JP2022076358A - 樹脂膜、樹脂膜の作成方法および表示装置 - Google Patents

樹脂膜、樹脂膜の作成方法および表示装置 Download PDF

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和男 宇田川
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Toshiyuki Takahashi
恵紘 横手
Yoshihiro Yokote
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Abstract

【課題】光学特性と熱遮断性とを両立させることができる樹脂膜等を提供する。【解決手段】樹脂膜は、遮熱層17と、低屈折率層19と、隣接層であるハードコート層16と、を有する。遮熱層17は、厚さが300nm以上1500nm以下であり、熱を遮る。低屈折率層19は、遮熱層17よりも屈折率が低い。ハードコート層16は、遮熱層に隣接し、低屈折率層19以外の層であり、遮熱層との屈折率の差が0.04以下である。【選択図】図2

Description

本発明は、樹脂膜等に関する。より詳しくは、表示装置の表示手段の表面に設ける樹脂膜等に関する。
液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)等の表示装置が知られている。また、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD:Electroluminescence Display)、フィールドエミッションディスプレイ(FED:Field Emission Display)等の表示装置が知られている。これらの表示装置の画像表示面には、通常、低屈折率層を有する反射防止フィルムや防眩フィルムが設けられている。そして、低屈折率層により、観察者および観察者の背景等の映り込みを抑制する。
低屈折率層は、通常は、反射防止フィルムの最表面に設けられている。そして、低屈折率層および低屈折率層と下層との界面からの反射光が打ち消しあうことによって反射光を低減し、映り込みを抑制する。
一方、ディスプレイの薄型化に伴い、例えば、液晶ディスプレイでは、ディスプレイ表面とバックライトとの距離が非常に狭くなっている。その結果、バックライトからの発熱を遮断するための熱遮断性の付与が求められている。
特許文献1には、プラズマディスプレイ用光学部材が開示されている。このプラズマディスプレイ用光学部材は、フィルムと、このフィルムの片面に形成された粘着層とを有する。フィルムは、少なくとも電磁波シールド機能、近赤外線カット機能、および反射防止機能を持つ。赤外線カット層は基材を介して、反射防止層と反対側に設けられ、その膜厚は5μm~30μmである。さらに、フィルムは、引張強度が、100N/25mm幅以上であり、粘着強度が3.0N/25mm幅以上である。
特許文献2には、近赤外線吸収材が開示されている。近赤外線吸収材は、透明樹脂フィルムの一方の面に第一の干渉層を介して膜厚2μm~20μmの近赤外線吸収層が設けられる。また、近赤外線吸収材は、光の波長500~650nmにおける反射率の振幅の差の最大値が1%以下である。更に、近赤外線吸収材は、第二の干渉層、ハードコート層並びに高屈折率層及び低屈折率層よりなる減反射層が設けられている。これらは、透明樹脂フィルムの近赤外線吸収層が設けられていない他方の面に、透明樹脂フィルム側から順に設けられる。近赤外線吸収材は、プラズマディスプレイパネル等の表示画面上に近赤外線吸収層側が貼着されて使用される。
特許文献3には、プラズマディスプレイ用前面フィルタが開示されている。この前面フィルタは、1層以上の機能層とを有するフィルムと、このフィルムの片面に形成された粘着層とを有する。フィルムは、基材と、電磁波シールド機能、近赤外線遮断機能、反射防止機能および色補正機能のうち少なくとも1種の機能を有する。そして、この前面フィルタが放熱機能および/または遮熱機能を有する。近赤外線遮断層は基材を介して、反射防止層と反対側に設けられ、その膜厚は5μm~30μmである。
特開2005-242227号公報 特開2006-47599号公報 特開2005-243509号公報
熱遮断性を付与するために、遮熱機能を有する粒子や放熱機能を有する粒子を含んだ遮熱層を樹脂膜内に導入することがある。しかしながら、このような粒子は、屈折率の高いのが一般的である。そして、このような粒子を含んだ遮熱層を樹脂膜に導入すると、膜内での光学干渉挙動が複雑となる。そして、反射率などの光学特性を制御することが困難となりやすい。また、樹脂膜の膜厚にずれが生じたり、樹脂膜を斜めから観察した際の色変化が大きくなり、外観を損なうことがある。
また、反射防止フィルムの他に、別途遮熱・放熱フィルムを導入する方法もある。しかしこの場合、十分な遮熱効果を得られない。そしてこれに加え、表示装置の厚み増加やコストアップを招きやすい。
本発明は、光学特性と熱遮断性とを両立させることができる樹脂膜等を提供することを目的とする。
本発明の樹脂膜は、遮熱層と、低屈折率層と、隣接層と、を有する。遮熱層は、厚さが300nm以上1500nm以下であり、熱を遮る。低屈折率層は、遮熱層よりも屈折率が低い。隣接層は、遮熱層に隣接し、低屈折率層以外の層であり、遮熱層との屈折率の差が0.04以下である。
ここで、低屈折率層は、遮熱層を挟み隣接層と逆側に設けることができる。
また、隣接層は、ハードコート層とすることができる。
さらに、ハードコート層は、ハードコート層の屈折率を高くする粒子を含むようにすることができる。
そして、粒子は、ジルコニウム酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物およびスズ酸化物のうち少なくとも1つとすることができる。
また、遮熱層と低屈折率層との間に、低屈折率層より屈折率が高い高屈折率層をさらに有するようにすることができる。
さらに、ハードコート層、遮熱層、高屈折率層および低屈折率層の順で表面側に向け積層するようにすることができる。
そして、遮熱層は、赤外線吸収材料および赤外線反射材料の少なくとも1つを含むようにすることができる。赤外線吸収材料は、赤外線を吸収する材料である。また、赤外線反射材料は、赤外線を反射する材料である。
また、赤外線反射材料は、インジウム含有酸化スズ粒子とすることができる。また、赤外線反射材料は、アンチモン含有酸化スズ粒子とすることができる、さらに、赤外線反射材料は、リン含有酸化スズ粒子とすることができる。赤外線反射材料は、これらの少なくとも1つである。
さらに、遮熱層は、インジウム含有酸化スズ粒子、アンチモン含有酸化スズ粒子およびリン含有酸化スズ粒子の少なくとも1つ含む。そして、これらを遮熱層全体の質量に対し、50質量%以上95質量%以下含むようにすることができる。
また、本発明の樹脂膜は、遮熱隣接層と、低屈折率層と、を有する。遮熱隣接層は、赤外線吸収材料および赤外線反射材料の少なくとも1つを含む。そして、これらを樹脂膜の厚み方向において、表面側の濃度が表面側とは逆側の濃度よりも大きくなるように含む。そしてこれにより、熱を遮る。低屈折率層は、遮熱隣接層よりも屈折率が低い。
ここで、遮熱隣接層は、逆側の部分が、ハードコート層として機能するようにすることができる。
さらに、本発明の樹脂膜の作成方法は、遮熱層作成工程と、低屈折率層作成工程と、隣接層作成工程と、を含む。遮熱層作成工程は、厚さが300nm以上1500nm以下であり、熱を遮るための遮熱層を作成する。低屈折率層作成工程は、遮熱層よりも屈折率が低い低屈折率層を作成する。隣接層作成工程は、遮熱層に隣接し、低屈折率層以外の層であり、遮熱層との屈折率の差が0.04以下である隣接層を作成する。
ここで、低屈折率層は、遮熱層を挟み隣接層と逆側に設けることができる。
また、隣接層は、ハードコート層とすることができる。
さらに、本発明の樹脂膜の作成方法は、遮熱隣接層作成工程と、低屈折率層作成工程と、を含む。遮熱隣接層作成工程は、熱を遮る遮熱隣接層を作成する。遮熱層は、赤外線吸収材料および赤外線反射材料の少なくとも1つを含む。これらは、樹脂膜の厚み方向において、表面側の濃度が表面側とは逆側の濃度よりも大きくなる。赤外線吸収材料は、赤外線を吸収する材料である。赤外線反射材料は、赤外線を反射する材料である。低屈折率層作成工程は、遮熱隣接層よりも屈折率が低い低屈折率層を作成する。
そして、本発明の表示装置は、画像の表示を行う表示手段と、表示手段の表面に設けられる上記樹脂膜とを備える。
