程度の平均粒子径を有する粒子とすることができる。ポリウレタン粒子の粒子径を上記数値範囲とすることにより、電気粘性効果と分散性の両立を図ることが期待でき、また沈降や再分散性の悪化を防ぐことが期待できる。
〈電気粘性流体の製造方法〉
本発明の電気粘性流体は、例えば、上記電気絶縁媒質、ポリオール類、電解質、乳化剤、及び所望によりその他添加剤(ポリウレタン合成用触媒等)を含む混合物を分散・乳化し、ここに硬化剤であるイソシアネート類を添加することにより製造可能である。
以下に、本発明の電気粘性流体を調製する方法の一例として、図1に示す製造フローチャート(概略)に基づき説明する。
1.秤量、並びに、溶解工程
この工程は、ポリオール類と電解質等を含む溶液(電解質含有ポリオール溶液)と、電気絶縁媒質と乳化剤を含む溶液(電気絶縁媒質含有溶液)を別途に調製する工程である。
調製した電解質含有ポリオール溶液及び電気絶縁媒質含有溶液は、個別に室温で保管し、次工程(乳化)にて混合される。
各溶液の調製を以下に記載する。
1-1.電解質含有ポリオール溶液の調製
ポリオール類と電解質をそれぞれ秤量し、調合瓶(栓付き瓶など)若しくは適量サイズのガラスビーカー・フラスコに添加し、マグネチックスターラーとマグネット撹拌子、若しくはホモジナイザー等の撹拌装置を用いて、各材料を加温撹拌にて混合溶解する。
具体的な操作手順の一例を以下に示す。以下の操作は必要に応じてグローブボックス内で行うことができる。
まず、ポリオール類を栓付き瓶に秤量する。他方、電解質(塩化リチウム、塩化亜鉛等)、使用する場合にはポリウレタン用合成触媒を、それぞれ秤量する。電解質は、その種類によっては潮解性を有する化合物も含まれるため、取り扱いには注意を要する。
次に、ポリオール類を、例えば50℃乃至80℃に加熱撹拌し、所望の温度に到達したことを確認した後、ここに電解質を順次添加する。電解質を複数種使用する場合、例えば電解質として塩化リチウムと塩化亜鉛を用いる場合、まず塩化リチウムをポリオール類に添加する。上記所望の温度を維持したまま、塩化リチウムを混合撹拌し、その外観から目視にて未溶解物や沈殿物などが確認できなくなるまで撹拌溶解を行う。次に塩化亜鉛を添加し、上記所望の温度を維持したまま混合撹拌し、その外観から目視にて未溶解物や沈殿物などが確認できなくなるまで撹拌溶解を行う。ポリウレタン用合成触媒を使用する場合には電解質の溶解後に添加し、上記所望の温度を維持したまま混合撹拌し、電解質含有ポリオール溶液を得る。
撹拌時間は、電解質にあっては未溶解物や沈殿物が確認されず、また各成分がそれぞれ溶解あるいは分散するまで適宜設定され得、例えば全体で8時間以上とすることができる。
上記具体的な操作手順に示すように、2種以上の電解質を組み合わせて使用する際は、段階的に溶解させるのが好ましい。すなわち、1種の電解質を添加して完全に溶解させた後に、次の1種の電解質を添加して完全に溶解させる等の操作を行うのが好ましい。
前記電解質は、最終的にポリウレタン粒子と電気絶縁媒質の合計量(電気粘性流体)に対して電解質(溶解後は金属イオン)の量が例えば0.01ppm以上1500.00ppm以下となる量にて配合することができる。例えば、0.01ppm以上750.00ppm未満の範囲、10ppm以上750.00ppm未満の範囲、あるいは、750.00ppm以上1500.00ppm以下の範囲、800.00ppm以上1500.00ppm以下にて添加することができる。また2種以上の電解質を組み合わせて用いる場合には、それら電解質(溶解後は陽イオン)の合計が上記数値範囲となればよい。
またポリウレタン合成用触媒を使用する場合、上記具体的な操作手順に示すように、好ましくは電解質が完全に溶解した後に系内に添加する。
