JP2022077356A - 組成物、基材の製造方法及び基材表面の選択的修飾方法 - Google Patents

組成物、基材の製造方法及び基材表面の選択的修飾方法 Download PDF

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優貴 尾崎
Yuki Ozaki
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Abstract

【課題】ケイ素を含む表面領域を選択的に修飾できる組成物を提供すること。【解決手段】基材が有するケイ素含有領域の表面を選択的修飾するための組成物であって、ピロール環の2,3-位及び4,5-位に芳香環が縮合した縮合環構造を有する重合体と、溶剤とを含有する組成物とする。ケイ素含有領域を有する基材の表面に銅めっきを施す際の前処理に用いられる組成物であって、ピロール環の2,3-位及び4,5-位に芳香環が縮合した縮合環構造を有する重合体と、溶剤とを含有する組成物とする。【選択図】なし

Description

本発明は、組成物、基材の製造方法及び基材表面の選択的修飾方法に関する。
半導体製造工程においては、大容量化や高速化等の要求に応えるべく、更なる微細化が検討されている。また、微細加工を実現するべく、新たな材料を開発する試みが種々行われている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、シラノール基やアルコキシシリル基等の官能基を末端に導入した重合体により、ケイ素を含む表面領域を簡便に、高選択的かつ高密度に修飾する技術が開示されている。
国際公開第2018/043305号
半導体製品の多用途化等に伴い、半導体プロセスの開発においては更なる高性能化の要求が高まっている。これに伴い、半導体加工プロセスにおいて、ケイ素を含む表面領域を選択的に修飾可能な新たな材料が求められている。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ケイ素を含む表面領域を選択的に修飾することができる組成物を提供することを一つの目的とする。
上記課題を解決するべく、本発明によれば以下の手段が提供される。
[1] 基材が有するケイ素含有領域の表面を選択的修飾するための組成物であって、ピロール環の2,3-位及び4,5-位に芳香環が縮合した縮合環構造を有する重合体と、溶剤とを含有する、組成物。
[2] ピロール環の2,3-位及び4,5-位に芳香環が縮合した縮合環構造を有する構造単位と、熱解離性基、酸無水物基及びマレイミド基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む構造単位とを有する重合体と、溶剤と、を含有する、組成物。
[3] ケイ素含有領域を有する基材の表面に銅めっきを施す際の前処理に用いられる組成物であって、ピロール環の2,3-位及び4,5-位に芳香環が縮合した縮合環構造を有する重合体と、溶剤とを含有する、組成物。
[4] ケイ素含有領域の表面が選択的修飾された基材を製造する方法であって、上記[1]~[3]のいずれかの組成物を基材表面に塗布する工程と、前記基材表面に塗布された組成物から溶剤を除去する工程と、を含む、製造方法。
[5] 上記[1]~[3]のいずれかの組成物を、ケイ素含有領域を有する基材の表面に塗布する工程と、前記表面に塗布された組成物から溶剤を除去する工程と、を含む、基材表面の選択的修飾方法。
本発明の組成物によれば、ケイ素を含む表面領域を選択的に修飾することができる。
以下、実施形態に関連する事項について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
《組成物》
本開示の組成物(以下、「本組成物」ともいう)は、ピロール環の2,3-位及び4,5-位のそれぞれに芳香環が縮合した縮合環構造(以下、「縮合環構造(a)」ともいう)を有する重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)と、[B]溶剤とを含有する。本組成物は、例えば、半導体プロセスにおいて、ケイ素を含む領域(以下、「ケイ素含有領域」ともいう)を有する基材の表面修飾のための組成物として、あるいはケイ素含有領域の表面に有機膜を形成するための組成物として用いることができる。以下、本組成物に含まれる各成分、及び必要に応じて配合されるその他の成分について詳述する。
<[A]重合体>
(縮合環構造(a))
[A]重合体が有する縮合環構造(a)において、ピロール環に縮合する芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。このような共役アミンと芳香環からなる塩基性に乏しい構造が、ケイ素含有領域を選択的に修飾する構造として好ましい。当該芳香環には、置換基が導入されていてもよい。置換基としては、例えば、フッ素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、ニトロ基等が挙げられる。縮合環構造(a)は、好ましくは、カルバゾール環、ベンゾカルバゾール環又はジベンゾカルバゾール環を有する構造であり、具体的には、下記式(a-1)で表される構造であることが好ましい。
Figure 2022077356000001
(式(a-1)中、R及びRは、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、又はニトロ基である。a及びbは、それぞれ独立して、0又は1である。m及びnは、それぞれ独立して、0~6の整数である。mが2以上の場合、式中の複数のRは、互いに同一の基又は異なる基である。nが2以上の場合、式中の複数のRは、互いに同一の基又は異なる基である。「*」は結合手であることを表す。)
上記式(a-1)において、R及びRの炭素数1~5のアルキル基及び炭素数1~5のアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状でもよい。当該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基等が挙げられる。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。R及びRは、これらのうち好ましくは、フッ素原子、メチル基、tert-ブチル基、メトキシ基又はニトロ基である。
a及びbは、上記式(a-1)で表される構造を重合体中に導入しやすい点、及びモノマーの入手容易性の点で、好ましくは0である。m及びnは、好ましくは0~4、より好ましくは0~2である。
[A]重合体における縮合環構造(a)の位置は特に限定されない。基材(より具体的には、ケイ素含有領域)に対する吸着性が高い重合体を得る観点から、[A]重合体は、縮合環構造(a)を側鎖に有していることが好ましく、縮合環構造(a)を側鎖に有する構造単位(以下、「構造単位(U1)」ともいう)を有していることが特に好ましい。構造単位(U1)は、好ましくは、下記式(1)で表される構造単位である。なお、本明細書において「主鎖」とは、重合体の原子鎖のうち最も長い「幹」の部分をいう。「側鎖」とは、重合体の「幹」から分岐した部分をいう。
Figure 2022077356000002
(式(1)中、R、R、a、b、m及びnは、上記式(a-1)と同義である。)
上記式(1)で表される構造単位を有する重合体は、[A]重合体の製造に際し、縮合環構造(a)を有する単量体を用いることにより容易に得ることができる。縮合環構造(a)を有する単量体の具体例としては、例えば、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルベンゾカルバゾール、N-ビニルジベンゾカルバゾール、2-フルオロ-9-ビニルカルバゾール、2-ニトロ-9-ビニルカルバゾール、2-メトキシ-9-ビニルカルバゾール等を挙げることができる。
[A]重合体において、構造単位(U1)の含有量は、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、1モル%以上であること好ましく、3モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることが更に好ましい。構造単位(U1)の含有量が1モル%以上であると、ケイ素含有領域への吸着性を十分に確保できる点で好適である。また、構造単位(U1)の含有量は、良好な基質選択性を確保する観点から、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、30モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることが更に好ましい。構造単位(U1)の含有量が上記範囲内であると、[A]重合体中に吸着基が均等に導入されることにより被覆膜に存在する吸着基のムラを抑制でき、永久膜としての使用も可能になる。なお、[A]重合体が有する構造単位(U1)は、1種でもよく、2種以上であってもよい。