また、本発明の光学部材は、基材と、基材上に設けられる上記樹脂膜とを備える。
さらに、本発明の偏光部材は、光を偏光させる偏光手段と、偏光手段上に設けられる上記樹脂膜とを備える。
本発明によれば、光学特性と熱遮断性とを両立させることができる樹脂膜等を提供できる。
(a)は、本実施の形態が適用される表示装置について説明した図である。(b)は、図1(a)のIb―Ib断面図であり、本実施の形態が適用される液晶パネルの構成の一例を示したものである。 基材、ハードコート層、遮熱層、高屈折率層および低屈折率層について示した図である。 ハードコート層および遮熱層の屈折率の差を変化させたときの反射率について、示した図である。 図3の場合に対し、さらに高屈折率層および低屈折率層を加えた場合について示した図である。 (a)は、図2に示すような構造の層構造の樹脂膜の作成方法を示したフローチャートである。(b)は、ハードコート層、遮熱層、高屈折率層、低屈折率層の作成方法を説明したフローチャートである。 ハードコート層と遮熱層とを一度に形成した場合の構成について示した図である。 図6に示すような構造の樹脂膜の作成方法を示したフローチャートである。 (a)~(c)は、遮熱隣接層の作成方法について示した図である。 鉛筆硬度を測定する鉛筆硬度測定装置を示した図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定するものではない。またその要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。さらに使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
<表示装置の説明>
図1(a)は、本実施の形態が適用される表示装置1について説明した図である。
図示する表示装置1は、例えばPC(Personal Computer)用の液晶ディスプレイ、あるいは液晶テレビなどである。表示装置1は、液晶パネル1aに画像を表示する。
<液晶パネル1aの説明>
図1(b)は、図1(a)のIb―Ib断面図であり、本実施の形態が適用される液晶パネル1aの構成の一例を示したものである。
液晶パネル1aは、画像の表示を行う表示手段の一例である。本実施の形態の液晶パネル1aは、例えば、VA型液晶パネルである。図示する液晶パネル1aは、バックライト11と、偏光フィルム12aとを有する。また、液晶パネル1aは、位相差フィルム13aと、液晶14と、位相差フィルム13bと、偏光フィルム12bとを有する。さらに、液晶パネル1aは、基材15と、ハードコート層16と、遮熱層17と、高屈折率層18と、低屈折率層19とを有する。そしてこれらは、この順で表面側に向け積層する構造となる。なお、以下、偏光フィルム12aと偏光フィルム12bとを区別しない場合は、単に、偏光フィルム12と言うことがある。また、位相差フィルム13aと位相差フィルム13bとを区別しない場合は、単に、位相差フィルム13と言うことがある。本実施の形態で、基材15、ハードコート層16、遮熱層17、高屈折率層18、低屈折率層19は、樹脂膜の一例である。また、以下、基材15、ハードコート層16、遮熱層17、高屈折率層18、低屈折率層19を、まとめて樹脂膜と言うことがある。
バックライト11は、液晶14に対し光を照射する。バックライト11は、例えば、冷陰極蛍光ランプや白色LED(Light Emitting Diode)である。
偏光フィルム12aおよび偏光フィルム12bは、光を偏光させる偏光手段の一例である。偏光フィルム12aと偏光フィルム12bとは、偏光方向が互いに直交するようになっている。偏光フィルム12aおよび偏光フィルム12bは、例えば、ポリビニルアルコール(PVA:poly-vinyl alcohol)にヨウ素化合物分子を含ませた樹脂フィルムを備える。そしてこれをトリアセチルセルロース(TAC:triacetylcellulose)からなる樹脂フィルムで挟み接着したものである。ヨウ素化合物分子を含ませることで光が偏光する。
位相差フィルム13は、液晶パネル1aの視野角依存性を補償する。液晶14を透過した光は、直線偏光から楕円偏光に偏光状態が変化する。例えば、黒表示させた場合、液晶パネル1aを鉛直方向から見たときは、黒色に見える。一方、液晶パネル1aを斜め方向から見たときは、液晶14のリタデーションが発生する。また、偏光フィルム12の軸が90°ではなくなる。そのため、光抜けが生じて白くなり、コントラストが低下するという問題が生じる。即ち、液晶パネル1aに視野角依存性が生じる。位相差フィルム13a、13bは、この楕円偏光を直線偏光に戻す機能を有する。これにより、位相差フィルム13a、13bは、液晶パネル1aの視野角依存性を補償することができる。
液晶14には、図示しない電源が接続され、この電源により電圧を印加すると液晶14の配列方向が変化する。そして液晶14は、これにより、光の透過状態を制御する。
VA型液晶パネルの場合、液晶14に電圧を印加していないとき(電圧OFF)は、液晶分子が、図中垂直方向に配列する。そして、バックライト11から光を照射すると、まず、偏光フィルム12aを光が通過して偏光となる。そして、偏光は、液晶14をそのまま通過する。さらに、偏光フィルム12bは、偏光方向が異なるため、この偏光を遮断する。この場合、液晶パネル1aを見るユーザは、この光を視認できない。即ち、液晶14に電圧を印加しない状態では、液晶の色は、「黒」となる。
対して、液晶14に最大電圧を印加しているときは、液晶分子が、図中水平方向に配列する。そして、偏光フィルム12aを通過した偏光は、液晶14の作用により偏光の方向が90度回転する。そのため、偏光フィルム12bは、この偏光を遮断せず、透過させる。この場合、液晶パネル1aを見るユーザは、この光を視認できる。即ち、液晶14に最大電圧を印加している状態では、液晶の色は、「白」となる。また、電圧は、電圧OFFと最大電圧の間とすることもできる。この場合、液晶14は、図中上下方向と図中上下方向に対する垂直方向の間の状態となる。即ち、液晶14は、上下方向および垂直方向の双方に交差する方向である斜め方向に配列する。この状態では、液晶の色は、「グレー」となる。よって、液晶14に印加する電圧をOFFから最大電圧の間で調整することで、黒、白の他に、中間階調が表現できる。そして、これにより画像を表示する。
なお、図示はしていないが、カラーフィルタを使用することでカラー画像を表示することもできる。
図2は、基材15、ハードコート層16、遮熱層17、高屈折率層18および低屈折率層19について示した図である。
ここで、図中、上側は、液晶パネル1aの表面側であり、下側は、液晶パネル1aの内部側である。
基材15は、ハードコート層16、遮熱層17、高屈折率層18および低屈折率層19を形成するための支持体である。基材15は、全光線透過率85%以上の透明基材であることが好ましい。基材15は、例えば、上述したトリアセチルセルロース(TAC:triacetylcellulose)が用いられる。またこれに限られるものではなく、ポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)等を使用することもできる。ただし本実施の形態では、トリアセチルセルロース(TAC)をより好適に使用することができる。基材15は、例えば、20μm以上200μm以下の厚さを有する。
ハードコート層16は、液晶パネル1aに傷を生じさせにくくするための機能層である。ハードコート層16は、樹脂を主成分とする母材としてのバインダ161を含む。また、ハードコート層16は、ハードコート層16の屈折率を高くする粒子として金属酸化物粒子162を含む。
バインダ161は、光透過性に優れ、樹脂膜として使用する場合に、用途に応じた強度を有するものであれば、特に限られるものではない。例えば、後述する低屈折率層19で例示したものと同様のものを用いることができる。
金属酸化物粒子162は、ジルコニウム酸化物(酸化ジルコニウム)、アルミニウム酸化物(酸化アルミニウム)、チタン酸化物(酸化チタン)およびスズ酸化物(酸化スズ)のうち少なくとも1つである。これにより、ハードコート層16のハードコート性が向上するとともに、屈折率を高くすることができる。
さらに、ハードコート層16には、導電性物質を添加してもよい。導電性物質は、例えば、金属微粒子や導電性ポリマーなどである。より具体的には、導電性物質は、例えば、アンチモン(Sb)、リン(P)、インジウム(In)をドープした錫酸化物(インジウム含有酸化スズ(ITO))、フッ素系アニオンやアンモニウム塩を含んだイオン液体、PEDOT/PSSなどの導電性ポリマー、カーボンナノチューブなどである。また、導電性物質は、1種類に限らず2種類以上添加させてもよい。これによりハードコート層16の表面抵抗値が低くなり、ハードコート層16に帯電防止機能を付与することができる。