該触媒としては、アミン系触媒を挙げることができ、具体的には、トリエチルアミン、ベンジルジエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N-エチルモルホリン等が挙げられる。該触媒が使用される場合、最終的に得られるポリウレタン量に対して最大で0.2質量%程度の割合にて配合され得る。ただし多量に添加した場合、触媒による分解反応が起こる虞があるため注意を要する。
1-2.電気絶縁媒質含有溶液の調製
電気絶縁媒質と、アルコキシ基を有する乳化剤(乳化剤1)と、所望によりその他乳化剤(乳化剤2)をそれぞれ秤量し、調合瓶(栓付き瓶など)若しくは適量サイズのガラスビーカー・フラスコに添加し、必要に応じてマグネチックスターラーとマグネット撹拌子、若しくはホモジナイザー等の撹拌装置を用いて、各材料を常温にて混合する。
具体的な操作手順の一例を以下に示す。
まず、電気絶縁媒質(シリコーン油等)を栓付き瓶に秤量する。他方、アルコキシ基を有する乳化剤(乳化剤1)、及び所望によりその他乳化剤(乳化剤2)をそれぞれ秤量し、これら乳化剤を電気絶縁媒質に添加・混合し、電気絶縁媒質含有溶液を得る。
上記アルコキシ基を有する乳化剤(乳化剤1)は、電気絶縁媒質の使用量に対して、1質量%~1.5質量%の量となるように添加することが好適である。
上記の混合溶解に際し、撹拌時の温度は常温(20±10℃)とすることができる。
2.合成準備工程
本工程は、後述する4.仮硬化工程及び5.本硬化工程で使用する硬化剤、すなわちイソシアネート類を準備する工程である。
硬化剤である上述のイソシアネート類は、2種以上を組み合わせて用いることができ、例えばトルエンジイソシアネート(TDI)とポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(p-MDI)を組み合わせて用いることができる。
イソシアネート類を栓付き瓶に秤量し、2種以上のイソシアネート類を使用する場合には、ここに別の種類のイソシアネート類を添加し、混液とすることができる。
なお、秤量・準備した硬化剤(イソシアネート類)は、後述する4.仮硬化工程と5.本硬化工程の2工程において分割して使用することから、例えば4.仮硬化工程に使用する分として予め10%~20%量を取り分け、残りを5.本硬化工程に使用する分として別に取り分けておくことができる。
なお、硬化剤(イソシアネート類)は、その種類によって特定化学物質に指定されていることから、十分な換気下で操作を実施し、また反応性が高い物質であるため、使用した器具等はイソシアネート中和液(例:5%炭酸ナトリウム水溶液と中性洗剤の混合液など)などで中和した後、洗浄に供することが望ましい。
3.乳化工程
本工程は、上記1.の調製工程で得た電解質含有ポリオール溶液と電気絶縁媒質含有溶液を、ホモジナイザー等の撹拌装置や分散機にて分散混合し、電解質含有ポリオール溶液/電気絶縁媒質含有溶液混合物を得た後、該混合物を乳化させ、電気絶縁媒質中にポリオールを分散させたエマルジョン(乳化液)を得る工程である。本工程に用いる撹拌装置や分散機の種類、分散機におけるせん断羽根の種類、回転数(速度)、また撹拌(回転)時間などにより、後の工程で形成されるポリウレタン粒子の平均粒子径を調整することができる。
具体的な操作手順の一例を以下に示す。
まず、1-1.工程で得た電解質含有ポリオール溶液をフラスコに秤量し、ここに、1-2.工程で得た電気絶縁媒質含有溶液を秤量して添加する。
該フラスコを、ウォーターバス等の恒温装置にセットし、ホモジナイザーで撹拌・混合を行い、乳化液を得る。
上記の撹拌・混合に際し、撹拌時の回転数は10,000rpm~20,000rpm程度、撹拌時の温度は例えば40℃前後とすることができ、また撹拌時間は0.5時間程度とすることができるが、これら条件に限定されない。
4.仮硬化(硬化剤添加(1))工程
本工程は、前述の3.乳化工程にて生成した乳化液(未硬化状態のエマルジョン粒子)を硬化させ、半硬化のポリウレタン粒子を得る工程である。本工程において、ポリウレタン粒子を形成するために用いる硬化剤(イソシアネート類)の全量のうち、およそ10%~20%量を使用する。