(熱解離性基及び加水分解性基)
[A]重合体は更に、熱解離性基及び加水分解性基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基(以下、「不活性基(b)」ともいう)を有していることが好ましい。[A]重合体が不活性基(b)を有する場合、本組成物による表面修飾後(すなわち、有機膜形成後)に加熱処理又は加水分解処理を施すことにより、当該有機膜の表面に更に形成された金属膜との密着性を高めることができる点で好適である。
点で好適である。
・熱解離性基
[A]重合体が有する熱解離性基は、好ましくは、活性水素基を保護する保護基である。この場合、熱付与によって熱解離性基が解離することにより、重合体中に活性水素基が生成される。活性水素基としては、例えば、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、チオール基等を挙げることができる。これらのうち、金属膜と強固な共有結合を形成し、密着性が高い有機膜を得ることができる点で、活性水素基は、フェノール性水酸基又はカルボキシル基であることが好ましく、酸性官能基であるカルボキシル基がより好ましい。ここで、本明細書において「フェノール性水酸基」とは、芳香環に水酸基が直接結合した構造を有する基である。当該芳香環は、ベンゼン環又はナフタレン環であることが好ましい。
[A]重合体が熱解離性基を有する場合、[A]重合体は、構造単位(U1)と共に、熱解離性基を有する構造単位(以下、「構造単位(U2)」ともいう)を有していることが好ましい。具体的には、構造単位(U2)は、基「-COOX」又は基「-Ar-OX」(ただし、X及びXは熱解離性基である。Arは2価の芳香環基である。)を有する構造単位であることが好ましい。
基「-COOX」の具体例としては、下記式(X-1)で表される構造、カルボン酸のアセタールエステル構造、カルボン酸のケタールエステル構造等が挙げられる。
Figure 2022077356000003
(式(X-1)中、R、R及びRは、次の(1)又は(2)である。(1)R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基である。(2)R及びRは、互いに合わせられR及びRが結合する炭素原子とともに構成される炭素数4~20の脂環式炭化水素構造又は環状エーテル構造を表す。Rは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基又は炭素数6~20のアリール基である。「*」は結合手であることを表す。)
上記式(X-1)で表される構造の具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基、1-シクロペンチルエトキシカルボニル基、1-シクロヘキシルエトキシカルボニル基、1-ノルボルニルエトキシカルボニル基、1-フェニルエトキシカルボニル基、1-(1-ナフチル)エトキシカルボニル基、1-ベンジルエトキシカルボニル基、1-フェネチルエトキシカルボニル基等を挙げることができる。
カルボン酸のアセタールエステル構造の具体例としては、例えば、1-メトキシエトキシカルボニル基、1-エトキシエトキシカルボニル基、1-プロポキシエトキシカルボニル基、1-ブトキシエトキシカルボニル基、1-シクロヘキシルオキシエトキシカルボニル基、2-テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基、1-フェノキシエトキシカルボニル基、2-テトラヒドロフラニルオキシカルボニル基、2-テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
カルボン酸のケタールエステル構造の具体例としては、1-メチル-1-メトキシエトキシカルボニル基、1-メチル-1-エトキシエトキシカルボニル基、1-メチル-1-プロポキシエトキシカルボニル基、1-メチル-1-ブトキシエトキシカルボニル基、1-メチル-1-シクロヘキシルオキシエトキシカルボニル基、2-(2-メチルテトラヒドロフラニル)オキシカルボニル基、2-(2-メチルテトラヒドロピラニル)オキシカルボニル基、1-メトキシシクロペンチルオキシカルボニル基、1-メトキシシクロヘキシルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
基「-Ar-OX」におけるXの具体例としては、メチル基、tert-ブチル基又はベンジル基等の1価の炭化水素基;メトキシメチル基、エトキシメチル基又はエトキシエチル基等のアセタール基;アセチル基又はベンゾイル基等のアシル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基又はtert-ブチルジメチルシリル基等のシリル基等を挙げることができる。
Arは、置換又は無置換のフェニレン基又はナフチレン基であることが好ましい。Arが有していてもよい置換基としては、フッ素原子、ニトロ基等が挙げられる。
構造単位(U2)を構成する単量体は、構造単位(U1)を構成する単量体と共重合可能であることが好ましく、具体的には、重合性炭素-炭素二重結合を有する単量体であることが好ましい。構造単位(U2)を構成する単量体としては、例えば、3-ビニル安息香酸-tert-ブチルエステル、4-ビニル安息香酸-tert-ブチルエステル、4-ビニル安息香酸-1-エトキシエチルエステル、3-ビニル安息香酸-1-プロポキシエチルエステル、4-ビニル安息香酸-1-プロポキシエチルエステル、4-ビニル安息香酸-1-シクロヘキシルオキシエチルエステル、4-ビニル安息香酸-1-メチル-1-メトキシエチルエステル、4-ビニル安息香酸-1-メチル-1-シクロヘキシルオキシエチルエステル等を挙げることができる。[A]重合体の製造に際し、構造単位(U2)を構成する単量体としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
[A]重合体において、構造単位(U2)の含有量は、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%以上であること好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることが更に好ましい。また、構造単位(U2)の含有量は、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、70モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましく、55モル%以下であることが更に好ましい。構造単位(U2)の含有量が上記範囲であると、本組成物により形成された有機膜と、当該有機膜の表面に形成された金属膜とが多点共有結合を形成できるため、密着性を十分に高くできる点で好適である。[A]重合体が有する構造単位(U2)は、1種でもよく、2種以上であってもよい。
・加水分解性基
[A]重合体が加水分解性基を有する場合、当該加水分解性基は、水との接触により加水分解されて活性水素基を有する重合体を得ることができればよく、特に限定されない。加水分解反応をコントロールしやすい点で、[A]重合体が有する加水分解性基は、アルカリ条件下において加水分解される基であることが好ましく、金属膜に対する密着性が高い有機膜を得ることができる点で、アルカリ条件下での加水分解によりカルボキシル基又はフェノール性水酸基を生成する基であることがより好ましい。加水分解性基の具体例としては、カルボキシル基を生成する基として、酸無水物基、マレイミド基等を;フェノール性水酸基を生成する基として、アセチルフェニル基、ベンゾイルフェニル基、tert-ブトキシカルボニルオキシフェニル基等を、それぞれ挙げることができる。これらのうち、[A]重合体が有する加水分解性基は、カルボキシル基を生成する基が好ましく、酸無水物基及びマレイミド基よりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
[A]重合体の合成に際し、加水分解性基を有する単量体を用いることにより、加水分解性基を有する構造単位(以下、「構造単位(U3)」ともいう)を有する重合体を得ることができる。構造単位(U3)を構成する単量体は、構造単位(U1)を構成する単量体と共重合可能であることが好ましく、具体的には、重合性炭素-炭素二重結合を有する単量体であることが好ましい。構造単位(U3)を構成する単量体としては、例えば、無水マレイン酸、マレイミド、4-アセトキシスチレン、4-ベンゾイルオキシスチレン、tert-ブトキシカルボニルオキシスチレン等を挙げることができる。[A]重合体の製造に際し、構造単位(U3)を構成する単量体としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[A]重合体において、構造単位(U3)の含有量は、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%以上であること好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることが更に好ましい。また、構造単位(U3)の含有量は、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。構造単位(U3)の含有量が上記範囲であると、本組成物により形成された有機膜と、当該有機膜の表面に形成された金属膜とが多点共有結合を形成できるため、密着性を十分に高くできる点で好適である。[A]重合体が有する構造単位(U3)は、1種でもよく、2種以上であってもよい。