遮熱層17は、熱を遮るための機能層である。即ち、遮熱層17は、熱遮断性を有し、バックライト11などからの熱を遮断する機能を有する。
遮熱層17は、樹脂を主成分とする母材としてのバインダ171を含む。バインダ171は、光透過性に優れ、樹脂膜として使用する場合に、用途に応じた強度を有するものであれば、特に限られるものではない。例えば、後述する低屈折率層19で例示したものと同様のものを用いることができる。
また、遮熱層17は、遮熱性能を有する遮熱粒子172を含む。遮熱粒子172は、例えば、赤外線吸収材料および赤外線反射材料の少なくとも1つを含む。赤外線吸収材料は、赤外線を吸収する材料である。また、赤外線反射材料は、赤外線を反射する材料である。赤外線を吸収または反射することで、熱遮断性を付与することができる。
赤外線吸収材料としては、例えば、フタロシアニン系色素、キノン系化合物、アゾ化合物などが挙げられる。また、赤外線反射材料としては、例えば、インジウム含有酸化スズ(ITO:ズズドープ酸化インジウム)粒子、アンチモン含有酸化スズ(ATO:アンチモンドープ酸化スズ)粒子およびリン含有酸化スズ(PTO:リンドープ酸化スズ)粒子、銀ナノ粒子などが挙げられる。遮熱層17は、これらを少なくとも1つ含むことが好ましい。そして、遮熱層17は、これらの粒子の少なくとも1つを、遮熱層17全体の質量に対し、50質量%以上95質量%以下含むことが好ましい。
これらの粒子が、50質量%未満であると、赤外線を反射/吸収する能力が不足しやすくなる。対して、これらの粒子が、95質量%を上回ると、光の透過率が低下したり、形成膜の膜強度が低下しやすくなる。
また、遮熱粒子172は、熱伝導率が大きい材料を含む粒子であってもよい。熱伝導率が大きい材料を含むことにより、遮熱層17の熱伝導率を大きくすることができる。その結果、放熱性が向上し、熱遮断性を付与することができる。この場合、遮熱層17は、放熱層であると捉えることもできる。熱伝導率が大きい材料としては、アルミナ、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド、銀、シリコン、およびこれらの粒子などが挙げられる。
さらに、遮熱粒子172は、熱伝導率が小さい材料を含む粒子であってもよい。熱伝導率が小さい材料を含むことにより、遮熱層17の熱伝導率を小さくすることができる。その結果、断熱性が向上し、熱遮断性を付与することができる。この場合、遮熱層17は、断熱層であると捉えることもできる。熱伝導率が小さい材料としては、シリカ、アルミナ樹脂で作成される中空粒子などが挙げられる。
遮熱層17は、厚さが300nm以上1500nm以下である。遮熱層17の厚さが、300nm未満であると、熱遮断性が低下する。また、遮熱層17の厚さが、1500nmを超えると、光の透過率の低下を招き、樹脂膜の光学特性が低下する。
高屈折率層18は、遮熱層17と低屈折率層19との間に設けられ、反射率をさらに低減させるための機能層である。高屈折率層18は、低屈折率層19より屈折率が高い。高屈折率層18は、詳しくは、樹脂膜を低反射率とするための光学特性の調整として設けられる。
高屈折率層18は、バインダ181と高屈折率粒子182とを含む。高屈折率層18は、単層で形成しても多層で形成してもよいが、製造コストの観点からなるべく少ない層数で形成することが好ましい。
液晶パネル1aを低反射化するためには、高屈折率層18の屈折率は高くすることが好ましい。具体的な屈折率としては、1.55以上1.85以下が好ましく、1.60以上1.80以下とすることがより好ましい。
また、高屈折率層18の厚みの上限としては、500nm以下が好ましい。また、350nm以下がより好ましく、200nm以下がさらに好ましい。そして、高屈折率層18の厚みの下限としては、50nm以上が好ましい。また、80nm以上がより好ましく、100nm以上がさらに好ましい。
高屈折率粒子182としては、ジルコニウム酸化物(酸化ジルコニウム)、ハフニウム酸化物(酸化ハフニウム)が挙げられる。また、タンタル酸化物(酸化タンタル)、チタン酸化物(酸化チタン)、亜鉛酸化物(酸化亜鉛)が挙げられる。さらに、アルミニウム酸化物(酸化アルミニウム)、マグネシウム酸化物(酸化マグネシウム)が挙げられる。またさらに、スズ酸化物(酸化スズ)、イットリウム酸化物(酸化イットリウム)が挙げられる。そして、チタン酸バリウム、アンチモン含有酸化スズ(ATO)が挙げられる。また、リン含有酸化スズ(PTO)、インジウム含有酸化スズ(ITO)、硫化亜鉛などが挙げられる。耐久安定性の観点から、ジルコニウム酸化物(酸化ジルコニウム)、チタン酸バリウム、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、リン含有酸化スズ(PTO)、インジウム含有酸化スズ(ITO)が特に好ましい。
高屈折率粒子182の一次粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)は、1nm以上200nm以下が好ましい。また、3nm以上100nm以下がより好ましく、5nm以上50nm以下がさらに好ましい。
高屈折率粒子182の平均一次粒子径は、粒子分散液の乾燥膜のSEM(Scanning Electron Microscope)、TEM(Transmission Electron Microscope)およびSTEM(Scanning Transmission Electron Microscope)を用いた観察像により測定することが可能である。
上記高屈折率粒子182は、凝集を抑制する観点で分散安定化処理が施されていることが好ましい。分散安定化の手段としては、粒子を表面処理したものを用いたり、分散剤を添加する手段が挙げられる。また、高屈折率粒子182よりも表面電荷量の少ない別の粒子を添加する手段も挙げられる。
高屈折率粒子182の含有量は、バインダ100質量部に対して、20質量部以上600質量部以下であることが好ましい。また、50質量部以上500質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上400質量部以下であることがさらに好ましい。
バインダ181は、光透過性に優れ、樹脂膜として使用する場合に、用途に応じた強度を有するものであれば、特に限られるものではない。例えば、後述する低屈折率層19で例示したものと同様のものを用いることができる。ただし、高屈折率粒子182の含有量を低減するためにバインダ181の屈折率は1.48以上1.70以下程度であることが好ましい。
低屈折率層19は、液晶パネル1aの反射率を低減させるための機能層である。
低屈折率層19は、高屈折率層18よりも屈折率が小さい。また、低屈折率層19は、遮熱層17よりも屈折率が低い。具体的には、低屈折率層19は、屈折率が、1.20以上1.35以下であることが好ましい。この場合、後述するSCI(正反射光:Specular Component Include)反射率Yが、0.3以下となる。これにより、反射率が小さい液晶パネル1aが実現できる。低屈折率層19は、単層で形成しても多層で形成してもよいが、製造コストの観点からなるべく少ない層数で形成することが好ましい。低屈折率層19は、厚さが50nm以上500nm以下であることが好ましい。
そして、低屈折率層19は、バインダ191と、バインダ191中に分布する中空シリカ粒子192とを含む。また、低屈折率層19は、バインダ191の表面側に主に分布する表面改質剤193をさらに含む。
バインダ191は、網目構造となっており、中空シリカ粒子192同士を連結する。バインダ191は、主成分として樹脂を含む。樹脂としては、含フッ素樹脂を含むことが好ましい。この場合、樹脂は、全て含フッ素樹脂でもよく、一部が、含フッ素樹脂であってもよい。含フッ素樹脂は、フッ素を含む樹脂であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。また、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)である。さらに、例えば、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)である。含フッ素樹脂は、屈折率が低い。そのため、含フッ素樹脂を使用することで、低屈折率層19が、より低屈折率になりやすく、反射率をより低減することができる。