具体的な操作手順の一例を以下に示す。
上記3.乳化工程で調製した乳化液(エマルジョン)に、例えば上記3.工程と同一の
撹拌(例:ホモジナイザーによる撹拌・混合)を継続させながら、総添加量のおよそ10%~20%量の硬化剤(イソシアネート類)を、チューブポンプ等を用いて滴下添加する。
上記の硬化剤の添加に際して、乳化液は所定温度(例えば50℃以上)となるようにマントルヒーター等の恒温装置にセットして撹拌を継続し、所定温度に到達した後、硬化剤(一部)を添加することができる。また撹拌時間は0.5時間程度とすることができるが、こうした添加・撹拌条件には限定されない。なお、硬化剤の投入初期においては、撹拌が停止しないことを確認するべく、数滴ずつの滴下(5回程度)とすることができる。
5.本硬化(硬化剤添加(2))工程
本工程は、上記の4.仮硬化工程により形成された半硬化のポリウレタン粒子(エマルジョン粒子)をさらに硬化させる工程である。本工程において、ポリウレタン粒子を形成するために用いる硬化剤(イソシアネート類)の全量のうち、前工程で消費したものの残りの量、即ち、全量の80%~90%量を使用する。
具体的な操作手順の一例を以下に示す。
上記の4.仮硬化工程の操作の完了後、容器内(フラスコ等)で撹拌状態にて保管中の半硬化のポリウレタン粒子のエマルジョンに対し、撹拌を継続させたまま硬化剤(イソシアネート類)の残りの量、即ち、全量の80%~90%量を、チューブポンプ等を用いて滴下添加する。
上記の残りの硬化剤の添加に際して、反応熱(イソシアネート反応)により過度な温度上昇を防ぐべく、半硬化のエマルジョンは所定温度(例えば80℃以下)となるように調整して撹拌を継続し、所定温度に到達した後、残りの硬化剤を添加することができる。また撹拌時間は1.0時間程度とすることができるが、こうした添加・撹拌条件には限定されない。添加・撹拌後、液温が70℃程度までに低下した後、撹拌装置(ホモジナイザー等)を停止させ、粗生成物といえる流体を得ることができる。
6.ろ過工程
5.本硬化工程の操作完了後、得られた流体をろ過し、電気粘性流体を得る。ここで、容器内壁への飛散を防ぎ、乾燥屑や不純物を除去する為、2段階で濾過処理を施してもよい。
[電気粘性流体ダンパ]
以下に添付図面を参照して、本発明に係る電気粘性流体ダンパの好ましい実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態によって本発明が対象とする電気粘性流体ダンパを限定することを意図したものではない。
電気粘性流体ダンパは、電気粘性流体を作動流体として用いる減衰力調整式緩衝器である。
図2は、本発明の好ましい実施形態の電気粘性流体ダンパ11の軸線を含む平面による断面図である。
図2を参照すると、電気粘性流体ダンパ11は、内筒12(シリンダ)、外筒13、および中間筒14を有する。便宜上、図2における上下方向を電気粘性流体ダンパ11における上下方向とする。
外筒13の下端部は、ボトムキャップ15によって閉塞される。内筒12は、下端部がボトムバルブ16のバルブボディ17に嵌合され、上端部がロッドガイド18に嵌合される。内筒12と外筒13との間には、環状のリザーバ室19が形成される。リザーバ室19には、本発明に係る電気粘性流体とガスとが封入される。なお、リザーバ室19内のガスは、例えば窒素ガス又はエアである。
内筒12の内側には、ピストン20が摺動可能に設けられる。ピストン20には、ピストンロッド23の下端部が連結される。ピストンロッド23の上端部は、ロッドガイド18を介して外筒13の外部へ延出する。ピストン20は、内筒12内をシリンダ上室21とシリンダ下室22との2室に画分する。ピストン20には、シリンダ上室21とシリンダ下室22とを連通させる縮み側通路24と伸び側通路25とが設けられる。