[A]重合体は、縮合環構造(a)を有する構造単位(U1)と、熱解離性基及び酸無水物基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む構造単位とを有する重合体(以下、「重合体(As)」ともいう)であることが、基質選択性が高く、かつ金属膜との密着性に優れた有機膜を形成できる点で特に好ましい。なお、重合体(As)を含む組成物によれば、縮合環構造(a)が基材のケイ素含有領域(例えば、シラノール基)に吸着することにより、重合体(As)によりケイ素含有領域が表面修飾されるとともに、表面修飾後の加熱処理又は加水分解処理によって、組成物により形成された有機膜が親水表面になることにより、当該有機膜の表面に形成された金属膜との密着性を高くできると考えられる。こうした重合体(As)は、例えば、酸化ケイ素膜等といったケイ素を含む基材の表面処理剤や、ケイ素を含む基材と金属膜との間に配置される薄膜を形成するための組成物等の成分として有用である。
(架橋性基)
[A]重合体は、更に架橋性基を有していてもよい。本明細書において「架橋性基」とは、熱付与等によって同種の基同士で反応して共有結合を形成する基をいう。[A]重合体が架橋性基を有することにより、膜強度及び耐熱性の高い有機膜を形成できる点で好適である。架橋性基としては、例えば、炭素-炭素不飽和結合を有する基、芳香環とシクロブタン環との縮合環構造を有する基、環状エーテル基、環状カーボネート基等が挙げられる。
架橋性基の具体例としては、炭素-炭素不飽和結合を有する基として、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基等を;芳香環とシクロブタン環との縮合環構造を有する基として、例えばシクロブタン環とベンゼン環との縮合環構造を有する基、シクロブタン環とナフタレン環との縮合環構造を有する基等を;環状エーテル基として、例えばオキシラニル基、オキセタニル基等を、それぞれ挙げることができる。これらのうち、加熱により架橋構造が形成されやすい点、並びに膜強度及び耐熱性をより高くできる点で、[A]重合体が有する架橋性基は、芳香環とシクロブタン環との縮合環構造を有する基であることが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルを包含する意味である。「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルを包含する意味である。
[A]重合体が架橋性基を有する場合、[A]重合体は、構造単位(U1)とは別に、架橋性基を有する構造単位(以下、「構造単位U4」ともいう)を有していることが好ましい。構造単位(U4)の好ましい具体例としては、下記式(5)で表される構造単位が挙げられる。なお、下記式(5)で表される構造は、ベンゼン環、ナフタレン環及びシクロブタン環のうちの1種が1個以上のRを有していてもよく、2種以上の環が1個以上のRを有していてもよいことを表す。
Figure 2022077356000004
(式(5)中、Rは、フッ素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、又はニトロ基である。cは、0又は1である。kは、0~6の整数である。kが2以上の場合、式中の複数のRは、互いに同一の基又は異なる基である。)
[A]重合体が構造単位(U4)を有する場合、構造単位(U4)の含有量は、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、1モル%以上であること好ましく、3モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることが更に好ましい。構造単位(U4)の含有量を1モル%以上とすることにより、架橋構造を十分に導入できる点で好適である。また、構造単位(U4)の含有量は、有機膜の靭性を確保する観点から、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。なお、[A]重合体が有する構造単位(U4)は、1種でもよく、2種以上であってもよい。
(その他の構造単位)
[A]重合体は、構造単位(U1)と共に、構造単位(U1)~(U4)とは異なる他構造単位(以下、「その他の構造単位」ともいう)を有していてもよい。その他の構造単位は、構造単位(U1)と共重合可能であればよく、特に限定されない。その他の構造単位を構成する単量体は、重合性炭素-炭素不飽和結合を有する単量体が好ましく、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミド化合物、複素環構造を有するビニル化合物、共役ジエン化合物、窒素含有ビニル化合物、アルケン、ビニルシクロアルカン、シクロアルケン、及び不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体を挙げることができる。
上記単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル等を;
脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸2-メチルシクロへキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]で環-8-イル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,5]デカン-8-イルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等を;
芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等を;
芳香族ビニル化合物として、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、t-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルアミノメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-t-ブチルスチレン、3-t-ブチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン等を;
N-置換マレイミド化合物として、N-シクロヘキシルマレイミド、N-シクロペンチルマレイミド、N-(2-メチルシクロヘキシル)マレイミド、N-(4-メチルシクロヘキシル)マレイミド、N-(4-エチルシクロヘキシル)マレイミド、N-(2,6-ジメチルシクロヘキシル)マレイミド、N-ノルボルニルマレイミド、N-トリシクロデシルマレイミド、N-アダマンチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-エチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジメチルフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ナフチルマレイミド等を;
複素環構造を有するビニル化合物として、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロピラニル、(メタ)アクリル酸5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イルメチル、(メタ)アクリル酸5-メチル-1,3-ジオキサン-5-イルメチル、(メタ)アクリル酸(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル、2-(メタ)アクリロキシメチル-1,4,6-トリオキサスピロ[4,6]ウンデカン、(メタ)アクリル酸(γ-ブチロラクトン-2-イル)、(メタ)アクリル酸グリセリンカーボネート、(メタ)アクリル酸(γ-ラクタム-2-イル)、N-(メタ)アクリロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N-ビニル-2-ピロリドン、ビニルピリジン等を;