また、含フッ素樹脂は、光硬化性含フッ素樹脂であることがさらに好ましい。光硬化性含フッ素樹脂は、下記一般式(1)~(2)で示す光重合性含フッ素モノマーが光重合したものである。そして構造単位Mを0.1モル%以上100モル%以下含む。また構造単位Aを0モル%を超え99.9モル%以下含む。さらに数平均分子量が30,000以上1,000,000以下である。
Figure 2022076358000002
一般式(1)中、構造単位Mは一般式(2)で示す含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。また構造単位Aは一般式(2)で示す含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である。
一般式(2)中、XおよびXは、HまたはFである。また、XはH、F、CHまたはCFである。XおよびXは、H、FまたはCFである。Rfは、炭素数1以上40以下の含フッ素アルキル基または炭素数2以上100以下のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基に、Yが1個以上3個以下結合している有機基である。なおYは末端にエチレン性炭素-炭素二重結合を有する炭素数2以上10以下の1価の有機基である。また、aは0、1、2または3であり、bおよびcは、0または1である。
光重合性含フッ素樹脂としては、例えば、ダイキン工業株式会社製のOPTOOL AR-110を例示することができる。また、ダイセルオルネクス社製のEBECRYL8110、共栄社化学社製のLINCシリーズなどを例示することができる。
また、フッ素原子を含まないバインダの具体例としては、共栄社化学製のライトアクリレートPOB-A、NP-A、DCP-A、TMP-A、UA-306I、UA-306Hが挙げられる。さらに、新中村化学社製のNKエステルA-DOD-N、A-200、A-BPE-4が挙げられる。またさらに、東亞合成社製のアロニックスM-315、M-306、M-408が挙げられる。またさらに、日本化薬社製のKAYARAD DPHA、DPEA-12などが挙げられる。これらのバインダは、詳しくは後述するスチールウール耐性や鉛筆硬度などの膜強度を向上させる上で有効である。
中空シリカ粒子192は、外殻層を有し、外殻層の内部は中空または多孔質体となっている。外殻層及び多孔質体は、主に酸化ケイ素(SiO)にて構成する。また外殻層の表面側には、光重合性基および水酸基が多数結合している。光重合性基と外殻層とは、Si-O-Si結合及び水素結合のうち、少なくとも一方の結合を介して結合している。光重合性基としては、アクリロイル基及びメタクリロイル基を挙げることができる。すなわち、中空シリカ粒子192は、光重合性基として、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうち少なくとも一方を含む。光重合性基は、電離放射線硬化性基とも称する。中空シリカ粒子192は少なくとも光重合性基を有していればよく、これらの官能基の数、種類は特に限定しない。
中空シリカ粒子192の平均一次粒子径は、35nm以上120nm以下であることが好ましい。また、中空シリカ粒子192の平均一次粒子径が、50nm以上100nm以下であることがより好ましい。平均一次粒子径が35nm未満の場合、中空シリカ粒子192の空隙率が小さくなりやすい。そのため、低屈折率層19の屈折率を下げる効果が生じにくくなる。また、中央粒径が120nmを超える場合、低屈折率層19の表面の凹凸が顕著になりやすい。そのため、防汚性や耐擦傷性が低下しやすい。
中空シリカ粒子192の平均一次粒子径は、高屈折率層18の場合と同様にして測定することができる。即ち、粒子分散液の乾燥膜のSEM、TEMおよびSTEMを用いた観察像により測定することが可能である。
中空シリカ粒子192の配合量は、低屈折率層19の中で30質量%以上65質量%以下であることが好ましい。中空シリカ粒子192の配合量が30質量%未満であると、低屈折率層19の反射率が高くなりやすい。また、中空シリカ粒子192の配合量が65質量%を超えると、膜強度が低下しやすくなる。さらに、付着物が目立ちやすく、拭き取りがしにくくなる。
また、中空シリカ粒子192は、中空シリカ粒子192の粒径に対する頻度曲線(粒度分布曲線)に複数の極大値を有するようにすることができる。つまり、この場合、中空シリカ粒子192は、粒径分布の異なる複数のものからなる。例えば、中空シリカ粒子192の平均一次粒子径が、30nm、60nm、75nmのものの中から複数選択し、混合して使用する。
表面改質剤193は、バインダ191の表面側に主に分布し、低屈折率層19の表面を改質する。即ち、表面改質剤193は、低屈折率層19の表面側に偏析している。なお、バインダ191の内部に存在しても、低屈折率層19の機能を損なうものではない。
本実施の形態では、表面改質剤193は、撥油性の表面改質剤および親油性の表面改質剤を含む。
撥油性の表面改質剤は、バインダ191等に配合し表面に偏析することで、膜表面の撥油性を向上させる役割を担う。撥油性の表面改質剤の効果は、オレイン酸等の接触角を測定することで確認することができる。この場合、撥油性の表面改質剤の添加時と未添加時との膜表面の接触角の差(添加時の接触角-未添加時の接触角)により、効果を確認できる。この場合、撥油性の表面改質剤を添加すると接触角は、大きくなる。そして、接触角の差が、10°以上のものが好ましい。また、接触角の差が、20°以上のものがより好ましく、30°以上のものがさらに好ましい。
撥油性の表面改質剤は、光重合性基を有するフッ素系化合物であることが好ましい。
具体的な撥油性の表面改質剤としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKY-1203、KY-1207が挙げられる。また、例えば、ダイキン工業株式会社製のオプツールDAC-HPが挙げられる。さらに、例えば、DIC株式会社製のメガファックF-477、F-554、F-556、F-570、RS-56、RS-58、RS-75、RS-78、RS-90が挙げられる。またさらに、例えば、株式会社フロロテクノロジー製のFS-7024、FS-7025、FS-7026、FS-7031、FS-7032が挙げられる。またさらに、例えば、第一工業製薬株式会社製のH-3593、H-3594が挙げられる。さらに、例えば、AGC株式会社製のSURECO AF Seriesが挙げられる。そして、例えば、株式会社ネオス製のフタージェントF-222F、M-250、601AD、601ADH2が挙げられる。
親油性の表面改質剤は,バインダ191等に配合し表面に偏析することで、膜表面の親油性を向上させる役割を担う。親油性の表面改質剤の効果は、オレイン酸等の接触角を測定することで確認することができる。この場合、親油性の表面改質剤の未添加時と添加時との膜表面の接触角の差(未添加時の接触角-添加時の接触角)により、効果を確認できる。この場合、親油性の表面改質剤を添加すると接触角は、小さくなる。そして、接触角の差が、3°以上のものが好ましい。また、接触角の差が、5°以上のものがより好ましく、7°以上のものがさらに好ましい。
具体的な親油性の表面改質剤としては、例えば、三洋化成工業株式会社製のメルクリア350Lが挙げられる。また、例えば、株式会社ネオス製のフタージェント730LM、602A、650A、650ACが挙げられる。
低屈折率層19は、皮脂等の付着物が付着しても、付着物が目立ちにくい。また、付着物の拭き取り除去が容易である。これは、中空シリカ粒子192を多く含有させても同様である。
<ハードコート層16および遮熱層17の屈折率の関係の説明>
本実施の形態では、遮熱層17と、遮熱層17に隣接し、低屈折率層19以外の層である隣接層との屈折率の差が重要となる。この場合、隣接層は、遮熱層17の下層であるハードコート層16が該当する。この場合、低屈折率層19は、遮熱層17を挟み隣接層であるハードコート層16と逆側に設けられる、と言うこともできる。
そして、ハードコート層16は、遮熱層17との屈折率との差が0.04以下である必要がある。この場合、屈折率の差が0.04以下であれば、ハードコート層16の屈折率および遮熱層17の屈折率の何れが大きくてもよい。
以下、この事項について説明する。
図3は、ハードコート層16および遮熱層17の屈折率の差を変化させたときの反射率について、示した図である。