ここで、電気粘性流体ダンパ11は、ユニフロー構造をなし、一例として複筒式ユニフロー構造を示す。なお電気粘性流体ダンパは、バイフロー構造、単筒式であってもよいが、以下、図2に従い、電気粘性流体ダンパ11がユニフロー構造を有する場合について説明する。
すなわち、電気粘性流体ダンパ11は、ピストンロッド23の縮み行程と伸び行程との両行程で、電気粘性流体を、シリンダ上室21から、内筒12に設けられる通路26を介して、内筒12と中間筒14との間に形成される環状の流路27へ流通させる。当該ユニフロー構造を構成するため、ピストン20の上端面には縮み側逆止弁28が設けられ、ピストン20の下端面には、ディスクバルブ32が設けられる。
縮み側逆止弁28は、ピストンロッド23の縮み行程時に開弁し、縮み側通路24を介するシリンダ下室22からシリンダ上室21への電気粘性流体の流通を許容する。他方、ディスクバルブ32は、ピストンロッド23の伸び行程時にシリンダ上室21内の圧力が予め定められた圧力に達することで開弁し、当該シリンダ上室21内の圧力を、伸び側通路25を介してシリンダ下室22へリリーフする。
図2を参照すると、バルブボディ17は、リザーバ室19とシリンダ下室22とを分画する。バルブボディ17の小径部に嵌合された内筒12の外周には、環状の保持部材29が嵌着される。保持部材29は、中間筒14の下端部を軸方向(上下方向)および径方向に位置決めさせる。保持部材29は、電気絶縁性材料からなり、内筒12、ボトムキャップ15、およびバルブボディ17を、中間筒14に対して電気的に絶縁させる。なお、保持部材29には、内筒12と中間筒14との間に形成される環状の流路27をリザーバ室19に連通させる通路30が形成される。
また逆止弁33は、ピストンロッド23の伸び工程時に開弁し、伸び側通路34を介してリザーバ室19からシリンダ下室22への電気粘性流体の流通を許容する。他方、ディスクバルブ(リリーフ弁)35は、ピストンロッド23の縮み工程時にシリンダ下室22内の圧力が予め定められた圧力に達することで開弁し、当該シリンダ下室22内の圧力を、縮み側通路36を介してリザーバ室19へリリーフする。
一方、中間筒14は、導電性材料からなる。中間筒14の上端部は、内筒12の上端部外周面に嵌着される保持部材31を介して、ロッドガイド18によって径方向に位置決めされる。保持部材31は、電気絶縁性材料からなり、中間筒14を内筒12に対して電気的に絶縁させる。また、中間筒14は、高電圧ドライバ(電圧生成部、図示せず)を介してバッテリ(図示せず)の正極に接続される。すなわち、中間筒14は、流路27内を流通する電気粘性流体に電界(電圧)を印加する正極電極(エレクトロード)を構成する。他方、負極電極(接地電極)として用いられる内筒12は、バルブボディ17、ボトムキャップ15、外筒13、および高電圧ドライバ10を介してグランドに接続される。
なお、図2において、中間筒14に正極電極との電極接続部が設けられ、内筒12に負極電極(接地電極)との第1接地接続部が設けられているが、中間筒14に負極電極(接地電極)との第1接地接続部が設けられ、内筒12に正極電極との電極接続部が設けられてもよく、同様に正極電極との電極接続部は内筒12及び外筒13に設けてもよい。
一方、内筒12と中間筒14の間、及び中間筒14と外筒13の間の流路断面積を比較した場合、電気粘性流体に電圧を印加したときに発生する減衰力は、電極間の通電量(断面積)で決まるため、内筒12と中間筒14の間で電圧を印加するように電極を設けた方が、電極間の断面積が小さいので、より小さい印加電圧、ひいてはより少ない消費電流で同等の減衰力(制動力)を得ることができる。さらに、液温の上昇によって通電量が増大するようなことがあっても、その通電量をより小さく抑制して、電源にかかる負荷をより小さく抑制し、電源が過負荷になることを回避することができる。また、グランドは、アースでもよく、フレーム・グランドや、シグナル・グランドなどでもよい。最終的に、正極電極からの電流が基準電位点に接続すればよい。