共役ジエン化合物として、1,3-ブタジエン、イソプレン等を;窒素含有ビニル化合物として、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル等を;
アルケンとして、プロペン、ブテン、ペンテン等を;
ビニルシクロアルカンとして、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン等を;
シクロアルケンとして、シクロペンテン、シクロヘキセン等を;
不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物として、イタコン酸ジエチル等を、それぞれ挙げることができる。
その他の構造単位を構成する単量体としては、上記の中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物、アルケン、ビニルシクロアルカン、及びシクロアルケンよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
[A]重合体において、その他の構造単位の含有量は、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましく、60モル%以下であることが更に好ましい。なお、[A]重合体が有するその他の構造単位は、1種でもよく、2種以上であってもよい。
([A]重合体の製造方法)
[A]重合体は、例えば、上述した各構造単位を導入可能な単量体を用い、適当な溶媒中、重合開始剤等の存在下で、ラジカル重合等の公知の方法に従って製造することができる。ラジカル重合による場合、[A]重合体の合成を簡便に行うことができ、組成物の低コスト化を図ることができる点で好ましい。[A]重合体を得るための重合の態様は特に限定されず、ランダム重合、ブロック共重合等が挙げられる。
重合開始剤としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ化合物が挙げられる。重合開始剤の使用量は、反応に使用する単量体の全量100質量部に対して、0.01~30質量部であることが好ましい。重合溶媒としては、例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、炭化水素類等を挙げることができる。重合溶媒の使用量は、反応に使用する単量体の合計量が、反応溶液の全体量に対して、0.1~60質量%になるような量にすることが好ましい。
重合において、反応温度は、通常、30℃~180℃である。反応時間は、重合開始剤及び単量体の種類や反応温度に応じて異なるが、通常、0.5~10時間である。重合反応により得られた重合体は、反応溶液に溶解された状態のまま、組成物の調製に用いられてもよいし、反応溶液から単離された後、組成物の調製に用いられてもよい。重合体の単離は、例えば、反応溶液を大量の貧溶媒中に注ぎ、これにより得られる析出物を減圧下乾燥する方法、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法等の公知の単離方法により行うことができる。
[A]重合体が、縮合環構造(a)を有する単量体とその他の単量体とからなる共重合体である場合、[A]重合体は、縮合環構造(a)を分子内に不規則に有していてもよく、縮合環構造(a)を有する単量体により構成されたブロックを有していてもよい。[A]重合体が、縮合環構造(a)が分子内に不規則に導入されたランダム共重合体である場合、[A]重合体の1分子内に縮合環構造(a)が均等に導入されることによって、本組成物により形成された有機膜がケイ素含有領域に対し多点吸着し、これにより[A]重合体による表面修飾を均質かつ高密度に行うことができる点で好適である。
[A]重合体につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、2000以上であることが好ましい。Mwが2000以上であると、耐熱性や耐薬品性等が十分に高い有機膜を得ることができる点で好ましい。Mwは、より好ましくは5000以上であり、更に好ましくは6000以上であり、特に好ましくは7000以上である。また、Mwは、成膜性を良好にする観点から、好ましくは50000以下であり、より好ましくは30000以下であり、更に好ましくは20000以下であり、特に好ましくは15000以下である。
[A]重合体において、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.5以下が更に好ましい。
<[B]溶剤>
[B]溶剤は、[A]重合体及び必要に応じて配合されるその他の成分を溶解又は分散可能であって、かつ各成分と反応しない有機溶媒であることが好ましい。[B]溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤等を挙げることができる。
これらの具体例としては、アルコール系溶剤として、4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール等の炭素数1~18の脂肪族モノアルコール系溶剤;シクロヘキサノール等の炭素数3~18の脂環式モノアルコール系溶剤;1,2-プロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル等の炭素数3~19の多価アルコール部分エーテル系溶剤等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶剤;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶剤;ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶剤等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、2-ヘプタノン(メチル-n-ペンチルケトン)、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶剤;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶剤;2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の環状アミド系溶剤;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶剤等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、酢酸n-ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶剤;プロピレングリコールアセテート等の多価アルコールカルボキシレート系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶剤;γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン系溶剤;シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶剤;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶剤等が挙げられる。
炭化水素系溶剤としては、n-ペンタン、n-ヘキサン等の炭素数5~12の脂肪族炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の炭素数6~16の芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
[B]溶剤は、これらのうち、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤及びエステル系溶剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ケトン系溶剤及びエステル系溶剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。中でも、[B]溶剤がケトン系溶剤とエステル系溶剤とを含む混合溶剤であることが、溶解性の観点から好ましい。[B]溶剤がケトン系溶剤とエステル系溶剤とを含む混合溶剤である場合、具体的には、[B]溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン及びメチル-n-プロピルケトンよりなる群から選択される少なくとも1種と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを含む混合溶剤であることが特に好ましい。[B]溶剤としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[B]溶剤としてケトン系溶剤とエステル系溶剤とを含む混合溶剤を使用する場合、ケトン系溶剤(X)及びエステル系溶剤(Y)の比率(質量比)は特に限定されないが、ケトン系溶剤とエステル系溶剤との合計量100質量部(X+Y)に対して、エステル系溶剤(Y)が20~95質量部となるようにすることが好ましく、30~90質量部となるようにすることがより好ましい。