ここで、横軸は、光の波長(Wavelength)を表し、縦軸は、反射率を表す。つまり、図3は、反射率の波長に対する変化を示した図である。
ここでは、TACフィルムからなる基材15上に、ハードコート層16および遮熱層17を形成し、他の層は形成しない。そして、遮熱層17の屈折率を固定し、ハードコート層16の屈折率を変化させた。
具体的には、実験例A1、比較実験例B1および比較実験例B2について、反射率の波長に対する変化を調べた。表1に示すように、実験例A1は、ハードコート層16の屈折率を遮熱層17より0.01高くした場合である。また、比較実験例B1は、ハードコート層16の屈折率を遮熱層17より0.05高くした場合である。また、比較実験例B2は、ハードコート層16の屈折率を遮熱層17より0.05低くした場合である。
図3の比較実験例B1および比較実験例B2は、ハードコート層16および遮熱層17の屈折率の差が大きく異なる場合である。そしてこの場合、これらの層間で光学干渉が生じスペクトルが大きな波をうつ。一方、これらの層間の屈折率差が小さくなると、層間の光学界面がなくなる。その結果、実験例A1に示すようにスペクトルの波が小さくなる。
図4は、図3の場合に対し、さらに高屈折率層18および低屈折率層19を加えた場合について示した図である。
この場合、TACフィルムからなる基材15上に、ハードコート層16、遮熱層17、高屈折率層18、低屈折率層19がある樹脂膜となる。そして、図4は、このときのハードコート層16および遮熱層17の屈折率の差を変化させたときの反射率について示した図である。ここでも、横軸は、光の波長(Wavelength)を表し、縦軸は、反射率を表す。
表1では、このときのSCI反射率Yを示した。
図4の比較実験例B1および比較実験例B2は、スペクトルに波があり、フィルムの色ムラや斜めから観察した際の色変化が大きい。また、表1に示すようにSCI反射率Yも高い。一方で、実験例A1では、スペクトルがフラットなため色ムラや色変化が小さく、SCI反射率Yも低い。
Figure 2022076358000003
<ハードコート層16、遮熱層17、高屈折率層18、低屈折率層19の作成方法の説明>
次に、ハードコート層16、遮熱層17、高屈折率層18、低屈折率層19の作成方法の説明を行う。
図5(a)は、図2に示すような構造の層構造の樹脂膜の作成方法を示したフローチャートである。
まず、基材15上に、ハードコート層16を作成する。ハードコート層16は、遮熱層17に隣接し、低屈折率層19以外の層であり、遮熱層17との屈折率の差が0.04以下である隣接層となる(ステップ101:隣接層作成工程)。
次に、ハードコート層16上に、厚さが300nm以上1500nm以下であり、熱を遮るための遮熱層17を作成する(ステップ102:遮熱層作成工程)。
さらに、遮熱層17上に、低屈折率層19より屈折率が高い高屈折率層18を作成する(ステップ103:高屈折率層作成工程)。
そして、高屈折率層18上に、遮熱層17や高屈折率層18よりも屈折率が低い低屈折率層を作成する(ステップ104:低屈折率層作成工程)。
また、ハードコート層16、遮熱層17、高屈折率層18、低屈折率層19の各層は、何れも以下の方法で作成することができる。
図5(b)は、ハードコート層16、遮熱層17、高屈折率層18、低屈折率層19の作成方法を説明したフローチャートである。
まず、各層を形成するための塗布溶液を準備する(ステップ201:準備工程)。ここで、「準備」とは、塗布溶液を作成することで準備する場合の他、塗布溶液を購入して準備する場合も含む。
塗布溶液は、固形分と溶媒とからなる。
ハードコート層16を作成する場合、固形分は、バインダ161の基となるモノマーやオリゴマーを含む。また、固形分は、金属酸化物粒子162を含む。モノマーおよび/またはオリゴマーは、重合することで、バインダ161に含まれる樹脂となる。本実施の形態では、重合は、光重合である。ここでは、以下、このモノマーおよび/またはオリゴマーを、「バインダ成分」と言うことがある。
遮熱層17を作成する場合、固形分は、バインダ171の基となるバインダ成分を含む。また、固形分は、遮熱粒子172を含む。
高屈折率層18を作成する場合、固形分は、バインダ181の基となるバインダ成分を含む。また、固形分は、高屈折率粒子182を含む。
低屈折率層19を作成する場合、固形分は、バインダ191の基となるバインダ成分を含む。また、固形分は、中空シリカ粒子192および表面改質剤193を含む。
また各層の固形分として、光重合開始剤を含む。またさらに、固形分として、分散剤、消泡剤、紫外線吸収材、レベリング剤などを含んでいてもよい。
そして、それぞれの固形分を溶媒に投入し、撹拌することで、各層ごとの塗布溶液を作成できる。
溶媒は、固形分を分散する。溶媒としては、例えば、塩化メチレン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトンを使用することができる。また、MEK(メチルエチルケトン:methyl ethyl ketone)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、エタノール、メタノール、ノルマルプロピルアルコールを使用することができる。さらに、イソプロピルアルコール、Tert-ブチルアルコール、1-ブタノール、ミネラルスピリット、オレイン酸、シクロヘキサノンを使用することができる。またさらに、NMP(N-メチル-2-ピロリドン:N-methylpyrrolidone)、DMP(フタル酸ジメチル:dimethyl phthalate)、ジメチルカーボネート、ジオキソランを使用することができる。
図5(b)に戻り、次に、塗布溶液を塗布し塗布膜を作成する(ステップ202:塗布工程)。塗布を行う方法は、特に限られるものではないが、塗布溶液を滴下し、バーコータで塗布する方法で行うことができる。また、塗布溶液を滴下し、回転させ、遠心力で、均一な厚さの膜状体を作成する方法を採用することもできる。
この際に、低屈折率層19の表面改質剤は、塗布膜の表面側に偏析する。
さらに、塗布した塗布膜を乾燥させる(ステップ203:乾燥工程)。乾燥は、室温で放置して、溶媒を揮発させる方法や、加熱または真空引きなどにより溶媒を強制的に除去する方法により行うことができる。
そして、紫外線等の光を照射し、塗布膜中のバインダ成分を光重合させる。これにより、塗布膜中のバインダ成分が硬化し、バインダ161、171、181、191となる(ステップ204:重合工程)。以上の工程により、ハードコート層16、遮熱層17、高屈折率層18、低屈折率層19の各層を形成することができる。なお、乾燥工程と重合工程は、塗布した塗布溶液を硬化させる硬化工程として捉えることができる。
なお、上述した例では、表示装置1は、液晶パネルにハードコート層16、遮熱層17、高屈折率層18および低屈折率層19を形成する場合を示した。ただし、これに限るものではなく、例えば、有機ELやブラウン管に形成してもよい。
またこれらの層を、ガラスやプラスチックなどの材料からなるレンズなどの表面に形成してもよい。この場合、レンズ等は基材の一例である。また、ハードコート層16、高屈折率層18および低屈折率層19を形成したレンズ等は、光学部材の一例である。また、基材として、TAC等からなるフィルムを使用することができる。そして、このフィルム上にこれらの層を形成してもよい。これは、低屈折率フィルムまたは反射防止フィルムとして使用できる。これも光学部材の一例である。
また、偏光フィルム12に、ハードコート層16、遮熱層17、高屈折率層18および低屈折率層19を形成することもできる。これは、偏光部材の一例であり、偏光フィルムとして使用できる。
また上述した例では、ハードコート層16や高屈折率層18を設けていたが、これらを必要としない場合は、設ける必要はない。つまり、ハードコート層16および高屈折率層18の何れか一方を設けなくてもよい場合がある。また、ハードコート層16および高屈折率層18の双方を設けなくてもよい場合がある。なお、ハードコート層16がない場合、隣接層は、基材15やレンズ等の基材となる。
さらに、上述した例では、光重合でバインダ成分を重合させる場合を示したが、熱重合でバインダ成分を重合させてもよい。
<変形例>
上述した例では、ハードコート層16と遮熱層17とは、別々に形成されていた。しかしながら、これらを一度に形成することもできる。
図6は、ハードコート層16と遮熱層17とを一度に形成した場合の構成について示した図である。
図示するように、この場合、遮熱隣接層20、高屈折率層18および低屈折率層19が積層する。