本発明によれば、ポリウレタン粒子を含む電気粘性流体において、該ポリウレタン粒子としてポリオール類とイソシアネート類とアルコキシ基を含有する乳化剤を含む混合物の反応生成物を採用することにより、反応系内に不純物として存在する水分量を低減させる、例えば千ppm超のオーダーから数百ppm~数十ppmのレベルにまで水分量を低減させることができる。そしてそれにより、残存水分とイソイアネート類との副反応を抑制し、ポリウレタンの硬化反応が効率よく進むことにより、ポリウレタンの硬化度を向上させ、その結果、電気粘性流体の耐久性(耐熱性)を向上させることができる。電気粘性流体における耐熱性の悪化は減衰力の低下を早めることにつながり得、また、粘度や電流値等にも影響を及ぼし得ることから、本性能の改善は重要課題といえる。
また本発明によれば、水分量を低減させた電気粘性流体を提供することができる。そしてそれにより、電気粘性流体への電圧印加時に、電気粘性流体に流れる電流量の増加を抑制でき、エネルギー消費の低減につながる。
さらに本発明の電気流体粘性ダンパは、水分量を低減させた上記電気粘性流体を用いることにより、作動温度が上昇した場合においても電流量の上昇を抑制でき、より高温域でのダンパの作動が可能となる。
次に、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に示す電気粘性流体の製造フローチャートに従い、電気粘性流体を調製した(製造フローを図3に示す)。
1.秤量、並びに、溶解工程
1-1.電解質含有ポリオール溶液の調製
塩化リチウム、塩化亜鉛、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)を、グローブボックス内で秤量した。
ポリオールを栓付きビンに秤量した。
ポリオールをホットスターラーにて80℃で撹拌し、ここに秤量した塩化リチウムを加え撹拌(約6時間)・溶解し、さらに秤量した塩化亜鉛を加えて撹拌(約4時間)・溶解し、最後に秤量したDABCOを加え撹拌(約1時間)・溶解して電解質含有ポリオール溶液を得た。なお、塩化リチウム、塩化亜鉛、及びDABCOの添加は、それぞれ目視にて未溶解物や沈殿物などがないことを確認した後に次の成分を前記の順にて添加し、未溶解物や沈殿物が確認された場合にはこれらが確認されなくなるまで追加撹拌を繰り返し実施して次の添加に備えるなどして、電解質含有ポリオール溶液を得た。
1-3.電気絶縁媒質(シリコーンオイル)含有溶液の調製
栓付きビンに、電気絶縁媒質としてシリコーンオイル(ジメチルシロキサン)を秤量し、ここに秤量した乳化剤1(アルコキシ基含有の乳化剤:アルコキシ変性ポリシロキサン)、乳化剤2(アルコキシ基非含有の乳化剤:アミノ変性ポリシロキサン、フッ素化アミノ変性ポリシロキサン)、また所望によりさらに潤滑剤(有機ポリシロキサン)を加え、
混合して電気絶縁媒質(シリコーンオイル)含有溶液を得た。
2.合成準備工程
バイアルビン150mLに2,4-ジイソシアネートトルエン(TDI)を秤量し、ここに多量体ジフェニルメタンジイソシアネート(p-MDI)を秤量して加えた。
上記硬化剤(イソシアネート)混液の10%量をバイアルビン30mLに小分けした。
3.乳化工程
1-1.工程で調製した電解質含有ポリオール溶液を丸底フラスコ1Lに秤量し、ここに、1-2.工程で調製した電気絶縁媒質(シリコーンオイル)含有溶液を秤量して加えた。
丸底フラスコ上部をアルミ箔で塞ぎ、これをウォーターバス(液温:約15℃)にセットし、該フラスコ上部からホモジナイザーを差し入れ、18,000rpmにて0.5時間撹拌し、このとき混合溶液(以下、乳化液と称する)が40℃であることを確認した。
4.仮硬化工程
丸底フラスコをマントルヒーターにセットし、ホモジナイザーで18,000rpmにて撹拌した。乳化液が55℃以上となったことを確認した後、チューブポンプを用いて2.で小分けにした硬化剤(イソシアネート)混液を1g/分にて乳化液に加えた。なお、該混液の投入初期は数滴ずつ加え(撹拌が止まらなくなるまで5回程度)、ホモジナイザーを0.5時間後に停止した。