本組成物に含まれる[A]重合体の量は、[A]重合体と[B]溶剤との合計量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましい。[A]重合体の含有量が0.1質量%以上であると、[A]重合体によるケイ素含有領域の表面修飾を十分に行うことができる。また、[A]重合体の含有量は、[A]重合体と[B]溶剤との合計量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。[A]重合体の含有量が30質量%以下であると、有機膜の膜厚が過大となりすぎず、また、本組成物の粘度が高くなりすぎず、良好な塗布性を確保することができる。[A]重合体としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<その他の成分>
本組成物は、上述した[A]重合体及び[B]溶剤に加え、これら以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう)を更に含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、縮合環構造(a)を有しない重合体(以下、「他の重合体」ともいう)、界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等)、酸化防止剤等を挙げることができる。その他の成分の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で各成分に応じて適宜選択することができる。
他の重合体としては、例えば、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、ポリオルガノシロキサン、オレフィン系重合体等を挙げることができる。本組成物が他の重合体を含む場合、他の重合体の含有量は、ケイ素含有領域の表面修飾が十分に行われるようにする観点から、本組成物に含まれる重合体成分の全量に対して、75質量%以下とすることが好ましく、60質量%以下とすることがより好ましい。なお、他の重合体としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本組成物は、その固形分濃度(組成物中の[B]溶剤以外の成分の合計質量が、組成物の全質量に対して占める割合)は、粘性や揮発性等を考慮して適宜に設定することができる。本組成物の固形分濃度は、好ましくは0.1~30質量%の範囲である。固形分濃度が0.1質量%以上であると、有機膜の膜厚を十分に確保できる点で好適である。また、固形分濃度が30質量%以下であると、有機膜の膜厚が過大となりすぎず、さらに本組成物の粘性を適度に高くできることによって良好な塗布性を確保できる点で好適である。本組成物の固形分濃度は、より好ましくは0.5~20質量%であり、更に好ましくは0.7~10質量%である。
《基材表面の選択的修飾方法及び基材の製造方法》
本組成物を用いて、ケイ素含有領域を有する基材の表面処理を行うことにより、当該基材のケイ素含有領域を選択的に修飾することができる。したがって、本組成物は、基材が有するケイ素含有領域の表面を選択的修飾するための組成物として有用である。具体的には、以下の工程1及び工程2を含む方法により、ケイ素含有領域の表面が選択的修飾された基材を得ることができる。
(工程1)本組成物を基材表面に塗布する工程。
(工程2)基材表面に塗布された組成物から溶剤を除去する工程。
以下、各工程について詳細に説明する。
[工程1:塗布工程]
本工程では、表面処理の対象とする基材の表面に本組成物を塗布する。基材としては、その表層の少なくとも一部にケイ素含有領域を有する基材を用いることができる。ケイ素含有領域は、シラノール基(Si-OH)、Si-H又はSi-Nを表面に有していることが好ましく、例えば、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸窒化物等の半導体材料(SiO、SiOC、Si、SiNx、SiON等)を含む領域とすることができる。[A]重合体による表面修飾を高密度に行うことができる点で、ケイ素含有領域は、表面にシラノール基を有することが好ましい。本組成物を塗布する方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法等を挙げることができる。これらの中でも、スピンコート法、スリットダイ塗布法又はバー塗布法により本組成物の塗布を行うことが好ましい。
本組成物を塗布する基材としては、基材表面に、ケイ素含有領域と、ケイ素含有領域とは異なる材料により形成されたその他の領域とを有する基材を用いることができる。その他の領域は、本組成物によって表面修飾されない領域であればよく、特に限定されないが、Si-OH、Si-H及びSi-Nを表面に有しない領域が好ましく、金属を含む領域(以下、「金属含有領域」ともいう)であることが特に好ましい。
金属含有領域に含まれる金属としては、特に限定されないが、例えば、銅、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、スズ、タングステン、ジルコニウム、チタン、タンタル、ゲルマニウム、モリブデン、ルテニウム、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル等が挙げられる。これらのうち、銅、コバルト、タングステン、タンタル及びルテニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。金属含有領域に含まれる金属は、金属単体であってもよく、合金、導電性窒化物、金属酸化物等であってもよい。
本組成物を塗布する基材において、塗布面の形状は特に限定されず、例えば、平面状、弧状、凹状、凸状、凹凸状等が挙げられる。また、塗布面におけるケイ素含有領域とその他の領域との配置の形態についても特に限定されない。例えば、ケイ素含有領域とその他の領域(例えば、金属含有領域)とが隣接した状態で並べて配置されていてもよく、ケイ素含有領域及び金属含有領域のうち一方が底面又は天井面を構成し、他方が側面を構成していてもよい。また、ケイ素含有領域及び金属含有領域のうち一方の領域内に他方の領域が点状に多数配置されていてもよい。
なお、本組成物を塗布する基材の表面には、例えば、H、NとHとの混合ガス、Oガス等を用いたプラズマ処理や、基材表面を親水化するためのウエット改質処理等の前処理が施されていてもよい。ケイ素含有領域を表面に有する基材にプラズマ処理を施すことによってケイ素含有領域の表面にSi-OH、Si-H及びSi-Nの少なくともいずれかを十分に生成させることが、塗布性を向上させるとともに、本組成物による表面修飾を十分に促進させる観点から好ましい。
[工程2:溶剤除去工程]
本工程では、好ましくは加熱処理(第1加熱処理)を行うことにより、基材表面に塗布した組成物から溶剤を除去する。これにより、[A]重合体を含む有機膜がケイ素含有領域の表面に形成され、ケイ素含有領域が選択的修飾される。基材の加熱処理は、例えばオーブンやホットプレート等の加熱装置を用いて行うことができる。本工程の加熱処理(第1加熱工程)において、加熱温度は、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、更に好ましくは120℃以上である。また、加熱温度は、好ましくは230℃以下であり、より好ましくは200℃以下であり、更に好ましくは180℃以下である。加熱時間は、好ましくは0.5~60分であり、より好ましくは1~30分である。形成される有機膜の膜厚は、通常0.1~20μmであり、1~15μmが好ましい。
なお、未吸着の[A]重合体等を除去するために、有機膜が形成された基材表面に対し、有機溶媒による洗浄や流水洗浄等のリンス処理を行ってもよい。リンス液として使用する有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、及びこれらのうちの2種以上の混合溶剤等を挙げることができる。
[その他の工程]
本開示の方法は、上記工程1及び工程2に加え、更に以下の工程を含んでいてもよい。
(工程3)[A]重合体に導入された不活性基から活性水素基を生成させる工程。
(工程4)溶剤の除去後に、基材表面に銅めっきを施す工程。
工程3は、以下の工程3-1又は工程3-2であることが好ましい。
(工程3-1)溶剤を除去した後の基材を加熱する工程。
(工程3-2)溶剤を除去した後の基材と水とを接触させる工程。
[工程3-1:加熱工程(第2加熱工程)]