遮熱隣接層20は、樹脂を主成分とする母材としてのバインダ201を含む。
また、遮熱隣接層20は、遮熱性能を有する遮熱粒子202を含む。遮熱粒子202は、例えば、赤外線吸収材料および赤外線反射材料の少なくとも1つを含む。そして、遮熱隣接層20は、この材料を、厚み方向において、表面側の濃度が表面側とは逆側の濃度よりも大きくなるように含む。即ち、遮熱隣接層20は、遮熱粒子202が、表面側に偏在する。遮熱粒子202は、遮熱粒子172と同様のものが使用できる。また、遮熱層17の説明で上述した、熱伝導率が大きい材料や熱伝導率が小さい材料を遮熱粒子202として使用してもよい。
遮熱隣接層20は、ハードコート層16と遮熱層17との機能を併せ持つ。つまり、遮熱隣接層20の表面側は、遮熱粒子202が偏在するので、遮熱層17の機能を有する。対して、遮熱隣接層20の内部側は、ハードコート層16の機能を有する。これは、遮熱隣接層20の上層は、遮熱層17の機能を有し、遮熱隣接層20の下層は、ハードコート層16の機能を有する、と言うこともできる。ただし、これらの間には、境界はない。そして、遮熱層17の機能とハードコート層16の機能とは、厚み方向で連続的に変化する。また、光学界面もなく、光学特性も厚み方向で連続的に変化する。
図7は、図6に示すような構造の樹脂膜の作成方法を示したフローチャートである。
まず、基材15上に、上述した遮熱隣接層20を作成する。(ステップ301:遮熱隣接層作成工程)。
遮熱隣接層20は、図5(b)に示した方法と同様の方法で作成することができる。つまり、遮熱隣接層20は、準備工程、塗布工程、乾燥工程、重合工程の各工程を順に行うことで作成できる。
図8(a)~(c)は、遮熱隣接層20の作成方法について示した図である。
この場合、図8(a)に示すように、塗布溶液Tを準備(準備工程)し、基材15上に滴下する。塗布溶液Tには、溶媒Lに遮熱粒子202が分散する。なお、遮熱粒子202以外の他の固形分も溶媒Lに分散する。そして、バーコータ等で塗布すると、図8(b)に示すように、塗布溶液Tからなる塗布膜が形成される(塗布工程)。
塗布後、遮熱粒子202は、塗布膜の表面側に偏析する。さらに、乾燥工程、重合工程を経ると、図8(c)に示すように、遮熱粒子202が、表面側に偏析した遮熱隣接層20が形成される。遮熱粒子202を表面側に偏析させる方法としては、例えば、遮熱粒子202に表面処理を行う。これにより、遮熱粒子202の表面エネルギーやバインダ201との相溶性を制御する方法が挙げられる。
図7に戻り、以下のステップ302の高屈折率層を作成する工程は、図5(a)のステップ103と同様である。また、ステップ303の低屈折率層を作成する工程は、図5(a)のステップ104と同様である。
以上説明したような遮熱隣接層20を形成することで、光学特性と熱遮断性とを両立させることができる樹脂膜等を提供することができる。つまり、光学特性については、遮熱層17の隣接層であるハードコート層16等との屈折率の差を0.04以下とすることで実現できる。また、熱遮断性については、遮熱層17を、厚さを300nm以上1500nm以下とすることで実現できる。また、このとき、低屈折率層19は、遮熱層17を挟みハードコート層16と逆側に設けられることが好ましい。つまり、高屈折率層18を設ける場合、内部側から表面側に向けて、ハードコート層16、遮熱層17、高屈折率層18、低屈折率層19の順に設けることが好ましい。
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例により限定するものではない。
〔ハードコート層16の形成〕
まず、ハードコート層16の作成方法について説明する。ここでは、表2に示す組成でハードコート層16の塗布溶液塗布溶液HC-1~HC-8を作成した。
(塗布溶液HC-1)
塗布溶液HC-1は、バインダ成分であるモノマーおよび/またはオリゴマー、金属酸化物粒子162を含む。また、塗布溶液HC-1は、光重合開始剤、消泡剤、および溶媒を含む。バインダ成分は、共栄社化学株式会社製のUA-306Tを使用した。バインダ成分は、さらに、大阪有機化学工業株式会社製のビスコート#300、日本化薬株式会社製のKAYARAD PET-30を使用した。また、金属酸化物粒子162は、平均一次粒径が30nmのナノ粒子であるジルコニウム酸化物を使用した。さらに、光重合開始剤は、BASFジャパン株式会社製のIRGACURE184を使用した。そして、消泡剤は、ALTANA社製のBYK-066Nを使用した。これらは、固形分であり、配合比は、表2に示した通りである。
そして、これらの固形分は、50質量%となるように、溶媒に投入し、撹拌した。溶媒は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルカーボネートを使用した。これらの配合比は、表2に示した通りである。これにより、塗布溶液HC-1を作成した。
(塗布溶液HC-2、HC-3)
塗布溶液HC-2、HC-3は、バインダ成分および金属酸化物粒子162の配合比を塗布溶液HC-1に対し変更した。
(塗布溶液HC-4、HC-5)
塗布溶液HC-4は、金属酸化物粒子162として、平均一次粒径が20nmのナノ粒子であるアンチモン含有酸化スズ(ATO)を使用した。また、塗布溶液HC-5は、金属酸化物粒子162として、平均一次粒径が20nmのナノ粒子であるリン含有酸化スズ(PTO)を使用した。
(塗布溶液HC-6)
塗布溶液HC-6は、金属酸化物粒子162を入れなかった。また、帯電防止剤として、コルコート株式会社製のNR-121X-9IPAを使用した。
(塗布溶液HC-7、HC-8)
塗布溶液HC-7、HC-8は、バインダ成分および金属酸化物粒子162の配合比を塗布溶液HC-1に対し変更した。
塗布溶液は、ワイヤバーにより基材15上に塗布し、塗布膜を作成した。基材15としては、TACフィルムを使用した。さらに、塗布膜を室温で1分間放置後、80℃で1分間加熱することで乾燥した。そして、紫外線ランプ(メタルハライドランプ、照度300mW/cm)を1秒間照射した。これにより塗布膜を硬化させることができる。以上の工程により、ハードコート層16を形成することができた。
Figure 2022076358000004
〔遮熱層17の形成〕
次に、遮熱層17の作成方法について説明する。ここでは、表3に示す組成で遮熱層17の塗布溶液を作成した。
(塗布溶液HS-1)
塗布溶液HS-1は、バインダ成分であるモノマーおよび/またはオリゴマー、遮熱粒子172、光重合開始剤、および溶媒を含む。バインダ成分は、日本化薬株式会社製のKAYARAD DPHAを使用した。また、遮熱粒子172は、平均一次粒子径が30nmのナノ粒子であるインジウム含有酸化スズ(ITO)を使用した。さらに、光重合開始剤は、BASFジャパン株式会社製のIRGACURE184を使用した。これらは、固形分であり、配合比は、表3に示した通りである。
そして、これらの固形分は、25質量%となるように、溶媒であるメチルイソブチルケトンに投入し、撹拌した。これにより、塗布溶液HS-1を作成した。
(塗布溶液HS-2、HS-3)
塗布溶液HS-2、HS-3は、バインダ成分および遮熱粒子172の配合比を塗布溶液HS-1に対し変更した。また、塗布溶液HS-2は、フッ素系添加剤として、DIC株式会社製のメガファックF-568をさらに使用した。
(塗布溶液HS-4)
塗布溶液HS-4は、バインダ成分として、ダイキン工業株式会社製のAR-100をさらに使用した。また、遮熱粒子172として、疎水表面処理を施したインジウム含有酸化スズ(ITO)を使用した。これは、平均一次粒子径が50nmのナノ粒子である。
(塗布溶液HS-5、HS-6)
塗布溶液HS-5は、遮熱粒子172として、平均一次粒子径が20nmのナノ粒子であるアンチモン含有酸化スズ(ATO)を使用した。また、塗布溶液HS-6は、遮熱粒子172として、平均一次粒子径が20nmのナノ粒子であるリン含有酸化スズ(PTO)を使用した。
塗布溶液は、ワイヤバーによりハードコート層16上に塗布し、塗布膜を作成した。さらに、塗布膜を室温で1分間放置後、80℃で2分間加熱することで乾燥した。そして、紫外線ランプ(メタルハライドランプ、照度300mW/cm)を1秒間照射した。これにより塗布膜を硬化させることができる。以上の工程により、遮熱層17を形成することができた。
Figure 2022076358000005
〔高屈折率層18の形成〕
次に、高屈折率層18の作成方法について説明する。ここでは、表4に示す組成で高屈折率層18の塗布溶液を作成した。