5.本硬化工程
丸底フラスコをフラスコホルダーにセットし、モジナイザーで18,000rpmにて撹拌した。フラスコ中の混合物が80℃以下であることを確認した後、残りの硬化剤(イソシアネート)混液を、チューブポンプを用いて3g/分にて加えた。約1.0時間撹拌を継続し、液温が70℃以下であることを確認した後、ホモジナイザーを停止させ、粗生成物といえる電気粘性流体を得た。
6.ろ過工程
5.本硬化工程終了後、得られた流体をふるい(100μmメッシュ)でろ過し、電気粘性流体を完成した。
本実施例で調製した電気粘性流体の処方(原料・構成比等)の一例を表1に示す(各数値はそれぞれ四捨五入した数値である。)
なお表1は、シリコーンオイル量に対するアルコキシ基を有する乳化剤量を1.5質量%とした処方の一例である。
後述する各試験例においては、シリコーンオイル量に対するアルコキシ基を有する乳化剤量を1質量%~2質量%に変化させた処方にて、電気粘性流体を調製し、各種試験に供した。
Figure 2022077822000002
[試験例1]
調製した種々の電気粘性流体について、水分量、ガラス転移点、電流密度及び平均粒子径を測定した。以下に測定に供した装置及び測定条件等を示す。
〈水分量〉
・カールフィッシャー法(JIS K2275-3)
・測定装置:水分計(京都電子工業(株))
〈ガラス転移点〉
・測定装置:示差走査熱量計 DSC Q2000(TAインスツルメント社)
〈電流密度〉
得られた電気粘性流体に対して、電圧印加時の電流密度(μA/cm)を測定した。・測定装置:Rheometer MCR302(Anton Paar社)
・治具:CC27
・測定温度:30℃
・印加電圧:5kV
・サンプル量:15mL
・測定プログラム:ひずみ分散測定 開始1分後の電流値
〈平均粒子径〉
・測定装置:レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置 LA-350((株)堀場製作所)
なお、平均粒子径は、レーザー回折散乱法によって得られた粒度分布(体積基準)の粒子径D50(メジアン径)の値を示す。
上記測定結果に基づき、調製した電気粘性流体において、測定された水分量の値(横軸)に対するガラス転移点の値(縦軸)を図4に、測定された水分量の値(横軸)に対する
、レオメータに5kVの電圧を印加した時の電流密度の値(縦軸)を図5に、調製に使用した電気絶縁媒質に対する乳化剤1の割合(%)(縦軸)に対する粒子径D50(横軸)を図6に、それぞれ示す。
図4に示すように、電気粘性流体に含まれる水分量が多くなるにつれ、ガラス転移点が低下することが確認された。また、アルコキシ基を有する乳化剤1を用いた処方にて調製した電気粘性流体は、何れも水分量が600ppm以下となった。
ガラス転移点は、電気粘性流体中のポリウレタン粒子の硬化度を評価する指標である。ポリウレタン粒子の硬化度が低いほど、ガラス転移点は低くなる。そして電気粘性流体のガラス転移点が低くなると、電気粘性流体の耐久性が低下する。
本発明にあっては、アルコキシ基を有する乳化剤1の使用により、原材料中に存在する水分を利用して加水分解反応が生じ、その結果、電気粘性流体中の水分量が低減し、硬化剤であるイソシアネート類と残留水分との副反応が抑制できる。その結果、硬化度の高いポリウレタン粒子を得ることが可能となり、ひいては、耐久性に優れる電気粘性流体を得ることができる。
図5中、■で示す実施例は、アルコキシ基を有する乳化剤1を使用した処方にて調製した電気粘性流体を用いた結果である。この電気粘性流体の水分量は600ppm以下と低く、また電気粘性流体の5kV印加時の電流密度は1μA/cmを大きく下回ることが確認された。