[A]重合体が熱解離性基を有する場合、本組成物によりケイ素含有領域が表面修飾された基材に対し、加熱処理(第2加熱処理)を行うことが好ましい。この加熱処理により、ケイ素含有領域に吸着する[A]重合体から熱解離性基を解離させ、活性水素基を生成させることができる。本工程の加熱条件について、加熱温度(以下、「第2加熱温度」ともいう)は、上記工程2の加熱処理における加熱温度(以下、「第1加熱温度」ともいう)よりも高いことが好ましい。具体的には、第1加熱温度を、[A]重合体が有する熱解離性基の解離温度よりも低い温度とし、第2加熱温度を、当該解離温度よりも高い温度とすることが好ましい。
第2加熱温度は、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは120℃以上であり、更に好ましくは130℃以上である。また、熱による基材の変形等を抑制する観点から、第2加熱温度は、好ましくは300℃以下であり、より好ましくは280℃以下であり、更に好ましくは260℃以下である。第2加熱処理における加熱時間は、好ましくは0.5~60分であり、より好ましくは1~30分である。
[工程3-2:加水分解工程]
[A]重合体が加水分解性基を有する場合、本組成物によりケイ素含有領域が表面修飾された基材に対し、加水分解処理を行うことが好ましい。この加水分解処理により、ケイ素含有領域に吸着する[A]重合体の加水分解性基において加水分解反応が起こり、活性水素基を生成させることができる。基材と水とを接触させる方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法等の適宜の方法が挙げられる。接触時間は、例えば0.5~12時間である。
上記加水分解反応は、必要に応じて酸又はアルカリの存在下で行ってもよい。例えば、加水分解性基が酸無水物基又はマレイミド基である場合、本組成物によりケイ素含有領域が表面修飾された基材と、水と、アルカリとを接触させることが好ましい。
アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。アルカリ水溶液としては、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液、又は各種有機溶媒を少量含むものを使用してもよい。アルカリ水溶液におけるアルカリの濃度は、0.1~30質量%であることが好ましい。
[工程4:めっき工程]
本工程では、本組成物によりケイ素含有領域が表面修飾された基材に対して銅めっきを施す。銅めっきを施す基材は、本組成物により形成された有機膜と銅めっき膜との密着性を高くできる点で、工程3により得られた基材、すなわち、本組成物によりケイ素含有領域が表面修飾された基材に対して加熱処理又は加水分解処理を行った後の基材であることが好ましい。めっき方法は特に限定されず、公知の電解めっき、無電解めっき、溶融めっき、真空めっき、気相めっき等により行うことができる。半導体製造工程に適用する場合、これらのうち、電解めっき又は無電解めっきによることが好ましい。
《銅めっき用前処理剤》
[A]重合体と[B]溶剤とを含有する本組成物は、ケイ素含有領域を有する基材表面に銅めっきを施す際の前処理剤として有用である。特に、[A]重合体が、縮合環構造(a)と共に、熱解離性基及び加水分解性基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する場合、本組成物を用いて有機膜を形成した後に当該有機膜に対し加熱処理又は加水分解処理を行うことにより、有機膜の表面に形成した銅めっき膜に対して高い密着性を示す有機膜を得ることができる点で好適である。
以上説明した本組成物は、基材が有するケイ素含有領域に対し高い基質選択性を示すことから、ケイ素含有領域の表面修飾を行うための組成物、あるいはケイ素含有領域の表面に膜を形成するための組成物として有用である。こうした本組成物は、例えば、半導体製造分野において、レジストパターンを用いた配線プロセスや、多層配線における配線プロセス(例えば、金属/low-k配線プロセス)等で用いられる表面処理剤や膜形成用組成物;異種材料同士を接合するための接着剤や分子接合剤;等とすることができる。例えば、バリアメタル代替や、メタル由来のイオン性物質の拡散を防止する永久有機膜の形成用材料として本組成物を用いることができる。
以下、実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、各物性値の測定方法は以下のとおりである。
[重量平均分子量及び数平均分子量]
重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により東ソー社のGPCカラム(「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本及び「G4000HXL」1本)を使用し、以下の条件により測定した。
溶離液:テトラヒドロフラン(和光純薬工業社)
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
H-NMR]
H-NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子社の「JNM-ECZS400」)を使用して行った。
13C-NMR]
13C-NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子社の「JNM-ECZS400」)を使用して行った。重合体における各構造単位の含有割合は、13C-NMRで得られたスペクトルにおける各構造単位に対応するピークの面積比から算出した。
1.モノマーの合成
[4-ビニル安息香酸-1-プロポキシエチルエステル(POEBz)の合成]
ジムロート冷却器を備えた300mLナスフラスコに、ビニル安息香酸7.00g、プロピルビニルエーテル4.82g、リン酸0.092g、メチルエチルケトン100mLを加え、窒素雰囲気下、60℃、6時間加熱攪拌した。得られた溶液へ固体塩基ハイドロサルタイト;;Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O 1.5gを加え、常温にて30分攪拌し、リン酸を吸着させたハイドロサルタイトをろ取し、濾別した液を回収し、減圧濃縮した。
次に、トリエチルアミン処理したシリカゲルをカラムに充填し、酢酸エチル/ヘキサン=20/80(質量%)に3%トリエチルアミンを混合させた展開溶剤を用いて目的物の精製を行い、収率75%で4-ビニル安息香酸-1-プロポキシエチルエステルを回収した。目的物の同定はH-NMR/13C-NMRにより行った。
1H NMR(CDCl3);δ8.04-8.02 (m, 2H, Ph), 7.69-7.64 (m, 2H, Ph), 6.76-6.73 (q, 1H, CH), 6.19-6.17(m, 1H, CH-), 5.90-5.86 (d, 1H, CH2=), 5.41-5.38 (m, 1H, CH2=), 3.71-3.51 (m, 2H, CH2), 1.59-1.53 (m, 5H, CH2, CH3), 0.93-0.92 (m, 3H, CH3).
13C NMR(CDCl3);δ166 (COO), 142 (Ph), 136.1 (Ph), 130.1(Ph*2), 129.4 (=CH), 126.2 (Ph*2), 116.7(OCHO), 97.3 (CH2=), 71.1 (CH2), 22.9(CH2), 22.4 (CH3), 10.6 (CH3).
[4-ビニル安息香酸tert-ブチルエステル(tBuBz)の合成]
ジムロート冷却器を備えた300mLナスフラスコに、ビニル安息香酸14.8g、ジ-tert-ブチルジ炭酸45.9g、ジメチルアミノピリジン2.4g、ジ-tert-ブチルハイドロキノン0.01g、tert-ブタノール100mLを加え、窒素雰囲気下、60℃、12時間加熱攪拌した。冷却すると未反応のジ-tert-ブチルジ炭酸が析出するため、濾過により濾別した。ろ液へ酢酸エチル300gを加え、飽和塩化アンモニウム水溶液にて1回洗浄を行い、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にて1回洗浄を行い、さらに超純水にて3回洗浄を行い、有機層を回収、濃縮した。濃縮後の溶液を、減圧蒸留にてオイルバス;125℃、蒸気圧;11Pa、沸点;86℃とすることで目的物を収率33%で回収した。目的物の同定はH-NMR/13C-NMRにより行った。
1H NMR(CDCl3) ;δ7.94-7.92 (m, 2H, mPh), 7.43-7.39 (m, 2H, oPh), 6.77-6.70 (m, 1H, CH), 5.85-5.81 (q, 1H, CH2=), 5.36-5.32 (q, 1H, CH2=), 1.62-1.54 (t, 9H, CH3*3).
13C NMR(CDCl3) ;δ166 (COO), 142 (Ph), 136.1 (Ph), 130.1(Ph*2), 129.4 (=CH), 126.2 (Ph*2), 97.3 (CH2=), 71.1 (C), 10.6 (CH3*3).