(塗布溶液HR-1)
塗布溶液HR-1は、バインダ成分であるモノマーおよび/またはオリゴマー、高屈折率粒子182、光重合開始剤、および溶媒を含む。バインダ成分は、日本化薬株式会社製のKAYARAD DPHAを使用した。また、高屈折率粒子182は、平均一次粒子径が10nmのナノ粒子であるジルコニウム酸化物を使用した。さらに、光重合開始剤は、BASFジャパン株式会社製のIRGACURE184を使用した。これらは、固形分であり、配合比は、表4に示した通りである。
そして、これらの固形分は、10質量%となるように、溶媒であるメチルイソブチルケトンに投入し、撹拌した。これにより、高屈折率層18の塗布溶液を作成した。
(塗布溶液HR-2、HR-3)
塗布溶液HR-2、HR-3は、バインダ成分および高屈折率粒子182の配合比を塗布溶液HR-1に対し変更した。
塗布溶液は、ワイヤバーにより遮熱層17上に塗布し、塗布膜を作成した。さらに、塗布膜を室温で1分間放置後、80℃で2分間加熱することで乾燥した。そして、紫外線ランプ(メタルハライドランプ、照度300mW/cm)を1秒間照射した。これにより塗布膜を硬化させることができる。以上の工程により、高屈折率層18を形成することができた。
Figure 2022076358000006
〔低屈折率層19の形成〕
次に、低屈折率層19の作成方法について説明する。ここでは、表5に示す組成で低屈折率層19の塗布溶液を作成した。
(塗布溶液LR-1)
塗布溶液LR-1は、バインダ成分であるモノマーおよび/またはオリゴマー、中空シリカ粒子192を含む。また、塗布溶液LR-1は、光重合開始剤、撥油性の表面改質剤193、親油性の表面改質剤193を含む。さらに、塗布溶液は、消泡剤および溶媒を含む。バインダ成分は、ダイキン工業株式会社製のオプツール AR-100を使用した。さらに、バインダ成分は、日本化薬株式会社製のKAYARAD PET-30を使用した。また、中空シリカ粒子192は、平均一次粒子径が60nmおよび10nmのものを使用した。さらに、光重合開始剤は、BASFジャパン株式会社製のIRGACURE127を使用した。そして、撥油性の表面改質剤193として、信越化学工業株式会社製KY-1203を使用した。またさらに、親油性の表面改質剤193として、株式会社ネオス製のフタージェント650Aを使用した。そして、消泡剤として、ALTANA社製のBYK-066Nを使用した。これらは、固形分であり、質量配合比は、表5に示した通りである。
そして、これらの固形分は、溶媒であるメチルイソブチルケトンおよびTert-ブチルアルコールの混合液に投入し、撹拌した。このとき、固形分は、5質量%となるようにした。これにより、低屈折率層19の塗布溶液を作成した。なお、溶媒の質量配合比は、表5に示した通りである。
(塗布溶液LR-2)
塗布溶液LR-2は、中空シリカ粒子192は、平均一次粒子径が75nmおよび10nmのものを使用した。また、バインダ成分および中空シリカ粒子192の配合比を塗布溶液LR-1に対し変更した。
塗布溶液は、ワイヤバーにより高屈折率層18上に塗布し、塗布膜を作成した。さらに、塗布膜を室温で1分間放置後、80℃で3分間加熱することで乾燥した。そして、窒素ガス置換雰囲気下紫外線ランプ(メタルハライドランプ、照度300mW/cm)を1秒間照射した。これにより塗布膜を硬化させることができる。以上の工程により、低屈折率層19を形成することができた。
Figure 2022076358000007
〔樹脂膜の構成〕
次に以上記載したハードコート層16、遮熱層17、高屈折率層18、低屈折率層19の組み合わせについて説明する。ここでは、表6に示す塗布溶液の組み合わせでこれらの各層を作成した。
(実施例1)
実施例1として、ハードコート層16を塗布溶液HC-1を用いて作成した。また、ハードコート層16上に、遮熱層17を塗布溶液HS-1を用いて作成した。さらに、遮熱層17上に、高屈折率層18を塗布溶液HR-1を用いて作成した。そして、高屈折率層18上に、低屈折率層19を塗布溶液LR-1を用いて作成した。
(実施例2~14)
実施例2~14として、表6~7に示す塗布溶液の組み合わせで、各層を作成した。
このうち、実施例2は、高屈折率層18を作成しない場合である。
実施例3、4は、遮熱層17に含まれる遮熱粒子172の含有量を変化させた場合である。実施例3は、インジウム含有酸化スズ粒子を、遮熱層17全体の質量に対し、45質量%とした場合である。また、実施例4は、インジウム含有酸化スズ粒子を、遮熱層17全体の質量に対し、95.5質量%とした場合である。
実施例5は、上記変形例のように、ハードコート層16と遮熱層17とを一度に作成し、遮熱隣接層20とした場合である。
実施例6~10は、遮熱層17の膜厚を300nmから1480nmまで変化させた場合である。
実施例11は、遮熱層17の遮熱粒子172を、アンチモン含有酸化スズ(ATO)とした場合である。また、実施例12は、遮熱粒子172を、リン含有酸化スズ(PTO)とした場合である。
実施例13は、遮熱層17と隣接層であるハードコート層16との屈折率の差を0.04とした場合である。また、実施例14は、遮熱層17と隣接層であるハードコート層16との屈折率の差を0.03とした場合である。
Figure 2022076358000008
Figure 2022076358000009
(比較例1~6)
比較例1~6として、表8に示す塗布溶液の組み合わせで、各層を作成した。
このうち、比較例1は、遮熱層17の膜厚を下限の300nmより薄い250nmとした場合である。また、比較例2は、遮熱層17の膜厚を上限の1500nmより厚い1800nmとした場合である。
比較例3は、遮熱層17と隣接層であるハードコート層16との屈折率の差を、0.04を超える0.11とした場合である。また、比較例4は、遮熱層17と隣接層であるハードコート層16との屈折率の差を、0.04を超える0.06とした場合である。
比較例5、6は、遮熱層17を形成しなかった場合である。
Figure 2022076358000010
〔評価方法〕
(膜厚、屈折率)
実施例1~14、比較例1~6について、各層の膜厚を測定した。また、実施例1~14、比較例1~6について、遮熱層17の屈折率およびハードコート層16の屈折率を測定した。またこれらの差から、両者の屈折率の差を算出した。
膜厚および屈折率は、J.A.Woollam社製の分光エリプソメーター(VUV-VASE)を用いて測定した。このとき、同一サンプル内でn=3点で測定し、平均値を採用した。
(SCI反射率Y)
実施例1~14、比較例1~6について、SCI反射率Yを測定した。
SCI反射率Yは、コニカミノルタ社製のCM-2600dを使用して測定した。測定は測定フィルム裏面に黒色のPETフィルムを張り付けた後に行った。SCI反射率Yは、小さい方が、よい結果となる。そして、SCI反射率Yは、0.4以下であれば合格と判定した。また、0.3未満であるとさらによい。
(透過率)
実施例1~14、比較例1~6について、透過率を測定した。
透過率は、日本電色工業社製のヘイズメーターNDH5000Wを用いて測定した。
透過率は、大きい方が光学特性に優れることを意味する。そして、透過率は、90%以上であれば合格と判定した。
(遮熱性能)
実施例1~14、比較例1~6について、遮熱性能を測定した。
遮熱性能は、60℃に加温したホットプレート上に、両面テープで樹脂膜を貼り付けた。そして、樹脂膜の上部からサーモカメラで観察した際の温度差 (ホットプレート温度 - サーモカメラで測定した樹脂膜の温度)を確認した。この温度差が、0℃であると遮熱性能がないことを意味する。またこの温度差が大きいほど、遮熱性能に優れることを意味する。
また、実施例1については、耐擦傷性の評価として、スチールウール耐性、鉛筆硬度について評価を行った。さらに、実施例1について、汚れの拭き取り性の評価を行った。
(スチールウール耐性)
スチールウール耐性の試験は、予め定められた荷重をかけながらスチールウールで樹脂膜の表面を擦ることで行う。スチールウールは、日本スチールウール株式会社製のボンスター、品番:#0000を使用した。また、移動速度は、100mm/秒とした。さらに、往復回数を10回とした。そして、蛍光灯の照明下で、樹脂膜の角度を変えながら目視により観察を行い、傷が生じないときの最大荷重を求めた。
スチールウール耐性は、最大荷重が大きいほど樹脂膜が硬いことを意味する。
(鉛筆硬度)
図9は、鉛筆硬度を測定する鉛筆硬度測定装置を示した図である。