一方、水分量が1,000ppmを上回る電気粘性流体は、5kV印加時の電流密度が2μA/cmを超え、また水分量が1,500ppmを超えると電流密度が飛躍的に増大する結果となった(比較例:●)。
図6は、処方1において、電気絶縁媒質(シリコーンオイル)量に対するアルコキシ基を有する乳化剤量を1質量%~2質量%に変化させて調製した電気粘性流体における、ポリウレタン粒子径D50を示す図である。図6に示すように、電気粘性流体の調製時に、電気絶縁媒質(シリコーンオイル)に対するアルコキシ基を有する乳化剤1の割合(質量%)が2質量%に増加すると、電気粘性流体中のポリウレタン粒子の粒子径が急激に小さくなることが確認された。この結果より、アルコキシ基を有する乳化剤の配合割合が電気絶縁媒質に対して2質量%となると、電気粘性流体の特性および粒子径のコントロール性の観点から適さないといえることが推測できる結果となった。
[試験例2:ダンパ実機を用いた電気粘性流体性能試験]
図2に示す電気粘性流体ダンパ11にて、ダンパ温度の変化による電圧印加時の電流値の変化を測定した。
なおダンパ試験機の装置及び測定条件は以下のとおりである。
・測定装置:垂直加振機((株)東京衡機)
・振幅種:sin波
・周波数:1Hz
・振幅幅:±40mm
・印加電圧:5kV
・温度計測:シース熱電対 Kタイプ
・測定温度:30℃~85℃
なお実施例で使用した電気粘性流体ダンパシステムでは、50Wの電源を使用し、最大5,000Vを印加するため、10mAを上限電流値とした。
また測定は、ダンパ試験機を測定温度に設定し、静置状態で安定させた後、電源投入後2分程度を経過した後に行った。
図7に、電気粘性流体ダンパに5kVの電圧を印加した際の、ダンパ温度(横軸)に対する電流値の値(横軸)を示す。なお実施例はアルコキシ基を有する乳化剤1を用いた処
方1の電気粘性流体、比較例は処方3の電気粘性流体を用いた結果を示す。
電気粘性流体は、温度の上昇に応じて粘度(流通抵抗)が減少し電流が流れやすくなり、電圧印加時に電流値が急激に上昇する傾向を示す。
図7に示すように、アルコキシ基を有する乳化剤1を非使用とした比較例の電気粘性流体では、約65℃で上限値の10mAに達する一方、アルコキシ基を有する乳化剤1を用いた実施例の電気粘性流体では、約85℃で上限値に達し、比較例の使用温度範囲より、約20℃高温側でダンパシステムを使用できることが確認された。
11 ERFダンパ(電気粘性流体ダンパ)、12 内筒(シリンダ)、13 外筒、20 ピストン、23 ピストンロッド、14 中間筒(電極)

Claims (4)

  1. 電気絶縁媒質中にポリウレタン粒子が分散された電気粘性流体であって、
    前記ポリウレタン粒子は、分子又はイオンの形態で、該粒子中に内包される、又は該粒子表面に付着した、少なくとも1種類の電解質を含有し、
    前記ポリウレタン粒子は、ポリオール類とイソシアネート類とアルコキシ基を有する乳化剤とを含有する混合物の反応生成物であることを特徴とする電気粘性流体。
  2. 前記アルコキシ基は、メトキシ基又はエトキシ基である、請求項1に記載の電気粘性流体。
  3. 前記混合物中、前記乳化剤は、前記電気絶縁媒質の質量に対して1~1.5質量%の割合で配合されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の電気粘性流体。
  4. 電気絶縁媒質中にポリウレタン粒子が分散された電気粘性流体であって、
    前記ポリウレタン粒子は、分子又はイオンの形態で、該粒子中に内包される、又は該粒子表面に付着した、少なくとも1種類の電解質を含有し、
    前記ポリウレタン粒子は、ポリオール類とイソシアネート類とアルコキシ基を有する乳化剤とを含有する混合物の反応生成物である電気粘性流体を封入したことを特徴とする、電気粘性流体ダンパ。
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