2.重合体の合成
[合成例1]
200mL三口フラスコに、モレキュラーシーブス4Aにて乾燥させた1,4-ジオキサン10gを加え、80℃で保持した。続いて、滴下ポンプを使い、スチレン6.27g、無水マレイン酸5.88g、N-ビニルカルバゾール2.32g、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.62g、及びメチルエチルケトン20gの混合溶液を3時間かけて三口フラスコに滴下した。その後、3時間、80℃で加熱攪拌し、ラジカル重合させた。
その後、ヘキサン480g及びアセトン20gの混合液へ重合溶液を滴下し、白色の重合体を析出させた。ブフナーロートより白色固体をろ取し、60℃の減圧オーブンにて乾燥し、目的物(これを重合体(A-1)とする)を6.8g得た。得られた重合体を13C-NMRにより解析し、仕込み比どおりの重合体が得られたことを確認した。重合体(A-1)のMwは7800、Mw/Mnは1.51であった。
Figure 2022077356000005
[合成例2]
200mL三口フラスコに、モレキュラーシーブス4Aにて乾燥させた1,4-ジオキサン10gを加え、80℃で保持した。続いて、滴下ポンプを使い、スチレン5.21g、無水マレイン酸1.96g、4-ビニルベンゾシクロブテン2.60g、N-ビニルカルバゾール1.93g、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.46g、及びメチルエチルケトン20gの混合溶液を3時間かけて三口フラスコに滴下した。その後、3時間、80℃で加熱攪拌し、ラジカル重合させた。
その後、ヘキサン480g及びアセトン20gの混合液へ重合溶液を滴下し、白色の重合体を析出させた。ブフナーロートより白色固体をろ取し、60℃の減圧オーブンにて乾燥し、目的物(これを重合体(A-2)とする)を6.8g得た。得られた重合体を13C-NMRにより解析し、仕込み比どおりの重合体が得られたことを確認した。重合体(A-2)のMwは8300、Mw/Mnは1.52であった。
Figure 2022077356000006
[合成例3]
200mL三口フラスコに、モレキュラーシーブス4Aにて乾燥させた1,4-ジオキサン10gを加え、80℃で保持した。続いて、滴下ポンプを使い、スチレン5.21g、マレイミド1.94g、4-ビニルベンゾシクロブテン2.60g、N-ビニルカルバゾール1.93g、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.46g、メチルエチルケトン20gの混合溶液を3時間かけて滴下し、その後、3時間、80℃で加熱攪拌し、ラジカル重合させた。
その後、500gのメタノールへ重合溶液を滴下し、白色の重合体を析出させた。ブフナーロートより白色固体をろ取し、60℃の減圧オーブンにて乾燥し、目的物(これを重合体(A-3)とする)を6.8g得た。得られた重合体を13C-NMRにより解析し、仕込み比どおりの重合体が得られたことを確認した。重合体(A-3)のMwは7600、Mw/Mnは1.52であった。
Figure 2022077356000007
[合成例4]
200mL三口フラスコに、モレキュラーシーブス4Aにて乾燥させた1,4-ジオキサン10gを加え、80℃で保持した。続いて、滴下ポンプを使い、スチレン5.21g、4-ビニル安息香酸-1-プロポキシエチルエステル3.16g、4-ビニルベンゾシクロブテン2.60g、N-ビニルカルバゾール1.93g、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.46g、メチルエチルケトン20gの混合溶液を3時間かけて滴下し、その後、3時間、80℃で加熱攪拌し、ラジカル重合させた。
その後、500gのメタノールへ重合溶液を滴下し、白色の重合体を析出させた。ブフナーロートより白色固体をろ取し、60℃の減圧オーブンにて乾燥し、目的物(これを重合体(A-4)とする)を6.7g得た。得られた重合体を13C-NMRにより解析し、仕込み比どおりの重合体が得られたことを確認した。重合体(A-4)のMwは8300、Mw/Mnは1.43であった。
Figure 2022077356000008
[合成例5]
200mL三口フラスコに、モレキュラーシーブス4Aにて乾燥させた1,4-ジオキサン10gを加え、80℃で保持した。続いて、滴下ポンプを使い、スチレン5.21g、4-ビニル安息香酸-tert-ブチルエステル4.08g、4-ビニルベンゾシクロブテン2.60g、N-ビニルカルバゾール1.93g、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.46g、メチルエチルケトン20gの混合溶液を3時間かけて滴下し、その後、3時間80℃で加熱攪拌し、ラジカル重合させた。
その後、500gのメタノールへ重合溶液を滴下し、白色の重合体を析出させた。ブフナーロートより白色固体をろ取し、60℃の減圧オーブンにて乾燥し、目的物(これを重合体(A-5)とする)を7.1g得た。得られた重合体を13C-NMRにより解析し、仕込み比どおりの重合体が得られたことを確認した。重合体(A-5)のMwは8600、Mw/Mnは1.43であった。
Figure 2022077356000009
[合成例6]
500mLのフラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン(THF)120gを注入し、-78℃まで冷却した。このTHFにsec-ブチルリチウム(sec-BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.40mL注入し、さらに、スチレン13.3mL及び4-ビニルベンゾシクロブテン2.60gを30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。なお、スチレン及び4-ビニルベンゾシクロブテンについては、重合禁止剤を除去するために、シリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったものを用いた。滴下終了後、120分間熟成した。さらに、ヘキサメチルシクロトリシロキサン1.0gを加え、さらにメタノール1mlを注入して重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して、メチルイソブチルケトン(MIBK)で置換した。その後、超純水1000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を5回繰り返した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この重合体を60℃で減圧乾燥させることで、白色の重合体(これを重合体(A-6)とする)11.2gを得た。重合体(A-6)は、Mwが6200、Mnが6000、Mw/Mnが1.04であった。
Figure 2022077356000010
3.組成物の調製
[調製例1]
重合体(A-2)1.20gに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート79.04g(PGMEA)及びメチルエチルケトン19.76g(MEK)を加えて撹拌したのち、0.45μmの細孔を有する高密度ポリエチレンフィルターにて濾過することにより、固形分濃度1.2質量%の組成物(S-1)を調製した(表1参照)。
[調製例2~10]
重合体及び溶剤の種類及び量を表1に記載のとおり変更した点以外は調製例1と同様の操作を行うことにより、組成物(S-2)~(S-10)をそれぞれ調製した。
Figure 2022077356000011
表1中、溶剤の略称は以下の化合物を表す。
B-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
B-2:メチルエチルケトン
4.評価
[実施例1]
(1)基板処理/成膜
12インチlow-k基板を3cm×3cmに裁断し、N/3%Hアッシングプロセスを分光装置(Quantum200(アルバック社製)、チャンバー圧;30Pa、フローレート;300sccm、処理時間;5分)にて行った。続いて、アッシング処理を行った基板面上に、スピンコーター(ミカサ株式会社製、MS-B300)を用いて、組成物(S-1)を1,500rpm、20秒間にてスピンコートし、150℃で180秒間焼成した。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにより基板を洗浄し、未吸着の重合体を除去した。
また別途、low-k基板に代えてコバルト基板を用い、上記と同様にして組成物(S-1)により表面処理を行った。
(2)基質選択性の評価
上記(1)において、組成物(S-1)を用いて表面処理したlow-k基板及びコバルト基板につき、基板表面の接触角値(SCA)を接触角計(協和界面化学(株)社製、Drop master DM-501)を用いて測定した。接触角値の測定結果、及びlow-k基板とコバルト基板との接触角値の差ΔSCAを表2に示す。
(3)加水分解処理後における表面特性の評価
組成物(S-1)を用いて、上記「(1)基板処理/成膜」と同様にしてlow-k基板に対しアッシング処理及び成膜処理を行った。
続いて、組成物(S-1)による表面処理後のlow-k基板を、超純水/メチルエチルケトン/トリエチルアミン=70/20/10(質量%)を30g入れたシャーレに浸漬させ、8時間、加水分解処理を実施した。加水分解処理後の基板表面の接触角値(SCA)を、接触角計(協和界面化学(株)社製、Drop master DM-501)を用いて測定したところ、加水分解処理後では接触角値が低下し、親水表面に改質されたことが確認された(表3参照)。