図示する鉛筆硬度測定装置200は、車輪210と、鉛筆220と、鉛筆締め具230とを備える。さらに鉛筆硬度測定装置200は、水準器240と、筐体250とを備える。
車輪210は、筐体250の両側に2つ設けられる。そして2つの車輪210は、車軸211により連結される。車軸211は、図示しないベアリング等を介して筐体250に取り付けられる。また車輪210は、金属製であり、外径部分にゴム製のOリング212を備える。
鉛筆220は、鉛筆締め具230を介して筐体250に取り付けられる。鉛筆220は、先端部に所定の硬度を有する芯225を有する。鉛筆220は、試験対象である樹脂膜に対し、45°の角度になるように取り付けられる。そして先端部の芯225の部分が樹脂膜に接触する。芯225は、鉛筆220の木部226を削ることで5mm~6mm露出するように調整される。さらに芯225は、先端部が研磨紙により平らになるように研磨されている。そして芯225の先端部において、樹脂膜に対し、500gの重量が付勢されるようになっている。
この構成において、鉛筆硬度測定装置200は、筐体250を押すことにより移動可能である。つまり鉛筆硬度測定装置200を押すと、樹脂膜上を図中左右方向に移動できる。このとき車輪210は回転し、鉛筆220の芯225は、樹脂膜上を押しつけられつつ移動する。
実際に鉛筆硬度を測定する際は、まず水準器240により水平を確認する。そして、鉛筆220の芯225を、樹脂膜に押しつけながら図中右方向に移動させる。このとき、0.8mm/sの速度で、少なくとも7mmの距離を押す。そして、樹脂膜における擦り傷の有無を目視で確認する。これは、鉛筆220を交換し、芯225の硬度を6B~6Hまで変化させることで順次行なう。そして擦り傷が生じなかった最も硬い芯225の硬度を鉛筆硬度とする。
鉛筆硬度は、より硬い硬度となった方が樹脂膜が硬いことを意味する。
(拭き取り性)
樹脂膜の表面に、汚れとして指紋を付着させ、ティッシュペーパーで拭き取った。このとき、指紋を拭き取ることができた回数を拭き取り性の評価とした。
拭き取り性は、この回数が少ないほど良好であることを意味する。
〔評価結果〕
評価結果を、表6~8に示す。
実施例1~14は、SCI反射率Yが0.4以下となり合格であった。また、透過率は何れも90%以上であり、良好であった。遮熱性能は、何れも6℃以上となり、遮熱性能を有することを確認した。
比較例1は、SCI反射率Yが0.4以下で合格であったが、遮熱性能は、3℃であり、実施例に対し劣る結果となった。これは、遮熱層17の膜厚を下限の300nmより薄い250nmとした結果と考えられる。
比較例2は、SCI反射率Yが0.4以下で合格であったが、透過率が89%と実施例に比べ劣る結果となった。これは、遮熱層17の膜厚を上限の1500nmより厚い1800nmとした結果と考えられる。
比較例3、4は、遮熱性能は、良好であったが、SCI反射率Yが0.4を超え、不合格であった。これは、遮熱層17とハードコート層16との屈折率の差が0.04を超えた結果と考えられる。
比較例5、6は、SCI反射率Yが0.4以下で合格であったが、遮熱性能は、0℃であり、遮熱性能がない結果となった。これは、遮熱層17を設けなかった結果と考えられる。
以上の結果より、遮熱層17の膜厚は、上述したように、厚さが300nm以上1500nm以下であることが必要である。また、遮熱層17とハードコート層16との屈折率の差は、上述したように、0.04以下であることが必要である。
また、実施例1について、スチールウール耐性は、1500g/cm以上の耐性が得られた。また、鉛筆硬度は3Hであった。即ち、耐擦傷性が良好であった。さらに、拭き取り性は、拭き取り回数10回以下で拭き取ることができた。即ち、汚れの拭き取り性が良好であった。
1…表示装置、1a…液晶パネル、11…バックライト、12、12a、12b…偏光フィルム、13、13a、13b…位相差フィルム、14…液晶、15…基材、16…ハードコート層、17…遮熱層、18…高屈折率層、19…低屈折率層、20…遮熱隣接層、161,171,181、191…バインダ、172…遮熱粒子

Claims (19)

  1. 厚さが300nm以上1500nm以下であり、熱を遮るための遮熱層と、
    前記遮熱層よりも屈折率が低い低屈折率層と、
    前記遮熱層に隣接し、前記低屈折率層以外の層であり、前記遮熱層との屈折率の差が0.04以下である隣接層と、
    を有する樹脂膜。
  2. 前記低屈折率層は、前記遮熱層を挟み前記隣接層と逆側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の樹脂膜。
  3. 前記隣接層は、ハードコート層であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂膜。
  4. 前記ハードコート層は、当該ハードコート層の屈折率を高くする粒子を含むことを特徴とする請求項3に記載の樹脂膜。
  5. 前記粒子は、ジルコニウム酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物およびスズ酸化物のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項4に記載の樹脂膜。
  6. 前記遮熱層と前記低屈折率層との間に、当該低屈折率層より屈折率が高い高屈折率層をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の樹脂膜。
  7. 前記ハードコート層、前記遮熱層、前記高屈折率層および前記低屈折率層の順で表面側に向け積層することを特徴とする請求項6に記載の樹脂膜。
  8. 前記遮熱層は、赤外線を吸収する材料である赤外線吸収材料および赤外線を反射する材料である赤外線反射材料の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂膜。
  9. 前記赤外線反射材料は、インジウム含有酸化スズ粒子、アンチモン含有酸化スズ粒子およびリン含有酸化スズ粒子の少なくとも1つであることを特徴とする請求項8に記載の樹脂膜。
  10. 前記遮熱層は、前記インジウム含有酸化スズ粒子、前記アンチモン含有酸化スズ粒子および前記リン含有酸化スズ粒子の少なくとも1つを、当該遮熱層全体の質量に対し、50質量%以上95質量%以下含むことを特徴とする請求項9に記載の樹脂膜。
  11. 赤外線を吸収する材料である赤外線吸収材料および赤外線を反射する材料である赤外線反射材料の少なくとも1つを、樹脂膜の厚み方向において、表面側の濃度が表面側とは逆側の濃度よりも大きくなるように含むことで、熱を遮る遮熱隣接層と、
    前記遮熱隣接層よりも屈折率が低い低屈折率層と、
    を有する樹脂膜。
  12. 前記遮熱隣接層は、前記逆側の部分が、ハードコート層として機能することを特徴とする請求項11に記載の樹脂膜。
  13. 厚さが300nm以上1500nm以下であり、熱を遮るための遮熱層を作成する遮熱層作成工程と、
    前記遮熱層よりも屈折率が低い低屈折率層を作成する低屈折率層作成工程と、
    前記遮熱層に隣接し、前記低屈折率層以外の層であり、前記遮熱層との屈折率の差が0.04以下である隣接層を作成する隣接層作成工程と、
    を含む樹脂膜の作成方法。
  14. 前記低屈折率層は、前記遮熱層を挟み前記隣接層と逆側に設けられることを特徴とする請求項13に記載の樹脂膜の作成方法。
  15. 前記隣接層は、ハードコート層であることを特徴とする請求項13または14に記載の樹脂膜の作成方法。
  16. 赤外線を吸収する材料である赤外線吸収材料および赤外線を反射する材料である赤外線反射材料の少なくとも1つを、樹脂膜の厚み方向において、表面側の濃度が表面側とは逆側の濃度よりも大きくなるように含むことで、熱を遮る遮熱隣接層を作成する遮熱隣接層作成工程と、
    前記遮熱隣接層よりも屈折率が低い低屈折率層を作成する低屈折率層作成工程と、
    を含む樹脂膜の作成方法。
  17. 画像の表示を行う表示手段と、
    前記表示手段の表面に設けられ、請求項1乃至12の何れか1項に記載の樹脂膜と、
    を備える表示装置。
  18. 基材と、
    前記基材上に設けられ、請求項1乃至12の何れか1項に記載の樹脂膜と、
    を有する光学部材。
  19. 光を偏光させる偏光手段と、
    前記偏光手段上に設けられ、請求項1乃至12の何れか1項に記載の樹脂膜と、
    を有する偏光部材。
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