(4)密着性の評価
上記(3)により加水分解処理を行った後のlow-k基板を、イオンスパッタ装置(JEOL社製、JEC-3000FC)に静置し、高真空化(2Pa)、30mA、120秒間の条件で白金スパッタを行い、高分子膜上に白金薄膜を形成した。その後、セロハンテープを基板へ押し付け、金属膜の剥がれ有無を目視にて確認することにより、組成物(S-1)により形成した高分子膜と金属膜(白金めっき膜)との密着性を評価した。セロハンテープ側に金属膜が剥がれてくるものを「不良(×)」、セロハンテープ側に金属膜が剥がれないものを「良好(○)」とした。また更に、白金スパッタに代えて銅スパッタを行った以外は上記と同様の操作を行い、高分子膜と金属膜(銅めっき膜)との密着性を評価した。それらの結果を表3に示す。
[実施例2、5~7]
使用する組成物を表2に記載のとおり変更した以外は実施例1と同様にして、基板の表面処理及び評価を行った。それらの結果を表2及び表3に示す。
[比較例1]
low-k基板及びコバルト基板に対し、組成物(S-1)による表面処理を行わなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、接触角値の測定及び密着性の評価を行った。結果を表2及び表3に示す。なお、表2及び表3中の「NA」はデータが無いことを表す。
[実施例3]
表面処理に使用する組成物を表2に記載のとおり変更した点、及び実施例1において組成物による表面処理後のlow-k基板に対して加水分解処理を行うことに代えて、組成物による表面処理後のlow-k基板に対し、250℃で300秒間焼成することによって脱保護反応を行った点以外は実施例1と同様の操作を行い、接触角値の測定及び密着性の評価を行った。結果を表2及び表3に示す。
[実施例4、8、9及び比較例2]
表面処理に使用する組成物を表2及び表3に記載のとおり変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、接触角値の測定及び密着性の評価を行った。結果を表2及び表3に示す。
[実施例10]
実施例1において「(1)基板処理/成膜」の工程を、low-k基板に対してアッシング処理する替わりに、下記に示すとおりウエット改質処理を行った点、基板処理後に用いた洗浄液を下記に示す組成に変更した点、及びコバルト基板に対し、組成物(S-1)による表面処理の前に自然酸化膜の除去を行った点以外は実施例1と同様の操作を行い、接触角値の測定及び密着性の評価を行った。結果を表2及び表3に示す。
<基板処理/成膜>
12インチlow-k基板を3cm×3cmに裁断し、2.38wt%TMAH(テトラメチルアンモニウムハライド)水溶液へ10分間浸漬させ親水化を行った。続いてウエット改質処理した基板面上に、スピンコーター(ミカサ株式会社製、MS-B300)を用いて、組成物(S-1)を1,500rpm、20秒間にてスピンコートし、150℃で180秒間焼成した。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/メチルエチルケトン=7/3(質量比)の混合溶液により基板を洗浄し、未吸着の重合体を除去した。
また別途、low-k基板に代えてコバルト基板を用い、自然酸化膜の除去を行ったのち、上記と同様にして組成物(S-1)により表面処理を行った。
[実施例11、12]
表面処理に使用する組成物を表2及び表3に記載のとおり変更した点、及び実施例10において組成物による表面処理後のlow-k基板に対して加水分解処理を行うことに代えて、組成物による表面処理後のlow-k基板に対し、250℃で300秒間焼成することによって脱保護反応を行った点以外は実施例10と同様の操作を行い、接触角値の測定及び密着性の評価を行った。結果を表2及び表3に示す。
Figure 2022077356000012
Figure 2022077356000013
表2の結果から、[A]重合体を含む組成物(S-1)~(S-4)、(S-6)~(S-10)を用いた実施例1~12では、low-k基板に対し表面処理を行った場合に、[A]重合体を含む組成物によって表面処理を行わなかった比較例1に対して、表面接触角が十分に高い値を示した。このことから、[A]重合体を含む組成物によれば、low-k基板の表面修飾を簡便な操作によって、しかも高密度に行うことができるといえる。また、実施例1~12において、low-k基板の表面接触角値は、コバルト基板の表面接触角値よりも28~43°高い値を示した。これらの結果から、[A]重合体を含む組成物は、ケイ素を含む表面領域を選択的に修飾できることが明らかとなった。
なお、[A]重合体を含む組成物によれば、重合体末端にシラノール基を導入した組成物(S-5)を用いた参考例1と同程度にlow-k基板表面を選択的に修飾できることが示された(表2参照)。
さらに、表3に示すように、実施例1~12では、[A]重合体を含む組成物による表面処理後のlow-k基板に対し加水分解処理又は加熱処理を行うことにより、基板の表面接触角が十分に低下し、親水表面に改質された。また、[A]重合体を含む組成物によりlow-k基板上に形成した有機膜は、金属膜(銅めっき膜及び白金めっき膜)との密着性に優れていた(表3参照)。
これに対し、[A]重合体を含む組成物により表面処理を行わなかった比較例1では、金属膜(銅めっき膜及び白金めっき膜)の密着性評価は「不良」であった。また、[A]重合体を含まない組成物により表面処理を行った参考例1では、low-k基板に対し加熱処理を行った後においても表面接触角は変化せず、疎水表面が保持された。また、有機膜と金属膜との密着性は「不良」の評価であった。

Claims (14)

  1. 基材が有するケイ素含有領域の表面を選択的修飾するための組成物であって、
    ピロール環の2,3-位及び4,5-位に芳香環が縮合した縮合環構造を有する重合体と、溶剤とを含有する、組成物。
  2. 前記重合体は、熱解離性基及び加水分解性基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記加水分解性基は、酸無水物基及びマレイミド基よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載の組成物。
  4. ピロール環の2,3-位及び4,5-位に芳香環が縮合した縮合環構造を有する構造単位と、熱解離性基、酸無水物基及びマレイミド基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む構造単位とを有する重合体と、
    溶剤と、
    を含有する、組成物。
  5. ケイ素含有領域を有する基材の表面に銅めっきを施す際の前処理に用いられる組成物であって、
    ピロール環の2,3-位及び4,5-位に芳香環が縮合した縮合環構造を有する重合体と、溶剤とを含有する、組成物。
  6. 前記重合体は、下記式(1)で表される構造単位を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
    Figure 2022077356000014
    (式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、又はニトロ基である。a及びbは、それぞれ独立して、0又は1である。m及びnは、それぞれ独立して、0~6の整数である。mが2以上の場合、式中の複数のRは、互いに同一の基又は異なる基である。nが2以上の場合、式中の複数のRは、互いに同一の基又は異なる基である。)
  7. 前記重合体は、架橋性基を更に有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 前記溶剤は、ケトン系溶剤とエステル系溶剤とを含む混合溶剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
  9. 前記基材は、金属を含む領域を更に有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
  10. ケイ素含有領域の表面が選択的修飾された基材を製造する方法であって、
    請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を基材表面に塗布する工程と、
    前記基材表面に塗布された組成物から溶剤を除去する工程と、
    を含む、製造方法。
  11. 前記溶剤の除去後に、前記基材表面に銅めっきを施す工程を更に含む、請求項10に記載の製造方法。
  12. 前記重合体は、熱解離性基を有し、
    前記溶剤を除去した後の基材を加熱する工程を更に含む、請求項10又は11に記載の製造方法。
  13. 前記重合体は、加水分解性基を有し、
    前記溶剤を除去した後の基材と水とを接触させる工程を更に含む、請求項10又は11に記載の製造方法。
  14. 請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を、ケイ素含有領域を有する基材の表面に塗布する工程と、
    前記表面に塗布された組成物から溶剤を除去する工程と、
    を含む、基材表面の選択的修飾方法。
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